閃光のALICE




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第24話 『それぞれのはじまり』







『7月21日 時刻12:13 東京都 某高等学校』


智樹 「……なんとか終業式にはこれたか」

成明 「お前らここ数日何をしていたんだ?」

蛍 「あはは……ちょっとね」

成明 「お前ら二人同時に4日も雲隠れしたんだ、ちょっとってことは無いだろう?」
成明 「まぁ俺には関係ないがな、ただ学校にはちゃんとこい。でないと変な噂が広がるだけだぞ」

智樹 「あ、ああ……気をつけるよ」

成明 「で……どこまで進んだ?」

智樹 「は? なにが?」

成明 「ふっ、とぼけるなよ……ヤッたんだろ?」

智樹「!? な……す、するかぁっ!!」

とりあえず落ち着きを取り戻した俺たちは久しぶりに家へと帰り眠りに着いた。
俺の家には俺の帰りを心配する者なんていないが蛍は大層家族に迷惑をかけたようだ。
いざ、学校に着てみたらその日は終業式、午前中で学校は終わっていたが蛍が弁当を用意してしまったがために俺たちは学校で昼飯を食べていた。

成明 「しかし、弁当を用意するとはなんというか……霧島嬢らしいな」

蛍 「し、暫く学校に来てなかったから忘れてたの」

智樹 「……まぁいいんじゃない? 久しぶりに中庭で食うのもオツだぜ?」

俺はそう言って購買で買ったパンを食べていた。
成明も今日ばかりはパンを買っており焼きソバパンを口に放り込んでいた。

智樹 「お前がパンって……なんか似合わないな……」

成明 「そうか? 偏見だろう?」

智樹 「うーん、どうもお前が弁当以外を食べる姿って見たことないせいかな?」

成明は一日とて弁当を欠かさず持ってきていた。
その完璧振りの裏には成明が自分で弁当を作っていることもある。
そりゃ自分で用意したら弁当忘れないわな。
しかし、金持ちの坊ちゃんであるこいつが焼きソバパンっていうのもどうだか……。

智樹 「考えてみればお前御曹司なんだよなぁ」

成明 「今更皮肉か?」

智樹 「まさか、全然そうは見えないなって思ってな」

なんのかんの言ってもこいつと俺は友達だし、今となっては無二の仲になっちまった。
こいつは変人だが、悪い奴じゃない。
日常生活にはこんな奴がいるのも悪くない。

智樹 「蛍、お前夏休みって予定あるのか?」

蛍 「予定? うーん、夏コミ位だけど……?」

成明 「なんだ? デートの誘いか?」

智樹 「違う違う! ただ聞いただけだ」

別に予定については特に他意はない。
ヨハンが無事立ち直ってくれたことでほぼあの事件の当事者たちは一応の平穏を取り戻すことが出来た。
壊滅したDOLL開発研究施設は研究員は全滅し、ヨハンがアルシャードさんを所長として推薦したが、アルシャードさんは頑なにそれを断った。
結果としてアソコは開発研究施設としての機能を完全に失ったこともあり放棄が決定。
つまり……もうDOLLは生まれないということだ。
生き残ったDOLLはアリスたちを含めて10名ちょっと。
マスターのいるDOLL以外は全てヨハンの管理下で少しずつ日常生活に浸透させるらしい。
そして当のヨハンだが、A&Pの社長が死亡したことによりヨハンが新たな社長となることが決定した。
社長の死は巧妙に隠蔽され、この時期でのヨハンの就任には周りからの揶揄も多かったようだがヨハンならやっていけるだろう。

成明 「そう言う智樹は予定はないのか?」

智樹 「うーん……これといった予定は……1個だけあるにはあるが……」

俺はふとある予定を思い出す。
今から三日後の予定なのだが俺はとある堅苦しい式に出ないといけなかったのだ。
その式というのは……。





……それは朝の事だった。


智樹 「うわ……新聞溜まってるわ……やれやれだぜ」

俺は暫く家を放置していたためポストには新聞が溜まっていた。
俺はギュウギュウ詰めの新聞を一つずつ取り出していく。
すると、ヒュルリと手紙が一通地面に落ちた。
茶色い封筒に入れられたそれを俺は拾い上げるとどこから来たものかと確認する。

智樹 「唐沢智樹様……俺宛か……あて先はヨハン?」

俺は新聞と一緒にその手紙を家の中に持っていくとリビングで手紙を開いた。
リビングには誰も居らず、普段なら俺より早く起きているイェスも今となってはそこにいない。
久しぶりの朝一人を満喫しつつも、どこか物足りない俺はその手紙に目を通した。

智樹 「……拝啓唐沢殿……ふむふむ……て、はぁぁぁっ!?」

俺は封を切り、その内容を見た時だった。
これは吹かざるを得ない……そういった衝撃を受けるのだった。

『7月24日、A&P社長就任式、是非ご出席ください』

智樹 「なんで一般人の俺の家にくるんだよっ!?」

ドタドタドタドタッ!

ティアル 「な、何々!? どうしたの智樹!?」
アリス 「智樹……?」
ヴィーダ 「お兄たまーーっ! 火事かーーっ!?」
イェス 「ご主人様ーっ!?」

上から一斉に四人が降りてくる。
アリス以外は動転しており、テンヤワンヤだった。

智樹 「あ……すまない。落ち着いてくれ」

動転したまま一斉にリビングへと降りてくる四人を俺は慌てて宥める。
どうも最近皆ちょっとしたことに過敏になっている。(特にティアルとヴィーダ)
アルドが与えた影響は俺たちにもうすでにたった1週間前には当たり前だった生活を嘘のように消し去ってくれた。

ティアル 「で、一体どうしたの?」

智樹 「手紙、ヨハンから」

俺は一通り目を通した手紙をティアルに渡す。
イェスがイェスで無くなった今となっては家のDOLLたちのまとめ役はすっかりティアルが板についてきた。
イェスは本能的になのかティアルを毛嫌っているようで、以前とは変わり部屋割りがアリスティアルとヴィーダイェスの部屋となった。

ティアル 「ふーん……社長就任式典ねぇ……これ三日後じゃない」

イェス 「シャチョーシュウニンシキテン? なにそれ?」

智樹 「まぁ、言ってみればパーティだな、お偉いさんたちの」

そうはっきり言って俺のような一般人がまず参加することの無いパーティだ。

ティアル 「で、どうするの? 行くの?」

智樹 「そりゃいかない訳にはいかないだろう……俺たちの立場ってのもある」

アリス 「ヨハンは智樹が好きだからな、行ってやれば喜ぶだろう」

智樹 「ヨ、ヨハンが俺をって……それは単なる社交辞令じゃ――」

イェス 「私もご主人様が好きなのーっ!」

智樹 「――ど、どわわっ!?」

突然イェスが飛びついてくる。
それを見てかヴィーダも。

ヴィーダ 「ヴィーダも大好きなのーっ!」

ティアル 「……はぁ、人の前でイチャイチャすんなっつーの」

ティアルはいつものように不機嫌さ爆発でヴィーダとイェスの首根っこを掴んで俺から引き剥がす。
二人は俺から離れるとシュンと小さくなった。

智樹 「ふぅ……アリス、ヨハンの好きは間違いなくお前らの好きとは違うと思うぞ?」

考えてみればたった2ヶ月ちょっとでまるで居ることが当たり前の家族のような関係に俺たちはなっているんだな。
ティアルやイェスなんて当初、アリス奪還及び関係者抹殺の刺客だったんだよなぁ。
ティアルは本人が間抜けでイェスは人が良すぎて今のような関係になったんだよな。

智樹 (て、そう考えるとアルシャードさんやヨハンたちだって敵だったじゃないか)

考えてみれば俺たちは普通なら共存が出来ない間柄だったんだよな。
だけどかつては敵として、命さえ掛け合わなければならない戦いをした相手さえ、今は笑顔で応えあっている。
執拗にアリス奪還を狙ってきたヨハンとだって幾度死を覚悟したか。
だけど今、ヨハンと俺たちは仲間となっている。
アルドの一件が本来手を取り合うことの出来なかったヨハンたちと手を取り合うことができたんだ。
アルシャードさんはアリスの『IF』がこの不思議な縁を生み出したと言っているが、俺にはそれだけとは思えない。

アリス 「その式典とやらは私たちも行っていいのか?」

智樹 「さぁ? いいんじゃないのか?」

ティアル 「だったら、智樹とアリスで行きなさい」

智樹 「ティアル?」

ティアル 「誰かが家で面倒みないといけないでしょ? 私がするわ。パーティなんて興味ないしね」

ティアルはヴィーダとイェスをチラリと見てそう言う。
俺はティアルの言葉に納得する。
確かに誰かヴィーダたちの面倒役がいるわな。

智樹 「ん〜……でも、タキシードもスーツもないぞ?」

式典に参加するからにはそれ相応の格好をする必要があるだろう。
だが、皮肉にも俺はタキシードなぞ持っているわけがない。
当然ながら親の仕送りでなんとか生活している俺にはそれを買う金も無いしな。
とはいえ、ヨハンからの招待状を断るわけにもいかんし……。

ティアル 「アンタのできる失礼の無い最低限の格好で行きなさい」

智樹 「それで行くしかないわなぁ……」



……そうして、期日はついにその式典の日がやってくる。


『7月某日 時刻19:04 東京某所』


智樹 「――えっと……ここだよな?」

少女 「お久しぶりです、唐沢智樹さん」

アリス 「ん? 智樹?」

智樹 「え?」

俺は式典の開かれる会場のあるビルを探していると、突然とある少女に声をかけられる。
どこかアリスに似た少女、アリスと違いセミロングでやや、深みのある青い髪と瞳が特徴的。

智樹 「――あ、ヨハンの刺客の!」

俺は記憶からひとりの人物を引っ張り出す。
ヴィーダの時、俺が唯一生身で倒した相手!

少女 「アキと申します、初めましてアリスさん」

アリス 「ん、アリスだ」

アキ 「お二人でこられたのですか?」

智樹 「ああ、一応代表ってことでアリスだけ連れてきた」

アキ 「畏まりました。それではこちらへどうぞ」

俺たちはアキという少女に連れられるとそのままとあるビルへと向うのだった。

アキ 「――こちら、更衣室にてこちらが用意いたしました服とお着替えください」

――ということもあり、俺たちはわざわざA&Pが用意してくれたスーツに着替えることに。
アリスも女性用スーツに着替えていたが、『窮屈だ』と非常に鬱陶しがっていた。
そして社長就任式典の最初に行われた記者会見においてはヨハンは記者たちから時折厳しい言葉も受けたが、ヨハンはそれを全て真摯に受け止めて毅然とした態度だった。
すでに一組織のトップとしての自覚が現れており、その小さな身体からは考えられない力強さを感じた。

そして、記者会見が終わるといよいよパーティの始まりだった。


ヨハン 「――来てくれてありがとうございます」

智樹 「ヨハン……あ、いや吉倉社長の最初の晴れ舞台ですから、来ないわけには参りません」

俺は一瞬いつものようにヨハンと接してしまいそうになるが、時と場所を考えて言葉を選ぶ。
パーティには各界を代表する著名人たちが集まり、中にはテレビでも見ることのある人たちだって居る。
現職総理大臣がいたことはプチびっくりだったが……。

ヨハン 「こちらへ」

智樹 「……」

俺はヨハンに連れられて、その場を後にする。
ヨハンが連れてきたのは誰も居ないベランダだった。
東京の夜は暗いんだか明るいんだか分らない。
夜だというのに、ベランダに出ても街の光に月が照らす。
どこからか喧騒さえ聞こえてくる。

ヨハン 「ここなら普通に喋っても構いませんよ」

智樹 「気ぃ使わせちまったか」

俺がそう言うとヨハンはニコッと笑った。
笑う姿を見たのは初めてだった性か、ヨハンのそれには少しドキっとする。

智樹 「まずは社長就任おめでとさん」

俺は気を落ち着けて俺らしい言葉でヨハンを称える。
するとヨハンは首を振り。

ヨハン 「素直に嬉しいことではありませんね」

智樹 「へぇ、まぁ社長なんて大変そうだもんなぁ」

ヨハン 「出来ることなら社長の位置にはなりたくはなかった」
ヨハン 「DOLLが人の上に立つなんてDOLLの基本行動理念から既に外れている」

智樹 「考え方次第じゃないか?」

俺がそう言うとヨハンは『え?』と呟いて、俺の顔を覗き込んだ。
俺は夜空をしばし眺めつつ。

智樹 「社会は縦の世界かも知れないけど、人ってのは横の関係なんだ」
智樹 「お前は確かに上に立っているかもしれないけど、そんなお前に支えてもらいたい横の人間たちだっているんだ」
智樹 「一概お前のその理念からは外れているっては思わないぜ?」

ヨハン 「……唐沢殿」

智樹 「ま、浅知恵の高校生の戯言だけどな」

ヨハン 「たしかに……唐沢殿の言葉はなんの根拠も無い、浅知恵から生まれた言葉かもしれません」
ヨハン 「でも、小生には唐沢殿の言葉には千の理屈よりも安心させてくれるように思います」

智樹 「……こっ恥かしい言葉真顔でよく……」

ヨハンにいざそう言われると俺は照れて恥かしくなる。

智樹 「俺は単にマイナス思考なのが嫌いなだけさ、良い方に良い方にって考えたくなるから誰かが自分を卑しめるのが嫌なだけ」

ヨハン 「それは唐沢殿の優しさですよ、今時の現代人には少し珍しい優しさですけどね」

智樹 「なんじゃそら」

ヨハン 「今更自己犠牲なんて、漫画やアニメの世界にしか存在しませんよ」
ヨハン 「本当に平成生まれですか? ゆとり教育ですか?」

智樹 「ヨハンひとつ間違っている、俺は自己犠牲は大っ嫌いだ。俺は自分も相手も犠牲無ししか望まない」
智樹 「だから俺は嘘つきだし、危なくなったらすぐ逃げる臆病者。その癖ドがつくほどの馬鹿だ」

ヨハン 「本当にそうでしょうか?」

ヨハンが俺の横に立ち、そう言ってくる。
敵だった頃のヨハンに比べると随分打ち解けてくれたと思う。
ヨハンには俺はどういう風に映っているのか分らないが、俺にとってヨハンもすでに守りたい仲間……なんだな。

ヨハン 「唐沢殿は確かに頭が悪いでしょうね……でも、それってテストで赤点取ることが頭が悪い、高得点とることが良いってことですか?」
ヨハン 「唐沢殿は確かに知識はないでしょうけど、でも知恵はあります」
ヨハン 「単なるただの馬鹿なら、私はこれまであなたたちに苦戦はしませんよ」

智樹 「……そういう考え方もアリか」

俺は少しヨハンの言葉に納得する。

智樹 「そういや、出迎えに来てくれた娘……あの娘って」

ヨハン 「アキですか? 偶然大阪で泊まり込みの仕事をしてもらっていたので惨劇からは逃れました」

智樹 「運がいいのやら悪いのやら、いや良いんだろうな」

ヨハン 「どうでしょうか? 小生には未だにわかりません……生きることの苦しみ、死ぬことの恐怖、どちらが小生を救ってくれるのか」
ヨハン 「アキも帰ってくれば何も残っていなかった……いや、DOLLたちは皆何もかもを失いました」

智樹 「ヨハンがいるだろ? お前んとこの黄色いのが言っていたぜ、お前がDOLLたちの支えだとよ」

ヨハン 「ワロゥが? 全く……人の気もしらないで。私は保護者ではないというのに」

智樹 「皆不安なのは事実さ、だけどヨハンがいるから頑張れる、ヨハンのためなら頑張れる皆こう思っているのも事実だろ?」

ヨハン 「たしかにマインダもワロゥもカシスも、今は小生のために頑張ってくれています……でも、小生にはもう甘えることも許されない」

智樹 「ヨハンが弱音を吐くこともほとんど無いだろう」

俺は少し茶化すようにそう言う。
しかし、ヨハンもさすがに堪えたのかシュンと小さくなってしまう。
さすがに悪いことしたと思い、空気よめと久々に自分に突っ込むのだった。

智樹 「俺にはお前まで面倒をみるだけの余裕はないけど、お前の愚痴位は聞いてやるぜ?」
智樹 「背中貸すってはよく言わないが、辛い時くらい付き合ってやるよ」

言った後自分はやっぱり甘いなぁと実感する。
ヨハンが実は甘えん坊だということは既に理解しているのに、結局それを許してしまう発言を無意識のうちにしている。
昔から俺って他人に甘いんだよなぁ。

ヨハン 「ば、馬鹿にしないでください……その、気持ちだけは嬉しくいただきますが、年下に弱音を吐いたりはしません」

と言いつつも何故かもじもじするヨハン。
多分照れているんだろう。
だがそれを必死で隠そうとするヨハンの毅然さも窺えた。

智樹 「年下年上っていうのはこの際関係ないだろ、それじゃ大人は弱音はけないだろ」

ヨハン 「それはそれ、これはこれ、です」

やっぱりヨハンは照れている。
とはいえ嬉しいのか困っているのかどっちだろう。
普段強気な学級委員タイプのヨハンしか知らなかった性か、こういうときのヨハンはついチャチャ入れたくなる。
怒ると怖そうだが、つい困らせたくなるタイプなんだよな。

アリス 「おー、ここに居たか智樹」

智樹 「アリス? 一体どうした?」

突然ベランダにいるとアリスがやってくる。
俺はどうしたのかと思ったがその前にアリスの口元を見ていても立ってもいられなかった。

智樹 「たく食い意地張ったDOLLさんだよ、ほら口が汚れているぞ」

俺はアリスの口元をハンカチで拭く。

アリス 「ん」

アリスも最近粗食ばっかりだったからかこういうパーティで出てくる料理はついいつも以上に食い意地が出てしまうんだろう。
スーツ姿が見事なまでに似合う絶世の美人だというのに口元汚すのはいかがなものかねぇ?

智樹 「で、どうした?」

アリス 「……トイレ」

智樹 「ああん? トイレ? トイレだったらたしか外でて……て、お前一人だと不安だな、一緒に行ってやるよ」

アリス 「ん、すまない」

智樹 「気にすんな、お前は努力している」

アリスと出逢った頃に比べるとアリスは随分成長した。
最初は飯も満足に食えないし、俺が居ないとなにも出来なかった。
でも今のアリスは違う。
自分で考えられるし、自分で生きていける。
それでもアリスはまだまだ、子供みたいなものだ。
俺やティアルがついていないと不安極まりない。
なんせもうすでにアリスは他人でも身内の恥だからな。

ヨハン 「……アリスさんが羨ましい

アリス 「? なにか言ったかヨハン?」

ヨハン 「あ、い、いえ! なにも! そ、それではパーティを楽しんでくださいね?」

智樹 「あ、貧乏臭くてこういうの恥かしいけど、タッパーに肉詰めていい?」

俺は苦笑いしながらチャッカリもってきたタッパーをヨハンに見せる。
折角だからティアルたちにもと持って来たのだ。

ヨハン 「後で、お土産用に用意しておきますから、そういう恥かしいことはやめてください」

智樹 「おっと、そいつは重畳」

アリス 「重畳ってなんだ?」

智樹 「ありがたいってこと」

アリス 「なるほど、了承だ」

智樹 「それは微妙に使い方違うぞ」

アリス 「そうなのか……日本語は難しい」

俺はアリスと下らない言葉のキャッチボールをかわしながらトイレへと送っていく。
聞いたことの無い言葉には何にでも興味津々に反応してくるから、いつどんな会話が生まれるか分らんから怖いな。
しかし元々ほとんど空っぽの頭だった性か、アリスの記憶力もすごい。
後2ヶ月もしたら俺より頭良くなるんじゃないか?




…………。




ティアル 「――智樹のやついつ位に帰ってくるのかしら?」

ヴィーダ 「ティアルまずいのーっ!」
イェス 「ティアルの馬鹿ーっ!」

ティアル 「だぁうっさい! 黙って食えっ! マズイのは自分でも自覚しているっての!」

私達は家で留守番をしながら智樹たちの帰りを待った。
晩飯は普段アリス、ヴィーダ、智樹が担当していたが今日はその内2人がいないので私が担当した。
二人がいなくてもヴィーダが担当すればいいだろうと言われそうだがとんでもない。
アリスはラーメンと餃子しか作らないし、ヴィーダはカレーしか作らない。(しかし、むかつくことにこいつら料理が上手い)
さすがにラーメンもカレーも食い飽きたわけで、不味くてもレパートリーのある私が担当したのだ。

ヴィーダ 「もうティアルなんかしらないのーっ! 食の恨みは恐ろしいの! 今日からティアルはTなの!」

イェス 「じゃあ、私はRって呼ぶの!」

ヴィーダ 「TRなの! 今日からティアルはTRなのーっ!!」

ティアル 「あんたら喧嘩売ってるのかっ!?」

私はダンッ! と、机を叩いて二人を一喝する。

智樹 「――せぇぞこの野郎、近所迷惑だっつーの」

ヴィーダ 「あ、お兄たまーっ!」

いつの間にやら智樹とアリスが帰ってくる。
随分いきなりだったのでドッキリさせられた。

ティアル 「ず、随分早いじゃないの」

智樹 「なに、パーティなんて飯食うだけだからな」
智樹 「で、お前らも晩飯中か、美味そうじゃないか誰が作ったんだ?」

ティアル 「わ、私……」

私は頭を描きながら智樹からそっぽを向く。
どうも、いざ私の料理を智樹に見られると恥かしくて智樹を見れない。

ヴィーダ 「お兄たま食べない方がいいのー! タベタラシヌデ!」

ティアル 「ふ、不服だけど食わない方がいいわ……不味いのは本当だし」

ヴィーダの言いっぷりは気に食わないが、不味いのは事実だった。
出来れば智樹には食べて欲しくは無い。
食ったら死ぬからではなくただ単純に不味いからだ。

智樹 「ふーん、見た目は美味そうなのにねぇ、どれ」

イェス 「あ!」

智樹は突然私の作った玉子焼きをヒョイっと口に運んでしまった。
私は思わず呆然としてしまう。
智樹は暫く目を瞑って口を動かす。

ティアル 「ど……どう?」

智樹 「マンガやゲームだとさ……料理下手なヒロインの飯は食えたものじゃないってのが定説なんだが……」
智樹 「不味い! ……が、食えなくはないな」

ティアル 「な、なによ……ば、ばっかじゃないの!? そ、そんなお世辞なんか使ってさ!」

アリス 「ティアル、顔真っ赤」

ティアル 「ア、アリスは黙ってて!」

私はアリスに指摘されてより一層顔を真っ赤にしてしまう。
いくら気を落ち着けようとしても、まるで頭に血が上るように顔が赤くなってしまった。

智樹 「生憎お前に世辞言う程俺はお前に優しくないぜ? 不味いって言ってもヴィーダだって半分は既に食ってるじゃないか」

ティアル 「そ、それは皆お腹がすいていたから……」

智樹 「お前の不味さは食える不味さだよ、次は食える美味さに期待しとくか」

ティアル 「〜〜〜〜! わ、分ってるわよ!」

私は智樹の期待と言う言葉に胸が一杯になってしまう。

智樹 「まぁしかし不味いのに変わりは無い、というわけでお土産持って来たぞ」

ティアル 「お、おみやげ?」

そう言うと智樹は持参していたバッグを漁る。
中から出てきたのは。

智樹 「ほい、○o○o壱のカレー」

ティアル 「て、なんでよりによってカレーなのよ!?」

ヴィーダ 「ほーひょひょー! 我が世の春がきたーっ!!」

智樹は明らかにウケを狙ったかのようなお土産チョイスで私たちを襲ってくる。
よりによってなぜ土産がレトルトなのよ!?

智樹 「更にお土産なんだが、こっちは神戸牛の○野屋、そこのカレーだ」

ティアル 「鬼かーっ! 悪魔なのかーっ!?」

智樹は更にカレーという追い打ちをかけてくる。
一週間に10食以上カレーを食っているというのに何故レトルトでまでカレーを食わないといけないのよ!?

ヴィーダ 「うははーっ! ○野屋に○o○o壱のカレー! 強靭! 無敵! 最強!」

イェス 「ねぇコレ美味しいの?」

アリス 「私は辛いのは苦手だ」

ティアル 「てか、カレーは食い飽きたっての……」

智樹 「はっはっは、だろうな。つー訳でここまでは俺流のジョークだ、ほらよ」

ドンッ!

智樹はそう言うと気力を無くし、項垂れる私の前に何故か重箱が出てくる。

ティアル 「こ、これは?」

智樹 「パーティで出た飯、俺はコンパクトなタッパーでよかったんだが、ヨハンの奴何を考えたのか重箱で用意しやがった」

智樹は『おかげで重かった』と呟きながら、ようやく軽くなったバッグを地面に下ろし肩を軽く回していた。
私は恐る恐る重箱の蓋を空けると、この世の物とは思えない豪華な食事が現れた。

ティアル 「おおおおおおおおおおおお……!」

あまりの職人技の料理たちに開いた口が塞がらない。

イェス 「わ、美味しそう〜♪ いっただき〜♪」

ティアル 「あ!?」

智樹 「こら、イェス! ちゃんとお箸を使いなさい!」

智樹はイェスの行儀の悪さをちゃんと叱る。
私は他人の振りみて我が身を直すかのようにちゃんと箸を使って料理を口に運んだ。

ティアル 「あ、おいしい……」

素直にそれ以外の言葉が浮かばずそんな言葉が出てきた。
これぞ高級という味付けはかつてのイェスとは全く違う味をしていた。
私が食べたことの無いタイプの味、美味しさの上ではイェスの料理の方が舌は美味しく感じたかもしれないが、これはこれで美味しい。

ヴィーダ 「ヴィーダも食べる食べるのーっ!」

智樹 「はいはい、仲良く食べな」

ティアル 「アンタらはどうするの? 食べてきたんでしょ?」

智樹 「俺はいい、アリスはどうする?」

アリス 「心配するな、しっかり堪能してきた」

智樹 「つーわけで、お前ら3人で食え」

智樹たちはそう言う。
そんな会話をしている間にもヴィーダとイェスはパクパクと料理を口に運んでいた。

ティアル 「こら、あんたたち小皿分けるからそう急かない!」

私は台所から小皿を用意すると、それに料理を盛っていく。

智樹 「お前の作った飯はどうするんだ?」

ティアル 「……どうしよっか?」

さすがに処分に困る。
智樹は食える不味さと称してくれたが、さすがにマズ飯を人に食わせるのは気が引ける。

智樹 「ラップに包んで明日喰うか」

ティアル 「ま、不味いなら食わなくてもいいわよ……ふん」

智樹 「そうもいくまい、不味くても食わないわけにはいかないだろ」

ティアル 「……次はもっとマシな料理作ってみせるわ」

本当は智樹に私の料理は見せたくなかった。
作れる料理に偏りはあるが、この家では料理が出来ないのは私だけ。
当初こそ私自身も別に気にしたことは無かったが、さすがに私だけ出来ないというのは気まずい。
それに私だけ智樹に何もして上げられない。

アリスのように智樹は護れないし、イェスのように智樹を賄えない、ヴィーダのように智樹を和ませれない。
私はなにかあれば智樹と喧嘩腰で会話している。
時には本気で口喧嘩するときもある。

ティアル (馬鹿よねぇ……一度でいいから学校に持っていくお弁当を私が作りたいなんて)

私ティアルには些細な夢がある。
それが智樹の弁当だった。
私だって智樹に感謝している。
智樹は嫌いじゃない、嫌いじゃないから喧嘩だってできる。
だけど本当は仲良くしたい。
ただ、それが思うようにできていない。
だから、こんな間接的な方法しか思いつかないんでしょうね。

ティアル 「ねぇ、智樹」

智樹 「あん? あんだよ?」

ティアル 「パーティの料理とイェスの料理、どっちが美味しかった?」

私がそう何気なく聞くと、智樹はあからさまに暗い顔をした。
一瞬だったが智樹はイェスの幻影を追った。
智樹はまだ昔のイェスを見ている。

智樹 「イェスの料理の方が俺の舌には合ったぜ?」

ティアル 「そう」

ということは智樹の好みは私に似ているのか?
考えてみれば私と智樹の味付けの好みは概ね似ていた。

ティアル (ということは私の目標地点は私が美味しいと思う味か)

私はどういう味付けなら美味しいと思うか頭の中でイメージする。
今日はちょっと塩気が強すぎた、料理と言うのは調味料の使い方が重要だ。
見た目が上手くても、料理が美味くなくては意味無いからね。

イェス 「……ねぇ、昔の私って料理が得意だったの?」

突然イェスが箸を置いてそんなことを聞いてきた。
突然のことに私と智樹は驚いてしまう。

アリス 「ああ、イェスの料理はとっても美味しかった、同じ料理を作ってもイェスの味には敵わなかった」

智樹 「――て、アリスラーメン以外作れたのか!?」

アリス 「作れないと言った覚えは無いが?」

ティアル 「わ、私も知らなかった……アリスってラーメン以外作れたのか」

私まで驚いてしまった。
アリスがご飯を作るといつもラーメンと焼き飯や餃子などだった。
て、考えてみればこれだけの料理が出来るなら他にも出来て不思議じゃないのか。

智樹 「ちなみにどんな料理ならできるんだ?」

アリス 「いつもお昼頃やっている番組の料理なら全てマスターしているぞ」

智樹 「アリス……みんなに料理を振舞う時はもうちょっとラーメン自重しような?」

アリス 「ラーメン……美味しいのに」

アリスはまるで乾いた砂が水を吸収するかのごとくあらゆる物事を学んできたが、料理もそこまで出来るとは。
くそう……やっぱり飲食店勤務は強いのか……。

アリス 「わかった、ではラーメン以外の料理も考えておく」

アリスはそう言ってコクリと頷く。
今、アリスの頭の中にはどんな料理が浮かんでいるのだろうか?
明日辺り酢豚でも出てきそうね……。

イェス 「イェスは料理が上手だったのね……」

イェスは俯いたままそう呟いた。
私はそれを聞き逃さなかった。

ティアル (イェスの中にもう一人のイェスがいる……幻影という名のイェスが)

ひとえに私たちが悪いのは分っている。
私たちが現在のイェスに過去のイェスを見すぎている。
そのため現在のイェスに、私達は過剰な負担を与えてしまっていた。
皆それに気づいているし、今のイェスを大切にしている。
だからこそ、イェスにそんな負担をかけないように努力していた。
だけど……私たちにとって過去のイェスは大きすぎた。

ティアル (慰めの言葉さえ、今のイェスには傷つける言葉となる……私達は今のイェスにかける言葉を知らないのよね)

それを知っているのならイェスも私たちもここまで苦労しない。
時間がいずれ今のイェスを作ってくれると思ってはいるけど。

智樹 「さて……と、俺は自室にいる。何かあったら呼べよ?」

ティアル 「あ、お風呂沸かしてあるから入るならどうぞ」

私は部屋に戻る前にそれだけ智樹に伝えておく。
智樹は背中を見せたまま『ん』とだけ言って相槌を打ち、部屋を出て行った。

アリス 「智樹はすぐには入らないみたいだな、じゃあ私が入るか」

ティアル 「ん、まだ熱いから気をつけなさいよ?」

アリス 「ん」

アリスはそう言って風呂場の方へと消える。

ティアル (アリスの口癖っていつの間にか感染拡大しているわね……)

なんでか知らないけどアリスの口癖の『ん』が智樹や私に感染している。
不思議と使っちゃうのよねぇ……。





ヨハン 「……ふう、ただいま帰りました」

私は研究所を失ったことにより、帰る家を失ったため新しい住居であるマンションに住んでいる。

カシス 「あ、お、お帰りなさいませヨハンさま!」

ヨハン 「カシス、家では呼び捨てで構いませんよ」

家に帰るとまずカシスが出迎えてくれる。
現在私は吉倉ヨハン、カシスたちはそれぞれ私とは別の性、緋納という性を現在は名乗っている。

ワロゥ 「お帰り、遅くなったわね」

マインダ 「お帰りなさい、ご飯どうする?」

ヨハン 「ええ、頂きますよマインダ」

マインダ 「りょーかい、レンジで温めるだけだけどね」

ヨハン 「小生は構いませんよ」

私はスーツを脱ぎ、クローゼットに掻けるとそのままテーブルに座る。

ヨハン 「ワロゥたちはもう食べたのですか?」

ワロゥ 「当然でしょ? 九時にはすでに食べたわよ」

カシス 「で、でもヨハンさまの帰りを皆で待っていましたぁ〜」

ヨハン 「カシス……もういいです。好きに呼んでください」

カシス 「あ、ご、ごめんなさい……」

カシスは私の出した注意に気づきシュンと小さくなる。

チーン!

やがて電子レンジが鳴る。
マインダは温められたご飯を持って来た。

ヨハン 「ほう、雑ぜご飯ですか?」

マインダ 「皆で作ったんだけど……どう?」

ヨハン 「まだ頂いておりませんよ、では頂きます」

ワロゥ 「はい、これ味噌汁」

カシス 「ふああ……あ、ど、どうですかぁ?」

カシスは大きな欠伸をしており、見るからに眠そうだったが私が感想を言うまで起きているつもりのようだった。
私は温めなおされたご飯だったが、それを口に運び味を確かめる。

ヨハン 「……美味しいです、小生を想ってくれた味もより一層に……」

もう時間は十一時半にも達している。
にも関わらず皆起きて待ってくれ、そして皆で雑ぜご飯を作ってくれた。
美味しくないはずが無い、皆の気持ちがこもっているのだから。

ヨハン 「カシス、眠いのならもう寝なさい」

カシス 「で、でも……」

ワロゥ 「いくらこれから『学生』になるからって、やっぱり夜更かしは駄目よ?」

カシス 「でもワロゥ……お皿、洗わないと……」

ヨハン 「小生がやっておきますよ」

ワロゥ 「大将にやらせるわけには行かない、マインダやるよ」

マインダ 「て、なんでそこでアタシなのよ!?」

マインダが突っ込みを入れる。
状況は変わってもワロゥやマインダの態度は変わらない。
まだ新居生活も慣れていないでしょうに、皆頑張ってくれています。
そんな中ワロゥとマインダは警備会社に就職した。
まだ内定しただけだけど、これからはA&Pのオフィスビルの巡回をすることになる。
そんな中カシスは学生となり、9月から高校生となる。
小学中学と行ってはいないが、そこはデッチ上げになってしまった。

カシス 「そ、それじゃあ寝まぁす〜……ふわぁぁぁ」

カシスは大きな欠伸をしてそのまま寝室へと向う。

ヨハン 「ワロゥ、仕事の方は大丈夫そうですか?」

ワロゥ 「公私はこれでもケジメつけている方よ?」

ヨハン 「あなたとマインダは研究所でも屈指の問題児だったので不安です」

マインダ 「大丈夫だって、アタシら子供じゃないんだしさ」

ヨハン 「だったら子供のようにイタズラなどおやめなさい」

ワロゥ 「まぁ、マインダは私がしっかり監視するよ」

マインダ 「アタシャ24時間、ワロゥの監視受けんといけないのかい」

ワロゥのボケにも近いブラックジョークにマインダが突っ込みを入れる。
こんな光景10年以上見てきたんですね……。
私も二人を信頼しないといけませんか。

マインダ 「でもヨハンは当然としてアタシらも深夜業入るかもしれないのよね……そういう時ってカシスって一人っきりでしょ?」

ヨハン 「その点は小生がなんとかしますよ」

ワロゥ 「そいつは重畳、ね」

ヨハン 「!」

私はワロゥの言葉に反応してしまう。
別になんでもない言葉だったけど、今日唐沢殿が口にした性か妙に耳に残った。

マインダ 「うん? なんか気に障ったの?」

ヨハン 「あ、いえ……なんでもございません」

馬鹿な話だ、私が唐沢殿を意識するはずなんて無いのに。
でも、最近ふと唐沢殿が頭に浮かぶ時がある。
どうしてだろう……お父様にさえここまで意識したことはないのに、なんで唐沢殿なんかにこんな想い持たないといけないんだろう。
別に好きじゃないのに、まるで好きみたいな……不思議だ。

ワロゥ 「あれ? ヨハン顔赤くない? もしかして熱が?」

突然、ワロゥが私の異変に気づき、掌を私の額に当ててくる。

ヨハン 「な、なんですかいきなり!?」

ワロゥ 「平熱ね、気のせい?」

ヨハン 「ワ、ワロゥ……全く」

ん……しかし、私唐沢殿のことを考えて顔を赤くしたと?

ヨハン 「馬鹿な……」

マインダ 「一体何がさ」

私はマインダの言葉を無視して食を進めた。
味噌汁の椀を手に持ち、ズズっと味噌汁を啜る。
マインダの意味深な眼差しは無視し、遅い晩飯をさっさと済ませるのだった。

ヨハン 「ご馳走様でした、大変良い物で」

ワロゥ 「お粗末さまでした、食器もう片付けるわよ?」

ヨハン 「小生も手伝います」

マインダ 「アンタは風呂入ってクソして寝ろ」

ヨハン 「――マインダ、ちょっと話があります」

私はマインダの口の悪さに少し口調厳しめにマインダを座らせた。
マインダはしまったと顔をしたが、逃げられないことを自覚してか頭を掻いて素直に座るのだった。

ワロゥ 「マインダの口の悪さは一生治らないんじゃない?」

ヨハン 「そうはまいりません、何度も口をすっぱく言っていますがそんなだからあなたは――!」

私はその後1時間にも渡ってマインダを説教するのだった。
当然その後入る風呂は温くなっていたことは言うまでも無い。





第24話 「それぞれのはじまり」 完


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