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beatmaniaUDX The ANOTHER Story substream


3rd STAGE 『SCREAM SQUAD』




『惑星 5.1.1.』

かつて、激戦を潜り抜けた艦、『REINCARNATION』に乗っていたひとりのクルーが住む惑星。
そして、以前の戦いから1年余り…今一度、『宇宙』へ飛び立つ艦があった。



………。
……。
…。



孔雀 「上手く飛んでるな…よくこの短期間で出来上がったもんだ」

ジルチ 「ああ、元々製作途中だった輸送船のフレームを、ほとんどバラして組みなおしたのにな」

ナイア 「それ位のことは、どうってことないわね…万が一のことも考えて、設計思想だけは完成していたから」

私はそう言って艦を操縦する。
そう言えば、以前はトラン任せで、全然操縦なんてしなかったわね私。
今思えば、子供ばっかりの部隊だったわねアレ…本当、よく勝てた物だわ。
今回は、ジルチと孔雀が付いているだけで、折角積んでおいた新型の人型も役には立てないわね。
今襲われたら、艦砲射撃のみで戦わなければならない…ちょっと、無茶が過ぎたかしら?
だからと言って、わざわざセムやリリスを頼るわけにはいかない。
特に、リリスは自分から志願しかねない…これ以上、巻き込むわけにはいかないわ。
あの子には、あの子の生活があるんだから。

ナイア (って言っても、あの子だって割と近所なんだから駆けつけてくる可能性は十分にあるわね)

リリスは元々トランのように特殊的な能力があるようだった。
細かいことはわからないけど、何かしら反応していてもおかしくはない。
そして、あの子もまたリュウ君に惹かれていたから…今回のニュースを見ていたらセムを放ってでも行くでしょうね。

孔雀 「ここまで、レーダーには何も反応なしか」

ジルチ 「このまま5.8.8.まで一直線だが…何もなさ過ぎるってのも気になるな」

ナイア 「…ありえないわね、あの演説を聞く限り」

私たちは、つい先日の『演説』を思い出す。
それは、ふとTVから流れた、特殊な波長の番組だった。
『奴等』の作った番組…ってとこね。



………。



? 「かつて『VENOM』…通称『V』と言われる、非公式の軍があった」
? 「それは、多くの銀河を巻き込む『宇宙戦争』を引き起こした! だがそれは、傲慢な政治家が『V』を動かして行ったゲームだった物だ!!」
? 「我々は…以前、『V』の尖兵として戦った者だ。あの時は、自分たちが正義と信じていた」
? 「だが! それは妄想だったのだ! かの英雄『ホルス』少佐がそれを証明した!!」
? 「我々は、自分たちの信じる正義のため…今一度あえて戦おう!!」
? 「そして、真の園を築くため、礎となろう!!」
? 「我々は『EDEN』!! 我々はここに、全宇宙に対して、宣戦布告を行う!!」



………。



ナイア 「普通じゃないわ! まさかあの『V』が絡んでくるなんて」

演説の内容も気になる。
間違っていると気付いて、何故また戦おうというの?
あえて宣戦布告をし、まるで『我々を倒してみよ』と言わんばかりだ。
まぁ、思う所はいくつもあるけど…私たちに出来ることは多くない。
やれることをやるだけだ。





………………………。





『ナイアたちが星を飛び立つのから、約1時間前…Giudeccaにて』



………。



ズバァンッ!!

エリカ 「!? 爆発…!」

イェロゥ 「…格納庫ですね」

私たちは爆発音を聞き、すぐに部屋を出る。
そして、すぐに見知った顔と出遭う。

シアン 「姉さん、エリカさん…マゼンダが逃げました」

エリカ 「…逃げた? 理由は?」

シアン 「わかりません、ですが…逃亡者は始末するのが道理でしょう」
シアン 「おふたりの手は煩わせません、私が仕留めます」

イェロゥ 「シアン、あなたのことだから何を考えているのかはわかるわ…でも」

シアン 「…私は姉さんとは違います」

そう言って、イェロゥの言葉を遮り、シアンは走っていく。
イェロゥの妹シアン、そしてその妹のマゼンダ。
何故、突然マゼンダが逃亡したのかは知らない。
でも、理由があるのだろう…そんな気はした。
何も理由がなく、勝手に動くとは思えないからだ。
イェロゥも同じ意見のようで、その場で立ってシアンの走った後をじっと見ていた。



………。
……。
…。



マゼンダ 「…ち、しつこいな」

あれから1時間ほどか…徐々に敵数が増えてくる。
こちらは1機のみ…しかも補給すら出来ない。
もう何体も敵を切ってきたが、そろそろエネルギーが心もとない。
だけど、それは向こうもある程度同じはず…そろそろ出てくるでしょうね。

シアン 『マゼンダ、是非は問いません…逃亡者には死あるのみです、潔く撃たれなさい』

丁寧な口調で、そんなことを言ってくる。
だが、わざわざやられるつもりなど毛頭ない。

マゼンダ 「やれる物なら、やってみればいいわ! 私が姉さんを倒して終わり! 私は自由になるわ!!」

シアン 『…あなたは知りすぎたようですね、残念です。あなたほど優秀なパイロットはそうそういないと言うのに』

そう言って、姉さんは自機である『R3』の長距離エネルギーライフルを構える。
あの機体は、こちらとは全く正反対のコンセプト。
近距離攻撃重視の『R2』、遠距離攻撃重視の『R3』だ。
距離は、かなり遠いが…R3のスナイパーライフルなら十分狙撃できる。
近づかなければ、こちらに勝ち目はない。
が、簡単に近づかせてはくれないだろう…。
私はとりあえずブースターを全快にして、その場から動く。
ロックを上手く外して移動し、徐々に間を詰めていく。



シアン 「……」

近づいてくるわね…単純なのは変わらないようね。
だから、あなたはここで消えることになるのよ。
私はライフルの引き金を引く。



ドッ…ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!



マゼンダ 「来た…回避!!」

ドガァッ!

R2の左肩を掠める。
装甲が吹っ飛んだだけ、これなら次弾までに接近できる!!

シアン 「……」

マゼンダ 「機体を完全に止めてる…? こんな所で居眠りでもしているの!?」

R3は完全に動きを停止している。
動く気配はなく、慣性で浮遊している…。
機能すら止めて…何を考えて!?
だが、私は接近を止めない。
ここで仕留めておかなければそれこそ危険だ!
私はR2で接近し、一気に両腕のブレードを構えた。

マゼンダ 「ここまでよ…!」

ドォンッ! ズドオッ! バァンッ!!

マゼンダ 「!? 全方位から攻撃!? レーダー反応…いつの間に!」

気が付くと、私の周りを多くの白い人型が囲んでいた。
汎用型の無人機だ…姉さんが潜ませていたのね。
しかもモニターから消しているなんて…随分用意周到ね。
近づいてくるのがわかっていたってことか…。
迂闊だったのはわかる…けど、この数はね…。
レーダーには30機ほど確認できた。
しかも全員が中距離からライフル及びマシンガン、中距離用のミサイルで狙っている。
対策は万全ってことね…!

シアン 『ZZZ…ZZZ…』

通信回線から寝息が聞こえてくる、本気で寝てるようね!
だが、私と言えどもこの数を今の状態で切り抜けるのは難しい。
強制帰還システムはすでに壊しているし、離脱は出来ない。

マゼンダ (諦めるもんか! ここで終わるつもりなんかない! あいつの人形のままなんて我慢できない!!)





………………………。





ナイア 「EDENか、Vの残党からなるグループでしょうね」

孔雀 「EDENねぇ…ってことは、今度は俺たちAEG(アエゴ)になるわけ?」

ジルチ 「語呂が更に悪くなるな…ただでさえAVG(アヴィゴ)も変だったのに」

ナイア 「くだらないことは考えなくていいわ…私たちは軍でもグループでもない」
ナイア 「ただの、お節介よ」

そう言った時、ふとレーダーに反応を感じる。
だが、識別反応がない。
リュウ君たちやEDENではないようだ。
としたら…まさか新鋭の仲間?
は、ないだろうからどうせ敵の新勢力といったところでしょうね。

ナイア 「孔雀、砲座の準備をお願い! ジルチは操舵を頼むわ!!」

孔雀 「よし、わかったぜ!」

孔雀はすぐに砲座へと向かう。
と言っても、操縦席から撃てるように設計しているので、すぐ横の大き目の椅子に座るだけだけど。

ジルチ 「操舵か…あまり得意じゃないんだがな、当たっても文句言うなよ!?」

ナイア 「期待はしてないから安心しなさい!」

ジルチ 「って、おい! ナイアはどこに行く気だ!?」

ナイア 「は? 何言ってるのよ…私以外に誰が人型動かすのよ?」

ジルチ 「お前自ら行く気か!?」
孔雀 「ナイア自ら!?」

ふたりが心底驚いたように叫ぶ。
だけど、それしかないのわかってるでしょうが。

ナイア 「いいから、こっちは任せたわよ!」

私はそう言って、その場を離れようとすると、突然通信が割り込んでくる。
しかも…この信号はまさか!?

? 「そこの輸送船…かな!? よくわからないけど、とりあえずここからは危ないですから退がってください!!」

ナイア 「ちょ、あなたまさか…!」

かなり、聞きなれた少女の言動。
しかも、モニターに写るあの機体は、かつて私が設計した物にやや似ていた。

? 「戦闘はもう始まってます! 私が人型で突っ込みますのでこの場は迂回してください!!」

そう言って、人型は私たちの艦から遠ざかる。
かなりのスピードだ、以前のアレより…速い。

ナイア 「ジ、ジルチ! 敵勢力はどの位!?」

ジルチ 「敵かどうかはわからないが…人型30:1ってとこだな」

孔雀 「30:1…かあの子大丈夫なのか?」

ナイア 「ってことは…今ひとつ増えて、30:2か」

ジルチ 「ん…ああ、そうだな。ってことは、最初から戦闘してたのは?」

ナイア 「どちらも識別はわからないけど…以前ここの近辺で大きな戦闘した機体のデータと一致する部分があるわ」

孔雀 「…仲間割れ、とでも言うことになるのか?」

ナイア 「…わからないわね」

とりあえず、私は艦を減速して一旦この辺りに停止させる。
すぐに出撃しても良かったが、あの子に任せれば何とかなる気がした。
後から出撃しても問題はないでしょうね、多分。

ナイア (声はそっくり…間違えるはずも無い、あの機体も…自分で改造したのかしら?)
ナイア (向こう見ずな所も相変わらずね…死ぬんじゃないわよ、セリカ!)



………。
……。
…。



セリカ 「敵発見…Abyss -Heavens-行きまーす!!」

私は新型を動かして、一気に突っ込む。
見た所、交戦しているのはあの正面の赤い機体と、他30機程だ。
どう考えても多勢に無勢、おまけにあの赤い機体はかなり損傷している。
これは手を貸してあげるべきね、当然赤い機体の方に。
私はとりあえず敵の指揮官機と思われる、青い機体を狙う。
ロックはせずに、意識のみを集中する。
そして、それを私は機体に『Feedback』させる。

キュィィィ…ピピピ!

機体のCPUが機会音をあげ、そして目標を認識する。
直後、Abyssのバックパックから4基のビットが射出される。
後は、私の意志だけでそれを自由に動かす。
そして、全く動く気配のない指揮官機を囲むようにビットを配置し、そこから一斉射撃する。

ドンッ! ドドンッ! バンッ!!

シアン 「……ZZZ……はっ!?」

指揮官機が驚いたように機体を立て直す。
というか…何であそこまで無防備なの?
だけど、考えている暇はなさそうだった。
すでに私の方にも敵の機体がロックしている。
これで、戦闘開始ね!
私はブースターを全快にし、回線を開く。

セリカ 「聞こえますか!? 赤い機体のパイロットさん!!」

マゼンダ 『な、何だ…?』

反応はあった、どうやら無事ではあるようだ。
私は敵機をブレードで斬りながら会話をする。

セリカ 「ここは助太刀しますよ! ふたりでなら30機くらいどうにかなると思います!!」

マゼンダ 『…礼は言わないわよ?』

セリカ 「どうぞご自由に! 私は自分がしたいと思うから助けるだけです!!」

マゼンダ 『……』

返答はなかったが、赤い機体も一気に動き出す。
さすがに機体の損傷が激しいようだが、それでも次々と敵機をブレードで落としていく。
かなりの腕前ね…同じ接近戦用の機体みたいだけど、扱いは私よりも上かもしれない。
私は負けずにビットを動かして赤い機体を援護させる。



………。



ピッ! ズドンッ!! ピピピッ!! ドドドンッ!!

マゼンダ 「ハアアァッ!!」

ズバァンッ!!

セリカ 「これで…最後!!」

バァンッ!!

白い機体はこれで全て全機撃墜した。
後は、指揮官機の青い機体のみ。


シアン 「…く、まさかこんな結果になるなんて」


セリカ 「投降してください! これ以上の戦いは望みません!!」

マゼンダ 『おい、そこのお人好し! いいからすぐにあの機体の動きを止めろ!!』

セリカ 「お、お人好しって…」

マゼンダ 「早くしろ!!」

かなり強く言ってくる。
何かしら理由があるのだろう。
私はすぐに青い機体に接近する。

シアン 「…く!」

敵機は私を狙ってライフルを撃つが、私はそれを綺麗に回避する。
そして、ビットでまず相手の武装を撃ち、次に頭部とバックパックを打ち抜いた。
これで少なくとも機体は制御を失う…はず。

マゼンダ 『よし、上出来だ!』

何だか、向こうの方が上官みたい…声を聞く限りだと、若い感じがするんだけど。
そんなことを考えていると、赤い機体が敵機の背後辺りに接近する。



シアン 『マゼンダ…! 何を…!?』

マゼンダ 「いいから…動かないでよ!」

ズバァンッ!!

私はR3のコクピット背後内部に取り付けられている転送装置をブレードで破壊する。
コクピットには傷はついてない…はず。

マゼンダ 「…姉さん、無事?」

シアン 『……』

マゼンダ 「……姉さん?」

通信が帰ってこない。
ま、まさかこれで死んだんじゃないでしょうね!?
さすがにそれは寝覚めが悪すぎるわよ!?

マゼンダ 「ち、ちょっと! 冗談でしょ!?」

私はR3の前面に回ってコクピットをこじ開けた。
するとそこにいたのは…。

シアン 「…ZZZ…ZZZ…ZZZ…」

マゼンダ 「…こ、こ、こ……この馬鹿姉貴!!」

思いっきり寝てるし!!
本当に…心臓に悪いわこの癖!



………。
……。
…。



ナイア 「で、こうなったと…?」

セリカ 「いやぁ〜…まさかナイアが乗ってるなんて」

ジルチ 「こっちも驚きだ! 単身突っ込むんだからな」

孔雀 「ホントホント…でもまぁ無事でよかったよな」

あれから、セリカと赤い機体のパイロットが、敵の指揮官らしきパイロットと機体を鹵獲して着艦した。
セリカと再会したのは驚いたけど、こっちも驚きだった。

マゼンダ 「……」

シアン 「……」

ナイア 「…さて、まずは自己紹介でもしてもらいましょうか?」

マゼンダ 「…名前はマゼンダ。今は行く宛がない」

シアン 「……」

赤い髪の少女は淡白にそう答える。
見た所、セリカよりも年下に見える娘たちね…こんな少女が戦っていたなんて、世も末ね。

ナイア 「…なるほど、ね。で、そっちの娘は?」

マゼンダ 「…名前はシアン。私の姉だ」

シアン 「…私はマゼンダのように寝返ったわけではありません、こちらの事情を話すつもりはありませんから」

ナイア 「ああ、はいはい…じゃあ捕虜として扱うわね、とりあえず手錠でもかけましょうかね」

セリカ 「え…? いいの?」

ジルチ 「向こうがああ言っている以上、こちらもそれなりの対処をするべきだからな」

ナイア 「ごめんなさいね…以前みたいに便利な艦長じゃないから、こんなことになってしまうけど…」

本当にトランの存在をありがたく思う。
あの娘がいたら、きっと…。


トラン 「悪い人じゃないです」


その一言で全部解決するのになぁ…。
等と思いながら、私は手錠をシアンの両手にかける。
幸い、シアンも抵抗しなかった。

マゼンダ 「…自業自得ね。まぁ、初めから姉さんが素直にするとは思ってもいないけどね」
マゼンダ 「イェロゥ姉さんならともかく…シアン姉さんは強情だから」

シアン 「…あなたのように単純なのも問題だと思うのだけれど?」

マゼンダ 「それでも、生き残ったのは私よ…それが全て」

シアン 「…そうね」

セリカ 「…で、これからどうするの?」

孔雀 「まぁ、部屋の方はたくさん作っておいたし、どこでも好きなところで休んでいいぞ?」

ナイア 「その前に、目的地に着くわ…どうせセリカも同じ目的だろうし」

セリカ 「ってことは…ナイアもやっぱり?」

私はセリカと顔を合わせて頷く。
どうせ、わかっているのだろうけど。

ナイア 「リュウ君とエリカが死ぬなんて考えられないわ…絶対に信じないんだから」

セリカ 「当然! 姉さんはいいけどリュウだけは絶対に死なせないんだから!!」

ジルチ 「…エリカはいいのか?」

孔雀 「女の妬みは恐ろしいな…」

私は思わず吹き出す。
何だか、ちょっとだけ昔に戻った感じがした。
ここでトランやリリスがいれば、ツッコンでくれるんだろうな〜。
今はツッコミ役が弱いのでどうにも微妙だわ。

マゼンダ 「…艦長。ひとつ、いい?」

ナイア 「…? 何かしら」

マゼンダが、やや控えめに進言してくる。
艦長か…何だかこそばゆいわね。

マゼンダ 「この艦の名前は何なの?」

ナイア 「…ああ、そう言えば言い忘れてたわね」
ナイア 「この艦の名称は『HORIZON』よ!」

セリカ 「HORIZON…か、艦の中は限りなくREINCARNATIONに近いよね〜」

ナイア 「そうね、その辺はやっぱり拘りたかったから…マザーは、いないけどね」

そう言うと、ちょっとしんみりしてしまう。
やっぱり、セリカも気にしてるようね…トランのこと。

マゼンダ 「で、この部隊はどの軍に所属しているの?」

ナイア 「…うん? ああ、え〜と…何て言ったらいいかしら?」

私はセリカに振る。
しかし、当然ながら帰ってくるわけもない…。

セリカ 「…え? AVGじゃないの? 一応…」

孔雀 「いや、でもVは壊滅したからな…一応、暫定的にAEGでいいんじゃないか?」

ジルチ 「う〜ん、でもやっぱり語路が悪い!」

マゼンダ 「…訳がわからないんだけど?」

シアン 「まとまりのない部隊ですね…」

思いっきりツッコまれる…やるわね。
しかしながら、何も考えてなかった。
以前だって、たまたま目的が被ったからAVGと一緒くたにされてたけど、実際には私たちは別部隊だし。

セリカ 「思い切って…新しく考えてみたら?」

ナイア 「私たちの…部隊名?」

孔雀 「ふむ、いいんじゃないか? 新鮮だし!」

ジルチ 「う〜む、まぁ悪くはないが…」

マゼンダ 「……」

シアン 「……」

何だかそう言う風に話がまとまってきてるわね。
でも、一応呼称だけでもあった方が色々都合がいいのも事実ね。

セリカ 「はいはい! 『ヒマワリ』ってのはどう!?」

ナイア 「何か、弱そうね…没」

セリカ 「うう…即答」

孔雀 「なら『KAMIKAZE』ってのは!?」

ナイア 「不吉そうだから没」

孔雀 「駄目か…」

ジルチ 「チッチッチ! こう言うのはシンプルなのがいいんだよ! ズバリ『.59』で決まりだ!!」

ナイア 「そう言う無理やりなのは却下」

ジルチ 「……」

セリカ 「もう〜…だったらナイアは何がいいの〜?」

ナイア 「私? そ、そうねぇ……」



………。



ナイア 「う〜ん……」

セリカ 「まだぁ…?」



………。
……。



ナイア 「ふ〜む〜…」

セリカ 「もう10分くらい考えてるようだけど?」

ジルチ 「そうこうしている内に目的地に着くぞ?」

孔雀 「って言うか、もう着陸態勢に入るけどな」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!



結局、ナイアは何も浮かばなかった…。
マゼンダもそれ以上は聞かなかった。
そして、私たちは目的地である『5.8.8.』に到着した。





………………………。





ガルマン 「艦が着陸した場所は?」

クール 「…えっと、ポイントSですね。ここから反対側です」

リュウ 「…軍艦なのか?」

クール 「いえ、所属は個人の物のようです…えっとデータ転送しますね、モニターに出ますよ〜」

俺たちはガルマンの輸送船のブリッジでついさっきやって来た艦について調べていた。
俺は後から聞いたのだが、どうもVの残党が『EDEN』と名乗って動き始めたらしい。
もしかしたら、そいつらの艦かとも思ったが、どうやら違うようだ。
そして、モニターに艦の所有者と思われる人物が映し出される。

リュウ 「…ナイア!」

クール 「知り合いですか?」

ガルマン 「ということは、味方のようだな」

アクティ 「わ、懐かしい〜もう1年くらいになるよね?」

士朗 「そうだな…」

俺たちは、その懐かしい顔を眺めながら、輸送船を動かす。
とりあえずは接触しないことには話は進まない。
まず、こちらから通信回線を開かせる。

クール 「オ〜ケ〜です、通信繋がりますよ〜」

ナイア 『こちら『HORIZON』…一応艦長のナイアよ』

どうやら相変わらずのようだ。
全く以前と変わらない口調にやや気分が休まる。
俺はとりあえず簡単に挨拶する。

リュウ 「こちらリュウだ! 聞こえているならそのまま待機してくれ! すぐにそちらへ向かう」

ナイア 『え!? リュウ君!? やだ、もう発見!?』

セリカ 『え、嘘! もしかしてもう見つかったの!?』
セリカ 『リュウーーー!! 聞こえるーー!? セリカよーーーー!!』

けたたましい声と共に、またしても懐かしい声が聞こえる。
間違いなくセリカだな。
というよりも、何故あいつまで一緒にいるんだ?
まぁ、それはさて置き、俺たちは程なく合流することになった。
場所は、星の南側のドックで、見晴らしのいい丘のような場所で落ち合うことになった。



………。
……。
…。



セリカ 「リュウーーーー!! 良かった、無事だったのね!!」

リュウ 「…お前も元気そうで何よりだ」

セリカはいきなり俺に飛び込んでくる。
さすがに避けるのはマズイと思ったので、素直に受け止めた。
やや涙ぐみながらセリカは笑ってみせる。
どうやら、よほど心配だったようだな。

ナイア 「なぁんだ…結局心配何にもいらなかったのね、やっぱりリュウ君よね〜」

ジルチ 「死んだって、ニュースでは言ってたのになぁ…」

孔雀 「あてにならねぇニュースだな、あれは」

マゼンダ 「……」

シアン 「…どうして私まで外に?」

見ると、知らない面々もいるようだ。
それはこちらも同じか…とりあえずは自己紹介も含めなければな。



………。
……。
…。



ナイア 「なるほど…リュウ君、結局それで生きてたんだ?」

リュウ 「幸か不幸か…な、自分でも悪運がいいと思っている」

セリカ 「でも、姉さんが…そんなことになっていたなんて」

マゼンダ 「やっぱりね…そういうことだったのね」

リュウ 「…そういうこととは?」

俺は新しく知り合ったマゼンダという少女に向かってそう言う。
すると、マゼンダはまるで当然かのような仕草で。

マゼンダ 「エリカはやっぱり、Giudeccaで産まれた訳じゃなかった…記憶も全部すり返られていたのね」

シアン 「……」

リュウ 「どういうことだ? お前はエリカを知っているのか?」

マゼンダ 「知っているも何も…お前を殺そうとしたのが、そのエリカと私の姉さんなんだから」

ガルマン 「どうやら、俺たちの知らないことをその少女は知っているようですね…」

ほぼ全員の視線がマゼンダに集中する。
マゼンダは、やや鬱陶しそうに答える。

マゼンダ 「私は説明が苦手だから、簡単に言うわ…まず私たちのいる惑星が『Giudecca』そのまま部隊名としても使っているわ」
マゼンダ 「細かいことは面倒だから省略、私とシアン姉さんはそこの所属だったの」

シアン 「…私は今でも所属なんだけれど?」

シアンが口を挟むが、マゼンダは無視して続ける。

マゼンダ 「他に、私やシアン姉さんの更に姉さんの『イェロゥ』姉さんと、お前たちが探している『エリカ』がそこにいるわ」

リュウ 「!!」

セリカ 「…姉さんが」

一気に緊張感が張り詰める。
これで、やることは決まった。
が、それにはひとつ問題がある。

リュウ 「…Giudeccaの勢力はどの位だ?」

マゼンダ 「…少なくとも艦隊が10以上、人型にすれば1000以上はあるわね」

シアン 「艦隊が10でしたら、人型は溢れていますわね…正確には10個師団に当たりますわ」

マゼンダ 「……」

マゼンダがいい終わってシアンが突っ込む。
うわ…固まってるわよマゼンダ。

アクティ 「うわ…絶望的だよ士朗ちゃん!?」

士朗 「…確かにな、だがPandoraの時に比べてもそう大差はないだろう」
士朗 「むしろ、永久機関や再生能力などの点で考えるなら、今回の方が楽と言えるだろう」
士朗 「その気になれば、またone or eightのような機体で突っ込むのもひとつの手になるだろうな」

ナイア 「生憎、あの機体はとっくにばらしてあるの、また組みたてないと使えない上に、FBがいないから制御のしようがないわね」

リュウ 「…やはり戦力不足か」

ガルマン 「仕方ないことでしょう、こっちの方でも多少は工面できますが…限界があります」

ナイア 「一応…新型はあるんだけどね」

セリカ 「…あ、例のあれ? 確か一機だけ…新しいのがあったけど」

どうやらナイアがすでに新型を作って持ってきているようだな。
それならば、多少マシになるか…?

ナイア 「…例によって、まだプロトタイプみたいな物よ?」

リュウ 「それでもありがたいだろう…で、誰が乗る?」

ナイア 「当然ながら、リュウ君を乗せるつもりで設計しているわ…以前の雪月花をスケールアップした機体だから」

リュウ 「それは助かる…こちらも機体が大破して乗る機体がなくなっていた所だ」

ナイア 「…また壊したの? 相変わらずねぇリュウ君」

苦笑いされる。
確かに、以前も壊してばかりだったからな。
プロトタイプと言うことは…また壊れそうだな。
ナイアの苦笑する顔が目に浮かぶ。

ナイア 「とりあえず、機体のこととかは全部私が面倒見るわ! HORIZONに全部載せちゃって!」
ナイア 「後は格納庫の方で説明するから!!」

ナイアがそう言って、一旦作業に移ることになった。
俺たちはそれぞれの機体を全てHORIZONの格納庫に搭載する。
REINCARNATIONとほとんど変わらないような内観だな…。
そして、俺はナイアのいる新型の方へと足を向けた。



………。



ナイア 「…来たわね、これが例の新型よ」

リュウ 「む…確かに雪月花に似ているが、随分装甲面が薄くなった感があるな?」

雪月花に比べると、やや細身と言った感じだった。
カラーリングはまだ塗られていないのか、白黒だけのようだが。

ナイア 「装甲の方はギリギリまで削ったわ…それでも以前を上回る装甲になるから」

リュウ 「!? 装甲素材を変えたのか?」

それでも、あの外観からそれだけの装甲を誇るとは思えない。

ナイア 「特殊フィールドを装備しているのよ…一応全身防御の」
ナイア 「『Sphere』って言うんだけどね…球状のバリアフィールドが守ってくれるわ」
ナイア 「但し、使っている間は射撃武器は使えないわ…球状だから」

リュウ 「こちらの攻撃も弾いてしまうわけか…」

ナイア 「その通り、その代わり…それを攻撃に生かすことも当然できる」

リュウ 「なるほどな…直接ぶつけるわけか」

まさに攻防一致のバリアフィールドと言うわけだ。
だが、それでも疑問は残った…。

リュウ 「俺が戦った『GENOCIDE』は恐ろしく強力なバリアを持っていた…雪月花のバンカーですら通らなかったほどだ」
リュウ 「それだけの相手に通用する武器はあるのか?」

ナイア 「ちなみに、『Sphere』自体が敵のバリアフィールドを無効化する効果を持っているのよ?」

リュウ 「何だと?」

ナイア 「まぁ、相手のフィールドがどんなものかわからないから何とも言えないけど」
ナイア 「少なくとも今まで私が見てきたバリアフィールドは全てある一定のエネルギーを消費して作られるものなの」
ナイア 「大抵はジェネレータからそれを消費して持続させるのだけれど、以前の『DoLL』のようだと、永久的にそれを維持することができる」
ナイア 「そもそも、バリアフィールドの原理は…」

リュウ 「ストップだナイア! もういい!」

ナイアは少し残念そうな顔をする。
喋りたかったのか?
だが、言いたいことはよくわかった。
つまりは、以前とほとんど変わらない…『近づいて貫くのみ』か。
が、そこで重大な事に気付く。

リュウ 「…バンカーは装備していないのか?」

ナイア 「ん? ああ…あれね、最初はつけようかとも思ったんだけど、重かったから外しちゃった」
ナイア 「今回は『Sphere』の効果がそのまま使える特殊ブレードを積んであるから」
ナイア 「一応、ライフルの方にもそれを付ける事はできるんだけど、そこまでしたらエネルギーが足りなくなっちゃうわ」
ナイア 「ただでさえ軽量のジェネレータだから、エネルギーの残量がややネックなのよね…」

リュウ 「短期決戦向き…と言うわけか」

ナイア 「そ、でもまぁ…雪月花の時のように外部でプロペラトタンクを付け足すことも考えているから、余程のことがない限りは大丈夫よ」

リュウ 「…すぐにでも動くのか?」

ナイア 「ええ、動くわよ…ただ、あくまで『プロトタイプ』ってことを忘れないでね?」
ナイア 「まぁ、リュウ君のことだからすぐに壊しちゃうのは目に見えてるけど…それでも大事にしてね?」

リュウ 「…善処する」

やはり信用されていないらしい…機体を壊すのに慣れると言うのも馬鹿な話だがな。

リュウ 「そう言えば、機体名は?」

ナイア 「ん? ああ…そう言えば考えてなかったわね」
ナイア 「リュウ君で勝手に決めちゃってよ。あ、ついでにカラーパターンも決めてくれると助かるわ」

まだ決めてなかったのか…ふむ。



………。



ナイア 「…『Aurora』?」

リュウ 「ああ、意味はそのままだ…カラーパターンもそれで頼む」

ナイア 「ふぅん、まぁいいけど…ってカラーもそのままって! 表現滅茶苦茶難しいじゃない!!」
ナイア 「相変わらず無茶ばっかり言うんだから…もう、目立って敵に狙われやすくなるわよ…」

そう言っていても、渋々作業を始めるナイアはさすがだと思う。
ともあれ、これでも正直直接攻め込むのは辛い…やはりもう少し戦力は必要だろう。
この際、ゲリラ的に動いて、少しづつでも敵の戦力を減らしていくべきなのだろうな。

ナイア 「あ、ちょっと待って! リュウ君、ちょっと聞きたいんだけどさ…私たちの部隊名決めてくれない?」
ナイア 「皆で一応話したんだけど決まらなくて…」

リュウ 「…部隊名? 必要なのか?」

ナイア 「便座的にね…ないと色々困ることもあるから」

リュウ 「『SCREAM SQUAD』だな…」

ナイア 「……は?」

リュウ 「意味はそのままだ、略して『SS』でもいい」

ナイア 「……そ、そう」

ナイアは苦笑していた。
否定できないだろうからな。
最も、以前とは面子も違うから、あまり当てはまらないかもしれない…以前なら間違いなくそのままになったろうがな。
俺はそんなことを思いながら、新しく設けられた部屋に向かった。



…To be continued




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