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第15話 「ふたりの出会い」
ウンディーネ 「…しかし、先生がおらんかったらどうするんや?」
修行のため、ゾルフ先生がいるでろうエレル山を登ってる途中、ウチはひとつの疑問を皆に投げかけた。
シェイド 「独自に技を磨くしかないだろう?」
シェイドはそう言う。
まぁ、らしいわな…って言うかそれしか思いつかへんし。
ノーム 「それで強くなれるのかなぁ?」
ノームがまた現実的な疑問を言う。
『なれるか』や、のぉて…『な・ら・な』、いかんねん。
サラマ 「まぁ、考えていても始まらん。まずは尋ねてみることだ」
ジン 「おいおい…そんなのでいいのかよ」
まぁ、サラマはいつもこうやろ…アバウトっちゅうか、なんちゅうか…。
ウンディーネ 「まぁ、ウチも実際には何も考えてへんからなぁ」
全員 「………」
ウチらはしばし沈黙しながらも、とりあえず夜更けには山頂に到着した。
前と同じで、全く夜は人気が無かった。
昼間は結構人が通ってたりしたんやけど、やっぱこの前の騒ぎは効いたんかなぁ…?
ウンディーネ 「まだ、おるかなぁ…?」
ドンドンドン!
いるであろうと、期待を込めつつ、ウチはちょっと大きめにドアを叩く。
ガチャ…
するとドアが開き、先生が顔を見せた。
とりあえず、ウチらは全員安心する。
ゾルフ 「…こんな夜更けに誰じゃ?」
シェイド 「お久し振りです、先生」
シェイドはウチの右側に並びそう先生に挨拶する。
先生はシェイドの姿を見て、驚いたような顔を見せた。
ゾルフ 「おおっ…シェイドか? しばらく振りじゃのぅ…元気で何よりじゃ」
シェイド 「先生、早速で悪いのですが…」
ゾルフ 「うむ…ひとまず中に入るがよい」
言われた通り、ウチらは先生の家に上がり、まずは修行の事などを話した。
思いの他、先生は予測しとったようで、結構すんなり話が進んだ。
小屋の中に入ると、ウチらは荷物を置いて全員がテーブルを囲んで椅子に座る。
………。
ゾルフ 「ふむ…そうであったか。良かろう、ワシでよければ力になるぞ」
先生はいつもの笑顔でそう言う。
ホンマに大らかな人やで。
シェイド 「ありがとうございます…」
シェイドは丁寧に正座で頭を下げる。
相変わらずやなぁ…ホンマ。
真面目っちゅうか、何ちゅうか…。
ゾルフ 「まぁ、今日は夜遅い。一日休んでからにするがいい」
ノーム 「は〜い」
そう言って、先生は台所に向かった。
そう言えば、腹が減ってきたわ。
何も食うてなかったさかいな。
ウチらは適当に荷物を置いて、そのままその場で座ってくつろいだ。
ジン 「ふぅ…」
サラマ 「…先生も相変わらずだな」
ウンディーネ 「せやな…」
ホンマに相変わらずや、昔は結構厳しかった人らしいけど…。
今はそんな面影全くあらへん。
そこで、ジンがひとつの疑問をサラマに投げかけた。
ジン 「なぁ、前から聞こうと思ってたんだが、サラマはなんで妹さんと別々に暮らしてたんだ?」
そう言えば、素朴な疑問やな…あんまり気にはしてへんかったけど。
気になりだしたら聞きたなるな。
ウンディーネ 「そやな、兄妹やったら一緒に暮らせばええやん」
ウチが気軽にそう言うと、サラマは珍しく神妙な顔をしよる。
サラマ 「…あいつが炎を使えないのは知っているだろう?」
ノーム 「あ、そう言えばそうだったね」
ジン 「そうなのか? 知らなかったな…」
ジンはともかく、ノームまで忘れとったんかい…。
ウチは腕を組んで考え込んでみるが、全く原因が浮かばない。
ウンディーネ 「ナルは、炎の精霊と相性が悪いんかなぁ…」
そんなありがちなことが浮かんでしまう。
まぁ、それだけやったらとっくに解決しとるやろ。
サラマ 「…そういうわけじゃない」
つうわけでサラマがあっさり否定してくれる。
せやったら、理由を言わんかいっ。
ウチは心の中でツッコミを入れる。
シェイド 「…そろそろ話したらどうだ? 隠すことでもないだろう?」
っつうわけでシェイドがそう促すと、サラマは仕方なさそうにそのことを話し始めた。
何や嫌そうやな…。
サラマ 「…あいつは、嫉妬してたんだ。炎の精霊に」
ジン 「嫉妬? なんでまた…」
ってか、炎の精霊でサラマにちょっかいかけとるような女なんておったっけ?
少なくともウチの知らん話や…もっと前の話かな?
サラマ 「…俺のせいだ」
サラマはぽつりとそう言う…。
何やかなり悲しげや。
ノーム 「サラマ兄ちゃんの?」
サラマ 「そうだ…俺が炎の精霊ばかりに構っていて、妹のことをわかってやれなかったからだ…」
シェイド 「……」
シェイドは何や冷静や…そう言えば知っとるような口振りやったしな。
構ってたって…そんなええ女がおったんか〜。
ウンディーネ 「…それで、どうなったんや? 何かがあったんやろ?」
ウチはちょっとウキウキしながら聞いてみる。
サラマって、あんまり浮いた話聞いたことないから、かなり興味あるで。
サラマ 「ナルは俺が自分に構ってやらないのを炎の精霊のせいだと思いこんで、炎の精霊をビンに閉じこめ、湖に投げこんだんだ」
ジン 「おいおい…マジかよ?」
ノーム 「そんなことしたら…そりゃ、嫌われるよなぁ…」
ウンディーネ 「……」
ウチは聞きながら固まる。
もしかして…それって別に特別な女とかやのうて、ただの低〜中位精霊?
何や、かなり期待外れや…結構期待しとったのに、やっぱサラマはボケの才能あらへんで。
かなり、話の目の付け所が違う気がしたんで、一応ちょっと考えてみる。
そうか〜…炎の精霊をな。
ウンディーネ 「って、全然あかんやん!! せやからウケ取れへんって!!」
ウチは全力でサラマにツッコム。
正直、誰も笑ってへん。
そやろな…ツッコムこっちも寒いわ。
サラマ 「…もっとも、この事は俺とシェイドにしか明かされてはいないはずだがな…」
さらりと無視された、もう止めとこ…そろそろシェイドの視線が痛いわ。
ウチは真面目に聞くことにする。
サラマ 「…理由は、ナルのためだったんだろう。ゾルフ先生が、ナルのために…セラフィム様を説得したらしいからな」
ジン 「セラフィム様に…? 何でまた光の守護者が?」
確かに疑問や…元々レギルの守護者である、光の守護者セラフィム様が何でわざわざデリトールに?
シェイド 「…何故かは知らんが、たまたまセラフィム様はその場にいて、ナルのやったことに酷く激怒されてな」
シェイド 「本来ならナルを永久に低級精霊として力を封じられるのだが、先生の説得によって、ナルは記憶を消されるだけですんだんだ…」
たまたま…な。
妙に引っかかるわ。
ノーム 「記憶を…?」
サラマ 「そうだ、記憶を消去することによって、精霊への憎悪も消し去った。だが、炎の精霊は二度とナルには懐かないかもしれん…」
サラマ 「ゆえに、ナルはイフリート様に預けられた…理由は明かさずにな」
シェイド 「イフリート様なら、炎の精霊を少しでも懐かせることができるかもしれない…と先生の判断でな」
妙にしん…となる。
かなり嫌な雰囲気や。
台所でガチャガチャやっとる先生の動きが丸わかりやん…。
で、沈黙を破ってジンが更にツッコム。
ジン 「でもよ…だったら、なおさらサラマが妹さんの近くに居てやらなきゃならないんじゃないのか?」
サラマ 「…そうしてやりたかったが、先生に反対されてな…同じことを繰り返すつもりか?って」
ウンディーネ 「そやな…ナルは記憶を消されとるだけやからええけど、サラマが居たら、今度はサラマにまで炎の精霊に嫌われるかもしれんからなぁ…」
シェイド 「それに…サラマがいては、ナルもまた同じ事をしないとは限らん…先生もそれを案じてのことだろう…」
かなり由々しき問題や…ナルにそんな過去があったとはな〜。
ホンマに…女の嫉妬って怖いわぁ。
ウチみたいにストレートに勝負せな!!
絶対レイナには負けへんで…!? ← ナルにはアウト・オブ・ガンチューのこのお方♪
サラマ 「俺は、兄失格さ…だからあいつとは距離を保ってきた」
そう言ってサラマは遠くを見るように顔を上げる。
口ではこう言っとるけど、ホンマはかなり構いたいんやろな。
シェイド 「…だが、ナルはああ見えても、お前をやはり兄として見ている。それには、答えるべきだろう?」
サラマ 「…その時がくればな」
それから、しばらくは暗い雰囲気で、沈黙のまま時が過ぎていった。
先生が、食事を持ってきてくれた所で、ウチらは気を休める。
………。
ノーム 「なぁ…そう言えば、ウンディーネとシェイド姉ちゃんって、いつから知り合ったの? ウンディーネは6歳から孤児院に来たとは聞いたけど」
食事が終わり、先生が台所で洗い物をしている時にノームがそんな疑問を放つ。
ちなみに、ウチとシェイドは先生を手伝うつもりやったけど、断られた。
まだ子供扱いなんかなぁ…?
ウンディーネ 「ウチらは…ウチが孤児院に来てからすぐや、もう14年も前やなぁ」
シェイド 「そうか…もうそんなに経つのか…」
ウチらはあの時を振り返る。
青春してたわぁ…絶対嘘やけど。
ウンディーネ 「あの頃から、シェイドはほとんど変わっとらんなぁ…」
ウチはあの頃のシェイドを思い出しながらそう呟く。
実際そうやからな…ホンマにあんな子供、絶対おらんで!?
シェイド 「私は変わらないさ…昔も、今も…」
ノーム 「じゃあ、シェイド姉ちゃんって昔からこんな感じだったんだ?」
ウンディーネ 「そやな…ほんっまに」
シェイド 「……」
……………。
少年A 「くっそ〜…」
少年B 「覚えてろよー!」
シェイド 「…ふん」
少女 「お姉ちゃん、ごめんなさい…」
夕焼けが凄く綺麗な夕方。
さっき、6歳の少年ふたりに虐められていたまだ4歳の小さな少女が、泣きながら私に謝る。
口で言っても全く通用しなかったから、結局は力づくになってしまった…。
私は腰を屈め、微笑して少女の頭を撫でた。
シェイド 「…いい、悪いのはあいつらだから」
少女 「…ごめんなさい」
少女は申し訳なさそうにもう一度謝る。
私のことを案じてくれたのだろう。
力に対して力で答えてしまった…この娘を守るためとはいえ、私は酷いをことをしている。
少女は涙をこらえ、自分の足で家に帰って行った。
シェイド 「……」
私はその背中に手を振って見送った。
せめて、笑ってほしかった。
私は自分の弱さを悔やむ…。
声 「ほえ〜…あんた強いんやなぁ〜」
そこで、突如後から声をかけられる。
私が振り向くと、後ろに立っている木の枝にその娘は座っていた。
見たことのある少女だった。
腰まで伸びてる長髪を、首の後で止めて大きなお下げにしており、明るい表情で独特の喋り方をする少女だ。
シェイド 「お前は…確か、ウンディーネだったか?」
私は冷静にそう答える。
すると、ウンディーネは笑う。
自然な笑みだな…それが、私には羨ましく思えた。
ウンディーネ 「ほよ? ウチのこと知ってんの? ウチも有名人やなぁ〜♪」
シェイド 「最近、ここに引き取られた水の精霊が暴れているらしいからな…」
私はあえて、皮肉を込めたように言う。
ウンディーネ 「暴れとらんで? 遊んどるだけや!」
すると、ウンディーネは軽くそう言う。
当たり前だが、子供の台詞だ。
まだ6歳の少女だからな、ウンディーネは。
シェイド 「それが、早朝から喧嘩して他の子供たちに迷惑をかけた者の台詞か?」
事実、今朝、彼女の手によって4人の少年が怪我をした。
幸い、病院に行くほどではなかったが、かなり許されざる行為だ。
ウンディーネ 「そやかて、向こうから仕掛けて来るんや! しゃあないわっ」
シェイド 「だからと言って、喧嘩を買えばいいという物ではないだろう?」
シェイド 「…それに、あそこまでやればもう喧嘩ではない、ただの暴行だ」
ウンディーネ 「振りかかる火の粉は振り払えって言うやんっ」
ウンディーネ 「もっとも、自分から喧嘩売っといて、逃げるのは男らしくあらへん、せやからウチが根性叩き直したったんや!」
ウンディーネはまるで悪びれた様子も見せず、そう言い放つ。
私は、少し強めにウンディーネを睨んだ。
ウンディーネ 「ふふん♪ そんな怖い顔したってウチはビビらへんで〜?」
そう軽く笑い飛ばす。
その時、私は背後に気配を感じて振り向く。
ゾルフ 「ウンディーネ…お前はちと短気過ぎる。少しは大人しくしなさい…お前は女の子なんじゃから」
先生だった。
私たちが住んでいる孤児院を支えてくれている先生。
実際には、先生はガストレイス王国の元国王だったらしい。
300年前、息子に国を渡して、今の孤児院を作ったそうだけど、本当かどうかはわからない。
今の国王様は、先生の9代後らしい…。
それまでの国王様は寿命で亡くなられているのに、何故先生だけ…?
聞いても、先生は答えてはくれなかった。
ただ、優しく微笑んでくれるだけ…。
シェイド 「先生…」
ウンディーネ 「ウチは悪い事はしてへんやん、注意される覚えはないで!」
先生が言っているにも関わらず、ウンディーネは勝手な言い分を並べる。
ゾルフ 「じゃが、お前はやりすぎておる。現にお前との喧嘩で怪我した子がいるのじゃ…」
ウンディーネ 「そんなん、鍛え方が足らへんねん! 男のくせに…」
ウンディーネは納得いかない顔で、そう反論する。
今までどういう生活をしてきたのかは知らないが、かなり自己中心的な性格だ。
ゾルフ 「ウンディーネ…それはお前が強いからじゃ。お前はその強い力をいたずらに振るってはならん」
ゾルフ 「お前の力は、弱き物を救うための物じゃ」
ウンディーネ 「そんなん嫌や…ウチが強いから、ウチの勝手で喧嘩するなちゅうんか!?」
ウンディーネは段々鼻息が荒くなってきている。
かなり頭に来ているのだろう、予想通り短気そうだ。
ゾルフ 「そうは言っておらん…ただ、弱き物を陥れるためにその力を使ってはいかんと言っているのじゃ」
ウンディーネ 「ウチはそんな面倒くさいん嫌や! 弱い奴はほっといたらええねん、そんなん」
シェイド 「いいかげんにしろ! そんな勝手な理由で他の子供たちに迷惑をかけるな!!」
とうとう、私がそう叫ぶ。
さすがに私自身も黙ってはいられなくなった。
ウンディーネ 「おお怖…そんな怒鳴らんでもええやん」
ウンディーネは少し驚いた様子だが、やはり悪びれた様子はなかった。
むしろ、微笑すら浮かべる。
ゾルフ 「やれやれ…しょうがないのう。では、こちらもそっちの方針に合わせたやりかたにしよう…気は進まんがな」
先生はそう言ってため息をつく。
私にはどうせ予想が出来た…こう言う汚い仕事は私の役目だから。
ウンディーネ 「何や? 何する気なん?」
ウンディーネは少し興味を抱くように首をこっちに近付けてそう言う。
ゾルフ 「ウンディーネよ…賭けをしてみんか?」
ウンディーネ 「賭け? 何を?」
ゾルフ 「もし、お前がこのシェイドに勝てたら、もう何も言わん。お前の好きにするがいい」
ゾルフ 「勝負方法はお前が好きに決めればいい…」
ウンディーネ 「ほんまっ!?」
ウンディーネが目を輝かせてそう聞き返す。
私は予想できていたので驚かない。
ゾルフ 「もちろんじゃ。但し…」
ウンディーネ 「負けたら、そっちの言う事何でも聞ぃたるわ! それでええんやろ!?」
そう言って、ウンディーネは枝から飛び降りて、地面に着地する。
見事な着地で、全くバランスを崩してはいなかった。
ゾルフ 「うむ…すまぬが、シェイド」
シェイド 「…わかっています。子供たちを守るのは、私の役目ですから」
悲しげな顔をした先生を後ろ目に、私は前に出る。
ウンディーネと3メートル程の距離を開けて私は止まる。
シェイド 「…勝負方法は?」
何が来ても負けるつもりはない…。
そのために、私が戦うのだから。
ウンディーネ 「もちろん、どつき合いや!! 一番わかりやすいやろ!?」
そう言って、ウンディーネは構える。
かなり喧嘩慣れしているのだろう、いかにもと言った感じだった。
だが、私は全く動じない。
今までにも何度となく見てきた…所詮は子供相手。
私は今まで誰と戦っても負けたことはない。
大の大人と剣で切り合った事もあった。
勿論負けなかった…怪我をさせるのは嫌だったから、勝ったとも言えなかったかもしれないけど。
ウンディーネ 「よっしゃー! ほないくでー!!」
ウンディーネはいきなり正面から右拳殴りかかってきた。
私は構えてもいない、構える気もなかったけど。
先手必勝…それが喧嘩の常識だからか。
だが、それはあくまで相手が自分よりも弱いからこそ通用する。
相手が、冷静であれば、その戦法は裏目に出る。
シェイド 「……」
スカッ
ウンディーネ 「あらっ!?」
私はできるだけ小さな動きでそれを左に避ける。
かなりのスピードだった。
ある程度予測は出来たけど、想像以上にキレがあった。
油断は…するつもりはないけど。
ウンディーネ 「このー!!」
ウンディーネはなおも拳を振るい続ける。
子供の喧嘩らしく、でたらめに突っ込んでくる。
ブンッ! ブンッ! ビュッ!
ウンディーネ 「ちっくしょう…すばしっこい!」
ウンディーネは次第にスタミナを切らし始め、明らかに動きが鈍る。
シェイド 「どうした? それで終わりか…?」
ウンディーネ 「こんのーーー!!」
ウンディーネはこちらの挑発あっさりとかかり、スタミナ切れのまま、いきり立って正面に突っ込んでくる。
私はウンディーネの右拳を左に流して、カウンターで右の膝蹴りを腹に叩きこんだ。
ドグゥッ!
ウンディーネ 「げほっ…!」
それなりに強烈な一撃だったろう。
ウンディーネは受身も取れずに、顔面から地面に突っ込み、倒れる。
そして両手で腹を抑え、声も出せずに涙目に震えていた。
ゾルフ 「…決まりじゃな」
シェイド 「……」
ウンディーネ 「けほっ…けほっ…うぅ…ヒック…」
ウンディーネは痛みからか悔しさからか、咳き込みながら泣きじゃくっていた。
そんな姿から、私は心に痛みを感じる。
こんな戦い…本当はしたくなかった。
でも、やらなければいけない、私にしか出来ないから。
ゾルフ 「…少しはわかったか? 弱き者が受けた痛みが?」
ウンディーネ 「あうぅ…グスッ…はぅっ…ヒック…」
先生はウンディーネの身を案じるように、できる限り優しくそう言った。
ウンディーネは答えることが出来ないのだろう、膝を突きながらも起き上がろうとするが、腹を抑えて涙を流す。
泣き声をあげるのがそんなに嫌なのか、必死に我慢しているようだった。
ゾルフ 「…こんなやり方は本当はやるべきではないのじゃが。お前さんにわからせるためじゃ、許してくれ」
ゾルフ 「ウンディーネ、水の精霊は、本来いたわりや優しさの心を象徴する存在じゃ」
ゾルフ 「悪しきものを挫き、弱き物を包む…それが水の属性の本来あるべき姿じゃと、ワシは思っておる」
ゾルフ 「そのお前が人を傷つけてばかりいては、その内懐いてくれる水の精霊が、いなくなってしまうかもしれぬぞ?」
ウンディーネ 「…うぅ…はぃ……」
シェイド 「……」
ようやく、頷いた。
本当にわかったのかどうかはわからない。
それでも、私は無言でウンディーネを立ち上がらせ、持っていたハンカチで顔を拭いてあげた。
砂や泥がついて、涙と混ざっているのでかなりぐちゃぐちゃだ。
ウンディーネ 「うぷ……」
シェイド 「…ほら、動くな」
私はウンディーネの顔を粗方拭き終わると、ハンカチをポケットにしまった。
白いハンカチが真っ黒になったが、気にはしなかった。
ハンカチは、洗えばまた綺麗になる…でも。
人の心は、一度黒くなったらそう簡単には綺麗にならない。
ゾルフ 「ウンディーネよ、これからは軽々しくその力を使ってはならんぞ?」
ウンディーネ 「…はい」
もう一度頷く。
もう抵抗する力は残っていないからだろう。
実力の差を知ったはずだ…少なくとも。
ゾルフ 「では、孤児院に戻ろう…」
先生はそう言って、優しく笑う。
そして、先導して歩いていく。
ウンディーネはばつが悪そうにその場で動かなかった。
シェイド 「ほら…ウンディーネ、行こう」
私はウンディーネの手を引き、歩かせる。
ウンディーネは私の顔を見て、恥ずかしそうに俯いた。
私は軽く笑って、子供の手を引く姉のように、ウンディーネと並んで歩いた。
………。
シェイド 「……」
ウンディーネ 「…なぁ」
しばらく歩いていると、ウンディーネがそう話しかける。
私から言葉がないのが気になったのだろう。
私は冷静に答える。
シェイド 「何だ?」
ウンディーネ 「何で…シェイドはそんなに他人に世話焼けるん?」
考えたことはあった。
でも、理由は単純だし、考える必要もなかった。
それしかないから…私にしか出来ないから。
だから、私がやらなければいけなかった…ただ、それだけ。
シェイド 「私は孤児院で、一番年長者だからな。他の子の面倒を見るのも全部私の役目だから…」
シェイド 「他にやる人がいないから、全部私がやっている、誰も出来ないから…私がやる」
シェイド 「それしか…ないからな」
ウンディーネ 「…シェイドって、何歳なん?」
シェイド 「…9歳だ」
ウンディーネ 「9歳で最年長…それよか上はおらんのや」
シェイド 「ああ、小さな子供ばかりだからな…」
本当にそうだった。
今の国王が若い頃は、結構バラバラで賑わってもいたそうだけど。
今の時代は、何故か小さな子供ばかりだった。
理由はあった。
孤児院出身の子供たちは、ある程度大きくなると、外に出てしまうから。
だから、自分の力では何も出来ない子供たちが残ってしまう。
結局、私の前の年長者だった、お姉さんも、小さな私たち子供を残して、勝手に嫁いで行ってしまった。
今どうしているかは、もう知らない。
ウンディーネ 「シェイドが、ご飯とか作ってるん?」
シェイド 「ああ、私か先生にしか作れないから…」
ウンディーネ 「洗濯とか…掃除とかも?」
シェイド 「ああ、洗濯はほとんど私だ。掃除は、たまに皆でやる」
ウンディーネ 「じゃあ…じゃあ! 買い物とかも? 魔物とかに出会ったら!?」
シェイド 「買い物は、先生が結構やってくれてる。私が行くことももちろんある」
シェイド 「魔物が出た時は、先生がいない時は私が倒してる」
ウンディーネ 「凄いなぁ…ウチには絶対出来へん」
ウンディーネ 「せやから、シェイドはそんなに強いんやな」
シェイド 「……」
強い…か。
実際にはどうなのか実感がなかった。
力は正直強い方だろう…結果、ウンディーネを力で屈服させたのだから。
でも、本当に強いと言う意味では…そうではないのかもしれない。
ウンディーネ 「なぁ…シェイドって女の子やのに、なんで男の子みたいな言葉使いなん?」
シェイド 「さぁ…? いつのまにか、こうなってた…」
そう言えば気にしたことはなかったな。
お姉さんがいなくなって、私が孤児院を守るようになった。
つい3年前の話だ。
その頃からからかもしれないな、いつの間にかこんな口調になっていた。
もっとも…原因はあるにはあるのだけれど。
考えると、私は途端に肩を落とす。
ウンディーネ 「シェイドって、ごっつ可愛いのに…」
シェイド 「可愛い? 私がか?」
私は産まれて初めてそう言われたのでそう返した。
今まで、強いとか、凄いとか、男勝りだとか、色々言われてきたけど、それは初めてだ。
全く実感がない…少なくとも、こんな無愛想な私よりも、ウンディーネの方が数段可愛く思える。
ウンディーネ 「うんっ、ごっつ可愛い…綺麗とも言うんかなぁ?」
シェイド 「私は…自分でそう思ったことはないからな」
正直そうだ。
そう思う余裕がなかったというのもそうだが。
ゾルフ 「ふふ…じゃがシェイド、お前はもう少し女らしくすれば本当に美しい女性になれるぞ?」
いつのまにか、先生が私の左側に並んでいた。
少し驚く。
3人横に並んで歩くと、家族みたいだ。
でもそうなると…やっぱり私が奥さん?
いや、むしろ父親なのだろうな…それだけは確信できた。
シェイド 「止めてください…私は、皆の面倒を見なければならないから」
シェイド 「私は、自分のことを考える暇はありません…自分で、選んだ道ですから」
ゾルフ 「すまんのぅ…ワシがこの年でなければ、お前にそんなことはさせんのじゃが」
先生は本当に辛そうにそう言う。
だけど、先生が悲しむ必要はない…自分で選んだのだから。
シェイド 「構いません…私は、後悔していませんから」
シェイド 「いずれにしても、誰かがやらなければならないことです」
シェイド 「それに、例の…シャール王子の事も聞いています」
シェイド 「無論…国王様のことも」
ゾルフ 「それは、他言無用じゃ…いいな?」
シェイド 「あ…すみません、口が過ぎました」
先生は、少し厳しい口調でそう言う。
ウンディーネの手前で言う話題ではなかった。
ゾルフ 「…ひょっとしたら、ワシはお前の人生を変えてしまったのかもしれん」
シェイド 「もう一度言います、自分で選んだ道ですから…」
私がそう言った所で、孤児院に着いた。
ウンディーネは言葉がなかったようだ。
私と先生との会話が気にならないわけではなかったろうが。
ゾルフ 「そうじゃ…そう言えば、あいつらが帰って来とるらしいぞ?」
私はその言葉を聞いて固まる。
折角忘れていたのに、恐れていたことが…。
私は右手で頭を抱える。
シェイド 「…そうですか、帰ってきたんですか」
ウンディーネ 「どないしたん? 顔が青いで?」
ウンディーネが心配そうにそう言う。
逃げられるのなら本気で逃げ出したいくらいだ。
でも、私しかいないから…自分で選んだ道だから!
そう自分に言い聞かせる…。
シェイド 「いや…ちょっと面倒なやつらが帰ってきているようだ」
ウンディーネ 「?」
ウンディーネは?を浮かべていた。
私は覚悟を決めてドアを開ける。
ガチャ…
シェイド 「…? あれ?」
ふたりはいなかった。
どうやら、出かけているようだ。
と言っても…すでに夜は更けて暗い。
少なくとも、理由もなく3歳の少女がふたりで外に出ると言うことは、普通ないはずだ…。
私はもう次の展開が読めた…。
ゾルフ 「おかしいのぅ…ここを出る前までは居たはずじゃが」
少年 「ウィルとルナなら、外に出ちゃいましたよ〜?」
シェイド 「…いきなりか、全く…世話のかかる」
私はうなだれながら、俯く。
わかってる! これは私の失態だ!!
私が…私が……。
ウンディーネ 「な、何なん? ウィルとルナて…そんなヤバい奴らなん?」
シェイド 「ああ、たった3歳のあいつらに比べたら、お前なんてまだましな方だ…」
私は自分を戒めるように言う。
そう、3歳だから…たったの3歳児だから。
だから…だからぁっ!
ゾルフ 「また、砂漠に出たのかの…? いかんなぁ…もう夜も更けるというのに」
シェイド 「はぁ…」
ガチャ…ボフッ!
私は仕方なく探しに行こうとする、するとドアが開き。
勢いよく駆けて来た少女の体が私にぶつかる。
私はもう一度ため息をつく。
ウィル 「あったた…もう、なによ〜!」
ルナ 「どうしたの…ウィル〜って、あっ!?」
ルナは私を見て凍りついたように動きを止める。
ウィルは顔を軽く擦って、ふと上を見上げる。
そして、私と目が合う。
ウィル 「……げ」
シェイド 「それが、第一声か?」
私は自分でもわかる位、わなわなと振るえる。
ウィル 「あ、あっはは〜…た・だ・い・まっ♪」
ウィルは可愛くそう言う。
他の人はどうかは知らないが、私は一切そう思わない。
これは悪魔の笑みだから…!
シェイド 「お前たちは……また、砂漠に行ったのか?」
私はできるだけ冷静を装ってそう言う。
正直、爆発寸前と言っても差し支えないはずだ。
ウィル 「ええっ!? いってないよ?」
ルナ 「う、うんうん…!」
ふたりは口裏合わせるようにそう言う。
他の人がどうかは知らないが、私は絶対信じない。
幾度となく見てきた光景だから。
シェイド 「また見え見えの嘘を…その台詞何度聞いたか……!」
ウィル 「…え〜と、ごはんまだかなぁ〜(汗)」
ルナ 「そうそう、それそれ!」
ふたりは私の横をすり抜けて逃げる。
私は大きく息を吸って、力を込める。
シェイド 「いい加減にしろーーー!!」
ルナ 「えーーーんっ、だってウィルがーーー!」
ウィル 「ちょっと! なんであたちのちぇいなの!? ルナもよろこんでちゃんちぇいちたぢゃない!」
私は力の限り怒鳴った。
ウンディーネ以外の子供たちは微動だにしない。
もう見慣れた光景だろうから。
肝心のウンディーネは目を見開いて呆然としていた。
シェイド 「…もういい。今日はお前たちに紹介しておく子がいる…仲良くするんだぞ?」
ウィル&ルナ 「はぁ〜い…」
シェイド 「ほら、ウンディーネ…」
私は疲れたようにそう促す。
ウンディーネはまだ呆然としながら。
ウンディーネ 「えっと……ウチは、ウンディーネ・アクアマリン」
ウィル 「えっとね、あたちはね! ウィル・オ・ウィスプ・セレーヌ・アイリドンム・ソルファウス・スラン・ダイヤ!」
ウンディーネ 「…何やて?」
ウンディーネは予想通りの答えを放つ。
この名前を聞いて、最初から全部言えたのは私とゾルフ先生だけだからな…。
ウィル 「だ・か・らぁっ! ウィル・オ・ウィスプ・セレーヌ・アイリドンム・ソルファウス・スラン・ダイヤ!! おぼえた、ウンディーネ?」
ウンディーネ 「えっと…多分」
ウンディーネ (何や見たところ…かなりの子供みたいやけど、クソ生意気なガキやなぁ…)
シェイド 「(押さえろ…ウンディーネ、こういうやつらなんだ…)」
ウンディーネ 「……」
私はウンディーネの心情を理解しながら、抑えさせる。
こいつらを正面から相手にできるのは私だけだ…。
本音は嫌だけど…。
それでも、ウンディーネは私の気持ちを汲んでくれたのか、苦笑ながら何も言わないでくれた。
ルナ 「ウンディーネさん! わたしのともだちになってくれますよね!?」
ウンディーネ 「ほえ? …あ、えっと…うん」
ウンディーネはルナに圧倒されたようにそう頷いた。
多分本人は何を言っているのか気付いてない…。
ウィル 「あーーー! ルナぢゅるいーーー!!」
ルナ 「はやいものがちだもんっ!」
ルナはそう言ってウンディーネに抱きつく。
ウィル 「あーん! あたちもーーー! ともだちになるのーーー!」
ウンディーネ 「う、うん…」
ウィル 「やたっ! わーい!!」
ウィルもはしゃいでウンディーネに抱きつく。
シェイド 「……」
ウィル&ルナ 「わーい! わーい!!」
ウンディーネ 「はは…」
ウンディーネはもはや放心していた。
仕方ないか…このふたりが相手では…。
ウィル&ルナ 「わーい! わーーーい!!」
シェイド 「……」
ウィル&ルナ 「わーい! わーーーい!!」
シェイド 「…いい加減に静かにしろ!!」
ウィル 「きゃーーー!!」
ルナ 「えーーーんっ!!」
シェイド 「全く…毎回毎回同じことを言わせるな!! 少しは静かにしろ!」
私はもう一度全力で叫ぶ。
この度に私の寿命が削られている気がする…正直。
ウィル 「ぶー! べちゅにいいぢゃない!!」
ルナ 「えーんっ! ウンディーネさん、たすけてーー!」
ウィル 「あーー! あたちもーーー!!」
ウンディーネ 「あ、あはは…」
シェイド (もう嫌……)
本当に泣きたかった。
こういう時だけは年長者の位置を恨んだ…。
本当に泣く事はもう二度とないかもしれない…。
………………。
ノーム 「……」
ジン 「そうだったのか…」
サラマ 「…まぁ、結局はあいつらのせいでシェイドがこうなったんだ…」
ノーム 「……」
ウンディーネ 「どないしたん? ノーム」
ノームは放心していた。
余程インパクトがあったんかなぁ?
まぁ、さすがのウチも呆然とするしかなかったからなぁ…。
ウチは内心でそう思いながら、腕を組んでうんうんとひとりで頷く。
ノーム 「いや…昔のウンディーネがそんなに手がつけられなかったなんて」
ウンディーネ 「あっはは……ってそっちかい!?」
ウチはずびしぃっ!とノームに右手でツッコミを入れる。
角度は水平に! これが基本や!!
シェイド 「…まぁ、あのふたりに比べたら楽なものだ」
シェイドは冷静にそう言う。
ホンマ…あのふたりだけはウチも敵わんわ。
ウチはそんなことを考えながら、今度はサラマの方を見てこう言う。
ウンディーネ 「そう言えば同じ頃に、サラマとも会うたよな…」
サラマ 「そうだな…ナルはそれより1年前にイフリート様に引き取られたからな…」
ウンディーネ 「ウチ、ナルがサラマの妹やと知った時はホンマに驚いたわっ」
ノーム 「俺も…だって、一度もそんなこと聞いてなかったもん」
サラマは意外と過去を隠すような節があるからなぁ。
意外に謎が多いやっちゃ。
結構裏ではいらんことしとるんかもしれんな…。
サラマ 「まぁ…事が事だけにな」
シェイド 「…仕方ないさ」
シェイドとサラマが同調したようにそう言う。
まぁ、このふたりがそう言うんやからホンマに辛かったんやろな…。
女性では今23歳でシェイドが女性最年長。
対して、サラマは22歳で男子最年長。
互いに思うとこは…あるんちゃうかな?
ふたりとも浮いた話は全く聞かへんけど…どう思っとるんやろ?
シェイドはともかく、サラマは結構気にしてるんちゃうかな?
ウチはそんなことを考えたが、シェイドの性格や意思を思い出して、考えるのを止めた。
ウンディーネ 「まぁ、ホンマにウィルとルナには度肝抜かれたわ…」
ノーム 「俺が産まれた頃からあれだったもんなぁ…」
ノーム 「ホントに…なんであんな性格なんだろ?」
ノームはガストレイス王国で産まれ、すぐに両親が死んだ。
いきなりひとり街の隅っこ、ダンボールの箱の中で泣きわめいとるのを先生に見つけてもろて孤児院に来たんやからな。
ホンマ、ノームは辛い時代に来たもんや…完璧にウィルとルナの玩具やったからな。
ウンディーネ 「ノーム、あんまあのふたりの悪口言うとったら事やで?」
ジン 「何が…?」
シェイド 「…確かにな」
サラマ 「ああ…あれは酷かった」
ノーム 「うわ…思い出したくないっ」
ジン以外が、思い出すように考える。
ちなみに、ジンはウチらの中では一番遅く孤児院に来た。
今から5年前に、ジンは孤児院に預けられた。
元々は、風の精霊王であるイーリス様に育てられたいわゆるエリート坊ちゃん言う奴やった。
せやけど、別にエリートとかそう言う、堅っ苦しい立場に捕らわれず、むしろ自由を愛するナイスガイや。
つうても当時12歳の少年やけどな。
まぁ、そんな性格やし、すぐに皆と仲ようなった。
ジン 「だから何が?」
ウンディーネ 「あれは…ノームが3歳ぐらいの時やから」
シェイド 「今から9年前だ…」
当時を知らないジンのために、ウチらはその当時のことを思い出す。
ウンディーネ 「実はな、ノームが、誤ってウィルのおやつを食べてしもてん」
ウンディーネ 「しかも、ウィルの大好きなあっま〜いチョコケーキ!」
ウチは甘いをかなり強調してそう言う。
ウィルは大の甘党なんよ。
ジン 「で…思いっきり殴られたとか?」
ジンは冗談混じりかどうか、右ストレートを打つジェスチャーをする。
それを見たサラマが大きく首を横に振ってこう言う。
サラマ 「そんな生易しい物じゃない…確か、いきなり一本背負い投げ食らわして…」
ウンディーネ 「それから、バックドロップや」
ウチが続く、続いて1秒開けん内にシェイドが…。
シェイド 「その後、間髪入れずにパワーボムだ」
ノーム 「最後にジャイアントスイング…」
ノームはかなり痛々しい顔で最後にそう言う。
ジン 「どうやら…あいつらには逆らわん方がいいようだな」
サラマ 「賢明だ…」
ジンは最後にそう結論付ける。
サラマは当然とのごとくうんうんと頷いた。
サラマもウィルに結構おちょくられとったからな…怖さも十分知っとるんやろ。
ジンはむしろ、ウィルやルナと仲ええからな…不思議な位や。
ノーム 「あ〜…なんか気分悪くなってきた…3歳の頃の記憶なんて薄いけど、あれだけは鮮っ明に! 覚えてる…」
ウンディーネ 「まぁ…さすがに先生とシェイドに説教されとったけどな」
ウチらがそこで1区切りをつけると、先生が洗い物を終えてこちらに来た。
ゾルフ 「ほっほっほ…懐かしい話じゃの」
ゾルフ先生はよっこらしょっ…と言いながら椅子に座ろうとする。
だが、途中で止まった。
その時、その場にいる全員ががばっと無言で立ち上がる。
ゾルフ 「…どうやら、敵らしいの」
シェイド 「…ええ」
ウンディーネ 「行くで、ノーム!」
ノーム 「合点承知!!」
ジン 「…ノームって時代劇マニアだっけ?」
サラマ 「知るかっ、とにかく外だ!」
シェイド 「…まさか、こんなに早くくるとは…」
ウチらは全員で外に出る。
バタン! と大きな音をたて、ウチらは小屋の外を凝視する。
すると、そこには異様な気を放つ、ひとりの男が立っとった。
…To be continued
次回予告
シェイド:修行のため、先生の家に訪れた私たち。
そこに現れた、ひとりの刺客。
それは、十騎士のひとり…剛気・闘羅 襲。
敵の圧倒的な力に私たちはかなりの苦戦を強いられる…。
次回 Eternal Fantasia
第16話 「シェイドの戦い」
シェイド 「この男も…戦争の犠牲者か……」
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