ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第58話 『2次選考開幕』





『2月10日 午後0時25分 ルネシティ』


ユウキ 「かったる…」

ジム戦の後、俺は人目を避けるためポケモンセンターの屋上にいた。
いきなりかったるっとはなんだと思ったやつ、これがかったるくなかったらなんなんだ…。

ユウキ 「有名すぎるのも問題だな…」

俺は屋上からルネシティ全体を見渡していた。
現在街にはそこらかしこにルポライターやらカメラマンやらがたむろしている。
皆、一様に誰かを探しているようだった。
まぁ、十中八九俺だろうけど…。


ユウキ 「かったる…」

また言ってしまう。
現在ジムバッジは7つ。
すでにルネジムは攻略したにもかかわらずあの記者たちにジムが占拠されているため貰いにいけない。
インタビューやら写真やらなんてかったるいの極みだ。
わざわざかったるいジムに飛び込む気なんてかったるくてさらさらない。

ユウキ 「はぁ、どうしよう…」

とはいえこのルネのバッジ『レインバッジ』を貰わないことにはポケモンリーグに出られない。
こちとら某30秒惨殺娘(55話時)と違って時間がないんだ。
こっから急いでサイユウシティに向かって、チャンピオンロードに向かわないといけない。
もはや一回でもこけたらその時点でゲームオーバーだ。

ダイゴ 「ああ、ここにいたんだねユウキ君」

ユウキ 「ダイゴさん?」

突然、後ろから屋上に上ってくる人物がくる。
ダイゴさんだ、どうやらダイゴさんも俺を探しているらしい。
思えば、ダイゴさんはここで心を許せる数少ない人だな…。

ユウキ 「一体どうしたんです」

俺はダイゴさんの方に体を向けるとどうしたのか聞いた。

ダイゴ 「はい、忘れ物」

ユウキ 「へ? て、レインバッジ?」

ダイゴさんの言う忘れ物とはレインバッジだった。
もしかして、届けにきてくれたのか?

ダイゴ 「今はミクリも動けなくてね、彼に代わって届けにきたんだよ」

ユウキ 「はぁ、どうもありがとうございます」

俺は礼を言ってバッジを受け取った。
いや、ダイゴさんが居てくれてよかった。
この人居なかったら今日中にバッジを手に入れることは出来なかったかも…いや、マジで。

ダイゴ 「さて、それじゃ僕はそろそろ行こうかな?」

ユウキ 「え? どこへ?」

ダイゴ 「サイユウシティ、今年ポケモンリーグが開催される都市さ、て、知っているよね?」

ユウキ 「ええ…」

…そういえば、俺は結局この人について疑問のままにしていたことがひとつあった。
ポケモンリーグホウエン大会前年度優勝者にしてポケモンチャンピオン。
その名はダイゴ…写真もないし確証はないんだが…。

ユウキ 「あの、ダイゴさん、ひとつ質問していいですか…?」

ダイゴ 「うん? どうしたんだい、突然」

ユウキ 「ダイゴさん…あなたは現ポケモンチャンピオン『ダイゴ』ですか?」

ダイゴ 「…そうか、やっぱりユウキ君は僕のこと知らなかったんだね」
ダイゴ 「察しのとおり僕は前年度ポケモンリーグ優勝者ダイゴだよ…もっとも自分のことをポケモンチャンピオンとはあまり思っていないんだけどね」

ユウキ 「やっぱり…」

やはり、この人はチャンピオンだ。
改めて俺は凄い人と一緒にいるんだな…。

ダイゴ 「なんとなく、気づいていないんじゃないかなって思ったからそれとなく隠してやってきたけど、まぁ当然だよね」
ダイゴ 「うん、まぁ別にいいんだけどね、それじゃあ僕は一足先にポケモンリーグに居るよ」

ユウキ 「はい」

ダイゴ 「はは、じゃさようなら!」

エアームド 「エアー!!」

ダイゴさんは笑いながらボールからエアームドを取り出すとゆっくりとエアームドの背中に跨るのだった。

ユウキ 「ダイゴさん、待っていてください、必ず最強の挑戦者となってダイゴさんの前に現れますから」

ダイゴ 「うん、待っているよユウキ君」

ダイゴさんはそういってエアームドを宙に浮かび上がらせる。
そのままエアームドはサイユウシティのある東の空に飛び立つのだった。

ユウキ 「…よし、俺もサイユウシティに!」

俺はそう思うとチルタリスをボールから出す。
とりあえず、俺も東に向かって飛んでみよう。

ユウキ 「曖昧だが…まぁ、適当に飛んでいれば船でも見えるだろう」

チルタリス 「サイユウシティっすか、おいらも行ったことがねぇっす」

ユウキ 「適当でいい、俺たちも行くぞ」

チルタリス 「うぃっす」

俺はチルタリスに跨るとチルタリスもゆっくり俺を乗せたまま浮上する。

ユウキ 「目的地はサイユウシティ! 東の空へGo!」

チルタリス 「いくっすーっ!!」

チルタリスは俺の指す方角、つまりダイゴさんの向かった方角に飛ぶ。



…………。



ルネシティから東に20キロ沖の辺り。
大体、時間は2時位の時だった。

ブォォォォン!

ユウキ 「ん? あの船…」

俺は空を進んでいると見たことのある船が見えた。
ハギ老人の船だ。
どうやら進行方向が俺とほぼ同じらしかった。

ユウキ 「チルタリス…」

チルタリス 「あの船に接近しろ…すね?」

ユウキ 「そういうこった」

チルタリスも言わなくてももうわかるらしく。
素直にハギ老人の船に近づいた。

ユウキ 「ハギさん!」

ハギ 「ん? おお、ユウキ君じゃないか!」

俺はチルタリスをハギ老人の船に並ばせるとハギさんに挨拶した。

ハギ 「ユウキ君久しぶりじゃな! どうやら無事だったようじゃな!」

ユウキ 「ええ、そちらに移ってもいいですか?」

ハギ 「ああ、構わんよ! どうせこの船もサイユウシティに向かっておるからな!」

ユウキ 「それじゃ」

俺はそういうと更にチルタリスを船に近づけさせ、船に乗りかかる。
船に乗ると俺はチルタリスをボールに戻した。

ハギ 「いやぁ、それにしてもいつ以来じゃ? たしか海底洞窟を探していた時以来じゃな!」

ユウキ 「そうですね、あの時は本当に付き合ってくれてありがとうございます」

ハギ 「いやいや、いいんじゃよ、むしろよく生きていたものじゃな」

ユウキ 「あはは…おかげさまで…」

さすがに乾いた声が喉から出る。
生きていてた…そりゃ、まぁねぇ…。
なんせあれから1週間近く音沙汰なしですからね…。

ハギ 「まぁ、サイユウまであと『10日』はかかるがその間よろしくな」

ユウキ 「は? 10日…?」

今、10日って行ったのか…?
10日って…今19日…てことは到着は2月19日?
あと9日かよ…ぎりぎりだな。

ユウキ (…9日…か)

俺は少し考える…。
俺がこっちに来たのはまだ9月…。
たしか9月27日。
あの時は大変だった…アカネとも喧嘩した。
ホウエンに来て初めてポケモンと触れ合った。
ミズゴロウと出会った。
他にもラルトスやポチエナ、キノココ、スバメ、ツチニン…多くの大切な仲間ともであった。
シャドウにも…いきなり完膚なきまで叩きのめされたっけ…。
ああ…そういえばツツジさんとも戦ったっけ。

10月…サメハダーに襲われたな。
ココドラとも出会った。
コータスとも出会ったし。
ミズゴロウも最終的にはラグラージ、ラルトスもサーナイトになった。
でもキノココの進化キノガッサ、スバメの進化オオスバメ、ツチニンの進化テッカニンが怪我して一線を退いた。
トウキさん、テッセンさんとも戦って何とか勝った。
ああ、そういえばキンセツジムといえばミツル君どうしているだろう?
あの頃は自分に慢心していた彼を俺は容赦なく倒したが…。
今はなにしているのかな?
そういえば、カイナや煙突山でアクア団といざこざもあったな。
煙突山ではなんとかシャドウにリベンジできた。
ついでにこの時…俺にフォルムが覚醒したんだな…。

11月…チルットがオオスバメの代わりに入ったっけ。
フエンでアスナさんの家庭教師もした。
ジム戦もしたな…苦労したけど何とか勝てた。
砂漠にも寄ったっけ…あの時はえらい目にあった。
トウカシティに着いたときはいよいよと思った…。
あそこで旅の終着点にしても悔いはないと思った。
でも戦って何とか勝てて俺は次のジムを目指した。
そういえばこの時グラエナが怪我をしてリリーラと交換したんだな。
リリーラといえば、ツツジさんと再戦したときオムナイトとカブトを使っていたっけ。
ココドラもパパと戦う頃に何か変になっていたんだよな…。
ニューキンセツでも苦労した。
118番道路…あそこでダイゴさんと再会した。
ザンジークに遭遇した。
食料が尽きながらも天気研究所でアクア団を蹴散らした。
コドラがザンジークと発覚したり、ボスゴドラに進化したり、死にかけたけど何とか生きている。
でも、ボスゴドラは何とかザンジークを逆に押さえ込み、帰ってきた。
そして、俺はヒワマキシティにたどり着いた。
でも、最初はジムが開いてなく、仕方なくパパの言うとおり先へ進んだ。
途中でダイゴさんと再び再会してカクレオンと戦ったっけ。
その後また道を逆戻りしたんだよな…。

12月…ナギさんと出会った…。
この時は、全てを投げ出してもいいと思った。
でも、結局俺はナギさんと戦って今、ここにこうしているんだよな。
ミナモシティにはアクア団基地があって、初めはトクサネに向かえなかったんだよな。
そのあと送り火山にむかったけどアオギリさんに一足先を越されて紅色の玉が奪われた。
かわりに藍色の玉を借りて、今度はカイナに向かったっけ。
でも、カイナでもやはり一足遅く、ミナモにとんぼ返りだったな。
あの時はチルタリスに負担かけまくっちまったな…。
で、ついにはアクア団基地を攻略しちまうんだよな。
まぁ、それでもアオギリは俺の追撃を逃れ、かいえん一号でホウエンの海の中に消えていったんだよな。

1月…頭にトクサネシティに着いたけど、ジムは正月休みだったんだよな。
フウとランとも出会い、過酷なジム戦もこなした。
でも、勝てたおかげでジムバッジは7つになり、再びアクア団の捜索を再開したっけ。
ああ、このときそういえばラグが神隠しにあい、代わりシルクって言うチョンチー種の女の子が着たんだよな。
それに、リュウトさんとも出会った。
俺の方が一枚上手だったけど、今やったらどうなるだろう?
ジム巡りの方も大丈夫なのかな?
そうそう、そういやこのときにホエルコとあのサメハダーを交換したな。

2月…やっと、海底洞窟を発見したっけ。
中にはシャドウが待っていた。
さすがにラティオスを使ってきたときは焦ったが、なんとか勝ったな。
アオギリも難なく倒せたが、結局カイオーガは目覚めてしまった。
世界が沈まんとしたとき結局俺が戦う羽目になってしまい、カイオーガをゲットしたんだよな。
シルクはこのとき姿を消して、ラグラージはなんでかセレビィと一緒に現れた。
カイオーガは即キナギカイナ間の海流の底にボールごと捨てたけどな。
そして、ジム戦を行った。
最後の相手はホウエン地方最強のジムリーダー『ミクリ』。
しかし、勝ったのは俺だ。
ついに8つのジムバッジが揃って俺は今、サイユウシティを目指している。



……………。



『2月21日 チャンピオンロード前』


ユウキ 「ここからが本番か…」

ハギ 「ユウキ君、君を送れるのはここまでじゃ」
ハギ 「先にサイユウシティで待っておるぞ?」

ユウキ 「ええ、必ず突破しますよ」

俺は一切の迷いを持たず、言い切る。
それを見てハギ老人はそのまま船をサイユウシティへと向けた。

ユウキ 「…さて、まずはポケモンセンターだな」

俺はチャンピオンロードの入り口のすぐ横に建てられたポケモンセンターに入ることにした。
チャンピオンロードはポケモンリーグ2次選考。
チャンピオンロード挑戦はここで手続きを行わないといけない。
恐らくこれが今年最後の2次選考だろう。
一度でも落ちたらアウトだ…。

ウィィィィン…。

男トレーナー 「………」
女トレーナー 「…!」

ユウキ 「最悪…かったる」

ポケモンセンターに入るといきなり視線が俺に集まった。
ただし、ルネシティの時の視線とは全く異なったものだ。
中の空気は最悪で、殺し合いでも始めんばかりの殺気だった空気だった。
まぁ、当然と言えば当然…ここにいるトレーナーは全員ポケモンリーグ参加をかけたライバルたちだ。
特にもう後がない…自然と心が荒むのはひどく仕方がなかったのかもしれない。
だけど、それが俺の気分を害した。
落ちることを考えるようなやつらに負けはしない。
俺は必ず突破する…このチャンピオンロードを。

リュウト 「…ユウキ君!」

ユウキ 「え、リュウトさん!」

よく見るとトレーナーたちの中にリュウトさんが混じっていた。
ここにいるということはなんとか間に合ったってことか!

ユウキ 「リュウトさん、お久しぶりです!」

リュウト 「ああ、お互いなんとか間に合ったな」

俺はリュウトさんに近づくととりあえず談話モードにはいる。
さすがに敵ばっかりというのは疲れる、知っている人間がいると言うのはとてもありがたいことのようだな。

ユウキ 「チャンピオンロードは生き残りをかけたサバイバルレース、制限時間の168時間以内にチャンピオンロードを突破しなければならない」
ユウキ 「全員突破するかも知れないし、全員脱落するかもしれない…過酷なレース、お互い突破しましょう!」

リュウト 「ああ、ここで落ちるつもりはない! 俺は今大会を制覇するつもりだからな…」

リュウトさんは腕を組むとしみじみそう語った。
よかった、どうやらここにも勝つことしか考えていない人がいた。
こういう状況下、少しでも下向きな考え方をしたやつが負ける。
そういった意味ではこのリュウトさんは土壇場には恐ろしく強いんだろうな…。
こりゃ、強力なライバルだ…。

? 「いい心がけだ」

ユウキ 「?」

リュウト 「え?」

突然、俺たちの会話を聞いてか、一人の男性が口を挟んでくる。
とりあえず、俺のその人に対する第一印象。

ユウキ (でか…)

その人は身長が17〜180くらいあるように思えた。
リュウトさんも170近くあるが、それより大きいととんでもなくでかく見える。
俺の身長(現在162)と比べるとかなり見上げないといけない。

ユウキ (しかし…それ以上になんていうか)

その人はとりあえず男性で年齢は20代前半くらい。
髪は栗毛で、後ろはポニーテールにして結ってある。
何故か右目に眼帯をつけており、服装はくそ暑そうな黒のコートだった。
おのれ…シンオウ地方のチャンピオンのような服装をしおって…。

ユウキ (でも…はて?)

? 「ん?」

ユウキ (どこかで…見たことがあるような気が…?)

その人はどこかで見たことがある気がした。
だが、イマイチ思い出せない、他人の空にかもしれないな。

リュウト 「失礼ですけど、あなたは?」

? 「俺はイヴ、君たちと同じようにポケモンリーグを目指す一介のトレーナーだ」

リュウト 「イヴ?」

ユウキ 「横文字の名前っすか、てことは異人さんですか?」

イヴ 「いや、この国出身だ」

おや、日本人でしたか。
のわりには横文字の名前ねぇ?

イヴ 「それより、君たち、これからの戦い少しで下向きな考えをしたら負ける」
イヴ 「君たちは強くなれる、その心があるならなおさら」

リュウト 「……」

ユウキ (何者なんだろうか…この人…少なくともここにいるトレーナーたちの中でその見た目も、存在感も群を抜いている)

恐らく、相当の猛者なんだろう…。
参ったね…強敵が多いことで。

係員 「チャンピオンロード挑戦の皆さん、間もなく、最終選考が開始されます!」
係員 「整理券と支給品をお渡ししますので3列に並んでお待ちください!」

ユウキ 「…いよいよか」

リュウト 「……」

突然、係員が大きな声で人員を整理し始めた。
俺たちは素直に列に並んで整理券と支給品が来るのを待つ。

係員 「トレーナーカードの掲示をお願いします」

ユウキ 「ID12044…ユウキです」

係員 「ユウキさんですね…こちら整理券と支給品の穴抜けの紐です」

ユウキ 「……」

俺はトレーナーカードを掲示すると整理券と穴抜けの紐を受け取った。
整理券には18番ゲートと書いてあった。
つまり18番ゲートに向かえと。

俺はそのまま整理券の通りに向かう。

リュウト 「ユウキ君、どうだった?」

ユウキ 「あ、俺は18番です、リュウトさんは?」

リュウト 「7番ゲートだ」

ユウキ 「そうですか、お互い頑張りましょう…出口はひとつです!」

リュウト 「ああ…!」

途中、後ろから俺を追いかけてきたリュウトさんと軽く会話するとすぐに別れてそれぞれの目的地に向かった。

さて、一応チャンピオンロードのルールを説明しておこうか。
チャンピオンロードはサイユウシティへ行くためのルートのひとつで、ポケモンリーグ2次選考の場として用いられる。
チャンピオンロードは洞窟になっており、かなり広大な上、複雑に入り組んでいる。
おまけにより優れたトレーナーを選出するため、洞窟内にはいくつものトラップや野生のポケモンが放されている。
これを168時間以内…つまりジャスト7日以内に出口までたどり着ければクリアだ。
正確にはサイユウシティの門をくぐれば、それでいい。
自動でさっき見せたトレーナーカードからデータを出して、合格となる。
中ではトレーナー同士のバトルが展開され、かなり過酷となる。
さらに、中ではポケモンリーグ運営委員会所属のトレーナーもいて、強制的に戦闘をさせられる場面もある。
なお、今俺が向かっている18番ゲートだが、これは多くの挑戦者たちをひとつの場所から出発させないためいくつも入り口がある。
とはいえ、ひとつの入り口に対して一人とは振り分けられないので、数によるが基本的に数人同じ場所から出発する。
ただし、入り口が同じだといきなり最初の状態でバトルになってその結果いきなりほとんどが脱落になると言うことを避けるため、同じ入り口から出る者同士はバトルしてはならないとなっている。

ユウキ 「さて、後は伸るか反るか」

俺は18番ゲートに一番乗りでつく。
18番ゲートには係員がいた。

係員 「これは7日分の食料です、ポケモン用のポロックサイズの物はこちらです」

ユウキ 「あいよ」

俺は入り口で食料を受け取る。
はたして7日でつけるのかね?

イヴ 「君は…?」

ユウキ 「あ、イヴさん」

後からなんとイヴさんがやってくる。
これは運がいいのか悪いのか…少なくともこれでイヴさんとは戦わずに済むが…。

イヴ 「えと、君の名前は…」

ユウキ 「あ、自分ユウキです、ちなみにさっきいたのはリュウトさんです」

イヴ 「ユウキとリュウトか…ユウキ君、同じ入り口の者同士よろしく頼む」

ユウキ 「ええ、こちらこそ」

? 「そこのふたり!」

ユウキ 「?」
イヴ 「?」

突然、三人目と思われる声がすぐ後ろから聞こえた。
振り向くとそこには俺と同じくらいの歳と思われる少年がいた。
ただ、異様にジョウトなまりのイントネーションだったが…。

少年 「ワイはケン! 同じ入り口の者同士、ひとつよろしゅう!」

ユウキ 「ジョウト人だな…間違いなく」

イヴ 「…イヴだ、よろしく」

ケンと名乗る少年は俺より少し身長が低く、年齢的は大差を感じない。
俺が15だから、恐らく同じくらいだろう。
なにやら明るい性格のようで活発なイメージを第一印象に受けた。
髪は黒髪のショートだが、やや茶色がかって見える。
目も黒く典型的日本人で、戦後直前思い浮かべんばかりに白のTシャツと黒の半ズボンだった。
いくら、ここら辺は今の時期でも割と暑いとはいえ元気すぎな格好だな。
何故か服の中に竹刀を入れており、無闇に背筋を立てていた。
身長を高く見せようとしているのか?
だとしたら、ただの馬鹿だ…身長は自然体が一番高く見えて、無理に背筋を伸ばすと低くなるということをしらんようだな。
しかし、かったるいのとりあえずつっこまない。

ケン 「イヴ…○LACK ○ATの?」

ユウキ 「イヴ違いだっての…大体それ女性だぞ…」

ケン 「ぬぅ…見事な突っ込み…ちなみに自分は?」

ユウキ 「俺はユウキ、ボケはいらんからな」

ケン 「ユウキ…ライダー…」

ユウキ 「マンではないぞ! この北斗○拳伝承者!」

大体○イダーマンは結城じゃねぇか…。

ケン 「むぅ…この男できる…!」

イヴ 「どういう意味でだ?」

ユウキ 「はぁ…かったる…早くはじまらねぇかな…」

ケン 「む…それにしても…」

イヴ 「?」

ケンは異様な目でイヴさんを見る。
イヴさんは何が何だかわからず困惑する。

ケン 「どないな人生送ったらそないに大きゅうなれるんやろう…?」

ユウキ (ああ…そういうことか)

たしかにイヴさん大きいからな。
とはいえ、もっとでかいやつはもっとでかい。
俺たちから見たら凄く大きく見えるだけの話だ。

ユウキ 「大きいことはいいことだ、しかし小さいことは技術だぞ?」

ケン 「へ?」

ユウキ 「身長高ければいいものではない」
ユウキ 「大きくなれば成る程重力との作用から体は重くなり俊敏さにかける…小さき者の技術は大きい者には真似できん」

ケン 「ほー、アンタ、ええこと言うな〜…ほ〜」

ユウキ (…感情の起伏は激しいようだ)

どうもこのケンという男、ころころ表情を変える。
喜怒哀楽の表現が豊かといえるだろう。
ただ、頭の方はイマイチ微妙だが…。
なんせ、竹刀で背筋を伸ばしているくらいだからな…。

係員 「間もなく、最終選考が始まります! 突入の準備をしてください」

ユウキ 「さて…それじゃいっちょいきますか…!」

イヴ 「…そうだな」

ケン 「祭りの始まりやな!」

係官 「それでは開門!」

係官は一斉に門を開く。
こうして俺たちの2次選考が始まるのだ…。

ケン 「一足先にワイはいくでー! ほな、サイユウシティで待っているでー!」

ユウキ 「Good Luck…」

ケンはせわしなく、一人走ってチャンピオンロードを進んだ。
俺たちはまずは歩いて向かう。

イヴ 「ユウキ君、ここはふたりで共に向かわないか?」

ユウキ 「え? 別にいいですけど」

イヴさんはなんと一緒に行かないかと提案してくれる。
同じ入り口の者同士はバトルしてはないらない。
だが、一緒にいてはならないという規定もない。
稀にふたりで行くトレーナーたちもいるらしいしな。
ここは、イヴさんと共同戦線と行きますか…。

俺はイヴさんの提案を受け入れ、晴れてパーティとして向かうことにする。
とはいえ、他の人とのバトルになって二人がかりというわけにはいかない。
そこはあくまでシングルバトル。
相手もコンビを組んでいたら別だが。



…………。



『3日目 チャンピオンロード のこり114時間』


チャンピオンロードに入って三日目。
そろそろ洞窟の空気にうんざりしそうだが、俺たちは依然としてこの洞窟を進んでいた。
ところどころ、ポケモンリーグ運営委員会専属トレーナーに出会い、バトルを行ってきたが俺もイヴさんも問題なく進んでいる。
だが、そろそろ他の入り口から入ってきたトレーナーたちと遭遇する頃か…。
いよいよ本格的なサバイバルだな。

男トレーナー 「あ、あそこにトレーナーが!」

女トレーナー 「ほんとだ! これはバトルね!」

ユウキ 「イヴさん…」

イヴ 「ああ」

ついに選考トレーナーと遭遇する。
しかし、相手はエリートトレーナーといった風貌の相手でコンビを組んでいる。
どうやら、ダブルバトルのようだな。

男トレーナー 「俺はショウ! いけライボルト!」

女トレーナー 「私はコトミよ! 行って! クチート!」

ライボルト 「ラーイ!」
クチート 「クチクチ!」

ポケモン図鑑 『ライボルト:放電ポケモン ラクライの進化系』
ポケモン図鑑 『高さ:1.5m 重さ:40.2Kg タイプ:電気』
ポケモン図鑑 『鬣から強い電気を発している』
ポケモン図鑑 『空気中の電気を鬣に集め頭の上に雷雲を作り出す』

ポケモン図鑑 『クチート:欺きポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.6m 重さ:11.5Kg タイプ:鋼』
ポケモン図鑑 『相手を油断させ大きな顎でがぶり』
ポケモン図鑑 『可愛い顔して危険だよ』
ポケモン図鑑 『鋼の顎は角が変形したものだ』

相手はライボルトとクチートを繰り出す。
だったら俺は…!

ユウキ 「いけ! ラグラージ!」

ラグラージ 「ラグー!」

イヴ 「でろ、エーフィ」

エーフィ 「フィ!」

俺は電気鋼に相性のいいラグを出す。
大してイヴさんが出したのはエーフィだった。

ユウキ (これまででイヴさんのポケモンで見たのはエーフィ、ブースター、シャワーズだった…イーブイの進化系ばかりだな)

しかし、その実力は凄いもので相性が悪くても難なく倒してきた。
正直滅茶苦茶強い。

ショウ 「ライボルト! エーフィに『スパーク』!」
コトミ 「クチート! エーフィに『かみつく』攻撃!」

ライボルト 「ライー!!」
クチート 「クッチー!!」

相手はエーフィに攻撃を集中させる。
しかし、それは迂闊の一言。

イヴ 「エーフィ、『まもる』」

ユウキ 「ラグ! 『じしん』だ!」

ラグラージ 「ラージ!!」

ズドォン!!!

ライボルト 「ライーッ!!?」
クチート 「チーッ!!?」

ライボルトとクチートは無造作にラグの『じしん』に押しつぶされる。
効果は抜群だ。
エーフィはというと『まもる』のおかげでノーダメージ。

ショウ 「く…しまった、戻れライボルト…いけ! ベトベトン!」

ベトベトン 「ベトベトーン!」

ポケモン図鑑 『ベトベトン:ヘドロポケモン ベトベターの進化系』
ポケモン図鑑 『高さ:1.2m 重さ:30.0Kg タイプ:毒』
ポケモン図鑑 『汚い物が大好物なのでゴミを道端に捨てるような人が住んでいる街にはベトベトンが集まってくるぞ』


コトミ 「お願い! ヤミラミ!」

ヤミラミ 「ヤー! シシシ!」

ポケモン図鑑 『ヤミラミ:暗闇ポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.5m 重さ:11.0Kg タイプ:悪 ゴースト』
ポケモン図鑑 『鋭いツメで土を掘り石を食べる』
ポケモン図鑑 『石に含まれた成分は結晶となり体の表面に浮かび上がってくる』

相手はまだバトルを続行するらしい。
この2次選考のバトル、無理にフルバトルする必要はない。
ポケモンが全滅してしまえば2次選考は脱落となる。
しかし、ポケモンが全滅しない限り途中失格にはならない。
つまり、場合によっては1匹やられた時点でリタイアすれば残り5匹はバトルを避けられるわけだ。
ようは全滅しなければいい。
とはいえ、相手に背を向けるのは屈辱だろう。
見極めが重要だ。

ショウ 「ベトベトン! ラグラージに『ヘドロばくだん』!」

ベトベトン 「ベトベトー」

ベトベトンは体からヘドロの爆弾をラグに飛ばしてくる。

ユウキ 「ラグ! かわせ!」

イヴ 「エーフィ、ベトベトンに『サイケこうせん』」

エーフィ 「フィ!」

コトミ 「ヤミラミ! ベトベトンを庇って!」

ヤミラミ 「ミー!!」

ヤミラミはベトベトンの前に立ち、エーフィの『サイケこうせん』を無効化してくる。
悪タイプにはエスパー技は効かないからな…。
しかし、そうなると今度は俺が。

ユウキ 「ラグ! 『だくりゅう』!」

ラグラージ 「ラグゥー!!」

ザッパァン!!

ラグは『ヘドロばくだん』を回避すると同時に『だくりゅう』で攻撃する。
これ自体で敵に2匹は倒せないが十分ひるませれた。

イヴ 「エーフィ、ベトベトンに『サイコキネシス』」

エーフィ 「フィィィ!」

ズバァンン!!
エーフィはベトベトンに『サイコキネシス』を放つ。
『だくりゅう』をくらっている間に無防備になったベトベトンは『サイコキネシス』をまともに受けてしまう。

ベトベトン 「ベトベト〜…」

ベトベトンはさすがに耐えられるはずもなくダウンしてしまう。

コトミ 「くっ! ヤミラミ! エーフィにシャドー…!」

ユウキ 「ラグ! 『マッドショット』!」

ラグラージ 「ラグラッ!!」

バシャアアッ!!

ヤミラミ 「ヤミーッ!!?」

俺はヤミラミに技を使わせる前にヤミラミを攻撃する。
ヤミラミはラグの『マッドショット』を受けてダウンした。

コトミ 「そんな…こんなにあっさりと」

ショウ 「これじゃ…ポケモンリーグなんていってられないな…悔しいけどどうやって勝てそうない…」

ふたりは戦意喪失したようだ。
三匹目を出す様子はない。
さようなら…だな。

ショウ 「俺たちはここまでだ、ふたりとも先へ進んでくれ」

コトミ 「あなたたちの無事を祈っているわ…」

ユウキ 「ええ、また来年頑張ってください」

イヴ 「…行こう、ユウキ君」

俺たちはふたりと別れを告げ、再びチャンピオンロードを進む。

俺とイヴさんはそれからもシングル、ダブルに関わらず、ダメージを最小限に抑えながら突き進んでいった。

ユウキ 「目指すはサイユウシティ…!」




ポケットモンスター第58話 『2次選考開幕』 完






今回のレポート


移動


ルネシティ→126番水道→127番水道→128番水道→チャンピオンロード


2月23日(ポケモンリーグ開催まであと6日)


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

チルタリス

ユレイドル

ボスゴドラ

コータス


見つけたポケモン 62匹

ライボルト

クチート

ベトベトン

ヤミラミ

エーフィ



おまけ



その58 「ミツルとシタッパの別れ」





あ、さてさて今回の話はミツル君。
最近めっきり出番のない彼でしたが今回がおまけ登場の見納めかも。
ミツル君は果たしてアレからどうなったのか…?



『2月23日 チャンピオンロード』


ミツル 「……」

僕の名はミツル。
なんとかジムバッジ8つを集め、2次選考に間に合った。
今、僕は一人だ。
ここからは一人での戦い…。


『それは1週間前…』


ミツル 「これで、やっとポケモンリーグに出られる!」

シタッパ 「そうだな…」

ミツル 「シタッパさん…?」

僕たちはなんとか8つのジムをめぐり、ポケモンリーグ出場権を得た。
しかし、今、シタッパさんは喜んでくれるどころか何故か暗い顔をしていた。
一体どうしたんだろう…?

シタッパ 「ミツル…お前はすごいよ、天才だ」

ミツル 「天才だなんて…そんな」

シタッパ 「だってそうだろう? 半年にも満たない短い期間でここまで来たんだ…尋常じゃないスピードだ」
シタッパ 「俺とは何もかも全く違う」

ミツル 「そんな! 僕がここまで来れたのはシタッパさんがいつもサポートしてくれたからです!」
ミツル 「僕一人じゃ絶対無理でしたよ!」

シタッパ 「そんなことはないだろう、ジム戦とかはアドバイスも出来ない」
シタッパ 「スパーリングだって実力差がありすぎて全力出せなかったろ?」

ミツル 「それは…」

シタッパ 「だから、ここからは俺たちは別に行動する」

ミツル 「シタッパさん!」

シタッパ 「ミツル…俺は、お前を目指してみる…」
シタッパ 「もう20超えていい年おっさんだが、俺もポケモンリーグを目指してみようと思う」
シタッパ 「この先にあるのはチャンピオンロードだ…ミツル、お前の武運を祈っている!」

ミツル 「シタッパさん…」

シタッパさんの決意ある目は僕の言葉を詰まらせた。
本音は別れたくない。
でも、シタッパさんは…。

ミツル 「シタッパさん…」

シタッパ 「ミツル…Luck! そしてPluck!」(幸運を、そして勇気を!)

ミツル 「シタッパさん…シタッパさーん!! ありがとうございましたー!!」

シタッパさんの去る背中はとても大きく見えた。
Luck…そしてPluck…僕は戦う!



……………。
…………。
………。



そして、現在…。


ミツル 「……」

僕はチャンピオンロードを突き進んでいる。
僕は誰にも負けない。
シタッパさんのため、僕は勝つ!

エリートトレーナー 「そこの少年! 勝負だ! 行け、アブソル!」

ミツル 「! いけ、レアコイル!」

僕はトレーナーと対峙する。
僕はレアコイルで受けて立つのだった。

ミツル (Luck…そしてPluck!)





おまけその58 「ミツルとシタッパの別れ」 完



ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system