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beatmaniaUDX The ANOTHER Story


2nd STAGE 『追う者追われる者』

………。


トランスターを脱出して丸一日。
私たちはどこへ行くわけでもなく、宇宙を放浪していた。

エリカ 「あ〜…何か暇ねぇ」

エリカさんが急にそう言い始める。

セリカ 「何言ってるのよ…早く調査結果を報告に行かないと」

エリカ 「それはそうだけど…どうも気が乗らないのよね」

セリカ 「どうして…?」

エリカさんは気だるそうに俯いて、答える。

エリカ 「VENOMという組織自体…私は好きじゃないのよ」

トラン 「!! VENOM…」

私はその言葉を聞いて、意識が乱れる。
それと同時に船が停止する。

エリカ 「わっ! ど、どうしたのトラン?」

エリカさんが心配そうに操縦席に来る。

トラン 「VENOM…エリカさんはVENOMに関係があるんですか?」

エリカ 「…そうよ、一応ね」

セリカ 「どうしたの? トラン…震えてるよ」

私は体を震わせながら答える。

トラン 「VENOM…私たちを滅ぼした組織。家族も…友達も…皆…」

エリカ 「……」

セリカ 「……」

しばらく沈黙が訪れる、しかし、強い意志でエリカさんが答えた。

エリカ 「やっぱ、決めたわ! 私Vには戻らない!!」

セリカ 「エリカ!?」

エリカ 「私はごめんだわ! いくら、正しいからって…ここまでの殺戮をして納得できるほど私は悪にはなれないわ!!」

セリカ 「でも、組織を抜けた所で…」

エリカ 「トランがいるわ!! トランと一緒なら、きっと…」

トラン 「エリカさん…」

エリカ 「ごめん…結局、ひとりじゃ何もできないのよね」

エリカさんは悔しそうに握りこぶしを作って震える。

セリカ 「……」

私は意識を整えて、船を動かす。

エリカ 「トラン…?」

トラン 「私は…エリカさんを信じます。もちろん、セリカさんも…」

エリカ 「…ありがとう」

セリカ 「私は…」

セリカさんはただひとり、納得できないのか、決められないのか、悩んでいるように思えた。

エリカ 「セリカ…いいのよ、無理に付き合わなくても。私は、トランと一緒に抵抗するわ。一応、宛てがあるから」

セリカ 「……! 私も行く!! やっぱり、私も納得できない…」

エリカ 「セリカ…いいの? 勝てる見込みなんてほとんどないのよ?」

セリカ 「いいわよ! もうこれ以上誰かが傷つくのに、自分が何もできないのは…我慢できないよ」

エリカ 「…馬鹿ね、私もあなたも…」

エリカさんは何か吹っ切れたように。

エリカ 「トラン、現在位置は!?」

トラン 「トランスターから北に3000の位置です」

エリカ 「3000か…それじゃあ、そこから東3の方向に!」

トラン 「…了解、進路東3…」

私は言われた方向に船を進める。

セリカ 「どこへ行くの?」

エリカ 「戦うための武器を作ってる場所よ」



………。
……。
…。


それから、約3日がたち、無事に目的地である、『5.1.1.』惑星に到着した。



セリカ 「それで、これからどうするの?」

私たちは船から下り、エリカさんにそう尋ねる。

エリカ 「まぁ、着いて来なさい…私の知人がいるのよ」

セリカ 「私の知らない人だよね?」

エリカ 「そうね、直接会ったことはないはずだけど」

トラン 「……」

エリカさんの案内の元、約10分程でそこに到着した。


見た感じでは何やら工房のような所。
寂れているようにも見えるが、かなり大きく、EARTH LIGHTぐらいの船なら着艦できそうだった。

エリカ 「ナイアー! いるーーー!?」

エリカさんはドアをドンドンと叩いて名前を呼ぶ。

ナイア 「はいはい…一体誰?」

ドアから出てきた人は女性で、エリカさんを見て驚愕する。

エリカ 「ひさしぶりっ」

エリカさんは笑顔でそう答える。

ナイア 「エリカっ! あんた…もう! 何で何の連絡もよこさないのよ!?」

エリカ 「ご、ごめんごめん!! ちょっと忙しくて…」

ナイアさんは笑いながら、エリカさんに抱きつく。
私たちはこうしてナイアさん工房に入った。

ナイア 「ごめんね〜ただの水だけど…一応蒸留水だから」

そう言って、テーブルの上に4人分、水の入ったコップを置く。

エリカ 「変わってないわね、ここも」

ナイア 「まぁね、変わる必要もなかったし」

セリカ 「あっ、私はセリカって言います」

トラン 「トランです…」

ナイア 「私はナイア、一応ここでしがない開発、設計等をやってるメカニックよ」

エリカ 「そのメカニックさんに頼み事があって来たのよ」

ナイア 「はぁ? 何でまた…」

エリカさんはトランスターでの出来事、そして、これからやるべきことを全てナイアさんに話した。

ナイア 「………」

エリカ 「やっぱ、無理かな〜?」

ナイアさんは肩を震わせ。

ナイア 「…よっくぞ決心した!!」

そう言ってナイアさんはエリカさんの肩を強く叩く。

ナイア 「私もVはいけ好かないと思ってたのよ!! 全く、あいつらの我が物顔といったら…」

エリカ 「そ、それじゃあ…」

ナイア 「任せなさい!! この時のために開発した機体をあげるわ!!」
ナイア 「それから、EARTH LIGHTって言ったっけ? その船、ここに着艦しなさい。改造してあげる…」

ナイアさんは楽しそうに、生き生きとしている。

エリカ 「そ、そう…それじゃあトラン…」

トラン 「はい…すぐに」

私は船まで戻り、ナイアさんの工房に着艦することになった。


………。
……。
…。


エリカ 「はぁ…これが」

セリカ 「人型兵器…」

ナイア 「そっ、今の所この2機よ。左の重装型がDXY、右の軽装型がABSOLUTE」

エリカ 「ディキシ…? 何か言いにくいわね」

ナイア 「そう? 普通だと思うけど…」

セリカ 「でも、いきなり操れるのかなぁ…?」

ナイア 「まぁ、実戦で慣れることね」

セリカ 「ええ!?」

エリカ 「まぁ、何とかなるでしょ? 一応、そう言う練習も受けてきたんだから」

セリカ 「うん…でも不安だな、それに…私に撃てるかな?」

エリカ 「…やらなきゃ、自分がやられるわ…それに」

セリカ 「うん…わかってる。やらなきゃ、他の大勢の人が傷つく」

ナイア 「それじゃあ、コクピットに乗ってしばらく動かしてみて、私は急いでEARTH LIGHTを改造するから」

そう言ってナイアは嬉々としながらEARTH LIGHTに向かう。

エリカ 「変わってないわね…ホント」



トラン 「改造って…どう改造するんですか?」

ナイア 「そうね…とりあえず、武装をつけるわよ。直系3メートルの巨大レーザー」

トラン 「……」

ナイア 「他には装甲を追加して…バリアもつけるわ」

トラン 「…大丈夫ですか? 本当に…」

私は不安そうに尋ねる。

ナイア 「大丈夫よ…きっと役に立つわ」

トラン 「いえ…そうではなくて、私には攻撃なんて…」

ナイア 「…優しい子ねぇ。あなた、性格が何となく私の妹に似てるかも…」

トラン 「?」

ナイアさんは私の頭をそっと撫でて、優しく微笑む。

ナイア 「大丈夫、あなたが、必要と思えば使えばいいの…」

トラン 「………はい」


こうして、EARTH LIGHTの改造が始まった。



エリカ 「セリカ、どう? そっちは」

セリカ 「うん、良好よ…反応速度が速すぎてちょっと戸惑ってるけど」

エリカ 「そう、こっちは逆に動きが遅いから疲れるわ。重装だけに重いし」

私たちは軽く機体を動かしながら、調整をしていた。

セリカ 「あれ…なにかなこれ?」

エリカ 「どうしたの?」

セリカが何かを発見する。

セリカ 「えっと…これレーダだから、ってあれ?」

エリカ 「どうしたのよ? 説明して!」

セリカ 「何か、接近してくる機影があるよ?」

エリカ 「はぁ!?」


ナイア 「!?」

トラン 「敵意…!?」

ナイア 「まずいわ…エリカ、セリカ!! 聞こえる!?」

エリカ 「通信…? どうしたのナイア!?」

ナイア 「どうもVに見つかったようだわ!! ここを攻撃される可能性があるかもしれない…できれば」

エリカ 「今すぐ迎え撃つわ!! セリカ、何機!?」

セリカ 「距離274! 機数3よ!!」

エリカ 「ようし…工房のハッチ開けて!! DXY発進するわ!!」

セリカ 「ABSOLUTEも発進します!」

ナイア 「了解! 気をつけてね!!」

ギュウウウウウン…

工房の天井が開き、空が見える。
夕日が少し眩しかった。

エリカ 「行くわよ…」

セリカ 「大丈夫…きっとやれる」



兵士A 「隊長…あれが、例の工房ですか?」

隊長 「そうだ、今回の任務はあの工房の『占拠』にある」

兵士B 「ということは、破壊ではないということですか?」

隊長 「そうだ、あくまで『占拠』だ、攻撃の必要はない」

兵士A 「しかし隊長、あちらが攻撃した場合は?」

隊長 「その時は黙らせればいい…ただし、工房はできれば傷つけるな」

兵士B 「何があるというのです?」

隊長 「…む、これは?」

兵士A 「ま、まさか敵!? 機数2! 見たこともない機体です!!」



エリカ 「悪いけど、街中で爆発されても困るからね…コクピット一発狙いよ」

私はDXYの武装のひとつ、エネルギーライフルを構え、照準を合わせる。

エリカ 「狙うは隊長機…発射!!」

私は隊長機のコクピットをロックし、トリガーを引く。

バシュウウウウゥゥゥゥ!!!


兵士A 「隊長!!」

隊長 「!?」


ズバアアアァァァンッ!!

エリカ 「外した!?」

咄嗟に、隣の機体が隊長機を庇い、爆発する。

エリカ 「しまった…」

見ると、下では街人がパニックを起こしている。


兵士B 「あの距離から、攻撃できるのか!?」

隊長 「く…まさか、これ程の物を作っていようとはな」


エリカ 「今度は外さないわ…」

セリカ 「待ってエリカ!」

エリカ 「何よ!?」

突然セリカが私を止める。

セリカ 「遠距離砲はダメ! 被害が増えるわ!! 私が接近戦で何とかする!!」

エリカ 「セリカ! 相手は2機よ!?」

私の静止を聞かず、セリカは突っ込む。

セリカ 「私がやらなきゃ…皆が傷つく!」

兵士B 「う、うわあああああっ! こいつ、こいつ!!」

もう片割れの兵士の機体が私に向かって銃を構える。

隊長 「!? 待て、行くな!!」

兵士B 「このおっ!!」

ダァンッ! ダァンッ!

私を狙って放たれたライフルを私はた易くかわす。

セリカ 「ごめん…!」

私は腰に装備していた、ブレードで相手のコクピットを貫く。
いとも簡単に、敵機は沈黙する。


隊長 「…馬鹿な、こうも簡単に…」

隊長機は途端に背を向け、逃げ出す。

エリカ 「く…」

セリカ 「あ…?」

瞬間、閃光が走る。
私たちの後方から、突然巨大な光の帯が走った。

隊長 「なっ!?」

ゴオオオオオオオオオオゥッ!!!

その閃光に巻き込まれた隊長機は爆発する間もなく消し飛んだ。



………。


ナイア 「ご苦労様」

エリカ 「……ええ」

セリカ 「………」

ナイア 「どうしたの? 浮かない顔してるわね」

エリカ 「…結局、街の人に迷惑をかけたわ」

セリカ 「うん…」

ナイア 「しょうがないわよ…戦争だもの。相手がVならまだ、納得されるわ」

トラン 「……これから、どうするんですか?」

エリカ 「…すぐにVと戦うのは無理ね、できれば、仲間が欲しい」

ナイア 「正しい判断ね。でもどうするの?」

エリカ 「………」

セリカ 「……」

沈黙する。
いい考えが浮かばないようだ。

ナイア 「…私の友人を紹介するわ。きっと、力になってくれる」

エリカ 「本当?」

ナイア 「多分ね…」

トラン 「行きましょう…他に、行く所はありません」

セリカ 「うん、そうだね」

エリカ 「ようしっ! 行くわよ!!」

ナイア 「じゃあ私も連れて行ってね♪」

エリカ 「って、いいの? 後には戻れないわよ?」

ナイア 「何言ってるのよ、あなたたちだけで、機体を整備できるわけないでしょ?」

エリカ 「う…確かに」

トラン 「それじゃあ、行きます」

こうして、私たちはナイアさんを新たに加えEARTH LIGHT改は発進する。

エリカ 「……」(これで、完全にお尋ね者ね…これからは追われる立場かな? それとも、追う立場?)

…To be continued

ANOTHER


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