ポケットモンスター サファイア編




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第86話 『対抗戦』






『3月6日 時刻10:25 RMUサイユウ支部』


シズク 「……」

ヨー 「……」

ガチャリ。

ユウキ 「よ、おまたせ」

昨日起きたとある事件の翌日、その事件の関係者である数名がRMUに召集された。
事件についての経緯と関係性を取調べで調査された。
その取調べを行ったやっこさんはRMUサイユウ支部支部長のメノースとかいうおっさん。
とりあえず、やましいことは何も無いので本当の事を話してさっさと抜け出した。

ユウキ 「次はシズクちゃんだってさ」

シズク 「…わかりました」

取調べは順番に行われ、最初が俺で次がシズクちゃん、ラストがヨーってわけだな。
シズクちゃんは取調室の横に置かれていた椅子から立ち上がり、俺と入れ替わり、取調室へと入っていく。
ちなみに、正確には会議室だが…。

ヨー 「…なぁ、何話してたんだ?」

ユウキ 「グラードンの件と、アカギって男の組織の件」

ヨー 「グラードンは話題になっていたな…」

ユウキ 「アカギの件は闇に消されてたがな」

3月5日の夕刊及び3月6日の朝刊にはでかでかとグラードンの事件の事が書いてあった。
おかげで本来今日行われるはずであったポケモンリーグ第3回戦は急遽明日3月7日に変更された。

ヨー 「はぁ…やべぇな…俺、3回戦出れねぇかも…やっちまったからなぁ…」

ユウキ 「…今更、悔いているのか?」

ヨー 「情けないけどな…やっぱりししょ…アカギの事忘れられないし…かと言ってポケモンリーグには出たいよな…」

ユウキ 「かったる…」

ヨー 「なんだよ…それ、なんかむかつくな…」

ユウキ 「かったるい要因一つ、俺はそれほどポケモンリーグに未練はない、ついでにもう一つ師匠だろうがアカギだろうが今更変えるのはなおかったるいと思う」

ヨー 「……」

ユウキ 「じゃ、帰るかね…」

俺はそう言うとRMUのビルを出て、ポケモンセンターに帰ることにする。

ガチャリ。

ユウキ 「?」

ヨー 「あ…」

シズク 「次…どうぞ」

ヨー 「あ…うん」

ユウキ 「……」

丁度俺が席を立ったとき、シズクちゃんが部屋から出てくる。
えらく早かったな。

ユウキ 「お嬢さん、随分早かったな…何、話したんだい?」

シズク 「あなた方には関係ありません」

ヨー 「ど、どうしたんだシズクちゃん?」

部屋から出てきたシズクちゃんは随分とまぁ、入る前に比べてトゲトゲしくなっていた。
よっぽどあのメノースっておっさんに嫌味を言われたのか?
いや、悪口や中傷された位でこの娘が動じる筈がない。

シズク 「それより早く部屋に入ったらどうですか? それでなくてもあなたの立場は微妙なのですから…」

ヨー 「あ、ああ…」

ユウキ 「じゃ、俺たちはもう帰るがいいよな?」

ヨー 「ああ…」

俺はやや足取りの速いシズクちゃんに合わせてビルを出るのだった。



…………。



メノース 「…ヨー選手、ジョウト地方ヒワダタウン出身、ギンガ団の主犯格アカギに支持」
メノース 「本年度ポケモンリーグホウエン大会第3回戦進出、次回カードはBブロック第3回戦第1試合ヨー選手VSペル選手」

ヨー 「あ…あの…」

俺は部屋に入るとただ椅子に座らされ、質問も何もされていなかった。
ただ、このメノースっていう支部長さんが淡々と俺の資料を声を出して読み上げていた。

メノース 「…言わなくてもわかっているとは思うが君は犯罪者に加担した、つまり刑法がある」

ヨー 「…! う…あ…」

メノース 「…とはいえ、この場に残った事から酌量の余地もあるし、なにより君はまだ18歳未満だ」

ヨー 「あの…やっぱ、少年院行きですか…?」

メノース 「ここは家裁ではないよ、少年院に君を送る権限などない」
メノース 「だけど、君を助けることはできる」
メノース 「少なくとも、このままでは君は第3回戦に出ることさえ出来ない」
メノース 「だけど、君が少しでもギンガ団のこと、アカギのことを話してさえくれれば君を私たちの権限で匿おう」

ヨー 「な…んなことできるのかよ…じゃなかった…できるんですか!?」

メノース 「裁判と言うのは…証拠が重要になる」
メノース 「君が我々にアカギたちのことを話してくれれば君が不利になる証言は一切しない」

ヨー 「それって…警察に嘘をつくってことですか?」

メノース 「目撃者はうちの職員一人と君たちだけだからね…裏路地の方である意味助かったな」

ヨー 「警察に知らせた方が早く掴まるんじゃないんですか!? それとも警察には任せられないと!?」

メノース 「それは違うな、警察にも教える、君の刑罰は抜きでね」
メノース 「…そうだな、こう考えればいい、君の身柄はRMUが一時的に引き取る」
メノース 「そして、司法取引を警察に仕掛けると思えばいい、無論そんな都合のいい話はないから例えだがな」

ヨー (キナくさいよな…けど、今頼れるのはこれだけか…)
ヨー 「わかりました…話します…その代わり」

メノース 「ああ…まぁあまり期待はしてないがな…」



…………。



『3月6日 時刻11:00 サイユウシティ:広場』


ワイワイガヤガヤ!

ユウキ 「あん?」

シズク 「?」

俺とシズクちゃんはたまたま向かう先がポケモンセンターと一致していたのでポケモンセンターに向かっていると通りかかったポケモン広場で賑わいが見れた。

ユウキ 「ちょっと見ていくか…シズクちゃんはどうする?」

シズク 「…行きましょう」

ユウキ 「…落ち着いたみたいだな」

シズク 「幾分は…」

シズクちゃんはいい加減ビルを出て時間が経って落ち着いたようだ。
さっきのギスギスした空気に比べるとかなり近寄りやすくなっている。
よっぽど本人にとって嫌な事あったんだろうな…。
シズクちゃんってバトルの時は洒落にならん位おっかないが普段は口数の少ない聖人君主…。
まるで鬼子母神のような人だからなぁ…。

ユウキ 「いったいどうし…お?」

アスナ 「あ…先生」

アカネ 「あーんど、シズクちゃん…やっけ?」

なんと広場にはアスナとアカネがいた。
さらには今年のポケモンリーグ参戦者も数多く見られるんですが?

ケン 「丁度ええとこ着たわ、お前ら」

ユウキ 「一体、何おっぱじめる気だ?」

アスナ 「えっとね…最初は今日も特訓をやっていたんだけどね、なんだか色んな人が手伝ってくれることになってね」

アカネ 「そんならって、ここで対抗戦やることになったんやわ」

ハルカ 「先鋒戦シングル、次鋒戦ダブル、中堅戦シングル…て感じなんだけど副将戦のダブルには二人足りなかったの」

ツカサ 「そこへ丁度あなたたちが」

ユウキ 「あれ? あんたたしかアイドルの…」

ツカサ 「はい、ツカサです♪ よろしくお願いします♪」

ユウキ (こんな所で油売ってて大丈夫なのか?)

アカネ 「それで大将はウチとアスナやねん、どっちかに入ってほしいんやけど…」

ユウキ 「…強制参加か」

アカネ 「ええやん〜、どうせ暇やろ?」

ユウキ 「…まぁ、いっかならアスナに着かせてもらおう」

アスナ 「ありがと、先生♪」

アカネ 「なんとーっ!? ならシズクちゃんは…?」

シズク 「じゃ、私も…」

アスナ 「戦力大幅アーップ!!」

アカネ 「おのれ〜…やらせはせん、やらせはせんぞぉ!」

ユウキ 「ところで、俺は副将戦固定なのか?」

ハルカ 「もうオーダー、決まってるからね」

ユウキ 「で、そのオーダーはどうなってんの?」

ハルカ 「始まってからのお楽しみ♪ ちなみにあたしは非参加だけどね」

ユウキ 「なんだ、出てないのか?」

ハルカ 「仮にもポケモンリーグ参加者たちよ? 無理無理!」

ユウキ (そんなもんかね…)

ハルカ (あたしはルビーのユウキ君じゃないから…)

ハルカ 「えー、それじゃあアスナ・アカネチーム対抗戦を開始しまーす!」
ハルカ 「ルールはポケモンバトルを5戦して先に3勝したチームの勝ち! 審判はあたしがしまーす!」
ハルカ 「それじゃ、まずは先鋒戦!」





アスナチーム:タクマル VS アカネチーム:イブ






ドドンと出した割には割と瞬殺された二人だった。

ユウキ 「なーんか、印象薄いよな〜」

シズク 「イブさん、レン君に手も足も出ませんでしたからね」

ケン 「タクマルはんも結局の所はリフィーネはんの引き立て役やしな…」

サティ 「タクマル君は予選でレン君に瞬殺されたかしら〜」

ユウキ 「つまり、二人纏めてレンにあしらわれたと」



タクマル 「…言われたい放題だね…」

イブ 「でも、悲しいけど事実です…」

タクマル 「ところで、日本語上手になったね?」

イブ 「毎日頑張って勉強しましたから…」

ハルカ 「使用ポケモンは1匹! それじゃ同時に!」

タクマル 「いけ! オオタチ!」
イブ 「Go! マッスグマ!」

シズク 「両者、ノーマルタイプですね」

ユウキ 「交代無しのルールだからなぁ…」

タクマル (ノーマルタイプ同士の対決か!)

イブ (これは力量次第で決まりそうね!)
イブ 「先攻はもらいます! 『ずつき』!」

マッスグマ 「グマーッ!!」

ケン 「考えてみたらポケモンって外国産でも鳴き声は万国共通なんやな〜」

ユウキ 「ちなみに声優も一緒だな」

アスナ 「声優って?」

シズク 「別の世界の話です」

タクマル 「オオタチ、『ハイパーボイス』で弾き返せ!」

オオタチ 「オーオーッ!!」

ズバァン!!

マッスグマ 「!? グマーッ!」

ユウキ 「いい攻撃だな、あのタイミングなら回避は難しいぜ」

シズク 「回避方法はありました?」

ユウキ 「反応速度がもうちょい速くて、直角カーブができるなら」
ユウキ 「オオタチの『ハイパーボイス』は対象から扇型を描いて放射される、マッスグマのスピードなら2秒あれば懐だが僅かに発射に間に合わない」
ユウキ 「だが、近づけば近づくほど効果範囲は狭まるわけだから、反応速度と熟練度さえ満たしているなら回避はできた」

イブ (く!? 真っ直ぐ向かったんじゃ勝てないか!)
イブ 「だったら『10まんボルト』!」

タクマル 「オオタチ! 『ドわすれ』!」

オオタチ 「オオターチ?」

バチバチバチィ!

ユウキ 「おお、今度は特防アップか、元々マッスグマ種は特殊攻撃は苦手だからな〜」

イブ 「今よ! 『しんそく』!」

マッスグマ 「グマグマーッ!」

オオタチ 「!?」

ドッカァ!!

イブは待っていましたとばかりに命令を下す。
『しんそく』は『でんこうせっか』の上位技でノーマルタイプ。
覚えるポケモンは少ないが強力な技だ。
ごく稀に『しんそく』を覚えたマッスグマを見るな。

シズク 「ユウキさん、この戦法どう見ます?」

ユウキ 「手札を程よく隠しつつ相手に主導権を握らせているように見せかけて、ジョーカー切ってズドン」
ユウキ 「十分通用するだろうさ、Rなハルカにも通用しそうだな」

もっとも、もうちっと要領よくやりゃいいものを…。
トレーナーもポケモンも性格ある以上無理は言えんか…。

イブ 「これでおしまい! マッスグマ『おんがえし』!」

マッスグマ 「グーマー!!」

オオタチ 「タッチーッ!?」

ドッサァァァァ!!

ハルカ 「オオタチ戦闘不能! 勝者イブ!」

アカネ 「おっしゃーっ! まずは一勝や!」

タクマル 「あ〜あ、負けちゃった…」

×タクマルーイブ○

タクマル 「そういや、僕一回も勝ったことないな〜…」

ケン 「別シリーズでの活躍に期待やな」

ハルカ 「はーい! じゃ、時間(行数)も惜しいから次鋒戦始めまーす!」





アスナチーム:ツカサ&アスカ VS アカネチーム:ケン&リフィーネ






ハルカ 「ルールはマルチバトル方式! 使用ポケモンは一人一匹よ!」

ツカサ 「いくよ、アスカ!」

アスカ 「オッケー! ツカサ!」


ケン 「えーと、まぁ…よろしゅう」

リフィーネ 「はぁい♪ がんばりまショー!」


ユウキ 「ヲイヲイ…3回戦進出者がこんな草バトルに参加して大丈夫なのか?」

タクマル 「それ言ったらユウキにいちゃんだってそうじゃん」

ユウキ 「俺は手の内見せる気はないがな」

まぁ、使うポケモンはバレとるから、隠すにも限度があるが。
そして、行数もまずいから早速バトルが展開される。

ケン 「いっけーっ! ハッサム!」

アスカ 「いって! マニューラ!」

リフィーネ 「カモン! グレイシア!」

ツカサ 「お願い! ビークイン!」

ハッサム 「ハッサ!」
グレイシア 「シア!」

マニューラ 「マニュ!」
ビークイン 「ビー!」

ケン 「じゃ、先手必勝じゃい! ハッサム、マニューラに『メタルクロー』!」

アスカ 「避けて、マニューラ!」

リフィーネ 「グレイシア、マニューラに『こおりのつぶて』!」

グレイシア 「シアー!」

ビビビッ!

マニューラ 「!?」

避けようとするマニューラに『こおりのつぶて』がヒットする。
ダメージはほとんどないが、動きが一瞬止まる。
そして、それこそがマニューラの命取りだ。

ツカサ 「ビークイン! マニューラを庇って『ぼうぎょしれい』!」

ビークインはマニューラの前に立ち、小さな蜂を穴から出して体を覆う。
そしてそこにハッサムが襲い掛かる。

ハッサム 「ハッサーッ!」

ドカァ!!

ビークイン 「!?」

ハッサムの『メタルクロー』がビークインの『ぼうぎょしれい』をぶち抜き、ビークインにダメージを与える。

ユウキ 「あのハッサム、かなり高火力だな」

シズク 「そうですね、軽減されたとはいえ、ビークインがダメージを受けました」

ユウキ 「あの馬鹿、やっぱりレベルはかなり高いんだな…」

ツカサ 「く…ビークインがダメージを受けた」

アスカ 「最初の攻防は完全にやられたね…だけど! マニューラ、グレイシアに『つじぎり』!」

ツカサ 「よし! ビークインは『こうげきしれい』!」

ビークイン 「ビー!!」

ビビビビビビ!!

ハッサム 「ハッサ! ハッサ!」

グレイシア 「シアッ!?」

ビークインの『こうげきしれい』で出てきた子蜂が二匹を襲う。
本来単体技だが分散させて、攻撃よりむしろ妨害に使っている。

ユウキ 「上手い使い方だな、子蜂半分じゃダメージには繋がらないが、目の前をチラついて鬱陶しいことこの上ない」

シズク 「でも、どうやってあんな使い方覚えさせたんでしょうね?」

ケン (ちぃ!? どうする、『こうそくいどう』で振り払うか!? せやけどそれじゃグレイシアをカバーできへん!)

リフィーネ 「グレイシア! ハッサムに『ふぶき』!」

グレイシア 「!? シア!?」

ケン 「!? そうか! 一気に行くで! マニューラに『アイアンヘッド』!」

ユウキ (なるほど…『ふぶき』でダメージ覚悟ながらハッサムを動きやすくしたわけか)

『ふぶき』で子蜂は吹き飛ばされ、ハッサムは気兼ねなくマニューラに飛び込んだ。

ハッサム 「ハッサーッ!!」

マニューラ 「!? マニューッ!!」

マニューラとハッサムが空中で交差した瞬間、戦闘が始まる。
ハッサムの攻撃を察知したマニューラが一瞬早くハッサムの腹部を『つじぎり』で切り裂く。
しかし、ハッサムも気合を入れ、思いっきりマニューラの頭部に『アイアンヘッド』を叩き込んだ。

ズドォン!!

マニューラはそのまま地面に叩きつけられる。

ツカサ 「! ハッサムに『パワージェム』!」

ビークイン 「ビーィー!!」

ハッサム 「!!?」

ズドォン!!

腹部を痛めたまま着地したところに『パワージェム』が炸裂する。

マニューラ 「マニュ〜…」

ハッサム 「ハッサ〜…」

ハルカ 「マニューラ、ハッサム戦闘不能!」

シズク 「やっぱりあのハッサムがネックでしたね」

ユウキ 「ああ、だけど上手いこと倒せたな」

ケン 「戻りぃ、ハッサム」

アスカ 「戻ってマニューラ」

こうなると事実上シングルと同じか、リフィーネさんの方が有利に思えるがどうかねぇ?

ツカサ 「とりあえず、『かいふくしれい』よビークイン」

ビークイン 「ビィィ…」

ビークインは子蜂を集め、体をケアし始める。

リフィーネ 「…グレイシア、『れいとうビーム』!」

ユウキ (一瞬悩んだな! まぁ理由はわかるがな!)

ツカサ 「『パワージェム』!」

ユウキ (伸るか反るか!)

シズク (恐らく反りますね…ですが運次第では…)

グレイシア 「シー!!」

ビークイン 「ビィィ!!」

ビークインは『かいふくしれい』を途中で止め、『パワージェム』の態勢に入る。
しかし、どう考えても『れいとうビーム』が先に届くぜ?

ビシィィ! ギュオオオオッ!!

リフィーネ 「!? そんな!?」

ツカサ 「! いっけー!!」

ビークイン 「ビーィー!!」

なんと、奇跡のようなことが起きた。
グレイシアから放たれた『れいとうビーム』は回復を取りやめになった子蜂たちに当りわずかに弾道が逸れ、ビークインの細い胴を僅かに掠め外れたのだ。
そしてそのまま『パワージェム』は放たれ…。

ズドォン!!

グレイシア 「シアーッ!?」

ハルカ 「グレイシア、戦闘不能!」

リフィーネ 「Oh my god…」

ユウキ 「伸ったな…」

シズク 「伸りましたね…」

結果は『パワージェム』の直撃を受け、ビークイン勝利。
状況とレベルを考えればどう考えてもリフィーネさん有利だったのに。

アスナ 「はぁぁ…何はともあれ1勝1敗…」


○ツカサ&アスカVSケン&リフィーネ×
×タクマルVSイブ○


ハルカ 「はーい! 時間ないから次ねー!」

ユウキ 「なんか焦ってるな…」

シズク 「この後おまけも控えてますからね」

ユウキ 「次回回しにすりゃいいだろうに…」

アスナ 「連動小説との掛け合い上だね」

ユウキ 「かったる…」

ハルカ 「そこ! 無駄な時間(行数)食うから喋らないで!」
ハルカ 「では、中堅戦始めます!」





アスナチーム:サティ VS アカネチーム:アルタ






サティ 「ついに出番かしら〜♪」

ユウキ 「居たのか?」

サティ 「あんまりかしらー!?」

ユウキ 「いや、だって出番なかったし」

サティ 「ちゃんと喋ってるかしら!?」

アルタ 「……」

シズク 「アルタさん、退院おめでとうございます」

アルタ 「……」(コクリ)

アルタ君はポケモンリーグ本戦で無茶な戦法を用いてしまい、病院に入院する事態になってしまったのだ。
しかし、とりあえず元気になったようだ。

ハルカ 「使用ポケモンは1匹、それじゃ始めー!」

サティ 「おいでませ、ムウマージかしらー!」

アルタ 「……」

ムウマージ 「ムウ〜♪」
キルリア 「キル〜」

サティ 「あーっはっはっは! エスパータイプ、それも中途進化のキルリアなんて瞬殺かしら!」

ユウキ 「んな事言ってると足元掬われるぞ〜」

サティ 「だいじょーぶ! 獅子は兎を倒すにも全力を尽くす! つまりこのサティ容赦しないかしらーっ!?」

バチィン!!

ムウマージ 「ムウッ!?」

サティ 「て…え? じゅ、『10まんボルト』ーっ!? え、えとムウマージ、『シャド…!」

ギュオオオッ!! ドッカァァァン!!

ムウマージ 「ムウウ〜…」

ハルカ 「ムウマージ戦闘不能!」

サティ 「んな馬鹿なかしら!?」

アルタ君は命令を口に出さないから、サティが無駄口を叩いている間に『10まんボルト』を叩き込み、仕上げに『シャドーボール』をぶち込んだのだ。

シズク 「逆に瞬殺されましたね」

ユウキ 「キルリアだからと言って相手を馬鹿にするだ」

サティ 「最低かしら〜…」(泣)


×サティVSアルタ○
○ツカサ&アスカVSケン&リフィーネ×
×タクマルVSイブ○


ハルカ 「次、副将戦!」





アスナチーム:ユウキ&シズク VS アカネチーム:ミソラ&レン





ユウキ 「ちょっと待てい! レン!!」

レン 「ほえ? なーにー? ユウキお兄ちゃん?」

ユウキ 「お前、明日試合だぞ!?」

レン 「ええ? それってユウキお兄ちゃんも一緒じゃない?」

ユウキ 「お前、わかってるのか!? この試合の意味わかってるのか?」

レン 「うう…どういうこと〜? 僕、わかんないよ〜…」

ユウキ 「はぁ…」

レンははっきり言って手の内を隠せるトレーナーじゃない。
間違いなく、天然全開マジバトルだ。
明日の試合いかんでは俺とレンは戦うんだぜ?

ユウキ 「たく…もえもんだか人間だかわからない顔しやがって…」

シズク 「もえもんはマニアックでは?」

ユウキ (そういうシズクちゃんも知ってるのか?)

シズク 「ニコニコで調べれば一発です」

ユウキ (心の声聞かないでくれシズクちゃん)

シズク 「……」

ハルカ 「ルールは次鋒戦と一緒! はい、始め!」

ユウキ 「ええい、いけラグラージ!」
シズク 「フシギバナ、行って」

ミソラ 「ゴー! ニドキング!」
レン 「いっくよ、ムッ君!」

ラグラージ 「ラージ!!」
フシギバナ 「バナー!」

ニドキング 「ニドー!」
ムクホーク 「ムクホーッ!」

シズク 「たかが草バトルに主力筆頭投入ですか?」

ユウキ 「俺には俺の考えがあるんでね…てか、シズクちゃんだってそうじゃん」

シズク 「私は明日の試合を気にする必要ないんで、それに負けるのは悔しいから」

ユウキ (うわ…やっぱ怖…つーか、この娘バトルになるとやっぱ怖い…なんつーかオーラ変わるよね…バトルに対しては情け容赦なし…)

レン 「よーし! フシギバナに『ブレイブバード』!」

ムクホーク 「ムクホー!」

ユウキ 「レンは俺が引き受けるから!」

シズク 「了解、私はミソラさんをどうにかします」

ユウキ 「OK! ラグラージ、ムクホークに『れいとうビーム』!」

ミソラ 「ニドキング、『じしん』!」

ニドキング 「ニドーッ!」

ズドォン!

ラグラージ 「ラグッ!?」
フシギバナ 「バナッ!?」

まず、ニドキングの『じしん』がフィールドに走る。
公共施設で使うのはお勧めできねぇな…。

シズク 「『はっぱカッター』」

フシギバナ 「バーナー!」

ヒュンヒュンヒュン!!

ムクホーク 「ムクホ!?」
ニドキング 「ニドッ!?」

『はっぱカッター』は全体攻撃の技だ、とりあえず二匹を怯ませた。
その隙にラグラージがまだ慣れない『れいとうビーム』をムクホークに放つ。

レン 「まずい! 何とか回避するんだ!」

ムクホーク 「ムクホ!」

しかし、ムクホークは僅かに体を沈めて、『れいとうビーム』を回避し、そのまま『ブレイブバード』の態勢に入った。
結構、瞬発力いいじゃねぇか…さすが強敵!

ユウキ 「ラグラージ、ムクホークの攻撃を受けろ!」

ラグラージ 「!? ラグッ!?」

ユウキ 「つべこべ言わず!」

ラグラージ 「ラグラージ!」

ラグラージははぁ!? 正気か!? と言った顔をしたが俺が一喝するとフシギバナを庇い、ムクホークの強烈な『ブレイブバード』を直に受けた!

ユウキ 「踏ん張れ! そして『震貫』!」

レン 「!? 嘘っ!?」

ラグラージ 「!! ラージー!!」

ムクホーク 「!!? ムクホー…」

ドッサァァ!

飛行タイプと言えど『はねやすめ』中は地面タイプの技を受けるように、体内に『じしん』のエネルギーを叩き込めば、飛行タイプといえど通用する。
ムクホークは『ブレイブバード』の反動もあり、一撃でダウンだ。

ラグラージ 「ラ…ラージ…」

ドサァ!!

しかし、『震貫』は相手に直接触れて『じしん』を起こすわけだから、自分の体にも『じしん』の反動が返ってくる。
ただ、便利なだけの技じゃないのだ。
『ブレイブバード』や『すてみタックル』同様、この技には反動が付きまとう。

ハルカ 「あ…ムクホーク、ラグラージ戦闘不能!」

レン 「うう…一回しか攻撃できなかった…」

ユウキ 「戻れラグラージ、ご苦労さん」

俺はさっさとラグラージをボールに戻す。

シズク 「よく、あんな一瞬でここまでの作戦練れましたね…」

ユウキ 「あれ? ばれた?」

シズク 「自分の実力もレン君の実力も見させないように早期に相打ちになるよう仕組んだんでしょ?」

ユウキ 「まぁ、それがお互いのためだからな、じゃ後よろしく」

シズク 「はい、一撃で終わらせますから」

ユウキ (おお…怖ぇ、サティが言うのとは偉い違いだ、マジで終わらせる一言に聞こえるよ…)

ミソラ 「ニドキング、『メガホーン』!」

ニドキング 「ニドーッ!」

シズク 「……」

ユウキ 「ヲイ?」

ニドキングは地面を揺らして、フシギバナに突進する、そしてそのまま『メガホーン』でフシギバナを攻撃するのだった。

ドッカァァァァ!!

フシギバナ 「バ…バナーッ!?」

効果は抜群だ。
ミソラさんのニドキングの攻撃力はすさまじく、シズクちゃんのフシギバナを後一歩まで追い詰める。

シズク 「一発は一発です、『ハードプラント』」

フシギバナ 「バーナーッ!!!」

ズッドォォォン!!

ニドキング 「ニ、ニッドーッ!!?」

ズガァァァ!! ドッシャァァァァン!!

フシギバナは地面を隆起させ、大技『ハードプラント』をニドキングに放つ。
『ハードプラント』は重いニドキングをトラックに跳ねられる子供のようにいとも容易く宙高く跳ね飛ばしてしまう。
相変わらず恐ろしい一撃で…。

ハルカ 「ニドキング戦闘不能! よって勝者ユウキ&シズク!」

ミソラ 「ご苦労様、戻ってニドキング」

シズク 「ありがとう、フシギバナ」

ユウキ 「『しんりょく』は必要なかったろ? わざわざ後手で放たんでも…」

シズク 「確実な勝利を選んだだけですよ、『ハードプラント』を先に放ってはあなたとの戦いの時のようになったかもしれませんから」

ユウキ (だからってな…マジで怖い…)


○ユウキ&シズクVSミソラ&レン×
×サティVSアルタ○
○ツカサ&アスカVSケン&リフィーネ×
×タクマルVSイブ○


ユウキ 「まぁ、これで2勝2敗のタイか、あとは大将戦残すのみ」

ハルカ 「はーい! それでは大将戦! レディース&ジェントルメン!」
ハルカ 「これよりアスナ選手VSアカネ選手の対戦を行います!」





コガネジム、ジムリーダーアカネ
ダイナマイト プリティ ギャル!

VS

フエンジム、ジムリーダーアスナ
火傷しそうな情熱の人






ユウキ 「おい、アカネ! なんだダイナマイトプリティギャルってのはっ!?」

アカネ 「ウチの肩書きやっ!」

ユウキ 「貴様、コガネジムの伝統をぶち壊す気か!?」

アカネ 「だっしゃい! 時代は変わるねん! ジムリーダーにウチが就任してからはジムトレーナー女性率80%! 3年後には100%にしたるわっ!」

ユウキ 「認めたくないものだな…若さゆえの過ちというものは…」

アカネ 「さぁ、見せてもらおうか! ホウエン地方のジムリーダーの実力とやらを!?」

アスナ 「あはは〜…、お手柔らかに」

ユウキ (これが…火傷しそうな情熱の人…ねぇ?)

まぁ…バトルになればわかるんだが…。
はたして現在戦績1勝5敗のジムリーダーがどこまでやれるんだ?

シズク 「ちなみに二人の大まかなプロフィール…」

アカネ
所属:RMUジョウト支部
責任:コガネシティコガネジム
特徴:ノーマルタイプ
就任歴:2年5ヶ月

アスナ
所属:RMUホウエン支部
責任:フエンタウンフエンジム
特徴:炎タイプ
就任歴:5ヶ月

ケン 「経験の差は2年か…」

アスカ 「でも年齢はアスナさんの方が上なんだよね?」

シズク 「さしずめこのバトル…ホウエンジョウト、『情けないジムリーダー1』対抗戦ですね」

アスナ 「はぅぅ!?」
アカネ 「うぐぅ!?」

ケン 「おお…両者ダメージ…て、まさか…?」

ユウキ 「ヲイ…アカネ…お前ジョウトでジムリーダー調整会やってるよな…? 結果は…?」

アカネ 「…さ、最下位…」

シズク 「ちなみに、これがその時のデータです」

ジョウト地方ジムリーダー調整会、参加者8名。

1位:ヤナギ(チョウジジム)7戦全勝無敗
2位:マツバ(エンジュジム)7戦5勝2敗
同率2位:イブキ(フスベジム)7戦5勝2敗
4位:ミカン(アサギジム)7戦3勝4敗
5位:ハヤテ(キキョウジム)7戦2勝4敗1分け
同率5位:シジマ(タンバジム)7戦2勝4敗1分け
7位:ツクシ(ヒワダジム)7戦2勝5敗
8位:アカネ(コガネジム)7戦1勝6敗

アカネ 「アーッ!? アンタなんで知っとんねん!? この情報!?」

シズク 「とある筋からの情報です」

アカネ 「だっしゃい! 上の方が強すぎるねん! ウチがホンマは強いこと証明したる!」

ハルカ 「えーと、それじゃ使用ポケモンは1匹! はじめ!」

アカネ 「いっくでー! ジグザグマ!」

ジグザグマ 「ジグー!」

アスナ 「いっけー! ミミロル!」

ミミロル 「ミミー!」

ケン 「ほう、両者タネポケモンできたか」

アスカ 「ジムリーダーはトレーナーの模範だからね、でも、ミミロル?」

ユウキ 「アカネ、お前、いつからジグザグマを?」

アカネ 「普段利用しとるボックスの管理人から預けたポケモンの数で記念っちゅうて貰った卵から返したんや」
アカネ 「まだ、付き合いは身近いんやがな」

ユウキ 「預けたポケモンの数で記念って…そんなにポケモンゲットしてるのか?」

アカネ 「ちゃうちゃう! コガネジムのもんみんな共用でつかっとるんや、アズサっちゅう人のポケモンボックス利用しとるさかい」

アスナ 「あ、聞いたことがある! あの1500匹預けられるを売りにやってる大手預かり所だよね?」

アカネ 「そうそう、それ! ウチ、ジムで会員登録しとるさかいな」

アスナ 「グループ内なら、違うIDでも預けあえるらしいもんね」

アカネ 「むっちゃ便利やさかいな」
アカネ 「それより、あんた炎ポケモン使いやろ? なんでミミロルやねん! それノーマルタイプやん」

アスナ 「ふ…これはとある炎使いと交換で手に入れたポケモンなのよ…」
アスナ 「ふっふふ…後はバトルで教えてあげるわ…火傷しそうな情熱の人の所以をね…」

ハルカ 「えーと…もうバトル始まってるからねー?」

アカネ 「いくでジグザグマ! 『ずつき』や!」

ジグザグマ 「ジグザグーッ!」

ジグザグマはその名の通り、ジグザグに距離を詰めながら、ミミロルに『ずつき』を仕掛ける。

アスナ 「ミミロル、燃えるほどヒートォ!!」

ユウキ 「…は?」

燃えるほど…なんて?
一瞬、俺が耳を疑った瞬間。

ミミロル 「ミーミーロール!!」

ドッカァァァ!!

ミミロルはジグザグマの『ずつき』の瞬間、全身のバネを思いっきり使って体が浮くほどの強烈な右アッパーを繰り出す。
内容は…ただの『ほのおのパンチ』だ。

アカネ 「ふ…やるやないか! 成る程、たしかに火傷しそうなやな…!」

アスナ 「『やけどなおし』の用意はいいかぁ!?」

アカネ 「アカン! やっぱパクリはアカンて!」

アスナ 「あ、わかった?」

アカネ 「そりゃ、あのお人は有名やさかいな! でも、さすがにパクリはマズイて!」

ちなみにパクリとはカントー地方、グレンジムのジムリーダーカツラの名言、『やけどなおし』の用意はいいか!? のことである。
あんまりにも有名だから全国に知れ渡ってしまった程有名な名言だ。
ちなみにカントーは色んな有名な言葉がある。
新タイプ鋼タイプの出現で立つ瀬無しの石のように硬い男タケシや何故か有名なおてんば人魚姫カスミ。
キョウの謎の笑い方ファファファやシバの謎の気合ウーハーなど、本当に色々ある。
まぁ、それはいずれ語られるであろうカントー編で。

アカネ 「さぁ、時間(行数)もホンマにやばいから一気に行くでーっ!?」
アカネ 「見て驚け! ジグザグマ、『しんそく』!」

ジグザグマ 「ジグザグー!!」

ミミロル 「ミミッ!? ミミーッ!?」

アスナ 「!? ミミロル!?」

ユウキ 「驚いたな…アカネのジグザグマまで『しんそく』使えるのかよ…」

こいつぁ驚いた。
鍛えればかなり強力なポケモンになるかもしれないな。

アカネ 「さぁ、次でトドメや! もう一発『しんそく』!」

ジグザグマ 「ジーグー!!」

アスナ 「負けるなミミロル! 燃えるほどヒート!!」

ミミロル 「ミーミーィー!」

ゴオオオオオッ!!

ミミロルの右腕がこれまでにないくらい燃え上がる。
だが、当たらなければ意味がないぞ!?

ジグザグマ 「ジグー!!」

ミミロル 「ミーミー!!」

アスナ 「いっけーっ!!」

ゴオオゥッ!!

ミミロル 「ミミッ!?」

『しんそく』を使いながらもジグザグに動くジグザグマ。
この動きが不幸にもミミロルの渾身の『ほのおのパンチ』を掠めるだけに留まってしまった。
ジグザグマの動きと止められないミミロルはそのまま…。

ドッカァァァン!!

ミミロル 「ミミーッ!?」

アスナ 「ミミロル!?」

ミミロルは後ろに2バウンドして、倒れた。
結構、強烈な『しんそく』だな。

ハルカ 「ミミロル戦闘不能! よって勝者…!」

ジグザグマ 「ジ…ジグ…」

ドサァ!

アスナ 「え!?」

アカネ 「あ…あら!? ジグザグマ!?」

ハルカ 「え、えと…ジグザグマも戦闘不能! よって、引き分け!」

アカネ 「あ…あれ? おかしいなぁ…倒れるほどダメージなんて受け取らんかったと思ったんやけど?」

ユウキ 「顎の先端を掠めたからな…」

アカネ 「はえ? どういうこと?」

ユウキ 「ミミロル特有の強靭な足腰から放たれる強烈な右アッパーがジグザグマの顎の先端を掠めたんだよ…」
ユウキ 「ここをやられると、ダメージもないのに立てないんだ、ダウンしちまう」

アカネ 「は〜、成る程、んな偶然あるんやな…てか、ようわかったな?」

ユウキ 「…推測だよ」

本当はヒットの瞬間が見えた。
だけど、プロボクサーでもあれほどの高速を見切れはしないだろう。
そんなものが訓練もしてない『普通の少年』であるべき俺が見えるわけにはいかない。
だから、アカネにも俺は嘘をつかないといけない。
俺は…人じゃないから…。
実際のところ、俺がなんなのかはわからない…ある者は言った…『キメナ』と。
俺は人間として生きていくつもりだが、俺の中には得体の知れない何かがあるのは事実だ。
そして…ザンジークも…。

リュウト 「ユウキ君…! ここにいたか!」

ユウキ 「? リュウトさん?」

試合終了後、突然リュウトさんが走って俺に近づいてくる。

リュウト 「あ、RMUの発表は聞いたか!?」

ユウキ 「発表? いや…聞いてないけど?」

リュウト 「…この、レコーダーをよく聞いてくれ、ついさっき流れた物なんだが…」

そう言ってリュウトさんはレコーダーを取り出す。
みんな一体なんなのかとリュウトさんの元に集まる。
俺はリュウトさんの深刻な表情からなにか…嫌な予感がした。

レコーダー 『…発表します、3月7日ポケモンリーグ第3回戦Aブロック第1試合に出場予定のユウキ選手に、不正が発覚、当人の出場を取り消しとします』




ポケットモンスター第86話 『対抗戦』 完






今回のレポート


移動


サイユウシティ


3月6日(ポケモンリーグ本戦4日目)


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

チルタリス

ユレイドル

ボスゴドラ

コータス


見つけたポケモン 66匹






おまけ



その86 「悪」





これは…シズクちゃんとメノースのやり取りの一部始終です…。



『3月6日 時刻某時刻 RMUビルサイユウ支部』


シズク 「シズク…入ります」

メノース 「そこに座りたまえ」

小さな小部屋、長机の向こう側に中年の男が一人座っている。
私は長机の手前にある、椅子に腰掛けた。

メノース 「私はRMUホウエン支部の総支部長のメノース」

シズク (メノース…)

私はメノースを無意識のうちに睨みつけていることに気付き、平常を装う。
この男、かつてあったサカキという男に似ている。
理由はどうあれ、こいつの目は悪だ。

メノース 「さて、君には残念なことがある…」
メノース 「ポケモントレーナーの代表であり、模範であるべき、真の図鑑所有者の一人、オーキドのトレーナーヒミコは全国指名手配されることとなった」

シズク (そう…当然よね)

メノース 「年齢はどうあれ、彼女のやったことは犯罪者への加担だ、まして正義のポケモントレーナーを代表する研究所所属のトレーナーがな」

シズク (嫌に突いてくるわね…何が言いたいわけ?)

この男の顔を見るとイライラしてくる。
改めてさっき出てきたユウキ君の平常心がすごいと思える。
私は、1分もここに居たいとは思わない。

メノース 「さっきからずっと怖い顔してばかりだな…」

シズク 「失礼…ですが、地顔なもので、それより早く用件を」

メノース 「ふふ…我々は、君も共犯者として、警察に報告した」

シズク 「!? どういうこと!? 私は…!」

メノース 「君の証言は、なんの力もない、たとえ偽証でも、君はもう犯罪者だ」

シズク 「…! そういうことですか…それで私に何をしてほしいんですか?」

メノース 「飲み込みが早くて助かるよ、君には別人となってヒミコ君を追って欲しい」

シズク 「つまり、オーキドの問題は、オーキドの者で片付けろと?」

メノース 「その通り、なにせ相手は化け物クラスのトレーナーだからな、こちらもそれ相応のトレーナーを送りたいのでな」

シズク 「随分卑怯なものね…諸悪の根源の癖に…」

メノース 「随分な言われ様だな、我々は善人だよ?」

シズク 「人に罪を擦り付けて、人を好きなように利用するのが善人と!?」

メノース 「静かにしたまえ、外で待っている人たちにまで聞こえてしまうよ?」

シズク 「…く」

この男、とんでもない巨悪だとわかる。
あのアカギも…サカキだって、悪は悪なりに信念や正義がある。
だけど…だけど…この男…純粋な悪だ。
あまりに純粋すぎるゆえ、それは悪として写らない。
恐ろしくさえ感じる。

メノース 「これは、我々が用意した偽造トレーナーカードだ、確認しておくこと」

シズク 「RMUホウエン支部所属ブルー?」

メノース 「君の所属と偽名だよ」

シズク (ブルー…シズクの名は使えないか…)

メノース 「君にもメリットがあるぞ? RMUのエージェントとして動けるからな」

シズク (それは単に私に首輪をつけているだけでしょうに…)

メノース 「君にやってもらいたいことはヒミコの確保、不可能なら排除して構わんよ」

シズク 「排除…殺せと?」

メノース 「不可能ならな」

この男…私たちオーキド研究所出身者の絆を知ってて言っているんでしょうね…。
むかつくわ…吐き気がするほど!

シズク 「偽造カードの方は髪を染めてるわね…」

メノース 「ああ、専用の理容師を派遣する、明日ここに立ち寄って出発してもらいたい」

シズク 「まさか、RMUに脅迫されるなんて思いませんでした…」

メノース 「当然、賢明な君はわかっていると思うが、我々に不利なことをすれば…」

シズク 「…首が飛ぶ、と言いたいのね」

私がそう言うと、メノースは嫌らしく笑い。

メノース 「そう言うことだ」

一般的に首が飛ぶとはクビになる事を言う。
だけど、ここでの場合は、本当に私の生首が飛ぶでしょうね…。
良心のタガがない性でどうしようもない、悪ね…。

シズク 「失礼するわ…」

メノース 「ん? もうかね?」

シズク 「ここに居続けると気分が悪くなりそうなんで…」

私は極力平常を装い続ける。
だけど、私の我慢にも限度というものがある。
周りは私のことを聖人君主とか言っているけど、私はそこまで優しいつもりはない。

シズク (この男に利用されるだけされて死んでたまるか…! 猛毒を内部に抱え込んだっていつか後悔させてやる)




おまけその86 「悪」 完


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