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第45話 「REQUIEM」

悠 「………」

気が重い…。
シーナちゃんたちは無事だろうか?



未知 「恐らくゼルネーヴです」

悠 「マジかよ…」

レイナ 「シーナっ」

ユミリア 「大丈夫よ…仲間を信じなさい」

シェイド 「…確かに」



レイナ 「悠…」

甲板に出ていた俺にレイナが話し掛けてくる。
考えは一緒だろう。

悠 「信じるしかないのはわかるが…」

レイナ 「心配よね…」

そして、ゼルネーヴが見えてきた。
俺たちは突入準備に入る。



シーナ 「サリサ、どうなの?」

サリサ 「…兵士たちは全て、動けなくなっています」

セリスさんが治療をしているがやはり辛そうだ。

セリス 「この場は私たち3人と、氷牙君の計4人ですね」

治療を終えたセリスさんがやってくる。

シーナ 「氷牙さんは?」

サリサ 「偵察に行っています」

セリス 「兵士たちは命を繋げるのがやっとです」

シーナ 「…姉さん」



氷牙 「…やはり邪獣を張り巡らせているか」

俺の力だけでは、どうにもならんな…。
新十騎士のオミクロンとか言ったか。
あいつにすら勝てるかどうか。
修行は怠ったつもりはないが、やはりブランクがあるな…。
俺はその時気配を感じる。

氷牙 「あれは…?」

オミクロン 「どういうことです!?」

マーズ 「知ったことじゃない。やるならお前がやれ」

オミクロン 「ゼイラム様の命令ですぞ!?」

マーズ 「俺はあいつの部下になった覚えはない」

オミクロン 「マーズ様っ!」

マーズ 「ふん…そこのネズミ出て来い」

氷牙 「くっ!!」

ドオンッ!!

マーズの放った闘気弾で俺は姿を現してしまう。
やはり、マーズ相手に気配を隠すのは無理がある。

マーズ 「氷牙か、偵察か?」

氷牙 「……」

オミクロン 「貴様…よくここまで」

氷牙 「…ち」

邪獣が囲んでくる。
逃げ場はない。

オミクロン 「ここを貴様の墓場にしてやる!」

氷牙 「できるか? 貴様に…」

オミクロン 「ふっ、この数相手ではどうにもなるまい」

そう言って邪獣を俺の周りを囲ませる。

マーズ 「…ふん」

マーズは興味が無さそうにその場を去る。

氷牙 (違う…マーズはこいつらは何かが違う)

オミクロン 「死ね」

氷牙 「舐められた物だな…氷の邪獣で俺を倒せると思っているのか?」

俺が術をかけると、氷の邪獣はいとも簡単に砕け散る。

オミクロン 「なっ!?」

氷牙 「操り方を覚えればその逆もできるということだ」

もっとも、これができる元十騎士は恐らく俺だけだろうが。

オミクロン 「だが、貴様は俺には勝てん…」

氷牙 「エレメント・ガードか…」

確かにな…だが、攻略法がないわけでもない。

オミクロン 「死ね、氷牙!!」

氷牙 「……」

ドオオオオッン!!

オミクロン 「があああ!!」

爆音。
俺は火薬をぎっしりと詰めた爆弾をオミクロンに放つ。

氷牙 「わかったか、エレメント・ガードでは銃火器を防ぐことはできん」

オミクロン 「くそっ!!」

氷牙 「……」

俺は何も言わずにそこから逃げる。
爆弾はあれきりだ、二度目はない。


………。
……。
…。


サリサ 「氷牙…遅いわね」

サリサが心配していると、やがてひとつのパルスを感じる。

氷牙 「…今帰った」

サリサ 「氷牙! よかった…」

サリサが氷牙の側による。

シーナ 「大丈夫ですか?」

氷牙 「一応はな…」

セリス 「それで、どうなの?」

セリスさんが状況を聞く。

氷牙 「どうも、マーズはまだ動かないようだ」

シーナ 「オーラマスター…」

マーズ・ディオス。
なぜ動かないの?
はっきり言って、今は最大のチャンス。
私を倒せば、実質ヴェルダンドは落ちる。

セリス 「…考えていても仕方がありません。今は生きることが重要です。

サリサ 「と言っても、ここはもう大陸の最南端。逃げ場は…」

氷牙 「うって出るしかあるまい…」

シーナ 「……」

私はそこでパルスを感じる。

シーナ 「姉さん!!」

サリサ 「レイナ様?」

シーナ 「パルスを感じるわ! 来る!!」

セリス 「……あれは!」

氷牙 「どうやら、運は味方しているようだな」

私たちは全員空を見上げる。



ユミリア 「飛空挺を降ろして!!」

ナル 「降下します!」

飛空挺は降下を始める。

レイナ 「先に降ります!!」

悠 「レイナ俺も!!」

レイナは俺を抱えて、地上に降り立つ。

そして、目の前にはシーナちゃんがいた。

レイナ 「シーナ!」

シーナ 「姉さん!!」

ふたりは再会に喜び抱き合う。
俺もちょっと目頭が熱くなった。


こうして、俺たちは、再会を果たしたのだった。


………。


俺たちは飛空挺の中で集まり、作戦会議を開いていた。

ユミリア 「…ドグラティス、ゼイラムは恐らくデミール城の中ね」

悠 「っていうか、ドグラティスは目覚めているんですか?」

俺が最もな疑問を言うと、ユミリアさんはしばし考え。

ユミリア 「わからないわ…目覚めていればもっと侵攻が早くてもおかしくない気はするわ」

シェイド 「それで、これからどうするのです?」

ユミリアさんは地図を用意して説明する。

ユミリア 「デミール城には4つの入り口があるわ」
ユミリア 「東西南北ひとつずつ」

ユミリアさんは地図を指差しながらそう言う。

悠 「じゃあ、分散して?」

ユミリア 「ええ…恐らく、正面が一番危険で、左右が一番楽よ」

シェイド 「後方は?」

ユミリア 「正面ほどではないはず…それでも危険ね」
ユミリア 「場合によっては無視してもいいわ」

シャイン 「ですが、4つに分けるにこしたことはありません…それだけ敵を分散できます」

それを聞くと、ユミリアさんは難しい顔をして。

ユミリア 「あまり変わらないわ…」

シェイド 「というと?」

ユミリア 「恐らく敵兵はほぼ全て邪獣」
ユミリア 「これはドグラティスが生きている限り無限に現れるわ」
ユミリア 「そして、問題の邪獣兵…」

バル 「だが、それには限りがあるでしょう?」

ユミリア 「そうね…それでも数百はいるわよ」

悠 「数百…」

さすがに気の遠くなる数だ。邪獣は無限だし…。

ユミリア 「残った十騎士はオミクロンとラムダ…」

シャイン 「私は背後に回ります…恐らくラムダも」

シャインさんが強く主張する。
気持ちはわかる。
ラムダとはいわば肉親。

ユミリア 「いいわよ、北は任せるわ」

シャイン 「はい」

ユミリア 「マーズは、私が行けば動くわね…」

シェイド 「ユミリアさん…」

ユミリア 「…わかったわ、マーズはあなたに任せるわ」

俺にはよくわからなかった。
何でシェイドさんが?
だが、気にする暇もなく部隊の編成に入った。

ユミリア 「まず南。これは私が指揮するわ。メンバーはシェイド、フィリア、ドリアード、ノーム、未知、降、美鈴、栞、ネイ!!」
ユミリア 「一番激戦区だから、気を引き締めるのよ!」

南メンバーが返事をすると、ユミリアさんは次のメンバーを発表する。

ユミリア 「次に北。シャインを隊長に、ナル、ウンディーネ、烈の4人!」

ナル 「4人…」

ウンディーネ 「まさに決戦やな…」

烈 「やるしかねぇ…」

ユミリア 「次に東! シオンを隊長ににウィル、ルナ、セリス、ディオ」

シオン 「わかりました!」

ウィル 「これで最後なんだよね…」

ルナ 「うん…」

ユミリア 「最後に西。バルバロイを隊長にシャール、デルタ、シーナ、サリサ、氷牙」

バル 「了解しました」

シーナ 「…勝たなきゃ」

シャール 「勝って、本当の幸せを掴まなきゃな」

デルタ 「うん」


悠 「あの…俺とレイナは?」

俺は自分たちが外されていることに疑問を感じ、ユミリアさんに尋ねる。
さすがに忘れてたなんていうギャグは無しですよね?

ユミリア 「悠君とレイナは城内部に突入してもらうわ」

悠 「はぁっ!?」

ユミリア 「いわゆる決死隊よ」
ユミリア 「ドグラティスを倒せるのはあなただけ…そして、レイナはそれを助けることができる」

レイナ 「……」

俺とレイナは言葉を失っていた。
本当に俺の成功で世界が変わる。
そう実感できた。
失敗はできない。

ユミリア 「正面の部隊は悠君とレイナを上空から飛び込めるように道を切り開くのが目的よ!!」

フィリア 「難しそうだな…」

未知 「だけど、やるしかありません…」

ユミリア 「他の部隊は、あくまでそこを維持して! 正面に敵を回してはダメよ!!」

メンバーはそれぞれ答え、そして、会議は終わった。


………。


悠 「…もうすぐか」

俺はひとり考えていた。
これで全てが終わる。
だけど終わったらどうなるんだろう?
皆、それぞれの国へ帰ってしまう。
それはそれで、寂しくなるな…。

ヴェイル (考え事か?)

心の中にヴェイルさんが語りかけてくる。

悠 (まぁね…もうすぐ終わるんだってね)

ヴェイル (心配するな…お前にはそれができる)

悠 (もちろん…ヴェイルさんとオメガを信じるよっ)

ヴェイル (そうだ…信じる心が力となる)

俺は意を決して、立ち上がった。
最終決戦が来た。



ユミリア 「最後に…ひとつだけ言っておくわ」

ユミリアさんの言葉を俺たちはじっと待つ。
やがて、ユミリアさんは大きな声で。

ユミリア 「皆! 死んじゃだめよ!? 必ず、生きて帰りましょう!! 自分たちの故郷に!!!」

俺たちはその場の恐怖を全て振り捨てるように大声で答えた。

そして、飛空挺がデミール城に向かって進む。
それぞれの方角に部隊を配置し、再び南に戻る。
そして、正面の部隊と共に、飛空挺は最後の雄叫びをあげる。


ドオォンッ!! ズガアアァン!!

ナル 「く…」

飛空挺のバリアでも持たない…このままじゃ。

ユミリア 「レイナ! バリアの出力を上げて! シャイン、攻撃を捨てて!!」

レイナ&シャイン 「はいっ!」

飛空挺は煙を上げ、なおもデミール城を目指す。
だが、その数百メートル手前で落下することになる。

ドオオオオオオオオオンンッ!!!

悠 「く!」

ユミリア 「ここまでね…全員戦闘開始よ!!!」

その指示で、俺たちは一斉に外に出る。

悠 「………」

見渡す限り邪獣に囲まれた空間。
まさに悪魔の大地だ。
俺たちは臆することなく戦いを始めた。


………。


シオン 「敵を通してはいけません!! 全て撃破してください!!」

ウィル 「無茶言ってくれるわよ…」

ルナ 「やるしかないのよ!!」

セリス 「聖杖マナよ、悪しき者を退けよ!!」

カァァァァァッ!!

ディオ 「オラオラァ!! 片っ端から皆消し炭にしてやるぜぇ!!」

ズドオオオオオォォォンッ!!!

シオン 「ハァッ!!」

ザシュウウゥゥッ!!

倒しても倒しても出てくる。
邪神本体を倒さない限り無限に…。

邪獣兵 「抵抗する者全てを殺せ!! ひとりたりとも逃すな!!」

シオン 「く…このままでは!」

弱音は吐きたくないが、状況は不利だ…。

ウィル 「何!?」

突然、上空から炎が…。

私たちは上空を見上げる。

セリス 「あ…」

ロード 「我は魔竜王、ロード・ドラグーン! 平和のために、我らも戦おう!!」

ロード様が…。
ロード様は飛竜にまたがり、兵を率いて駆けつけてくれた。
後ろにはアリア様も見える。

アリア 「ロード、無理をしてはだめよ…」

ロード 「心配するな…尖兵ごとき、このゲイボルグの敵ではない! 不自由な体でも蹴散らしてくれる!」

ロード様は飛竜を自在に操り、敵を蹴散らしていく。

シオン 「よしっ、我々も続くぞ! 敵が現れるのならば全て叩き伏せるのみ!!」

ウィル 「よっしゃあ!」

ルナ 「ええーーい!!」

ディオ 「負けられねぇ…!!」

セリス 「マナよ…どうか我らにご加護を!!」



バル 「はああっ!!」

ザシュウッ!!

シャール 「せいっ!!」

デルタ 「はっ!」

倒しても倒しても出てくる。
そういえば300年前も同じようなことをやっていた奴がいたな…。
ならば、歴史を繰り返すまでだ!!

シーナ 「たあぁっ!!」

サリサ 「シーナ様、ご無理をなさらずに!」

シーナ 「そうも言っていられないわ!」

氷牙 「む?」

突然、空に気配を感じる。
敵の増援か?
俺たちは上空を見上げる。

ヴェルダンド兵 「シーナ様!! 我らヴェルダンド兵、同士と共にただいま見参!!」

シーナ 「同士?」

シャール 「あれは…リヴァイアサン様!!」

リヴァ 「イフリート、どうも旗色が悪いようだな…」

イフリート 「ふん…仕方あるまい、若い者どもだけでは手が足りんか」

何と、飛翼族の兵と共にガストレイス王国兵までも…。

ガストレイス兵 「シャール様! デルタ様! 今お助けします!!」

シャール 「ようし、これでこちらに有利だ!!」

バル 「ふ、俺たちも、こうしてやられたのだな…」

俺はひたすら剣を振るった。
守るべきものため…。



シャイン 「ラムダ!! やはり来たか!」

ラムダ 「決着をつける!!」

ラムダは棍で私に攻撃してくる。
私はそれを避ける。

ウンディーネ 「ラムダは任せるで!!」

烈 「俺たちはザコを蹴散らすんだな!!」

ナル 「シャイン、気にせず戦いなさい!!」

数が少ないが、敵は多い。
私たちは全力で戦う。

ラムダ 「はぁっ!!」

ドガァッ!

シャイン 「く…」

ラムダ 「無駄だ! 以前とは違う、エレメント・ガードによって、私は貴様に劣らん!!」

シャイン 「ならば、何故ヘパイストスが伝説の銃と呼ばれるか教えてやろう!!」

私はヘパイストスを構え、魔力、気力を込めて打ち出す。

ギュアアアアッ!!

ラムダ 「む!?」

ドオオオンッ!!

爆音。
ラムダは咄嗟に防御し、致命を避けた。

ラムダ 「馬鹿な…何故?」

シャイン 「ヘパイトス、および銃火器は無属性だ…よって、エレメント・ガードは発動せん」
シャイン 「エレメント・ガードは術者の属性と同じ属性を持った者を心の壁によって力を遮る」
シャイン 「だが、銃火器を使うことによって、エレメント・ガードは無視できる」
シャイン 「ただし、通常の銃火器では貴様にはダメージを与えられまい」
シャイン 「だが、ヘパイストスは使用者の力そのものを力として打ち出す」
シャイン 「ゆえに、エレメント・ガードなど俺の前では全く意味がない」
シャイン 「以上だ…質問はあるか?」

私は余裕を持って、そう尋ねる。

ラムダ 「く…例えエレメント・ガードがなかろうが、私は負けられんのだ!!」

シャイン 「諦めて投降しろ…命まで取る気はない」

私はそう促す。
だが、ラムダは応じなかった。

ラムダ 「ならば、お前が死ね!!」

ラムダは、単身突っ込んでくる。
私は意を決し、ヘパイストスを構える。

シャイン 「!!」

ラムダ 「!!」

カッ!!

一閃。
一瞬の煌きの後、ラムダは倒れていた。

ナル 「やった!?」

ウンディーネ 「まだ兵士がのこっとるで!!」

邪獣兵 「く、ラムダ様がやられた!! 邪獣たちよ、こいつらを…ゲボッ!!」

烈 「うっとおしいんだよ!!」

俺は兵士を手早く叩きのめす。

シャイン 「ラムダ…」

ラムダの体はすぐに灰となり、風と共に消えた。
私は心にラムダの死を刻み、残った邪獣たちと戦った。



ユミリア 「フィリア! ドリアード! 空の道を切り開くのよ!!」

フィリア 「いくぜドリアード! 俺に合わせろ!!」

ドリアード 「はいっ!!」

ドリアードの魔力がアルテミスの矢に通じ、力を増幅する。

ギャアアアアアアアアアアァァァァッ!!!

蒼き光と共に道が作られる。

悠 「レイナ!!」

レイナ 「ええ! エア・ウイング!!」

レイナは魔力を放出し、風魔法で加速する。
次の邪獣がぞろぞろ出てくる。
まさに巣だな…。

ヴェイル (意識を集中しろ! 我はお前の意思で自由自在に変化する)

悠 「そうか…よしっ!」

俺は弓矢をイメージし、オメガに伝える。

悠 「アロー!!」

オメガは弓となり、俺は力の矢を引く。
そして、正面に向かって放つ。

ギュウウウウゥゥゥンッ!!

ズドオオオオオオオォォォンッ!!!

ちょうどよく、城の2階の壁に穴を開ける。
俺たちははそこから侵入する。


ユミリア 「さぁ、後はここを持ちこたえるだけよ!!」

マーズ 「ユミリア…待っていたぞ」

気が付くと背後からマーズの声がする。

ユミリア 「残念ね…今回はわざわざあなたをご指名の娘がいるわよ」

マーズ 「何?」

マーズはただならぬ、気を感じたのか、戦闘態勢をとる。

シェイド 「マーズ、貴様の相手は私だ」

マーズ (こいつ…強い! ユミリア以上の物を感じる)

マーズはシェイドを見据えると、高らかに笑い出す。

マーズ 「くくく…面白い! この世界に、まだ俺を本気にさせる戦士がいるとはな!!」

シェイド 「覚悟しろ、お前の目を覚ませてやる」

マーズ 「何のことだ?」

シェイド 「戦えばわかる!!」

私は全力で切りかかる。

ガキィ!

マーズはそれを闘気に覆われた腕で掴む。

シェイド (ディアボロスの一撃を止めるとは…!)

そういえば、ラグナロクも止めていたのだったな…。
私は連撃打ち込む。

ガキィ! キィンッ! ギィィンッ!!

ことごとく止められる。
スピードでも差はない。
ユミリアさんの実力というがよくわかる。
当然だが戦い慣れしている、こちらとは戦闘経験が違う。

マーズ 「ハアアッ!!」

ドガァッ!!

マーズの蹴りを私は剣で受けるが、衝撃で体が浮く。

シェイド (何という力だ…!)

マーズ 「楽しませてもらうぞ! 久しぶりの面白い戦いだ!!」

マーズは多彩な格闘技で私を襲う。

私は最小限の動きでそれを受け流す。

マーズ (これは…ユミリアの闘法! ますます気に入った!!)

ユミリア (いいわよ…私よりも動きが綺麗だわ、かつ無駄もない)
ユミリア (マーズ、あなたも気づくわ。シェイドのそこの深さに)

ドグッ!

シェイド 「ぐぅ…!」

マーズの蹴りがヒットする。
私はよろめく。
マーズは更に追撃をかける。

シェイド 「!!」

マーズ 「!?」

ザシュゥッ!!

瞬間、私の体は闇に消え、マーズの頬を切り裂く。

マーズ 「何ぃ…幻影か?」

私はマーズの背後に回り、上段に切る。

マーズ 「なめるなぁ!!」

シェイド 「!!」

私の体はまたも闇に消え、マーズの体を切り裂く。

マーズ 「どういうことだ…!?」

ユミリア (あなたは強い…だけど、シェイドには勝てないわ)
ユミリア (シェイドは人の心を読み、実体を闇に消せる術を使える)
ユミリア (ディアボロスの力と合わさった今、時の力以外では勝てる者はいないかもしれない)

シェイド 「マーズ!!」

ザシュッ!!

マーズ (負ける…? この俺が…)

ドシュッ!

マーズ (あの時も…こんな感じだったか?)
マーズ (ふ…そうか)

シェイド 「………」

ドシャアッ!!

マーズは糸の切れた人形のように倒れた。
そして、私は剣を鞘に収めた。

マーズ 「…俺の負けだ」

シェイド 「…わかったか?」

マーズ 「何がだ…?」

シェイド 「…お前の力は、ただ戦うためだけの拳ではない。本当に目的を持った正しい拳ならば、私は負けていたかもしれない…」

マーズ 「お前は、その力を持っているということか…」

シェイド 「……」

マーズ 「望みは何だ?」

マーズがゆっくりと体を起こし、そう聞く。

シェイド 「自分で決めろ…私は戦う」

私は剣を再び抜き、邪獣たちと戦う。

ユミリア 「マーズ、後は好きにしなさい…私はもう、あなたを敵とは思わないわ」

私もシェイドを追って敵と戦う。


マーズ 「…ふ、ははははははっ!!」
マーズ 「いいだろう、この命、貴様らにくれてやる!!」

俺は残る全ての力を使って、戦いの地に向かう。


ノーム 「おりゃあ!!」

ドリアード 「ノーム、頑張って!!」

切りがない…さすがにばててくる。

ドシュウッ!!

ネイ 「だめよ! 諦めちゃ!!」

私は疲れる体に鞭を打って戦いつづける。

未知 「はぁ…はぁ…」

栞 「未知様! ご無理をなされては!!」

美鈴 「栞お姉さま!」

降 「くっそー!!」

未知ちゃんが消耗している、僕が守らないと!

シェイド 「はあああ!!」

一振りで数十の邪獣が散る。
だが、数は減らない。

ユミリア 「悠君、レイナ、後はあなたたち次第よ!!」


オミクロン 「く…何という奴らだ、この数相手にものともせんとは」
オミクロン 「だが、貴様らもここまでだ!! ここで一気に…」

ドゴオッ!!

瞬間、オミクロンは吹っ飛ぶ。
力をちょっと入れただけで吹っ飛ぶとはな。

オミクロン 「ぐばあぁ!!」

マーズ 「弱すぎる…所詮こんなもんだ」

オミクロン 「馬鹿な…裏切るのか?」

オミクロンは立ち上がる。

マーズ 「言わなかったか? 俺はお前らの味方になったつもりはない」

オミクロン 「く…だが、その傷ついた体で、何が…!」

オミクロンは氷の剣で俺に突っ込む。
俺はそれを身動きひとつせずに受ける。

ガキッ!!

剣は俺の頭に当たって時点で砕ける。

オミクロン 「なっ!?」

マーズ 「どうした、もう終わりか? なら、今度はこっちの番だ」

ドグシャァッ!!

俺の拳が、オミクロンの体を吹き飛ばす。
オミクロンは体の骨をバラバラに砕かれ、すぐに灰となる。

マーズ 「ふ〜…さすがに動くのも辛いな」

さすがに関節が軋みやがる…。
再生には時間がかかるな…。
俺はしばらく戦線を離脱する。

マーズ (ふ…生きるというのもいいかもな)
マーズ 「ん?」

俺は人の気配を感じる。
この地に人と呼べる存在はほぼない。
だが…?


ディラール兵 「我らディラール兵! ご助勢に参りました!!」

ステア兵 「ステア王国、同士と共に参上!!」

ドワーフ 「おっしゃー暴れるぞーーー!!」

人族、ドワーフやエルフ、獣人もいるな。
かなりの数だ…これなら敵にも劣るまい。

バルザイル兵 「進め!! ディオ様も戦っておられるぞーーー!!」

タイタン 「間に合ったか」

セラフィム 「まったく…こういう事は他の者に任せておけば」

タイタン 「だからと言って、子供を戦わせていては、後世に笑われよう!」

セラフィム 「わかってるわ…だから来たのでしょう」

驚いた…守護者まで来るとは。
こいつらの結束力は並ではないな。

ハーデス 「マーズか…酷いやられようだな」

マーズ 「ハーデスだったか? 闇の守護者の」

俺は座りながら答える。

ハーデス 「…その傷、シェイドにやられたか」

マーズ 「よくわかったな…」

ハーデス 「機甲族の貴様ならば、放っておけば勝手に回復するだろう」

マーズ 「知っていたのか?」

俺は機甲族といったことに対して返した。

ハーデス 「…今はそんなことはどうでもいい。貴様は敵ではあるまい?」

マーズ 「……へ」

俺は安心して、眠りにつく。

ハーデス 「こんな所で眠れるとはな…空恐ろしい奴だ」


………。
……。
…。


悠 「中心までくれば静かだな…」

レイナ 「ええ、そこまでが大変だったけど」

中に入っても、邪獣が押し寄せてくる。
それを無理やり突っ込んで城の地下に今いる。
まだ、下に続く穴を俺たちは進んでいる。
この先に何があるのか…。
なんとなくはわかった。
そして、戦いの終わりを俺は見つめていた。


…To be continued



次回予告

レイナ:地下のそこにある物。
待っていたマジックマスター、ゼイラム。
そして…そこには邪神ドグラティスが。
戦いつづける仲間たち。
今、全てが終わりを告げる…。

次回 Eternal Fantasia

First Destiny
『運命の絆』
完結


最終話 「今との別れ、そして…明日との出会い」

レイナ 「私は、信じているから…」



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