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beatmaniaUDX The ANOTHER Story substream


7th STAGE 『Never Give Up!!』




『惑星5.8.8. HORIZON・医務室』


エリカ 「…う」

? 「あら、目が覚めた?」

私は体の痛みを感じつつも、生きているのだと言うことを確認する。
あの時…私は。

エリカ 「……? ここは?」

私は首だけを動かし、状況を把握しようとする。
場所は医務室のようだが、見たことがない。
ただ、私の側で優しそうに笑う女の姿が、妙に私の頭を痛めた。

エリカ 「…誰、あなたは?」

女 「…私? 私は…セリカ」
セリカ 「…あなたの、妹だよ」

エリカ 「!? い、もうと…?」

突然、彼女は驚愕の事実を私に告げてくる。
私に妹などいるはずが無い、私の記憶には彼女は存在しない。
なのに、彼女は悲しそうな顔をし、『妹』だと私に告げたのだ。

エリカ 「…何を馬鹿なことを、私には家族はいないわ」

セリカ 「うん、知ってる…記憶を消されたんでしょ?」

エリカ 「え…?」

私は彼女…セリカの言葉に戸惑うばかりだった。
私は…一体、何なの?
何故、こうも頭痛がする?
彼女の言葉、表情、感情…全てが私の頭を刺激する。
この痛みは、何?

エリカ 「ぅ…っ!」

セリカ 「大丈夫、姉さん!?」

エリカ 「触るな!!」

ドンッ!!

セリカ 「きゃっ!」

ズシャ!

私は、心配して近づいてきたセリカを突き飛ばした。
不意に突き飛ばされたセリカは、勢い余って彼女は転倒し、床に尻餅を着く。
そんな彼女を気にも留めず、私は両手で頭を抱え、ただ、痛みに耐えるだけだった。

セリカ 「…姉、さん」

ウィィィィ…

セリカが床に尻を着いたまま、私のことを悲しそうに見上げる。
そんな中、扉が開き、ひとりの男が入ってきた。
そして、私の状態を見てか、少し安心したような顔で…

リュウ 「…エリカ、目が覚めたのか」

セリカ 「リュウ!? ダメよまだ動いちゃ! あなたも傷はまだ…」

彼女は『リュウ』と呼ばれた男をそう言って止めようとするが、男は構わず私の方に近づいてきた。
そうだ、こいつだ…私の中に入り込んでくる奴。
こいつのせいで…私は!

エリカ 「っ!!」

リュウ 「俺が憎いか?」

エリカ 「!?」

私はリュウを強く睨みつけた。
そんな私に対し、リュウはやや強い口調で返す。
私には、リュウの発した言葉の意味が、わからなかった。
憎い…? そんな感情はよくわからない…
ただ、こいつがいると、とても痛い。
そして、とても苦しい。

リュウ 「…俺のことを忘れてしまったのは、仕方が無いことだ」
リュウ 「だが、もし俺を覚えていて、そして憎んでいるのなら、俺を殺すがいい」

セリカ 「!? リュウ…何を言って」

ス…

リュウはセリカの前に右手を出し、前に出るなと指示する。
リュウの目は真剣そのもの、本当に殺されても構わないという意思が見て取れた。

エリカ 「…別に、憎いとか、そんな気持ちは無い」
エリカ 「ただ、お前がいると、頭が痛む!」
エリカ 「何なんだお前は!? 何で私の中に入ってくる!?」
エリカ 「何で…! お前のことを考えると頭が痛くなるんだ!?」

私はベッドの上からリュウの襟首に掴みかかろうとした。
だが、力が入りもせず、私の手はリュウの腹の辺りの服を握る事くらいしか出来なかった。

セリカ 「姉さん…」

リュウ 「…もう、いい」

エリカ 「…え?」

リュウは今度は優しい声でそう言った。
そして、リュウは私の手を握り、服を掴んでいた私の手を剥がす。
リュウはそのまま私の手を握ったまま、近くの椅子に座った。
そして、悲しげな声でゆっくりと語る。

リュウ 「もう、何も考えるな」
リュウ 「お前は休め、体を治せ」
リュウ 「俺はリュウ…『SCREAM SQUAD』のリーダーだ」
リュウ 「こっちは、セリカ。同じグループのメンバーで…お前の、妹だ」
リュウ 「ちなみに、ここは俺たちの母艦『HORIZON』の艦内だ」
リュウ 「何か困ったことがあれば、すぐにここのボタンを押してコールしろ」
リュウ 「できるだけ、俺も側にいる」

リュウはベッドの枕元にあるボタンを指差し、優しく微笑む。

エリカ 「……」

私は何も言わなかった。
体を休める…体力が戻らないことには何もできそうにないか。
体も、頭も痛む…でも、心が熱い。

セリカ 「リュウ! あなたも休むの! あなただって、まだ治ってないんだから…」

セリカはそう言ってリュウの腕を掴む。
だが、リュウは軽く笑い。

リュウ 「…俺なら大丈夫だ、エリカに比べれば傷は浅い」
リュウ 「それよりも、あの娘をここに呼んでやってくれ」

セリカ 「あの娘って…あっ、そうだね」

女は何かを理解したようですぐに部屋を出て行った。
一体、誰を呼びに行ったのか…

エリカ 「………」

リュウ 「今は、とにかく休め…」

そう言ってリュウはただ椅子に腰掛けて私を見ていた。
何故か、心地よく感じる…気が付くと、私はとても疲れてきた。
体をベッドに預け、私は横になる。
すると、リュウは布団を私に被せ、優しく頭を撫でた。
その時のリュウの表情は、とても…私を安らかにしてくれた。
そのまま、私はしばらく、横になって休むことにした……



………。
……。
…。



ウィィィィ…

リュウ 「む…来たか」

5分ほど経った所で、扉が開く。
俺が扉の方を見ると、そこから4人の少女が入ってきた…
……4人?

エリカ 「…あ」

イェロゥ 「エリカ、さん…」

マゼンダ 「……」
シアン 「………」

セリカ 「連れて来たよ」

セリカはそう言って、俺を見た。
何故、3人まとめてなのかはあえて聞かないことにしたが、まぁいいだろう。
とりあえず、イェロゥがまず口を開いた。

イェロゥ 「エリカさん、よくご無事で」

エリカはイエロゥの姿を見て、安心したような顔をした。
今のエリカがこんな表情をするとは…余程の信頼を置いているということか。
イエロゥもまた、エリカの無事な姿を見て嬉しそうな顔をした。
そんな彼女の控えめな表情を見て、俺はふと…前の艦長を思い出した。

リュウ (…似ている、か? あくまで雰囲気だが…)

エリカ 「イェロゥ…あなたも、無事だったのね」

イェロゥ 「はい…私は怪我もほとんど無かったので」
イェロゥ 「ですが、今は私も捕虜です、もう…自由には動けません」

エリカ 「!? 捕虜ですって…! うっ…」

イエロゥの言葉を受けてか、エリカは体を激しく動かし、身体の痛みに呻いた。

マゼンダ 「あんまり無理しないでよ? 下手に動いて怪我増やされたら、かえって手間がかかるわ」

エリカ 「マゼンダ…さぞ満足でしょうね。寝返ったあなたは自由、私たちは捕虜…」

エリカは複雑そうな顔をしながらも、そう言う。
マゼンダは特に感情も込めずにサラリと言葉を返す。

マゼンダ 「…そうね、確かに満足だわ、あんたから比べたら、こっちの方が全然楽だもの」

イェロゥ 「………」

イェロゥは無表情だった。
何かを考えているようにも見えるが、言葉が出ることは無かった。

エリカ 「…シアン、あなたも同じ意見かしら?」

エリカはシアンを見てそう尋ねる。
すると、シアンも特に感情を込めず、淡々と言い放った。

シアン 「…そうですわね、マゼンダの言い方はともかく、こちらの方が私たちにとっては良い場所ですわ」
シアン 「何にも縛られず、自分で意思を持ち、自分で決定権を得る」
シアン 「…ここに来て、私たちは『自分』と言う物を知ることが出来ましたわ」

イェロゥ 「…自分」

エリカ 「ふん…居場所なんて、私には意味が無いわ」
エリカ 「ただ、そこにいて…ただ戦うだけ」

イェロゥ 「…それで、エリカさんはいいのですか?」

その場の全員が注目し、驚く。
エリカに対して放たれた言葉は誰も予想していない少女から放たれたのだから…

エリカ 「…イェロゥ?」

イェロゥ 「…私の本音を言います」
イェロゥ 「私は、エリカさんには『幸せ』になって欲しい」
イェロゥ 「そのためなら、私は裏切りでも何でもやってみせます」

イェロゥは真剣な顔でそう言う。
エリカはそんなイェロゥの表情を初めて見たのか、戸惑っているようだった。

エリカ 「…何を言っているのよ、幸せ…だなんて、私には必要ない物だわ」

イェロゥ 「…その言葉は失礼ですが否定させていただきます、あなたはそれを欲するべきです」
イェロゥ 「特に、あなたの心を乱す物、それを無くすのなら、それしか方法はありません」
イェロゥ 「あなたの心には、リュウさんがいますから」

その言葉を聞いて、戸惑いの表情を見せ、エリカは頭を右手で抱える。
何かが引っかかっているのだろう、だがそれが出てくることは、恐らくもう無い。
自分でもそれがわかっている…だからエリカは不安なんだ。

リュウ 「…エリカ、お前はどうしたい?」

エリカ 「…え?」

エリカは、何もわからない…そんな表情をしていた。
まるで子供の様な、不安な表情。
どうしていいかわからず、ただ不安を募らせ、ひとりで悩む。
俺は、そんなエリカを放っておけるはずも無かった。

リュウ 「…エリカ、お前はここにいろ」

エリカ 「……」

イェロゥ 「…私も、同じ意見です」

マゼンダ 「…いいんじゃないの? 元々ここが居場所だって言うんだし」

シアン 「そうですわね、少なくともここを出たところでもう帰る場所はありませんわ」

セリカ以外のその場全員が同意した。
セリカは…言葉にせずとも、同意しているだろうが。
だが、エリカは空笑いを浮かべ、虚声を放った。

エリカ 「…そんなことはない、私たちがGiudeccaへ帰れば、再びお前たちに牙を向けられる」
エリカ 「今度は確実にお前たちを倒せる…!」

本心かどうかはわからないが、エリカは強い意志を込めてそう言った。
もはや、そうすることが拠り所なのかもしれない…
だが、あっさりとマゼンダはそれを否定する。

マゼンダ 「無理ね、Giudeccaは私たちが倒す、だからあなたの帰る所は無い…って言うか無くなるの」
マゼンダ 「だから、今の内に見限っておきなさい…どうせ、未練なんて無いでしょ?」

マゼンダが軽くそう言うと、エリカは本当に未練など無いのか、どうとも言えない表情をして考えていた。

セリカ 「…ゆっくり、考えれば良いと思うよ?」
セリカ 「姉さんは、私たちの大切な『家族』なんだから…」

エリカ 「…家族」

リュウ 「ああ、家族だ。トランたちと一緒に戦った俺たちは、紛れもなく…な」

俺はかつての艦長、『トラン』の名を出し、セリカに同意する。
エリカは何かしら反応を見せるかとも思ったが、その期待は薄そうだった。
俺はエリカを最後に一瞥し、部屋を出た。
俺の背中を見てか、セリカも同じ様に部屋を出た。



………。



マゼンダ 「…まぁ、私たちはまだここに来たばっかりだし、あんたほどあいつ等に信用されてもいない」
マゼンダ 「だけど、少なくともタッシュに比べたら雲泥の差ね、あいつに付く位なら、こっちにいた方が絶対マシよ」

シアン 「同感ですわね…あんな司令官の下で働く位なら、断! 然! リュウ様の御傍ですわ〜!!」

シアン姉さんはそう言って拳を握りこんで強く主張する。
全く…何でそこまで入れ込むのか……

エリカ 「……」

イェロゥ 「…時間は、もういくらでもあります、好きな時間悩んで、好きな時に決断してください」
イェロゥ 「私は…どこまでもあなたの傍に居続けます」



………。
……。
…。



ナイア 「…はぁ」

ジルチ 「どうだ? Auroraは直りそうか?」

ナイア 「…GENOCIDEのパーツを流用すれば、少なくとも前以上の性能で復活も可能だわ」
ナイア 「でも、はっきり言って私にも未知の素材だけに、どんな反応が出るかわからない」
ナイア 「特に、ジェネレータ関係は蓋を開けたら、苦笑い…5倍所の騒ぎじゃないわね」
ナイア 「最大出力はAuroraの約573%…持続時間はほぼ永久機関」

ジルチ 「げ…マジかよ?」

ナイア 「もし、これを積むとしたら…これがAuroraにとってどんな影響を出すのか」

私は正直戸惑っていた。
GENOCIDEに搭載されているジェネレータは、宇宙が持つ『エネルギー』を吸収し、無尽蔵に動力を生み出すことの出来る永久機関。
当然、GENOCIDEにはそれをコントロールするAIBが搭載され、そのあまりあるパワーを制御していた。
だけど、Auroraにはそれが無い…今のAIBじゃこんな大きすぎる機関、扱えるのだろうか?
最悪、爆発もありえる…

ジルチ 「装甲面を張り替えるだけで相当違うな…あっちの素材はまるで別モンだぜ」

ナイア 「軽いし、強い、おまけに柔軟性、耐弾性、耐熱性、加工もしやすいと来た…反則物ね」
ナイア 「一体、向こうはどんな資源を持ってるのか…」

考えれば考えるほどオーバーテクノロジー…理論的に答えは導き出せても、とても信じられないものだ。
私たち人類の歴史で、これほどの装甲素材や機関は例に無い。
逆に考えると、これほどのテクノロジーを有しながら、何故今まで世に出てこなかったのか?
それとも、そうできなかった理由があるのか?
考えても答えは出てこない…今は、目の前の危機をどうにかしないと。

孔雀 「…敵さんもそろそろ本腰に入り始めた感じだな、Giudecca、EDEN、どっちも俺等が目の敵って感じだ」

ナイア 「そうね…小部隊とはいえ、今まで生きてきたんだし、それなりの敵として認められているとは思うわ」
ナイア (とはいえ、Giudeccaは未だに謎が多い…そもそも、何が目的なのか? エリカに聞いても答えは出てこないでしょうね…)

私はそんなことを考え、まだ修理を終えていない機体を見に行く。
敵は待ってくれない、すぐにでも対処できる状況を作らないと…



………。
……。
…。



エレキ 「…どうっすかね?」

茶倉 「まぁまぁね…あんたにしては上出来よ」

エレキ 「そうっすか、それなら良かったっすよ」

そう言ってエレキは笑いながらその場を後にする。
私はエレキに頼んで、敵のデータを入手してもらっていた。
何故クールに頼まないかって? エレキにはエレキにしかわからないこともあるからよ…

茶倉 (やっぱり…EDENの部隊は妙ね、明らかに前の戦いではGENOCIDEの位置を確認して攻撃を仕掛けてきた感じだわ)
茶倉 (D2Rにカメラを着けて録画してみたけど、奴等の動きは明らかにこちらを消耗…と言うか分断する感じ)
茶倉 (こんな動きができるのだとしたら、相当な司令官が着いていると見るべきね…ホルスにも一度話を聞いた方がいいかもしれないわ)

ホルス 「ほう、前の戦いの記録か…この速度、D2Rの航行モードか」

茶倉 「!? ホルス…これだけで見抜くなんてさすがね」

私は一瞬驚くも、すぐに笑ってそう言う。
ホルスはさも当然と言ったような顔で軽く言う。

ホルス 「この速度域で航行できる機体は限られている、単純に考えれば誰でも予想は着く」
ホルス 「それとも、お前にはわからんのか?」

茶倉 「冗談…わかって当たり前よ」

私がそう言うと、ホルスは笑う。
そして、ホルスは記録を見ながら、何やら懐かしむような顔をした。

ホルス 「…懐かしいものだな、この部隊展開。オシリスの得意な手口だ」

茶倉 「…オシリス?」

ホルス 「…EDENの総大将だ、私のかつての戦友でもある」
ホルス 「パイロットとしての腕も超一流だが、そのカリスマはかつてのVでも相当な物だった」
ホルス 「今回の発起もまさしくオシリスが画策したもの、そして本気で私たちを倒すと言う意思表示でもあるのだろう」

ホルスはまるで楽しみだ…と言うような表情をしていた。
どうにもこの手の手合いは戦いを楽しむ傾向なようね…まぁ気持ちはわかるけど。

茶倉 「…で? そのオシリスとか言う奴の手口は?」

ホルス 「…いつものことだ、最小限の被害で最大限のメリットを得る」
ホルス 「奴はGiudeccaとか言う組織のことを知っているのだろう、その上で漁夫の利を得る…ということだろうな」
ホルス 「…こちらには当然、二正面作戦等できるわけがない。単純に数で攻められれば負けは必至だろう」

茶倉 「…冗談じゃないわ、烏合の集がいくら集まった所で、私の撃墜スコアが上がるだけよ」
茶倉 「相手が1万で来るなら、こっちはひとり1000機撃墜すれば良い話」
茶倉 「それとも、そんな自信は無いのかしら?」

私はわざとそう言ってやると、ホルスはさも面白いと言ったように口に出して笑う。
そして、軽く言い放った。

ホルス 「ククク…面白い、なら答えは次の戦場で見せてやろう」

そう言って本当に楽しそうにその場を去っていく。
やれやれ…自信ありか、さすがと言うべきか、通常の人間であれだけの腕は中々見れないでしょうね。



………。
……。
…。



鉄火 「へい、お待ち! チャーハン定食だぜ!!」

彩葉 「わぁ、いつもありがとう♪ 鉄火君」

クール 「やっぱり、鉄火さんの作るご飯は美味しいですよ!」

FB 「まぁ、本来はこっちが本職やからな…当たり前っちゃぁ当たり前や」

FBさんはそう言って、ワサビを丸かじりする…う、いつ見ても辛そう。(汗)
私はすぐに自身のチャーハンを見直し、口に運ぶ。
うん…やっぱり美味しい。コショウが利いてるし、焼き具合も凄くいい。

ガルマン 「む…皆もここだったか」

クール 「あ、ガルマンさん! 一緒に食べましょうよ〜! 今日は中華ですよ!」

ガルマン 「ああ、ならいただこうか…俺は」

鉄火 「餃子と天津飯でいいか?」

ガルマン 「…!? ああ、よくわかるな…」

鉄火君は、ガルマンさんが言う前にメニューを言い放った。
その場の皆が凄いと思ったのか、鉄火君に注目する。
すると、少し得意そうに鉄火君は鼻をすすり。

鉄火 「へへっ、これでもコックだからな! 全員の好きな物は大体覚えてる!」
鉄火 「ガルマンさんは、中華なら大抵、天津と餃子のセットだ…前に中華を出してから結構経つし、また同じかな…と思ったのさ」

ガルマン 「ふむ、大した洞察力だな…感服した」

FB 「後は、もう少し戦場でもええ働きすることやな…」

鉄火 「やかましい! 俺はこっちが本職だから我慢してくれ!!」

鉄火君はそう言いながら、天津飯と餃子を同時に作り始める。
こういう所は本当に器用…これでちゃんと美味しい料理が出てくるんだから、本当に凄い。



………。
……。
…。



アクティ 「…あれ? 違ったかな」

士朗 「そこは、こうするといい…ACTのLOWモードは近距離主体、バランスも大事だが、火力を生かすために機動性を高めるといいだろう」

アクティ 「うん、わかった。それじゃそうするね♪」

そう言ってアクティは嬉しそうにACTのAIBをアセンブルする。
ACTは2種類のタイプに装備を切り替えるため、AIBにも同じ様にアセンブルしていかなければならない。
前の戦闘でHIGHモードは大体わかったようだが、LOWモードはまだ未体験だ。
実戦とテストでは明らかに違う…できるなら早い段階で終わらせておきたいものだな。

士朗 「よし、準備ができたなら、訓練だ…今回はシュミレータで訓練する」
士朗 「これはACTのコクピットと同じ物をシュミレータにした物だから、違和感はないはずだ」

ACTのコクピット周りは、他の機体とは明らかに違う物だった。
元々、ナイアが自作したものではないし、仕方ない物だが、ナイアはすぐにACT用のシュミレータも作り上げてしまった。
相変わらずというか、仕事は早い。

アクティ 「よしっ、頑張るよ!」

アクティはシュミレータに乗り込み、LOWモードで仮想空間にダイブする。
訓練の様子は別のモニターでも確認できるので俺はそちらに眼を向ける。
相手は汎用の人型が10機、全員がライフルとブレードを装備か。

アクティ 「!!」

アクティはすぐに相手を捉え、一気に加速する。
さすがに突然の加速に自身が驚いたのか、攻撃のタイミングを誤った。

士朗 「落ち着けアクティ、相手を良く見て捉えろ」

アクティ 『うんっ、わかったよ!』

訓練とはいえ、相手は待ってはくれない。
敵機から放たれる無数のライフルがいくつかACTに着弾し、ACTの動きが鈍くなる。

士朗 「フィールドを展開しろ、LOWでもHIGHと同様にLABは搭載されている」

アクティ 『うんっ、LAB起動!』

アクティはLABを展開し、相手のライフルを全て無力化する。
大丈夫と確信を得たのか、アクティはすぐに相手の頭上にまで突進し、そこから初の一撃を叩き込む。

アクティ 『必! 殺! アクティーーーーーーーー!! キィィィィィィィィーーーーーーーーーーーック!!!!』

ドッガァァァァンッ!!

アクティが叫ぶと同時、ACTの右足裏から強力なエネルギーが放出され、そのまま飛び蹴りをお見舞いした。
近距離主体とは聞いていたが、まさか近接主体だったとは…
確かに、こっちの方がある意味無駄な武装もいらないな…

ドォォォォンッ!!

アクティは一機を見事撃墜し、次の相手もすぐに捉えた。

アクティ 「爆・砕! アクティ・クラッシャーーーーーー!!」

またしてもアクティは気合満点の叫びと同時に右拳を振り抜く。
キックと同様に右拳からもエネルギーが放出され、相手を打ち砕いた。
斬・突よりも、打・砕に重点を置いた装備か…細身な機体だが、威力は十分のようだな。
そんな調子で、何度かアクティの叫びを聞きながら訓練は終了した。



………。



アクティ 「う〜〜〜〜んっ! 今日はどうだった?」

アクティはストレス解消!と言わんばかりにいい笑顔だった。
俺はそんな笑顔相手に冷静に答える。

士朗 「40点だな…」

アクティ 「ガーーーンッ!? 何で!? 全機撃墜したよ!?」

士朗 「…最初の被弾は大目に見ても、後のは何だ? 叫んでいる暇があれば、相手をよく見ろ…」
士朗 「一機撃墜しても、すぐに他の機体がいる、余計なことに集中しないで敵に集中しろ」

アクティ 「うぅ…叫ぶのはお約束なのに」

アクティは哀しそうにガックリと項垂れる…
…そんなに叫びたかったのか。
ここまで落ち込まれると、さすがに悪い気までしてきた…

士朗 (だが、それもアクティのためだからな…)

アクティ 「わかってるよ…士朗ちゃんが私のためにそう言ってるって事位♪」

士朗 「………」

本当に、こいつは人の心が読めるのではないだろうか?

アクティ 「そんなことないもんっ、読めるのは士朗ちゃんのだけ♪」

そう言って、アクティはその場で踊り始める。
一体何が嬉しいのか、さっきの落ち込みようを忘れてしまう位の笑顔だった。

士朗 (やれやれ…)

もう、大分慣れてきたと思う。
アクティのこの笑顔も、空気も…
俺が今まで身を置いてきた環境が、消えてなくなる位に…

士朗 (! …ふ、いかんな。こんな時に、あいつの顔を思い出すとは)

アクティ 「? どうしたの…士朗ちゃん? 怖い顔、してるよ…」

アクティが心配そうな顔で俺を見ていた。
そうか…俺はそんな顔をしているのか。

士朗 (だとしたら、遠くないのかもしれんな…あいつとの再会は)
士朗 (………紗矢)





………………………。





『同時刻 Giudecca・司令室』


タッシュ 「そうか、わかった…」

ウィィィ…

私に報告に来た部下から私は結果を聞き、部下が部屋を出て行った所で私は確信を得る。

タッシュ 「ようやく…この時が来たか」
タッシュ 「短かったか…それとも長かったか」
タッシュ 「ここまでは全て予定通り…そして、ついに私の悲願が達成される!」

ガタッ!

私は椅子から立ち上がり、笑う。
全てはこの時のために! これより私がGiudecca、真の王となる!!





………………………。





『某時刻 惑星5.8.8. HORIZON・艦内』


キュィィィィ!! キュィィィィ!! キュィィィィ!!

リュウ 「!?」

しばらくの休息を取っていた中、突然艦内に警報をが鳴り響く。
どうやら敵が来たようだ…あれからまだロクに時間も経っていないと言うのに!

マゼンダ 「隊長! 敵が来たわよ! 相手はGiudecca!!」

リュウ 「了解だ! パイロットは全員に出撃命令!! 俺たちもすぐに行くぞ!」

マゼンダ 「エリカはどうするの? 出撃させる気?」

リュウ 「エリカは待機させる! どの道、機体も無いからな…」

俺がそう言うと、マゼンダは少し驚く。
だが、同時に納得もしたようだった。

マゼンダ 「…そうだったわね、もうGENOCIDEはバラしたんだっけ」
マゼンダ 「Auroraは…行けるの?」

リュウ 「…わからん、試運転もしていない」
リュウ 「最悪、爆発するとも言っていたな。遺書は書き忘れたが、まぁいいだろう」

マゼンダ (…いいのかよ!!)

マゼンダは半分呆れた顔をしたが、すぐに表情を変えて俺と一緒に走った。



………。
……。
…。



リュウ 「…さて、せめてここを乗り切るまでは持ってくれよ!」

Aurora 『システム、オールグリーン』
Aurora 『新たなジェネレータの搭載により、Auroraの最大出力はおよそ573%上昇しています』
Aurora 『ですが、同時にそれだけのエネルギーを扱えるかどうかは未知数』
Aurora 『現状では30%ほどの出力で動くのが最適と思われます』

Auroraの説明を受け、俺は宇宙空間で出力調整をする。
30%か…それだけでも以前の2倍近い出力が出ている、末恐ろしいな。

マゼンダ 『隊長! 敵が近づいてくるよ!! 数は把握してるわね?』

シアン 『艦隊が1!! ですが出撃機数は…1体!?』
シアン 『そんな…この機体、GENOCIDE!?』

リュウ 「何だと!?」

俺は通信を聞き驚く。
まさか、GENOCIDEは2機存在したと言うのか!?
だとしたら…この戦い、マズイことになりそうだな…



………。



ナイア 「敵の情報はあまりに少ない…まさか、2機目なんているとは…」

イエロゥ 「いませんよ、2機目は」

ナイア 「!? あなた…どうしてここに?」

突然、デッキに入ってきたのはイエロゥだった。
イエロゥはエリカと一緒に待機で、部屋にロックをかけておいたはずだけど…

イエロゥ 「…とある人物に開けてもらいました。協力する代わりに出してもらえるという条件で」

ナイア 「それが誰かは聞かないけど、協力してもらえるならありがたいわ!」
ナイア 「とはいえ…もうここには機体は載ってない。できることはないわね…」

イエロゥ 「…この艦には正式な艦長がいないと聞いていますが?」

ナイア 「ええ…そうだけど、って! あなたまさか!?」

私が驚愕してイエロゥを見ると、イエロゥは何の戸惑いも見せず、かつて『トラン』が座っていた席に座る。
その席は、かつての艦と同じ物をイメージし、作った物。
実質、その席に座る者はもういないと思いながらも、そこに作った席。
そこに…イエロゥは座ったのだ。

イエロゥ 「…! 精神感応システム。この艦はイメージだけで飛ばすことができるのですか」
イエロゥ 「なるほど、艦の統制プログラムと同調し、艦内全域をここで支配できる…」
イエロゥ 「…以前の艦長とAIは、余程の信頼を置かれていた証拠ですね」

そう言って、イエロゥは両手を艦長席の前にあるセンサーに置く。
イエロゥの両手と艦が同調し、『HORIZON』は真の力を引き出す。
だけど、すぐにイエロゥは呻き声をあげることになった。

イエロゥ 「うぅ…! くっ…!」

ナイア 「無理しないで!! 全ての統制を動かすのはあなたには無理よ!!」
ナイア 「そのシステムはあまりにも特別!! 普通の人間の脳では扱えないわ!!」

それでも、イエロゥは止めなかった。
全ての統制が無理なら、一部だけを動かし、効率化する。
彼女は私の予想を超えて、艦を的確に把握し始めたのだ。

イエロゥ 「艦内制御、エネルギー循環、迎撃システム、オールグリーン」
イエロゥ 「凄いですね、以前の艦長は…私よりも小さな体と年齢で、これら全てを同時に制御するなんて」
イエロゥ 「人間だったのですか? その少女は…」

ナイア 「ええ、そうよ…ちょっと人とは違う、ただの少女」
ナイア 「私たちにとって、一番大切な家族のひとり」

私は以前を思い出し、少し物思いに耽る。
そして、私は自分の頬をパチンと両手で叩き、気合を入れた。

ナイア 「よしっ! それじゃあイエロゥ! ここは任せるから!! 私は整備に専念するわ!!」
ナイア 「まだ、整備が終わっていない機体もあるし!!」

イエロゥ 「…任されました、が…過度の期待はしないでください」

ナイア 「いいのよ! 今は出来る子が最善のことをやればいいんだから!!」

私はそう言って走る。
今、ようやく『HORIZON』は主を得た。
予想外の出来事だけど、それもこのチームにはある意味普通。
前は予想外のことばかりだった…そんな中、私たちは駆け抜けてきたんだから!!



………。



イエロゥ 「………」

ナイアさんが部屋から出て、ここには私ひとりが残された。
私は、すぐに気を引き締め、全部隊に通達する。

イエロゥ 「全部隊に通達…敵の再確認を行います」



………。



リュウ 「!? イエロゥ…一体何故?」
マゼンダ 「姉さん…どういうつもりなの?」
シアン 「姉さん、それがあなたの選んだ道ですか…」

イエロゥ 『敵はGiudecca、母艦が1、出撃機数1、艦内にはおよそ100機ほど機数がいると思われます』
イエロゥ 『敵機はGENOCIDEに酷似していますが、恐らくは別の機体と思われます』
イエロゥ 『ですが、相当なスペックは予想できます、各機注意を』

リュウ 「全機! 聞いての通りだ!! 敵は1機だが油断するな!!」
リュウ 「以前のような大規模の攻撃も予想される! まずは俺の部隊で仕掛け、様子を見る!!」
リュウ 「他の部隊は後方で艦を守れ! 後の指示は艦長に任せる!!」

イエロゥ 『…了解しました、リュウさん』
イエロゥ 『皆さんの命、私が預かります』

リュウ 「頼む…よし! 行くぞマゼンダ、シアン!! 第1部隊、先行する!!」

マゼンダ 「了解!」
シアン 「了解ですわ!」

ギュゥゥンッ!!

俺は加速し、敵機に近づく。
目視で見える位まで近づくが、敵機は確かにGENOCIDEに酷似していた。
だが、GENOCIDEよりもやや武装が少なくも思える。
バックパックの大きさは特に差が大きく、あちらの方が相当軽量そうだ。
右手にはバスターライフルを持ち、左手には高出力ブレード。
基本的な装備はGENOCIDEと同じか…だが、パイロットは?

タッシュ 『マゼンダ、シアン、来たか』

マゼンダ 『!?』
シアン 『タッ…シュ!』

リュウ 「? 誰だそいつは…敵のパイロットか…」

俺たちがギリギリの射程圏内に入ったところで、敵から通信が入る。
俺たちは現在の位置で一旦待機し、少し様子を見ることにした。

タッシュ 『初めまして、私はタッシュ。君がリュウと言う人間かね?』

リュウ 「ああ、『SCREAM SQUAD』のリーダーを努めている」

タッシュ 『成る程、君がエリカの元想い人…と言うことか』

マゼンダ 『!? ってことは、やっぱりあんたエリカを騙して!!』

シアン 『私たちもですわ! 嘘を教えていたのですね!?』

タッシュの言葉にマゼンダとシアンは怒りを露にする。
タッシュはそんなマゼンダたちの反応を楽しんでいるのか、小さく笑う。

タッシュ 『クク…騙していたとは心外だな、作り変えたと言うべきだ』
タッシュ 『エリカの記憶を消し、Giudeccaのために新たな記憶を産み付けたのだ』
タッシュ 『そこには本当も嘘も無い、何も無い記憶の中に新たな記憶』
タッシュ 『それは現実であり、真実だ』

マゼンダ 『戯言を…! あんたの言葉はもういいわ!! ここであんたを倒して終わらせてやる!!』

シアン 『同感ですが…少し落ち着きなさいマゼンダ!! 敵の機体、生半可な物ではありませんわよ!?』

怒りを強く出すマゼンダ。
対して怒りながらも冷静に状況を把握するシアン。
やはり、このふたりは良い意味でコンビに向いている。
互いが互いの長所を理解しているからこそ、信頼が産まれる。
俺は、このふたりを補佐すればいい…それでこの部隊は最高の戦果を出すことが出来る。

リュウ (だが、この状況…果たして上手くいけるのか? 新艦長、頼むぞ!!)

タッシュ 『ククク…少しは成長したのかな? こっちにいる時はふたりともロクに打ち解けてはいなかったのに』
タッシュ 『まぁ、いい。私の目的は、Giudeccaの全てを制すること!』
タッシュ 『この完成された「GENOCIDE」…いや、「EXE」の力の前に、ひれ伏すが良い!!』


イエロゥ (『EXE』…? まさか、あれが…!)
イエロゥ 『リュウさん! 注意を!! あの機体は恐らくGENOCIDE同様の広範囲攻撃を所持しています!!』

リュウ 「!? 了解だ…ならばすぐにケリを着ける!! 指示は任せるぞ!!」

俺はそう言って機体を前進させる。
広範囲攻撃と言えども、準備には多少の時間はかかる!
展開する前に近づけばそれほど脅威ではない!!

マゼンダ 『隊長! 私が先行するわ!! 姉さんはフォローお願い!!』

シアン 『了解ですわ! 隊長、妹の後方からお願いいたします!!』

リュウ 「お前ら…了解だ! マゼンダ、油断するなよ!?」

マゼンダ 『任せなさいよ!! 覚悟しなさいタッシュ!!』

タッシュ 『やれやれ…機体の力を半分も出せていない半人前が、力を合わせたところで…』
タッシュ 『君たちの相手はこれで十分だ!!』

ギュゥン!! ギュアァッ!! ギュギュアアァァ!!

リュウ 「な、何!?」

突然、何も無い空間からエネルギー砲が放たれる。
先行したマゼンダは辛うじて直撃を避け、俺は急ブレーキをして回避する。
後方のシアンも被弾はしなかったようだ。

イエロゥ 『!? 敵機出現!! 空間転移です!! 機数は80!! これは…新型!?』

リュウ 「…そうか、敵は転移によって部隊を展開できる」
リュウ 「弾のみを転移させることも出来るのか!!」

タッシュ 『ふふふ…ほんの挨拶代わりだ、「R5」部隊! 掃討しろ!!』

R5 『………』

敵機は艦を中心に部隊を展開する。
この統制されすぎている展開…敵は人工知能か!

イエロゥ 『各部隊、新型の掃討を! 各部隊の隊長は各々の判断で動いてください』


茶倉 『さぁ〜て、派手にやるか!』

セリカ 『あんまり無理しないでよ!?』

彩葉 『言っても聞かないと思うけど…』(汗)


エレキ 『よしっ! 行くぞふたりとも!!』

鉄火 『うっしゃぁ! やったるぜぇ!!』

FB 『張り切りすぎて怪我すんなや?』

アクティ (士朗ちゃん、私頑張るから…安心してね!)
アクティ 『ACT…LOWモード行くよ!!』


ホルス (さて、この状況で奴はどう動くか…)

ガルマン 『少…ホルスさん!! 我々もすぐに!』

クール 『先行部隊はもう戦闘していますよ!! 早く!』

ホルス 「…我々はここより、3時の方向に移動する」

俺は冷静にそう言い放つ。
だが、ふたりは俺の意思が読み取れないのか、反論する。

ガルマン 『!? この状況で他に優先すべきことがあるのですか?』

クール 『何も無い宙域ですよ!? 交戦しなくて良いんですか!?』

ホルス 「…新型とはいえ80機程度であれば、先行の3部隊だけでも叩ける」
ホルス 「それよりも、奴等の部隊展開…転移装置を主とするならば、艦が手薄になった所を狙うことも容易」
ホルス 「ましてや、EDENがこの機に動かないとは限らん」
ホルス 「艦から少し距離を置いたところで、我々は待機! 万が一に備える!!」

ガルマン 『りょ、了解です…!』

クール 『…了解です』

ふたりはこの状況に頭が回っていないのか、遅からず納得したようだ。
冷静になれば、この状況は明らかに罠の可能性が高い。
仮に罠でないとしても、EDENの存在は軽視できん…ましてや、オシリスが相手ならば!

ホルス (むしろ確実に来ると読む…オシリスの性格を考えれば、恐らく確実に)



………。
……。
…。



ギュゥンッ!! ドガァッ! バガァンッ!!

マゼンダ 『くぅっ! こいつら、遠距離も近距離も万能にこなしてくる!!』
シアン 『恐らく、R2とR3の特性を併せ持っているタイプですわ!』
シアン 『R2とR3は本来試作機…思えば、このR5と言う量産型を作るための物なのだったのでしょうね』

リュウ 「…量産型か、ならば1機1機はそれほどの性能はないだろう」
リュウ 「後方の部隊もすぐに到着する! 俺たちはその間にEXEを足止めするぞ!!」

マゼンダ 『って、軽く言うけど…!!』

シアン 『まだ後70機以上もいますわ! すぐには…!!』

リュウ 「く…さすがにきついか! だが、猶予を許しては…!!」


タッシュ 「ククク…足止めで十分だ」
タッシュ 「EXEの力で、全てを滅ぼしてやろう…! この『世界破壊プログラム』でな!!」
タッシュ 「この力で、全世界を滅ぼし、Giudeccaによる新たな世界を作り上げる!」
タッシュ 「喜ぶが良い…お前たちはその最初の礎だ!!」


ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ!!!


リュウ 「!? ビットが展開した…!! 数は少なめだが…!!」

イェロゥ 『EXEより20機のビットが射出! 予想攻撃範囲は約周囲10km!!』
イェロゥ 『GENOCIDEに比べれば、小規模ですが、我々の部隊を殲滅するには十分すぎる攻撃能力です!』

マズイ…相手はエネルギーを小出しにしている所を見ると、GENOCIDEの時の様な時間切れは期待できんということだ。
あの力を制御できているとすると、俺たちは相当不利に…

Aurora 『問題ありません、リュウさん』

リュウ 「?」

Aurora 『機体の能力を50%まで引き上げれば、フィールド展開によりEXEの攻撃はほぼ90%カットできます』
Aurora 『稼動限界に到達するかは未知数ですが、賭ける価値はあるかと』

リュウ 「十分だ! Aurora、出力を引き上げろ!! これよりEXEに突撃をかける!!」

Aurora 『了解、出力上昇…35…40…45…50』
Aurora 『エネルギー安定度90%、不安要素はありますが、ほぼ問題なく動きます』

リュウ 「行くぞ、タッシューーー!!」

ギュゥンッ! ドバァァァァァンッ!!

Auroraはエネルギーを激しく燃焼させ、EXEに向かって突進する。
フィールドを展開し、軌道上のR5を全て体当たりで吹き飛ばし、一直線に距離を詰めた。

タッシュ 「! 生意気な!!」

ギュアアアアアアアアァァァァァァァァッ!! ババババババババババババババッ!!! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

EXEのビットは接近するAuroraに照準を合わせ、大量のエネルギーを放つ。
EXEから大出力のエネルギーキャノンがビットに向かって多数打ち出される。
それを受けたビットがエネルギーを吸収し、更に多方向に打ち出す。
GENOCIDEの時は出鱈目に全方向へ打ち出していたが、EXEの物は的確にこちらを狙っていた。
制御力を高めたせいか、威力は低い! これならばフィールドでカットできる!!

ギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!!

Aurora 『フィールド安定。ダメージは皆無…エネルギーバランスに少々揺らぎあり』
Aurora 『敵武装の火力に合わせ、出力調整…42%まで出力を低下させ、安定度を上げます』

Auroraはすぐに敵の攻撃に対して最良の調整を施す。
俺は急な調整に多少戸惑いながらも、機体を性制御する。
移動速度が低下したが、もう距離は詰まっている! 行くぞタッシュ!!

ブゥンッ!!

俺は右手に内蔵されているSphereブレードを伸ばし、現状の出力でEXEに切りかかる。
EXEは受けようとはせず、その場から後ろに退き、それを回避しようとした。

リュウ 「逃がすか! Aurora!!」

Aurora 『了解、出力47%まで上昇! 加速します』

ギュンッ!!

タッシュ 「ちぃっ! 図に乗るな!!」

ビィィィィンッ!!

互いのエネルギーブレードが交差し、互いの機体が弾かれた。
俺はすぐにブレードを構えなおし、追撃に入る。
タッシュもまた、こちらを見据え、ブレードを振ってきた。

ギィィンッ!! ビィンッ!!

お互い、ブレードで切り合う攻防が続いた。
タッシュはパイロットとしてもそれなりに強い、いいパイロットだ。
だが、俺や茶倉、ホルスに比べればそれほどの脅威は感じない。
この勝負、貰ったぞ!!

バァンッ!!

タッシュ 「!? 馬鹿な! 出力負けしていると言うのか!?」

リュウ 「機体の力に溺れるな! お前に俺は倒せん!!」

タッシュ 「くっ…貴様如きに私が舐められてたまるか!! この力で私は全てを滅ぼす!!」

リュウ 「そんなことを俺たちが許すか!!」

バァァンッ!!

俺はすぐにEXEのライフルも切り落とし、EXEは無防備になる。
ビットからの攻撃の中、Auroraはブレードを振り、EXEを追い詰めた。

マゼンダ 「よしっ! これなら行ける! 楽勝だ!!」

シアン 「こっちも、すぐに片付きますわ!!」

すでにR5部隊も、掃討されかかっていた。
所詮は作られたプログラムの元に動く、機械。
激戦を潜り抜けてきた俺たち相手には、大した敵ではなかったか…



………。



ホルス 「…弱すぎる、この程度か、Giudeccaは?」

ガルマン 『確かに…あれが最後の勢力だとすると…あまりに』

クール 『何か…おかしいですよね。こんなに楽なんて』

ホルス (そもそも、Giudeccaと言う組織集団自体、謎が多い)
ホルス (あれほどの技術力を擁しながら、戦力は小出しにするばかり…ほとんどゲリラ活動だ)
ホルス (その気になれば、転移装置や、高性能な量産機を大量に使い、数による制圧を図った方が明らかに楽)
ホルス (むしろ、それをやっていれば、今頃こちらは終わっていたはずだ)
ホルス (何を考えている? いや、それとも…何も考えていないのか? 考えられるとすれば…これは)



キュィィィィッ! キュィィィィッ! キュィィィィッ!!

突然、警報が鳴り響く。
HORIZONからの緊急通信だ。

イェロゥ 『3時の方向にEDENの部隊が出現! 戦艦12! 人型機数約1000!!』

ホルス 「やはり来たか! オシリス!! しかも俺のいる所にドンピシャとはな!!」

ガルマン 『ホルスさん、このことを予測した上で…?』

クール 『マズイですよ! こんな大艦隊!! とても捌けません!!』

確かに…絶望的な数だな。
茶倉相手に、啖呵を切った以上、やらぬわけにもいかんが…

ホルス (現実的には弾が持たんか! しかもオシリスが前面に出てくれば…!!)



………。



リュウ 「くっ! こんな時に狙ったようなタイミングで!!」

マゼンダ 『畜生! こっちもまだ残ってるのに!!』

シアン 『リュウ様! どうしますの!?』

R5部隊はそれほど残ってはいない…殲滅は時間の問題だが、艦の側にいるのはホルスの部隊のみ。
今ここでEXEを野放しにするわけにもいかん…!

タッシュ 「はっはっは! これも運命か! お前たちは世界に排除されることを望まれている!!」
タッシュ 「終わりだな! こちらも残りの戦力を全て出す!!」

ヒュヒュヒュンッ!!

イェロゥ 『!? 敵機増援!! R5が50機追加!?』

茶倉 「ちっ…! まだ増えるのか!!」

セリカ 「リュウ…!!」



絶望的な状況…
俺たちは、完全に数に追われていた。
もはや、これまでなのか? 世界は本当に俺たちの排除を望んでいるのか?
俺たちに…勝利は、あるのか?



リュウ 「諦めるものか! 俺たちは…生き残る!! この世界と共に!!」



…To be continued




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