Menu

Back Next


第19話 「神と魔王」

ユウ 「………」

俺はいつもの放課後、いつものように自分の席でネイを待っていた。
だが、今日はやけに皆が教室に残っている。
そして肝心のネイもやってこない。

ユウ 「…何なんだ?」

俺は少し気になりながらも外を見ていた。
すると、どうも外でも何か作業のようなものをしていた。

ユウ 「……?」

その時、ふと肩を叩かれる。

女子生徒 「ねぇ、ユウ君も手伝ってよ〜」

ユウ 「はぁ…?」

見ると、セミロングの髪をなびかせながら、俺よりも少し背が低い位のクラスメート、確か名前はハープ、が俺の顔を覗き込むように見ていた。

ユウ 「…何をだよ?」

俺はわけがわからないのでそう訊く。

ハープ 「もう〜だから学園祭だってば。うちのクラスまだ決まってないんだよ?」

俺は呆然とする。
そういえば、そんな時期か。
教室のカレンダーを見ると確かに11月。
ここ最近気が張ってて季節すらも忘れていた…。
そうか…おっさんを倒してからもう2ヶ月か。
あれからどうにも敵は動きを見せない。
それ程、俺を敵対視してないのか?
それとも油断させるためかもしれない。
俺はそんなことを考えていた。

ハープ 「もう…聞いてる?」

ユウ 「ああ、あれから敵も姿を見せないしなぁ…」

ハープ 「…敵って何?」

ユウ 「………」

俺はどうもこのクラスに馴染めてなさすぎのようだった。
そういえば、このクラスになってからまともにクラスメートと話をしたことがない気がする。
ただ、そんな中このハープだけは俺に話し掛けることが多かった。

ハープ 「学園祭…去年はユウ君のクラス凄かったもんね〜」

ハープはわかっていながら、わざとそういう風に話を持ちかけてきた。
笑顔が逆に怖い。

ユウ 「思い出させるな…今でも恥ずかしいんだ」

ハープ 「あははっ、そりゃあ、あの大観衆の中だったもんね〜」

ユウ 「あんなのは二度とごめんだ…」

俺は机に頬杖をしながら外を眺めた。

ハープ 「まぁ、冗談は置いておいて、ユウ君も輪に入ってよ? クラスの出し物なんだから」

ユウ 「じゃあ、喫茶店」

俺は面倒くさいので簡単にそう言う。

ハープ 「喫茶店?」

ユウ 「そ、うちのクラスは女子のレベルが高めだから受けるんじゃないか?」

俺はクラスの女子を眺めてそう言う。
うん、問題ない。

ハープ 「…う〜ん、まぁ決まってないものだし、それでもいいかな…皆ー! 喫茶店はどうかな!?」

ハープは皆の方に戻り、そう叫ぶ。
そういえばハープって、学園祭の実行委員だったか…。

女子生徒A 「う〜ん、何かありきたりじゃない?」

男子生徒 「俺は賛成〜」

女子生徒B 「私も〜、ありきたりでも私たちはやったことないしね」

さまざまな意見が流れ、数分が経つ。

………。


ハープ 「それじゃあ、我がEクラスは喫茶店で決定します! 皆がんばろっ!」

おーーー!!!

クラス全員(俺除く)が一致団結し、作業にかかった。

ユウ 「…ネイも作業してるのかもしれないな」

俺は鞄を取ると、ネイの教室に向かうことにした。

ハープ 「あっ、待ってユウ君!」

俺が教室を出ようとすると、ハープが呼び止める。

ユウ 「…まだ何かあるのか?」

ハープ 「もう…言い出しっぺはユウ君なんだから、ちゃんと手伝ってよ? 今日はいいけど、明日から1週間は作業してもらうから」

ユウ 「…しゃあねぇな」

俺はさすがに断るのもどうかと思い、承諾する。

ハープ 「うんっ、じゃあ明日からがんばろうね♪」

ハープは笑顔で手を振り、輪の中に戻った。

ユウ 「………」

俺はそのままネイの教室に向かった。


………。


ユウ 「…なんじゃこりゃ?」

見ると、Aクラスは何故か布が被せられていた。
それも黒。

ユウ 「……中に入っていいものか」

俺はさすがにためらった。

レイナ 「あ、ユウ…どうしたの?」

すると、後ろからレイナに呼びかけられ…。
俺はそう考えるよりも、レイナの姿に驚く。

ユウ 「…あの、どちらさまで?」

レイナ 「? 何言ってるのよ…私に決まってるじゃない」

レイナらしき死神が、大鎌を片手に笑顔で振舞う。

ユウ 「………」

黒い服(水着に近い位、露出度が高い)に身を纏った、やたらとアダルチックなレイナだった。
黒い翼のおかげか、本物に近いリアリティだ…。

レイナ 「あ、あんまり見つめないでね…恥ずかしいから」

レイナはそう言って、もじもじとはにかんだ。
ある意味ツボだっ。
俺は自分の中で満点をつけると、気を取り直し、ネイのことを聞くことにした。

ユウ 「ところでネイは?」

レイナ 「ネイなら、さっきひとりでどこかに行っちゃったけど…ユウの所に来なかったの?」

ユウ 「いや、来てないんだ…」

レイナ 「そう、何か妙な事件がどうとか言ってたけど、それなのかなぁ?」
レイナ 「そうじゃなかったら、ユシルの所とか…」

ユウ 「妙な事件?」

俺は気になったことを聞く。

レイナ 「うん、どうも…ここ最近夜の学園で妙な音が聞こえるって」
レイナ 「特に被害はないらしいんだけど…」

ユウ 「…とりあえず、ユミリアさんのところに行くよ、サンキュ」

俺はレイナにそう告げ、保健室に向かうことにした。


………。


ユウ 「ユミリアさ〜ん、いますか?」

俺はドアを軽く叩き、そう呼ぶ。

ガララッ

するとすぐにドアが開き、見慣れた白衣の女性が現れる。

ユミリア 「あら、ユウ君…ユシルの顔を見に来たの?」

ユウ 「ええ、それもですけど…ネイがこっちに来てませんか?」

俺がそう聞くと、ユミリアさんは不思議そうに。

ユミリア 「あら、一緒じゃないの? こっちには来てないけど…」

ユウ 「ええ? じゃあいったいどこに…」

ユミリア 「…まさかね」

ユミリアさんはふと真剣な表情になる。

ユウ 「…敵ですか?」

俺も真剣な顔でそう聞く。

ユミリア 「…最近妙な魔力を感じていたのよ。どうも学園を囲むようにね」

ユウ 「まさか…学園ごと!?」

ユミリア 「アースの仕業ね」

ユウ 「アース…三闘神のひとり」

ユミリア 「アースはガイアと違い、魔力、知力が優れている。確かに真正面から来るとは思えないわね」

ユミリアさんは顎に手を当てながらそう、呟く。

ユウ 「ネイが、アースに?」

ユミリア 「そうすれば、あなたを釣れる…とでも考えたのかしら」
ユミリア 「でも、ネイがそう簡単に捕まるとも思えないわね」

ユウ 「確かに…」

少なくともネイはかなりの強さがある。
記憶が戻った今、ネイの強さは、あのシェイドさんに匹敵する程だと聞いている。

ユミリア 「人質を取られた…と考えるのが妥当ね」

ユウ 「捕まっていたらでしょ? もしかしたら学園のどこかにいるかもしれませんし」

ユミリア 「…そうね、悪い方向にばかり考えても仕方ないわね」

ユウ 「ユミリアさんはここでユシルをお願いします。俺はネイを探しますから」

ユミリア 「わかったわ…」

俺はユミリアさんにそう言うと、学園内を駆けた。
学生たちに話を聞きながら探すこと1時間。
とうに学園全体を探すに至ったが、見つからなかった。

ユウ 「まさか、外に出てるのか? でも荷物は教室にあったし」

俺はふと裏庭に来ていた。
よく見ると、ここは誰もいない上に音も聞こえない。

ユウ 「妙な音か…」

俺は事件のことを思い出す。
だがそんな音は聞こえない。
時間的にもそろそろ生徒たちは帰っているころだ。
ここ裏庭は旧校舎(今は使われていない)の裏にある。
旧校舎は入室禁止なので調べてないが、もしかしたらという勘はある。
俺は周りに気を配りながら、旧校舎のドアを見る。

ユウ 「…やはり鍵がかかってる。誰かが中に入った痕跡もない」

気の回しすぎか? それとも最悪の事態なのか?
俺は気が気じゃなくなっていくようだった。
すでに日は暮れ始めている。

ユウ 「…ん? これは」

俺は地面に妙な模様を見つける。
どうも何かを表しているようだが…。

ユウ 「まさか、魔方陣…!?」

俺がそう思った瞬間、俺は足元がなくなる感覚を受ける。

ユウ 「うわっ!」

俺は地面に吸い込まれた。
一瞬の出来事で、苦しむ間はなかった。



………。
……。
…。



ユウ 「く…」

? 「ククク…目覚めはどうかね?」

突然声が響き渡る。
その声は、今まで聞いた声に該当しない。
初めて聞く声だ。

ユウ 「…何だ? ここは…」

俺は立ち上がり、周りを見渡すと、そこは洞窟のようだった。
壁には何やら魔方陣の一種のような模様が施され、それが天井や床…むしろ部屋全体に渡って赤く輝いていた。
どうやらそんなに広い部屋ではないらしく、俺の前、数十メートル先に何やら玉座のような椅子に座っている男がいた。

? 「ようこそ…ユウ・プルート」

男は長髪で、額にヘアバンドをして、何やら白装束に身を纏っていた。

ユウ 「アース様直々ってわけか」

俺がそう言うと、男は小さく笑い。

アース 「ほう、予想以上に切れるようだな…その通りだ」

ユウ 「ネイをどこにやった…」

俺は怒気を込め、小さくそう言う。
返答次第によってはいつでも飛びかかれる準備があった。
あいにく俺は今武器を携帯していない。
肉弾戦でどうにかなればいいのだが…。

アース 「これが目に入らないかね?」

アースは右手で頬杖をつきながら、左手の親指で上を指差した。

ユウ 「………!」

見ると、ネイが壁に囚われるように捕まっていた。

ユウ 「貴様…っ!」

俺はその場から飛びかかろうとする。

アース 「おっと…うかつに動かん方がいいな、恋人を救いたいならな」

アースは微笑しながら、そう言い放つ。

ユウ 「く…っ」

俺は踏みとどまった。
ネイの命を握られている。

アース 「ふ、所詮お前たちはこういう情に流されやすい」
アース 「非常に徹することができなければ、確実な勝利は得られんぞ?」

ユウ 「よく言うぜ…人質取らなきゃ何もできないんだろ?」

アース 「ふ…それが戦略というものだ、力だけが全てではない」

アースは俺の皮肉にも冷静に答える。
どうやら、こいつはマジでピンチらしい…。

ユウ 「どうやってネイを捕らえた…?」

俺は気になっていることを聞く。
こいつがまともにネイを捕まえたとは考えにくい。

アース 「簡単さ…息子を預かっていると言ったら、何も考えずにここに来てくれたよ」

ユウ 「馬鹿な! ユシルはユミリアさんが…!?」

俺がそう言い切る前に、アースはユシルを左手で掲げる。

ユウ 「馬鹿な…本物かっ?」

すやすやと寝息を立てる、ユシルは本物のように見えた。

アース 「あまり騒ぐと、子供が起きるぞ? 折角安らかに眠っているんだ…」

ユウ 「…どうやって攫った?」

アース 「どうもお前たちは、人を信用しすぎるようだな…私が医者に変装していることも気づかんとはな」

ユウ 「!?」

ということは、あの時も…!?
俺は小さく舌打ちする。
まさか、あの時点で騙されていたとは…。

アース 「さて、ここで質問だ…君はどうする?」

ユウ 「…何?」

俺は質問の意図が読めなかった。
だが、やるべきことは決まっている。

ユウ 「ふたりを取り戻す…それだけだ」

アース 「時の力を使ってか?」

ユウ 「!?」

こいつどこまで…どうやら俺の作戦負けらしい。
こいつは全部計算づくのようだった。

アース 「先に言っておくが、使うなら使いたまえ…むしろ私自身、それが目的なのだよ」

ユウ 「そう言われて、簡単に使うと思うか?」

アース 「思うさ、この子の首を捻れば嫌でも使うだろ?」

アースは下卑な笑みを浮かべ、そう言った。
俺は静かに開放する。
どうにかできるものなら、して見やがれ!

キィィィィ…!

白き光が俺を包み、6枚の翼が羽ばたく。
瞬間、俺は時を止める。

ユウ 「生憎だが、寿命の心配をするつもりはない!」

アース 「馬鹿な奴だ、何のために使わせたと思うのだ?」

俺は瞬間、動きが止まる。
そして激痛。

ユウ 「ぐああああああっ!?」

俺は意味がわからなかった。
その瞬間、俺は通常形態に戻され、その場で倒れる。

アース 「ふ、時の力は諸刃の剣だ、使い方を誤ればそうなる」
アース 「お前は最後まで私の掌で踊っていたに過ぎんよ」

奴の声が頭に響いた後、俺は意識を失った。



………。
……。
…。



ユミリア 「………」

レイナ 「ユミリアさん! ダメです…やっぱりどこにも」

ユミリア 「そう…」

時刻はすでに21時。完全に夜が更けている学園の中庭で私たちは集まっていた。

バル 「ダメだな、こっちも見当たらない」

レイラ 「……」

レイラも首を振り、見つからなかったことを報告する。

ユミリア 「……私の不注意だわ」

レイナ 「そんな…私たちだって、まさかこんなことになるなんて…」

バル 「完全に出し抜かれたな…平和に慣れすぎていたか」

レイラ 「………」

場が深刻な空気で包まれる。
私は気を取り直し、3人にこう言う。

ユミリア 「…ご苦労様、後は私がひとりでやるわ」

レイナ 「そんなっ、私たちも手伝います!」

バル 「同感です、仲間を見捨ててはおけません」

レイラ 「……」こくこくっ

ユミリア 「…いいのね? 恐らく、戦いになるわよ?」

レイナ 「大丈夫です、ちゃんと覚悟はできてます」

バル 「邪神戦争に比べれば、物の数ではない」

レイラ 「絶対に3人を助けましょう…」

ユミリア 「わかったわ、じゃあ皆お願いね」

私は気を入れなおし、それぞれに命令を伝える。
問題はこの人数でどうにかなるかだ。
アースは知将で名が通る程の神、いわばゼイラムに近い。
まともに来てくれるとは思えない。
私は戦闘服に着替え、裏庭にやってくる。

ユミリア 「ここね…魔方陣があるわ」

見た目ではほとんどわからないが、魔力の糸を感じる。
これは片道ね、行けば帰っては来られない。

ユミリア 「…後は皆次第ね」

私は仲間を信じ、魔方陣の上に立つ。



………。



レイナ 「本当にあるのかな?」

私たちは旧校舎の中にいた。
ユミリアさんの話によると、この旧校舎の地下に恐らく捕らわれているという。
でもパルスは感じない…かなりの魔力で押さえ込まれている感がある。

バル 「ユミリアさんが言うのならば確実だろう。こと魔力の知識等では、神をも凌ぐ人だからな」

レイラ 「…急がないと、ユミリアさんまで」

レイナ 「…待って! 何か感じるわ…」

どうやらユミリアさんの言ったことは正解のようだった。

バル 「よしっ、先導してくれ! この先は戦闘があることを忘れるな!!」

レイナ 「わかったわ!」

レイラ 「……」

レイラもゲイボルグを右手に準備は大丈夫のようだった。



………。
……。
…。



ユミリア 「……どうやら、お待ちかねだったようね」

私は目の前の男にそう告げた。

アース 「ほう、これが伝説の魔王さまか…成る程、あのラグナ様でさえも従えるほどの力とはな」

ユミリア 「御託はいいのよ、3人を返してもらうわ」

私はラグナロクを右手に抜き、ゆっくりと歩を進める。

アース 「ふ、だがあなたもこの人質を見捨てることはできないでしょう?」

アースは壁に囚われている3人を指差す。

ユミリア 「…ユシルはまだ子供なのよ?」

アース 「大丈夫ですよ、子供の力を取っても意味がないですから、あれだけはただの檻ですよ」
アース 「ですが、それ以上近づくのでしたら、さっきの言葉は嘘になりますね」

私は歩を止める。
それを見てアースは小さく笑う。

アース 「はは、本当に情けない姿だ…これがあの最強の魔王とは。情に流されればただの女か」

瞬間、私の足元から蔓の縄が現れ、私を縛る。

ユミリア 「………」

アース 「はははっ、無様ですね…」

ユミリア 「趣味の悪い縛り方ね…これじゃあ女は満足しないわよ」

私はあえて、そう挑発する。見た目ほどぬるくはない。
確実に私は魔力を吸い取られていた。

アース 「強がりますね…相当強めにしてあるはずですが」

ユミリア 「そうね…正直楽じゃないわ」

私は直立不動のまま、動かなかった。
人質を取られている以上、こうなるのは必然。
だから、待つしかなかった。



………。



レイナ 「くっ! このぉ!!」

ザシュッ!!

ゾンビ 「あ〜…」

旧校舎の底から力の渦を感じ取った私はその発信源に向かった。
だけどそこからいくつもの死霊が沸き始めたのだ。
私はバルムンクで死霊を切り裂く。
だが、完全に消滅には至らない。

バル 「ちぃ…このままでは!!」

レイラ 「…ユミリアさんまで囚われてしまう」

2人とも、頑張っていたが、限界のようだった。

レイナ 「…壱か罰か、上手くいって!! ホーリー・ビット!!」

私はバルムンクを床に突き刺し、魔法を放つ。

バル 「何…!?」

レイラ 「レイナ…?」

レイナ 「後は、お願い…」

私はそのまま瞑想状態に入る。
ビット操作への集中でしばらく動けなかった。

バル 「く、敵をレイナに近づけさせるな!」

レイラ 「うんっ」

ゾンビ 「う〜…」



………。



ユミリア 「………」

アース 「粘りますね…もう全て尽きてもいいくらいなのに」
アース 「ですが、時間はたっぷりあります。ゆっくり死ねばいいでしょう」

ユミリア 「どうやら、切り札はこっちの方が強かったみたいね」

アース 「何…?」

ズドンッ!

直後爆音、その瞬間アースの笑みが消える。

アース 「馬鹿なっ!? 何故檻が…」

アースは椅子から立ち上がり、全て破壊された檻の残骸を見つめる。
ユウとネイは地面に落ち、ユシルだけは光に包まれ、宙に浮いていた…。

アース 「何だ…あれは? そうか、遠隔操作で…!?」

ユミリア 「今ごろ気づいても遅いわよ…」

瞬間、私は檻を破り、間合いを詰める。

アース 「…おのれっ、だが力を吸い取られた貴様が私に…っ」

ザシュウッ!!

ユミリア 「遅いのよ…」

アース 「馬・鹿・な…強すぎ……る」

ドサッ!

私は一瞬でアースの体を両断する。
するとアースの魔力が打ち破られ、周りの空間が屈曲する。

ユミリア 「…脱出ね」

私はあらかじめ張っておいた魔方陣を呼び、3人を集めて脱出する。



………。
……。
…。



レイナ 「よかったぁ…」

レイナは保健室でユミリアさんから手当てを受けていた。

バル 「…どうなるかと思ったぞ」

バルも特に傷はなく、無事のようだった。

レイラ 「よしよし…」

ユシル 「だぁ…」

レイラは笑顔でネイに抱かれているユシルの頭を撫でる。
どうやら一番無傷なのは彼女のようだ。

ユウ 「はは…今回は助けられすぎました」

ユミリア 「ふふ…そうね、全部レイナのおかげよ」

ネイ 「本当、ありがとう…」

ネイがユシルを抱きながら礼を言う

レイナ 「そんな、ユミリアさんの指示がなかったらきっとわからなかったし」

ユミリア 「それでも、あそこでビットだけ送るとは思わなかったわ。魔方陣を張っておいたはずなのに」

予定だと、ユミリアさんの魔方陣で全員がアースの背後に回る予定だったそうだ。

レイナ 「気づきませんでしたよ…それ、でも力を感じたから、そこに向かってビットを送ればいけると思ったんです」

ユミリア 「本当によかったわ…何事もなくて」

ユウ 「全くですよ…でも後ひとり」

ユミリア 「そうね、テラ・プルート。ユウ君、体は大丈夫なの? 無闇に力を使ったようだけど…?」

ユウ 「面目ありません…考えが足りませんでした」

ユミリア 「寿命が縮んだわね」

ユミリアさんがそう言うと、その場の全員が深刻な顔をする。

ユウ 「はは…でも、あのまま死ぬよかましかと思ったんですよ、何もできないよりかは…」

ユミリア 「冷静になりなさい、魔方陣を見つけた時点で知らせるべきよ」

ユウ 「いや、見つけた時にはもう吸い込まれてましたし…」

ユミリアさんは呆れたように。

ユミリア 「はぁ…全く、もう少し勉強した方がいいわよ? 卒業できるのかしら…」

ユウ 「あう…」

レイナ 「それ、私もかも…」

ふたりして魔方陣を見落としてるし…俺たちは揃って肩を落とした。

ユミリア 「まぁ、過ぎたことはいいわ…後1週間で学園祭、頑張りましょう!」

最後にユミリアさんが締めて、その日は終了した。



………。
……。
…。



ハープ 「ユウ君、パン・ティー1セット!」

ユウ 「あいよっ!」

レイナ 「あ、やってるね」

俺が喫茶店と言い出したばかりに何故かこんなことまで…。

ユウ 「何だ、前のあの服じゃないのか?」

レイナ 「休憩中まで着ないわよ…だってあれ恥ずかしいもの」

ユウ 「いや、可愛いぞ?」

レイナ 「そういうこと言ってると、ネイが怒るわよ?」

ユウ 「はは、違いないな…」

レイナ 「はぁ、いいなぁネイは…羨ましい」

ユウ 「俺が告白したぐらいだからな」

レイナ 「本当…私の物にしたかったのに」

ハープ 「ユウ君、チョコパフェお願い!」

ユウ 「おう! わりぃな、レイナ…とりあえずコーヒーで我慢してくれ」

レイナ 「うん、ありがとう♪」

そして、今年の学園祭は、何事もなく終わった。
思ったよりも楽しい学園祭でよかった。



ネイ 「ユウ、お疲れ様」

片づけが終わり、ネイが迎えに来てくれた。

ユウ 「おう、そっちも終わったか」

ネイ 「うんっ、今年は忙しかったみたいだね」

ユウ 「ああ、全くだ…」

ハープ 「ユウ君、お疲れ様♪」

ユウ 「おう、そっちもな」

ハープ 「ネイも忙しかったみたいだね、コスプレ」

ネイ 「そ、それは言わないで…」(赤面)

ユウ 「見たかったのに…ネイのコスプレ」

ネイ 「………」

ネイは恥ずかしさのあまり俯いてしまう。

ユウ 「はは、冗談だ、帰ろう」

ネイ 「あ、うんっ」

ハープ 「羨ましいなぁ、レイナの気持ちわかるかも」

ユウ 「そういえば、ハープはレイナやネイと知り合いだったのか」

ハープ 「…そっかそんなに私は地味だったか」

ユウ 「あ、いやそうでなくて…」

そんなつもりで言ったのではないのだが。

ハープ 「一応、1st、2nd同じクラスだったのになぁ…」

ユウ 「へ、そうだったの?」

ネイ 「…ユウ、それはあんまりだよ」

ハープ 「あははっ、まぁユウ君らしいよっ、じゃあね!」

ハープは手を振って見送ってくれた。
俺たちはゆっくりと帰路についた。



ネイ 「…もうすぐ終わるんだね」

ユウ 「ああ、終わらせる」

ネイ (私の命も…もう)

ユウ 「………」

俺はネイを抱き寄せた、秋の夜風は寒かったが、不思議と暖かかった。

…To be continued



次回予告

ネイ:来るべき時が来た…。
全てが終わる時…。
別れの時…。
そして、最後に幸せを…。

次回 Eternal Fantasia 2nd Destiny

第20話 「闇の花嫁」


ネイ 「ユウ、未来を…」



Back Next

Menu

inserted by FC2 system