ポケットモンスター サファイア編




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第52話 『Shadow and Zanjiku』





『2月3日 午前10時55分 127番水道』


ユウキ 「……」

潮は流れる…。
あまり早くない、しかし海は確実俺を目的の場所へと誘っている。
確証はないが、そう感じ取れた。

シルク 『もう、結構流されているよ? 大丈夫?』

ユウキ 『大丈夫だ…このまま流れに任せてみよう…』

俺はフォルムを使い、海の底を漂っていた。
ルネを出て、すでに3週間…俺は海の底でアクア団を探し続けてきた。
しかし、このだだっ広いホウエンの海の中を探すのはまるで星の海の中、たった一つの星を見つけるような途方もない作業だった。
ルネからキナギまで行き、そして、またルネ、トクサネを目指してまた海を探す。
そんな日、3週間経った2月3日、俺は一際深い海溝を見つけた。
ただの思い込みかもしれないが、その海からは何か俺を呼ぶ声が聞こえるようだった。
シルクは生身でも海の中で息が出来るらしく、こうやって一緒に海の中を探していた。
上にはハギ老人の船もある。
フォルムは海に入ってから出し、海面近くには切って海を出て、ハギ老人をごまかしていた。
このフォルムにはシルクも驚いていたな…。

シルク 『この海溝…どこまで続くんだろう…?』

シルクは不安げにそう言った。
たしかに今日見つけた海溝は今まで以上に大きく、そして長い海溝だった。
そして、光届かぬ底は異様な不気味さを持っていた。
流れは穏やかで、俺たちはゆっくり流されていた。

ハギ老人には1時間経っても戻ってこなかったら帰っていいと言ってある。
すでに時間は1時間近く経つ気もする。
しかし、戻る気はなかった。
今だ、ホウエン地方には異変は起きない。
多分、まだカイオーガは目覚めていないのだろう。
まだ、間に合う…。
だが、刻一刻と時間がなくなっているのはわかる。
ポケモンリーグも、この世界の命運も…。



…………。
………。
……。



『同日 某時刻 海底洞窟』


シャドウ 「……」

ザシュ…。

アオギリ 「ここが海底洞窟…カイオーガの眠る洞窟か…」

俺たちは長い海の中の生活を過ぎ、ようやく地面に立つ。
なんとも懐かしい感覚だった、それ以上に懐かしかったのは…空気だった。

シャドウ (ここには…あの頃の空気がそのまま残っている…)
シャドウ (どこへ行くこともなく、今とは違うあの濃い空気が…)

イズミ 「それにしてもちょっと暑いわね…」

アクア団員A 「それに、心なしか酸素濃度が異常に濃い気が…」

アオギリ 「たしかに…しかし、やっとここまで来れたのだ! 我らの悲願成就は目の前だ!」
アオギリ 「我々の長いた旅もようやく終焉だ! 諸君、カイオーガの捜索を始めろ!」

アクア団 「ハッ!」

アオギリの一声により、アクア団はようやく行動を開始する。
ついに…あのポケモンと対面する時が来たのか…。

アオギリ 「シャドウ、イズミは俺と共に来い」

イズミ 「了解ですわ」

シャドウ 「…わかった」

俺たちは海底洞窟中でカイオーガの捜索を始める。
ついにいままで6000年間、誰の目にも見られることのなかったポケモンカイオーガ…。
ついに見るのか…。

イズミ 「? 今、誰か…」

アオギリ 「どうした、イズミ?」

イズミ 「いえ、さっきそこの物陰から人の姿が見えた気が?」

アオギリ 「馬鹿な、アクア団員の見間違いではないのか?」

イズミ 「そうなんでしょうか…?」

シャドウ 「……」

俺には見えなかった。
しかし、普段の俺なら意識しなくても気配を感じ取れたはず。
『聖緑』も何も感じ取らなかった。
…まさか?

? 「まさか、こんなところにいるなんて…」

アオギリ 「誰だ!? そこにいるのは!?」

シャドウ 「…!」

目の前の物陰から突然、一人の少年が現れる。
少年は青い服を着て、藍色の髪の毛を短く伸ばしていた。
やや、釣り目で身長は160くらい、あくまで…見せ掛けだが。

シャドウ 「まさか、『ラティオス』か…?」

それを聞いてその男はニコッと笑う。

ラティオス 「心配になってこっちから来ましたよ」

イズミ 「知り合い…シャドウの?」

アオギリ 「知り合いなのか、シャドウ?」

シャドウ 「…ああ」

そいつは、たしかアルトマーレにいる筈のラティオスだった。
妹と一緒に待たせていたはずだが…。
しかし、それ以上に一体どうしてここにこいつが…?

シャドウ 「…どうして、お前がここにいる?」

当然の疑問だ。
ここは海底洞窟、俺でさえ、まず来れない場所。
いくら、『潜水できるポケモン』だからといってここまでくるのは容易ではないはず…。

ラティオス 「だから、心配になって来たんですよ、シャドウ様、探したんですからね」

シャドウ 「! そうか…、ご苦労だな…」
シャドウ 「なら、俺のねぎらいは…これだ!」

ラティオス 「!?」

ブォン!!

俺は全力で聖緑をラティオスに振るう。
いや、ラティオスもどきか…。

アオギリ 「シャドウ!?」

ラティオス 「一体、どういうつもりですシャドウ様!?」

シャドウ 「白々しい物真似はよすんだな…全然似てないぞ…ザンジーク!」

ラティオス 「! なんだ…ばれていたのか、結構似ていると思ったんだけどな…」

ラティオスもどきは聖緑の一撃をかわすと、4メートルほど離れて、正体を現す。
そいつは間違いなくザンジークだった。
ザンジークは姿がメタリックカラーに変わると、今度はまた、別の少年に姿を変えた。
ただし、今度はザンジーク特有の銀色の肌、赤い目をした少年に。

シャドウ 「…あいつは俺に様なんてつけない、そして奴はそこまで敬語を使わない…」

ザンジーク 「あら? おかしいな…情報じゃ義理堅くて、立場を重んじるやつだって聞いたんだけど…」

シャドウ 「貴様、何者だ? 初めて見る顔だが…?」

ザンジーク 「そりゃそうだ、俺は最近生み出されたんだからな、俺は『ザンジークドッペル』…意味はそのまんまさ…」

ドッペル…なるほど、だからあいつの姿を…。

シャドウ 「一体で現れて何するものぞ…死ににきたか」

俺は容赦するつもりはない。
現れたからには全力で確実に屠らせてもらう。

ドッペル 「まさか、ただでさえあんたは俺たちの天敵なのに、一人できたりはしないさ」
ドッペル 「ちゃんと、お仲間も用意しているよ」

そう言うと、突然俺たちを囲むように体長70センチくらいの銀色の体をした蜘蛛のザンジークが無数に現れる。
『ザンジークセル』か…。

イズミ 「な、なによこれ!?」

アオギリ 「な、なんなんだ!?」

ドッペル 「あっはっは! どうする? 人間守りながら戦えるかな?」

シャドウ 「……」

たしかに、人間であるイズミやアオギリは弱点だ。
だが、放っておく訳にもいかない。
やむをえまいか…。

アオギリ 「シャ、シャドウ…?」

シャドウ 「アオギリ…お前はキメナの研究をしていたな…」

アオギリ 「!? どうしてそれを!?」

アオギリは明らかに驚いた顔をする。
知っていたさ、アクア団が生まれる前から…。

シャドウ 「見せてやるよ…お前達の人間の研究が本当はどんなものなのか!」

俺は力を背中に溜める、そして聖緑に被せてある布を取り外す。

シャドウ 「フォルム!!」

俺は自分のフォルム、『ウイングフォルム』を展開する。
ウイングフォルムを展開すると背中から白い翼が生える。

アオギリ 「再来だ…キメナの…アイの…!」

ドッペル 「へぇ、それがフォルムなんだ…すごいね〜」

シャドウ 「この程度で俺を止められると思うなよ? ドッペル…」

ドッペル 「それにしても、まさか人間相手にその姿を見せるなんてね…6000年間一度も人前で見せたりはしなかったはずなのに…」

イズミ 「6000年!? あなた、一体!?」

アオギリ 「やはり、キメナなのか…?」

シャドウ 「お前達はそう呼ぶな…」

否定はしない。
たしかに、キメナは俺たちを指す言葉だ。
もっとも、キメナと呼べるのは俺と『あいつ』の二人しかいないだろうがな…。

ドッペル 「さぁて、それじゃみんなよろしく!」

セル 「!」

周りを囲んでいたセルたちは一斉に俺たちに襲い掛かる。

シャドウ 「ふん!」

俺は聖緑を横に一振りする。
すると、セルたちは20体ほど跡形もなく消滅する。

ドッペル 「!」

シャドウ 「あと、300体といった所か、10秒で十分だ」

俺は聖緑自身が持つ『破壊の波動』を凝縮し、アオギリ、イズミを巻き込まないようにしてサークル上に力を放つ。

ドォォン!!

目には見えない衝撃波が走り、海底洞窟全体が大きく揺れる。
崩れなければ問題ないだろう…?

シャドウ 「10秒もかからなかったな…」

周りにいたセルは全滅した。
あとはドッペルを残すのみ。

ドッペル 「そんな…これほどの力が…」

シャドウ 「終わりだ、のこのこ天敵の前に姿を現したこと後悔するんだな」

ドッペル 「くっ! アサシン!」

シャドウ 「!」

キィン!!

突然、後ろから刃襲い掛かる。
俺は振り向き、それを受け止める。

アサシン 「さすがだな…あの一瞬で気付いたとはな…」

シャドウ 「…まさか一度に2体ものザンジークが動くとはな…」

気配を遂にさっきまで隠していたザンジークはアサシン…。
その名の通り暗殺を基本とし、隠密行動を得意とするザンジーク。
その姿は忍者のような出で立ちで、赤い目だけを露出していた。

ドッペル 「ふっふふ…これで形勢逆転かな?」

シャドウ 「2体で止められると?」

アサシン 「お前は無理でも、人間は全滅できる…」

シャドウ 「……」

ドッペル 「どうする? 人間を見殺す?」

アオギリたちを見捨てればたしかにここで2体もザンジークを消滅できるだろう。
しかし、それでは意味がない…。
あの時と…一緒だ。

シャドウ 「く…」

ドッペル 「あはは! やっぱり無理だね! 非情になりきれないなんてとんだ欠陥品だね君は!」

アサシン 「悪いが…死んでもらう!」

シャドウ 「ちぃ!」

再びアサシンの刃が俺を襲う。
避けなければ死ぬ、しかし、避ければ…!

? 「『ラスターパージ』!」

アサシン 「!?」

ドォン!!

シャドウ 「なにっ!?」

突然、アサシンにレーザーのような攻撃が直撃する。
『ラスターパージ』…まさか!?

? 「大丈夫ですか? シャドウさん…」

シャドウ 「今度こそお前か?『ラティオス』…」

そこに現れたのは一人の少年の『振り』をしたポケモンだった。

ラティオス 「ひとりじゃ苦労しているみたいですね、シャドウさん」

シャドウ 「…どうやら本物らしいな」

そのポケモンはラティオス、光の湾曲によってその姿は現実ではありえない姿になっている。
今のラティオスの姿は青い髪の毛が似合う、中学生くらいの容貌の少年だった。
服装は、白いシャツにジャンパーを着て、下はジーンズだった。
しかし、それも夢幻でしかないが…。

ラティオス 「俺だってシャドウさんの仲間だ、人間が邪魔なら俺が守りますよ、さっさと消滅させてください」

シャドウ 「…感謝する」

ラティオス 「らしくないね…まぁ、いいや」

俺はラティオスの援護をありがたく受けることにする。
悪いがザンジーク、やはりどうやってもお前達は消滅するしかない。

アサシン 「はぁ!」

シャドウ 「遅い!」

アサシンは音速に届かんばかりの斬撃を繰りだす。
しかし、音速じゃ…俺には勝てない!

ザシュウ!

アサシン 「ぐぅ!?」

俺はアサシンの腹部を斬る。
とっさに後ろに下がったためアサシンの皮一枚を斬ったに過ぎない。

シャドウ 「はぁ!」

アサシン 「ちぃ!」

ブォン!

俺はトドメの一撃を繰り出すが、アサシンは煙を上げて一気に10メートルほど離れた。

アサシン 「…失敗だ、俺たち奴は倒せん…」

ドッペル 「そんな…まだ終わりなわけ」

? 「いや、終わりだ…」

シャドウ 「!?」

突然、戦慄が俺に走る。
3体目が…きた…。

ラティオス 「あれはまさか…ビショップ!?」

ビショップ 「終わりだ、帰るぞ」

ドッペル 「そんな! 俺はまだ負けてはいない!」

ビショップ 「二度は言わん…帰るぞ」

ドッペル 「う、わ、わかったよ…」

ビショップはドッペルを威圧する、それにドッペルはたじろいた。
ビショップの力は格別だ、ドッペルがいうこと聞かなければその場で消滅させていただろう。

ビショップ 「今はお前と戯れあう気はない…去らせてもらう」

シャドウ 「ただ、逃がすと思うのか?」

ビショップ 「お前には無理だ」

シャドウ 「…!」

俺は一気にビショップに接近する。
その間0.02秒かかっていない。
俺はそのままスピードに任せてビショップに切りかかる。

ブォン!

シャドウ 「幻影!? いや、残像か!?」

しかし、目の前にはビショップの姿がありながらビショップに当ることはない。
やつは残像を作るほどの超スピードでその場から姿を消したのだ。

ビショップ 『シャドウ…お前とはいつか嫌でも決着をつけねばならない!』
ビショップ 『その時が来るまで俺はお前とやりあう気はない! さらばだ!』

ビショップの声が海底洞窟に響き渡る。
それと同時にザンジークの気配は消えた。

ラティオス 「シャドウさん…」

アオギリ 「シャドウ…」

俺はフォルムを消すと三人を見る。

シャドウ 「全員無事だな…」

ラティオス 「俺は当然だけどね」

アオギリ 「…止めておこう、お前へに余計な詮索は無用だろう…」

シャドウ 「……」

アオギリは何を理解したかはわからないがそう言った。
俺にとってはありがたい。
人間には話せることは少ない。

アオギリ 「イズミ」

イズミ 「は、はっ!」

アオギリ 「これより再びカイオーガ捜索を始める! すぐに動きだせ!」
アオギリ 「動揺している者がいれば落ち着かせろ!」

イズミ 「ははっ!」

イズミは急いで走り出す。

ラティオス 「シャドウさん…俺はあんたに聞きたいことはいくらでもある」

シャドウ 「…だろうな」

ラティオスの顔は決して穏やかではない。
むしろ、余計なことをいえば間髪いれずに『ラスターパージ』を放たれるだろう。
そんな雰囲気だった。

ラティオス 「なんであんたがカイオーガの復活に手を貸してるんだ? ああん?」

シャドウ 「……」

ラティオスが怒るわけだ…。
カイオーガはかつての敵…それを封印しといて目覚めさせようとしているんだ。
怒って当然だろう。

俺はラティオスを宥めるのに30分以上もかかるのだった…。

シャドウ (ユウキ…来てみろ!)




ポケットモンスター第52話 『Shadow and Zanjiku』 完






今回のレポート


移動


ルネシティ→キナギタウン→127番水道


2月3日(ポケモンリーグ開催まであと26日)


現在パーティ


サーナイト

ボスゴドラ

コータス

チルタリス

ユレイドル

サメハダー


見つけたポケモン 54匹






おまけ



その52 「対決! リュウトVSアダン(前編)」




『1月20日 ルネシティ』


リュウト 「今日こそ開いているだろうな…」

俺の名はリュウト、現在ホウエンリーグ出場を目指して旅を続けている。
そして、俺は7つ目のジムにルネへ来ていた。
しかし、ルネのジムはジムリーダーミクリの関係で行われていなかった。
そんなある日のこと。

ガチャ。

リュウト 「開いた?」

俺はルネジムの前に立って、ドアに手をかけると、ドアノブは回り、ドアは開いた。

? 「おや、お客さんですか?」

リュウト 「…ジム戦にきたんですが…」

中に入ると髭を生やした40位のダンディーな男がいた。
誰だ?

? 「おお、そうですか、私アダンと申します」
アダン 「今はここでジムリーダーの代理を務めています」

リュウト 「アダン?」

聞いた事のない名前だ。
それよりジムリーダー代行?

リュウト 「ジム戦はできるんですか?」

アダン 「ええ、私が代わりを務めさせてもらいます」

…紳士だ。
紳士口調だ。

リュウト 「ジム戦を申し込みます…」

アダン 「いいでしょう! それではトレーナーサイドに!」

リュウト 「……」

俺はトレーナーサイドに立つ。
バトルフィールドは水の地形で、下に大きな水槽がある。
海面にはくつか浮き島があり、陸上のポケモンでもなんとか戦えそうだ。

審判 「それではこれよりルネジム、ジム戦を行います」

リュウト 「…彼は?」

審判サイドにはどう見ても執事といった感じの初老の男が立っていた。
口調もやんわりしてた。

アダン 「私の執事ですが、ご安心ください」
アダン 「彼はポケモンバトル審査員1級の資格を持っています」

リュウト 「……」

執事か…。
まぁ、いい。

審判 「使用ポケモンは3体」
審判 「道具の使用はなしです」
審判 「ポケモンの交換は挑戦者のみ有効」
審判 「先制はジムリーダー」
審判 「挑戦者、質問はありますか?」

リュウト 「いいえ、大丈夫です」


審判 「それではこれより、ルネジム 第699戦 ジム戦を開始します」

アダン 「ボーイ、君の名前は?」

リュウト 「リュウトです…」

アダン 「オーケー、リュウト君始めよう! 華麗なる戦いを!」
アダン 「いけ! ラブカス!」

ラブカス 「ラヴィ〜♪」

リュウト 「ラブカスか…だったら! いけ! コモルー!」

コモルー 「コモー!」

俺はコモルーを出す。
水相手に有効な技があるわけではないがドラゴンタイプは水相手に有利だ。

リュウト 「コモルー! 『りゅうのいぶき』!」

コモルー 「コモ!」

アダン 「ラブカス、潜水したまえ」

ラブカス 「ラブカ〜♪」

ボチャン!

リュウト 「!」

ラブカスは水中に潜り、コモルーの攻撃を回避する。
これではコモルーは手をだせない。
ち、相性は良くてもフィールドに適さないか…。

アダン 「『あまごい』です! ラブカス!」

カッ! ザァァァァ!!

リュウト 「ち…」

水中から青い玉が空中に飛び出すと、それは弾けてフィールドは大雨に見舞われる。
たしか、ラブカスの特性は『すいすい』、雨が降っていればスピードが増す。

リュウト 「戻れ! コモルー!」

アダン 「!」

俺はコモルーをボールに戻す。
そして、2体目のポケモンを出す。

リュウト 「いけ! キングドラ!」

キングドラ 「ド〜!」

俺はおなじ『すいすい』の特性を持つキングドラを出す。
水技でキングドラを倒すことはほぼ不可能だ!

アダン 「判断はいい! しかし、詰めが甘い! ラブカス、『メロメロ』!」

リュウト 「しまった!?」

ラブカス 「ラブ〜ブ〜♪」

キングドラ 「ドラ!? ドラ〜♪」

ポケモンの交換際は無防備になってしまう。
『攻撃技』なら大丈夫だったが、向こうはこちらを詰める気だ。
これでキングドラはラブカスをまともに攻撃できない!?

アダン 「『てんしのキッス』!」

ラブカス 「ラ〜ッブ!」

キングドラ 「キンキ!? ンン〜??」

キングドラはラブカスにキスされ、混乱状態になってしまう。
メロメロ状態に混乱状態か!?

リュウト 「くっ! キングドラ! 『りゅうのいぶき』!」

キングドラ 「キ〜キ〜??」

キングドラはわけもわからず、暴れる。
やはり駄目か!?

アダン 「『たきのぼり』です!」

ラブカス 「ラブブー!!」

バッシャアアアアー!!

ラブカスはキングドラに下から体当たりし、水と共にキングドラを4メートルほど浮かび上がらせる。

アダン 「さぁ、ラブカス! 彼に見せてあげましょう! 私たちの水のイリュージョンを!」

ラブカス 「ラブ〜!」

リュウト 「キングドラ!?」

アダン 「『なみのり』!」

ラブカス 「ラー!」

空中に浮いたままラブカスは『たきのぼり』で浮かばせた水でキングドラを攻撃する。
しかも、かなり高速にキングドラの周りを『泳ぎ回り』、キングドラを全方位から攻撃した。

リュウト (不必要に滝登りで水を巻き上げ、それを利用して空中に水中空間を作る、それによって更に強力な『なみのり』で追撃する…)
リュウト (雨も降って威力も上がっている、複線がかった見事な技だな…)

バシャアーーン!

キングドラ 「キン〜…」

審判 「キングドラ、戦闘不能!」

リュウト 「キングドラ…もどれ」

俺はキングドラをボールに戻す。
…何も出来なかった。
見事というほかなにもない。
アダンさんは強い…それによくポケモンの力を理解している。
力に勝るキングドラが負けたのは俺の理解不足のせいか。

リュウト 「いけ! コモルー!」

コモルー 「コモ!」

俺は再びコモルーを出す。

アダン 「さて、どうしましょうかね」

リュウト 「……」

冷静になれ、俺…。
先に手を出してコモルーにラブカスを倒す術はない。
ポケモンの力を理解しろ…コモルーの力を信じろ…。
活路を見出せ…俺!

アダン 「いいでしょう! ラブカス! 『てんしのキッス』!」

リュウト 「コモルー『まもる』!」

コモルー 「コモ!」

ラブカス 「ラブ!?」

コモルーは『まもる』でラブカスの攻撃を防ぐ。

アダン 「かかりましたね! ラブカス、『れいとうビーム』!」

リュウト 「かかったのはあんただ! コモルー! 『ずつき』!」

コモルー 「コモモーッ!」

コモルーはこんなフィールドで素早く動くラブカスを捕えることも、そしてその攻撃を回避することもできはしない。
しかし、タイプ不一致の『れいとうビーム』を耐えるくらいの防御力は持っている!
そして、『てんしのキッス』で近づいた瞬間がチャンスだった。
コモルーは『れいとうビーム』の発射で無防備になった、しかも距離は近い。
コモルーはそのままラブカスを空高く放り上げた。

アダン 「!? ラブカス!?」

リュウト 「トドメだ! コモルー、『つばめがえし』!」

コモルー 「コモッ!」

ラブカス 「ラブーッ!?」

ドカァ!!

コモルーは落ちてきたラブカスを『つばめがえし』で攻撃する。

ラブカス 「ラ〜ブ、カ〜ス〜…」

審判 「ラブカス! 戦闘不能!」

アダン 「素晴しい…早くもバトルの中で成長したようですね…」
アダン 「私の2匹目はこの子です! いきなさい『トドクラー』!」

トドクラー 「トド!」

リュウト 「トドクラーか」

今度は氷タイプ…コモルーでは相性が悪い。
だが、やらなければならない。
俺のパーティは氷に弱い…コモルー、頼むぞ!


…To be continued




おまけその52 「対決! リュウトVSアダン(前編)」 完



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