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POCKET MONSTER a supplementary biography
Golden Sun & Silver Moon



第4話 『出逢い』




『4月9日 時刻12:00 ヒワダタウン』


キヨミ 「っしゃーーー! ジムバッジゲットォーー!!」

私は、本日朝一番からジム戦に挑み、見事に快勝した。
相手は虫タイプの使い手だったけど、思いの外楽だった。
それもそのはず、マグマラシの活躍があまりにも目覚ましい。
昨日のバトルの後だと言うのに、マグマラシの実力は伸びるばかり。
ヒノアラシの時とは、ほぼ全てにおいて成長していた。

キヨミ 「でも、まだふたつ…後6つもあるんだから!」

時間はそれほど多いわけじゃない、いつだってこんな楽に行くとは思えないし。
私はジム戦のダメージをポケモンセンターで回復させ、すぐに次の街へ向かうことに決めた。





………………………。





『翌日 時刻6:00 コガネシティ』


キヨミ 「ふひぃ…長い森だった。まさか徹夜することになるなんて…」

元々朝の弱い私にしてはよく持ったと思う。
とはいえ、森の中は予想以上に危険で、特に方向を見失うのが怖かった。
それなりに道はある物の、大きな森だけに眠って迷ったら洒落にならない。
私はそう自分に言い聞かせてここまで来た。
とはいえ…さすがに限界かも。

バタン!

マグマラシ 「マグッ!?」

私は結局そのまま倒れてしまう。
眠気と疲労で私が眠りに着くのに1分も必要なかった…



………。



少年 「ん? 何や、あれ…」

マグマラシ 「マグッ〜」

南からコガネシティに向かう途中、ワテは一体のマグマラシを見つけた。
あんなレアなポケモン、そこらにうろついてる訳ない、誰かのポケモンやろ…って!

少年 「何やねん! 行き倒れかいな!?」

ワテはすぐにマグマラシの側に駆け寄る。
すると、少女が倒れていた。
体中汚れとるけど、森を抜けてきたにしてはエライボロボロやな。

マグマラシ 「マグッ」

少年 「心配いらんで、ワテは敵や無い…」
少年 「よっ…と!!」

ワテは少女を背中に担ぎ上げ、すぐにコガネシティへと向かった。
歩いても10分ほどか…何でこんな所で倒れとったんや?

キヨミ 「…すぅ…すぅ…」

少年 「ま、まさか…寝てるだけなんか?」

マグマラシ 「…マグゥ〜」

ワテの足元を横から着いて来るマグマラシが溜息を吐く。
どんな神経しとんねん! こないなトレーナーは初めて見るわ!



………。
……。
…。



『某日 時刻7:00 コガネシティ・???』


キヨミ 「ふぁ〜〜〜〜〜…」

私は大きな欠伸をし、ベッドから起き上がった。
良く寝たなぁ〜…何かもうこれほどかって位寝た気がする。

キヨミ 「…ん〜? って、ここどこ〜?」

マグマラシ 「マグマッ!」

私が状況を確認できないでいると、マグマラシが足元で吠える。
ん? どうしたんだろ…

キヨミ 「何かあるの〜?」

私はまだ覚醒しきってない意識で瞼を擦り、マグマラシが案内しようとしている場所に向かった。
そして、そこに見えたのは…

? 「ブイ〜」

キヨミ 「!? こ、これって…イーブイ!?」

いきなり部屋の片隅で踞って何やら寒そうにしているポケモン、イーブイがいたのだ。
私はすぐに意識を覚醒させ、そのポケモンを抱き上げる。

キヨミ 「ど、どうしたのよこの子? 一体どこから…」

イーブイ 「ブイ〜〜」

イーブイは心細そうに鳴き声をあげるだけ。
私は状況を確認するように足元を見ると、タオルの上に破られた卵の殻が散らばってきるのを見つける。
そして、私は確信した。

キヨミ 「あなた…まさかあのタマゴから?」

イーブイ 「ブイ?」

イーブイは状況を理解できないように、首を傾げる。
でも間違いない、この子はあのタマゴから孵ったんだ。
寝ている間に孵っちゃうなんて…

キヨミ 「と、とにかく…一度ポケモンセンターに…ってここどこ〜!?」

マグマラシ 「…マグゥ〜」

マグマラシは溜息を吐き、トコトコと歩いていく。
どうやら、場所がわかるらしい…私はそれに着いて行く。



………。



店員 「はい、大丈夫ですよ、元気なイーブイです」
店員 「まだ産まれたばかりのようですから、気をつけてあげてね?」

キヨミ 「あ、ありがとうございます」

イーブイ 「ブイッ」

イーブイが私に笑顔を向けてくれたのを確認すると、私はほっ…とする。
私が優しく抱きしめると、イーブイは私の無い胸に頬を擦り寄せた。

キヨミ 「あはっ、くすぐったいよ〜」

店員 「あらあら、甘えているのね…あなたその子に凄く好かれているのね」

イーブイ 「〜♪」

イーブイは確かに甘えた子供のように擦り寄っている。
子供かぁ…ラッキーの時はもっとどっしりしてたけど…(滝汗)

キヨミ 「よしっ、じゃとりあえずボールに入ってね?」

イーブイ 「ブイ♪」

私は改めてモンスターボールをイーブイに当てる。
そして、正式にこの子は私のポケモンとなったのだ。

キヨミ 「そう言えば…ここってコガネシティだったんだ」

私は改めて現在地を確認する。



−ここはコガネシティ、賑わいの大型都市−




キヨミ (コガネシティ…ここにもジムがある!)

私はすぐにジム戦への意識を高揚させる。
ポケモンたちは大丈夫っぽいし、すぐにでも戦える!
私は時間もまだまだ早いのを確認し、すぐにジム戦への手続きをすることにした。

店員 「あ、ちょっとあなた!?」

キヨミ 「すぐに戻ってきますーー!!」

私はそのまま外へと直行した。
まぁ、看板でも見ればすぐにたどり着くでしょ♪

マグマラシ 「……マグゥ」

ダダッ!



………。



『コガネシティ ポケモンジム リーダー:センリ −強さを追い求める男!−』




キヨミ 「…ごくり」

私はすぐに見つけられたジムの扉を前に、少し威圧される。
何て言うか、看板からもオーラが伝わってくる。
強さを追い求める…か、凄そうね。

マグマラシ 「…マグッ!」

マグマラシも、少なからず燃えているようだ。
扉を潜る前からこんな表情をするなんて…

キヨミ 「よしっ! 行くわよマグマラシ!! って、手続きだけだけど…」

マグマラシ 「マグッ!」

ウィィィ…

キヨミ 「すみませーん!」

? 「む? 客人かな?」

キヨミ 「うお…」

私はいきなり応対で出てきたオジサンを見て驚愕する。
その人は2メートル近い長身で、夏物の緋色の着物に深緑の袴を着ていた。
そして、顔からは鋭い目つき、頭は真っ黒な髪の毛をボサボサのまま、肩の下まで伸ばしている。
何て言うか…色々凄そう! この人がセンリって人かな?

キヨミ 「えっと、ジム戦の申し込みをしたいんですけど…」

? 「む…そうか、ならば今すぐにでも始めるか?」

キヨミ 「え!? いや、ちょっと私はまだ…」

? 「喝!! トレーナーであれば、いついかなる時も戦えるようにしておく物!!」
? 「戦いに状況を選べることなどごく僅か! なれば! 今ここでそなたの力を見せてみよ!!」
? 「出よ『バンギラス』!!」

ボンッ!

バンギラス 「グガァッ!!」

いきなりこの人は何を言い出すの!? って言うかポケモン出してきたよ!!
って言うか、ここ玄関だけど!? いいの!?

キヨミ 「こうなったらやってやるわよーーー!! 行け『マグマラシ』!!」

マグマラシ 「マグッ!!」

バシュゥゥゥッ!!

マグマラシは相手の只ならぬ気を感じてか、いきなり全力モードで炎を噴出する。
この際、相手の力量を肌で知れるのはいいことだと思おう。

キヨミ 「……」

? 「………」

バンギラス 「………」

マグマラシ 「………」

何故か、誰も動かなかった。
って言うか、動き辛い。
あのバンギラスとか言うの、間違いなく強い…って言うかいかつい。
今までにない威圧感も去ることながら、圧倒的な何かを感じる。
私の頬を嫌な汗が流れていた。

キヨミ (あのバンギラス、片目だけど、しっかりと『私』を見てる)

ポケモンがトレーナーの動きを見ているのだ。
こんな状況、初めてだ…ポケモンに動きを観察されるなんて思いも寄らなかった。

? 「どうした挑戦者よ!? 我を乗り越える気であれば、自分から参られよ!!」

キヨミ 「!! くっそぉ〜! こうなったら行けーーー! 『ブラストバーーーーーーーン』!!!」

マグマラシ 「マグゥ!! マーーーーーーーーーーー!!!」

キュィィィィィッ!! バシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

バンギラス 「!!」

バババババババジュッ!! ドッゴォォォォォォォォォンッ!!

大爆発、玄関先で私は思いっきり大技をぶっ放した。
考えてる余裕なんてひとつも無い、私は半ばヤケクソで一番強い技を放ったのだ。
だけど、私が見たのは悪夢に近かった。

バンギラス 「ガァッ!」

ビュゴオォォォォッ!!

キヨミ 「う、嘘……!」

バンギラスは右腕を外に払い、砂嵐を起こす。
あの熱線を軽く薙ぎ払ったと言うの!?
バンギラスにはほとんどダメージなんて入ってなかった。
こんなの…勝てる訳ない。

? 「ふむ、こんな物か…まだまだ、若輩者ゆえ…それも致し方なしか」
? 「しかし! ポケモンバトルは非情! 相手が立っているならば倒すのが礼!」
? 「バンギラス! 『はかいこうせん』!!」

バンギラス 「グゥ〜! ガァッ!!」

カァァァッ!! ドッバァァァァァァァンッ!!

キヨミ 「キャァァァッ!!」

私たちは突然の『はかいこうせん』に吹き飛ばされる。
その爆風でマグマラシの近くにいた私も吹き飛んだ。



ガシャァァァァァンッ!! ズッシャァァァッ!! ゴロゴローー!!

通行人A 「な、何だぁ!?」
通行人B 「ちょ、子供が吹き飛んだわよ!?」
通行人C 「きゅ、救急車呼んだ方が!?」

女性 「…あら、間に合わなかったかしら?」
女性 「みなさーーーん!! これはただの練習なので、気になさらずーー!!」
女性 「お騒がせしましたーーー!!」

私は通行人の皆さんに頭を下げて、そう叫ぶ。
すると、皆あまり関わりたくないのか、特に気にせずそのまま通り過ぎて行った。
私はすぐに、転がった少女の元に走り寄った。

女性 「君! 大丈夫?」

キヨミ 「きゅう…」

良かった、思いの外怪我はないようだ。
玄関の扉を割って飛び出してきたから、心配したけど…

少女 「? どないかしたん?」

後ろから、娘が何か不思議そうに声をかけた。
私は笑顔で、娘にこう言う。

女性 「大丈夫よ、これもポケモンバトルだから♪」

娘 「? そうなん?」

男 「む…戻ったか、チトセ」

私の名を呼んだ男を私は軽く睨みつける。
すると、男は少しバツが悪そうに頭を傾げた。

チトセ 「ザラキ! あなたは、またこんなことを…! バトルをするにしても考えなさいと言ったでしょう!?」

ザラキ 「む…すまぬ。小生も少々熱くなってしまった…。思いの外、この少女の気迫は凄まじくてな」

チトセ 「…? こんな小さな娘が、あなたに?」

とても信じられなかった。
今、私の腕の中で横たわる埃まみれの少女があの『ザラキ』に気迫を押し付けたと言うのだ。
この広い世界でも、恐らく勝てる者など数えるほどしかいないと思われる、あの『ザラキ』に。

娘 「なぁ…はよ入ろ、ウチお腹空いた」

チトセ 「え、ええ…そうね、ごめんね『ハルカ』、すぐに朝ご飯の支度をするわ」

今日は朝からコンビニにパンを買いに行っていたのだ。
私としたことが、朝食の残量も忘れていたなんて…まだまだ母親としては3流ね。

ザラキ 「…ハルカも、もう5歳か」

チトセ 「ええ、いつかはこの娘も巣立っていくのでしょうね…そう遠くない日に」

私は自分の娘の手を握りながらジムに入っていく。
少女は左手一本で抱え上げ、ザラキ、ハルカと共にまずはジムの休憩所に入った。



………。
……。
…。



『4月11日 時刻9:00 コガネジム・休憩室』


キヨミ 「う…?」

私が目を覚ますと、また知らない風景だった。
私、気絶してた?
確か、ジムに来て…それで……

キヨミ (あ〜…そうだ、負けたんだ……それも手も足も出せずに)
キヨミ (はぁ…あんなにも差があるなんて)

私は早々に肩を落とす。
あんなのどうしろって言うのよ? 全然レベルが違うじゃん。

キヨミ (お姉ちゃんは負けた時、こんな気持だったんだろうか?)

何故か想像できなかった。
いつも完璧なお姉ちゃん、でもお姉ちゃんは最初のジム戦に敗北した。
それから、お姉ちゃんは私と離れた…何で、ああなったんだろう?
どうして、私は……勝っちゃったんだろう?

チトセ 「あら、起きたのね? こっちへいらっしゃい…あなたもお腹が空いているんじゃない?」

キヨミ 「え? あの…ここは…?」

チトセ 「いいから♪」

女性はそう言って私の手を引いて歩いていく。
不思議な感じだ…この人は見も知らぬ私の手を引いて歩くのだから。



………。



男A 「おっ! 来たなチャレンジャー!」

男B 「こっちで一緒に飯だ!!」

男C 「こっちは先に食ってるぜ!!」

キヨミ 「…あの、ここって?」

? 「失礼、君が挑戦者と言うトレーナーかな?」

キヨミ 「え…?」

私はひとり他とは違う雰囲気の男に話しかけられる。
身長は170位だろうか? 髪は短く、男らしさを感じる。
赤い服に白いズボンと、どこかスポーツマン的な感じだ。

? 「私は、『センリ』…このコガネジムでジムリーダーをやっている」

キヨミ 「え!? あれ? じゃあ、あの着物の人は…」

ザラキ 「小生は、代理だ。訳あって朝の間だけ番を承っていた」

キヨミ 「ええ〜?」

何か、色々勘違い? ってことは…私が戦ったアレは…別にジム戦でも何でも無かったこと!?

チトセ 「ごめんなさいね…ザラキが色々と滅茶苦茶をしたみたいで…」
チトセ 「でも、あなたもどうしてパジャマ姿でジムに?」

キヨミ 「え? パジャマ…?」

私は自分の姿を見る…すると、いつも着ているパジャマでは無かった。
って言うか、かなり大きいパジャマを着せられていた。

チトセ 「あなたのパジャマは、もうボロボロになっていたから、捨ててしまったわ…さすがにちょっと着れる物じゃなくなってたから」

キヨミ 「そ、そうですか…」

私は、改めてあの状況を思い出す。
うわぁ…思い出せない。
何か凄い吹っ飛び方をした記憶まではあるんだけど。

センリ 「で、改めて聞くが、君の名前は?」

キヨミ 「あ、私…キヨミと言います! ワカバタウンから来ました!」

センリ 「そうか、ではキヨミ君! ジム戦はいつ始めるかい?」

キヨミ 「…あ、えっと」

私はちょっと決めかねていた。
ポケモンたちの状況もわからないし、何よりマグマラシは大丈夫なのか?

チトセ 「あなたのポケモンなら、そこよ…」

マグマラシ 「マグッ!」

キヨミ 「あっ! マグマラシ…大丈夫なの?」

マグマラシ 「マググッ!」

マグマラシは全然大丈夫だと炎を出してアピールする。
そっか…良かった。

キヨミ 「…じゃあ、ジム戦は夕方お願いします!」

センリ 「わかった! では17時でいいかな? その位の方がこちらも都合がいい」

キヨミ 「はい! よろしくお願いします!!」

私は礼をしてセンリさんと向き合う。
何て言うか、燃えてきた!
やっぱり私はこうでなくっちゃ!!

チトセ 「さぁ! 挨拶も済んだら朝食にしましょ♪ 生憎、材料が無かったからほとんど買ってきたパンと即席のサンドばかりだけど」
チトセ 「ジムの皆さんも遠慮せずに、頂いてね!?」

トレーナー一同 「うーーっす!! いつもご馳走様です!!」

どうやら、周りの人はジムトレーナーの人たちのようだった。
何だか凄い…前のジムとは人数も違う。
男女入り交じってるけど、皆体育会系って感じだった。

センリ 「さぁ、キヨミ君も食べたまえ! チトセの作った食事は最高だぞ!?」

そう言ってセンリさんも食べ始める。
私は折角なので、それを頂くことにした。

キヨミ (…何でだろう? 私…何か忘れてる気がする)

私は不思議と、センリさんの声に聞き覚えがある気がした。
どこかで一度会っていただろうか?
有名な人だったら、会っていてもおかしくないけど…それでも酷く頭に引っかかっていた。

ハルカ 「…? どうしたん?」

キヨミ 「え…? えっと…」

チトセ 「この娘は、私とセンリの娘よ…名前は『ハルカ』って言うの」

キヨミ 「ハルカ…ちゃん」

ハルカ 「……」

見た所、まだ幼稚園児位の少女はサンドイッチを頬張りながら不思議そうに私を見ていた。
私は、何故だか不思議な感覚に囚われた。
この娘を見ていると、まるで何か心を見透かされているような…

ハルカ 「……」

ハルカちゃんは特に私には気にせずに、食事を続けた。
私もそれに習ってか、朝食を摂ることにした。
朝から、何も食べてないもんね……





………………………。





『同日 時刻15:50 コガネジム』


キヨミ (…来た。でも勝てるだろうか?)

私は今朝の大敗を思い出す。
敗北と言うものがこれほど背中にのしかかってくるとは正直思わなかった。
だけど、今更退けない…私はもうポケモンを信じて戦うだけだ!

ウィィィ…

センリ 「来たね、キヨミ君! 待っていたよ!!」
センリ 「バトルフィールドはこっちだ、来たまえ!」

私はセンリさんの案内の元、フィールドに赴く。
道中、ジムトレーナーの皆さんがこちらを見ていた。
私は目を合わせることなく、ただ自分の呼吸を整えていた。

キヨミ (大丈夫、私はやれる…)

センリ 「さぁ、ここだ! 準備はできている! すぐにでも始めよう!!」

私は気持ちを一気に切り替え、目の前の相手を見据える。
フィールドは平らな障害物の無いフィールド。
スタンダードな室内フィールドと言えるだろう、純粋にトレーナーとポケモンの実力が試されそうだ。

審判 「それでは! これより、コガネジムのジム戦を行います!!」
審判 「使用ポケモンは3体! バトル中のポケモン交換は挑戦者のみ認められます!!」
審判 「まずは、ジムリーダー、センリ! ポケモンを!!」

センリ 「よし、まずはこれだ! 行け『ラッタ』!!」

ボンッ!

ラッタ 「ラターー!!」

キヨミ 「あのポケモンは…『コラッタ』の進化系!」

センリさんが出したのはノーマルタイプの『ラッタ』だ。
進化系のポケモンだけに、油断はできない。
コラッタの時点でも素早さが高く、中々先制が取れないこともあった。
だったら、まずは…

キヨミ 「行くわよ! 『メリープ』!!」

ボンッ!

メリープ 「メリ〜♪」

私が出したのは『メリープ』。
ノーマル相手に有効な技は少ない、でも逆にこちらが弱点を突かれる心配もない。
ここは相手のスピードを殺しやすい電気タイプで勝負よ!

審判 「それでは、試合始め!!」

センリ 「さぁ、キヨミ君から来たまえ!」

キヨミ 「よーーっし! 行けメリープ! 『でんきショック』!!」

メリープ 「メリー!!」

ビビビッ!!

センリ 「かわせラッタ! 『でんこうせっか』!!」

ラッタ 「ラタッ! タターー!!」

バチチィッ! シュバババッ!!

キヨミ 「くっ!? 速い!!」

ドガァッ!

メリープ 「プーー!!」

ズシャァァッ!!

メリープは強烈な『でんこうせっか』で吹き飛ぶ。
さすがにタイプ一致の技、ダメージは思いの外大きい。
やっぱり、まずはあのスピードを殺さないと…!

キヨミ (速度を殺すにはふたつの技があるけど…)

でんじは:当たらなければ意味がない、むしろ『でんきショック』より当てにくい
わたほうし:命中が難、だけど効果範囲は広めで動き回る相手には効果も高い。

キヨミ 「よしっ! 『わたほうし』よ!!」

私は即座に決め、指示を出す。
ラッタは『でんこうせっか』の後でまだ距離的に遠くない。
メリープはすぐに態勢を整えて技の態勢に入った。

メリープ 「プー!」

ボゥゥゥゥゥンッ!!

メリープは体の綿毛から大量の『わたほうし』をばら撒く。
これでメリープを中心に胞子が撒かれ、相手は近づきにくくなった。

センリ 「下がれラッタ! そして『きあいだめ』!」

ラッタ 「ラタッ! タ〜〜!!」

ラッタはこちらの動きを見て素早くバックステップする。
そして、体を屈めて『きあいだめ』を行った。
あの技は急所に技を当てやすくする技だ、長引くとマズくなる!

キヨミ 「メリープ続けて『でんじは』よ!!」

センリ 「かわせラッタ! そして『ひっさつまえば』!!」

メリープ 「リーーー!!」

バババッ!!

ラッタ 「ラータッ!」

バチィッ!

ラッタはまたしても回避する。
そして、胞子がまだ残っているこちらに向かって突進してきた。

ダダダッ!!

メリープ 「メリッ!?」

ラッタ 「ラターー!!」

ガブッ!!

ラッタの『ひっさつまえば』がメリープの体にヒットする。
メリープは思いっきり吹き飛び、ダウン。
だけど、ラッタにも『わたほうし』がまとわりつき、確実に素早さは下がった。

審判 「メリープ戦闘不能! ラッタの勝ち!!」

キヨミ 「く…結局ダメージは与えられなかった」

シュボンッ!

私はメリープを戻し、次のボールを取る。

キヨミ 「行け『ラッキー』!!」

ボンッ!

ラッキー 「ラキ〜♪」

次に出したのはラッキー。
ゴウスケとの一戦であっさりやられちゃったけど、今度は大丈夫だろうか?

センリ 「む…ノーマルタイプか、それもラッキーとはな」

キヨミ 「……?」

センリさんはこちらのラッキーを観察しているようだった。
一体、何があると言うんだろうか?

審判 「それでは試合開始!!」

キヨミ (考えてる暇はない! 今がチャンスなんだ!!)
キヨミ 「ラッキー『はたく』!!」

ラッキー 「ラキラキー!」

センリ 「『でんこうせっか』!!」

ラッタ 「ラターー!!」

ドッカァッ!

ラッキー 「ラ…キ〜〜」

ドスンッ!!

またしても一発ノックダウン…何で!?

審判 「ラッキー戦闘不能!! ラッタの勝ち!!」

シュボンッ!

キヨミ 「………」

センリ 「…キヨミ君、君はまだポケモンの特徴を理解していないようだね」

キヨミ 「特徴…?」

センリ 「そうだ、例えばラッキーの打たれ弱さとか、ね」

キヨミ 「打たれ弱い…って、あんなに体力が高いのに!?」

センリ 「そう、体力は高い…だが『ぼうぎょ』は別だよ?」

キヨミ 「…あ!」

私は考えたことも無かった。
でも、ポケモンには大別して6つの能力があると言うことは聞いていた。
HP、こうげき、ぼうぎょ、とくこう、とくぼう、すばやさ…この6つ。

センリ 「ラッキー体力、HPならば全てのポケモンの中でもトップと言っていい」
センリ 「その体力は伝説のポケモンすら凌ぐと言われているからね」
センリ 「ただし! ラッキーの『ぼうぎょ』は極めて低い」
センリ 「ちゃんとした育て方をしていなければ、そこら辺の野生ポケモンでもちょっと小突けば倒れるほどにね」

キヨミ 「…そ、そんなに」

私はまだまだ自分のポケモンのことを理解していない。
ただ、戦い続けて、何となく…と言う程度だった。

センリ 「ラッキーは『HP』と『とくぼう』に優れるポケモンだ」
センリ 「ゆえに、特殊攻撃を主体とするポケモンには無類の耐久力を誇る…が、逆に物理攻撃の主体のポケモンには何もできないことも多い」
センリ 「有利な相手、不利な相手…それを決めるのは何もタイプ相性だけではないぞ?」

キヨミ 「は、はい…!」

私はセンリさんに教えられ、理解する。
やっぱり、この人は他のトレーナーとは明らかに違う。
何か、とても大きな物を感じる。
私は半分吹っ切った。
もう、残されたポケモンは一体、だったら突き進むだけだ!

キヨミ 「行け『マグマラシ』!!」

マグマラシ 「マグーー!!」

審判 「それでは試合開始!!」

キヨミ 「行け!! 『ブラストバーン』!!」

マグマラシ 「マグーー! マーーーーーーーーーーー!!!」

センリ 「!?」

キュィィィ…バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!! ズバァァァァァァァァァァンッ!!

ラッタ 「………」

審判 「あ…ラッタ戦闘不能!! マグマラシの勝ち!!」

キヨミ 「うしっ! まずは一体!!」

センリ (驚いたな…あんな技は初めて見る、この少女…私が思っているよりも)
センリ 「よしっ! ならばお前に任せるぞ『メタモン』!」

ボンッ!

メタモン 「メタモ〜」

キヨミ 「な、何あのポケモン!?」

何とも形容し難いポケモンだった。
スライム…と言うか、アメーバー? って言うか…とにかく軟体生物系!!
どんな戦いをするのか見当もつかない…

審判 「それでは、始め!!」

センリ 「今度はこちらから行くぞ! 『へんしん』!!」

キヨミ 「は、はぁ!?」

突然、センリさんはまるでヒーローショーの様にポーズを決めて変身!等と叫ぶのだ。
そして、そんな冗談めいたセリフとは裏腹にメタモンは体を変化させてしまった。

キヨミ 「う、嘘!?」

メタモン 「マグーー!!」

マグマラシ 「マ、マグッ!?」

何と、メタモンはマグマラシに変身してしまった!
それも、ほとんどソックリ…違いが見当たらない!

センリ 「ふふふ…私のメタモンが使う『へんしん』はほとんどオリジナルと大差ないほど鍛えてある」
センリ 「果たして、自分のポケモンと同じ能力を持つ相手に上手く戦えるかな?」

キヨミ (同じ…能力!?)

と、なると…あの技は相手の姿形どころか能力までコピーしてるってこと!?
これは…ちょっとまずいかも。

キヨミ 「だけど! 勝つのは私よ!! マグマラシ『かえんぐるま』!!」

私はつい最近覚えたばかりの新技を指示する。
マグマラシは体を丸め、炎を噴出しながら相手に向かって転がっていった。

センリ 「む! メタモン! こちらも『かえんぐるま』だ!!」

メタモン 「メ、メタ!」

ギャギャギャギャッ!!

メタモンが技に入る前に『かえんぐるま』はヒットする。
センリさんもこれには少々驚いた様だった。

メタモン 「メ、メターー!!」

ゴォゥッ!! ギャギャギャッ!!

マグマラシ 「…マグゥ!」

今度はメタモンの技がマグマラシにヒットする。
だけど、ダメージは……

キヨミ (向こうの方が大きい? 同じ能力なら、ダメージに差ができるわけはないけど…)

この時、私は何となく予想する。
メタモンの変身とは、能力をコピー出来ても、体力はコピーできてない?

センリ (む…気づかれたか!? 『へんしん』の唯一の弱点を…)

キヨミ 「だったら、構うか!! 『ブラストバーン』よ!!」

センリ 「こちらも行け!! 『ブラストバーン』!!」

マグマラシ 「マグ〜…マーーーーーーーーーー!!!」

キュィィ…バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

メタモン 「メ、メタ〜!」

私たちは互いに同じ技を宣言する。
マグマラシは先にチャージを開始し、先に技を放つ。
遅れて指示を受けたメタモンはチャージが遅れ、放つ前に『ブラストバーン』の熱線を浴びてしまった。

チュドォォォォォォォォォォォンッ!!!

メタモン 「メ〜…」

審判 「メタモン! 戦闘不能!! マグマラシの勝ち!!」

キヨミ 「っしゃぁ! 2体目!!」

センリ 「戻れ『メタモン』…よくやった」
センリ 「驚いたな…君のポケモンはよく育てられている」
センリ 「正直、たった1体のポケモンに追い詰められる事になるとは思わなかった」
センリ 「だが! 同じ様に最後のポケモンも倒せるとは思わないことだ!」
センリ 「行くぞ…これが私の最後のポケモン! 『ケンタロス』!!」

ボンッ!!

ケンタロス 「ケンーー!!」

キヨミ 「う…大きい!」

マグマラシと比べるとかなりの大きさだった。
いかつい顔つきに大きな角でこちらを『いかく』してくる。
マグマラシは少なからず、それに怯んでいるようで、更に二発目の『ブラストバーン』でかなり消耗しているようだった。

キヨミ (だけど、直接的なダメージは低い…行けるわね?)

マグマラシ (俺が負けるか! あんな牛野郎は叩きのめしてやる!)

私はマグマラシの『声』を聞く。
そう…私には小さな頃からこんな能力があった。
私にはポケモンの声が聞こえる。
だから、ポケモンが受けたダメージを直接聞くことができるのだ。
マグマラシは強気だから、ちょっと測り辛いけど、大丈夫だろう。

審判 「それでは最終戦! 始め!!」

センリ 「さぁ、来たまえ!! 君の全力を見せてくれ!!」

キヨミ 「行くわよマグマラシ!! 3発目の『ブラストバーン』!!」

マグマラシ 「マグ〜〜!!」

センリ 「大した気迫だ、あんな大技を連発するその気力も素晴らしい!!」
センリ 「だが! 世の中にはこんな技があると言うのも覚えておきたまえ!!」
センリ 「ケンタロス! 『まもる』!!」

キヨミ 「!?」

マグマラシ 「マーーーーー!!!」

キュィィィ…バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

ケンタロス 「ケンッ!!」

ピキィィィィィィンッ!! ズバァァァァァァァァァァンッ!!!

キヨミ 「!?」

ケンタロス 「フンッ!!」

キヨミ 「そ、そんな…!!」

ケンタロスは全くの無傷だった。
あの威力を完全に殺すなんて…

センリ 「『まもる』はありとあらゆるポケモンの攻撃技を無効化する、最大の防御とも言える技だ」
センリ 「いかに威力があろうと、ポケモンの技! それをいなすのもポケモンの技なのだ!!」
センリ 「さぁ、3発撃ったその体で耐え切れるか!? ケンタロス『つのでつく』!!」

キヨミ 「マグマラシ!! かわ…」

ケンタロス 「ケンッ!!」

ドギャァッ!!

ケンタロスはこちらの想像を遥かに超える高スピードでマグマラシを吹き飛ばした。
あの巨体で、あんな速度を…!

キヨミ 「!? マグマラシ…まだ、あなた!!」

センリ 「…!! ケンタロス!! 気を…」

キヨミ 「『きしかいせい』よーーー!!」

マグマラシ 「!! マグーー!!」

マグマラシは宙に吹き飛ばされながらも空中で態勢を整える。
そして、都合よくギリギリ残った体力で『きしかいせい』を試みた。
真下にはすでに勝利を確信していたケンタロス。

ドッゴォォォォォォォッ!!

強烈に鈍い音…ケンタロスの背中にマグマラシは渾身の『きしかいせい』を頭で放つ。
ケンタロスはそのまま腹から地面に突き刺さり、マグマラシと共に地面に沈んだ。

キヨミ (やった!?)

センリ 「……!!」

センリさんもすぐには状況を確認出来ていない。
私はまだ動けるマグマラシに最後の指示を出した。

キヨミ 「トドメよ!! もう一発……!!」

センリ 「もういい!! ここまでだ!!」

キヨミ 「…えっ!?」

私が最後の指示を出そうとすると、センリさんは大声で止めた。
そして、審判はやや困惑気味にコールする。

審判 「ケ、ケンタロス戦闘不能!! よって! 勝者『キヨミ』!!」

キヨミ 「え……?」

センリ 「戻れケンタロス…ご苦労だった」

シュボンッ!

センリさんはまだ動けるはずのケンタロスをボールに戻し、私の方へ歩いてくる。

センリ 「…キヨミ君、最後の指示、君は何を思って指示を出した?」

センリさんの表情は厳しい顔だった。
私は少し気圧されながらも、自分が思ったことを口にする。

キヨミ 「…マグマラシはまだ動けると言いました、だから私は…」

センリ 「!? そうか…君には聞こえるのか、その声が」

キヨミ 「…はい」

私の言葉を聞いて、センリさんは何故か辛い顔をした。
そして、懐から一枚のバッジを私に渡してくれる。

センリ 「…これが私に勝った証、『レギュラーバッジ』だ!」

キヨミ 「…これが」

私はそれを受け取ると、強く握り締める。
何だかんだで勝てた…
今回は本当にダメかと思ったけど…それでも勝てた。

センリ 「…キヨミ君」

キヨミ 「…はい?」

センリ 「君は、恐らくこれからとても大きなトレーナーになっていくだろう」
センリ 「だけど、それは同時に君がとても悲しい物を見ることになってしまうと思う」
センリ 「だから…もし、本当に辛くなって…どうしようも無くなった時は、ここに来なさい」

キヨミ 「……?」

私にはセンリさんの言葉の意図がわからなかった。
ただ、そう言ったセンリさんの表情は…何故かとても悲しかった。



………。



そして、私は後に気付く……この戦いと出逢いが、私の人生に大きく関わってくると言うことに………



…To be continued




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