ポケットモンスター サファイア編




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第97話 『間章 それぞれの午後』






『3月8日 時刻19:15 サイユウシティ 某ホテル宴会場』


アカネ 『えー、皆さんお集まりいただき誠にありがとうございます』
アカネ 『えーでは早速ですが無礼講ということで、ユウキー! 2連勝おめでとうアーンド! 目指せ優勝宴会やーっ!!』

それは……フヨウ戦が終わってすぐだった。
何を考えたのかアカネが俺の今日の勝利のお祝いとして宴会を開くなんて言い出した。
当然俺としては却下だったのだが(ペルとシャドウに悪いため)、参加人数がすでに10人以上集まっておりやむを得ず参加することになったのだ。

ユウキ (かったる……なんでこんなこと)

アカネ 『そんじゃ主賓、挨拶頼むわ』

アカネはそう言うと俺にマイクを渡してくる。
俺は仕方なく受け取ると立ち上がり。

ユウキ 『かったるいから一言で済ます。グラスを持って乾杯』

全員 「かんぱーい!」

俺は水の入ったグラスを掲げると、それぞれグラスを掲げて乾杯をする。
俺は席に座ると更にかったるい事態に遭遇している自分に更にかったるくなる。

ハルカ 「ユウキ君おめでとう! お父さんと一緒に応援しているよ!」

アカネ 「モチウチもやで! 明日も気張りぃや!?」

ユウキ 「はいはい……」

俺はグラスに盛られた水を飲みながらそう生返事を返す。
席は俺以外自由席だったのだが(さすがに主賓は真ん中)、どういうわけか両サイドにハルカとアカネ、正面にアスナがいる。
アスナの隣にはパパとトウキさんがいた。

トウキ 「ははは、ユウキ君、まさに両手に花だな」

ユウキ 「花は花でもヒマワリとスズランですけど」

トウキさんのブラックジョーク(本人に悪気なし)に対して俺もブラックジョークを返す。

アスナ 「どっちがヒマワリでどっちがスズランなの?」

ユウキ 「ハルカちゃんがヒマワリでアカネがスズラン」

ちなみになぜアカネがスズランかというと、アカネの毒性を示すためだ。
ケシでもいいのだが、どっちもどっちなのでスズランにしておいた。

ケン 「おーおー? それじゃどっちの花が好みなんや?」

真後ろに座っていたケンが余計な口を挟んでくる。
その言葉聴いたアカネはマジな顔になり、ハルカはピクッと反応したものの半笑い。
事の他アスナまで真剣な面持ちに。

ユウキ 「該当する花は無いな、どちらも趣味じゃない」

俺は無難にそう言って難を逃れる。
俺はどちらも好きとは言っていないし、嫌いとも言っていない。
平たく言うと友達でいましょと遠まわしに言ってみた。

ケン 「へぇ、じゃあちなみにどんな花が好みなんや?」

ユウキ 「そうだな今はユリとでも答えておくか」

ちなみにユリというのは適当だ。
本当は特にそんな趣味は無い。
しいて言うと、大人しい娘の方が好きではある。
アカネの傍若無人は御免だし、ハルカは……ごめん友達以上に見れないわ。
まぁハルカは向こう側もそれ以上は望んでいないようなので対応しやすいが。
微妙に難しいの正面のアスナだろうな。

この配置、心理的に本人たちの本能を表すと、隣を取ったハルカとアスナは単純に親しい間柄らしく垣根の無い会話ができるためだろう。
何か狙いがあってきているわけではない。
だが、正面のアスナは何かしら意図があるから、一番相手の表情を見ることがある正面を選んできた。
俺は今のところ華麗にスルーしているんだが……。

サティ 「ユウキ全然食べてないかしら?」

ユウキ 「いいんだよ、ゆっくり食べるから」

サティ 「そんなんじゃ身長伸びないかしら! 隣のハルカちゃんに身長負けちゃうわよ?」

どこから沸いてきたのかサティが更に大量に盛ったエビフライを食べながらそんなことを言う。
そういえば座高に関してはハルカの方が高いな……。
アカネは元々チビとして、アスナは圧倒的に俺より身長が高い。
というかアスナの身長は170以上だから女性としても長身だが……。

ハルカ 「ユウキ君って身長はいくつ?」

ユウキ 「今年の計測で162だった」

ハルカ 「そっか、私が160だからちょっと負けているんだね」

ハルカが自分の身長と比べながらそんなことを言ってくる。
そりゃ同年代で考えれば俺は身長は低い方なんだが、ハルカと2センチ差というのはなんとも気まずいな。
俺もハルカもまだ、成長するとはいえこのままでは本当にサティの言うとおり身長抜かれるかも……。

サティ 「身長はやっぱりコレかしら! 牛乳を飲め牛乳を!」

センリ 「そういえば、ユウキは牛乳が苦手だったか?」

アカネ 「なんや、ユウキまだ克服できとらんのか?」

ユウキ 「……うるさいな、好んで飲まないだけだ」

ハルカ 「意外だねぇ、好き嫌いとかあったんだ」

ユウキ 「悪かったな……」

どうせ牛乳は嫌いだよ。
だから身長伸びないさ。
でも煮干とかは好きなんだぜ?

アカネ 「まぁコイツ嫌いな物が子供っぽいけど、好きなものが魚、それも煮付けと嫌にじじくさいんよなぁ」

ユウキ 「悪かったな、魚が一番好みなんだよ」

ハルカ 「へぇこれも意外だねぇ! 鳥とか豚とかは?」

ユウキ 「嫌いじゃないが、油は好きじゃない。ササミとかなら別に気にしないが」

ハルカ 「……ユウキ君体重軽いでしょ?」

ユウキ 「何キロだと思う?」

アスナ 「50キロ位?」

アスナ 「いや、さすがにもうちょいあるやろ?」

ハルカ 「52くらいかな?」

それぞれがそれぞれ適当な思惑で考え始める。
そうか、俺はやっぱり色々とまずいのかもしれないな。

ユウキ 「48キロだ」

ハルカ 「ええっ!? 軽ッ!? 細ッ!?」

そう、確かに俺は細いし軽い。
同年代では女性と比べても軽い方だった。
やっぱり食習慣の性だろうか。
ちなみに旅を始める前は51キロあったんだがな。
旅を続けることで色々と体は鍛えられたが普段より食べなくなった性で余計軽くなった……ていうかほとんど減量だ。
それほど無理も無かったためリバウンドすることなく下がっちまったが、下がり始めたのはカイナ〜キンセツ辺りから(大体12話位から)だ。
あの頃は本当に貧乏で食うのに困ってたなぁ……アニメのロケット団並みに貧しかったからな。
ひどい時はリアルにビスケット一枚ですごす羽目に……。

テッセン 「わっはっは! そういえばジム戦の時に比べて面が細くなった気がするな?」

焼酎を飲みながらパパの隣に座っていたテッセンさんが昔を思い浮かべるようにそう言った。
そんなに見た目が変わるほど体重は減ってないが……いや、身長が伸びたのに体重が減ったってことは結構痩せたか?
そう考えるとたしかに痩せたんだろうな。

ユウキ 「苦労しましたよ、2万で5ヶ月過ごすのは」

実質食費に回せたのは3万ほど、ポケモンに使う費用でかなりくうから食費は相当削った。
特にキンセツ〜ヒワマキ間は俺の方向音痴を考慮して、わざわざ保存の利く物を多く用意したにもかかわらず結局迷いに迷って天気研究所で倒れたからな。

アカネ 「旅を続けて体重減るんアンタだけちゃうか?」

ユウキ 「それ以前、普通貧乏に困るポケモントレーナー自身俺だけな気がするが」

不思議とポケモントレーナーで貧乏に困ったという話は聞いたことが無い。
そういう意味では俺は非常に珍しいのだろう、困ったことに。

アスナ 「あ、センリさんお酒がなくなっていますね、注ぎますね♪」

センリ 「ああ、これはどうもありがとう」

アスナ 「いえいえ♪」

テッセンさんと一緒に焼酎を飲むパパ、アスナさんは気が利くのかパパのグラスを見て早速おかわりを注ぐ。
その様はなんだか……。

アカネ 「キャバクラみたいやな」

ユウキ 「……だな」

アスナ 「え? 何? なんか言った?」

アカネ 「ううん、なんでも」

俺はアスナが聞き取れていないので無視して、刺身を口に運ぶ。

ヨー 「おっ、食い方がしぶいねぇ! にしてもこの釜飯うんめぇ〜!」

ケンの隣に座るヨーが俺の食いっぷりを見ながら本人は更に豪快に釜飯を口にかき込む。
なんというか、静かに食えるタイプではないようだな。
いや、宴会なんだから騒ぐのは当然か。

ハルカ 「この釜飯、カニが入っているね」

アカネ 「どうしたん? 嫌いなん?」

ハルカ 「ううん、カニなんて食べたの何年ぶりかなって思って」

ユウキ 「そういえば俺も丸一年食ってないな」

そう言いつつ俺も釜飯をいただいてみる。
味は程よく、匂いはこれ見事に食欲を掻き立てる。

アンナ 「あの……そっちの持ちつけ、少しいただいてもいいですか?」

ユウキ 「ん? 足りなくなったのかい?」

突然アンナちゃんがお皿を持ってこっち側のテーブルに来る。
アンナちゃんはヨーの向かいの席に座っていたから、ケンたちの側ののテーブルか。
たしかにあいつら、こっちより食ってるようだったしな。

ユウキ 「もっていったら? こっちはそれほど皆食べないだろうし」

アンナ 「ありがとうございます」

アンナちゃんはそう言って、こっちのテーブルに並べられた盛り付けを取っていく。
エビフライ、コロッケ、掻き揚げその他揚げ物6品、ハンバーグ、サイコロステーキ、ソーセージ各種、更に中華系……て。

アカネ 「ちょ!? アンナちゃんどんだけーっ!?」

ユウキ 「それ……君が食うのか?」

アンナちゃんが持ってきた皿は文字通り山盛りに盛られていた。
俗にいうすでにデカ盛り状態だり、その上から更に惣菜を追加していく。

アンナ 「……はい」

ハルカ 「うそぉ……その小さな体のどこに入るの?」

テッセン 「わっはっは! たいした痩せの大食いだな!」

トウキ 「ぜひともその食べっぷり見せてもらいたいね」

さすが大人か、事の他向かい側のジムリーダー勢はその様子を余裕もって見ていた。
ちなみにツツジさんはすでにカナズミシティに帰ってしまったためここにはいない。

アンナ 「では、もらっていきます」

ユウキ 「あ、ああ」

アンナちゃんは何事も無かったかのように大盛りに盛られた皿を持って自分の席に戻ってしまう。
俺たちは呆然としながらそれを見送った。

サティ 「うっはぁ!? このアンノーン女まだ食べるかしらー!?」

リフィーネ 「もう10人分は食べたんじゃ?」

ケン 「20人前は食う気やな……」

ヨー 「あの細い体のどこに入るんだよ?」

後ろで仰天の声が上がるのを聞いて、苦笑いするハルカちゃんとアスナさん。
テッセンさんとトウキさんは何がおかしいのか笑っている。

ユウキ 「……食いすぎもよくないよな?」

アカネ 「そやな……くいすぎは……な」

俺たちはそう喋りながら細々と食事を取っていく。

フウ 「ユウキお兄ちゃんも食べた方がいいよー!」
ラン 「うんうん!」

ユウキ 「子供は本当によく食うな……」

そういえばRの方のこいつらは相当大食漢だったな。
こっちの方はさすがに向こう程じゃないと思うが……やっぱり食うな。
子供って凄い……俺も昔はこんなに食ったかなぁ?

ユウキ (絶対食ってないな)

ミクリ 「やれやれ……遅れてしまったよ、えと、途中参加でも問題ないかい?」

そこへ今度はミクリさんが宴会場に入ってくる。
さすがにミクリさんは忙しかったのか遅れて登場になったな。

ユウキ 「幹事?」

アカネ 「オッケーやで! どこでも好きなとこ座りぃ!」

ミクリ 「ふむ、では……」

そう言ってミクリさんはジムリーダーの列を見つけ適当に座った。

テッセン 「ワッハハ! どれ、まずは一杯どうですかな!?」

ミクリ 「あ、いえ……自分はお酒は飲みませんので」

アスナ 「へぇ、ミクリさん飲まないんですか」

ミクリ 「まぁ飲んでもたしなむ程度だね」
ミクリ 「あ、ユウキ君四天王相手に2連勝おめでとう、これからも頑張ってくれよ?」

ユウキ 「あ、はい。頑張ります」

アカネ 「うーん、ミクリはんはなんやこっちのジムリーダーの中でもなんか毛並みっつーかオーラがちゃうなぁ」

ハルカ 「言われてみれば何かがちがうよねぇ、こっちのジムリーダーってどっちかつーと汗臭い人多いから」

トウキ 「うーん、汗臭いかなぁ?」

テッセン 「わっはっは! 笑って発散しとるからな!」

センリ 「むぅ……やはり暑苦しいか」

アスナ 「あはは〜、い、一応それがフエンは代名詞だし……でも、女性が汗臭いのはやっぱりぃ……」(泣)

ユウキ 「……そういうジョウトはどうなんだ?」

アカネ 「うーん、格差かのぉ」

ユウキ 「は?」

アカネ 「いや、年長組みと若輩組みの年齢差がえらいことになっとるさかい、平均年齢あがっとんのよなぁ」
アカネ 「特にウチ15とツクシのボウヤは16やからなぁ」

センリ 「まだヤナギ老がジムリーダーをやっていればもう御歳80歳か、たしかフスベのジムリーダーは引退したはずだったな」

アカネ 「今はイブキっちゅうやっちゃがジムリーダーや、まだ18の若輩やな」
アカネ (あのアマァ、次対抗戦やったらボッコボコにしてやるけんの……)

ユウキ (なんか禍々しいオーラをアカネが出しているし)

よっぽど先に行われた対抗戦で何か嫌な思いがあったんだろうか?
まぁアカネも向こうのジムリーダーでは最弱のレッテルが貼られたそうだからなぁ。
ウチの最弱アスナは特に気にしていないようだが。

アカネ 「あのアマァ、ウチの方が先輩やっちゅーに、敬語使えや……」

ユウキ (なんかよからぬこと呟いているし……)

ケン 「おーし! ほんじゃま、ここらでワイが宴会芸やりまーすっ!」

なんだか気まずい雰囲気になりつつあった所、そこへケンが突然立ち上がり宴会芸を始めると言い出す。
それによって全員の注目がケンに集まる。

アカネ 「おっ? なんやなんや? 何する気や?」

ユウキ (グッジョブ、ケン!)

ケンのおかげでアカネも興味が別にそれた。

ユウキ (ふぅ……俺はここらでおさらばさせてもらうか)

俺はそう思うと皆の注意がそれているうちにササッと宴会場を抜けるのだった。




ユウキ 「ふぅぅ……ん?」

一旦ホテルの外に出て、外の空気を吸っていると見知った顔を発見する。

シャベリヤ 「……まずは2連勝おめでとう、って元チャンピオンに言うセリフじゃないか」
シャベリヤ 「とりあえずコーヒーでも奢ろうか」

イヴ 「ふっ、肩書きなんてなんの意味があろうか、優勝できなければ何の意味も無いさ」

ユウキ (イヴさんと……もう一人は誰だ?)

少し離れた場所で俺はイヴさんを発見する。
なにやら同じ位の年齢の男性と親しく話しているようだった。
俺は多少悪いと思いながらも聞き耳を立たせてもらう。

シャベリヤ 「俺たちの同期のカントーポケモントレーナーで現役なのはもうお前だけだからな」
シャベリヤ 「そんなお前が自らチャンピオンの座を放棄したくせに再びポケモンリーグに挑戦しているんだ、嫌でも期待してしまう」

イヴ 「一昨年までは我武者羅だったな、周りが見えていなくて、もうすでに俺以外の同期は皆引退していたなんて知らなくて……」

シャベリヤ 「ポケモントレーナーほど金にならない職業は無いからな、大人がやるもんじゃないさ」
シャベリヤ 「だけどさ、誰だって憧れたもんさ。それこそ女も男も関係なく子供も老人もポケモンチャンピオンをさ」
シャベリヤ 「お前は俺たちの誇りだぜ?」

イヴ 「下手に背負い込ませるのはよしてくれ、身軽になりたいから偽名まで使っているんだ」

シャベリヤ 「そういうな、知っている奴からすれば嫌でも期待せざるをえないんだ」

イヴ 「……ふん」

イヴさんはそう言うとグイッと缶コーヒーを一気に飲み干す。
珍しく眼帯を外している姿は、それが本来の姿なのだと認識させ、どこか憂いを感じる男性像があった。

シャベリヤ 「明日はゲンジさんとだな? 勝てるか?」

イヴ 「負けるつもりは無い、もっとも勝つ算段があるわけじゃないがな」

シャベリヤ 「お前は相手に合わせて戦うタイプじゃないからな」
シャベリヤ 「ま、立場上個人的な応援はできないが、一応今だけ応援させてもらうよ」

イヴ 「覚えておこう、同期の桜だからな」

シャベリヤ 「……さってと、悪いな呼び出してしまって。じゃあ俺は行くから明日も頑張れよ」

イヴ 「ああ」

イヴさんと話していた男性はそう言うと缶コーヒーを一気に飲み干してその場を去っていった。
俺はそれを見て、少し間をおいてイヴさんの元に現れる。

ユウキ 「どうも」

イヴ 「! ユウキ君か、どうしたんだ?」

ユウキ 「夜風に当たりたく思いましてね、イヴさんもですか?」

イヴ 「まぁ、そんなところだ」

イヴさんはあまり答えたくないのか適当に答え、口を濁す。
俺も深く詮索する気は無いので、その話はそこで終えるのだった。

ユウキ 「……ふーん、両目とも正常だったんですね」

イヴ 「む? ……」

俺がイヴさんの顔を見るとニヤッと笑うとイヴさんはすぐに眼帯をはめてしまう。
ちょっと惜しかったが止める理由は無いので仕方が無い。

ユウキ 「ふぅ……春だってのに暑いですねぇサイユウは」

イヴ 「そうだな……」

ユウキ 「こりゃ明日は猛暑かな? まぁ明日の対戦相手を考えるとそっちの方が都合がいいっすけどねぇ♪」

俺の明日の相手はプリムさんだ。
主に使用するのは氷タイプ。
当然そういう環境を考えると暑い日の方がこっちは有利になる。
まぁ、暑すぎて熱射病にかかったら元もこうもないが。

ユウキ 「イヴさんの明日の相手はカゲツさんでしたっけ? どんな戦い方するのか見せてもらいますかね」

イヴ 「……うむ」

ユウキ (……やれやれ、あまり俺と話し合いたくはないようだね)

どうも、イヴさんの歯切りがよろしくない。
やはり、いずれ戦う相手とは言葉を交わしたくは無いってか。

ユウキ (やれやれ、俺はそういう殺伐とした雰囲気でポケモンバトルするのは嫌いなんだがねぇ)

俺は頭を無造作に掻いてイヴさんに背を向ける。

ユウキ 「それじゃ、俺はもう行きますね」

イヴ 「ああ」

さすがにそろそろ戻らないと心配されるかもしれないので俺は戻ることにする。
アカネだけならそのままホテルに戻っていただろうが、今回はちょっと参加人数が多いんでそういうわけにもいかないからな。




アカネ 「――っとぉ! やっと戻ってきたんかい! ちょっとユウキ審判頼むわ!」

ユウキ 「……はぁ? 一体何を?」

宴会場に戻るとなぜかアカネしかいなかった。
俺が状況を理解する前に俺はアカネに引っ張られて、どこかに連れて行かれる。



………。



アカネ 「はーい、お待たせー! 主賓連れてきたでー!」

ユウキ 「バトル場?」

突然連れてこられたのは宴会場の地下にあった、ポケモンバトル用の会場だった。
俺はまだ、完全に理解できていなかったがすぐに状況を理解することになった。

アカネ 「ほい、これを読んで!」

ユウキ 「?」

俺はアカネにプリント用紙を2枚渡された。
俺はそのプリント用紙に目を通すと『ああ』と理解した。

ユウキ 「……やれやれ、これよりポケモントレーナーズ対ジムリーダーズの対抗戦を行います」
ユウキ 「ルールは変則ながら、リレー制マルチバトル方式!」
ユウキ 「各チーム6人のトレーナーが1匹ずつポケモンを使用、ポケモンがダウンした場合、次のトレーナーとポケモンに交代するリレー方式!」
ユウキ 「以下、各チーム選手紹介となります」

俺はそこで2枚目のプリントに移る。

ユウキ 「まずポケモントレーナーズ、1番手リュウト選手! 2番手ヨー選手! 3番手ケン選手! 4番手アルタ選手、5番手アンナ選手、6番手サティ選手!」
ユウキ (ちょっとまて? なんでリュウトさんが? 宴会には参加してなかったはずでは?)

ふと、ポケモントレーナーズが固まっている方をみると、たしかにリュウトさんがいた。
まぁあの人の性格を考えると、バトルがあると聞いてやってきたとそんなところだろうな。
俺は急いで次のジムリーダーズの紹介を行う。

ユウキ 「続いてジムリーダーズ、1番手トウキ選手、2番手テッセン選手、3番手アスナ選手、4番手センリ選手、5番手ラン選手、6番手ミクリ選手!」
ユウキ 「えー、最後に審判の紹介です、主審は自分ユウキ、副審はアカネに勤めてもらいます」

アカネ 「ウチやでー! 頑張りや〜!」

ユウキ 「えー、なおすでにご存知とは思いますがジムリーダーズは現在調整会用のポケモンしか所持しておらず普段のジムリーダーとは同じと思わないでください」

アカネ 「具体的に言うと普段アンタらが戦ったレベルはせいぜい4〜6ってところやで〜、今回はレベル11の自重なしや!」

ユウキ 「なんだよ、レベル11って?」

アカネ 「ん〜? なんかそういうノリやったし?」

ユウキ 「……まぁいい、それでは各チーム1番手2番手前へ!」

リュウト 「……ジムリーダーの本当の実力か、楽しみだな」

ヨー 「けど、絶対負けないぜ!」

トウキ 「さて、まぁここはジムリーダーとして本気で相手をするべきだね」

テッセン 「ワッハッハ! しょっぱなから飛ばすから遅れるなよー!! ワッハッハ!」

各チームの先鋒が出揃う。
さてさて、本気のジムリーダーたちの強さは事実上四天王クラスと聞くが、それにどこまでトレーナーズは食い下がれるかねぇ?

ユウキ 「なおリレー式マルチバトル方式をとるため、ポケモンがダウンしてもリアルタイムに対戦は進行します」
ユウキ 「具体的にいいますと、Aが倒れたとするとそれを宣告している間もBや対戦相手はバトルを行って結構!」
ユウキ 「では、両者ポケモンを!」

リュウト 「いくぞカイリュー!」
ヨー 「えーと、両者に相性がいいのは……よしっ! いけヘラクロス!」

トウキ 「いくぞ! ハリテヤマ!」
テッセン 「わっはは! いけ! ジバコイル!」

各四一斉にポケモンを場に出す。
ジムリーダーズはポリシーに基づいたポケモン構成のためやはりリュウトさんとヨーもしっかり対策をとってきているな。
しかしアカネのいうレベル11自重なしというのが気になるな。
自力はさすがにジムリーダーズの方が上だろう、問題は相性か。

リュウト (ふむ、ヨーはヘラクロスかだったらハリテヤマを狙うべきか!)
リュウト 「先制攻撃だ! カイリューハリテヤマに『つばさでうつ』!」

ヨー 「よし! だったらヘラクロス! ジバコイルに『かわらわり』!」

カイリュー 「リューッ!」
ヘラクロス 「ヘラッ!」

2匹のポケモンが向かいのポケモンに突撃する。
対してジムリーダーたちは大して焦ることも無く冷静に構えていた。

トウキ 「さぁ、彼ら着ましたよ?」

テッセン 「わっはっは! ここはジムリーダーの威厳を見せてやりましょうか!」

トウキ 「ハリテヤマ、『ストーンエッジ』!」

ズドォン!!

最初に攻撃が成立したのはハリテヤマの『ストーンエッジ』だった。
なんと対象を指定せずした攻撃は的確に効果抜群のカイリューを攻撃する。
事の他素早く攻撃に移ったハリテヤマの一撃はカイリューを一撃で仕留めるにはいたらなかったが、敵の攻撃を非成立にするには十分だったようだ。

ユウキ (乾坤一擲だな、攻撃が成立しなければカウンターでダメージを受けていたぜ)

対象を指定しない信頼性、つぶされるリスクを打ち払える絶対的自信があってできる行動だ。
だが、ヘラクロスはすでに攻撃に入ろうとしている。
テッセンさんはどうする気だ?

ヨー 「いっけぇぇぇーー!!!」

ヘラクロス 「ヘッラーッ!!!」

ガコォオン!! と鉄板がへこむような強烈な音とともに『かわらわり』がジバコイルを襲う。
ジバコイルは地面にめり込むほどの強烈なダメージを受けているが、まだダウンしていない。
ヨーにもリュウトにもまだわかっていないようだが、ここで俺の読みは確信を得た。

ユウキ (いい攻撃力だったよ、それゆえにさようなら)

俺は心の中でヨーに合掌する。

テッセン 「ワッハッハ! そんな技じゃ笑えませーん!! 『だいばくはつ』!」

ユウキ (アンタの技の方が笑えん)

ジバコイル 「ジッバーーッ!!!」

ズッドォォォン!!!

トウキさんのハリテヤマまで巻き込んでジバコイルの大爆発がフィールドを破壊する。
テッセンさんが受けてから命令した理由は2つ。
1つめ、先に命令して警戒されないため。
2つめ、確実に仕留めるため。

ユウキ 「カイリュー、ヘラクロス戦闘不能!」

テッセン 「ワッハッハ! 本気だったんだが、耐えられたか!」

トウキ 「撃つってわかってましたからね、なんとかですよ」

なんて呑気なことを言うジムリーダーふたり。
どうやらテッセンさんはトウキさんもろとも吹き飛ばすだったようだ。
自重なしとはよく言ったものだ。

トウキ 「さて、次は誰かな?」

テッセン 「わっはっは! それじゃワシも退散!」

テッセンさんはそう言うとさっさかフィールドから戻る。
続いて出てきたのはアスナさんだ。

ケン 「まさかあんな手で来るなんて、そらわからへんわ」

アルタ 「……」

アスナ 「あ、あはは〜、私は皆ほど強くないからね?」

ケン 「ほんじゃま! やってみようか! でてこいマンタイン!」

マンタイン 「マーン!」

アルタ 「……」

シャワーズ 「シャワ〜」

まず、ケンとアルタがそれぞれマンタインとシャワーズを繰り出す。(アルタ君は都合上キルリアも出したが)
明らかにアスナを集中狙いする気か。
アスナは出す様子は見せるが、その前に……。

トウキ 「よし! ハリテヤマ、『かみなりパンチ』!」

ハリテヤマ 「ハリーッ!」

アスナ 「わわっ! まだ私出してないし! でてこいコータス!」

コータス 「コーッ!!」

ケン (ちぃ、リアルタイムとはよく言うたわ! ちょっとタイミングラグが出とる! どうする!?)

アルタ 「……!」

ユウキ (お、アルタ君の表情が少し動いた。オーレ地方はダブルバトルが基本なんだよな、じゃあマルチでの戦法見せてもらうか)

シャワーズ 「……シャワッ!」

シャワーズが何か命令受けてか走り出したハリテヤマに突撃する。

トウキ (ハリテヤマ相手にクロスファイトを挑む気か!? 面白い!)
トウキ 「やれっ! ハリテヤマ!」

ハリテヤマ 「ハリッ!!」

ケン (タイミングバッチリ! あかん合わされてるでアルタはん!?)

フィールド中央で二匹が交錯する。
ハリテヤマは瞬時にシャワーズの速度を見切り、理想のタイミングで『かみなりパンチ』を放つ。
しかし、シャワーズは何も臆することなくその拳に飛び掛る。

トウキ 「血迷ったか!」

アルタ 「……!」

拳がシャワーズの顔面に当たった瞬間だった。

バシャァン!!!

トウキ 「! なにっ!?」

いきなりだった。
シャワーズは水のように溶けてしまい、ハリテヤマの『かみなりパンチ』は水を跳ねるだけだった。

ユウキ (シャワーズの『とける』か)

技そのものは単体、しかしそこにダブルバトルを基本に置くオーレ独特の仕込みがある。
まず、シャワーズを前面に飛び立たせることで、接近戦を行うポケモンの視界を強制的にシャワーズで奪う。
そしてヒットと同時にシャワーズは空中で『とける』。
液状化した体は空中で弾け、大してダメージを受けることは無くまた相手に当たったという感覚を与えず、リズムを崩す。
だが、この戦法の一巡、まだ終わってねぇな。

ユウキ (アスナトウキの両者の意識がシャワーズだけに傾いた! ケンがフリーだ!)

ケン 「……っあ! ま、マンタイン今や! ハリテヤマに『ハイドロポンプ』!」

アスナ 「! まずい! マンタインに向かって『だいもんじ』よ!」

マンタインは口に水を集め、がら隙のハリテヤマに『ハイドロポンプ』を放つ。
『かみなりパンチ』の硬直で動けないハリテヤマは避けることができない。
だから、及ばないながらもアスナは『だいもんじ』をその対放射線状に放ってダメージの相殺を図る。
だが、ここでまたアルタ君が驚かせてくれる。

シャワーズ 「! シャワーッ!!」

一度液化したシャワーズはハリテヤマの後ろで再構築され、シャワーズの形になった時にはすでにハリテヤマの後ろでステップを行っていた。
通常ならハリテヤマを後ろから攻撃するんだろうが、シャワーズはそのままコータスに向かった。
その瞬間全員が、アルタ君のしようとしていることには気づいているが、もはや止めようは無い。

コータス 「コー……コォォォッ!!!」

シャワーズ 「!!」

コータスは背中から黒煙を大量に吹き、口から炎の塊を放つ。
シャワーズはなんのためらいも無く、その炎の塊を受ける。
シャワーズに当たった炎は大の字を描き、シャワーズを包むが所詮は効果今ひとつ。
とはいえ、シャワーズはそれを瞬きひとつせず、平然と受けて見せた。
そのままシャワーズは動きを止めずコータスの顔面に飛びついた。

その頃、マンタインの『ハイドロポンプ』はハリテヤマに直撃。
ハリテヤマは耐えることができず、ダウンしてしまう。

ユウキ 「ハリテヤマ戦闘不能!」

トウキ 「ちっ! 戻れハリテヤマ!」
センリ 「! でてこいケッキング! シャワーズに『ギガインパクト』!」

ユウキ (うまい! さすがパパか! このタイミングだとシャワーズは確実に一撃もらう!)

パパはこの変則ルールを利用してくる。
戦闘不能が宣言され、戻された瞬間すでにケッキングを繰り出している。
だが、瞬間間に合わなくシャワーズはコータスの背中の甲羅の中に向かって『ハイドロポンプ』を放つ。

コータス 「コーッ!!??」

ケッキング 「ケッキン!!!」

シャワーズ 「!? シャワーーッ!?」

ズッサァァァァ!! と大きな地すべりでシャワーズはコータスから引き剥がされた。
ケッキングの超強烈な一撃はシャワーズにクリーンヒットか。
俺はシャワーズの状態を見抜く。

ユウキ 「シャワーズ戦闘不能!」

アルタ 「……」

アスナ 「あ、ありがとうございますセンリさん」

センリ 「礼はいらん、それよりすぐケン君が動くぞ、ケッキングはしばらく動けん」

ケン (ち!? どっち攻撃する? コータスは中途半端なダメージを受けたとはいえ結構ヤバイ様子、ケッキングは今は動けへん)
ケン 「ち、ケッキングにもう一発『ハイドロポンプ』や、マンタイン!」

マンタイン 「マーン!!」

アンナ 「出てきて、アンノーン」

アンノーンZ 「アンノーン!」

やや遅れてアンノーン少女アンナがアンノーンを出す。
今回のアンノーンはZらしい。

アスナ (ケッキングを守らなきゃ! とはいえこのまま戦いの延長は難しい!)
アスナ 「ッ! ごめんコータス! ケッキングの前面に出て『あくび』よ!」

ユウキ (! お、アスナが非情策にでた。だが正解だ)

コータス 「コーッ!!」

コータスはケッキングの代わりに『ハイドロポンプ』を受ける。
だが変わりにマンタインは『あくび』を受けた。
コータスはさすがにもう耐えられないな。

ユウキ 「コータス戦闘不能!」

フウ 「ラン! 任せたよ!」

ラン 「うん! でてきてネンドール!」

ユウキ (ほう、ネンドールか、しかもよく育てられているな)

アスナがやられるとすぐにランがネンドールを出した。
それから少し遅れてマンタインが眠ってしまう。
だが、アンノーンもすぐに動き出す。

アンナ 「『めざめるパワー』」

ケン (何が起こる?)
センリ (何が起こる?)
ラン (何が起こるんだろう?)
アカネ (何が起こるんや?)
ユウキ (何が起こるんだ?)

何が起こるかわからないアンナの『めざめるパワー』には全員注目する。

フウ 「! ラン! 今のうちに場を整えるべきだ!」

ラン 「! うん! ネンドール、『スキルスワップ』」

ケン 「!? げぇっ!?」

アンナの『めざめるパワー』がケッキングを襲う。
今までから考えると珍しくスタンダードな無数の球体がケッキングを襲った。
しかしケッキングはあふれんばかりのパワーをネンドールの『スキルスワップ』で解禁されて『めざめるパワー』を軽く吹き飛ばす。

センリ 「ありがとう、ラン君」
センリ 「よぉし! いくぞケッキング『かみなりパンチ』!」

ケッキング 「ケックーッ!!」

ケッキングは飛び跳ねてマンタインになんと上空から襲い掛かる。
予想以上の素早さにケンもマンタインも対応できていない。
アンナも援護するには少し火力不足の様子。
そのままケッキングの『かみなりパンチ』はマンタインを強襲した。
その火力はまさに粉砕、爆砕、大喝采といったところだ。
まぁ、ケッキングほどのポケモンの火力になったらなんでも一撃必殺だが……。

マンタイン 「マン〜……」

ユウキ 「マンタイン戦闘不能!」

ケン 「わちゃ〜、戻れマンタイン! ほな後よろしゅう!」

サティ 「もうリーチかしら!? おのれぇ! やらせはせん! やらせはせんぞぉ!!!」

サティがちゃっかりわかる人にはわかるネタをしてミルタンクを場に出した。
これでトレーナーズがラスト。
とはいえ恐怖のアンナをどうにかできるかどうかか。

アンナ 「ネンドールに『めざめるパワー』」

ユウキ (おっ、アンナが対象を指定するとは、ネンドールを脅威にみたか?)

ラン (とりあえず役割遂行は完了したけどどうしようかしら?)

ネンドールはまだ動けそうに無いな。
特性『なまけ』が見事に影響している。
おかげで見事にネンドールに『めざめるパワー』が炸裂した。
とはいえ、ネンドールはまだ倒れない。

ユウキ (奇を照らすがその実、弱点を突けなければ軽いからなぁ)

どうしてもアンナというより、アンノーンの弱点だろうな。
『めざめるパワー』は決して高火力な技ではないし、アンノーンも強力なポケモンではないからな。

センリ (アンナのアンノーンは火力は十分わかった、ケッキングを一撃で仕留めるほどの火力は無い、ならば)
センリ 「よし、ケッキング! ミルタンクに『かわらわり』!」

ユウキ (さぁどうするサティ? 受けたらただではすまないぜ?)

サティ 「よけん! 受け止める!!」

アンナ 「ッ!?」

さすがにとなりのアンナちゃんが驚いた顔をした。
普通に考えてそれは無いわな。
だが、サティも大概奇を照らしたトレーナーだ。
なんの策も無い戦法とは思えない。

ケッキング 「ケッキーー!!」

ケッキングは握りこぶしを固め、ミルタンクの頭蓋をカチ割る。
地面にめり込むほどの衝撃はまさにその破壊力を知らしめる。

ユウキ (――だが)

サティ 「ふんぬぅ!! ミルタンク『カウンター』!!」

ミルタンク 「ミーールーーーッ!!!!」

ミルタンクの右アッパーがケッキングの顎を貫く。
一瞬顎が歪むほどの衝撃がケッキングを襲い、130キロの巨体が2メートル以上も宙に舞ったのだ。

ズッシャァァァァ!!!

ユウキ 「ケッキング、戦闘不能!」

センリ 「むぅ、一撃必殺とはならなんだか、やはりポケモンの道は深く険しい……もどれ!」

ミクリ 「やれやれ、まさか私まで回るとは……仕方ない、いけミロカロス!」

ミロカロス 「ミローッ!」

ミクリさんが出したのはミロカロス。
となりにいるネンドールが『なまけ』の特性の性で邪魔になっているが弱りきったミルタンクと攻撃力不十分のアンノーンなら問題ないだろう。

サティ 「大暴走のケッキングを止めるためにちょっと無茶しちゃったかしら……アンナ、30秒だけ時間稼げるかしら?」

アンナ 「……うん」

ミクリ 「30秒か、では見せてもらいましょうか! ランさん同時攻撃です!」

ラン 「はい!」

ミクリ 「ミロカロス、ミルタンクに『みずのはどう』!」

ラン 「ネンドール、『サイケこうせん』!」

ミロカロス 「ミローッ!」
ネンドール 「ネンドーッ!」

ジムリーダーズは確実にミルタンクを倒すために、攻撃発生の早い技で確実に仕留めにくる。

アンナ 「アンノーン、ミルタンクを!」

そこへアンノーンがミルタンクの前に出る。
なんとアンノーンがミルタンクを庇うのだ。

サティ 「今よミルタンク、『ミルクのみ』!」

ミルタンク 「ミルー♪」

アンノーンに庇ってもらいっている間にミルタンクが自分の体力を回復させていく。

アンナ 「アンノーン、『めざめるパワー』!」

アンノーン 「アンノーッ!」

アンナちゃんはミルタンクが十分に回復したとみると、すぐにアンノーンに命令を出す。
アンノーンは攻撃から逃れ、ネンドールに『めざめるパワー』を放つ。

ネンドール 「ネンドーッ!?」

ネンドールは不意に痛いところを突かれたのか、まだ余裕があったはずなのにそのまま倒れてしまう。
俗に言う急所に当たったってやつか。

ラン 「ああ……戻って、ネンドール」

ミクリ 「ふむ、最後の最後で逆転されてしまったか……ならば! ミロカロス『なみのり』!」

ミロカロス 「ミーローッ!!」

ミロカロスの起こす巨大な波はトレーナーズのポケモンたちを飲み込む。
度重なるダメージに体が上手く動かないのかアンノーンの飲み込まれ、波が引いた時には横たわるその姿があった。

ユウキ 「アンノーン戦闘不能!」

アンナ 「後はお任せします、戻ってアンノーン」

サティ 「おーし! 十分に任せるかしら! いくわよ! ミルタンク、『かみなりパンチ』かしら!」

今回やたらとよくお目にかかる『かみなりパンチ』、ミルタンクは右手に電撃を帯びてミクリさんのミロカロスを強襲する。
見たところ俺が戦ったミロカロスに比べると一回り大きいな、体力はその分並じゃなさそうだ。

ミクリ 「やれやれ、なんの小細工もなしか、これはジムリーダーらしさを見せるべきか」

そう言ってミクリさんは余裕を見せる。
1対1になって、この自重なしのジムリーダーを倒せるのか?
少なくとも少しでも油断すれは全くの有情のない攻撃が来るだろうな。

ミクリ 「ミロカロス、『ふぶき』です」

ミロカロス 「ミーロー!!」

ミロカロスは口から『ふぶき』を放つ。
しかし、『あついしぼう』の特性を持つミルタンクは全く動じない。

サティ 「無駄無駄無駄ぁ! 無駄かしら!! 『あついしぼう』を持つミルタンクに『ふぶき』は効かないかしら!!」

ミクリ 「ふむ、たしかに厚い脂肪を持つミルタンクに氷タイプの攻撃は通用しにくい、だがどうも勘違いしがちだが……」

ミルタンク 「ミ……ルッ!?」

その時だった。
ミルタンクは突然足を止めてしまう。
ミルタンクの下半身が凍ってしまったのだ。

ミクリ 「ミルタンクは効きにくいだけであって、凍るのだよ」

サティ 「なんですとーっ!?」

そもそも『あついしぼう』の特性を持つポケモンに氷タイプの技を放つトレーナーは少ない。
それゆえに忘れがちだが、『あついしぼう』の特性は凍りの状態異常を防ぐことはできないのだ。

ミクリ 「さて、これだけ長く『ふぶき』を照射すれば、ミルタンクの足は地面に完全に接着された」

サティ 「!?」

どういう鍛え方をしたらそのように放てるのかわからないが、ミロカロスは器用に上半身を凍らせず、下半身を完全に凍らせる。
その分なのか、下半身は完全に凍りに覆われて地面に接着されてしまった。

ミクリ 「気をつけるといい、凍った体はモロいぞ? こんなに叩けば! 『アクアテール』!」

ミロカロス 「ミーローーーッ!!」

ミロカロスは6.2メートルの巨体を持ち上げ、その尻尾に水を纏いミルタンクの体を強打する。
足が動かないから衝撃を逃すことができず、特に膝に強烈な衝撃が走っただろう。
しかし、ミルタンクは歯を食いしばり闘志をむき出しにしてミロカロスをにらみつける。

サティ 「く……くくぅ! ミルタンク、『かみなり』かしら!!」

ミルタンク 「ミールーッ!!」

ミルタンクは毛を逆立てて体から強大な電撃を上空に放つ。
すると『かみなり』はミロカロスに落ちるのだった。

ミロカロス 「ミローッ!?」

さすがに効果は抜群、ミロカロスも悲鳴を上げてしまう。
だが、タイプ不一致の一撃でやられるほどミロカロスはやわらかくは無い。
むしろ受けた後にやっと笑う不敵さだ。

ミクリ 「ふ、最後まで見事な闘志でしたね……これでおしまいです。『ハイドロポンプ』!」

ミロカロス 「ミーローーーッ!!!」

ミロカロスはミルタンクに巻きつくと、そのまま顔面に強烈な水圧を浴びせる。

サティ 「ミルタンクーッ!!」

ミロカロス 「ミルーーッ!?」

ミロカロスの強烈な一撃、ミロカロスは十分なダメージを与えたと確信するとゆっくりとミルタンクから離れる。
しかし……ちとツメを誤ったようだった。

ミルタンク 「……ミ…ル!」

ミロカロス 「……ミロッ!?」

必死にミロカロスの尻尾を掴むミルタンクに驚くミロカロスとミクリさん。
まだ、ミルタンクは倒れていない。

サティ 「ええい! これに全霊をかけるかしら! 『ギガインパクト』ーー!!」

ミルタンク 「ミーールーーーッ!!!」

ミルタンクはミロカロスをぐいっと引っ張ると、そのまま握りこぶしを固めてミルタンクの腹部に『ギガインパクト』を強打する。
強烈な攻撃を前に吸い込まれる形で受けたため、衝撃が逃げず100%のダメージがミロカロスの体に浸透すると、ミロカロスの口から何かが吐き出された。
そのままミロカロスは前のめりに倒れてしまう。

ユウキ 「ミロカロス戦闘不能! よって勝利はトレーナーズ!!」

サティ 「おっしゃーーー!! 勝ったかしらーー!!」

ケン 「おーしっ! ようやったーーー! ウィーアーナンバーワン!!」

リュウト 「ふむ、本気になったジムリーダーたちの力を肌で感じられて満足だ」

フウ 「あーあ、負けちゃったか」

ミクリ 「ふむ、すみません。みなさん」

テッセン 「わっはっは! 気にするなミクリさんよ! 我々ジムリーダーは勝ったり負けたりする存在じゃ!」

センリ 「うむ、決して我々は常勝を持つ存在ではない、今回は我々に勝ったトレーナーたちを祝福しよう」

アスナ 「あはは〜、あんまり力になれなかったですぅ〜」

トウキ 「なんの、アスナさんは十分頑張ったよ」

ユウキ (現行ジムリーダー対ポケモンリーグ出場トレーナーの対抗戦か……)

中々面白いものが見れた。
俺の予想では6:4でジムリーダーズの勝利だったんだけどな。

ユウキ (ま、外れることはあるわな)

俺はそう思うとふっと笑う。
面白くなった。
明日のプリム戦が楽しみだ。

俺はそう思うと、ホテルへと一人戻るのだった。




ポケットモンスター第97話 『間章 それぞれの午後』 完






今回のレポート


移動


サイユウシティ


3月8日


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

チルタリス

ユレイドル

ボスゴドラ

コータス


見つけたポケモン 66匹






おまけ



その97 「最近やる必要があるのかと思えてきた」





例によって休みです。




おまけその97 「最近やる必要があるのかと思えてきた」 完


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