ポケットモンスター サファイア編
Menu
Back Next
ルビーにBack ルビーにNext
第56話 『開戦! ルネジム!』
『2月10日 午前9時17分 ルネシティ』
エアームド 「エアー!」
ユウキ 「ふぅ…ようやく帰ってこれたか」
時に2月10日…ポケモンリーグ開催まであと19日となった今日の朝。
俺はダイゴさんのエアームドでなんとかこのルネシティに帰ってきた。
今日はルネジムでジム戦をする予定だ。
8つ目のジム…ルネジム。
ユウキ (これで…最後のジム巡りか)
思い起こせば長い道のりだったが、いよいよオーラスだ。
時間も3週間ないわけで、サイユウシティに向かう時間含めるとまじでオーラスだ。
無事、ジム戦に勝てれば後はサイユウシティに向かうのみ。
ユウキ 「とりあえず、ポケモンセンターの前に下りてくれ、エアームド」
エアームド 「エアー!」
エアームドはそのままポケモンセンターの側に降り立つ。
降り立つと丁度そこにはある人物がいた。
ダイゴ 「ユウキ君、お帰り!」
ユウキ 「あ、ダイゴさん」
ダイゴさんだ。
ダイゴさんは俺を待っていたかのようにポケモンセンターの前に立っていたのだ。
ユウキ 「ダイゴさん、エアームドありがとうございました」
ダイゴ 「別に構わないよ、ご苦労様エアームド」
エアームド 「エアー♪」
ダイゴさんはそう言うとエアームドのボールを取りだし、エアームドをモンスターボールに戻した。
ユウキ 「さてと、俺のポケモンたちはポケモンセンターにいるんですよね?」
ダイゴ 「え? ああ、いる…いるけど…」
ユウキ 「? どうしたんですか?」
ダイゴさんはどうにも歯切れの悪い喋り方だった。
何かあったのだろうか?
ダイゴ 「その…今はポケモンセンターに入らない方がいいと思うよ?」
ユウキ 「? 何故ですか?」
何故ポケモンセンターに入ってはいけないのだろうか?
中に入らないことにはラグたちを迎えにいけないじゃないか…。
ダイゴ 「その…なんというか…」
ユウキ 「????」
ダイゴさんは困ったように頭を掻いた。
俺にはさっぱりわからない。
ただ、わからないなりに気がついたら…シャッターの前に立ってしまう。
すると、当然自動ドアなのでポケモンセンターのシャッターが開く。
すると…。
ダイゴ 「あっ!」
ユウキ 「え…? て、な…!?」
パシャ! パシャパシャ!
突然、眩い閃光。
シャッターを切る音と光からカメラのフラッシュであることが推測される。
問題は何故…?
俺は冷静にポケモンセンターの中を見る。
ユウキ (報道陣!?)
何と、ポケモンセンターの中にはカメラを構えた報道陣が待っていた。
なに!? なんでどうして!?
サーナイト 「あ、マスタ〜…」(泣)
チルタリス 「おっ、おかえりっす、マスター♪」
ポケモンセンターの奥に人だかりに囲まれて小さくなっている俺のポケモンたちがいる。
一体全体どうなっているんだ!?
女性アナウンサー 「さぁ、ついにあのカイオーガを撃退した少年が現れました!」
女性アナウンサー 「早速インタビューをしてみたいと思います!」
ユウキ 「へっ!?」
わけがわからないうちに俺は報道陣に囲まれてしまう。
そしてそのままわけのわからんまま質問攻めに合うのだった。
女性アナウンサーA 「カイオーガをゲットした時の気分は!?」
男性アナウンサーA 「一体今までどちらへ!?」
女性アナウンサーB 「これからジム戦ですか!?」
ユウキ 「あ、え? え、えと…!?」
すごくかったるい…。
質問攻めもうざい…。
俺は聖徳太子じゃないんだぞ…一度に何人もの質問に答えられるか。
ダイゴ 「(ユウキ君! こっちこっち!)」
ユウキ(! ダイゴさん!)
ダイゴさんが小声で俺を呼んでいる。
俺は慌ててポケモンセンターから逃げだした。
ダイゴ 「ユウキ君! こっちこっち!」
ダイゴさんは走って俺を手招きする。
俺は急いでダイゴさんを追った。
やがてダイゴさんは路地裏に入ったところで足を止める。
ダイゴ 「ここまでくれば多分大丈夫」
ユウキ 「一体、どうなっているんですか…?」
俺は報道陣を撒くとダイゴさんに事態の説明を願った。
正直このかったるい状況説明していただきたい。
ダイゴ 「ユウキ君、今、君より有名な人物はこのホウエン地方にはいないよ」
ユウキ 「…は?」
なぜ?
俺ってばいつから有名人に?
しかし、次のダイゴさんの言葉で俺は納得せざるを得なくなる。
ダイゴ 「君はカイオーガをゲットし、ホウエンの危機を救ったんだよ?」
ダイゴ 「伝説中の伝説、神話の中の存在であったカイオーガをゲットまでしたんだ…ああもなるよ…」
ユウキ 「……」
そういえば、ゲットした当日もホウエンを救ったとかで英雄扱いされたな…。
あの時はルネという限られた空間だけの出来事だったからさして気にしなかったが、よくよく考えれば凄い偉業を成したんだよな…。
こうなるのは必然なのか…?
ダイゴ 「ともかく、しばらく熱は冷めないだろうね」
ユウキ 「かったる…これじゃジム戦もかったるそうだ」
ダイゴ 「ジム戦か…すぐ行くんだよね?」
ユウキ 「ええ、そのつもりですけど」
ダイゴ 「うん、ミクリもいつでも準備オーケーだからすぐ行くといい」
ダイゴ 「ポケモンはポケモンセンターの裏口から入って回収しよう」
ユウキ 「わかりました」
そうして、俺たちはポケモンセンターの裏口から中に入るのだった。
幸い報道カメラマンも裏口にはいなかったのですんなり入れた。
…………。
ダイゴ 「ルネジムは水タイプのジム、使用ポケモンは5匹」
ダイゴ 「パーティはよく考えた方がいいよ」
ユウキ 「5体戦か…」
かなり多いな…。
ナギさんの時でも4体戦だった。
今回は5体戦。
これはそうとう辛い戦いになりそうだ。
ダイゴ 「僕は一旦ジムの方に行っているよ、場所はわかる?」
ユウキ 「ええ、一応前に行った事あるんで」
もっともその時は開いてなかったが。
そういえばリュウトさん、無事ジム戦できたのかな?
ダイゴ 「それじゃ、ジム前で待ってるよ」
ユウキ 「あ、はい」
ダイゴさんはそう言うとポケモンセンターを出て行った。
俺はこっそりロビーのお姉さんに近づいた。
お姉さん 「あら、よく無事帰ってこれましたね」
ユウキ 「ええ、なんとか…」
お姉さん 「ポケモンならいつでも準備オーケーですよ、ジム戦ですよね?」
ユウキ 「はい」
俺はいまだ囲まれているポケモンたちを見る。
サーナイト、ボスゴドラは困り果てて、ラグラージはかったるそうにしていた。
コータスはやや戸惑い、ユレイドルはいつも通りだ。
チルタリスだけは状況を楽しんでやがる…。
あいつ、超大物だな…。
お姉さん 「皆さん、ユウキさんがジム戦を行わないといけないのでポケモンたちを解放してあげてください!」
お姉さんはロビーから大声でそう言った。
それを聞いた老若男女の街の住民たちは素直にその場を離れる。
俺に関わってこなかったのは救いだ。
俺はそのままポケモンたちに近づいた。
ユウキ 「ただいま、お前ら」
ラグラージ 「ラグ…」
コータス 「こ〜♪」
チルタリス 「おかえりっす、マスター」
ユウキ 「色々大変だったようだが、すまないな」
サーナイト 「もう、大変でしたよ…」
ボスゴドラ 「たく…あたしたちは見世物じゃないっての」
ユウキ 「まぁ、もう大丈夫だからよ、戻れお前ら」
俺はそう言うとラグから順にポケモンをボールに戻す。
ユウキ 「さてっと…5体戦か…メンバー考えた方がいいかもな」
ミクリさんは水タイプを使うらしい。
とするとボスゴドラとコータスは凄まじく相性がきつい。
ユレイドルは岩もあるが草もある。
水中でも戦えるから必要だな。
なんせ水ジムだ、水中戦も想定される。
たとえ相性がよくても水中で戦えないポケモンが水中に引きずりこまれたら、それは敗北を意味する。
ユウキ (相性だけじゃなく…状況に対応できるポケモンを選ばないとな…)
と、するとパーティは水も持ち、泳げるラグラージ。
空を飛び、水に耐性のあるチルタリス。
場所を比較的に苦にしないサーナイト。
草技を持ち、水中でも戦えるユレイドル。
まずこの4匹がジム戦確定か。
最後の1匹…。
ユウキ 「まぁ、順当ならサメハダーか」
水中戦でこそ真価を発揮する魚類系ポケモン。
相性は悪でもあるのでそう気にしなくてもいいだろう。
一応あと一匹の予備枠があるし、キノガッサもいれとくか?
キノガッサは最近やっと怪我が完治し、リハビリも完了したと報告に受けている。
グラエナ、オオスバメはそんなにでかい怪我でなかったから割と早くから治っていたんだが。
なお、テッカニンはどういうわけか、ヌケニンになったらしい。
なにがあったんだ…?
ユウキ 「…とりあえず、パーティ整理するか」
俺はそう思うとどのポケモンセンターにも備え付けてあるパソコンに近寄る。
とりあえず、コータスとボスゴドラを外してっと、そんでサメハダーとキノガッサを受け取るっと。
ヒュゥゥン。
パソコンの脇にある転送装置にモンスターボールを置くと、ボールは自動的に転送される。
ひとつずつしか転送できないのが少し面倒だ。
しかし、程なくしてそれも終わり、俺のジム戦の用意ができた。
ユウキ 「それじゃ、行きますか!」
俺は新たに6つのモンスターボールをボールラックに納め、それをベルトにつけ、ジムを目指す。
俺の8つめのジム…ルネジムへ!
…………。
ダイゴ 「…おっと、来たねユウキ君」
ユウキ 「ダイゴさん」
俺はジム前に行くとダイゴさんが扉の前に立っていた。
ジムの前は意外と人が少ない。
まぁ、そっちの方がやりやすいが。
ダイゴ 「正直君の成長には僕もちょっと驚いているよ」
ダイゴ 「でも、ポケモントレーナーにとってはここからが正念場…ユウキ君、彼は、ミクリは強いよ」
ユウキ 「…そうでしょうね」
ダイゴ 「トレーナーという意味ではトウカシティのセンリさんの方が強いかもしれない」
ダイゴ 「しかし、ジムリーダーとしてはミクリは最強だ」
ダイゴ 「限定条件下での戦いにおいて、彼…そしてその師アダンの実力は全国的に見ても類をみない」
ユウキ 「……」
少なからずヒヤッとすること言うなこの人…。
つまり、そんだけやばい相手だと…。
ダイゴ 「ははは、大丈夫、君なら勝てるよ!」
ダイゴ 「たしかにミクリは強いけど、無敵じゃない!」
ダイゴ 「ジムリーダーは勝つための存在じゃない…導くための存在だから…ね」
ユウキ 「…まぁ、とりあえずジム戦してきます」
なんだか、少しかったるくなった。
気のせいかな…やる気も半減した気が。
ダイゴ 「今日は僕も観戦させてもらうから頑張ってね!」
観戦って…ダイゴさんが?
まぁ…いいか、一人くらい。
ダイゴさんなら特に気にならないだろうし。
ユウキ (ポケモンチャンピオン『ダイゴ』…未だ虚偽なのか真実なのかは掴めていない)
ユウキ (本当にあの漂々とした人がポケモンチャンピオンなのか?)
ユウキ (だとしたら、あの人の強さは…)
そうこう考えているうちに俺はジムの自動ドアの前に立ち、扉は開く。
すると…。
ワァァァァァァァァァッ!!
ユウキ 「…かったる」
どうやら、俺にシリアスになる局面は与えられないらしい。
ジムに入るやいなやいきなり大歓声。
コンサート会場にでも間違えて入った気分だったがここは間違いなくジムだ。
通常よりも大きく見えるフィールドは砂浜と海岸のフィールドだった。
ジムリーダー側が海岸、こっち側が砂浜。
そして、非常にかったるいが、ジム上部の観客席には観客が席を埋め尽くし、中には立ち見するやつまでいる。
おいおい…テレビ局のカメラまで動いているよ…。
そして、ジムリーダーは…?
ミクリ 「よくきましたね、ユウキ君」
ユウキ 「うひゃら!? ミクリさん!?」
突然、目の前にミクリさんが立っていた。
周りにあっけに取られて正面に立っていたミクリさんに気づかなかったか。
ユウキ 「す、すごい観衆ですね…」
ミクリ 「すまない…普段はそうでもないのだけど、今日はどうも注目のカードらしくこの有様なんだ」
ミクリ 「まぁ、私も最近は儀式のせいでしばらくジム戦が出来なかったし、それも要因のひとつだろう」
ユウキ 「は、はぁ…」
なんか、ダイゴさんに似てないようで似ている気がするな。
すごく違和感を感じないのはなぜだろうか?
ミクリ 「ジム戦のことはダイゴから聞いていると思うけど、大丈夫だね?」
ユウキ 「あ、はい」
ミクリ 「よろしい、それではジム戦を始めよう」
ミクリさんはそう言うとジムリーダーサイドに向かった。
途中、審判になにやら合図を送り、ミクリさんがジムリーダーサイドに立つと場は急に静まるのだった。
ちなみに俺はもうとっくにチャレンジャーサイドに立っている。
審判 「レディィィス! アェンド!! ジェントルメン!!!」
ユウキ (…はい?)
いきなりプロボクシングばりの始まり方をする。
なんだ…このバリバリの違和感は?
審判ったらマイクなんか持っちゃって…。
審判 「みなさん、お待たせいたしました!」
審判 「これよりルネシティ、ルネジム第1095戦を開始したいと思います!!」
審判 「使用ポケモンは5体!! 道具の使用は禁止!」
審判 「ポケモンの途中交代は挑戦者のみ有効!」
審判 「先制はジムリーダー!」
審判 「それではぁ!! チャレンジャーサイッドォ!! 挑戦者! ミシロタウンのぉぉぉユウゥッキィィ!!!」
ワァァァァァ!!
ユウキ 「あ、あはは…」
違う…このノリは何かが違う。
俺は来るところを間違えたのでは?
俺は間違えて両国国技館にでもきてしまったのか?(ホウエンにあるわけないっての!)
審判 「続きまして…ジムリーダーサイッドォ!! ジムリーダー!! ミクリィィィー!!」
ウオォォォォォォォ!!!
ユウキ 「あ、あんだ…?」
なんか、いきなり声援の桁が変わったのですけど…。
ミクリさん…人気者なんですね。
まぁ…かったるいだけなんだが。
ユウキ (はぁ…なんでこうなっちゃたんだろう)
今更ながらものすごく後悔している。
何故って?
こんな面倒なジム戦は生まれて初めてだからだ。
というか俺の記憶にはほとんどコガネシティのパパのジム戦がそのウェイトの大半を閉める。
基本的にパパはジム戦のときはほとんど人を出払う。
その性か静かな荘厳とした雰囲気がどうにも印象深い。
ここは…異質だ。
ミクリ (さて、彼の戦いは以前のカイオーガ戦で見せてもらった…)
ミクリ (彼のポケモンは十分強い…あとはトレーナーとしての実力を見せてもらおうか)
ミクリ 「いけ! ラブカス!」
解説 「さぁ、ついに始まりましたジム戦! ジムリーダー最初にだしたのはラブカスだーっ!」
ユウキ (ラブカスか…フィールドには地面…てか砂浜のエリアもあるしな…だったら!)
ユウキ 「いけ!」 ユレイドル!」
ユレイドル 「…ユ」
解説 「対する挑戦者、だしたのは草と岩を持つ、ユレイドルだ!」
どこにいるのかわからないが解説が非常にうざい。
正直耳障りだ。
しかし、ジム戦はジム戦、気にせずやるしかないか…。
ユウキ 「ユレイドル、まずは相手の動きをみるぞ」
ユレイドル 「……」
ユレイドルはコクリとうなずくこともなく無言で相手を見る。
ミクリ 「さて、今日はお見合いをしにきたわけじゃない、こっちから攻めさせてもらいましょうか!」
ミクリ 「ラブカス! 『みずのはどう』!」
ラブカス 「ラブーブーッ!」
ラブカスはその小さな口からリップルレーザーのようにユレイドルに放つ。
当たるとちと厄介だな。
ユウキ (普通に回避ってんなら間違いなく詰むだろう…だったら!)
ユウキ 「ユレイドル! 地面に『げんしのちから』!」
ユレイドル 「…ユ!」
ズパァン!!
解説 『おーと! ユレイドル、その大きな頭で地面を叩いた!!』
解説 『砂埃が舞い上がる! 視界が覆われたぞ!?』
ミクリ 「!? これは…!」
ユレイドルは俺の指示通り地面に『げんしのちから』を放つ。
すると、地面の砂はその衝撃で舞い上がり、周囲一体を砂埃で覆った。
そして、2秒ほど遅れてリップル状に広がった『みずのはどう』が砂埃を払い突入した。
ズパァン!!
解説 『みずのはどうが直撃! 砂煙の中は一体どうなって…あ!!』
ミクリ 「!?」
ユウキ 「ふ…」
解説 『な、なんとユレイドルの姿がない!? 一体何処に消えたんだ!?』
ラブカスの『みずのはどう』は地面に穴を開けただけでユレイドルにダメージを与えてはいない。
それどころかユレイドルはフィールドから姿を消したのだった。
それにはさすがにミクリさんも驚いている。
誰にもわからない、元々気配なんてないに等しいくらい存在感のない奴だからな。
だが、俺にはわかる。
あいつが…どこにいるのかが!
ミクリ (馬鹿な…このフィールドに姿を隠す場所などあるはずがない…)
ミクリ (どこだ…どこに隠れている?)
ラブカス 「ラブ? ラブ〜!?」
ザッパァン!!
突然、水面近くにいたラブカスが水中に引きずり込まれる。
ミクリ 「!? まさか水中に!?」
ユウキ 「岩タイプだからって水中にいないとは限らないぜ!」
ミクリ (クッ! たしかにジーランスのように水中に生息する岩タイプもいるが、あれは水タイプも持っている…!)
ミクリ (ユレイドルのようなポケモンがこうも完璧に水中に潜むとは思いもよらなかった!)
ユウキ 「ユレイドル! 『げんしのちから』!」
ユレイドル 「…!」
ズッパァン!!
ラブカスは空高くユレイドルに跳ね上げられる。
ミクリ 「く! ラブカス『ちょうおんぱ』!」
ユウキ 「遅い! 『あやしいひかり』だ!」
ラブカス 「ラーブ!」
ユレイドル 「……!」
ラブカスの口から『ちょうおんぱ』がユレイドルに放たれる。
それと同時にラブカスの体は黒い光に包まれた。
解説 『おーっと! 両者の技が交錯! そしてラブカス慣性の法則で水中に落ちたー!』
ユウキ (さってと、『ちょうおんぱ』に当たっちまったかな?)
当たっちまったらちょっと厄介だ。
『あやしいひかり』と違って『ちょうおんぱ』は命中率が安定しない。
とはいっても同時攻撃だ、こちらからの回避は出来たとも思えない。
さぁ、乗っているか!? それとも反っているのか!?
ユレイドル 「ユ…!」
ザッパァン!!
突然、ユレイドルが水面から躍り出て、海岸の陸地に陣取る。
一方ラブカスは…。
ラブカス 「ラブ〜…」
ラブカスは目を回して水面に浮かび上がった。
1Winだな。
審判 「ラブカス戦闘不能!」
解説 『おーっと、まずは挑戦者のユレイドル、ラブカスを下したぞ!!』
解説 『対するジムリーダー、次に出すのは!?』
ミクリ 「よくやった、ラブカス戻れ…」
ミクリ (予想以上に強いな…ポケモン単体のポテンシャルが違いすぎる…)
ミクリ (すでにポケモン自体の強さならダイゴのポケモン並だな…だが、やりがいはある)
ミクリ 「頼むぞ! トドクラー!」
トドクラー 「トドー!!」
解説 「おーと! ジムリーダー次に出したのはトドクラーだ!」
ポケモン図鑑 『トドクラー:玉回しポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.1m 重さ:87.6Kg タイプ:水 氷』
ポケモン図鑑 『しょっちゅう鼻でなにかを回している』
ポケモン図鑑 『回しながら臭いや感触を確かめて好きな物と嫌いな物を別けるのだ』
ユウキ (草は水に強く、氷は草に強い、岩は氷に強し…か、やれやれだな)
互いに効果抜群を狙えると言うのはなんとも恐ろしい。
このまま押し切りたいが、一物の不安もある。
そろそろユレイドルもブレーキがかかりかねない。
どうするか…?
ミクリ 「トドクラー! 『オーロラビーム』!」
ユウキ 「考えている暇はないか! ユレイドル近づいて『ギガドレイン』!」
トドクラー 「トド!」
ユレイドル 「ユ…!」
ユレイドルはトドクラーの攻撃を紙一重で回避しながら接近を試みる。
トドクラーは海面からユレイドルを攻撃し続けるのだった。
ミクリ 「トドクラー! やや下に『れいとうビーム』!」
トドクラー 「トッ!? トドー!」
キィン!
ユレイドル 「!?」
ユウキ 「む!」
解説 『おーと! トドクラーのれいとうビームユレイドルの目の前の地面を凍りつかせたぞ!?』
ミクリさんの指示でユレイドルの前方の地面が凍ってしまう。
ユレイドルはそれほど小回りの効いた動きが出来るわけではない。
そのままモロにスリップしてしまう。
ユレイドル 「!!?!?」
スッテーン!!
ユレイドルはそのまま仰向けに倒れてしまった。
まさか、あの体でこけるとはな…。
ミクリ 「トドクラー! 『のしかかり』!」
トドクラー 「トド!」
ユレイドル 「!?」
解説 『トドクラー、飛び上がったーっ! そしてそのままユレイドルの下に急降下ーっ!!』
ユウキ 「ユレイドル!?」
ユレイドル 「ユゥッ!?」
ズズーン!!
ユレイドルは成す術なくトドクラーの下敷きになってしまう。
ユウキ 「くっ! ユレイドル、『げんしのちから』!」
ミクリ 「トドクラー、そのまま『れいとうビーム』!」
ユレイドル 「ユ…!」
トドクラー 「トドー…!」
両者同時に力を溜める。
互い効果は抜群。
どうなる!?
ユレイドル 「ユ…!?」
ユウキ 「!?」
突然、ユレイドルの動きが止まる。
トドクラーへ攻撃しようとした瞬間ユレイドルは止まってしまったのだ。
そして、ほんの瞬き程の間に『れいとうビーム』の準備も完了し、トドクラーの口から放たれる。
トドクラー 「トドー!!」
キィン!!
ユウキ (ち…予想以上に活動できる時間が短くなってきたな…)
実のところさっきのれいとうビームでユレイドルはダメージはない。
ユレイドルは今は『死んでいる』のだから。
段々日を増して死んでいる時間が長くなっている気がする。
そして、ジム戦にまでその姿を現した…か。
審判 「ユレイドル戦闘不能!」
当然、ピクリとも動かないユレイドルを見て審判はダウンを宣言する。
ユウキ (さて、どうしたものか…トドクラー相手にチルタリスは危険すぎるし、実のところラグも水は普通に受けてしまう)
ユウキ (と、すると普通ならサーナイトかサメハダーか)
サメハダーは悪技で戦えるからあまり気にしなくてもいい。
サーナイトは必殺の『10まんボルト』がある。
ユウキ 「よし、いけ! サーナイト!」
サーナイト 「……」
俺はサーナイトを繰り出す。
ここはサーナイトで早期に敵を蹴散らして、強引に押そう。
ミクリ 「トドクラー! 『みずのはどう』」
トドクラー 「トドッ!」
ユウキ 「サーナイト、かわして『サイコキネシス』!」
サーナイト 「はぁっ!」
サーナイトはサイドステップで『みずのはどう』の対放射線状から出ると同時にサイコキネシスをトドクラーに放つ。
ミクリ 「トドクラー! 『ダイビング』!」
トドクラー 「ドックラ!」
トドクラーはすぐさま水中に潜り、『サイコキネシス』の呪縛から逃れる。
ユウキ (ダイビングか、賭けだな…どうするかね…?)
ダイビングは水中に潜り、奇襲攻撃を行う技。
とはいえ、水中にいる相手なら『10まんボルト』で攻撃するのも手だ。
しかし、ここは安全にいきたい。
だったら、多少リスクもあるが…!
ユウキ 「サーナイト、海面の側で構え!」
サーナイト 「はい!」
俺はあえてトドクラーの射程県内に入らせる。
こい、これならやることはひとつだろう…!
バッシャァン!!
トドクラー 「トドー!!」
トドクラーはサーナイトの真正面から姿を現し、サーナイトを強襲する。
しかし、そこは待っていましたと言わんばかり。
ユウキ 「サーナイト! 『かみなりパンチ』!」
サーナイト 「てぇいやぁっ!!」
バキィ! バチチン!!
解説 「おーっと!? サーナイトカウンターでトドクラーの顔面を殴りつけたーっ!!」
ミクリ 「トドクラー!?」
ユウキ 「おっし! トドメの『10まんボルト』!!」
サーナイト 「はぁっ!!」
バチィン!!
閃光が走る。
光の速さで電気はトドクラーに伝わり、かみなりパンチで怯んだトドクラーに追い討ちをかける。
さすがにこれをもろに受けてしまったトドクラーはそのまま目を回すのだった。
審判 「トドクラー、戦闘不能!」
解説 『トドクラーもダウンし、再び不利になったジムリーダー!』
解説 『しかし、勝負はこれからだーっ!!』
解説 『ジムリーダーのポケモンが2匹倒れたのでこれで前半のバトルは終わりだ!』
解説 『後半はフィールドも変え、新たなる戦いが待つぞ!?』
ユウキ (フィールドを変え…?)
どういうことだ?
フィールドを変える…?
解説 『さぁ、それじゃ次回に続く!!』
ユウキ 「考える時間ないわけね…」
ポケットモンスター第56話 『開戦! ルネジム!』 完
今回のレポート
移動
海底洞窟→128番水道→空路:ルネシティ
2月10日(ポケモンリーグ開催まであと19日)
現在パーティ
ラグラージ
サーナイト
チルタリス
ユレイドル
サメハダー
キノガッサ
見つけたポケモン 57匹
トドクラー
おまけ
その56 「雫」
あ、さてさて、今回の主人公は以前にも登場した投稿キャラクターのシズク。
シズクはすでにバッジを10つ集め、時間の迫りから、チャンピオンロードを抜け、サイユウシティにいた。
本大会優勝候補にも挙げられる天才少女シズク…彼女は今、何をしているのか?
それでは、おまけその56始まり始まり〜♪(テケンテンテンッテテン♪)
『2月10日 某時刻 サイユウシティ』
シズク 「…ここがサイユウシティ」
私はチャンピオンロードでの7日間を終え、久しぶりに日の光を浴びていた。
今回は大分余裕を持ってサイユウシティに到着できた。
日の光が暖かい。
2月から3月にはいろうとしていることもあって気温は日に日に増している。
チャンピオンロードの中はそう暑くなかったのだけど、外に出る逆に暑い。
後で麦藁帽子でも買おうかな?
シズク 「とりあえず、ポケモンセンターに行こ…」
私はそう思うと、まずポケモンセンターに向かった。
…………。
ウィィィン…。
シャッターが軽快な音を立てて、開く。
中からエアコンの涼しい空気が外に漏れた。
私は快適な場所を求めるかのようにポケモンセンターの中に入った。
お姉さん 「いらっしゃいませ、ポケモンセンターサイユウ支店にようこそ!」
シズク 「ポケモンの回復…お願いします」
私はそう言って6つのモンスターボールとトレーナーカードを預ける。
お姉さん 「シズク様ですね、少々お待ちください」
トレーナーカードとモンスターボールを受け取ると、お姉さんは慣れた手つきで機械を扱っていた。
お姉さん 「申し訳ありません、ただいま大変込み合っており回復は1時間程かかると思います」
シズク 「構いませんよ、待っています」
お姉さん 「大変申し訳ございません」
お姉さんはマニュアルだろうけどそう言って頭を下げた。
誠意はこもっている…だったら、なにも問題はないよね。
シズク 「少し、散歩してきます…」
お姉さん 「行ってらっしゃいませ」
私はボールを預けたまま、ポケモンセンターを出た。
外はやっぱり暑い…。
でも、早く慣れないと…。
私は元々あまり体力はない。
どちらかと言うと華奢で、体は弱くないけどあまり外で動くのは辛い。
? 「Excuse me」
シズク 「?」
突然、後ろから声をかけられる。
違和感無しの英語…誰…?
? 「えと〜、国際通りはどこ行けばいいでしょうか…?」
シズク 「……」
…日本語は下手みたい。
外国から来た異国人さんみたいだった。
私に国際通りの場所を聞いてきた人は私より年上の女の子だった。
中学生くらいだと思える女の子で見た目は日本人とあまり変わらない。
真っ黒な髪の毛はストレートで肩より少し下のところで纏めていた。
服装はやや女の娘ぽくはなく、薄緑色のシャツの上にジャンパーを着ており、下はジーパンを履いていた。
外国の女の子はみんなあんな格好なのかな?
見た目だけでは目も黒いので日本人と区別がつかない。
日系人だろうか…?
少女 「あの…」
シズク 「えと、国際通りは…」
…どっちにいいんだろう?
大体、私もこの街に今日来たばかりだし、何も知らない。
観光するつもりなんてなかったからガイドブックも買ってないし…どうしよう…。
シズク (そういえば、パンフがバッグの中にあった気が…)
ふと、思い出した、たしか街に入ったとき、パンフレットを貰っていた。
ひょっとしたらあれでわかるかも。
私はそう思うとバッグからさっき貰ったパンフレットを取り出す。
シズク 「えと、おおまかですいませんけど…あっちです」
私はパンフレットの地図を見て、国際通りの方角を指す。
少女 「あ、Thank you」
少女はまだ日本語に慣れていないのかところどころ英語を織りまぜる。
シズク 「あの、よかったらこのパンフレット持って行ってください」
私はそう言ってお世辞にいいとも思えないパンフレットだが少女に差し出す。
少女 「あ、えと…あ…」
シズク 「?」
少女は言葉に詰まる。
さっきからそんな調子だったけど。
少女 「In the case corner because it is not possible to read …」
シズク 「……」
しまった…難しい英語がきた…。
えと…訳すには…。
トントン。
シズク 「?」
突然肩から背中を叩かれる。
私は何かと振り向くと…。
『In the case corner because it is not possible to read 訳:折角ですけど読めないので』
シズク 「……」
目の前にホワイトボードがある。
ホワイトボードには訳が書いてあった。
あの言葉を聞いて一瞬で訳したの…?
シズク (一体誰が…?)
少年 「……」(ニコニコ)
見上げると満面の笑みを浮かべる少年がいた。
この異国人さんの少女と年齢は同じくらいだろうけど、かなり身長が高い。
170あるかないかだろうか…?
ただ、この人も異国人さんのようだった…。
シズク (オッドアイ…)
その少年は髪の毛が緑色で、左目がエメラルド色、右目がルビー色だった。
どちらも日本人の目じゃない…容姿から見ても日本人離れしている。
少女 「……」
少年 「……」(ニコニコ)
シズク 「……」
どうしよう…なんだか急に止まっちゃった…。
シズク 「あ、あの…申し訳ありません、お力になれなくて…」
とりあえず私は少女の方に頭を下げた。
少女 「あ、いえ…その…I'm sorry only by here」
少年 「……」(訳:こちらこそどうもすみませんでした)
少女 「あの、あなたもホウエンリーグに出場されるのですか?」
シズク 「え、あ…はい…」
あなたも…?
ということは、この人もポケモンリーグに?
少女 「あ、私…イブといいます…よろしくお願いします」
少女はそう言うとやや発音がおかしいが日本語で名乗った。
イブ…EVEではなくIVEですね…。
シズク 「私はシズクっていいます…」
少年 「……」(ピク)
シズク 「…?」
少年が何か反応する。
どうしたんだろう?
シズク 「そういえば…あなたは…?」
私は少年に振る。
そういえばこの親切なお兄さんは何者なんだろう…?
少年 「……」(キュキュ)
少年はせっせかとホワイトボードにまた何か書き始める。
そういえば、さっきから一言も声を出さないけど、喋れないのかな…?
少年 「……」(アルタ)
シズク 「アルタさんですか…」
イブ 「あの…アルタさんも…ホウエンリーグに参加されるんですか…?」
アルタ 「……」(コクリ)
…ということは、ここにいる全員ライバルでもあるということ。
イブ 「あの、よかったらここであったが御用、一緒に行きませんか…」
シズク 「……」
シズク 「…わかりました」
一瞬、突っ込みを入れるべきか悩んだ。
御用ではなくご縁というのが正しいんだけど…。
しかし、私はとりあえず黙認しておく。
シズク 「…アルタさんもどうぞ」
アルタ 「……」(コクリ)
なんだか、よくわからないけど、私はいきなり不思議な二人と友達になるのだった。
これからこんな人たちとも戦わないといけないのかな…?
私…勝てるかな…?
おまけその56 「雫」 完
ルビーにBack ルビーにNext
Back Next
Menu