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第6話 「輝きの国光鈴観光」

ユウ 「はぁ…不安だなぁ」

5月の連休初日の朝、俺はいきなりため息をつく。

バル 「そんなに不安か?」

ユウ 「当たり前だろ…この面子で光鈴に行くなんて」

俺はもう一度ため息をついて、面子を見回す。


ネイ 「あははっ! 楽しそうだよね〜♪」

レイナ 「未知さんたち、元気にしているかな?」

ルーシィ 「光鈴か…初めてね」

エイリィ 「私もよ」

ミル 「私も私もっ」

レイラ 「……」


女性陣は完全に旅行気分だ…。


ジョグ 「光鈴かぁ、どないなとこやろ? やっぱ、侍とかがおるんか?」

ポール 「そうだね、いるかもね」

ピノ 「……」

ジェイク 「光鈴ねぇ…文化が違うからな」

ガイ 「まぁ、気楽に行こうぜ♪」


ユウ 「はぁ…」

本日3度目。

レイナ 「そういえば…光鈴までどうやって行くの?」

レイナが突然、最もな疑問を放つ。

ルーシィ 「そうよね、ここからだと馬車でも1週間以上はかかるわよ?」

バル 「む、そろそろだな」

バルは時計を見て、そう呟く。

ユウ 「ああ…」

俺も頷き、しばし待つ。

レイナ 「?」


………。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

突然、轟音。

ネイ 「な、何?」

レイナ 「この音…」

突然、暗くなったかと思い、俺たちは空を見上げる。

ルーシィ 「…あ」


ナル 「やっほー! ユウ君!!」

ユウ 「ナルさん! 待ってましたよー!!」

ジョグ 「な、何やあれ? 船が、空飛んでるで…」

ポール 「ひ、飛空挺!? 何でこんなものが…」



ナル 「ごめんね〜、ちょっとメンテに時間がかかっちゃって」

ユウ 「いいですよ、そんなに待ってませんし」

シャイン 「しかし、この人数で光鈴に向かうとは…観光か?」

ユウ 「い、いや…成り行きで」

レイナ 「ナルさん、シャインさん、お久しぶりです…」

ナル 「あら、レイナ? 随分大人っぽくなった気がするわね…」

レイナ 「そ、そんな…あれから2ヶ月ぐらいしか経ってませんよ?」

ナル 「いいのよ、雰囲気だから♪」

シャイン 「よし、出発するぞ」

ナル 「OK♪ 『全員、座席に座ってシートベルトを着用しなさい』」

ナルさんは操縦席からスピーカーを使って皆にそう伝える。
俺たちは全員、言われた通りにする。

ナル 「それじゃあ、出発!」

ナルさんが魔力を込めると、飛空挺はゆっくりと加速する。

ガイ 「うわ…本当に飛んでるぜ?」

ジェイク 「これが飛空挺か…」

初めての奴らは揃って感嘆の声をあげる。

ルーシィ 「凄いわね…これなら1時間ぐらいで光鈴まで着くわ」


………。
……。
…。


そして、約1時間。


ナル 「そろそろ光鈴上空よ」

シャイン 「よし、裏に回ってくれ」

ナル 「OK…」

ナルさんは光鈴上空を過ぎ去り、光鈴の裏の丘上空に待機する。

ユウ 「よし、着いたぞ!」

女性を先に地上に降ろし、男が荷物を持って降りる。
最後に、ナルさんとシャインさんが飛空挺に施錠の魔法をかけ、全員が地上に降りる。


ユウ 「ようし、んじゃ行くかな…」

俺は荷物を担ぐと、歩き始めようとする。

レイナ 「行くって、どこに?」

突然レイナがそう聞いてくる。

ユウ 「どこにって…俺は姉さんの所だけど」

俺は元々そのためだ。

ガイ 「おいおい、待てよ…皆で行動しようぜ?」

そこへガイが割り込んでくる。

ユウ 「今は断る」

俺はきっぱりとそう言う。
今回ばかりは譲らん。

ガイ 「何だよ連れねえなぁ…いいじゃねえか」

ユウ 「言っとくが、寝る場所はお前が確保しろよ? 俺は宛てがあるし」

ガイ 「…マジか?」

ユウ 「じゃあな!」

俺はさっさと、姉さんのいる屋敷に向かう。


………。


ユウ 「…すいませーん!!」

俺は入り口の呼び鈴を鳴らして、そう叫ぶ。
すると、しばらくして…。

? 「はーい、ただいまー」

女性の声。
そして、戸が開かれる。

ユウ 「ご無沙汰してます…」

俺がそう言って頭を下げると、その女性は。

美鈴 「ユウ様…! お久しぶりでございます!!」

美鈴さんはそう言って大げさに喜ぶ。

美鈴 「どうしたんですか、今日は?」

ユウ 「いや、折角の連休なんで、息抜きがてら姉さんに会おうと思って…」

美鈴 「そうですか…それでは、こちらへどうぞ。部屋に御案内いたします」

俺は靴を脱ぎ、美鈴さんに着いていく。
広い屋敷をしばらく歩くと、一際大きい部屋に着く。
多分、大広間だろう。

美鈴 「…未知様」

未知 「美鈴さんですか、どうぞ…」

そして、美鈴さんが戸を開ける。

未知 「どうかしましたか? 昼食にはまだ少し早いかと…」

そこで、姉さんは俺の顔を見て固まる。

ユウ 「姉さん…」

未知 「ゆ、ユウ…?」

俺はゆっくりと部屋の中に足を踏み入れる。

未知 「ユウ! どうしたの? 突然尋ねてきたりして…」

ユウ 「いや…姉さんの顔が見たかったから」

未知 「そう…恥ずかしいわね」

美鈴 「未知様はいつでも御綺麗ですから…」

未知 「美鈴さん…お世辞はよしてください」

美鈴 「うふふ…」

ユウ 「一応、他にも友達とか連れてきてるから、今度紹介するよ」

未知 「そう…でもひとりで来たの?」

ユウ 「ああ、ちょっと…ね、話したい事があって」

未知 「…?」

俺は畳に座って、荷物を置く。

ユウ 「姉さんってさ…父さんのこと知ってるの?」

未知 「え…?」

ユウ 「…テラ・プルートっていう人のことだよ」

未知 「……」

突然、姉さんは黙ってしまう。
知っているんだろうか?

未知 「ごめんなさい…わからないわ」

ユウ 「そっか…」


………。


しばらく静寂の時間が流れる。

美鈴 「ユウ様、ちょっとこちらに…」

美鈴さんは俺の手を引いて姉さんの部屋から出る。

未知 「?」


ユウ 「美鈴さん?」

美鈴 「こちらへ…」

美鈴さんは俺の手を引いたまま、さらに奥の部屋に向かう。

ユウ 「ここは…?」

美鈴 「…大婆様」

大婆 「…美鈴か。何用じゃ?」

美鈴 「お聞きしたいことがあります…」

大婆 「…入るがいい」

美鈴 「はい…」

美鈴さんは丁寧に戸を開け、中に入る。
俺も後に続く。

大婆 「む…そなたは」

ユウ 「……」

俺は一礼して、その場に座る。

大婆 「して美鈴…聞きたいこととは?」

美鈴 「テラ・プルートという方のことです」

大婆 「!! 聞いてどうする?」

美鈴 「それは、ユウ様がお決めになられることでしょう…」

ユウ 「……」

大婆 「…ユウよ。そなた、父親に会いたいのか?」

大婆様はゆっくりとした口調でそう尋ねる。

ユウ 「はい…!」

俺はしっかりとそう答える。

大婆 「…覚悟はあるのか?」

ユウ 「…覚悟?」

大婆 「テラの生まれた場所は知っておるか?」

ユウ 「…カオスサイドのプルート帝国でしょう?」

美鈴 「カオスサイド…!?」

あの美鈴さんが異常なまでに反応する。
それほどやばい所なのか?

大婆 「何故…悠喜が死んだか知っておるか?」

ユウ 「それは…俺が」

大婆 「違う…悠喜は邪神軍にさらわれる前に死んでおる」

ユウ 「え…?」

そんなこと初耳…。

大婆 「テラと悠喜がふたりでこの国を出て、お前が生まれてから数ヶ月後。ガイアの村にて悠喜は盗賊に殺されたのじゃ」

ユウ 「……」

体の震えが止まらない。
じゃあ、母さんは…?

大婆 「悠喜は死体のまま盗賊によって邪神軍に引き渡されたのじゃ」

ユウ 「………」

俺は考えがまとまらなかった。

大婆 「それ以来、テラの行方すら誰も知らん…ただわかったことは殺された数日後に盗賊団の無残な姿だけが確認されておる」
大婆 「…もう一度聞く、父に会いたいのか?」

ユウ 「…はい!」

会う必要がある、そう母さんに約束した!

大婆 「そうか…ならば、心配せずとも近い将来に会えよう」

ユウ 「え?」

大婆 「わずかじゃが、未来が見える。ユウとテラ。ふたつの力があいまみえる時がこよう…」

美鈴 「大婆様…?」

大婆 「…残念じゃが、もう私も長くはない。ユウよ…これだけは言っておく」
大婆 「父との再会を、喜ぶな…」

ユウ 「え…?」

大婆 「いずれお前の前に現れるであろう男は、お前にとって超えねばならぬ壁じゃ…」
大婆 「そしてお前は、最後の運命を見るじゃろう…」

美鈴 「大婆様、これ以上はお体に触ります…もう」

大婆 「よい…もう次の日の出を見ることもあるまい」

美鈴 「そんな!」

大婆 「未知に、こう伝えておくれ…自由に生きよ、と…」

美鈴 「大婆様!!」

ユウ 「……」


………。


栞 「そうか、安らかに逝ったか…」

美鈴 「…は、いっ」

美鈴さんは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、泣きじゃくる。

栞 「美鈴…」

美鈴 「うう…あぁ…!!」

ユウ 「美鈴さん…」

未知 「美鈴さんは、お婆様に、1番身近に育った娘だそうなの」

ユウ 「……」

未知 「早くに両親を無くして、お婆様が美鈴さんを育てていたそうよ」

ユウ 「じゃあ、美鈴さんにとっては、母親を失ったのと同じ…」

未知 「……」

姉さんはこくりと頷く。



栞 「…未知様。もう、これであなたは自由です」

未知 「どういう、ことですか?」

栞 「奇稲田の運命に縛られる必要はありません。ここに留まらず、ユウ様とご一緒にお戻りください」

未知 「それはできません…」

栞 「未知様!?」

未知 「私には、ここにいる義務があります」

栞 「ですから、あなたは自由だと…」

降 「無理ですよ栞さん、未知様は一度言い出したら、絶対に退きませんから」
降 「それに、『自由』だって言うんでしたら、ここに残るのもまた、『自由』でしょう?」

栞 「降! ユウ様の気持ちも…」

ユウ 「俺は…別にいいと思いますよ?」

栞 「ユウ様まで!?」

ユウ 「ここにくればいつでも会えるんだし、姉さんはここにいたいって言うんだから…」

未知 「ユウ…」

栞 「……勝手になされよっ」

栞さんは呆れた様子で、部屋に戻っていった。

降 「ところで、見ない間にまたたくましくなったねユウ君」

ユウ 「それはこっちの台詞ですよ、降さん…見違えました」

降 「ははっ、こっちじゃ色々と修行されられてるからね…草薙の宿命かな? 前の僕のままじゃ男らしくない!って、言われてさ…」
降 「今じゃ、修行修行の毎日だよ…」

ユウ 「ははは…」

降 「そう言えば、ユウ君、友人と一緒に来たんじゃないのかい?」

ユウ 「あ、まぁ大丈夫ですよ!」

俺は根拠も無しに言い切った。


………。


ガイ 「ったく…ユウの奴、勝手に行動しやがって」

バル 「まぁそう言うな、1日ぐらいは多めに見てやれ。折角の姉弟の再会を汚されたくはないだろうからな」

俺たちは宿の食堂で、昼食をとっていた。
ちなみに、女性陣は別の大部屋で休んでいる。

ジェイク 「しかし、ユウの姉ねぇ…」

ジョグ 「どんな人やろか?」

シャイン 「名は奇稲田 未知。この光鈴の姫君だ」

ポール 「ひ、姫君!? でも、ユウとは名字が違う…」

バル 「…ユウには奇稲田の名を名乗れん定めがある。逆に言えば、未知さんにもプルートを名乗れん定めがある」

ピノ 「…複雑ですね」

ガイ 「全く…」



ネイ 「………」

ミル 「どしたのネイ? 考え事?」

突然、ミルが後ろから抱き付いてくる。

ネイ 「わっ、びっくりしたぁ…脅かさないでよミル〜」

ミル 「だって、ネイったら、ひとりで寂しそうだもん…そんなにユウと離れ離れが寂しいの?」

ネイ 「うん…って、何言わせるのよ!」

ミル 「あははっ、ひっかかった〜♪ やっぱりね〜」

ネイ 「もう…」

ミル 「あ〜あ、ライバル多いなぁ…ユウはモテモテだぉ〜」

ルーシィ 「だぉ〜? どこの言葉、それ…」

ミル 「さぁ〜? 何となく…」

エイリィ 「そう、じゃあ…レイラを除いた、ここにいる全員がライバルってことなのね」

唐突にエイリィがそう言う。
しばらく時が止まる。

ネイ 「へ?」

レイナ 「え…?」

ルーシィ 「はぁ…?」

ミル 「嘘…まさかエイリィ」

レイラ 「……?」

エイリィ 「…冗談よ、1割は」

1割って…。

エイリィ 「ただ…ユウは誰が好きなのかしらね」

また時が止まる。

ルーシィ 「ば、馬鹿馬鹿しいわよ…別に私はユウのことなんてっ」

レイナ 「…う、うんうん」

エイリィ 「そう、じゃあ…あなたたちふたりは脱落ってわけね?」

またまた時が止まる。
なんかエイリィの言葉って少ない分重いなぁ…。

エイリィ 「そこのふたりはどうなの?」

ミル 「え? 私は〜、その〜…秘密か、な…?」

エイリィ 「曖昧ね…脱落よ」

ミル 「あう…」

あっさりと、そう言われ、うなだれるミル。

ミル 「って、そう言うエイリィはどうなのよ!? そういうからには…」
エイリィ 「好きよ、もちろん…」
ミル 「………」

ミルが最後まで言う前にエイリィは即答する。

エイリィ 「ユウはああ見えて結構敏感なのよ…。あなたたちのように、自分の気持ちを抑えているのがきっとユウはわかってるわ」
エイリィ 「だから、はっきりと伝えてあげないと…ユウは振り向かないわ」
エイリィ 「私が店を置いてまでここに来た理由は、簡単よ」
エイリィ 「ユウを私の恋人にして見せるわ…」

ネイ 「ちょっと待ったー!!」

エイリィ 「何?」

ネイ 「その戦い! 負けられないよ!! 私がユウの恋人になるんだから!!」

エイリィ 「あら、どうやらそこの3人とは違うみたいね…燃えてきたわ」
エイリィ 「障害があるほど、超えた時の恋は大きく実る物だもの…」

ネイ 「絶対に負けない!!」

レイナ 「……」(っていうか、私たちは除外?)

ルーシィ 「……」(まずいわ…まさか、エイリィがこんなに大胆な行動に出るなんて)

ミル 「……」(あ〜ん、私だって好きなのに〜!)



ユウ 「へっくし!!」

降 「おや、風邪かい?」

ユウ 「いや、何か突然…」

だれかよからぬ噂でもしてるのか?
どうせ、ガイ辺りだろ…。


ガイ 「へっきしっ!!!」

ジェイク 「何だ突然!?」

ガイ 「いや…なんか急に。だれか可愛い娘ちゃんが俺の噂でもしたかな?」

バル 「……」


………。
……。
…。



ガイ 「いやぁ…観光したなぁ」

昼食をとった後、俺たちは全員で観光に行った。
今はその帰り。

バル 「お前は一体いくつ土産を買うつもりだ!」

ガイ 「何言ってんだよ! 滅多にこれねえだろうが!!」

主には置物、さらにはタペストリーまで!


ジェイク 「ふむ、寺の場景はいいものだな」

落ち着いて言い場所だ。


ジョグ 「おお、この饅頭、美味いで!!」

ワイはそう言って、10種類目の饅頭を平らげる。

ポール 「本場やからな…」

ピノ 「ジョグ、食いすぎやで…」


ガイ 「ようし! 明日はユウのいる屋敷に特攻だー!!」

全員 「おー!!」


エイリィ 「ふ…」

ネイ 「……!」

レイナ&ルーシィ&ミル 「………」



…To be continued



次回予告

ネイ:残された時間は2日。
5人が狙う、ひとりのハート!
果たして、結果は…!?

次回 Eternal Fantasia 2nd Destiny
第7話 「告白合戦」


ネイ 「負けないわ!!」



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