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Prologue 『破滅への序曲』



第1幕 「ヴェルダンド滅亡」

かつて英雄がいた…

仲間と力を合わせ、邪神を退けた英雄…

様々な運命を背負い、そして天へ帰っていった光の子…

だが、時は過ぎ…

人々の心から次第にその英雄は忘れ去られていく…

そして…歴史はついに、究極の破滅を彩ることとなる…








『ヴェルダンド王国』

かつて邪神軍と戦った王女、シーナ・ヴェルダンドが治める風の王国。
平和の国とさえ言われ、戦うことを嫌うことで有名な程だ。
だが、その平和を象徴とするこの国でも、悲劇は起きる…。



兵士 「ダメです!! もう城内はほぼ制圧状態にあります!!」

もう残り少ない城内の兵士が私にそう伝える。
城の1階には火が放たれ、それだけでも体力が奪われていく。

シーナ 「…止むを得ないわ、あなたは非戦闘員を連れて国を出なさい」

私が冷静にそう言うと、兵士は驚いた顔で。

兵士 「なっ!? ではシーナ様は!?」

私はこの国に伝わる伝説の槍、風槍グングニルを手に持ち…こう言う。

シーナ 「私は…最後まで戦うわ」

そう言って、兵士に背を向けてひとり歩く。
兵士は私の覚悟を悟ったのか、逆の方に走り出す。

シーナ 「……」

私は敵の制圧している、1階に降りる。
火が放たれ、所々が焼け落ち、周りは赤く照らされていた。
すると、そこには見慣れない服装をした敵兵が数十人いた。
黒いタイツのような服で全身を包み、型と胸にプロテクターをつけている。
頭も黒頭巾で隠しており、顔はわからない。
全員がそれぞれ、刀、鎖鎌と言った、ここいらではあまり見かけない装備を持っていた。
そして…その真中に、ひとり見慣れた顔も混じっていた…。
140cm位の低い身長、太った体系に、大臣の服装。今は飛ぶことさえ出来ない汚れた翼を背につけた、汚らわしい男。

シーナ 「ベドン大臣…やはりあなたが」

私はそう呟いて睨みつけると、ベドンは低い老人のような声であざ笑う。

ベドン 「ククク…これはこれは王妃様自らおいでなさるとは」

ベドンがそう言うと、周りの敵兵たちも小さく笑い始める。

シーナ 「ヴィオラはどこ? あなたに預けたはずだけど…」

私が冷静にそう聞くと、ベドンはまるで当たり前のように。

ベドン 「はははっ! 王妃様も冗談がお好きですな? 人質に決まっているでしょう!」

そう言って高笑いする。
見ると、ひとりの兵士の手の中でヴィオラがいた。
首と体を捕まえられ、ナイフを突きつけられている。
ヴィオラは震えて怖がっているが、泣かないように必死だった。

シーナ 「…何が目的なの?」

私がベドンに視線を戻してそう言うと、ベドンは頭に手を当てて、笑いながらこう言う。

ベドン 「帝国の建設ですよ…これより私がこの国を滅ぼして帝国の皇帝となるのです」

私はそれを聞いて驚く。

シーナ 「馬鹿な…! 今の平和を何故かき乱す必要があるの!?」

だが、私がそう言ったところでベドンは気にもしない。

ベドン 「これから死ぬあなたには関係のないことでしょう…?」

ベドンがそう言うと、正面にいる数十人の兵士が私を狙って構える。
ベドンは肩を震わせながら笑いつづけた。

シーナ 「…ヴィオラを放しなさい、私の命位、いくらでもあげるわ!!」

私はそう言ってグングニルを正面に投げ捨てる。
音を立てて床を滑っていくグングニルを、兵士が数秒もしない内に拾い上げる。
その様を見て、ベドンはさらに笑う。

ベドン 「はっはっは! 素直でいいですなぁ…よし、離してあげなさい」

ベドンがそう言うと、ヴィオラは解放され、私の元に走る。
足元がおぼつかないようだが、必死に走っていた。

ヴィオラ 「お母様!!」

ヴィオラは私に泣きつく。
だけど私は一度強く抱きしめ、すぐにヴィオラを離した。

シーナ 「逃げなさい…早く!!」

私は出口を指差し、強くそう言う。

ヴィオラ 「お母様!?」

ヴィオラは驚いた顔で、何故と聞く。
だけど私は…。

シーナ 「早く!!」

私がそう怒鳴ると、ヴィオラはびくっと体を震わせて出口へ逃げる。
近くに兵士がいたことが幸いした。
このことを予想してくれたのかもしれない。

バリッ!!

シーナ 「!?」

瞬間、体の自由が奪われる。
電撃魔法の類…?
網のような物が体を包み込んでいた、そこから電撃が流れている。
私は、徐々に力を奪われ、膝を突いた。
あくまで抵抗は許さないってことね…。
私はここまでと腹をくくった。


ベドン 「はっはっは! 無様ですね! 過去の英雄のひとりといえども、所詮こんなものだ!!」

私が最後に聞いた台詞は、そんな汚らしい台詞だった……。

シーナ (ヴィオラ…強く生きるのよ……)





兵士 「ヴィオラ様、こちらです!!」

兵士さんが、私を誘導してくれる。
時間は夜で薄暗かったけど、城を焼く炎と月の光で、周りは明るく照らされていた。

ヴィオラ 「はぁ…はぁ…!」

息が苦しい。
元々体力がある方じゃないし、城の中の煙と炎のせいでさらに辛い。
お母様は…もう。
それだけはわかった。
でも泣けなかった。
泣いたら、死んでしまう気がしたから。
兵士の後を追って、私は道なりに走った。

兵士 「ぐわあっ!!」

私の護衛をしてくれた兵士が城の裏口から外に出た途端倒れる。
そこには敵がいたのだ。
刀を構えて、私を狙っている。

ヴィオラ 「ああ…!!」

私は足がすくんで動けなかった。

兵士 「へっ、こんなガキでも殺したら金星だ!!」

そう言って、兵士が私に向かって剣を振り下ろす。

ヴィオラ 「ひっ!」

私は怖くて眼を逸らしてしまう。

ザシュッ!!

肉を切る音、でも私じゃなかった。
目を開いて見ると、その剣は傷だらけの兵士が体で止めてくれた。
血だらけで必死にしがみついて敵を放さない。
白い翼が、赤く染まっていく…。

兵士 「今の内に早く!!」

兵士はこちらを見ずに、それだけを強く言った。
私は走った、城を出て、森の中に逃げ込んでいく。
私のために、また人が死ぬ…でも私は生きなければならない。
ただ、走った。

………。

息が切れる。

………。

次第に敵が追いついてくるのがわかった、私は振り返らない。
また人が死ぬの? それを考えただけで涙が出そうになる。

………。

ガッ!

ヴィオラ 「きゃあ!」

私は足元につまずいて、前のめりに倒れる。
体を擦りむいて痛い…。
足ももう動きそうになかった…。
ここで死ぬの?
私は一瞬、お母様の顔を思い出してしまう。

ヴィオラ 「お母様……」

私はついに涙を流す。
結局…何も出来なかった。
逃げられなかった。
やがて敵が追いついて、私の前で止まるのがわかった。
私を、殺すんだ…。
最後に私はこう呟いた。

ヴィオラ 「ごめんなさい…お母様」

…と。

ズドオッ!!

その瞬間凄い音がする。
でも、不思議と痛みはなかった。
死ぬ時って…楽なものなの?
だが、瞬間男の断末魔が聞こえる。

ヴィオラ 「!?」

私はその声に驚いて、後ろを見る。
すると、私を殺そうとした敵の体に巨大な槍が刺さっている。
絶命しているようだった。
でも、どこから…?

ばさっ、ばさっ!

その音を聞いて私は空を見る。
そこには、竜がいた。
月の光に照らされて、紅い竜に跨る人がいた。
そして…私は力尽きて、そのまま気を失った。



兵士 「レイラ様! やはりもう…」

飛竜に乗った私の部下のひとりが偵察から帰ってくる。

レイラ 「そうか…やはり」

私は、今は亡きシーナ王妃に黙祷を捧げ、飛竜を降ろして地上に降り立つ。
部下も一緒に降りてくる。

ヴィオラ 「………」

ひとりの少女が仰向けに気絶していた。

レイラ 「……」

ヴィオラ王女。
シーナ王妃の娘で、今年12になる子供だ。
私は敵の兵士を貫いた、伝説の武具、竜槍ゲイボルグを背負い、王女を左腕で抱えて、飛竜に乗り空を飛ぶ。

レイラ 「…帰還するぞ!」

私がそう叫ぶと、近くを見張っていた、部下数名が後ろから着いてくる。
私は先導して、その地を後にした。

兵士 「レイラ様…王女をどうなさるつもりで?」

ひとりの兵士が私の横に来てそう聞く。

レイラ 「国に連れて帰る…もう、この娘には帰るところはないのよ?」

私は胸元のヴィオラ王女を見つめてそう言った。

兵士 「…また大きな戦争が始まるのでしょうか?」

レイラ 「……」

私は答えなかった。
ただ言えることは、いずれ戦う日が来ると言うことだけだった。





ベドン 「あっけないものだ…」

ベドンは次第に灰になっていくシーナの姿を見て笑いがこらえられなかったようだ。

兵士 「(朱雀様…よろしいので?)」

ひとりの部下が小声でそう聞いてくる。
私はベドンに聞こえない程度の声で答える。

朱雀 「(放っておけ…金さえもらえれば働くのが傭兵の仕事だ)」

俺がそう言うと、兵士も納得したように退がる。

朱雀 (ふん…少しは面白い時代になりそうだな)

俺は動乱の時を向かえるこの時代に期待を覚えた。

ベドン 「ひゃあはっはっは!! これでセントサイドはワシの物だ!!」
ベドン 「朱雀殿、感謝しますぞ! これからもカオスサイドとの同盟は大事にしたいものですな!!」

朱雀 「……」

俺は絶え間なく笑いつづけるベドンに汚わらしさを覚える。
少なくともこんな同盟等はどうでも良かった。
金さえ貰えば働く…それが傭兵なのだから。





ヴィオラ 「……うう」

気がつくと、ベッドの上だった。
寝覚めは、不思議と悪くなかった。
ベッドが少し硬い気がする。

ヴィオラ 「?…??」

周りを見るが見たこともない部屋。
かなり広く、私の部屋の2倍近い広さがある。
寝ているベッドも質感が大分違う、羽毛じゃない…。
広すぎるせいか、ちょっと暗い感じもする、だがそれ以上に気候が違うことに気がついた。

ヴィオラ 「あ、暑い…」

ヴェルダンドが寒い気候のせいだろう、ここは熱く感じた。
私はおもむろに、自分の服を見るとすでに新しい服に変えられている事に気づいた。

ヴィオラ 「…見たことない服」

それが第一印象だった。
薄着ではあるが、とても丈夫な革で作られているようだった。
鰐皮だろうか?とも思ったがよくわからなかった。

がちゃ

ドアが突然開いたかと思うと、ひとりの綺麗な女の人が入ってきた。
私の着ている服とは大分違う。
紅い服に身を包んで、両手首には2本のリング(しかも金)をつけていて、歩くだけでそのリングがぶつかる音がする。
綺麗な長い髪をすらっと靡かせて、赤いヘアバンドを額に巻いていたのが印象的だった。

ヴィオラ 「……」

レイラ 「? どうしたの?」

その人は特に表情を変えずそう聞いてくる。
私は赤くなってしまう。
綺麗過ぎて見とれてしまった。
お母様と同じくらい綺麗…。

ヴィオラ 「あ、あの…ここは?」

私はどもりながらも、そう聞く。

レイラ 「ここはドラグーン。私の国よ」

さらりとそんなことを言われる。

ヴィオラ 「ドラグーンって…竜族の国!? どうして…?」

竜の王国ドラグーン。
通常、人の前に姿を現すことはなく、山岳地帯で覆われる大陸にひっそりと身を隠している種族。
戦闘能力は人のそれとは比較にならず、人との係わり合いを極力避けると言われている。
そして、その竜族全てを治めている人がレイラ様…この人だ。

レイラ 「…倒れていた所を私が拾ったのよ」

レイラ様は表情も変えずそう言う。
そして私は悟った。
もう…帰る国はないのだと。

ヴィオラ 「お母様…」

私は両腕で胸を抑えて心の中でお母様を想った。
でも、もうお母様はいない。

レイラ 「…これから世界は乱世の時代を迎えるわ。あなたさえ良ければ、ここにずっといてくれてもいいから」

レイラ様は優しく微笑んで私の頭を撫でる。
でも私は、強くこう言った。

ヴィオラ 「お願いです! 私に、槍術を教えてください!!」

レイラ 「え…?」

レイラ様は驚いて、私を見つめる。

ヴィオラ 「お母様から聞いたことがあります、レイラ様は伝説の槍ゲイボルグの使い手だと」
ヴィオラ 「私もヴェルダンド王家、シーナの娘です!」

お母様が扱っていたグングニル。
私はそれを使えるようにならなければならない…。
自然にそう思えた。
これも、血なのかもしれない。

レイラ 「…でも」

レイラ様は迷っていた、私は強く懇願する。

ヴィオラ 「お願いです!! 私…お母様の敵を討ちたいんです!!」

レイラ様は目を瞑って暫く考え、そして…。

レイラ 「わかったわ…着いて来なさい」

レイラ様が厳しい顔をすると、そう言って歩き始めた、私は強い意志をもって着いていく。



………。



ヴィオラ 「きゃっ!」

そして、訓練場に着いた所でいきなり槍を渡される。
でも私には大きすぎる槍だった。
訓練場もとてつもない広さで、ヴェルダンドのそれとは比較にならない…。
やっぱり竜族って、体が大きいからなのかな? でもレイラ様は普通な気が…。

レイラ 「ごめんなさいね、一番小さくてもそれぐらいの槍しかないのよ」

そう言ってレイラさんは私の槍よりも遥かに大きい槍を片手で振り回す。
多分、あれがゲイボルグなんだろう…前に見たのと同じ。

ヴィオラ 「…わぁ」

綺麗に槍が空を切る姿に見とれてしまう。
でも私も近づかなきゃ。
私は両手で槍を持って、よたよたしながら振り始める。

ヴィオラ 「うう…!」

レイラ 「まずは、それを自在に操れるようにならないといけないわ」

ヴィオラ 「は、はい〜っ!」

こうして、私の修行は始まった。
これは、始まりに過ぎないのだ…。
ただ、敵を討つために…。
私は、強くなって見せる…。





聖暦1019年12月末日…ヴェルダンド王国は歴史から『一時的に』姿を消す………




…To be continued



次回予告

ルミナ:世界が段々と荒んでいくのがわかる。
でも、俺はそんな中、ひとりの女の子を好きなる…。
それは、大切な出会いだった。

次回 Eternal Fantasia 4th Destiny
Prologue 第2幕 「大切な人」


ルミナ 「きっと、幸せにしてみせる!!」



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