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第5話 「ネイ・エルク愛好会」

キーンコーンカーンコーン…

ユウ 「ようしっ、今日の授業はこれで終わりっと!」

俺が荷物をまとめ、帰ろうとすると。

ネイ 「ユウ、一緒に帰ろっ」

と言って、ネイが声をかけてくる。

ユウ 「おう」

そして、俺はそう受け答える。
まぁ、断る理由もないしな。


………。


ユウ 「………」

ネイ 「……♪」

何だか違和感を感じる。

ユウ 「……?」

ネイ 「どうしたの?」

ユウ 「いや…何か視線を感じる気が」

ネイ 「気のせいじゃないの?」

ユウ 「そうかな…?」

とりあえず、気にしないことした。

レイナ 「ユウ! もう帰るの?」

ユウ 「おお、レイナもか?」

レイナ 「うんっ」

レイナは気持ちのいい返事をする。
学園生活もすでに慣れたようだな。

ネイ 「レイナも一緒に帰ろうよ♪」

レイナ 「そうね…そうしようかな」

レイナはそう言って、俺たちと同行する。


………。


ユウ 「………」

やはり視線を感じる。
俺は周りを密かに確認する。

ユウ 「……!?」

何だ今のは!?
確かに見えた。

ユウ 「ちょっと待て…もしかして、よく考えると…」

ネイ 「……?」

レイナ 「………」

俺はふたりの顔を見て、前の『アレ』を思い出す。

ユウ 「………」

よくわかった。
俺は恐らく、今現在学校中の学生の内の約4分の1を敵に回しているに違いない!
いや、1位と2位を連れて歩いている俺はもっと酷い状態かっ!?

ユウ 「………」

まずい…。
この状態ではいつ闇討ちされてもおかしくないぞ…。
めんどくさいことになりそうだな…。

ネイ 「どうしたの〜? 早く帰ろうよ…」

レイナ 「何かあったの?」

ユウ 「い、いや…帰ろう」

俺は決心して帰ることにする。
さすがに学校を出ればマシになるだろう。


………。


ユウ 「…ちぃ」

予想に反し、未だに誰かにつけられている感じがする。

ユウ 「………」

このまま寮までつけられるのか…?
俺はここであることに気づく。

ユウ 「……」

寮は男性寮。
すなわち、学生で溢れ返っている…。

ユウ 「………」

逃げ場はねぇ…。
しかしよくよく考えれば、俺を知っている人間ならわざわざ喧嘩売ってくる馬鹿もいないはずだが…。
一応前科があるからな…。
俺はそう考えると、割と安心することができた。

ユウ (そうだな…この際来たら二度と来ないようにぶちのめせばいい)



そして…。


ユウ 「…何にもないな」

やはり、こんなもんだろう。
俺が1年生の頃に幅を利かせていたのがここで役に立つとは…。
ただ、問題は1年生の存在か。
俺のことをさすがに知らないだろうからいきなり襲ってくるかもな…。
まぁ、来たら来ただ。
そのとき考えよう。


次の日…。


ユウ 「………」

俺は放課後の下駄箱で硬直する。

ユウ 「……あのな」

『放課後、体育館裏まで来い!!』

どーーーんっ

ユウ 「……」

いきなり馬鹿らしくなる。
無視するとややこしくなりそうだが…。

ユウ 「……」

行ってもややこしそうだな。

ユウ 「はぁ…」

俺はため息をひとつついて、体育館裏に向かう。



ユウ 「やれやれ…どこの馬鹿だ、ったく」

俺は現場で周りを見渡す。

声 「ふっふっふ…よう来たな」

姿は見えないのに声が聞こえる。

ユウ 「………」

声 「とうっ!」

かけ声が聞こえたかと思うと、突然の俺の目の前にひとりの男が現れる。

ユウ 「あんな古臭い果たし状書いた恥ずかしい男はお前か?」

俺はいきなりそう言う。

男 「誰が恥ずかしい男やねん!?」

ユウ 「お前だよ…」

俺はきっぱりと言う。
すると、男の後ろからもうふたり男が現れた。 見たところ、後ろのふたりは真中の男の部下というところだろうか?
俺から見て左側の男。
やけにオドオドしてるな…かなりびびってるんじゃないのか?
右側の男。
眼鏡をかけて、やけに体が細く見える。
完全に理科系やら文科系のお坊ちゃんといった感じだ。

男・中 「ここに呼び出されたわけはわかるやろ?」

ユウ 「大体はな…」

考えたくもねぇ…。

男・中 「なら、ひとつだけ聞いくわ! お前…女はおるんか?」

ユウ 「……はぁ?」

一瞬わけがわからない。

男・右 「ジョグ…お前も相変わらずやな、おらへんのわかってて聞いてるやろ?」

突然眼鏡の男がそうツッコむ。

ジョグ 「ふっ…ワイのポリシーやからな」

何が…?

男・左 「さすがジョグ…」

ジョグ 「ふっふっふ…まぁこれで心置きなくお前をぶちのめすことができるわ」

何か勝手に話が進んでるし…。

ユウ 「・……はぁ」

なんともやるせない…。

ジョグ 「喰らえ! ワイの鉄拳を!!」

ジョグと呼ばれる男は俺に向かってパンチを繰り出す。
俺はそれを簡単に捌いて逆にビンタを食らわす。

ジョグ 「ぶっ!」

ジョグは簡単によろける。
も、もろすぎる…。

ジョグ 「へっ、まぐれやろ…? このっ!!」

そしてまた同じパターン。

ジョグ 「ぐぶっ!!」

男・左&右 「ジョグ!?」

ジョグ 「やるやない」

ジョグは微かに笑って、さらに突っ込んでくる。
俺は今度は往復ビンタで2〜3発。その後に足払いで転ばす。

ジョグ 「ぐふっ…」

ユウ 「………」

恐ろしく弱い…。
どうしよう…?

男・右 「もうやめとけっ、あれは無理や!」

ジョグ 「黙らんかい! 男には退けん時がある!!」

俺はこの時、あることに気づく。

ユウ 「お前…珍しい方言使うな?」

ジョグ 「ふっ、こっちでは珍しいやろな…」

ジョグは服についた砂を払って起き上がる。

ユウ 「俺も世界中を回ったけど、お前のような方言をした奴はひとりしか知らないぞ?」

ジョグ 「アホ言いなや…こっち側でワイ以外にオサカ弁言う奴がおるかい」

ユウ 「オサカ弁…? 聞いたことないな」

ジョグ 「そらそや…カオスサイドの国やからのう」

ユウ 「カオスサイド…? なんだそりゃ?」

突然聞いたことのあるようなないような言葉が出てくる。

ジョグ 「かあ〜っ、そんなことも知らんのかい! セントサイドのもんは学が足らんのう…」

ユウ 「悪かったな…俺は体育会系なんだっ」

ジョグ 「なら教えたるわ! カオスサイドはこっちの世界、すなわちセントサイドの裏側の世界や!!」

ユウ 「裏側…」

そう言えば聞いたことあるな…裏の世界の話。
確か…ヴェルダンドよりも北、レギルよりも南、デリトールよりも東、グレイヴよりも西の海を隔てた地に広がる大陸の話。
俺の父さんがいたかもしれない世界…。

ジョグ 「そして、ワイらはカオスサイド、精霊王国オサカからこっちに来た精霊っちゅうわけや!!」

ユウ 「で、お前らの名前は? 後学年は?」

ジョグ 「ワイか…? ワイはジョグ・ダン! 闇の精霊で2年や!!」

男・右 「僕はポール・シモン…風の精霊で同じく2年や」

男・左 「…僕はピノ・パン。地の精霊で同じく2年」

ユウ 「何だよ…タメじゃねえか」

ジョグ 「そう言うお前の名前は何やねん!?」

ジョグは聞き返してくる。

ユウ 「何だぁ? 知らずに喧嘩売って来たのか?」

ジョグ 「当たり前や!! 来たばっかでクラスも違う奴のこと知るかいな!!」


ユウ 「まぁいいか…俺はユウ・プルート。CクラスでランクはS」

ポール 「え、Sランク!? 今回の高等部新入生ではひとりもおらへんかったS…?」
ポール 「いや、それよか…プ、プルートってまさか…!?」

ジョグ 「何や? プルート? プルート…プルート」

その時、ジョグの顔が青ざめる。

ジョグ 「まさかっ!? お前は、帝国の…!?」

ユウ 「何だ? 帝国って…?」

ポール 「知らへんのか? 何や…ただの同姓かいな。驚いたわ…」

ユウ 「何だよ? 教えてくれよ…」

ポール 「全く、これやから無知な奴は困るわ…ええかっ? プルート帝国はカオスサイドの大陸中の国全てを支配しとる、いわば実質カオスサイド自身なんや」
ポール 「そんで、その帝国を1代で気づいたんがかのテラ・プルートなんや!!」

ユウ 「テラ・プルートだとっ!?」

俺はポールににじり寄って、そう叫ぶ。

ポール 「な、何や…知っとるんか?」

ユウ 「いや、詳しくは知らない…だが教えてくれ!! その人は俺の父さんらしいんだ!!」

ポール 「なっ!?」

ジョグ 「つうことは…やっぱ」

ピノ 「…皇帝様のご子息?」

ユウ 「皇帝…確かに王族は聞いてたけど」

ポール 「まぁ、残念やけど、君のためになるような情報はないな…諦めてくれ」

ユウ 「そうか…」

ジョグ 「なんや、お前はとんでもない奴やったんやな…S言うのも納得や」

ユウ 「ところで、今更だが何で俺に果たし状なんて…?」

ジョグ 「お前がネイちゃんにべたべたするからや!!」

ユウ 「はぁ…? いつ俺が…つかネイちゃん!?」

ジョグ 「そや!! ワイらのアイドルネイちゃんや!!」
ジョグ 「ワイらはネイ・エルク愛好会や!!」

ユウ 「愛好会…?」

ジョグ 「そや! コンテストみたんやで〜? 可愛かったわ…ワイ一発で惚れたわ」

ユウ 「そうだったのか…まぁ、俺とネイは『友達』だから」

俺は一応友達を強調しておく。

ジョグ 「…まぁええわ。負けたんはワイや…別にもうどうでもええよ」
ジョグ 「ワイがネイちゃんのこと好きなんわ変わらんしな」

中々まともなことを言う…。
そこらへんのオタクとは違うようだな。

ジョグ 「拳を交わしてわかったわ…。お前は他の男どもとはちゃう。単なるスケコマシとちゃうわ」

ユウ 「そ、そうか…ありがとよ」

ジョグ 「まぁ、他にもお前のことよう思っとらん奴は多いからのう…ワイからも幅利かせたるわ」

ユウ 「いや…余計なことはするなよ?」

ジョグ 「心配すな!! 今日からワイらはダチやないか!!」

ユウ 「あ、ああ…」

まぁいいか…面白い奴だしな。

ユウ 「よろしくな! 3人とも」

ジョグ 「おう! ワイらは3人ともBクラスやさかい、何かあったら声かけてや。力になるで」

ユウ 「Bってことはバルと同じクラスだな…」

ジョグ 「なんや、そっちの知り合いのことか?」

ユウ 「ああ、バルバロイ・ロフシェルって奴がそっちのクラスにいるから、仲良くしてやってくれよ。あいつ無愛想だからな」

ジョグ 「はっはっは! わかった声かけてみるわ!」
ジョグ 「ほなな!」

ポール 「それじゃ」

ピノ 「さよなら…」

ユウ 「おう!」



俺は寮に帰って考える。
テラ・プルート。
俺の父さん。
カオスサイドの皇帝。

ユウ 「…一度光鈴に言ってみようかな?」

今度のゴールデンウィークにでも尋ねてみるか。
姉さんの顔も見たいし。

俺はそう考えて寝ることにする。


………。
……。
…。


ユウ 「ふあぁ…」

ネイ 「眠そうだね…夜遅くまで起きてたの?」

ユウ 「いや…考え事してたら眠れなくなって」

ネイ 「ふうん…」

ユウ 「それよりもお前こそ早いな…朝は苦手じゃないのか?」

ネイ 「ユウと一緒に登校したいもん♪」

恥ずかしいことをすんなりと言いやがって…。

ユウ 「………」

でも…何か気になるな。
以前はこんなに積極的だったか?
平和になってからというもの、ずっと俺の側にいようとする。
もしかして…。

ユウ 「!!」

俺はすぐにその考えを捨てる。
都合が良すぎる。
俺だって別にネイのこと嫌いじゃないけど…。

ジョグ 「おおっ、ユウやないか!」

ユウ 「お? ジョグか…」

ジョグ 「何や、朝からシケた面しおって!」

ユウ 「悪かったな…」

ネイ 「この人誰?」

ネイが突然、そう聞いてくる。
そうか、初対面なのか。

ジョグ 「ワイわ、ネイ・エルク愛好会、会長!! ジョグ・ダンと言います!! 以後よろしゅうネイちゃん!!」

ネイ 「…え、え?」

ネイは戸惑っている。

ユウ 「お前…今、自分の立場わかってないだろ? 1位だぜ!? 学園で1番男に人気があるんだぞ!?」

レイナ 「そうよね…ネイは1位だったもんね」

ユウ 「おわっ! レイナ!?」

レイナは突然後ろからそう呟く。

ジョグ 「おおっ! 確か、あんたは2位のレイナちゃん!!」

レイナ 「よろしく、ジョグさん…」

レイナはお辞儀をして丁寧に挨拶する。

ジョグ 「こ、こちらこそよろしゅう…!」

ジョグもつられてお辞儀する。

バル 「何だ、お前ら、わざわざ待ち合わせでもしてるのか?」

ユウ 「おお、バルまで…何でこんな朝早くに?」

ジョグ 「ワイが仕組んだ」

ユウ 「何で!?」

ジョグ 「折角やから、皆で登校したほうがええやんか!!」
ジョグ 「もっともワイが呼んだのはバルバロイだけで、レイナちゃんまでいるとは計算外やったけどな」

バル 「成る程…そういうわけか」

ユウ 「要は、ジョグがネイと一緒に登校したいだけだろ? 言い訳にバルを利用しなくても」

ジョグ 「う、うるさいわい! ええやんけ!!」

途端に場が楽しくなる。
こういう登校もいいもんだ。
元々俺は誰とも会いたくないから朝1番に登校するんだがな。


………。


ユウ 「やれやれ…全く騒々しい朝だったな」

ネイ 「でも、楽しかったよ」

ユウ 「まぁな…」

こうして…今日の授業が始まる。


………。
……。
…。


キーンコーンカーンコーン

そして4限の終了のチャイムが鳴り響く。

アリア 「それじゃ、今日はここまで」

ジェイク 「起立! 礼!!」

クラス委員長のジェイクが号令をし、それぞれが昼休みに入る。

ユウ 「さてと…食堂に行くか」

ネイ 「あ、私も私もっ」

ガイ 「待てよ俺も行くぞ」

ユウ 「あ、そういやおごってくれるんだろ?」

ガイ 「おお、任せとけ!! 見事に勝ったからな!!」

ユウ 「何のことだ?」

ジェイク 「賭博だよ…前のコンテストで全財産ネイに賭けてたらしい」

ユウ 「はぁ…? んなことやってたのか」

ジェイク 「何でも、ネイの配当率は8倍だそうだ」

ネイ 「それって凄いの?」

ユウ 「まぁまぁな」

ネイ 「ふうん…」

ネイは特に気にした風もなく納得した。

ユウ 「で、いくら勝った?」

ガイ 「それは秘密だ♪」

ジェイク 「行くならさっさと行くぞ? 食堂は込むからな」

ユウ 「そうだな…大丈夫だと思うが」

ガイ 「まぁな」

ネイ 「お腹空いた〜」



俺たちは食堂に着くとそれぞれの飯を食い始めた。

ネイ 「ええ!? ユウ旅行に行くの?」

食事が終わった所で何気に俺がそう言う話題を振ると、ネイがいきなり叫ぶ。

ユウ 「そう騒ぐなよ…折角の連休だしな。姉さんに会いに行くつもりだよ」

ガイ 「お前に姉なんていたっけ?」

ユウ 「まぁな…」

ガイ 「美人か!?」

ユウ 「当たり前だ!」

ジェイク 「力説することか…?」

ネイ 「ねえ、私も行きたい!!」

ユウ 「金あるのか? 俺は自分の分しか出せないぞ?」

ネイ 「あう…確かに」

ガイ 「なら俺が何とかしてやるよ」

ユウ 「ガイがか?」

ガイ 「どうせなら皆で行こうぜ?」

ユウ 「おいおい…俺はゆっくり静養したいだがな」

ガイ 「まぁ、そう言うなよ…折角だから皆誘うぞ」

ユウ 「マジかよ…?」

ジェイク 「まぁ、たまにはいいだろう…お前とは冬と春で一緒にいられなかった分、あいつも遊びたいんだよ」

ガイ 「そういうこと!」

ユウ 「やれやれ…しゃあねえな」

ガイ 「じゃあ、とりあえずこの5人だな!」

ユウ 「レイラも来るのか?」

レイラ 「…?」

よくわかってないらしい。

ガイ 「当然だろ? 後はミルにエイリィにルーシィとレイナ…」

ユウ 「それが狙いか…」

ガイ 「バルも連れて行くぞ!」

ユウ 「無理だと思うぞ? バルは…」

アルファのことがあるしな。

ガイ 「まぁ、聞いてみるさ」

バル 「何のことだ?」

ガイ 「おお調度良かった、お前も5月の連休で旅行に行かないか?」

バル 「旅行か場所は?」

ガイ 「光鈴だ!」

バル 「ふむ…まぁいいだろう」

ユウ 「アルファのことはいいのか?」

バル 「一応ユミリアさんに頼んでおくさ」

ユウ 「成る程…信頼できるな」

ジョグ 「なんや、何の話や?」

ガイ 「何だお前らは?」

そうか知らない奴がまだいるからな。
俺はジョグ、ポール、ピノの3人を全員に紹介する。


………。


ガイ 「ふむ、ならお前らも来るか?」

ジョグ 「当然や! ネイちゃんが行くんやったら、どこでも行くで!!」

ポール 「光鈴か…興味はあるな」

ピノ 「…うんうん」

ユウ 「やれやれ…大丈夫かね?」

ガイ 「何とかなるさ!」


こうして、俺たちは急遽5月の連休で光鈴に行くことに決定した。



…To be continued



次回予告

ユウ:久しぶりに会った姉の未知
すっかり旅行気分のネイたちを連れて俺たちは光鈴を観光する

次回 Eternal Fantasia 2nd Destiny
第6話 「輝きの国光鈴観光」


ユウ 「やれやれ…」



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