ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第92話 『信じる心』






『3月6日 時刻13:59 選手控え室』


ユウキ (手持ちは後3匹、レンはフローゼル、ムクホーク、スカタンク)

俺は控え室に戻るとこれからの戦いの戦力分析を行っていた。
フローゼルは裏においてはスピードを活かした撹乱戦を用い、表においては同じくスピードによる突貫攻撃を好む。
ムクホーク、裏は詳細不明、表においては強力な技を用い上空からの捨て身の攻撃が大半。
スカタンク、ムクホーク同様裏は詳細不明。表においては遠近両方使いこなす、基本的に回避がないのは同様だがカウンター狙いになるためやや危険。

ユウキ (フローゼルはもう体力はほとんど残っていない、実質イーブンとは言えないな)

だがトレーナーが豹変するだけであそこまでポケモンの戦術が変化するとは予想外だった。
正直、あれだけ戦う相手の戦法がガラリと変わられるとそうすぐには対処できない。
知っている情報から知らない情報を予測して、やれることをやるしかないな。

ユウキ 「さってと……時間か」

俺は時間を確認すると休憩を終わらせ、会場へと向かう。





シャベリヤ 『さぁ、いよいよAブロック決勝戦も後半戦に入ろうとしております……』
シャベリヤ 『しかし、レン選手のフローゼルはすでに前半のバトルでその体力を著しく消耗している』
シャベリヤ 『しかし! ポケモンバトルは何が起こるかわからない! さぁそれではAブロック決勝後半戦だぁ!!』
シャベリヤ 『果たして勝利の栄光を勝ち取るのはどっちなんだっ!?』

審判 「それでは、両者改めてポケモンをフィールドへ!」

ユウキ 「……」

俺はレンを見る。
レンはニコっと笑っており表か裏かがさっぱりわからない。
まぁ、表っていっても表になりきっているだけだが。
恐らく表ならこうするだろう、といった裏なりの考えで行動しているのだろう。
だてに12年間一心同体ではないということなのだろうが、スタイルが変わると対処が変わるからな……。
そんな器用に対処できるポケモンの方が俺にはいない。
向うは向うでまぁ、土壇場に編み出したって感じだし何かしら欠点……というか対処法はありそうな物だが。

ユウキ 「……でてこい、コータス!」

レン 「出番だよ、スカたん♪」

コータス 「コー!」

スカタンク 「スッカッ!」

レンが出してきたのはスカタンク、表の方か。
俺が出したのはコータスだった。
レンを対処する際2種類の方法がある。
ひとつはスピードによる対抗、レンの一撃は基本的に捨て身だ。
回避を捨てて攻撃に完全に絞るから回避が難しい。
それを回避するにはそれ相応の速度が必要。
とはいえ、まともに受けるとそれはかなり危険だ。
だからもうひとつの対抗策、それが耐久力。
かわせないなら受け止める作戦だ。
今回俺がチョイスしたポケモンはラグラージ、サーナイト、ボスゴドラ、コータス、チルタリス、オオスバメ。
先に言ったスピード重視はオオスバメだけで、根本で言えば耐久力で勝負するパーティ構成としている。
とはいえチルタリスとサーナイトに関しては少々、使い方が違うのだが。

レン 「よーしスカたん! 『ヘドロばくだん』!」

スカタンク 「スカッ!」

スカタンクは背を向けると、あそこからヘドロの塊を飛ばしてくる。

ユウキ 「コータス、『ドわすれ』」

コータス 「コ〜???」

コータスは『ドわすれ』で特殊防御力を増幅させる。

バシャァッ!!

シャベリヤ 『『ヘドロばくだん』が炸裂ゥッ!! しかし効果が薄い!』

コータスは『ヘドロばくだん』のダメージはあまり受けていないようだった。
コータスもそれほど特殊防御力が高い方ではない、だが特殊防御力を上げれば別だ。

レン (効果は薄い……裏に変わるべき? それとも表で意表を突く?)

ユウキ (賭けだな……なりきりっつてもやっぱり表と共に12年生きてるあいつはほぼ同一人物といって過言でない)
ユウキ (その上で独立した二つの人格をもってやがるからどっちでくるかわからねぇ)

俺はレンの2手目の動きを待っていた。
初手の攻撃から大体5秒くらい、やや遅いくらいの思考時間の末バトルは動き出す。

レン 「スカタンク、『つじぎり』!」

ユウキ (予想通り裏か! とはいえ俺が対応できてもコータスが対応できるかが問題か!)

大体の俺の予想通り裏に切り替わる。
俺自身は対応できるが、問題のコータスだ。
こういうとき、思考と戦闘が別離しているというのにわだかまりを覚える。
コータスは戦術面で言えば、やや幅の狭い戦いしか出来ない。
鈍重というのが一番のネックとなる。

ユウキ 「急所に食らうと怖ぇが……コータス『てっぺき』!」

コータス 「コーッ!」

コータスは甲羅の中に身を包み丸くなる。
スカタンクは構わずこの甲羅に『つじぎり』を行うが、さすがにダメージは無い。

シャベリヤ 『スカタンクの攻撃、やはりコータスには通用しない! どうするレン選手ジリ貧だぞ!?』

ユウキ (ジリ貧? そんなはずないだろう)

ジリ貧なのはむしろこっちだ。
レンのスカタンク相手にこちらは攻撃を回避することは不可能だ。
たしかにスカタンクの攻撃は大して効かない……こちらの攻撃もスカタンクには通用しにくいんだ。
状況的にいうとややこちら不利。

レン (物理も特殊もあまり効果はないか……でも、コータスの弱点は読めた!)
レン 「スカタンク、『ヘドロばくだん』!」

ユウキ 「コータス、『かえんほうしゃ』だ!」

スカタンク 「スカーッ!」

コータス 「コーッ!」

命令はスカタンクの方が早かったが、行動は若干コータスの方が早く結果的に同時に攻撃が出る。
両者攻撃を回避できず着弾するがスカタンクに比べコータスはそれほどダメージはない……とはいえ、レンの目論見が想ったより早く出ちまったか。

コータス 「コ……コォ……」

シャベリヤ 『ああっと! コータス、毒状態になったか!?』

ユウキ (くそったれ! たった2発でか!)

裏レンで戦う気ならすぐに気づくとは思っていた。
そう、コータスは『回避ができない』のだ。
その分の高い打たれ強さを持つ耐久力を誇るが、その実コータスは状態異常に弱い。
毒っちまった以上、スカタンクは後は逃げるだけでいい。
『ねむる』という技があればなんとかすることも出来るが、生憎うちのコータスは『ねむる』は覚えていない。
もっとも眠ったらすぐさまフローゼルに交換されて、いいようにやられていただろうからするに出来ないのだが。
問題は逃げてばかりでは周りの体裁を食らうということだが、裏レンなら躊躇しないだろうな。
レンは勝つ気だ……俺よりもその意思の純度は高いだろう。
いや……俺の勝利への意思が薄い……ていうのが正しいだろうな。

ユウキ (勝ちたくないって訳じゃないんだけどな……)

昔からそうだった……勝ちたくないんじゃない。
ただ、俺は負けるのが怖くないだけだ……負けてもそれでポケモンたちが楽しめればそれでいいと今でも思っている。
元々俺は勝負事があまり好きじゃない。
昔は違った……いや、根本は一緒だったに違いない。
ただ、俺はポケモンジムのリーダーセンリの息子として、ポケモンと触れ合うのが当たり前の環境で育った。
そして、ジムリーダーのパパを常に見続けた俺は、そのパパが根底の憧れだった。
パパのようになりたい……物心付いた時から俺はパパに憧れ続けた。
それを見た結果……俺は勝負にこそ徹すれるもの勝利に対して無頓着になってしまった。
トレーナーは常に勝てるわけではない、勝った者の影には当然敗者がある。
負けるパパの背中は決して哀しいものではなかった。
むしろ憧れる誇れる背中だった。
だから俺も負けることは当然だと思った。
そりゃ、負けるのは悔しいけど、勝ち続けることなんて不可能に近いんだからそれに拘るなんておかしいと思う。
だから、俺はこのポケモンリーグでさえ、あくまで実力の見せ合う場所……そして勝つにしろ負けるにしろそれがポケモンに有益で楽しめればいいと思っている。

ユウキ (そいつが……今はマイナスのベクトルに働いてやがるな)

実の所、ポケモンリーグはすでにスポーツマンシップは若干薄れつつある。
勝てばいいという、エゴが優先されポケモンを戦闘兵器のように扱うトレーナーさえ存在する。
最も俺自身は、別に人のポケモンの扱いをどうこういうつもりは無い。
俺自身が、ポケモンと一緒に満足できればいいと思っている。
実績に拘るつもりもないし、まして勝利に拘る気もない。
だが……。

ユウキ (不思議だな……今まで一度も勝ちたいと思ったことは無かったんだが……)
ユウキ (なんでか知らないが……今は勝ちたい! こいつには負けたくないという意思が俺にある)

俺はレンを見る。
レンの表情は至って真剣だ。
レンも俺に勝ちたい……きっとそう思っているだろう。
なんでレンにそんな思いを抱くのか……そいつはわからないがとにかく負けたくない。

ユウキ (コータスの状況だと……攻撃は3回が限界だな)

本当はあと4回はいけるだろう、だが万が一このバトルで怪我でもされたら敵わん。
レン相手にいつも通り『80%』で戦うというのは虫が良すぎる話だが……これは俺のポリシーだ、これで負けないよう努力もした。
俺は誓ったんだ、二度とポケモンを怪我させないと。
ポケモンはトレーナーの道具じゃない。
ポケモンバトルにおいてポケモンはそれこそ奴隷のように戦う。
トレーナーが無茶をさせれば、それだけポケモンが傷つく。
だから俺は自分にリミッターを科した、もう二度とあのキンセツジムのようなことを無くすために。
まぁ、最もラグラージだけは俺の意思を無視して戦いやがるが……。

ユウキ 「……さて、コータス『ねっぷう』!」

2手目から更に遅れて7秒ほど、相変わらず語りが長いが小説内の時間は進んでないので気にするな。
俺は『勝つための戦略』を練る。
コータス毒った以上、ぶきっちょなコータスに多種多様な戦術は求められん。
だから、最もコータスに合う戦略で戦うだけだ。

コータス 「コォ……コォォォッ!!」

コータスの体から物凄い熱気により『ねっぷう』がフィールドを覆って起こる。
スカタンクは出来る限り距離を離して、ダメージを抑えてくる。
利口な選択だな……だが、止まる気は無い!

ユウキ 「コータス続いて『アイアンテール』!」

レン 「接近戦!? スカタンクかわして『つじぎり』!」

レンが信じられない顔をする。
レンのやつ、気づいているのか気づいてないのか。
レンは俺がコータスが毒ったことで俺の詰みが終了したと思っているだろうが……そうは問屋が卸さない。
まさかの接近戦にレンは俺が自暴自棄にでもなったのかとでも思っているだろう。
だが、俺は勝つための詰みをやっているに過ぎない。

スカタンク 「スッカーッ!!」

コータスは鈍重な体を動かして、スカタンクに『アイアンテール』を放つが当然のようにスカタンクはコータスの上に跳びあがり回避する。
それと同時にスカタンクは空中からコータスに『つじぎり』を放つ。

コータス 「……コォッ!?」

シャベリヤ 『ああっと! コータス毒もかさなりかなり苦しい!』

ユウキ (計画通りとしておこうか……!)

コータスはかなり苦しい、だがそれでいい。
コータスには悪いと思っている、だが勝つためだ。
『勝負に徹する』俺がパパセンリから受け継いだ最大の精神だ。

ユウキ 「コータス、『オーバーヒート』!!」

レン 「しまっ!?」

『ねっぷう』からの一連の行動……。
『ねっぷう』でまず『自身の熱量』を高め。
そして、距離を詰め、『相手を動かせる』。
その結果、スカタンクは回避と同時に攻撃を行うという最も適切な行動をとった。
だが、それが時に裏目に出ることもある。
俺はコータスに速攻の行動をとらせ、熱量の高まりが収まる前に行動させた。
惜しいなレン……2手前の行動を把握してりゃ、これを避けれてたかも知れないのになぁ。

コータス 「コォ……コォーーッ!!!」

コータスの体から、大量の熱が発生する。
そしてそれはコータスを中心にドーム上の熱爆発を起こす。

ズドォォォォン!!!

スカタンク 「!? スカーッ!?」

バースト型の『オーバーヒート』は初めてだったが、ブラスト型が得意だからこっちもそれほど苦ではなかったようだな。

ズササササァァァァッ!!

スカタンクはフィールドの端から端まで吹っ飛ばされ倒れる。
レンは青い顔をしているが、計画通り進んでいる俺はとりあえず一安心か。

審判 「スカタンク戦闘不能!」

シャベリヤ 『決まったー! スカタンク強烈な一撃にたまらずダウンです!』

コータス 「……コォ」

ズサァッ!

しかし、コータスも大の字になって倒れる。
どうやらコータスもここまでが限界だな。
『オーバーヒート』は体に異様な倦怠感を残すからな……実際には戦えても体は疲れて仕方が無いだろう。
だがそれでいい。

審判 「コータス戦闘不能!」

シャベリヤ 『ああっとしかしコータスも毒のダメージでダウンだ!』

レン 「戻ってスカタンク、ありがとうお疲れ様」

ユウキ 「悪いなコータス、損な役回りさせて」

俺はコータスを労いボールに戻す。
残ったのはサーナイトとラグラージか。
レンに残っているのはムクホークとフローゼル。
奇しくも両者、主力2体が残ったわけか。

ユウキ (レンの出すポケモンは100%ムクホーク)

わざわざ傷ついたフローゼルが先に出るなんてことは無いだろう。
俺はレンの性格はよく知っている。
これだけは裏でも表でも絶対に変わらないものがある。
それは『優しさ』だ。
レンの優しさは誇れるがそれが俺にレンの手口を読ませる結果となる。
だから、俺は勝負に徹させてもらう。

ユウキ (まぁ観客には面白みが無いかもしれないがな……)

レン 「出てきてムクホーク!」

ユウキ 「でてこい、ラグラージ!」

ムクホーク 「ムクホーッ!!」

ラグラージ 「ラグーッ!!」

俺はサーナイトではなくラグラージを選ぶ。




『その頃 ユウキの部屋』


ペル 「……」

シャドウ 「……」

TV 『さぁ、続いて登場したのはムクホークとフローゼルだ!』

ボフゥン!!

ペラップ 「おお、やってるやってる!」

シャドウ 「!? いきなりポケモンが!?」

ペラップ 「あらぁ? エメルがここに?」

ボフゥン!

ユキメノコ 「……」

ペラップ 「て、あら? ユキちゃんがなんで?」

突然ユキメノコがボールから出てくる。
ユキメノコはボールから出るや否や、テレビに釘付けになる。
テレビではユウキとレンの試合が放映されており、ユキメノコはテレビにご執心のようだ。

ペラップ 「珍しいわねぇ……どういう……て、ああ」

ペル 「???」

私はユキメノコの顔とテレビを見比べ納得する。
この娘ラグラージが出てきたらかぁ〜。
う〜ん、恋する乙女ねぇ〜♪




レン (ラグラージ……サーナイトじゃなかった)

ユウキ (悪いな……この戦いばっかりはヒロイズムを用いるつもりはない)

そりゃオーラスに互いの主役級ポケモンがぶつかり合えば、観客だって盛り上がるだろう。
だが、勝つためにわざわざ勝率を下げるようなつもりはない。
普段ならそれもいいが、このレン戦だけは別だ。

レン (……コータスの行動から薄々感じていたけど勝負に徹している……嬉しいことだけどやはり、ポケモンの馬力差が出始めている)
レン (おにいちゃんはポケモンをちゃんと育てている……レベル差はないけどやはり育成のほとんどを表に任せたのはここに来て辛いわね)
レン (……こうなったらこうなったか)
レン 「おっしー!! ムッ君! いっくよーっ!?」

ユウキ 「ここで表か……開き直りやがったな」

たしかに裏より表の方が単純な分厄介か。

レン 「よーしっ! ムッ君『ブレイブバード』だ!」

ユウキ 「昨日の遊戯では相打ちだったけどなぁ……本番では同じじゃねぇぜ!?」
ユウキ 「ラグ『まもる』!」

ラグラージ 「ラグッ!」

ラグはおなじみ前方に無敵のバリアを張って攻撃から身を守る。
とはいえ、恐ろしいことにムクホークはバリアごとラグラージを押し切りラグラージの体が4メートルほど後ろに下がった。

ユウキ 「ラグ、『れいとうビーム』!」

ラグラージ 「ラージッ!」

ラグはバリアを瞬時にといて、『れいとうビーム』を放つ。

レン 「させないよ僕だって! 『つばめがえし』!」

ムクホーク 「ムクホーッ!!」

ムクホークは『ブレイブバード』の反動でダメージこそないがバリアにぶつかって明らかにノックバックして動きが硬直しているにも関わらず瞬時に動き出す。
後一瞬遅ければ『れいとうビーム』の餌食だったが、想像以上にムクホークの動きがいい。
元々フローゼルと共にレンの2トップを張っていただけに決して侮れないということか!

ムクホーク 「ホーク!!」

ザシュウッ!!

ラグラージ 「!? ジ…!」

ユウキ 「『ゆきなだれ』だラグッ!」

ムクホークは瞬時にラグラージの後ろに回り攻撃を『つばめがえし』で攻撃するが、その際攻撃の流れでラグの前方斜め上に流れる。
俺はラグのダメージ硬直を瞬時に見切り、最も効率的に思える技を選択する。

ラグラージ 「ラージッ!」

ラグラージは従来この手の技は両手をハンマーのようにして地面を叩くことで発生させる。
だがウチのラグは不思議なことにこの手の技はみんなカカトで地面を叩くことで発生させる。
見た目がさり気なくまた全然強そうに叩いているように見えないため、先入観的にあまりたいしたこと無さそうだが従来どおりの威力は出る。
従来のラグラージの技の出し方としてはかなりコンパクトなのでモーションが短くてすむのが救いだ。

ズドドォン!!

ムクホーク 「ホ……ホークッ!?」

レン 「ムッ君! がんばれ!」

冷気の属性を帯びて放射されたエネルギーは、ただの砂地の地面を氷岩に変え、それがムクホークを襲った。
ムクホークは吹き飛ばされ10メートルほど距離を離す。
ダメージはまぁまぁだが当たりが思ったより浅かったな。
ダメージが薄い。

レン 「強い……すっごいよおにいちゃん! さっすがだよーー! 負けてらんないー!!」

ユウキ (すっげぇポジティブ)

相変わらず表はネガティブさをしらねぇな。
しかし、ある意味これは不気味だ。

レン 「僕が学んだこと……理解したこと……全部全部おにいちゃんに見せるんだ! いっくよムッ君!」

ムクホーク 「ムクホーッ!!」

レン 「ムッ君、『こうそくいどう』!」

ムクホーク 「ムクホーッ!!」

シャベリヤ 『おおっと! ここでムクホーク素早さがアップ!! レン選手珍しく能力をアップさせたぞ!?』

ユウキ 「学んだ……そうか、お前は」

レン 「そう、ポケモンリーグで戦い、おにいちゃんと戦いわかったんだ……僕はまだまだ未熟だって」
レン 「だから僕が学んだこと……全部全部見せてもっともっと成長するよっ!!」

ユウキ 「やれやれ……熱心な後輩だ」

故に恐ろしいか。
こいつここに来てまたレベルアップしやがったな。
いや、本来普通のトレーナーなら当然のレベルに来ただけのことなのだがことレンに関しては異常に凄く感じる。

レン 「さぁいくよー! ムッ君、『おんがえし』!」

ムクホーク 「ムクホーッ!!」

ムクホークはラグの上空を数周すると、素早く急降下する。
『おんがえし』はポケモンがトレーナーに懐いているほど威力が上昇する技。

(ユウキ 「いいか、ポケモンと仲良くなるには……愛することだ」)

ふと、昔レンに俺が言った台詞を思い出す。
ある意味最もレンに相応しい技だな。

ユウキ 「しゃねぇ、『まもる』してもジリ貧だ! 『なきごえ』!」

ラグラージ 「ラージッ!!」

ムクホークの速度はラグラージの反応できる速度を超えている。
だったら俺も、能力を左右してみる。

シャベリヤ 『『なきごえ』によりムクホークの攻撃がダウン! しかしバトルは高度な様子から一点、さながら原初に戻ったかのようだ!』
シャベリヤ 『まるで若かりし頃! まるでトレーナーになり立てだったかのようなこのさわやかさを持つこの二人のバトル! どうなるーっ!?』

ドカァッ!!

ラグラージ 「ラグッ!?」

ムクホークがラグラージに体からぶつかってくる。
不器用なぶつかり方だったが、ムクホークの想いが詰まっているのかラグが怯む。

ユウキ (効いてるな……能力ダウンがちっと遅かったか)

俺はラグラージの様子を見てダメージを測る。
まだ大丈夫だが、連続で決まるとまずいな。

ユウキ (『こうそくいどう』を詰まれた以上スピードで捉えることが出来なくなった)

ラグラージ 「ラグ……」

ユウキ (ラグの鳴き声がおとなしくなった……どうやらスイッチ入ったらしいな)

どうやらラグが、ムクホークを本物の強敵と認識したらしい。
こうなるとラグは豹変する。
普段ののほほんから修羅と化すから俺もスイッチを変えないといけない。

ユウキ 「ラグ……やるか?」

ラグラージ 「ラグッ」

ラグはちらっと後ろを向いてコクリと頷く。
笑っていた……ラグのやつ最高に楽しいらしいな。

ユウキ 「ラグ……技はお前に任せる……タイミングは俺に任せろ」

ラグラージ 「ラグラージ!!」

ラグにしては珍しく手を地面に着け、やや前屈みに四つんばいになった。

レン 「ムッ君! もう一度『ブレイブバード』!」

ムクホーク 「! ムクホーッ!!」

ムクホークは空中で宙返りを行うと、そのまま高速でラグラージに突撃してくる。
ムクホークはレンを信じている、そしてレンも同様に。
俺はラグを信頼する……そして同様にラグも俺を信頼してくれているだろう。

ムクホーク 「ホーッ!!」

ラグラージ 「………!」

ユウキ 「……!!」

ドカァァァッ!!!

ムクホークの『ブレイブバード』が直撃し、ラグラージの体が後ろに仰け反る。
一瞬後ろに倒れそうになる……だが、ラグラージは踏ん張り倒れない。

ユウキ 「今だ! やれぇ!!」

ラグラージは俺を信じてくれた!
どんなに敵が迫っても、俺の命令のタイミングを守りきった!
だから俺は……ラグに報いる!

ラグラージ 「! ラージィィーッ!!!」

ガシィィ!!!

ムクホーク 「ムクッ!?」

ラグラージはムクホークの体を瞬時に掴む。
一瞬……ラグラージの声が聞こえた気がした。

ラグラージ 『へっ、いくら素早くても捕まえたら関係ねぇよな!』

!!!!!!!!

ムクホーク 「!?」

静かな衝撃がムクホークを襲う。
間違いなくラグラージの『震貫』だ。
あの技は相手の体内に『じしん』を起こす技だから、飛行や浮遊タイプでも地面タイプの技として通用する。
そしてこの技は接触さえしていればどんな状態からでも出せるのがポイントだ。
両翼をラグラージ捕まえられたその状態は一見すると攻撃する形態には見えない。
しかし確実に技が放たれたはずだ。
ラグラージはムクホークを強敵と認めた……ゆえに全力の技を持って迎え撃ったわけか。

ムクホーク 「ム……クホ〜……」

ドサァッ!

ラグラージがムクホークを放すとムクホークはラグラージの足元に力なく落ちた。

審判 「ムクホーク戦闘不能!」

レン 「! ムッ君……戻って! ……ご苦労様ムッ君」

レンはムクホークをボールに戻す。
いよいよオーラスか。
相手は傷ついたフローゼルだけだ。

レン 「最後だね……いくよフッ君!」

フローゼル 「フローッ!」

シャベリヤ 『ついにレン選手最後のポケモンが出た! しかし満身創痍のフローゼル! ここから起死回生なるか!?』

俺はフローゼルを見る。
フローゼルは息こそ整っているが、ダメージは確実にある。
オオスバメが与えたダメージはそれほど低くないはずだ。
だが……。

レン 「フッ君一気に決めるよ! 『アクアジェット』!」

フローゼル 「フローッ!!」

ユウキ 「ストップだ! もういいラグ!」

ラグラージ 「……ラージ…」

レン 「!? 止まってフッ君!」

フローゼル 「フロッ!?」

シャベリヤ 『ああっとなんだぁ!? 突然ユウキ選手バトルを止めた!?』

ユウキ 「審判、ラグラージはダウンだ、宣告してくれ」

審判 「え……あ、ラグラージ戦闘不能!」

シャベリヤ 『ああっとなんと、ユウキ選手たしかに苦しいとはいえここでラグラージをリタイアさせたぞ!?』
シャベリヤ 『これでユウキ選手も最後の1匹となる! 最後のポケモンはぁ!?』

俺はラグラージを見る。
ラグラージは俺がもういいというとファイテングポーズ(見た目にはそうは見えないが)を解いてぐったりとしたままフローゼルに背中を向ける。

ユウキ 「良くやったラグラージ、もう十分だ」

ラグラージ 「……ラグ」

俺はラグラージをボールに戻す。
ラグラージにはすでにフローゼルと戦えるだけの体力はない。
今のラグラージは体力で立っているんじゃない、根性と闘争心だけで立っている。
そんな状態でのバトルを俺は望まない。
ラグは良くやった……それで十分だ。

ユウキ 「お前で最後だ! サーナイト!」

サーナイト 「……」

俺は最後のポケモンサーナイトを出す。
相手の体力が全快ならこちらも負ける可能性があっただろう。
だが、皮肉だな……体力の無い今のフローゼルではつかみ所の無いサーナイトの攻撃は回避できまい。

レン (サーナイトやっぱり予想通りいた……ラグラージが先に出てきた時もしかしたらいないんじゃないかって思ったけど……やっぱり)
レン 「一撃喰らうと終わっちゃう……なんとしても回避しきらないと!」

ユウキ 「サーナイト、『10まんボルト』!」

サーナイト 「はぁ!」

サーナイトは手から電撃を放つ。
それは真っ直ぐフローゼルに向かった。

レン 「! フローゼル、『アクアジェット』!」

フローゼル 「フロッ!」

フローゼルは全身を水で覆い、素早くサーナイトを襲う。
極限まで低空から攻めて、『10まんボルト』を直進で回避し、最短距離で攻撃してくる。
回避は無理だな……素直にそう判断させる速度をフローゼルはたたき出している。

バシャァッ!!!

サーナイト 「くうっ!?」

牽制技だが、サーナイトは思ったよりノックバックする。
ダメージが想定より多い?
サーナイトは物理面においては打たれ弱いが予想以上にダメージが大きい。
フローゼルの攻撃力が上がっているのか?

ユウキ 「ち……サーナイト、しばらく守りきれるか?」

サーナイト 「わかりませんが……やってみます!」

よし、サーナイトも俺を信じてくれている。
ポケモンが信じてくれるなら俺はなんだって出来る。

ユウキ 「後、二手耐えてくれサーナイト」

レン 「よし、一気にケリをつけるよ! フッ君『あまごい』!」

フローゼル 「フローッ!!」

フローゼルは青い球体を作り出すとそれを空中に打ち出す。
すると天候は一気に土砂降りになる。
まずいな……『アクアジェット』であの火力だった、それが大雨状態で威力スピードが上がることを考えると。

サーナイト (まずいな……僕に耐えられるだろうか? ううん……耐えるんだ! 僕はマスターを信じている! マスターは絶対に裏切らない!)

フローゼル (はぁ……はぁ……ちょっと動いただけで体力が無くなっている……後一撃で仕留めなければこちらがやられるかもしれない)
フローゼル (く……なけなしの体力か。持ってくれよ俺の体!)

レン 「フッ君! 『たきのぼり』!」

ユウキ (耐えてくれよサーナイト! フローゼルのフィニッシュ技だ!)

恐らくあのフローゼルが最も得意で、そして威力のある技なのだろう。
『アクアジェット』とは違い、水を纏うがこんどは右腕に集中している。
『アクアジェット』違い腕に集中することで威力を集約させているんだ。

フローゼル 「フーローッ!!」

バッシャァァァァッ!!!

フローゼルは超低空から水を帯びた右アッパーをサーナイトに放つ。
サーナイトは仰け反りながら宙を舞った。

ユウキ 「耐えろサーナイト! 『サイコキネシス』!!」

サーナイト 「!! くぅぅっ!!」

サーナイトは空中で仰け反ったまま『サイコキネシス』を放つ。
サーナイトは相手を見ていない、しかし相手を捉えている。
サーナイトは相手の心を捉えたのだ。
だから的確な攻撃が出来た……だが。

レン 「フッ君! 『アクアジェット』!!」

フローゼル 「! フローッ!!」

サーナイト 「!?」

ユウキ 「なっ!?」

フローゼルは空中でアッパーカットのポーズのまま硬直しているにも関わらず、『アクアジェット』でバネのように一気に跳ね上がって空中に逃げる。
『サイコキネシス』の有効範囲から一瞬で逃げやがった!
『たきのぼり』から『アクアジェット』……攻撃への連携にはならないがこれほどモーション早く出せるのか!?

サーナイト 「くうっ!」

ヒュン!!

突然、サーナイトが消える。
次の瞬間、上空のフローゼルの真上にいた。

シャベリヤ 『ああっ!? サーナイト、ここで『テレポート』! フローゼルの死角を取った!?』

ユウキ (俺の命令外の技を!?)

サーナイト (マスター…諦めないで! さぁ!)

ユウキ 「! サーナイト『10まんボルト』!」

サーナイト 「終わりですっ!」

バチバチバチバチィ!!!

フローゼル 「!? フローッ!?」

フローゼルは空中で『10まんボルト』を浴びて、なす術無く感電し重力落下にしたがって地面に落ちた。

ズシャァァッ!!

しかし、それはサーナイトも同様で両者力なく地面に倒れている。

シャベリヤ 『両者ダブルノックアウト! まさかここでドローかっ!?』
シャベリヤ 『!? ……いや、サ、サーナイト……立ち上がったぁぁっ!!!!』

サーナイト 「く……はぁ……はぁ……」

審判 「フローゼル戦闘不能! よって勝者ユウキ選手!」

サーナイトはもうだめかと思ったところ、なんとか立ち上がる。
息を酷く乱し、両膝を地面に着け天を仰いでいる。
フローゼルは立ち上がる様子は無く、審判の口からようやく勝利宣言が下された。

シャベリヤ 『決まったぁぁ!! もうだめかと思われたサーナイトの起死回生! しかしそれを覆したフローゼルの大どんでん返し!』
シャベリヤ 『しかし更にその上を行ったのはトレーナーの命令を聞かずとも最良の行動を取ったポケモンとトレーナーの絆が見せた奇跡っ!!』
シャベリヤ 『この歴史に残るであろう名勝負! 勝利は接戦の末、ユウキ選手だぁぁっ!!!』

ワァァァァァァァァァァッ!!!

ユウキ 「……サーナイト、お疲れさん」

俺はサーナイトの側に歩み寄りサーナイトの肩に手を置いてそう言った。

サーナイト 「あ……はぁ……はぁ……はい♪」

ユウキ 「まさか、お前が命令外の行動をするとは思わなかったぞ」

サーナイト 「すいません……」

ユウキ 「ばぁか、いいんだよ……良くやったサーナイト」

サーナイト 「僕は……勝ちたかっただけです、マスターと一緒に。その直向さがきっとレンさんとフローゼルより勝っていたんですよ」

ユウキ 「……そうだな」

俺はサーナイトの笑みを見て、少しホッとする。
そして勝利を実感した。
どんなに清ましてもやはり勝利は嬉しいものだ。
特にレンに勝てたこと……ジム戦に勝ったあの時以来の喜びだな……。



レン 「負けちゃったか……戻ってフローゼル」
レン (届かなかった……やっぱり強いなおにいちゃんは)

私はフローゼルをボールに戻すと天を仰ぐ。
『あまごい』の影響で暗く曇った空からは土砂降りの雨が降っているが、やがて小雨に変わってきた。
勝ちたかったなぁ……私は純粋にそう思えた。
お兄ちゃんに勝って……そして認められたかった。
でも……。

『お別れだね……おにいちゃん』



ドサァッ!

ユウキ 「!?」

シャベリヤ 『!? ああっとレン選手倒れたぞ!?』

俺は嫌な予感がしてすぐさまレンの元に向かう。
力なく仰向けに倒れたレンを抱きかかえ、レンの顔を見た。

ユウキ 「レン……」

レン 「おにいちゃん……おめでとう」
レン 「わたし……届かなかった……悔しいね……負けるのって」

ユウキ 「ああ……負けたら誰だって悔しいさ」

レン 「勝ちたかったなぁ……勝っておにいちゃんに……認めて…欲しかった」

ユウキ 「馬鹿だな……お前は凄い奴だよ」

レン 「ふふ……ありがとう……これで……心……おき…なく……いけ…る……」

ユウキ 「……どこに行くってんだ? 逝かせねぇよ……お前は……俺が救う」

俺は自分の力を使う。
キメナの力とは別に持つザンジークの力。
ザンジークの力を引き出す。

ドクン……!

ユウキ 「――!? う……く……?」

心臓の心拍音が酷く大きく聞こえる。
意識が昏倒し、自分が自分で無くなろうとしているのがわかった。
自分の力に対してキメナが拒絶反応を起こしている。
イノセントの言った言葉が今、よくわかった。
ザンジークに対する殺人衝動が、今自分に矛先を向けているんだ。
確かにこれは……俺の精神力が弱けりゃ自分を殺すな……。

ユウキ (悪いが俺は我侭だ、死にたくないし、死なせない!)

俺は意識があるうちにレンの『ある部分』を『Delete』する。
ザンジークの能力は不可思議だ、あらゆるものを無かったものとすることが出来る。
だが、それは時に形の無いものさえ消せる。
なぜそれを認識できるのか?
それがザンジークの力を行使することで今わかった。
見えるんだ……見えないものが……時にそれは深層心理さえや、そいつの過去からこれから起こる未来まで。
そして目の前にひとつの本が見えた。
そしてわかった……このザンジークの力は言ってみれば『消しゴム』だ。
俺は、今目の前にある架空の世界創造の書から、とある事項を消し去ったのだ。

ユウキ 「うぅクッ!? ぐあ……はぁ……はぁ……!」

俺はザンジークの力を消す、すると何事もなかったように殺人衝動も消えたが、酷い精神疲労があり、今にも気絶しそうだったがさすがにレンを抱きかかえたままで倒れられん。

レン 「スゥ……スゥ……」

レンは安らかな顔で眠りについていた。
俺はレンから消滅という事項を消した。
正確にはもっと細かいことで、レンという存在が消滅しないというわけじゃない。
裏レンの存在が消滅するという事項を消去したのだ。
これで裏レンが消えることはない。

ユウキ 「しんど……『Delete』能力は1日1度が限度だな……」

最もできることなら2度としたくないが。
あともうちょっと使っている時間が長かったら多分俺は死んでいた。
反転衝動があるのに使うのは想像絶するものか……。

ユウキ 「たく……損な役回りをやっちまう俺はお人よしか」

俺はレンを抱えると、そのままブルーサイドの出入り口から会場を出た。





TV 『ワァァァァァァァァッ!』

ペラップ 「あら、ユウキが勝ったわね……でもあれって?」

シャドウ 「どういうことだ? 何故ユウキ『Delete』を!?」

私は静かにユウキの戦いを見守っていた。
最後にレンが倒れてユウキがある能力を使っていた。
見た目にはなにも変化はないけど、私たちにはテレビ越しでもわかる。
ユウキが『Delete』を使った。
ユウキはキメナなのに何故ザンジークの力を?

ペラップ 「そういうこと……なんとなく読めたわ」

ペル 「? ペラップ?」

ペラップ 「ペルもわかるんじゃない?」

ペラップはそう言う。
私は考えてみる。
ユグドラシルの生み出した、ザンジークのアンチであるキメナ。
ユグドラシル……?
ユグドラシルはマザー……ザンジークがキメナを生んだ?

ペラップ 「多分、ザンジークとキメナは同質の存在ね」

シャドウ 「馬鹿な!? キメナとザンジークが同じだというのか!?」

ペラップ 「そうよ、だって考え付かない? 何故キメナは『Delete』できないのか?」
ペラップ 「ザンジークが『Delete』出来ないのはキメナと……ザンジークよ?」
ペラップ (後、不思議だけど無限の時ね)

シャドウ 「だが……それだけでは」

ペラップ 「それだけでもないわ、ユグドラシルはザンジークマザーだもの、同じ存在が生んだのよ?」

ペル 「ペラップ……知ってたの?」

ペラップ 「当然♪ お姉さんはなんでもお見通し♪」

シャドウ 「馬鹿な……そんな……馬鹿な……!?」

エメルはひどいショックを受けていた。
私にはわからない。
ただ……でもひとつわかったことがある。

ペル 「ユウキはユウキよ」

シャドウ 「……く」

私はユウキがなんであれ、それがユウキだと認識している。
そう、私の好きなユウキ。
そして私は……ユウキのバトルを見て思ってしまった。

ペル 「……」

ペラップ 「ペル、どうしたの?」

ペル 「ユウキは……このままじゃ勝てない」

ペラップ 「? 珍しいわねぇペルがそんなこと言うなんて」

ペル 「レンが言っていた……学んだこと……私も学んだ」
ペル 「そして……だからわかった。今のユウキのままじゃ勝てない」

ペラップ 「それは誰に?」

ペル 「……」

私は答えない。
私はポケモンに振り回されたばっかりのトレーナー失格のトレーナー。
でも……私もバトル見て学んだ。

ペル 「ペラップ、私ユウキと戦いたい」

ペラップ 「はぁ!? マジで言ってんの!?」

ペル 「……」(コクリ)

私は頷く。
私はユウキと戦いたい。
そしてユウキに学んでほしい、負けて欲しくないから。

ペラップ 「意外や意外……ポケモンバトルにあれほど無頓着だったペルが……変わったわねぇ……」

たしかに、ちょっと前までの私だったらポケモンバトルなんて興味がなかった。
だけど、ユウキたちのバトルをちょっとづつ見て、変わってきたのかもしれない。

私は窓の外を見た、私もユウキの力になりたい。




ポケットモンスター第92話 『信じる心』 完






今回のレポート


移動


サイユウシティ


3月6日(ポケモンリーグ本戦4日目)


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

チルタリス

ユレイドル

ボスゴドラ

コータス


見つけたポケモン 66匹






おまけ



その92 「その後ちょっとミーティング」





『9月6日 某時刻 サイユウシティ 某ホテル』


ペラップ 「さぁ、というわけで私たちユウキと戦う予定になったわよ〜」

ドダイトス 「正気か?」

ペラップ 「失礼ねぇ、ペルはやる気になったのよ」

ドラピオン 「え? で、でも今決勝戦でしょ?」

エルレイド 「どこに戦う余裕があるんだ? 試合後か?」

ペラップ 「さぁ? そこはペルが決めることじゃない?」

エンペルト 「へぇぇ……でもあのペルがなぁ?」

ユキメノコ 「や、やめましょうよぉ〜こ、怖いです〜」

ペラップ 「あぁらユキちゃん、でもあなたの意中の人とも会えるわよぉ?」

エンペルト 「なぬっ!? ユキちゃんに意中の人ぉ!? ま、まさかーっ!?」

ドダイトス 「恐れ入ったな……あのユキが」

ユキメノコ 「はうぅぅぅ〜……」(赤面)

ペラップ 「まぁ、ユキちゃんは合作その2でもご執心だったからねぇ?」

エルレイド 「? 合作その2?」

ペラップ 「ああ、こっちの話〜」
ペラップ 「つーわけで、あんたら気合入れないさーい!?」




おまけその92 「その後ちょっとミーティング」 完


ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system