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beatmaniaUDX The ANOTHER Story Type.K


4th STAGE 『絶望』




オロロージョ 「……もうそろそろ見えてくるかな?」

ケイ 「……」

旅を始めて十日……私たちはついにキラーがいるというアゼルガット王国の首都へと到着しようとしていた。
距離にして十数キロ離れた位置にある首都はようやくその姿を確認できることができた。

ケイ 「闇が……渦巻いている」

それは異質だった。
何も無い荒野の先にある都市は闇に包まれ、昼間だと言うのにその辺りだけ暗く夜のようだった。
その様子はあまりに異質で、恐怖をダイレクトに感じさせる。

エクレメス 「噂では聞いていたけどこれは酷いわね……」

オロロージョ 「……ああ、あそこまで精霊たちが苦しんでいるとは思っていなかった」

改めて、ここが異世界だと理解する。
精霊……そんな目には見えない非現実的な物が、今は信じられる。

ケイ 「そのキラーっていう人を倒せば、この世界は豊かになるんだよね」

オロロージョ 「ああ、キラーを倒せば精霊さんも喜ぶ」

エクレメス 「ケイ。あの街の光景を見れば分かるでしょう? キラーがどれほど精霊たちに強い影響を与えているか」

ケイ 「……うん」

本当は正直、キラーって言う人一人の性でこれほど大地は枯れ、貧しい世界があるのかと思ったけどあの首都タッシュの様子を見ると頷かざるを得ない。
それと同時に恐怖する。
それほどキラーというのは恐ろしい人物なのだと。
でも………なんでキラーさんはこの惨状を無視するんだろうか?
……それだけが、どうしても疑問に残った。



…………。



『アリアの歴227年 ナーギの月 二日七夜 アゼルガット王国首都タッシュ』


ケイ 「暗い……それに、気持ち悪い」

エクレメス 「勿体無いわねぇ……こんなに大きな街なのに人っ子一人いないなんて」

首都の周りは商人はおろか、警備の兵士さえいない有様だった。
街へ入ってもそこにはやはり人の姿は無い。
まるで街は生きている気配を感じさせなかった。

エクレメス 「こんな様子じゃ誰も家の外に出ないわね……いや、違うか……これじゃ誰も住まわないわね」

オロロージョ 「これでは邪教の信徒とかは喜びそうだな」

ケイ (なんとなくわかるかも……)

街に光は無く、今が正午だということを忘れさせるほど周囲は闇に閉ざされている。
空が黒く、霧が立ち込める世界はまるで魔界にでも紛れ込んだかのよう。

こんなところに本当にキラーは住んでいるのだろうか?

エクレメス 「物好きねぇ……こんな街に住む奴は」

ケイ 「本当に誰か住んでいるんでしょうか?」

エクレメス 「キラー」

ケイ 「あ、なるほど……」

エクレメスさんの答えに私は苦笑しながら納得した。
本当にキラーさん以外住んでいないんじゃないだろうか?
そう思わせるほど街は不気味で、そして静かだった。
時折吹く、強い風の音だけが耳を支配する。
目はただ何者も写さぬ闇に支配され、鼻は瘴気のような妖しい香りに惑わされる。
これは……五感が危険と知らせる街だ。

より敏感そうなオロロージョさんたちにはさぞ辛いんじゃないだろうか?

ピッシャッァァァン!!

ふと、雷が落ちる。
一瞬得た、光は街の無残さを見せた。
そして、それと同時に私たちの目の前に城が見える。

オロロージョ 「二人とも……決戦だ!」

エクレメス 「ええ!」

ケイ 「あ、は、はいっ!」

オロロージョさんが気合を入れる。
エクレメスさんも気合十分、私は何が出来るかわからなかったけど頷いて気合を入れる。

リヒト 「……ふふ、ついに来たねオロロージョ」

ケイ 「?」

突然松明を持った少女(?)が近づいてくる。
顔は綺麗で細く、長い髪が印象的……だけど、声が妙にハスキーだったというか……。

オロロージョ 「リヒト! どうして君がここに!?」

リヒト 「ふふふ♪ 君を待っていたんだよ♪」

エクレメス 「……こんな薄気味悪い街で? 私たちいつ来るか分からないのに?」

ケイ (……エクレメスさん?)

心なしかエクレメスさんの言葉が冷たい。
まるで突き刺すような鋭い目で相手を睨む。

リヒト 「ふふ、怖いなぁ……あ、君が天人かい?」

ケイ 「え? あ……えと、天人って言われてもイマイチ分からないけど」

リヒト 「ふふ、僕はリヒト。しがない占い師さ」

ケイ 「あ、私は小有珠慧って言います」

リヒト 「ふーん、コースケ、なるほど」

ケイ 「あう……このやり取り久しぶり……私は小有珠・慧です! もうケイってでも呼んでください!」

なんだか久しぶりに名乗ったけど、やっぱり間違われる。
なんでこの世界の人たちはみんな苗字と名前を繋げちゃうんだろう……。
コースケだったら男の人の名前になっちゃうよ……。

オロロージョ 「ケイの事はリヒトの予言通りだった! リヒトには本当に感謝しているよ!」

リヒト 「ふふ、僕も占いが当たってよかったよ。キラーの暴虐には目に余るものがあったからね」

オロロージョ 「ああ、キラーは絶対俺が倒す!」

ケイ (オロロージョさん、この人と仲がいいのかな?)

オロロージョさんとリヒトさんの会話は凄く自然で親しみが篭っていた。
大してエクレメスさんはリヒトさんに警戒を解かないのに、どうしてなんだろう?

ケイ 「……エクレメスさん、リヒトさんのこと嫌いなんですか?」

エクレメス 「……私はリアリストなの。占い師なんて怪しい輩信じるわけ無いじゃない」

ケイ 「は、はぁ……」

エクレメス (最も……私が信じられないのは占いというより……リヒトそのものなんだけど……ね)

リヒト 「占いを信じてもらえなかったら僕たち占い師は生活できないじゃないか……エクレメスは酷いな。ケーは占いはどう?」

ケイ 「あ……私占いは好きですけど、あんまり信じる方じゃ……」

リヒト 「そうか……ああ、残念だなぁ……女の子たちは皆信じてくれないんだ」

リヒトさんはそう言ってがっくりと項垂れる。
いや、占いは好きなんだけどね。

リヒト 「そうだ! 戦勝祈願もかねて一つ占ってあげるよ」

エクレメス 「必要ないわ! もう行くわよ」

ケイ 「え、エクレメスさん?」

リヒト 「すぐ終わるよ、いいよね二人とも?」

オロロージョ 「……折角だけど、俺もいい。神頼みみたいなことはしたくないし」

リヒト 「……へぇ、まあいいや。じゃあ君たちが勝つこと、僕は町の外で祈っているよ」

オロロージョ 「ああ! 朗報を待っていてくれ!」

ケイ 「あ、えと……さようなら!」

私たちはリヒトさんと別れると一路城へと一直線に向かった。




リヒト 「……ふふ、ごきげんよう。オロロージョ、そしてコウス・ケイ。せいぜいキラーと戯れて僕を楽しませてくれよ?」



………・。



カツンカツンカツン……ッ!

私たちは城の中を突き進んだ。
城の内部はいたるところに松明が設置されており、薄暗いながらも視界は十分だった。

ケイ 「キラー……さん、は一人で暮らしているんでしょうか?」

エクレメス 「ケ−、キラーにさん付けは必要ないわよ」

オロロージョ 「……確かに、奇妙だな……警備の兵が誰もいないなんて」

城の中はどれも新しい物と思われる松明があるにもかかわらず、人の気配はまるでない。
でもこれ全部一人で用意するのは無理があると思う……どうなっているんだろう。

エクレメス 「あんたらねぇ……もうちょっとお勉強しなさいお勉強!」

オロロージョ 「ん? エクレメスには分かったのか?」

エクレメス 「大方人払いの音術でも使ったんでしょ? 術式音楽が微かに耳に聞こえるわ」

ケイ 「へ〜、ずっと走っていたから気づきませんでした」

オロロージョ 「あ、成る程音術か」

エクレメス 「ふう……気がはやるのは分かるけど、歩いていきましょうか」

オロロージョ 「そうだな、敵がいないのなら急ぐ必要も無いか」

ケイ 「……でも、なんでキラーさんは人払いを?」

私たちは一息つくために速度を抑え、歩き始める。
キラーさんはなんで人払いをしたのだろうか?
私たちみたいにその命を狙う者だっているだろうに。

エクレメス 「大方、腹心とかによく命狙われて、もう自分以外信じられないっていうような奴なんじゃないの?」

ケイ 「……そうなのかなぁ?」

オロロージョ 「止まるな二人とも。キラーを倒すまで油断しちゃダメだ」

エクレメス 「あら、私は油断なんてしてないわよ」

ケイ 「わ、私だって! き、緊張しすぎているだけです!」

エクレメス 「まぁ、あなたはいようがいまいがあまり関係ないけどね」

ケイ 「あふ……ひどい」

どうせ私が役に立たないなんてわかっているも〜ん。
でも、そんなクズな私でもなにか出来ないか頑張って探しているもん。

ケイ 「これでも一応わた――」

エクレメス 「――ッ!? ケイ退がって!!」

ケイ 「――へっ!?」

突然だった。
私はエクレメスさんにドンと押されて後ろに倒れこむ。
その刹那そこには槍が刺さっていた。

ケイ 「は、はわわっ!? や、槍〜っ!?」

オロロージョ 「不意打ちでケーを狙うなんて、随分と卑怯だな……キラーッ!」

珍しくオロロージョさんの強い口調、階段の先には一人の青年が立っていた。
オロロージョさんとは真逆の印象を受ける青年。
身長も、体格も同じくらいだけど、その青年からは冷たい印象しか受けない。
青いコートに冷たい色の髪と瞳。
まるでオロロージョさんとは正反対の青年……この人が。

ケイ 「き、キラー……」

キラー 「ふ……初めましてコウス・ケイ、いささか気が高ぶっていたので、卑怯ではあったが先に攻撃させてもらった」

ケイ 「え? ど、どうして私のことを?」

キラー 「ふふ、知らないか……そう、当然知らないだろう」
キラー 「だがそれが普通だ、そう……何もかもが予定通りであり、予定調和に過ぎない」

エクレメス 「……ちょっと、無視決め込んでいる上、意味不明なこと言っているんじゃないわよ!」

キラー 「ん? 君はだれだ?」

エクレメス 「エクレメス! さっきはよくもケーを狙ってくれたわね!」

キラー 「ああ、それなら謝ったろう。だがこれから殺しあうのだ……些細なこと気にする必要は無いじゃないか」

ケイ 「こ……ころし……あい……」

キラーさんは薄っすらと笑いながらさらりと怖いことを言う。
綺麗な人だけど……その顔は凄く怖かった。

オロロージョ 「……ああ、そうだな……どうせ殺しあうんだ……大した意味は無いかもしれない」

ケイ 「お、オロロージョさん?」

オロロージョ 「ケイは下がって」

エクレメス 「下がりなさい、ケー」

ケイ 「で、でも……」

オロロージョさんは初めて見せる激情の顔を見せ、エクレメスさんもキラーさんに強い殺気を放つ。

キラー 「ふむ、相変わらずだな君は……オロロージョ?」

オロロージョ 「? 俺のことも知っているのか?」

キラー 「ああ、何度も殺しあった……ふふ、と言っても君は知るまいが」

オロロージョ 「……ここで戦うのか? 早く死に場所を選べ」

キラー 「ふふ、性格は変わらない」

キラーは薄っすら笑うと、背中を向けて階段を上る。
……ついてこい、ということだろうか?

ケイ 「お、オロロージョさん、今日はどうしたの?」

オロロージョ 「なにがだい? ケー」

ケイ 「なんだか今のオロロージョさん、怖い……」

オロロージョ 「……キラーを見ると高ぶりを抑えられない。血が騒いで、感情が……」

エクレメス 「アンタ怒っているのよ、いきなりケーを襲うんだもの、私だって怒っているわ」

オロロージョ 「……」

オロロージョさんはそれっきり黙ってしまう。
私たちは押し黙ったままキラーの後ろを追った。

ケイ (オロロージョさん、本当に怒っているから、こんな怖い顔しているの……?)

キラーさんは話しで聞いていた人物とは随分イメージが違っていた。
暴君であり、恐ろしい人物と聞いていたから怪物のようなイメージをしていたが現実は、彼も同じ人間であり私たちと変わらない。
怖い……とは、思うが……不思議なほどにその顔は落ち着いた。

やがて、キラーさんはひとつの部屋の扉を開くと、その先で振り返った。
玉座の間……広々とした空間でキラーさんと私たちは対峙する。

キラー 「ふ、では改めて自己紹介、俺はキラー……このアゼルガットを恐怖で支配する絶対的唯一王だ」

ケイ 「キラーさん! キラーさんはどうしてそんなことをするんですか!?」

キラー 「そんなこと……?」

ケイ 「この街の惨状を見ましたか!? 世界を見てますか!? 大地は荒野で、空は常に雲に覆われ薄暗い! この街なんて闇に閉ざされている!」
ケイ 「こんな世界を作ってキラーさんに何の得があるんですか!?」

キラー 「ふふ……いつも同じ事を言う……もううんざりだ」

ケイ 「? キラー……さん?」

突然キラーさんが顔を手で覆い、ワナワナと震え始める。

キラー 「ふふ……ふふふふ……アハハハッ!」
キラー 「お笑いだよケイ! この世界が僕だけの惨状!? 例え僕が何もしなくてもこの世界は荒れている! それほどこの世界に根付く混沌は深い!」

ケイ 「で、でも……あなたがもっと良い政治をすれば少なくともここまでは――っ!」

キラー 「一緒さっ! それにこれには意味もある……くだらない……実にくだらない予定調和を満たすためのね!!」

オロロージョ 「……もういい、黙れ」

キラー 「?」

オロロージョ 「キラー……お前を、殺す!!」

オロロージョさんはXepherを握りしめるとキラーさんに突撃する。
オロロージョさんが、いつもと違い激情を示しすぎている。

キラー 「……やれやれ、君は短気だ」

オロロージョ 「おおおっ!!!」

ガキィン!!

キラーさんは剣を取り出すとオロロージョさんの一撃をいとも簡単に受け止める。

エクレメス 「!? 嘘ッ!? 岩を切り裂くオロロージョ一撃をとめた!? いや……それよりあの剣は!?」

オロロージョ 「ゼクトバッハ召喚機!?」

キラーさんが持っていたのはオロロージョさんの召喚機とそっくりな青い召喚機だった。

キラー 「ふふ、俺は王だ。召喚機くらい持っていても当然だろう? まぁ安心しろ……ここでは召喚は――ッ!?」

オロロージョ 「オオッ!!!」

ブォン!!

オロロージョさんはキラーさんの顔面にめがけて剣を振るう。
しかしキラーさんは言葉を詰まらせながらもそれを紙一重で回避する。

キラー 「……君は、いつも……いつもいつも! 鬱陶しいんだよぉぉっ!! クズがぁぁぁ!!!」

オロロージョ 「!? ぐあああっ!?」

ガッキィィン!!

キラーさんの反撃。
オロロージョさんはXepherを両手で持ち、キラーさんの反撃を受け止めるが、その衝撃で吹き飛ばされ地面を転がる。

ケイ 「お、オロロージョさん!?」

エクレメス (嘘っ!? パワー馬鹿のオロロージョより力もあるわけっ!?)

オロロージョ 「……くっ!?」

キラー 「……? オロロージョ、手加減しているのか?」

キラーさんは追撃するかと思いきや、不思議そうな面持ちでオロロージョさんを見る。
オロロージョさんはその隙に立ち上がるが、すでに息が切れ始めていた。

オロロージョ 「……く、生憎本気だ。最初っから」

キラー 「そうか……ふふ」

オロロージョ 「? 何がおかしい?」

キラー 「あは……はははははっ! これは愉快だ!! いつも!! いつもいつもこの僕を苦しめてきたオロロージョがこんなにも弱いなんて!!」

オロロージョ 「……訳のわからないことを!」

キラー 「ははは……はぁっ!!」

オロロージョ 「!? うわぁっ!?」

ガキィン!!

オロロージョさんはキラーの攻撃を受けるたびによろけ、時に転ぶ。
まるでオロロージョさんを子供あつかいするキラーさん。
その鬼神じみた強さは……絶望しか私に与えなかった。

キラー 「弱い……弱い弱いっ! あっはっはっ!! 一体どうしたんだい今回の君は!? どうしてこんなに弱いのかなぁ!?」

エクレメス 「お、オロロージョ! この……っ!」

キラー 「あは? 邪魔をするな女ーーっ!!」

エクレメス 「え? ……ッ?! あああっ!?」

突然エクレメスさんが吹っ飛ぶ。
一瞬空間が湾曲したかのように見えた。
次の瞬間、エクレメスさんは地面に倒れたのだ。

エクレメス 「な……な、なにあれ……お、音術……な……の……?」

キラー 「女、そこで倒れていろ……ふふふ、なぁオロロージョ……君は弱い」

オロロージョ 「う……く……ぅ」

ケイ 「あ……ああ……ぁ……」

キラー 「拍子抜けで実につまらない……だけど、これが運命さっ!!」

オロロージョ 「ぐあああっ!?」

ケイ 「い、いやあああああっ!?」

オロロージョさんの肩が貫かれる。
オロロージョさんの体から鮮血が飛び散る。
恐ろしくて……恐ろしくて目を背けたくなる。

キラー 「あっはははははははっ!! 脆い!! まるでダメダメだ! あっはっは!」

ケイ (こ、このままじゃオロロージョさんが殺される……わ、私がなんとかしないと……しないといけないのに……!)

怖くて足が竦む。
オロロージョさんの生命が危険にさらされているのに私の体はなにもできないのか?

ケイ 「う……や、やめてーーっ!!」

私は力いっぱい叫ぶ。
何も出来ない無力な自分に嘆き、絶望しながら叫ぶ。
ギョロリとキラーさんの目が動く。

キラー 「やめて? 何を寝ぼけたことを……これは殺し合いだ、死ぬのはそいつが弱いからだ」

ケイ 「お、オロロージョさんは弱くありません!」
ケイ 「お、オロロージョさんは弱く……なんて」

オロロージョ 「……く、け、ケー……」

ケイ 「キラーさん! オロロージョさんを離してください!」

キラー 「……ケイ、君は自分の言っていることがわかっているのかい?」

ケイ 「も、もちろん分かっています……だから、わ、私の命を代価にします!」

エクレメス 「ッ!? ケ……ケイ……ば、ばか……な、こと……!」

キラー 「ふふ……へぇ、さすがだ……実に救国の英雄らしい」

ケイ 「……この通りです、お願いします」

私は土下座して、懇願する。
死ぬのは怖い。
でもオロロージョさんがこれ以上苦しむ姿が、どうしようもなく胸を苦しめた。
私には何も出来ない……私は無力だ。
だから、せめて……。

ケイ (これくらいの役には立ちたい……)

キラー 「ふふふ、いいだろう……オロロージョには興味は無い。僕は君の命が狙いだ」
キラー 「君を殺すこと……ふふ、それだけを生きがいにしてきた」
キラー 「呆気なかったが……まぁ、それもいいだろう」

キラーさんがオロロージョさんからの肩から剣を抜き、私に近寄ってくる。
キラーさんの召喚機から紅い血が、地面にたれ落ちる。
ああ……これで、私も……終わりか。
ただ、絶望だけが私の頭の中を駆け巡った。
でも、段々怖くなくなっていく。
死が近づくにつれて恐怖が凍ってきたんだろうか?

キラー 「……ふふ、ケイ……さようなら――」

オロロージョ (お、俺は何をしているんだ? 俺は何でここにいる……?)
オロロージョ (なんのためにここに来た? キラーを倒すんじゃないのか?)
オロロージョ (キラーが強すぎる? 違う……俺が……弱すぎるんだ!)
オロロージョ (俺が弱いばっかりにエクレメスが傷つき……ケーがあぶない……なんでだ……なんでだなんでだ!?)
オロロージョ (護りたい……護りたい! 俺はケーを! エクレメスを! 皆を護りたいんだ!!)
オロロージョ 「キ……キラーーッ!!!!」

キラー 「――!? オロ……ッ!? ぐああああああああっ!?」

ザッシュウウッ!!

ケイ 「!? オロロージョさんっ!?」

オロロージョさんは最後の気力を振り絞ってかキラーさんの名を叫び、キラーさんの不意を突く。
あまりの突然のこと、そして動けるとは思っていなかった油断から、反応が遅れたキラーさんはオロロージョさんの不意打ちに反応が遅れた。
その結果……直撃とはいかなかったが、キラーさんの顔が横一文字に斬られる。

キラー 「ああああああああああっ!? お、オロロージョ!!! キサマァッ!!!!?」

キラーさんは顔面を斬られてあまりの痛みに地面をのた打ち回る。
私は慌ててオロロージョさんに駆け寄った。

オロロージョ 「……ぐ!?」

ケイ 「し、しっかりしてください! オロロージョさん!?」

オロロージョ 「ケ、ケイ……に、逃げるぞ……今の俺たちじゃ、き、キラーには勝てない」

ケイ 「は、はい!」

私は慌ててオロロージョさんを背負う。
更にもう一人五体満足のエクレメスさんを背負うと、とても動ける重さではなかったが、なんとかその場から逃げ出す。
キラーさんは痛みのあまり、私たちを追うことは出来なかった。
必死の逃走……キラーさんは強すぎた、私たちの予想を遥かに超越して。
私は必死で逃げた結果、街を出たところで、遂に……力尽きた。



…………。



リヒト 「あっはっは! これはまさに予想外! 歴史はキラーが『負ける』ことを証明しているのに勝ったのはなんとキラー!」
リヒト 「だが、キラーも予想外のダメージ、だが事の深刻さはオロロージョの方が大きいか」
リヒト 「ふふ……なんにせよさすがキラーとオロロージョ、そしてコウス・ケイ……僕を本当に楽しませくれる」
リヒト 「あはは……さてさて、序説はこれにて終了……てところかな?」



…To be continued




 
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