ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第81話 『死闘』






『3月5日 時刻:12:40 サイユウシティ』


ズズ…。

ラーメンを啜る音。
ここではソバと呼ばれるか。
そんなに大きくは無い個人経営の店、ポケモントレーナーも多く見られる。
ポケモンリーグ開催時期、ポケモントレーナーで開催地は溢れるが、ここは特別多い。
そして、ポケモンリーグ本戦出場者の姿も…。

ケン 「次はワイらやな…」

ヨー 「…ああ」

ポケモンリーグ第2回戦Bブロック第1戦のトレーナー、ケンとヨー。
午前にAブロックの試合を終わらせ、Bブロックが始まる前の昼食で二人はソーキソバを食べていた。

ヨー 「言っとくけど…本気で勝ちにいくから」

ケン 「本気できても勝つんはワイやけどな、自分の実力わからんわけやないやろ?」

ヨー 「…ごっちそっさん! 代金いくらー!?」

男のような格好をした女、ヨーは食べ終えると、立ち上がりレジで代金を払って外に出るのだった。

ケン 「やれやれ…ワイも気ぃ締めていかなかなんな…」

もう片方のトレーナー、ケンも立ち上がると店を出て行った。

ユウキ (かったる…マイペースにやる方が楽なもんさ…)

そして、そんな火花散った様子をソーキソバを食いながら遠くで眺める俺。
次はゴーヤーチャンプルーだな。



……………。



シャベリヤ 『さぁ、いよいよBブロックの試合も開始しようとしています』
シャベリヤ 『Aブロックはいずれも激戦、最後まで気の抜けないバトルが展開されていきました』
シャベリヤ 『しかし、記者や解説家がいうのはBブロックこそ真の激戦区!』
シャベリヤ 『その開幕戦はこの二人に飾ってもらおう!』
シャベリヤ 『ケン選手とヨー選手だー!』

ケン (さぁて、どうでるやろな…)

ヨー (…絶対負けねぇ、勝つんだ…!)

さて、昨日はヨーの実力はよう見せてもらった。
はっきり言ってトレーナーとしての力は低い!
しかし、一部やたら強力なポケモンを連れてやがる。
あれはかなん、出てきたらなんとか対処考えな話ならんやけど、理屈が通用するかは微妙やな。
なんとかトレーナーのレベルの低さ突いて突破するしかあらへんな…。

シャベリヤ 『さぁ、今回はノーマルフィールド、一般的なバトルフィールドと同じく硬い土のフィールドです』
シャベリヤ 『バトルフィールド用のラインがあるだけで、後は全て何もない!』
シャベリヤ 『さぁ、ある意味もっともトレーナーの実力が試されるこのフィールドで勝利するのはどっちだ!?』

審判 「両者、不正のないよう、ポケモンをフィールドへ!」

ケン 「でばんやで! マンタイン!」
ヨー 「でてこい、オーダイル!」

マンタイン 「マ〜ン〜」

オーダイル 「オーダッ!」

ワイはマンタインを最初に出す。
すると相手はオーダイルやった。

ケン (しもたな…まさか向こうも水タイプやったか)

ワイは一応、スターミー読みで出した。
ところがここで出てきたんはオーダイルか。
ちょいと状況がちゃうんよな…。

ヨー (師匠のポケモンは強い…それゆえに俺にはまだ扱いきれない)
ヨー (いきなり押し切っても良かったけど、不安があったから俺は俺のポケモンであるオーダイルを選んだ)
ヨー (ケンの顔を見ると予想外といった顔だし、結果はオーライか?)

さて、のっけはどうするか…ワイもなかなか博打打とうとしとるさかいな…。

ヨー 「よし! オーダイル、『かみくだく』!」

ケン 「戻れマンタイン!」

俺は開幕、マンタインを戻す。
今回、マンタインは重要や、ダメージも被るのはまずい。

ヨー (戦いもせず戻した!? 相性は五分のはずなのに!)

ケン 「出番やで、デンリュウ!」

デンリュウ 「リュー!」

ワイはとりあえずデンリュウを出す。
こいつも鍵や、デンリュウには悪いが、どてらいポケモン以外『全匹』相手してもらわなアカン。
逆に言えば、どてらいポケモンは3匹でも4匹でも使って倒さなあかん!

オーダイル 「オーダッ!」

ガブリィ!!

デンリュウ 「リュ、リュウッ!?」

オーダイルの大きな口がデンリュウの左腕に噛み付く、いや、『かみくだく』やから、えらいことやけどな。
せやけど、そこの当たりやったら大して気にせんわ!

ケン 「デンリュウ! 『かみなりパンチ』や!」

デンリュウ 「リュ、リュー!」

バチチチチチチッ!!

オーダイル 「!?!?」

デンリュウは体全体から放電する。
せやからかみついとるオーダイルは内部から電撃が走っとるわ。

ヨー 「やばっ! オーダイル離れろ!」

ケン 「フィニッシュ!」

デンリュウ 「リュー!!」

バッキィィ! バチチチィ!!

オーダイルが痺れて口を離せないところにデンリュウの右ストレートで放たれた『かみなりパンチ』がオーダイルの顔面を直撃する。
一応、『かみなりパンチ』やからな。

オーダイル 「オーダ…」

ズッシィィン!

審判 「オーダイル、戦闘不能!」

シャベリヤ 『なんと、いきなりオーダイルダウン! 強力な電気には敵わなかったか!?』

ケン (とりあえずまず1勝…せやけど、左腕はこの試合死んだかもな)

幸い、右腕やないんが救いやが、これでも結構きつい。
さて、相手の2匹目は誰やろな?

ヨー 「…でてこい、ウインディ!」

ウインディ 「ウォーン!!」

ケン (ウインディか…さて、どうするか…?)

ヨー 「ウインディ、速攻で決めるぞ! 『かえんほうしゃ』!」

ケン 「もどり! デンリュウ!」

ワイはすぐにデンリュウを戻す。
次に出すんは!

ケン 「ゴー! マンタイン!」

マンタイン 「マーン」

ウインディ 「ウォォッ!!」

ゴォォォォォォッ!

シャベリヤ 『ウインディの『かえんほうしゃ』がマンタインに直撃! しかし効果が薄い!』

マンタイン 「マ〜ン〜」

マンタインはすこぶる特殊防御が高い。
デンリュウでもやれるんやけど確実にいく!

ヨー (また、交換か…このままやってもさっきと同じ展開…打たれ弱いポケモンならいざ知らずか…)
ヨー 「交換だ、ウインディ!」

ケン(まぁ当然やな、せやけどここは乗っといたるわ!)
ケン 「マンタイン、『あまごい』!」

マンタイン 「マーンー!!」

パラ…パラ…ザァァァァァ!

ワイはマンタインに『あまごい』を命令する。
とりあえず雨降らしとこか。

ヨー 「でてこい、スターミー!」

スターミー 「スタッ!」

ケン (予っ想通りやなっ! なら手筈どおりいこか!)

ヨーの手持ちを考えるとレアコイルも考えられた。
せやからまず雨降らしとく。
ウチのマンタインはすいすいの特性やないけど、これだけで水タイプの技はガンと威力を上げる。
電気タイプでも押し切れんことはない。
しかし、こっちの読みとしてはスターミーが正解。
後は、ワイのポケモンを信じるだけや!

ヨー 「スターミー、『10まんボルト』だ!」

ケン 「マンタイン、『ミラーコート』!」

スターミー 「スターッ!!」

マンタイン 「マーンーター!!」

バッチィィン! キィィン!!

スターミー 「!!?」

シャベリヤ 『なんとー!? スターミーの『10まんボルト』が『ミラーコート』に跳ね返された! ダメージ倍返しだー!!』
シャベリヤ 『強烈な一撃! スターミー、たまらずダウンだ!!』

マンタイン 「マ、マ〜ン…」

ケン (マンタインはすこぶる電気に弱い、せやけどそれを覆すたっかい特殊防御がある)

とはいえ、マンタインのダメージは深刻やな…。
もうかすり傷ひとつでアウトって感じや。
スピードがとんでもないと前回は思ったが、特殊攻撃もとんでもないわ。
なんとか耐えられた…そんな感じやな。

ヨー 「くそ…もどれ、スターミー」

ヨーはしぶしぶスターミーを戻す。
さて…問題は何匹とんでもないポケモンを持っとるかやな。
相手できるのはおおよそ無理言っても3匹、普通に考えたら2匹が限界。
スターミーとエアームドは見せてもろたからな。
対策を立てるのは普通やで?
エアームドの際も不安はあるけど対処は考えとる。
問題はヨーのどのポケモンがジョーカーかがわからへん。
2匹だけかもしれへんし、3匹、4匹とおるかもしれへん。
そうなるとワイの勝ちは相当薄くなるやろうな…。

ヨー 「でてこい、レアコイル!」

レアコイル 「レアー」

ケン 「予想通りやな…ホンマに」

問題はマンタインとどっちが早いんや?
まさか…こいつが実はジョーカー…いうんやったら下手したら全滅やけどな…。
なんせワイの手持ちは6匹やからな。
その場その場で変えることなんてできへん。
せやから、ほとんど一発勝負狙いやな。

ヨー 「レアコイル、『かみなり』!」

ケン 「マンタイン、『ハイドロポンプ』!」

レアコイル 「レアー!」

ピシャァァン!!

マンタイン 「マーンー!!」

バッシャァァァァッ!!

相手は回避されることを危惧したんか、雨が降っとると確実に当たる『かみなり』を使ってくる。
せやけど、『かみなり』はモーションに時間がかかる、だからマンタインは『ハイドロポンプ』をなんとかレアコイルに放てた。
『でんきショック』とかでも当たったら危なかったんやけどな。

マンタイン 「マ〜ン〜…」
レアコイル 「レア〜…」

ズシャァァッ!

両者ダウンか。
こっちの攻撃も当たったからな、さすがに攻撃しながら回避なんて器用な真似はしてこんかったな。

審判 「両ポケモン、戦闘不能!」

ケン 「戻りぃ、マンタイン」

ヨー 「…戻ってくれ、レアコイル」

これで5対3。
せやけど、ジョーカーの1匹にこれらのうち3匹はやられるかもしれへん。
さぁ、賭けるか!

ケン 「でてこい、ヘルガー!」
ヨー 「でてきて、ヘラクロス!」

ヘルガー 「ヘルッ!」

ヘラクロス 「ヘラクロッ!」

シャベリヤ 『ケン選手はヘルガー、ヨー選手はヘラクロス! 互いのポケモン、トレーナーの命令を待っています!』

ケン (ヘラクロスか…相性ええけど相性悪い…やな相手やな)

炎でさっさと焼くのがベターやけど、向こうの格闘技は怖いわな…。
どう対処するかのぅ…。

ヨー 「ヘラクロス! お前の力見せてくれ! 『かわらわり』!」

ヘラクロス 「ヘラッ!」

ヘラクロスは迷わず、一直線にこっちに突っ込んでくる…てか…。

ケン 「早っ!? ヘルガー、『かえんほうしゃ』や!」

ヘルガー 「ガー!!」

ヘラクロス 「クッロー!!」

ブォン!!

シャベリヤ 『ヘルガーの放つ強力な炎、ヘラクロス『かわらわり』一振りで炎を切り裂いた!! そのままヘルガーへと!!』

ケン 「やばっ! よけぇい! ヘルガー!」

ヘルガー 「ヘルッ!!」

ブォォン!!

ヘルガーは咄嗟に横に跳んで、ヘラクロスのニ撃目の『かわらわり』を回避する。
しかし、スピードもパワーも桁違いや!

ケン (くそったれ! こいつがジョーカーかい!)

間違いあらへん、普通炎を恐れへんヘラクロスはおらへん。
せやけど、こいつのヘラクロスは炎を恐れるどころかそいつに飛び込んで風圧で切り裂きやがった!
鍛え方を見ても間違いない、四天王クラスのポケモンやぞ!?
いや、それ以上かもしれへん、にしてもなんでヨーがこんな自分のレベルの規格に合わんポケモン使っとんねん!

ヨー (すげぇな…さすが師匠のポケモン…弱点を恐れないなんて…攻撃も一撃決まれば一撃か!?)
ヨー 「よし! ヘラクロス、『つのでつく』!」

ケン (ちぃ! それでも当たったらおしまいや! 無理に強力な技放つ必要はあらへんか!)
ケン 「ヘルガー、『こらえる』や!」

ヘラクロス 「へラー!」

ドガァ!!

ヘルガー 「へ、ヘル!」

シャベリヤ 『ヘラクロス、渾身の一撃! ヘルガーなんとか持ちこたえた!』

ケン 「よし! その距離なら大丈夫や! ヘルガー、『だいもんじ』や!」

ヘルガー 「ヘ、ヘ、ヘルー!!」

ゴバァッ!!

ヨー 「ヘラクロスーッ!?」

ヘラクロス 「ヘラーッ!?」

シャベリヤ 『ああっと! ヘラクロス、ヘルガーの炎に焼かれたー! 効果は抜群だーっ!!』

ヨー 「! ヘラクロス、『つばめがえし』!」

ヘラクロス 「!! ヘラー!」

ビュオゥッ!!

ケン 「なんやとーっ!?」

なんと突然ヘラクロスがヘルガーの目の前から消える。
超スピードで炎の中から抜け出して、ヘルガーの後ろを取ったのだ。
そしてそのまま後ろから…。

ヘラクロス 「へラー!!」

ドカァッ!

ヘルガー 「ヘルーッ!?」

ズッサァァァッ!!

なんと、ヘルガーが土壇場で返り討ちに遭ってしまう。
まさか、『つばめがえし』で強引に攻撃中に抜け出すとは…。

審判 「ヘルガー、戦闘不能!」

ケン 「く…戻りぃヘルガー」

ヨー (よし! なんとか上手くいった…だけど予想以上にダメージは大きいな…このままじゃまずい…)

ケン 「でてきぃ、ハッサム!」

ハッサム 「ハッサ!」

ヨー 「ハッサムか…ここは交換だ!」

ケン 「ハッサム、『おいうち』!」

ハッサム 「ハッサー!」

ヨー 「!? しまった!?」

ドカァ!!

ヘラクロス 「!? ヘラーッ!?」

ハッサムの『おいうち』が見事にヘラクロスにヒットする。
ヨーはとんでもないことしたって顔をしとった。
1回戦で『おいうち』使ったんに頭からすっぽり抜け落ちとったようやな。

審判 「ヘラクロス、戦闘不能!」

シャベリヤ 『なんと、ここでヨー選手判断ミス! ヘラクロス、ダウンです!』

ヨー 「く…ごめんなさい…ヘラクロス…」

ヨーの失態は大きい。
なんせすでに『おいうち』を持っていることは一回戦のバトルで判明しているのにそれを忘れて交換を行ってしまったからな。
実力的にはなんの申し分も無い恐ろしいポケモンやったがヨーの判断ミスで倒れてもうた。
これは精神的に辛いやろな…。

シャベリヤ 『さぁ、ここで10分間の休憩に入ります!』
シャベリヤ 『ここまで状況はケン選手が4匹残し、ケン選手が押しています!』
シャベリヤ 『しかし勝負は最後まで何が起こるかわからない! 後半戦も期待するぞ!!』

ケン 「戻りぃ、ハッサム」

ハッサム 「……」

ワイはハッサムを戻すと花道を戻り、控え室に帰る。
さて、この調子やと勝てそうなんやけど…。

ケン (まだジョーカーがおるさかいな…油断はできへん)



…………。



サティ 「ヨーが大ピンチかしら〜…」

イヴ 「そうだな…だがまだどんな規格外なポケモンが潜んでいるのか…」

リュウト 「あのヘラクロス、それにスターミー…たしかにとんでもないからな」

ユウキ 「だけどスターミーは1回戦で戦闘能力を見られ、マンタインで見事に返り討ち」
ユウキ 「ヘラクロスもヨーの判断ミスで途中退場…トレーナーとしてはケンの方が一枚上手だ」

アスカ 「それに完全にそう言ったヤバイポケモンに対して意識しているよね…このポケモンで確実に倒す! って感じで」

レン 「う〜ん、でもでも〜、ヨーさん、全然ポケモンに振り回されているよ? いくら強いポケモンを持っていても使いこなせてないよ〜」

ユウキ (そうだな…使いこなせてない…このバトル中に使いこなすことは不可能だろうな…だが、ケンの精神的負担は尋常じゃないはず)
ユウキ (どこまでケンの集中力は保てるのか…それがこの勝負の鍵…だな)



…………。



ケン 「どうや…デンリュウ、大丈夫か?」

デンリュウ 「リュ、リュウ!」

ワイは控え室に戻るとデンリュウを出して、状態を見ていた。
デンリュウは大丈夫と言わんばかりに首を縦に振る。
とはいえ、こいつはどんなにきつくても口に出さんからのぅ…。

ケン 「デンリュウ…左腕、上げてみぃ」

デンリュウ 「リュ…リュ…ウ…」

デンリュウは震えながらなんとか左腕を上げる。

ケン (思ったよりオーダイルの『かみくだく』が効いとる…左腕が完全に死んどるな…)

どうやらデンリュウの左腕はこれ以降のバトルでは使い物になりそうになかった。
これは結構痛い、左腕が満足に動かせへんかったら体の運びに支障がでる。
こうなったらデンリュウ抜きでヨーのポケモン2匹倒さなあかんな…。

デンリュウ 「リュウ! リュウリュウ!」

デンリュウは使ってくれと言わんばかりに自分をアピールする。

ケン 「デンリュウ…頑張ってくれるんは嬉しい、せやけどなお前は怪我しとる」
ケン 「なんぼお前が大丈夫言ってもお前に無理はさせられん」

デンリュウ 「リュウ…」

ケン 「なぁに、ヨーも残り2匹や、なんとか押し切ったるわ!」

ワイはデンリュウを安心させるように務めて笑顔でそう言う。
デンリュウは元々優しいやつやさかい、バトルを好まん。
せやけどこいつは無茶をしてしまう。
怖いくせに、勇気を振り絞って無茶をする。
しかし、たとえ勝ったとしてもこれでさらにダメージを受けるようなことがあれば次のバトルに引っ張る可能性もある。
できればデンリュウ抜きで勝ちたい。

ケン (大丈夫や…やったる…ワイは…勝つんや!)



…………。



ヨー 「ここで残り2匹か…くそ!」

ヘラクロスを失ったのもスターミーを失ったのも完全に俺の失態だ…。
俺がもっとしっかりしていれば…俺がもっとよく考えて指示を与えていれば…。

ヨー (やっぱり…やっぱり…俺はその程度なのか?)

俺のレベルじゃとても師匠のポケモンを使いこなせていない。
こんなんじゃ師匠に顔を見せられない…。

ヨー (負けたくない…負けたくないよ…俺…)

勝ちたい。
勝って俺みたいな才能のない奴でもやれるんだって実証したい…。

ヨー (ケン…強いよな…才能を感じる…俺とは毛並みが違うんだ…)
ヨー (だけど…ケンには特別負けたくない…ユウキよりも…ペルよりも…イヴさんよりも…誰よりも負けたくない!)
ヨー (あいつには理屈じゃない何かがある…俺とは違う何かがある…俺にとってはあいつを越えることはチャンピオンに勝つより意味のあることだ!)
ヨー 「俺は…勝ちたい!」



…………。



シャベリヤ 『さて…長いようで短い10分の休憩も終わりいよいよ後半戦がスタートしようとしています』
シャベリヤ 『現在ケン選手はマンタインとヘルガーを失い、デンリュウが負傷し、ハッサムが最後のポケモンとして残り4匹』
シャベリヤ 『対してヨー選手はオーダイル、スターミー、レアコイル、ヘラクロスを失い、さらにウインディが無傷ながら一度出されて残り2匹!』
シャベリヤ 『状況はケン選手が有利! ヨー選手、巻き返しなるか!?』

ケン 「ハッサム、押し切るで!」

ヨー 「…でてこい、ウインディ!」

ウインディ 「ウォーン!」

ケン (ウインディか…たしかチャンピオンロードで見たな…妙に攻撃力が低い)
ケン (明らかにジョーカーとは程遠いレベル不足のポケモンやった…せやけどさすがにあの時より成長しとるやろな)

審判 「ハッサム対ウインディ、はじめ!」

ケン 「よし、ハッサム、『こうそくいどう』や!」

ハッサム 「ハッサッ!」

シャベリヤ 『ハッサム、ここでスピードがアップ! 目にも止まらぬ速度フィールドを駆け巡る!』

ワイはまずは攻撃せず、能力をアップさせる。
能力をアップさせた後からでもバトルは可能や。
さぁ、見せてもらおうか…ヨー!

ヨー (ち…速え! どうする!? 炎技が当たればアウトだが、どうやって当てる!?)

ケン 「命令出さえへんのやったらガンガン行くで! ハッサム、『きりさく』!」

ハッサム 「ハーッ!!」

ヨー 「ウインディ、ジャンプ一番避けろ!」

ウインディ 「ウォンッ!」

ハッサムは高速で動き(まるで○イファーの漕ぎ?)、ウインディの後ろから一気にそのハサミで切りかかってくる。
しかしウインディはなんとかその場から飛び上がり、間一髪ハッサムの攻撃を避けよる。
中々、反応ええやんけ。

ヨー 「能力アップしたやつにはこれだー! ウインディ、『ほえる』!」

ケン 「げっ!?」

ウインディ 「ウゥゥ…ウォォン!!」

ハッサム 「!?」

シュポン!

なんと、ここで『ほえる』使うとは…有利なタイプにも関わらず、危険を避けたか…。

ボフゥン!

デンリュウ 「リュウッ!」

ケン 「!?」

『ほえる』をされるとひとつ困ることがある。
それは次に出てくるポケモンがわからへんということや。
よもやここでデンリュウかいな!?

ヨー (デンリュウ!? 負傷している今ならいける!)

ケン 「アカン! 戻れデンリュウ!」

ヨー 「ぶっつけ本番だ! ウインディ、『フレアドライブ』!」

ワイはデンリュウを戻す。
既に次のポケモンを出そうとする時、ヨーの命令が出る。

ケン 「こなくそ! カポエラー、出番や!」

カポエラー 「カポーッ!」

ウインディ 「ウォォォンッ!!」

ゴォォォッ!!

炎を帯びたウインディがそのままカポエラーに襲い掛かる。
たしか、シズクちゃんのウインディもやっとった。
あれに比べれば威力は低いが…。

カポエラー 「カ…カポ…」

シャベリヤ 『ああっと! 出てきた間際で『フレアドライブ』を受けたカポエラー、顔から腹の辺りにかけて大きな火傷を負ってしまった!』

ケン 「冗談やろ…? 洒落ならへんで…」

そんなんありかいな…ここで逆転なんて洒落ならへんぞ?

ヨー (初めてだけど上手くいった! だけど予想以上に反動が大きいな…ウインディ自身も自分の炎で体を焼いてダメージを受けている…)

ケン 「ちぃ…カポエラー、『じしん』や!」

カポエラー 「カ、カポーッ!」

ヨー 「交換だ! 戻れウインディ!」

ケン (なに!? 交換かっ!? てーと出てくるんは飛行タイプか! つくづく運なさそうやわ!)

ヨー 「でてこい! エアームド!」

エアームド 「エアーッ!」

ズドォン!!

カポエラーの『じしん』がフィールドを揺るがす。
せやけど、空を飛んどるエアームドには効果あらへん。

ケン (ちぃ…3匹目のジョーカー…1回戦で鬼のような防御力を見せとったな…どうする!?)

予想はしとった…せやけどまさかジョーカーが3匹入っとるとは思わなんだ。
スターミー…ヘラクロス…これまで尋常ならざる緊張と、痛い犠牲でなんとかした…せやけどさすがに根負けしそうやわ…。

ケン 「ちぃ! 駄目で元々や! カポエラー、『インファイト』!」

カポエラー 「カッポー!」

こちとらすでに火傷も負って絶望的や、こうなったら捨て身でできるだけダメージを与えるしかない。

ヨー 「エアームド、『スピードスター』!」

エアームド 「エアーッ!」

ビビビビビビビッ!!

カポエラー 「カポーッ!?」

シャベリヤ 『ああっと! カポエラー近づけない! 遠距離から『スピードスター』を叩き込まれたーっ!!』

カポエラー 「カポ〜…」

ドサァ!

審判 「カポエラー、戦闘不能!」

シャベリヤ 『ここでカポエラーダウン! 流れは一気にヨー選手に回ったぞ!』

ケン 「戻りぃ…カポエラー…」

ワイはカポエラーをボールに戻す。
たく…冗談やあらへんわ…ホンマにな…。
これを…どうやったら倒せる?
どないしたら勝てる?

ヨー (いける…これなら、勝てる! 俺が…あいつに!)

ケン 「くそっ! 出番やヨルノズク!」

ヨルノズク 「ホーッ!」

シャベリヤ 『ケン選手、6匹目のポケモンはヨルノズクだ! はたしてエアームドにどう立ち向かうのか!?』

ヨー 「今度はケンに同じ目をあわせてやるよ! エアームド、『こうそくいどう』!」

エアームド 「エアー!」

ケン 「! ちぃ、ヨルノズク、『リフレクター』や!」

ヨルノズク 「ヨール!」

エアームドはスピードを倍化させる。
だだでさえそう遅くあらへんのにこいつに素早さを上げられたら…ハッサムでも追えへん!

ヨー 「防御を固めるか…だったら、これでどうだ!? エアームド、『エアスラッシュ』!」

エアームド 「エアーッ!」

ビュオゥッ!

研ぎ澄まされた風の刃が物凄いスピードでヨルノズクに襲い掛かる。
同じ目か…ならやったろうやんけ、永遠に続く…円舞のように!

ケン 「ヨルノズク! 上昇して『ふきとばし』!」

ヨルノズク 「ホーッ!」

ビュオオオッ!

ヨー 「!?」

シュポン! ボフゥン!

ウインディ 「ウォーン!」

ヨルノズクはなんとか『エアスラッシュ』を回避して、そのままエアームドをボールに戻す。
向こうが同じならこっちも同じや!

ヨー 「くそ! そう来るなんて! ウインディ、『かみなりのキバ』!」

ケン 「ヨルノズク、『じんつうりき』や!」

ヨルノズク 「ヨール…!」

ヨルノズクの目が怪しく光る。
ウインディは今、ヨルノズクにありえないビィジョンを見せられているやろう。

ウインディ 「ウウ…ウォォン!」

バチチチッ!

しかし、ウインディは止まらずそのままヨルノズクに噛み付く。
ちぃ…たまらんな!

ケン 「ヨルノズク! 『しねんのずつき』や! いってみぃ!」

ヨルノズク 「ヨ、ヨール!!」

ヨー 「ウインディー!!」

ウインディ 「ウォォォン!!」

ケン 「!?」

ウインディの体が再び炎に包まれる。
まさかここでもう一度『フレアドライブ』か!?
ヨルノズクは攻撃態勢に入っとる…どうなる!?

ヨルノズク 「ホー!」
ウインディ 「ウィン!」

ドカァァン!!

両者が頭からぶつかる。
その瞬間爆発が起きた。
まさか…!?

ヨルノズク 「……」

ウインディ 「……」

審判 「両ポケモン、戦闘不能!」

シャベリヤ 『ああっと!? なんと相討ち! ここでウインディ、ヨルノズクと共に沈黙だ!』
シャベリヤ 『しかし、これでヨー選手、残りエアームド1匹!』
シャベリヤ 『はたして、この試合どっちに勝利の女神は微笑むのかっ!?』

ケン 「戻ってくれ、ヨルノズク」

ヨー 「ウインディ、戻れ!」

ワイは誰が見ても意気消沈しとるやろう…。
せやけど、ヨーは生き生きしとる。
絶体絶命や。
あのエアームドが最後のポケモンとは…。

ケン 「でてこい…ハッサム!」

ヨー 「頼むぞ、エアームド!」

もうやるしかない。
相性がなんじゃ、レベルがなんじゃ!

ケン 「ええい、やったるわい! ハッサム、『かわらわり』!」

ハッサム 「ハサー!」

ヨー 「エアームド、『こうそくいどう』!」

エアームド 「エアー!」

エアームドは上空でスピードを上げ、ハッサムを翻弄する。
あかん! これやったらまるでハッサムはカトンボや!

ヨー 「エアームド、『ドリルくちばし』!」

エアームド 「エアーッ!!」

ズガガガガガッ!

ハッサム 「ハッサーッ!?」

空中で戸惑うハッサムに、高速でハッサムの懐に入り、胸に『ドリルくちばし』を浴びせる。
ハッサムはそのまま力なく地面に…。

ドッサァァッ!

審判 「ハッサム、戦闘不能!」

シャベリヤ 『ハッサム、何もできずにダウン! これで互いにオーラス! いよいよこの戦いの決着が見えようとしています!』
シャベリヤ 『さぁ、勝つのはどっちだ!?』

ケン 「戻ってや…ハッサム…」

これで最後…最後はデンリュウのみか…。
ここらが潮時かいな…。

ケン 「審判! ワイは…」

ボフゥン!

デンリュウ 「リュウ! デーン! リューッ!!!」

バチバチバチィ!!!

エアームド 「!?」

ヨー 「うわっ!?」

ケン 「!? デンリュウ!?」

シャベリヤ 『なんだなんだーっ!? デンリュウ、ボールから現れて激しく電気を撒き散らした!』

なんと、デンリュウは勝手にボールから出てしまう。
そして降参は断固拒否といった顔をしていた。

ケン 「お前…ええんか? お前のダメージはそない軽いもんやあらへんねんぞ?」
ケン 「ワイは予備のポケモンがおらへん…ここで勝ってもお前の代わりに登録するポケモンはおらへんねんぞ?」
ケン 「ここで更に怪我してみぃ…たとえ勝っても次の試合は絶望やねんぞ!?」

デンリュウ 「リュウ!」

バチィン!

ケン 「!?」

ヨー 「なっ…?」

シャベリヤ 『なんだ!? デンリュウ、何とトレーナーであるケン選手をその右手で引っ叩いた!?』

デンリュウはワイの頬を叩く。
ワイはあまりのことに驚いてデンリュウの顔を覗いた。

デンリュウ 「リュウ…」

ケン 「お前…泣いとんのか…?」

なんと、デンリュウは泣いていた。

ヨー 「…情けねぇぞケン! いつもの調子はどうした!? かかってこいよ!」

デンリュウ 「リュウ! リュウリュウ!」

ケン 「デンリュウ…ワイは…何ぼお前と長いこと付き合ってもお前が何を言ってるかは正直わからへん…」
ケン 「せやけど…その涙…あの叱咤…それは、理解したつもりや…」
ケン 「どんな結果になっても…ええんやな、デンリュウ?」

デンリュウ 「リュウ!」

デンリュウはワイを信頼している。
そして、ワイの勝利を望んでくれとる。
トレーナーとして、これ程嬉しいことはない。

ケン 「デンリュウ…ワイに勇気をくれ! そして勝つんや!」

デンリュウ 「リューッ!!」

バチバチッ!

デンリュウは再び激しい火花を上げる。
こうなったらやるしかあらへん。
悔いは残さん!

ケン 「デンリュウ! 『10まんボルト』!」

デンリュウ 「リューッ!!」

バチチィ!!

ヨー 「エアームド、避けろ!」

エアームド 「エアー!」

エアームドは高速で動いて、的を絞らせない。
さすがに狙って当てんのは難しいわ。

ケン 「的を絞るんわ面倒や! デンリュウ、『ほうでん』!」

デンリュウ 「デーン!」

ババババババッ!!

エアームド 「!? エアーッ!?」

ヨー 「うわっ!? くそ!」

デンリュウの『ほうでん』は無差別攻撃や。
いくら素早さを上げてもフィールド全体にばら撒かれる電撃は回避できんようやな!

ヨー 「くそ! エアームド! 『つばめがえし』!」

エアームド 「エアー!」

ザシュウ!

デンリュウ 「!? リュー!!」

ケン 「舐めんなや! 『リフレクター』で守れらとるデンリュウをそう簡単に倒せると思うなや!」

デンリュウは超スピードで襲い来るエアームドの『つばめがえし』をまともに喰らってしまう。
だがまだや、まだ倒れん!
ワイらは負けん! 絶対に!

ケン 「デンリュウ、『わたほうし』!」

デンリュウ 「リュッ!」

パサァッ!

エアームド 「エアッ!? エアーッ!?」

シャベリヤ 『ああっと! ここでエアームドの体にデンリュウの『わたほうし』が絡みつく!』
シャベリヤ 『エアームド、これでは素早さが半減だ!』

ヨー 「しまった!? くそ! エアームド! 『ドリルくちばし』!」

エアームド 「エーアー!!」

ケン 「これで最後や! デンリュウ、『かみなりパンチ』!」

デンリュウ 「リュウーッ!!」

エアームド 「エアー!!」

ズガガガガッ!!!

シャベリヤ 『エアームドの『ドリルくちばし』がデンリュウの胸に突き刺さる!! しかしぃ!!』

デンリュウ 「デ…デン…」

ケン 「いっけー!!」

デンリュウ 「リュウーッ!!」

バッチィィン!!

エアームド 「!?」

ズササァァ!!

エアームドの鋼の体がデンリュウの渾身の一撃に吹き飛ばされる。
どうや!?

エアームド 「エ…エア…」

デンリュウ 「リュ…リュウ…」

シャベリヤ 『2匹とも大変苦しそうだ! しかし倒れない! この戦い! まだ! 終わらないのか!?』

ケン 「デンリュウ…」

ヨー 「エアームド…?」

エアームド 「エア…」

デンリュウ 「リュ…ウ…」

ドッサァァッ!!

審判 「!? りょ、両ポケモン、戦闘不能!」

シャベリヤ 『な、なんとここでダブルノックアウト!!!』
シャベリヤ 『まさか互い最後のポケモンが同時にダウンしてしまった!』
シャベリヤ 『しかし、ポケモンリーグではドローはありません!』
シャベリヤ 『珍しいことですが、ここでこれまでのバトル結果で審議を行いたいと思います!』
シャベリヤ 『審議はこれまでのバトル経過での流れでどれだけ守れたか、すなわち体!』
シャベリヤ 『どれだけ上手く攻められていたか、すなわち技! そしてどれだけ勝ちたいとバトルに表れていたか、心で判定されます!』

ケン 「判定か…」

ヨー 「どうなるんだ…?」

シャベリヤ 『ポケモンリーグ運営委員会が出した結果を今、私が代表で発表いたします!』
シャベリヤ 『まず体! これはヨー選手!』

ヨー 「! よし!」

シャベリヤ 『次は技…これはケン選手!』

ケン 「! よし、一勝一敗!」

なんと、ここで分かれる。
次の心の判定で勝敗が決まる…。
勝ったのは…どっちや…!?

シャベリヤ 『心…』

ヨー (俺だ…俺に決まっている!)

ケン (ワイは…ワイはデンリュウを信じる! 勝ったのはワイや!)

シャベリヤ 『…ドロー!!』

ケン 「!?」
ヨー 「!?」

シャベリヤ 『なんということでしょう!? この審議でさえ、決着がつかないとは! しかし、あくまでポケモンリーグは3回戦進出者を決定しなければなりません!』
シャベリヤ 『非常に珍しいことですが、ここでポケモンリーグ特別ルールが用いられます!』



リュウト 「ポケモンリーグ特別ルール?」

イヴ 「ポケモンリーグ特別ルール…エキストララウンド…」

サティ 「それってなんなのかしら?」

イヴ 「互いこれまで使用したポケモン6匹のうち一匹を選んで、1対1の最後のバトルを行う」
イヴ 「バトルに使うポケモンは元気の塊とピーピーマックスがひとつずつ支給される」
イヴ 「しかし、このエキストララウンドが用いられるのを見たのは生まれて初めてだ…このサイユウ大会では初かもしれないな」

ユウキ 「あくまで決着はバトルか…」

リュウト 「はたして…どうなるのか?」



シャベリヤ 『再び、両者には10分の休憩時間を差し上げます! その間に回復する1匹を選び、最後のバトルに望んでください!』

ケン 「…まさか、こんなことになるなんてな」

ヨー 「これが…泣いても笑っても最後か…」



…………。



ケン 「最後の一匹…か」

ワイは控え室に戻ると全ポケモンをボールから出す。
みんなボロボロや。
一体、誰を選べばいいか?

ケン (ヨーの手持ちはオーダイル、スターミー、レアコイル、ヘラクロス、ウインディ、エアームド)

デンリュウが相性ええんはオーダイル、スターミー。エアームドか。
マンタインはウインディ。
ヘルガーはレアコイルとエアームドとヘラクロス。
カポエラーはレアコイル。
ハッサムはスターミーとヘラクロス。
ヨルノズクはヘラクロスか。

デンリュウ 「リュ…リュウ…!」

ケン 「デンリュウ…?」

デンリュウは必死で立ち上がる。

ケン 「…せやな、悔いは残さん…やっぱり最後はお前か、せやけど、みんなもええか?」

ワイは他のポケモンたちを見渡す。

ハッサム 「…ハッサ」

マンタイン 「マン〜♪」

ヨルノズク 「ホーホー!」

ヘルガー 「ガー♪」

カポエラー 「カッポ!」

どうやら、ポケモンたちはみな、デンリュウが出場で文句はないようだった。

ケン 「デンリュウ…この薬を」

ワイは元気の塊とピーピーマックスをデンリュウに与える。

デンリュウ 「…リュウ! リューッ!」

ケン 「…みんな、戦うんは確かにデンリュウ1匹や」
ケン 「せやけど、忘れんでいて欲しい、ワイらの気持ちはひとつや! 皆一丸になって勝つんや!」



…………。



ヨー 「…まさか、こんなことになるなんてな…」

最後の最後でドロー…しかし、ここで最後の選択を選ばされる。

ヨー (ケンなら間違いなく…デンリュウを選ぶよな…俺はどう応えればいい?)

ただ、勝ちに徹すればいいのか…?

ヨー 「…俺は…俺らしくいこう、俺は…必ずケンを越える!」

俺は決意を固める。
恐怖は微塵も無い。
負ける気もしない。
あくまで勝つ!
俺の全てを持って!



…………。



シャベリヤ 『さぁ、異例ながら決着をつけるべくエクストララウンドがいよいよ始まろうとしています!』
シャベリヤ 『ルールは簡単! 互い使用ポケモンは1匹! 勝った方が第3回戦へと駒を進めます!』

ケン 「…ワイの最後のポケモンはこいつや!」

デンリュウ 「リュウー!!」

ワイは当然ながらデンリュウを出す。

ヨー 「…やっぱりデンリュウだよな…俺が選んだ答えは…こいつだ!」

ウインディ 「ウォォン!」

ケン 「ウインディ!?」

なんと、ヨーはスターミーやヘラクロスではなく、ウインディをセレクトしてきた。

ヨー 「俺は俺として戦う…スターミーたちはみんな師匠のポケモンだ…俺の真のポケモンじゃない!」
ヨー 「俺はこのウインディでお前に勝つ! そして真にポケモンたちに認められ! 真のポケモントレーナーへとなる!」
ヨー 「かかってきやがれケン! 俺の全身全霊をかけて! お前に勝つ!!」

ケン 「ヨー…ふ、ええ度胸や! 返り討ちじゃ!!」

シャベリヤ 『さぁ! 互いやる気十分! では最後のバトル! 見せてもらいましょう! バトル…スタート!!』

ヨー 「ウインディ、『かみくだく』!」

ケン 「上等や! デンリュウ、『かみなりパンチ』で迎え撃て!」

デンリュウ 「リュウ!」

ウインディは小細工無しにデンリュウへと突っ込んでくる。
こっちはその場から動かずカウンターを狙う。

ヨー 「カウンターなんてさせるか! ウインディ、『しんそく』!」

ウインディ 「ウォォン!」

ヒュン!!!

ケン 「!? 速っ!?」

デンリュウ 「リュウッ!?」

ドカァッ!

ウインディは突然物凄いスピードを見せ、デンリュウに体からぶつかってくる。
あまりのスピードにカウンターがまるで間に合わん!

ケン 「スピードは大したもんや! せやけど火力不足やな! いっけー!!」

デンリュウ 「!! リュウーッ!!」

バチィン!

デンリュウはウインディの『しんそく』で体をのけぞらすが、そのまま問題なく『かみなりパンチ』をウインディに浴びせる。
ウインディはそれを喰らって3メートルほど吹き飛んだ。

ケン 「ふ…はは…まるでそっくりやな」

ヨー 「ああ…まるでデジャブだ…あの時の戦いの!」

ワイらはあのチャンピオンロードでの戦いを思い出す。
あの時もワイはデンリュウ、ヨーはウインディやったな。
戦法もまるでそっくりや。

ケン 「せやけど! あのバトルは決着つかんかったな!」

ヨー 「ああ! 今こそ決着をつけてやるよ!」

ケン 「勝つのはワイや!」
ヨー 「勝つのは俺だ!」

ワイらのモチベーションは互角。
こんな充実したバトルは初めてや…まるで自分じゃないみたい戦える。

ケン (すごいやっちゃでヨーは…ホンマに…ホンマすごいわ…せやけど…)
ケン 「デンリュウ! 『ほうでん』!」

デンリュウ 「リュウーッ!」

ヨー 「ウインディ! 『あなをほる』!」

ウインディ 「ウォン!」

ガガガッ!!

ウインディは咄嗟に穴を掘って、デンリュウの『ほうでん』を免れる。
たしかに地面に潜れらたら敵わんわ。
せやけど、出てきたところ…次の一撃で終わらせたる!

ウインディ 「ウォーン!!」

ガガァン!

デンリュウ 「デーンーッ!?」

デンリュウは真下からウインディの攻撃を喰らってしまう。
さすがに弱点攻撃屋からな…きついわ!

ケン 「せやけど! デンリュウ! 『パワージェム』や!」

デンリュウ 「!! リューウー!!」

デンリュウは琥珀のような球体を作り出し、それをウインディに向かって打ち出す!
岩タイプの技や、効果は抜群やで!?

ヨー 「!! ウインディ! 『こらえる』だーっ!!」

ウインディ 「ウウォォォォンッ!!!」

ドカァン!!

ケン 「!? どうや!?」

デンリュウの『パワージェム』がウインディに炸裂する。
決まれば一撃必殺ものやで!?

バァッ!!

デンリュウ 「リュッ!?」

ケン 「な…!?」

なんと、砂煙の中からボロボロになりつつもデンリュウに飛び掛ってくる影があった。
ウインディや!

ヨー 「これで終わりだー!! ウインディ、『オーバーヒート』!!」

ウインディ 「ウォォォォォン!!!」

ドッカァァァァァァァン!!!!

ウインディはデンリュウと接触した瞬間大爆発が起こる。
ウインディの『オーバーヒート』…これは!?

デンリュウ 「リュ…リュ〜ウ〜…」

ドサァッ!!

ケン 「あ…」

審判 「!! デンリュウ戦闘不能! よって勝者ヨー選手!」

シャベリヤ 『決まったー!! ついにこの死闘に決着がついた! 勝ったのはヨー選手だ! Congratulation!』

ヨー 「あ…あはは…勝った…やった…やったーっ!!」
ヨー 「勝ったんだ! 俺…俺は! 勝ったぞーっ!!!」

ケン 「まさかなぁ…遅れとるとは…」

デンリュウ 「リュウ…」

ケン 「お前のせいとちゃうよ、あいつがすごいだけや」
ケン 「ワイらより、ほんのちょっぴり、運と勝ちたいと思う意思が強かっただけや」

デンリュウは負けたことに申し訳なさそうな顔をした。
ワイかて悔しないわけやない、せやけどワイもヨーも全力でやった結果や。
ただ、負けただけや。

ケン 「ヨー…」

ヨー 「あ、ケン…」

ケン 「強うなったのぅ…完敗や」

ヨー 「ちょっと運が良かっただけだよ…」

ケン 「ふ…ならその運で最後までやりぬけ! 目指すは優勝や!」
ケン 「ワイに勝ったんや! 胸張れや!」

ワイはヨーの右手を取って、それを天高く掲げる。

ワァァァァァァァァッ!!!
パチパチパチパチパチパチ!!!

観客たちが応えてくれる。
まるで優勝したかのような騒ぎようやな。

ヨー 「あ…あはは…」

ケン 「ヨー…3回戦も勝てや!?」

ヨー 「…おう!」



…………。



サティ 「うぅ〜…感動的なバトルだったかしら〜…」

リフィーネ 「まさに、ドラマティックバトルでしたネ〜…涙が止まりません〜」

ユウキ 「勝ったのはヨー…か」

リュウト 「強敵…だな」

イヴ 「ああ…このバトルでヨーは更に成長した、これは一筋縄では行きそうにないな」

会場は大歓声に包まれていた。
みな、このバトルに感動している。
互いが死力を尽くし、そして輝いていた。
その結果、勝利者と敗者が生まれたがケンはヨーを立てている。
良く言えば見事なスポーツマンシップか…。

ユウキ 「とりあえず、おめでとってところかな…」




ポケットモンスター第81話 『死闘』 完






今回のレポート


移動


サイユウシティ


3月5日(ポケモンリーグ本戦2日目)


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

チルタリス

ユレイドル

ボスゴドラ

コータス


見つけたポケモン 66匹






おまけ



その81 「次回予告です、はい」





死闘に幕は閉じた…だが、忘れてはいけない。
これはまだ戦いの序曲ということを。
戦いはまだ続く。
次なるカードはペルVSミソラ。
勝つのはどちらか…?

ユウキ 「どっちが勝っても…こわいこわい」




おまけその81 「次回予告です、はい」 完


ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system