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beatmaniaUDX The ANOTHER Story


27th STAGE 『moon_child』

トラン 「各部異常なし…燃料の残り97%」

トランが各部を確認している。
以前の戦闘でも損傷はなく、REINCARNATIONは全く問題がなかった。
が、どうも何かのジャミングを受けているようで、しばし地球のすぐ近くの星である『月』に着陸していた。

リュウ 「…しばらくは、かかりそうだな」

俺はブリッジを後にすると、格納庫に向かった。


………。


ナイア 「…ふぅ〜、やっと現場復帰したけど、体が軋むわね」

ナイアが体を捻りながら、そうぼやく。
思ったより、堪えているようだ。

リュウ 「どうだナイア?」

俺がナイアに近づいてそう話し掛ける。
すると、ナイアは特に感情なく。

ナイア 「さぁてね…考えさせられることはたくさんあるわね」

そう言って、両手を腰に当てて首を横に振る。
俺はナイアの視線の先を見る。

リュウ 「………」

そこにはxenonが佇んでいた。
幾度か俺と戦った機体。
基本的なシステムや武装はDoLLに酷似しているが、廉価版と言っても過言ではないだろう。

ナイア 「まぁ、あれは言うなれば汎用機ね。DoLLはあくまでエリカのような特異タイプ専用」
ナイア 「xenonはそれを誰にでも扱えるようにカスタムした、量産機もしくは汎用機ってこと」

リュウ 「…ACTはどうだ?」

俺はそう言って、xenonの隣に置かれている機体を見てそう聞く。
やや小柄めの機体で、全体的に細い。
装甲がほとんどないようにも見える。
武装と呼べるような物も装備されておらず、戦闘用ではないようだった。

ナイア 「…一言で言うなら、あれも特異タイプ専用機ね」

リュウ 「何だと…?」

俺はナイアの顔を見てそう言う。
ナイアはACTを遠めに見て。

ナイア 「どういう装備かいまいちわからないのよね…どうもパイロットの思考で動いているみたいだけど、DoLLのような意識を持った機体じゃないわ」
ナイア 「…武装も見当たらないし、一体何なのか…」

ナイアはそう言って、格納庫を出る。
休憩するのだろう、俺もその場を後にした。



………。
……。
…。



エレキ 「………」

リュウ 「…む?」

俺は廊下でエレキを見つける。
どうも、落ち着かない様子のようだった。

リュウ 「…どうかしたのか?」

エレキ 「あ、師匠…どうも」

エレキは頭を掻きながらそう挨拶する。
そして、何やらきょろきょろとしていた。

リュウ 「……?」

エレキ 「師匠…何か感じませんか?」

エレキは唐突にそう言いだす。

リュウ 「……」
リュウ 「特に感じないが?」

エレキ 「そうっ…すか、ん〜…俺の勘違いか?」

エレキはもう一度頭を掻いて、その場を後にした。
俺はしばしその場で、周りを見渡してみるが、特に何もないようだった。

リュウ 「……」


………。


トラン 「…周囲索敵、反応なし。特殊反応…無し」

リリス 「………」

彩葉 「…どうかしたの?」

リリス 「……」

私がそう聞いてもリリスは答えなかった。
でもリリスは何やら外を眺めていた。
私も釣られて外を見るけど、ただ光と影のコントラストが写るのみ。
こういうのを月面の神秘と言うのだろうか?
まるで、何かに睨まれているような錯覚さえ覚えた。

リリス 「…見られている、艦が留まってから…ずっと」

リリスが唐突にそう言いだす。
だが、私は何が何だかわからなかった。

トラン 「……」

トランちゃんはREINCARNATIONの計器を未だに調節している。
結局、何でREINCARNATIONは止まったのだろう?
ただのジャミングにしては、効果がありすぎる気がした。



………。



リュウ 「…こちら、リュウ。ハッチを開いてくれ」

俺が雪月花に乗り、通信を開く。

トラン 『…リュウさん? どうかしたんですか?』

落ち着いた声でトランがそう言う。

リュウ 「…うむ、念のために哨戒を行っておく」
リュウ 「…あくまで念のためだがな」

どうも、引っかかった。
俺は何も感じないが、気になる。
俺はハッチの開閉を確認すると、カタパルトに乗る。



セリカ 「あれ…? リュウ出撃したの?」

リリス 「…哨戒ですよ、念のためだそうです」

リリスがそう説明してくれる。
私は仕方ないので、その場を離れた。

リリス 「……」

クロロ 「にゃ〜…」

彩葉 「う〜ん? クロロどうかしたのかなぁ? 何だか落ち着かないみたいだけど」
彩葉 「いつもは大人しいのにねぇ」

クロロ 「な〜…」

トラン 「……」



ナイア 「…雪月花は出たのね?」

ダルマ 「はい、哨戒任務だそうですよ」

ナイア 「誰が命令したの? まさかトランじゃないでしょ?」

ダルマ 「自分で出撃したんだと思いますけどね…」

私はそれを聞いて、考える。

ナイア 「G2はすでに太陽系の宙域を出ようとしている…なのにREINCARNATIONはここで足止め、か」

ツガル 「何か、よくないことの前触れでしょうか? EARTH LIGHTの時のような」

確実に場が緊張していた。
EARTH LIGHT…。
あの時もこういう風に艦が急に停止した。

ナイア 「一応…メインエンジンを調べておくわ。ダルマはここで待機しておいて」

ダルマ 「了解です」



………。
……。
…。



士朗 「……」

どうやら騒がしいようだな。
部屋の外でドタバタしている。

? 「うう〜…開かないよう」

どこか情けない声がすぐ外で聞こえる。
だが、確認しようにも俺の部屋は監禁室なのでどうにもならない。

士朗 「………」

? 「おっかしいなぁ〜、これで開くはずなのに…」

またドタバタと足音がする。
騒がしい奴だ…。

? 「うう…やっぱり開かない」

? 「何や、困っとるようやな」

今度は別の声。
何だか聞いたことのないような言葉遣いを使う。

? 「きゃあっ! な、何!?」

? 「何や〜嬢ちゃん、そんなビビらんでもええやんか〜」


士朗 「………」

奇妙な会話だな。
だが、男と女のようだな。
それもひとりは確実に聞き覚えのある声だ。

? 「うう、変な生き物…」

? 「だっしゃい! 嬢ちゃんかて、変な格好やんか! 大して変わらんわ!!」

? 「だぁ〜! うっせぇ!! いきなり騒いでんじゃねぇFB(ファーボ)!!」

また別の声が聞こえる。
男のようだが、やけに乱暴な言葉遣いだ。
また、どうも変な喋り方をしている奴はFBと言うらしい。

? 「こんな扉、ぶちやぶりゃあいいだろうが!」

FB 「あほかっ! 騒ぎ起こしてどないするんや!! ちったぁ頭使え!!」

? 「なら、さっさと開けて見せろ!!」

FB 「ほんっまに、頭弱いのぉ鉄火は」

鉄火…それが男の名前だろうか?
そして、すぐに扉は開かれる。

そして、部屋の中に駆け込んでくる女がいた。

アクティ 「士朗ちゃん!!」

アクティが抱きついてくる。
俺は素直に受け止めてやる。

FB 「何やぁ〜、嬢ちゃんのカレシかいな」

鉄火 「まっ、俺の方がいい男だがな」

FB 「やかましい! さっさと行くで!!」

鉄火 「俺に命令してんじゃねぇ! お前は俺の付き人だろうが!!」

そう言って、鉄火と呼ばれた男は、変な丸い生き物を引っ張って歩いていってしまった。

士朗 「…何者だ? 見たことのないクルーだな」

アクティ 「うん、私も初めて会ったよ」

アクティは一歩離れてそう言う。

士朗 「…騒がしいようだが、外は何が起こっている?」

アクティ 「えっと…何だか艦がトラブルみたいなの」

士朗 「トラブル…? それで停止しているのか…」

アクティ 「うん、それで…士朗ちゃん、外を見て来いって」

士朗 「…命令か」

アクティ 「うん」

俺はそう聞くと、立ち上がり、アクティに着いていく。
正直、艦の中は全くわからない。



………。



トラン 「…やっぱり」

彩葉 「どうかしたの?」

トラン 「…特殊なエネルギーを感知しました」
トラン 「…リュウさん、今データを送ります」

リュウ 『了解だトラン、後10分程で戻る』

トラン 「…気をつけてください、ただならない気配を感じます」

そう言って、私は通信を閉じる。

彩葉 「気配って…何かいるの?」

トラン 「…それはわかりません、艦の中か外か…それを調べるんです」

FB 「中にはおらへんで〜」

突然、妙な声が聞こえて私たちはその方を見る。

彩葉 「……?」

リリス 「………」

FB 「な、何で固まんねん…」

鉄火 「てめぇが、いきなりアホ面さらけ出すからだろうが!」

そう言って、男の人が足元の丸い物体を蹴り飛ばす。

FB 「誰がアホ面やねん!! おんどれこそ、鼻の下伸ばしとるやないか!!」

今度は丸いのが男の人の足に体当たりする。

彩葉 「うわ…どつき漫才、初めて見たわ…」

リリス 「…彩葉、イントネーション」

そこで、リリスが私に注意を促す。

彩葉 「はっ!? や、ややわぁ〜うちったら…」

私は気づかずについ、方言を口走る。

FB 「どきーんっ! ハートに来る京都弁やなぁ〜」

何やら丸いのに気に入られたようだ。
私を見て何やら妙なポーズを取っている。

鉄火 「てやんでぇ! 俺も胸にきたぜコンチクショウ!」

男の人も鼻をぐずりながら、そう叫ぶ。

トラン 「…ところで、誰ですか?」

トランちゃんが当然の質問を投げかける。

リリス 「………」

彩葉 「……」

場が沈黙する。
すると、男の人が何やら複雑そうに。

鉄火 「あ、いやその〜、けして俺たちは怪しい者ではなく…」

トラン 「………」

リリス 「………」

彩葉 「うわ…無言の圧力」

トランちゃんとリリスが無言で見つめていた。

FB 「何や何や〜、ワイらは味方やで?」

丸いのが、気軽にそう言う。
さすがに怪しかった。

彩葉 「っていうか…普通信じないと思うけど」

トラン 「………」

リリス 「………」

彩葉 「……」

鉄火 「……」

FB 「…あかん、この空気耐えれへん」

しばらく沈黙、そして。

トラン 「よろしくです」

トランちゃんが気軽にそう言う。
つまりは、この人(物体)たちはいい人なのね…。

FB 「いやぁ、お嬢ちゃん見る目あるなぁ! 気に入ったで!」

トラン 「……」

クロロ 「にゃ〜ん」

そこへクロロがトランの肩にしがみつく。
反応は一瞬だった。

FB 「ぎにゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

突然丸いのが絶叫する。
確か、こういうの昨日も見たような…。

FB 「猫はあかん!! ワイ猫だけはダメやねん!!」

クロロ 「ふぁ〜」

クロロは相変わらずマイペースだった。
丸いのにはまるで興味ないようだった。

エリカ 「…クロロ、おいで」

いつのまにか、エリカさんが部屋に入ってクロロを呼ぶ。

クロロ 「み〜♪」

クロロは足早にエリカさんの方に向かって行った。

FB 「はぁ、はぁ…もう勘弁してぇな」

トラン 「……」

リリス 「…ところで、名前」

リリスがそう言うと、男の人は少し顔を紅くして。

鉄火 「俺の名は鉄火! まだ高校生だが、一応寿司職人を目指している!!」

彩葉 「あ、じゃあ私たちと同じなんだ」

リリス 「………」こくり

FB 「はいはい、次はワイやな。ワイはFB(ファーボ)。まぁ気軽に呼んだってぇな」
FB 「一応、宇宙人やがわけありで鉄火と一緒に地球におったんや」
FB 「ちなみにこの艦におるのは偶然やないで? 必然や」

トラン 「…とにかく、見てください。FBさんならわかるでしょうから」

トランちゃんはそう言って操縦席のモニターをFBに見せる。
FBは小さな体で跳ねるようにトランの膝に乗った。

FB 「ふむふむ…成る程なぁ〜、これはチト厄介やな」

トラン 「どうなんですか?」

FB 「この艦…人工知能統制プログラムで機能しとるようやな」

鉄火 「…何だそのややこしいのは?」

難しい言葉が出てきた、専門用語だろうか?

FB 「要するに、ワイらが最初に行った部屋のことや」

鉄火 「ああ、艦内登録の」

どうやら、すでに艦内登録しているらしい。
でもどうやって?

FB 「あ、ちなみに仮登録やから、後で許可頂戴な!」

トラン 「……」

どうやら無理やりみたいですね。

FB 「で、結論やけど…このままやったらあかんな」
FB 「どうもデータがパンクしようとしとるわ。外部からのデータが無造作に流れてきとる」
FB 「どっからかは、追跡できへんけど…間違いなく外部からの仕業や」
FB 「今、3人程外におるようやけど、気ぃつけや」

トラン 「治るんでしょうか?」

トランちゃんが心配そうにFBに聞く。

FB 「気休めを言ってもしゃあないから言うけど…もうあかんな」
FB 「システムの方がそろそろ寿命なんや」
FB 「乗せ変えたらまた飛べるやろうけど…長くは持たんな」

トラン 「……!!」

トランちゃんが、珍しく表情に感情を出す。
明らかに顔が蒼ざめていた。

FB 「…このシステムは、もう300年は動いとる。そろそろ引退やで?」
FB 「何や、トランちゃんはものごっつう思い入れがあるようやけど、このままではあかん…一旦システムボードを抜いて、別のを差すか…」
FB 「新しい艦に乗り換えるか、や…」

ナイア 「何だか、面白そうな話してるわね」

会話を聞いてか、ナイアさんが部屋に入ってきた。

鉄火 「ったく…この艦には何人美女が乗ってんだ?」

リリス 「………」

彩葉 「ややわぁ…鉄火君ったら〜、美女やなんて〜」

私は照れて、つい方言が出てしまう。


ナイア 「…確かに、ね。でも飛べるわよ」

FB 「無茶言いなさんな! このシステムはもう限界や! 飛べても数時間ともたんで!? それやったらこの銀河抜けることはできへん!!」

FBが強く主張するが、ナイアさんは笑って。

ナイア 「まっ、私にかかればちょちょいのちょいよ」

そう言って、ナイアさんは部屋を出て行く。

FB 「か〜っ、もう知らんでワシ…」

鉄火 「何だかなぁ…」

FB 「何や? 人をおかしな眼で見んなや」

鉄火 「いや…お前がそんなに機械に詳しいとは思わなかった」

鉄火君がFBを褒め称える。

FB 「あのなぁ…まぁええわ。方法があるんやったらそれに賭けてもええやろ」



………。
……。
…。



リュウ 「…特に問題はないか」

士朗 『リュウ…データではどうも裏側のようだぞ』

士朗からの通信で、俺は裏側に向かう。

リュウ 「エレキ…そっちはどうだ?」

エレキ 『えっと…敵機は多分潜んでるみたいっすね、殺気がぷんぷんしますよ』

リュウ 「そうか、すぐに艦に警戒態勢を取らせろ、俺は士朗と共に裏側を調べる…どうもキナ臭いんでな」

エレキ 『了解! 気をつけて』

そう言って、俺は士朗のいる裏側に向かう。


………。


士朗 『これだ…』

xenonが指差した先には、何やら小さな機械が設置されていた。
動いているのか、特有の光を出しながら何かを発信しているようだった。

リュウ 「こいつが原因か?」

士朗 『わからん、だがこいつはPandora製だな』

リュウ 「ということは…やはり」

士朗 『うむ、初めからそういうつもりだろう』

俺たちはその機械を破壊し、すぐに艦の方に戻った。



トラン 「全クルーに告げます…戦闘態勢で待機。各パイロットは直ちに出撃してください…繰り返します」

リリス 「…行きます」

彩葉 「待って、私も!」

ふたりはすぐに格納庫に向かった。

FB 「しゃああらへんなぁ…ワイらも手伝おか?」

鉄火 「やらいでか!!」

鉄火さんたちも出て行ってしまった…でも機体はあるのだろうか?





エレキ 「いるいる…こいつはすげぇや」


リュウ 「どうだエレキ…」

俺は艦の近くに戻ると、エレキに尋ねる。

エレキ 『かなりの数っすね…ちょっと厄介ですよ。今、リリスが索敵してます』


そして、eraから通信が開かれる。

リリス 『敵旗艦が一隻、人型は約150です』


エレキ 「相変わらず、数が多いなぁ…あの艦にはそんなに乗らないだろうに」

士朗 『艦はただのコントローラーに過ぎない、艦を沈めれば人型は動きを止める』

エレキ 「成る程…つまり敵艦を潰せってことね、そう上手くはいかなさそうだけど」



士朗 (気になることはまだある…俺の裏切りで一体エリカにどう影響するか)

アクティ 『士朗ちゃん!』

士朗 「…!? アクティか…脅かすな」

俺は通信に割り込んできたアクティにそう言う。
だが、アクティは悪びれた様子はなく。

アクティ 『む〜…またエリカさんのこと考えてたんでしょ?』

アクティは痛いところを突く。
こいつも人の心を読む癖があるようだな…飼い犬は飼い主に似ると言うが。

アクティ 『私は犬じゃないもん…羊だもん』

士朗 「………」

どうやら隠し事は本気で通用しないらしい。
俺は少し自粛することにした。

リュウ 「遊んでいる暇はないぞ…敵が来る!」


こうして、俺たちは戦闘に入った。



バァンッ! ズガァンッ!!

エレキ 「150機か…ひとり頭20機って所だな!!」

俺は手早くブレードとエネルギーライフルで人型を蹴散らす。
こいつらは数が多いだけだ、一機一機はたいしたことねぇ!!

ドォンッ!

エレキ 「がっ! くっそ…何で後ろから!?」

ズバァンッ!!

瞬間、後ろの敵機が爆発する。
兄貴が助けてくれたのか…。
だが、俺は後ろを見て驚く。

ギギギギ…!
グググ…!!

エレキ 「冗談だろ…?」

信じがたい光景だった。
敵機が再生している…。
ブレードで切断された部分から、ケーブルやらコードやらが出て、切れた部分を修復している。
しかも早い…爆発しているはずなのにすぐに動けるなんて。

士朗 『気をつけろエレキ! どうやら、本気で艦を落とさなければ勝ち目はないようだ…』


リュウ 「ちぃ…まさかそう言う手で来るとはな」

セリカ 『リュウ! このままじゃ消耗戦になるわ…何かは手は?』

リュウ 「……」

艦を沈めれば勝てる…がこの150の壁は多すぎる。



彩葉 「きゃあ!」

リリス 『彩葉…気をつけて』

リリスがエネルギーシールドで前面に出る。
私はその後ろで待機する。
敵は何度でも蘇る…これじゃあ勝ち目が。
しかもこんな時に茶倉が反応しない。
いつもなら言わなくても出てくるのに…。



エリカ 「………」

エリカ…

エリカ 「…!?」

私を呼ぶ声…酷く懐かしい。
でも、この声は。

エリカ 「……!!」

Pandora 『エリカよ…何故我々を裏切る? お前はこちら側の存在だ、帰って来い』

エリカ 「う…! あ…!!」

頭がはちきれるように痛い。
何かを思い出しそうに…。
でも。

エリカ 「…何? 私は……違う! 私は…!!」

Pandora 『何も違わない…それがお前なのだ、お前の本当の…』

エリカ 「うるさい!! 私は…私は……!!」

Pandora 『エリカ…?』

? 「そうよ、あんたは、あんた。…だから、そろそろ帰ってきなさいよ」
? 「全く…これ以上は助けないから、後は自分で何とかしなさい! じゃないと、リュウは貰っていくわよ?」

瞬間、私は叫んだ。

エリカ 「私は…お前たちなんて知らない!! 私はリュウたちの仲間よ!!」

私はそう叫んで、振り切る。
すると、驚くほど頭が軽くなった。
まるでつっかえていた何かがなくなったように…。
そう…。
私は…自分を取り戻した。

DoLL 『…了解。目標Pandora。敵識別認定…攻撃を開始してください』
エリカ 「行くわよ…今まで私の心を弄んでくれた礼はさせてもらうわ!!」

私はDoLLとシンクロする。
心は戻った…でも記憶も同時に戻った。
その業を振り払うように、私は敵艦に向かって突っ込む。

敵機 「……!!」

ダァンッ、ズバァンッ! ボウンッ!!

敵機の攻撃がDoLLを狙う。
だが、DoLLには傷ひとつつかない。

エリカ 「邪魔よ!!」

私はブレードで敵機を切り裂く、全く違和感がない。
初めから馴染んでいるような感覚だ。
DoLLを操縦することに何の違和感もなかった。



セリカ 「凄い…姉さん、どんどん敵機を落としていく」


リュウ 「だが…いくらDoLLでもこのままでは艦まで辿り着けん。いずれ捕まる」
リュウ (DoLLを作ったのはPandoraだ…弱点も当然知っているはず)



エリカ 「く…! 動きが鈍い!?」

DoLL 『エネルギー供給に異状有り…システムダウンします』

エリカ 「ど、どういうこと!?」



セリカ 「動きが…止まった。姉さん!!」


リュウ (やはり…!)

俺はすぐにDoLLの前面に立って敵機を捌く。
DoLLは機能を停止したのか、動く様子はなかった。

エリカ 「何で…!? 急に…」


リュウ 「万事休すか…!?」

俺はDoLLを庇うように雪月花を動かすが、敵機は全く容赦をしない。
再生する敵機。
遠い旗艦。
動けないDoLL。
明らかに絶体絶命だった。


? 「どけどけどけーーーー!!」
? 「ドアホ! もう少し考えんかい!!」

何やら、妙な会話の中、一機の人型が雪月花を横切る。

リュウ 「one or eightだと…!? 今度は誰が操縦している!?」


明らかに不慣れなパイロットだ。
一直線に敵艦に向かっている。
周りに眼が行ってないのだろう…。
だが、敵機を寄せ付けないその機体性能はさすがだな…。
ただ突っ込むだけで、敵機をふっ飛ばしていくんだからな。



鉄火 「くっそ〜! 何だよこの機体!! とんでもねぇ荒馬じゃねぇか!!!」

FB 「ドアホウ! 当たり前や、ワイがおらんかったらお前は今ごろミンチになっとるわ!!」
FB 「とにかく乗ったからには全力疾走や!! す巻きにしたれ!!」

鉄火 「こなくそーーーーーー!!!」

俺は敵艦を見て、すぐに剣を構える。
とんでもねぇでかい包丁だが、こんな艦一発で刺身にして、シャリに乗っけてやる!!

鉄火 「チェストーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

ズバアアアアアアァァァンッ!!!

一撃で艦を真っ二つにする。

鉄火 「おっしゃあ!! 一刀両断だぜ!!」

FB 「アホッ! 調子に乗るなっ!! さっさと艦に帰るでっ」

鉄火 「この機体もう少し機敏に動けねぇのか? カーブできねぇぞ…」

FB 「お前が未熟なだけや!! 重力制御するワイの身にもならんかい!! ごっつしんどいねんで!?」



エレキ 「…何か、冗談みたいな機体だよなぁ」

士朗 「まぁ、結果オーライだな」

アクティ 「すご〜い」



………。
……。
…。



トラン 「お疲れ様です」

エレキ 「ったく…参ったぜ、今回は」

ダルマ 「苦戦でしたね…どうなるかと思いましたよ」

ツガル 「皆さん、どうぞこちらで休んでくださいね」

ツガルがテーブルに全員分のコップを用意して飲み物を注ぐ。
地球産のオレンジジュースだそうだ。


彩葉 「…結局茶倉は出てこなかったけど、どうしたんだろ?」

セリカ 「出てこない方が静かでいいわよ〜」

クロロ 「にゃあ…」

セリカ 「嫌あぁ!! こないでぇ!!!」

セリカさんは怯えて、また隅の方に行ってしまう。

FB 「がたがたがた…」
セリカ 「がくがくがく…」


エリカ 「…何あのふたり?」

ナイア 「…まぁ、似たもの同士でしょ?」

エリカ 「ほれほれクロロ〜、おいでおいで〜♪」

私はクロロを優しく抱きしめて撫でてあげる。

エリカ 「こ〜んなに可愛いのに、ねぇ士朗?」

士朗 「えっ…あ、いや…そ、そうだな…うん」

エリカ 「…あんた、興味あるの?」

士朗 「……別に」

エリカ 「はいはい…抱かせてあげるわよ」

私は士朗の頭にクロロを乗せて上げた。

士朗 「………」

クロロ 「にゃあ〜」

クロロはマイペースだった。
士朗も心なしかかなり嬉しそうに見えた。
あいつもこういう一面があるのね…。

エレキ 「兄貴は大の猫好きだからなぁ…」

アクティ 「そ、そうなの!? ラ、ライバル出現…」

エレキ 「…猫なんかライバルにするなよ」


ナイア 「ところで、いつのまにエリカ元に戻ってるの?」

エリカ 「はぁ?」

一同 「………」

全員がエリカを注目する。
今の今まで、全く気がついていなかったのか、全員が奇異の目でエリカを見ていた。

エリカ 「…い、いいじゃない、戻ったんだから!」

セリカ 「本当に〜? また記憶失ってるとか言うオチじゃ…?」

エリカ 「はいはい…可愛い妹の顔は忘れてないわよ」

そう言って私はセリカの頭をくしゃっと撫でてあげる。

セリカ 「もう…子供じゃないのに」

セリカは不満そうだったが、嬉しそうだった。


鉄火 「おっしゃあ!! 今回は俺が握ってやるぜぇ!!」

FB 「まぁ、我慢したるわ」

鉄火 「んだとぉ!? 嫌なら食わなくてもいいんだぜ!?」

FB 「まだまだ、オヤッサンの足元にも及ばんくせに…」

鉄火 「る、るせぇ! 親は関係ねぇだろうが!!」

FB 「そんなんで、看板背負えるんかいな…一応跡取やねんからな?」

鉄火 「これも修行だ、ラッシャイ!!」

彩葉 「お寿司って初めてですよ〜♪ 楽しみだなぁ…」

トラン 「魚が乗ってるんですよね?」

ツガル 「やっぱり地球でしか食べられないのかなぁ…?」

ダルマ 「何でもいいから飯飯〜」

鉄火 「彩葉ちゃん、寿司は初めてかい?」

彩葉 「そうだよ〜、というか多分皆初めてだと思うけど」

鉄火 「そうかいそうかい! そりゃあ握り甲斐があるってもんだ!!」


エレキ (な、何なんだ…? この雰囲気は?)
エレキ (何で新キャラがいきなり彩葉と親密そうに話してやがるんだ!?)
エレキ (俺だって、まともに喋ったことないのに…)

リリス 「………」
リリス 「恋には障害が付き物です」



リュウ 「…ふぅ」

エリカ 「どうしたの? 珍しくため息なんてついて」

エリカが俺の横までやってくる。
こうやって話すのは久し振りな気がした。

リュウ 「…吹っ切れたのか、ようやく」

エリカ 「おかげさまで…ちょっと馬鹿の手を煩わせちゃったけど。今は眠っているようだから後で礼を言っておいて」

リュウ 「…ああ」

誰のことを言っているのか、何となくわかる気がした。
今日は一度も出てないかったからな。

エリカ 「…えっと、それから…その」

リュウ 「ん?」

エリカが何やら恥ずかしそうに口篭もる。

エリカ 「…ただいま、リュウ」

リュウ 「おかえり…エリカ」

俺たちはしばし見つめ合う。
だが、その空気に耐えれないのか、エリカはすぐに目をそらした。

セリカ 「あ〜、何かいい雰囲気…」

エリカ 「な、何よ…セリカ、いたの?」

エリカはわかっているくせにわざとそう言う。

セリカ 「ふんだ…私はまだ諦めないから」

エリカ 「……」(汗)
リュウ 「……」(汗)


………。



REINCARNATIONはもうしばらく飛べないらしい。
Pandoraの追撃が続く中、俺たちは戦いの終わりを見始めていた。
そう…もうすぐ戦いは終わる。
そんな予感があったのだ。

…To be continued

ANOTHER


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