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beatmaniaUDX The ANOTHER Story substream


4th STAGE 『集う仲間』




『惑星AA・EDEN本部』


かつて、Vの謀略により、死の惑星と化した『惑星A』
現在は、EDENの惑星環境改善計画による成果で、元の姿を取り戻しつつある。
現在は名を変え、『惑星AA』となった。
そして、この惑星にEDENの本拠地は存在する。



『EDEN本部・作戦司令室』


総司令 「…以上が、現在の状況だ」

隊長A 「大した戦力のようには感じませんね、これならば」

隊長B 「いや、指令の言う通り、万全の態勢を整えるべきだ」

隊長C 「まだ、成長する余韻が残っているかもしれん、今すぐに叩くべきだ!」

それぞれの隊長格が意見を話し合う。
だが、食い違いも多く、まとまりが無い。
私は、ある程度時間が経ったのを確認すると、皆の話を止める。

総司令 「…そろそろ作戦を決定する。今は、現状維持だ」

隊長A 「ですが…司令!」

総司令 「二度は言わない、現状維持だ」

隊長A 「は、はい…」

総司令 「それと、君にはひとつ作戦を与える」
総司令 「過去のV本拠地に、正体不明機が確認されている…それを調査してくれ」

隊長A 「元本拠地…ですか、しかし調査とは…」

内容が飲み込めていない隊長に向かって、私は詳細を説明する。

総司令 「…要は、正体不明機のデータがほしい」
総司令 「可能なら捕獲、不可能ならデータを採取の上、撃破してくれ」
総司令 「パイロットの生死は問わない」

隊長A 「了解しました! お任せを、オシリス司令!!」

そう敬礼し、彼は司令室を出て行く。
やれやれ…下の者をまとめるのがこれほど難しいとはな」

オシリス 「…皆も休むがいい、今日の会議はここまでだ」

私がそう言うと、隊長格のメンバーは全員部屋を出る。
ひとり部屋に残された私は、以前の戦闘データをモニターから見つめ、1機の黒い機体を見つめる。

オシリス (ホルス…君は、本当に死んだのか?)



………。
……。
…。



『第6銀河・太陽系内 宇宙空間』


鉄火 「ん、おい…何だこのニュース?」

FB 「何や? 何か気になる情報でも…って!?」

彩葉 「こ、この機体って…!!」

茶倉 「…quasarね、確か」

エレキ 「ホルスの機体…!」

全員がTVモニターに注目する。
それは、かつてVの本部があった惑星の映像だった。

TV 「新たな情報が入りました! この惑星『No.13』では、先程チラッと映像に移りました、黒い機体が出現する模様です」
TV 「その機体は、かつてVの英雄でもある、あのホルス少佐が乗っていた機体と酷似しており、亡霊とも言われているようです」
TV 「誰かと交戦した記録もあり、無残な人型の姿も確認されます」
TV 「近隣の方々は、くれぐれも気をつけますよう…」



………。



エレキ 「…どう思う、皆?」

俺たちは、緊急会議を行う。
どう考えても、普通じゃありえないことが起こっているようだが。

茶倉 「…無視する方が賢明でしょう? 今は目的地に向かうことが先決よ」

FB 「同感やな、行っても危険なだけや」
FB 「補給もロクにできへんこの状況やったら、無駄な戦いは避けるべきや」

彩葉 「そうよね…元々、ホルスさんは敵だったわけだし」

エレキ 「……」

確かにその通りだ。
師匠の最大のライバルとも言える、ホルス元少佐。
その実力は師匠や茶倉さんと互角かそれ以上。
ゆえに、俺は気になっていた。
もし、ホルス少佐が味方だったら?と…。

エレキ (…虫の良すぎる話、か)

俺は考えを捨て、当面の目的地である、惑星『5.8.8.』を目指すことにした。





………………………。





『第3銀河・惑星No.13』


隊長 「どうだ、例の機体は確認できたか?」

兵士A 「いえ、まだです。もしかしたら、すでに移動したのでは?」

隊長 「いや、必ずいるはずだ! 司令が気になさるほどの機体…必ず持ち帰るのだ!」



………。



やはり来たか、くだらん物を送りつけてきたようだな。
オシリス…何を考えているのか知らんが、私がここにいることが気に入らんようだな。
私は、機体を動かす。

ギュゥゥゥン!

ブースターを吹かし、地表から数メートルほど宙に浮く。
そして、敵艦隊を目標に定め、私は戦闘に突入する。

? 「見せてもらうぞ…オシリスの犬の力をな」



………。



兵士A 「機体反応! 1機です!! こ、この反応は、まさか!?」

隊長 「く、黒い機体…quasar。ま、まさか…ホルス少佐!?」

兵士B 「そんなまさか! 少佐は死んだはずです!!」

兵士C 「く、黒い機体が接近!! 攻撃してきます!!」

ドバァンッ! バァンッ!!

私は適当に攻撃を加える。
この程度では沈むまい。

隊長 「く…応戦しろ! 対空砲火!! 人型も攻撃開始だ!!」

? 「…ふ、出てきたか、犬どもめ」

私は7機ほど接近してくる機体をロックする。
どれも当たり触りのない汎用機か、気に入らんな。

? (様子見と言ったところか、変わらんなオシリス)

ズバァンッ!!

私は左手に装備していた大型ブレードで1機撃墜する。
続けて、近くにいた3機を同時にロックし、右手のライフルを使い、的確に一撃で落とす。

ズバァンッ! ビシィッ!! ドォンッ!!

それぞれが機体の中枢を破壊され、あっさりと爆発する。
これで残り4体…下らんな。
この程度の戦力か。

隊長 「ば、馬鹿な…この手際、ありえん!」
隊長 「人型の残りは!?」

兵士A 「すでに3機です! 敵機は一度も被弾してません!」



………。



ズバァンッ!

兵士D 「やったぞ! 目標被弾! このまま一気に…」

ボロッ…

? 「……」

兵士E 「な、何だ!? 装甲が剥がれて…」

兵士F 「構うな! 撃て! 動きを止めている今がチャンスだ!!」

ダダダダッ!! チュィンチュィン!! バババァンッ!

次々と私の機体に銃弾が打ち込まれる。
次第に、私の機体は黒い装甲が剥がれ落ちていく。
そして、この機体の本当の姿が次第に現れていく。

兵士D 「ま、まだ動く!?」

兵士E 「そんな! 直撃のはずなのに!!」

兵士F 「そ、装甲の下に更に装甲が!?」

私は、機体の『システム』を起動させる。
ここまでの戦いは、あくまで私ひとりの力によるものだ。
だが、ここからはこの機体のテストも兼ねて、本当の力を出す。

ホルス 「オシリス…見るがいい。これが、私の新たな機体。『GHOST REVIVAL』だ!!」

キィィィ!

まるで金切り声のような駆動音を一瞬あげ、機体のシステムが起動する。
quasarに比べ、更に軽装型となったが、その分運動性は向上している。
低くならざるを得なかった装甲も、特殊機能『ACID VISION』により、解決する。

兵士D 「く、来るなぁ!!」

ダァンッ!! ダァンッ!!

敵機の一体が私の機体を狙うが、かすりもしない。
私は別に回避したわけではない。
相手が外したのだからな。
これが『ACID VISION』の効果。
相手のモニターには、今頃はドロドロとした映像が写っているだろう。
そうやって、相手のモニターその物を潰し、狙いをつけさせない、一種のステルス系だ。
最も、モニターやレーダーを頼りにしないパイロットが相手では意味もないが。

ホルス 「ふっ」

ズバァンッ!

兵士D 「うわぁあぁぁぁ!!」

あっさりと接近し、ブレードで一閃する。
残り2機。

兵士E 「畜生ーー!!」

兵士F 「落ちろーーー!!」

ダダダダダッ!! バシュウンッ!!

敵はそれぞれ、マシンガン(見た所、70mm弾の300発仕様)とバズーカ(160mmの12発仕様)でこちらを狙ってくる。
だが、それぞれ見当違いの方向を狙い、私の機体をかすめることさえなかった。
私は、正確に両肩装備のグレネードキャノンで2体を同時に狙う。

ズバァンッ!! ドッゴォォンッ!!!

爆発音。
着弾と同時に敵機は両方とも砕け散る。
これで残りは。

隊長 「…そ、そんな馬鹿な」

ホルス 「聞こえているなら、覚えておけオシリス!!」

私は通信回線を開き、敵艦に声を送る。
どうせ、聞いているだろう。そう言う奴だ、あいつは。

ホルス 「私は、貴様の下にはつかん! 私は自由にやらせてもらう」
ホルス 「貴様との決着は、いずれつけよう…さらばだ!」

ドグォォォンッ!!

兵士A 「エ、エンジンルームに直撃!! うわああああ!!」

隊長 「何故だ…ホルス少佐ーーー!!」

カッ! チュドオオオオオォォンッ!!

ホルス 「…ふ、いい狼煙にはなったか」

敵を全滅させ、私はふと考える。
そして、思い浮かべる。
前の戦いで、私の右目を奪った男の顔を。

ホルス (生きているだろう、そう言う男だあいつは)
ホルス (ククク…まだまだこの宇宙は私を楽しませてくれるか)
ホルス 「いいだろう、オシリス…今回だけは、貴様のシナリオに乗ってやる」
ホルス 「貴様と決着をつけるには、いい機会だろうからな」

私はそう思い、『GHOST REVIVAL』を動かす。
そして、目的地をインプットする。

目的地 第6銀河・惑星5.8.8.



それは、エレキたちがTVを見る数日前の出来事だった…。





………………………





『第6銀河・惑星5.8.8. HORIZON格納庫』


リュウ 「ほう、これで完成か」

ナイア 「そうよ、注文通りでしょ?」

俺は出来上がったAuroraをこの目で見る。
その名の通り、見る角度によって不規則な色を見せるその機体カラーは、俺の注文通りだった。

ナイア 「これなら、多少相手のモニターをごまかせるわね」
ナイア 「もっとも、リュウ君なら当たることも少ないと思うけど」

リュウ 「…いや、わからんぞ。俺のことだ、新しい機体となればすぐに壊れる可能性は高い」

真面目に言う俺の言葉を受け、ナイアは頭を抱える。

ナイア 「…お願いだから、壊さないで。今回は資金がないんだから」
ナイア 「自前だってこと忘れないでね?」

それを聞くと、俺は軽く笑う。

リュウ 「…考えておく」

そう言って俺はAuroraに乗り込む。
コクピット周りもがらりと変わっている。
割と窮屈だった雪月花に比べ、Auroraは余裕がある。、
ドーム型のコクピットで、モニターは全周囲系。
計器類もわかりやすいところにあり、さすがはナイアと言った所だろう。
そして、俺はこの時点であることに気づく。

リュウ 「…む、システム名登録?」

ナイア 『ああ、それはね、Auroraの機体に組み込まれている人工知能統制プログラムよ』

俺が気づくと、ナイアは通信でそう説明してくれる。
なるほど、つまりは…

リュウ 「DoLLに組み込まれていたような、物か」

ナイア 『そ、あれと違って融通は利くわよ? あなた以外の人にも普通に動かせるし』
ナイア 『とりあえず、ぱぱっとあなたの声門と指紋を登録しちゃって』
ナイア 『後、その子はまだ名前がついてないから、そっちもつけてあげて』

リュウ 「名前が必要なのか?」

ナイア 『もちろんっ、呼び名は重要よ。パイロットとのコミュニケーションで性能が変わる位に』

なるほど、それは重要だな。
適当に決めるのはどうにもまずいらしい。

ナイア 『言っとくけど、女の子だからね?』

リュウ 「…何だと?」

ナイアはこちらの予想外な所を攻めてくる。
むぅ、女性だったのか…マザーの時と似た様な物か。

リュウ 「………」

俺はじっくりと名前を考える。
チーム名の時のように簡単には思いつかんか。

ナイア 『ま、まぁ…とりあえず後は自分で何とかしてね? 私は今からAbyssにも別の人工知能積まなきゃならないから』

リュウ 「む…わかった」

ナイアはそのままセリカの方へと向かう。
全員の機体に人工知能を積むつもりか?

システム 「…登録を、お願いします」

リュウ 「む…そうだな」

まさか人工知能に急かされるとは思わなかった。
俺はある程度考えた所で、ひとつの名前を思いつく。

リュウ (よくよく考えたら、そのままでもいい気がするな)
リュウ 「よし、Auroraで頼む」

Aurora 「了解しました、以後私の名前は『Aurora』となります」
Aurora 「続けて、声紋登録も終了、パイロット名『リュウ』さん」

何だか、勝手に進められている。
う〜む、これも時代の流れか。

Aurora 「パイロット登録終了、以後私の登録内容を変更する場合は、マスターであるリュウさんのみ変更可能です」

リュウ 「了解だ。よろしく頼むぞ、Aurora」

Aurora 「はい」

話しかければちゃんと答えてくれる。
うむ、意外にいいかもしれんな。
ただ、これが直接機体性能に関わるとなると…

リュウ (下手な教育は危険か)

腕でカバーできるなら問題ないが、機体に反抗された時はどうなるやら。
戦闘中に駄々でもこねられたら、危険極まりないな。
俺はそんな不安を抱えながらも、Auroraを動かす。


セリカ 「お、動いてるね〜」

ナイア 「当然よ、私が作ったんだもの」

士朗 「あれが、リュウの新たな機体か」

アクティ 「綺麗な色〜」

マゼンダ (細身に見えるが、特殊フィールドにより装甲は高い)
マゼンダ (加えて、あのブースターとバーニア、あんなバランスで人が操縦できるのか?)
マゼンダ (どう見ても特機タイプね、それほどの腕なの? あのパイロットは)

シアン 「はぁ〜…素敵ですわ、リュウ様」

マゼンダ 「そうそう、素敵…って何言ってるのよシアン姉さん!?」

私は、すぐ後ろでボケてくれるシアン姉さんにツッコム。
しかし、まずい事にコレは本気の目をしていた。

シアン 「どこからどう見ても、素敵ですわ! あなたにはリュウ様の魅力がわかりませんの!?」

マゼンダ 「…わかるかっての!」

私はそう言って否定する。
まぁ、ちょっと位いい男なのは100歩譲って認めよう。
しかしながら、あの無愛想な男のどこに魅力があると?

シアン 「クールな眼差し、敵の私に優しく手を差し伸べてくれる優しさ」
シアン 「加えて、凄腕のパイロットでチームリーダー! もう、素晴らしいですわ〜!」

そう言って、シアン姉さんは機体の方に向かう。
やれやれ…もう、何も言えないわね。
まさかシアン姉さんが、ねぇ。
普段、クールぶって、いつも寝てばかりで、ロクに男に興味を示さなかった女が。

ナイア 「若いっていいわね…マゼンダも少し位、気を使ったら?」

マゼンダ 「ふん、私はいいわ。愛だの恋だのは苦手よ」

ナイア 「そう、だったら何も言わないけど…とりあえず、テストも兼ねてあなたも出撃しなさい」
ナイア 「リュウ君の訓練は、普通の相手じゃ勤まらないから、あなた位の腕が返って丁度いいわ」

マゼンダ 「へぇ、言ってくれるね…だったら、リーダーの実力、見せてもらいましょうか」

私は笑みを浮かべ、R2に乗り込む。
面白くなってきたわね。



セリカ 「…大丈夫なの?」

ナイア 「当たり前よ、リュウ君がヘマすると思う?」

セリカ 「…ないわね」

ふたりそう言って納得するのであった。



………。



ドギュウゥンッ! ギュアアンッ!!

リュウ 「いい反応だ、雪月花よりも更に速い」

Aurora 「お褒めに預かり光栄です」

感情のない声で、Auroraは答える。
俺は今、マゼンダのR2と模擬戦をこなしている。
あの機体は、かなりのスピードとパワーを持っているな。
だが、接近戦に特化しすぎて弱点も多い。


マゼンダ 「ち…何てスピードでカーブするのよ!」

まるで追いつけなかった。
R2のスピードを持ってしてもまるで捉えることができない。
近づかなければ何もできない機体なだけに、スピードで追いつけなければ、勝ち目はない。

マゼンダ 「直線のスピードなら負けてない…だけど、あの反応」

どう考えても普通じゃない。
直線で追いつこうとしても、すぐに直角でカーブして反転するのだ。
あれだけの動きを行えば、確実に体がGにやられるはずなのに。

リュウ 「いいぞ、Speherの方も順調だな」

Aurora 「はい。フィールド安定。G軽減率70%です」

ただ、問題はフィールド展開中には飛び道具が使えない。
球体型のフィールドなため、全方位を守ることもできるが、こちらからの攻撃も弾いてしまう。
攻撃する時は、フィールドを消さなければならないのだ。
ナイアが対策を考えているとは言っているが、まだ完成とは言えないということか。

ナイア 『OK、ふたりともご苦労様! いいデータが取れたわ』

リュウ 「了解だ、これより帰還する」

マゼンダ 「ち…結局一発も当てられずか」

シアン 「素敵でしたわ〜リュウ様♪」



………。
……。
…。



ガルマン 「どうだ、クール?」

クール 「う〜ん、反応なしです」
クール 「やっぱり、Giudeccaの機体は特殊すぎますよ、こちらの文明をはるかに超えてると言っていいです」

ガルマン 「…やはり、無理か」

クール 「ですね。相手はワープしていきなり襲ってくる」
クール 「それを予測しようにも、相手は人知を超えた技術です」
クール 「対策は、無いと言っていいでしょうね」

リュウ 「…結局、いい案はなしか」

俺が会議室に入ると、ふたりが悩んでいた。
俺の後ろから、マゼンダとシアンが入ってくる。

ガルマン 「申し訳ありません、リュウさん」

リュウ 「責めるな、相手が上手過ぎる…それだけだ」

俺は肩を落として謝るガルマンの肩を叩いてそう言う。
少しは気が楽になったのか、ガルマンは笑顔を見せた。

クール 「ねぇ、R2やR3からは反応を感知できないの?」

マゼンダ 「…無理でしょうね。多分」

リュウ 「多分…か」

シアン 「それは、マゼンダの頭では、ですね」
シアン 「私の機体からなら、ワープの波動を感知して、出現位置を予測することができますわ」

リュウ 「本当か!?」

シアン 「もちろんです! ただ、射程距離の関係で10m以内でないと感知できませんが」

マゼンダ 「10mって…出た瞬間に戦闘じゃないの」

ガルマン 「艦隊レベルで通用する距離ではないな…」

結局、対策はない様だった。
GENOCIDEの出現予測ができれば、罠を張ることもできるのだが。

ナイア 「だったら、HORIZONにそのシステムを搭載して拡張してやればいいのよ」

リュウ 「ナイア! そんな事が出来るのか?」

突然現れたナイアに、俺はそう聞くと。

ナイア 「もちろん。私だもん」

セリカ 「それって、理由になってないと思うけど」

セリカも入ってくる。
段々と談話モードになりつつあるな。
以前の戦いをふと思い出す。

リュウ (トラン…今頃は地球で元気にやっているだろうか?)
リュウ (俺たちは、結局変われなかった。せめて、あいつだけでも…元気でいてほしいものだ)

俺はそう思う。
かつて、俺たちをずっと支え続けてくれた名艦長(?)トラン。
思えば、窮地に立てば立つほど、トランは皆を救ってくれた。
どうしようもなくなった時、いつもトランが助けてくれたのだ。
だが、今は。

リュウ (トランを頼ることは出来ない! あいつは今新たなステージに立った)

そう言い聞かせる。
そして気づく。
前の戦いで、どれだけトランの影響が大きかったのかを。

セリカ 「…こんな時、トランがいてくれたら」

リュウ 「言うなセリカ…トランを戦いの場に出すわけにはいかない」

ナイア 「そうよ、あの娘は今自分の居場所で戦っているの」
ナイア 「気持ちはわかるけど、今は耐えましょう」

マゼンダ 「誰? そのトランって言うのは」

シアン 「私も初耳ですわ」

ガルマン 「確か…以前の戦いでリュウさんたちの艦長を勤めていた少女ですね」

マゼンダ 「少女が艦長!?」

シアン 「まぁ…」

ふたりはやや大げさに驚く。
俺たちにとっては、ふたりがパイロットとして戦うのも十分驚きに値するが。

クール 「若干10歳の少女…凄いですよね、不思議な力も持っていたそうですし」
クール 「あ〜あ、一度でいいから会ってみたかったなぁ」

ガルマン 「やはり、優秀な艦長だったのですか?」

リュウ 「…ああ、あいつがいるだけで俺たちは心置きなく戦うことが出来た」
リュウ 「迷いもなく、な…」

ピーピー!!

突然、何やら発信音が鳴り響く。
どうやら、室内スピーカーから聞こえてくるようだ。

ガルマン 「士朗とアクティだろう。回線を開け」

クール 「了〜解。音声入りま〜す」

士朗 『聞こえるか、こちら士朗だ』

士朗の顔がモニターに写り、音声が流れる。
確か、偵察に出ていたはずだが。

リュウ 「聞こえている、どうした士朗?」

士朗 『リュウか…どうやら、一隻妙な反応を持った輸送船が入ってくるらしい』

リュウ 「妙な反応?」

士朗 『ああ、どうも戦闘用の機体をいくつか積んでいるようだ』
士朗 『今、アクティが調べている』

リュウ 「…わざわざ輸送船で来るということは」

ナイア 「Giudeccaの可能性は低いわね」

セリカ 「だったら、EDEN?」

多少の不安を抱きながらも、アクティの通信を待つ。
すると、数秒程度ですぐに来た。

アクティ 『お待たせしました〜えっと、輸送船ですけど、驚かないでください!』
アクティ 『何と、中に乗っているのはエレキさんたちですよ〜♪』

リュウ 「本当か!」

士朗 『データ確認した、確かに愚弟の識別反応だ』

そうか、わざわざ駆けつけてくれたか。
これで、一層戦力が増強されるな。

アクティ 『あ、向こうもこちらに気づいたみたいです! 5分後にそちらの会議室で、だそうです!』
リュウ 「了解だ、案内してやってくれ!」

アクティ 『は〜い』

こうして通信は終わる。
俺たちは、エレキを歓迎するため、この場で待った。



………。
……。
…。



エレキ 「師匠!」

リュウ 「エレキ、元気そうで何よりだ」

FB 「やっぱり生きとったな」

鉄火 「全く、不死身な人だよ」

彩葉 「私は信じてましたし」

セリカ 「うわ〜、鉄火君や彩葉ちゃんまで!」

ナイア 「…これで、あとひとりやかましいのがいたら、もっと心強いけど」

茶倉 「誰がやかましいのかしら〜?」

セリカ 「でっ!?」

ナイア 「ぶっ!」

リュウ 「………」

茶倉 「きゃ〜ん! 会いたかったわよ、リュウーーー!!」

ドガァッ!

そう言って茶倉は俺に飛び込んでくる。
以前の体とは違い、さすがの俺ものけぞる。
だが、何とか受け止めることが出来た。

茶倉 「う〜ん、やっぱり生リュウは違うわぁ〜」
茶倉 「もう、二度と離さないから♪」

セリカ 「こ、こ、こ…」

む、どうやらいつものパターンのようだな。
パターンを知っているメンバーは、全員耳を塞ぐ。

セリカ 「この馬鹿女ーーー!! 離れなさいよーーー!!」
シアン 「この痴女が! 恥を知りなさい!!」

セリカ 「…?」

シアン 「……?」

全員 「………」

しばしの沈黙。
どうやら、いつもと少し違うパターンに少なからず戸惑っているようだ。
だが、セリカはすぐに気を取り直し。

セリカ 「さっさと離れなさい!」

茶倉 「断る! もうあんたに負ける要因はないわね」

そう言って茶倉はセリカを挑発する。
前は彩葉の体だったためか、セリカの方が体が大きかったが、今度は逆転してしまっている。
茶倉の身長はセリカよりも大きく、俺と大差ないほどだった。
以前の茶倉なら、全体重を支えるところを、今回は茶倉の足が地に着いたまま抱きつかれているからな。
しかし、セリカは当然として、まさか…

シアン 「リュウ様がお困りになられているではありませんか! すぐに離れなさい、この痴女!」

茶倉 「だ、だ、だ、誰が痴女だ!! 健全な乙女に向かって!!」

おお、珍しい…あの茶倉がうろたえるとは。
どうやら、シアンのような知的タイプには相性が悪いらしいな。

シアン 「あら、会うなりいきなり胸を押し付けて、淫らな言葉を投げかける行為が痴女でない、と?」

茶倉 「だ、だ、だ、だから痴女って言うなーーー!! 私は純粋よ!!」

セリカ 「おお…あの茶倉が口で押されている」

FB 「こら驚いたわ…って、よう見たら前に見たきっつい赤毛の娘にそっくりやなぁ」

エレキ 「そういやそうだな…もしかして、感情の高ぶりによって色が変わるとか…」

鉄火 「力の赤に、感情の青?」

FB 「それは○カイダーやろがボケ!!」

バシィ!

鉄火のボケに的確な突込みを入れるFB。
こちらも相変わらずのようだな。

彩葉 「う〜ん、茶倉って、やっぱり純情なんだ」

茶倉 「う、うう、うるさい! いいでしょうが別に!!」

あの茶倉が顔を赤くして叫ぶ。
ふむ、そうだったのか…しかし、痴女にいちいち反応するとはな。

リュウ 「折角で悪いが、今は警戒態勢でもある」
リュウ 「そろそろ本題に入らせてもらう」

俺はそう言って茶倉を離す。
さすがの茶倉もこれ以上は動かなかった。

リュウ 「あくまで暫定的だが、俺がこのチーム。『SCREAM SQUAD』のリーダー、リュウだ」
リュウ 「自己紹介はいらないと思うが、またよろしく頼む」

エレキ 「チーム名決めたんすね…へぇ、だったらこの際階級とか決めてみたら…」

FB 「まず鉄火が3等兵やな」

鉄火 「待てぃ! いい加減2等兵に上げてくれ!!」

セリカ 「あ、面白そう〜♪ だったら私は少尉位かな?」

茶倉 「当然私は大佐クラスよね♪」

ナイア 「あら、それだったらあまり戦闘に出るのはいただけないわね…大佐は重要な役職よ」

茶倉 「う…だったら赤い彗星はどうなるのよ!」

ナイア 「あれは論外」

何だか勝手に階級の話になっている。
大体、軍隊ではないぞ。

リュウ 「しかし…小隊を作るのもいいかもしれんな」

士朗 「小隊か…確かにな。ある程度の統率力を持った人間にリーダーを任せれば、もっとスムーズに動けるだろうからな」

アクティ 「だったら、士朗ちゃんは隊長格だね」

ガルマン 「ふむ、一理あるか…」

クール 「面白そうですね〜」

そして、俺たちは一転して小隊編成を行うのであった。



………。



ナイア 「まず、第1部隊は当然リュウ君がリーダーね」

リュウ 「了解だ」

ナイア 「編成はリュウ君に任せるから、自由に組み込んじゃって」

リュウ 「む…なら俺の部隊は、シアン、マゼンダに頼む」

シアン 「感激ですーーー!! 私、リュウ様のために誠心誠意お仕えしますわーーー!!」

マゼンダ 「ま、下手なリーダーに当たるよりかはずっといいわね」

このふたりを選んだ理由はふたつ。
機体のバランスが2機で丁度いいこと。
もうひとつは、無茶が少ないことだ。

リュウ (俺が無茶をするだけに、このふたりがいれば返ってバランスが取れるだろう)
リュウ 「次の部隊は、茶倉…お前に任せる」

茶倉 「当然ね、で部下は?」

セリカ 「部下…?」

茶倉のマジ発言にセリカが眉を寄せるが今は気にしない。
とりあえず、俺の希望を挙げる。

リュウ 「彩葉、及びセリカに任せる」

セリカ 「ええーーー!? 私が茶倉とーーー!?」

予想通り、思いっきり嫌がるセリカ。
逆に茶倉はしてやったりと言わんばかりにほくそ笑んでいた。

茶倉 「まぁ、いざって時に頼りになるのは結局私なのよね〜あ〜ん! さすがリュウ! わかってるわぁ〜」

彩葉 「あ、あはは…私は何故?」

リュウ 「頼むぞふたりとも、茶倉の暴走を止められるのは現状お前たちだけだ」

彩葉 「…あ、あはは」

セリカ 「なるほど…よし、任せてっ」

俺は茶倉に聞こえないよう、ふたりに呟いた。
さて、次の部隊は…。

リュウ 「士朗、頼むぞ」

士朗 「いいだろう、誰をつける?」

アクティ 「あの、志願しちゃ駄目ですか〜?」

アクティが控えめにそう言う。
すると俺は気にした風もなく。

リュウ 「ああ、好きにしろ…元々組み込むつもりだった」

アクティ 「やったぁ! 私も一緒だよ士朗ちゃん」

士朗 「…で、あとひとりは?」

リュウ 「クール、頼めるか?」

クール 「は〜い、了解で〜す」

士朗 「? クールはパイロットだったのか?」

クール 「まぁ、一応は…今までは機体がなかったですけど、今度からは戦闘に参加できますよ」

リュウ 「クールの通信能力や索敵能力は評価できる、役に立つはずだ」

士朗 「わかった、任せろ」

これで残りは3人。
強制的にメンバーは決まったが…。

鉄火 (俺だ! 俺がリーダーに違いない!)
鉄火 (きっと俺にはリーダーになる素質があったんだ!)

エレキ (ま、俺じゃないだろうな)

ガルマン 「……」

リュウ 「エレキ、任せるぞ」

エレキ 「ほ〜らやっぱり…って、俺っすか!?」

予想外にエレキは驚く。
少なくとも、俺の見る目は間違ってないと思うが。

リュウ 「お前は以前の戦いで十分に戦果を挙げている」
リュウ 「リーダーを勤めるのに、不備な点はないと思うが?」

エレキ 「いや、でもガルマン少佐だっているのに…」

ガルマン 「いや、俺も異存はない。前回の戦いでエレキの力は見せてもらった」
ガルマン 「あのジェド大尉を倒した実力は、十分に評価できる」
ガルマン 「これから、よろしく頼む」

そう言って、ガルマンはエレキに握手を求める。
エレキは実感がないのか、ややためらいがちにガルマンの手を取った。

鉄火 「…結局、俺は3等兵なわけね」

FB 「まぁ、当然やな」

ナイア 「…さて、編成が終わったところで、今度はメカニックから言わせてもらうわ」
ナイア 「とりあえず、チェックをしたい機体がいくつかあるから、言っておくわね」
ナイア 「まず、ACT、んでxenon、後はAurora、R2、R3よ」

リュウ 「む…?」

それでは第1小隊が全く動けないということか。
第3小隊も同様だな。

ナイア 「今はジルチと孔雀がかかりつけで整備してくれてるけど、まだ時間がかかりそうなのよ」
ナイア 「特に、ACTはまるで別の機体になるわよ」

アクティ 「ええっ?」

ほう、あのACTがな…以前は意味不明だと言っていたが。

ナイア 「クール君の情報でACTの機体が換装型ということがわかったの」
ナイア 「それも飛び切り性能の高い、ね」
ナイア 「さすがは元Vメンバー、ありがたい情報だったわ」

クール 「お役に立てれば何より、です」

そう言ってクールは笑顔で敬礼をする。
なるほど、確かにACTはVの機体だったな。

ナイア 「xenonは人工知能統制プログラムシステムボードを積み込むんだけど…」

FB 「ちょ、ちょい待ち! その名前は長すぎや!」

ナイア 「え、そう?」

ナイアはそうでもないようだが、全員が一致して頷く。
仕方なく、ナイアは考える。

ナイア 「じゃ、じゃあAIBとでもつけましょうか?」

FB 「偉い短縮したな…しかも間はぶいとるし」
FB 「まぁ、言いやすいからええやろ、以後はそれな」

全員が頷く。
ナイアはやや不機嫌だったが。

ナイア 「すでにAbyssとAuroraには積んでいるから、後はACT、xenonだけよ」
ナイア 「R2と3は微調整をするだけだから、すぐにでも出られるようになるわ」

マゼンダ 「…ひとつ聞いていい?」

マゼンダが真面目な顔をしてナイアに尋ねる。
シアンは不思議そうな顔でそれを見ていた。

マゼンダ 「R2の隠された機能について知りたいんだけど、わからない?」

ナイア 「え…あれって、隠された機能なんてあるの!?」

嬉しそうにナイアは反応する。
よっぽどいじりたいらしいな。

シアン 「HYPERモードですわ…R3にも搭載されてますけど」
シアン 「人為的に発動させることは無理ですわ…あればかりはパイロットの力で引き出すしかありません」

ナイア 「ハ、HYPERモードって、いかにも強そうな」

鉄火 「俺のこの手が…」

FB 「真っ赤に燃える…」
FB 「って、違うやろが!!」

ベシィ!

またもFBのツッコミが決まる。
俺はそれを無視してシアンに聞く。

リュウ 「そのモードはどう言う物なんだ? GENOCIDEが見せたような…」

シアン 「残念ながら、そこまでのパワーは出ません」
シアン 「あの機体は、私たちの機体スペックをはるかに超越しています」
シアン 「倒せる機体など、存在しません」

マゼンダ 「………」

全員が沈黙する。
GENOCIDEは更に…か。
機体のスペックで敵わないなら、パイロットの腕でカバーするしかない、か。

ナイア 「まぁ、Rの方は調べておくわ。わかったら教えてあげる」

マゼンダ 「…わかった」

シアン 「……」

茶倉 (…GENOCIDE、か。どれほどの機体なのかしらね)
茶倉 (リュウは、まだ気づいていないんでしょうね)
茶倉 (自分の中に眠る、大きな力を)
茶倉 (私と同じ力…それに気づけば、リュウはもっと強くなる)
茶倉 (今まで見せてきたリュウの力は、片鱗でしかないのよ)

リュウ (エリカ…必ず助けてみせる!)

俺は新たな決意を胸に、打倒GENOCIDEを心に誓う。
そして、戦いの時は、刻一刻と迫っていた。



…To be continued




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