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第12話 「夏祭り」

パチパチ…

合宿最後の夜…。
キャンプファイアーが燃え盛り、皆はそれぞれの思いを胸に、炎を見つめる…。


ユウ 「………」

ネイ 「…楽しかったよね」

ネイが小さくそう呟く。
俺は何も言わず、ただ微笑んだ。

ネイ 「うん…」

ネイは納得したのか、俺の肩に頭を乗せる。
傍から見たら恥ずかしい光景だが、心地良い。


レイナ 「……」

エイリィ 「…寂しそうな顔してるわね」

レイナ 「え…?」

ふと、座ってる私の側にエイリィが寄ってくる。
エイリィは私の横に腰を下ろすと、静かに語りかけてくる。

エイリィ 「ネイは、幸せそうね…」

レイナ 「うん…本当に」

ネイは静かにユウにもたれかかってる。
ユウも拒絶してない。
どう見ても、幸せな恋人同士…。

エイリィ 「悔しい…?」

レイナ 「…少し」

エイリィ 「本心?」

レイナ 「半分は…」

エイリィ 「半分、か…」

エイリィは納得したのか、それ以上は何も聞かなかった。


ミル 「あったか〜…ぬくぬく〜」

ピノ 「ミルさん…あまり炎に近づくと危ないですよ」

ミル 「大丈夫〜、あったか〜」

私はそう言ってごろごろする。
私がそうしていると、突然ピノ君が私を引き戻す。

ピノ 「ミルさん…危ないですってばっ。ここにいてください」

そう言って、ピノ君は私の背中を抱き寄せる。

ミル 「あんっ」

ピノ 「わぁ、ご、ごめんなさい! へ、変なとこ触りました?」
ミル 「にゃ〜、びっくりしただけ〜…」

ピノ 「……」(赤面)


ジョグ 「ええのぉ…青春やの〜」

ポール 「何しみじみ語っとんねん…」

ジョグ 「やかましい! わからんのかこの気持ちが!?」

ポール 「わかるわけあらへんやろ…僕は女に興味あらへん」

ポールは冷たくそう言い放つ。

ジョグ 「ええんやええんや…どうせわいは彼女なんかできへんよ」

ポール 「わかっとるなら言うな」

ジョグ 「………」


ガイ 「にしても、今回の合宿って何だったんだ?」

ジェイク 「皆の交流を深めようという企画だろう…」

ガイ 「成る程な…で、バルは妹の付き添いと…」

ジェイク 「心配だろうからな…」

ジェイクはそう言って、水を飲む。

ガイ 「…ここに連れてきたらよかったのに」


ルーシィ 「………」

ネイか…。
ユウは、どういう気持ちで傾いたのかしら…?
結局片思いのまま、ぐらついた気持ちだけでこうなってしまった。
本当はわかっていたのに…結局後悔している自分がいる。
私には…荷が重すぎたのね。



………。



バル 「……」

アルファ 「………」

アルファは一向に眼を開けない。
あれから何の反応も無い。
生きてはいる…それだけはわかる。
だが、何故目を覚まさないのか…?

バル 「………」



………。



ユウ 「…ネイ?」

ネイ 「すー…すー…」

見ると、ネイは静かに寝息を立てていた。
あれだけ遊び倒したんだから当然か。

ユウ 「レイナ、ちょっといいか」

レイナ 「どうしたの?」

俺はレイナを呼び、ネイを預ける。

ユウ 「ちょっと、用があるんだ…」

レイナ 「わかったわ」

ユウ 「すまねぇな」

俺はそう言って、森の方に向かう。



………。



しばらく歩くと、やがて小さな火が見える。

ユウ 「おっさん!」

俺がそう叫ぶと。

ガイア 「何だ、ユウか!?」

そう帰ってくる。
俺は小走りにおっさんの方に向かう。

ユウ 「よっとっ、おっさんやっぱりここにいたのか」

ガイア 「俺が一緒にいてもまずかろう…」

ユウ 「んなことないって…」

ガイア 「いや、俺のようなおっさんがいると色々不都合があるだろう…」

ユウ 「考えすぎだってのに…」

俺はそう言って、おっさんと向かい側に座る。

ガイア 「彼女の側にいてやらないのか?」

おっさんは薪を燃やしながら、そう聞いてくる。

ユウ 「ネイは寝たよ…大丈夫だ」

ガイア 「そうか…なら、俺もそろそろ寝る。もう行け」

ユウ 「おっさん…明日には」

ガイア 「そうだな…こっそり後をつけるようにしよう」

ユウ 「って、それでいいのか?」

ガイア 「構わんさ…何とかなるだろう?」

ユウ 「まぁ、そりゃあな…」

アバウトだなぁ、本当に。
記憶がないってことは恐怖にはならないのかな?
少なくとも、レイナにはあった…。
おっさんは例外なのか?

ユウ 「でも泊まるとこには問題あるだろう?」

ガイア 「気にしないさ…どこかで勝手に寝るさ」

ユウ 「はは…本気かよ」

俺はそういうと、皆の下に帰ることにした。



………。
……。
…。



そして、次の日。


ユミリア 「皆、大丈夫? 忘れ物はないわね!?」

一同 「はい!」

アリア 「それじゃあ、帰りましょう…」

こうして、俺たちはガイアに戻ることにした。
そして、その日の夜にはガイアに到着する。
着いた時、俺はあることに気が付いた。


ユウ 「あ…そうか」

レイナ 「どうしたの? ユウ」

ユウ 「今日は、夏祭りの日だ!」

ネイ 「お祭り…?」

ユウ 「ああ、年に一度の祭りだよ! そうか、今年も来たのか〜!」

ガイ 「俺も忘れてたぜ…そうか、ならハシャガねばならんな!?」

ユウ 「おうよ! 今年も担ぐぜ!!」

ガイ 「よっしゃあ、行こうぜユウ!」

ユウ 「やらいでか!!」

こうして、俺とガイは祭りの中心部に向かった。


ネイ 「…どうしたんだろ?」

レイナ 「さぁ…?」

ルーシィ 「神輿担ぎよ…今年もやるの」

レイナ 「神輿って…あのワッショイワッショイのあれ?」

ルーシィ 「まぁ…そんな所よ」

ネイ 「…わからない」

レイナ 「見ればわかるわよ」

ネイ 「じゃあ、私も行こうっと!」

ネイはそう言って、ユウを追いかける。

エイリィ 「元気ね…」

ジェイク 「エイリィは今年も店が大変だろう?」

エイリィ 「そうね…出店になるから」

エイリィはそう言って、自分の家に戻る。

ジェイク 「さて、俺も今年は出店がある…これで失礼する」

ジョグ 「よっしゃあ! 食いまくるで!?」

ポール 「お前はホンマにそればっかやな…」

ピノ 「ミルさん…一緒に回りましょう」

ミル 「いいよ! 案内してあげる♪」


ユミリア 「ふふ…皆元気ね」

アリア 「そうね…」



ガイア 「…祭りねぇ」



ユウ 「よっしゃあ! 担ぐぜ担ぐぜ!!」

ガイ 「ワッショイ!!」

俺たちは20人程で神輿を担ぎ、街を横断していく。

ネイ 「ワッショイワッショイ♪」

おじさん 「おお、譲ちゃん、見かけに寄らず力持ちだなぁ」

ネイ 「当然! 鍛え方が違うよ!!」



ガイア 「これが、街か…」

俺は祭りを見回し、歩き続ける。
記憶には無い…だから初めてかどうかもわからない。
ただ言えることは、ここは平和ということだ…。

ガイア 「魔法都市ガイア…俺の名と同じ街」

気になることはある。
が、今は必要の無いことに思えた。


ユウ 「おっさん! こんな所にいたのかよ?」

ガイア 「ユウ…どうした?」

ユウ 「どうしたじゃねぇよ…探したんだぜ? 折角だから祭りを一緒に楽しもうぜ!!」

ガイア 「おいおい…彼女はどうした?」

ユウ 「ネイももちろん一緒だよ! こういうのは大勢で遊んだ方が楽しいんだ!」

俺はそう言って強引におっさんを連れて行く。



ネイ 「わ…また失敗」

ユウ 「何だ…まだやってるのか?」

俺は金魚すくいをやっているネイに話し掛ける。

ネイ 「うう…だって難しいよ」

ユウ 「まぁこういうのは慣れだ…諦めろ」

ガイア 「さすがに色々と出店があるな」

ユウ 「ああ、夏祭りはとことん楽しまないとな!」

レイナ 「あっ、できた!」

突然レイナがそう叫ぶ。
何事かと思って俺たちは見てみる。

おじさん 「おお、よくできたね…じゃあはいこれ」

ユウ 「形抜きか…」

レイナ 「うん、ほら」

そう言って、レイナは鳥の形をした形を見せる。

ユウ 「へぇ…綺麗じゃんか」

ネイ 「あれ…?」

おじさん 「残念…失敗だな」

ネイ 「うう…何でぇ?」

ユウ 「お前は何もできんのかぁ!?」

ネイ 「うう、不器用…」

ガイア 「はっはっは! まぁ、失敗は成功の元だ! 練習して来年は見返してやれ」

ネイ 「うんっ! 頑張るよ!!」

そう言ってネイはガッツポーズを取る。

ユウ 「しかし…今更気づくと」

レイナ 「…何?」

レイナは俺にジロジロ見られて気恥ずかしいのか、紅くなる。

ユウ 「いつの間に浴衣になってんだよ…」

ネイ 「あっ、そう言えば…」

レイナ 「え…その、ルーシィに勧められて」

ネイ 「私とユウは神輿担ぎの時に着てた服のままだからね」

ユウ 「おう」

レイナ 「でも似合ってるよ。ネイはラフな格好でも可愛いから」

ネイ 「そ、そっかな…」

ネイはそう言われて照れているようだ。

ユウ 「おお、もちろん可愛いぞ。むしろ誇れ」

ネイ 「あ、あはは…」(照)

ガイア 「いいもんだな…祭りってのは」

ユウ 「ええ? いきなり何で?」

ガイア 「こんな気分になったのは記憶を無くしてから初めてだ…」

レイナ 「記憶…」

ユウ 「なるほどなぁ…でも、いいじゃん別に記憶なんて」

レイナ 「……」

ガイア 「そうか…?」

ユウ 「記憶は…思い出して幸せなものと、そうでないものがある」
ユウ 「おっさんの場合は、多分後者だと思う」
ユウ 「だから、今がそう思えるなら、それでいいじゃん!」

レイナ 「そうだね…私もそう思います」

ネイ 「うんうん! 私も記憶がまだ無いんだよ!」

ガイア 「ははは、ネイは明るいな」

ネイ 「うん! ユウの彼女だもん!!」

ユウ 「それはどういう意味だ…?」

ネイ 「てへっ♪」

ユウ 「って、逃げるなネイ!!」

俺はそう言ってネイを追いかける。


レイナ 「ふふ…本当に元気ね」

ガイア 「ああ…見てるこっちも幸せになる」

レイナ 「ガイアさんも、きっとここの生活が好きになれます。これからもよろしくお願いします」

私はぺこりとお辞儀をし、挨拶する。

ガイア 「ああ、いやこちらこそ…レイナ王女」

レイナ 「え…どうして私のことを?」

確か、まだ話してないはずなのに…。

ガイア 「あ…? そう言えば…何で?」

レイナ 「ユウから、聞いたんですか?」

ガイア 「え…あ、いや…うん? そうだったかな…」

レイナ 「あの…私のことはレイナで構いませんので。王女であっても、今はあまり国には関係してませんし」

ガイア 「あ、ああ…わかったよ、よろしくなレイナ」



ルーシィ 「あら、ジェイク…今年も出店?」

見ると、ジェイクが刀剣等を商品として並べていた。

ジェイク 「ルーシィか…今年も浴衣だな」

ルーシィ 「そうね…一応ね」

私は昔を思い出しながら、少し俯く。

ジェイク 「ふ…一応か。去年まではユウ目当てだったろうからな」

ルーシィ 「そうね…何でもやったわ。金魚すくいに形抜き…。ユウに誉めてもらおうって必死だった」

ジェイク 「まぁ、あいつらも回っているだろう…一緒に見に行ったらどうだ? その方がユウも喜ぼう」

ルーシィ 「そう、ね…」

私は何かを振り切るように、その場を後にした。



バル 「………」

アルファ 「………」

俺は自分の部屋で夏祭りを見ていた。
祭りに参加する気にはなれなかった。
いつ、アルファが目を覚ますかもわからない。

バル 「ふ…俺は何を求めているのかな?」

その答えは今は出ない…。



バンッ!!

ガイ 「おっ、やったぜ!」

見事命中。俺は目当ての商品を打ち抜く。

ジョグ 「やるやんけガイ!」

おじさん 「おお、お見事…じゃあこれをもってけ」

ガイ 「やっぱ射的に限るな…」

ジョグ 「得意なんか?」

ガイ 「まぁな…これでも射的3段ってとこだ」

ジョグ 「射的に段位なんかあるんか…?」



ミル 「あっ、エイリィ! 今年も出店?」

私はエイリィの出店を見つけ、近づく。

エイリィ 「…いらっしゃいませ」

ミル 「もう…相変わらず、仕事に熱心なんだから。とりあえず焼きそばふたつね♪」

エイリィ 「わかったわ…少し待って」

ピノ 「エイリィさん、毎年やってるんですか?」

ミル 「そうね…毎年、エイリィの店は繁盛だから」

エイリィ 「おだてても何も出ないわよ…はい」

私たちはエイリィの作った焼きそばを受け取る。

ピノ 「わ、美味しいですね…」

ミル 「全く…腕だけは衰えないわね」



………。
……。
…。


バアァァァァンッ!! パチパチ…。

ネイ 「わぁ…」

レイナ 「綺麗ね…」

ユウ 「ああ、これこそ夏祭りの醍醐味だよな!」

俺たちは夏祭りを遊び尽くすと、最後の仕上げとも言うべき花火大会を眺めていた。

ドオオオオンッ!!! ズガアアアァァァンッ!!!

ネイ 「花火なんて初めて…本当に凄いよ」

レイナ 「そうね…今日は参加できた良かったわ」

ルーシィ 「…うん」

ガイ 「これで今年の夏も終わりか…」

ジョグ 「こっちの祭りもええもんやな…食いもんは美味いし」

ポール 「ジョグはそれだけやろ…」

ジェイク 「来年もまた騒がしくなろう…」

ミル 「そうだね…多分同じメンバーだろうし」

ピノ 「でも、来年は皆3rdやから、どうなるか…」

エイリィ 「………」

ユウ 「来年のことなんてまだ早ぇよ…。今が楽しけりゃいい」

ネイ 「そうだね…私もその方がいい」

ガイア 「…今を、か」

レイナ 「そうね…」



………。
……。
…。



ユウ 「遊んだなぁ…」

ネイ 「うん…」

俺たちは帰りながら、今夜の余韻に浸っていた。

ユウ 「今年は、今までの中で1番楽しかった」

ネイ 「…私がいるから?」

ユウ 「よくそこまで自惚れられるな…」

ネイ 「うう…」

俺は、落ち込むネイの頭をぽんと叩き。

ユウ 「皆がいるからだよ…もちろんお前が1番だけど」

俺がそう言うと、ネイは小さく俯く。
恥ずかしいのだろう。

ネイ 「……」

ネイは俯きながら、小さく笑う。
その仕草がとても可愛らしく思えた。

ネイ 「来年も…一緒だよね」

ユウ 「来年もじゃない…いつまでも、ずっとだ」

ネイ 「…うん」



ガイア 「…何なんだ、何故…懐かしい気分になる?」
ガイア 「ここは、俺の知っている場所なのか?」

何か、わからない感情が俺の中を駆け抜ける。
だが、俺はそれを否定している。
俺は『今』を信じたいのだ…。



ユミリア 「アリア、あなた言ったわよね…これがユウ君の選んだ道って」

私たちは寮でそんなことを話していた。

アリア 「ええ…そうよ」

ユミリア 「…そう、なら…私はまた、何もできないのね」

私はそれ以上何も言わず、ただ項垂れた。

アリア 「…ユミリア」

ユミリア 「……」

わかっている。
何が大切か。
でも、私には辛いできごとでしかないの…?



ネイ 「はぁうっ!!」

突然、ネイが叫びだす。

ユウ 「何事だ!?」

ネイ 「忘れてたぁ…」

ユウ 「な、何を…?」

ネイは青い顔をしながら、小さく呟く。

ネイ 「夏休みの宿題…ひとつもやってない」

ユウ 「………」

ネイ 「………」

一瞬の沈黙。

ユウ 「な、何ですとぉー!?」

ネイ 「ど、どうしよう…」

ネイはオタオタとうろたえる。

ユウ 「つーか、俺もやってねぇ!!」

ネイ 「………」(呆然)

俺たちはしばしその場で立ち尽くす。

ユウ 「こうなったら一週間で全部終わらせるぞ!!」

ネイ 「終わるかなぁ…」

ユウ 「俺の初等部時代の最高記録は3日で終わらせた!! 大丈夫だ!!」

ネイ 「…初等部と、高等部じゃ量が違いすぎるよ〜」

ユウ 「やかましい! 明日から一緒にやるぞ!!」

俺は心の中で覚悟を決めつつ…夏休みの最後を終えることになった。



…To be continued



次回予告

レイナ:秋の紅葉が映える頃…。
学園では、文化祭の用意が始まる。
私たちはそんな中、ひとつの企画に没頭することになる。

次回 Eternal Fantasia 2nd Destiny
第13話 「舞台演出」


レイナ 「舞台…ですか?」



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