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第5話 「危機」

ユミリアさん、未来の両名を加えて旅立った俺たちは、数日後港町であるセイレーンに到着していた。



『港町セイレーン』

レギル大陸で最も大きな港町。
この港から、セントサイド中の大陸に渡ることができ、多くの旅行者などが利用する世界でも有数の港町である。

ユシル 「大きいな…活気もある」

悪いニュースなど、何のそのと言った感じの人波。
市場でも競などが行われており、活気に溢れている。

ティナ 「まずは、チケットを取るんだよね?」

ティナが違和感無しにそう言う。
さすがに場が沈黙する。

全員 「………」

ティナ 「え、え?」

ティナはわかっていないようだった。
すると、ルミナが静かに言う。

ルミナ 「ティナ…俺たちは『帝国』に行くんだよ? 帝国は、今鎖国状態でどこからも入れないんだ」

ティナ 「…えっとじゃあ」

ユシル 「チケット自体売ってない。まずは船を手に入れないとな」

セイラ 「でも、買えるお金なんてないよ?」

もっともなことを言う。
じゃあ、作る?
それこそ無茶だが…ん? 待てよ…。
俺はルミナとティナを見る。

ルミナ 「な、何ですか?」

ユシル 「…材料さえあればいけるか?」

俺はセイラを見つめてそう言う。

セイラ 「…む、無理だと思うけど」

セイラは半分意味がわかってないのか、曖昧に答える。

ユシル 「じゃあ、どうすんだよ…強奪か?」

未来 「あ、あまり物騒なことはしない方が…」

ユシル 「…んじゃあどうすんだよ実際。買う、作る、奪う!この3択で決めろ」

我ながら無茶を言う…というか、それしか浮かばねぇよ。

セイラ 「べ、別に借りるでもいいんじゃないの? 他には貰うとか…」

ユシル 「別に奪うと変わらんだろ? どうせ向こうに着いたら壊れるぞ?」

それだけは確信が持てた。
危険な地域だからな、船なんてすぐにでも撃沈されるぞ。

セイラ 「そこまでの過程が問題なの!!」

セイラは正論を吐く、畜生…。
俺たちはしょうがなく、造船所に向かった。



………。
……。
…。



『セイレーン造船所』

世界でも有数の造船所で、ここで作られた船が世界でもほとんどを占めている。
生産性を重視し、旅行客のための船が最近はメインである。



ユシル 「へぇ、でかいな…」

セイラ 「…でもお金なんてないよ?」

未来 「…やっぱり事情を話して、貸してもらった方が」

俺たちはとりあえず、相談しながら中に入っていく。

作業員 「こらこら、危ないから勝手に入っちゃダメだ!」

ひとりの若い作業員がそう注意してくる。

ユシル 「…いや、ちょっと船が必要なんですよ」

俺がそう言うと、作業員は顔をしかめて。

作業員 「はぁ? 旅行ならチケットを買えチケットを」

ユシル 「それがないから困ってるんですよ」

俺がそう言うと、作業員は呆れた顔をし。

作業員 「あん? じゃあどこに行きたいんだよ…」

ユシル 「帝国…」

俺がそう言うと、作業員は止まる。
文字通り。

作業員 「ば、馬鹿かお前は!? いやむしろ阿呆か!!」

ユシル 「失礼な奴だな…」

俺はさすがにムッと来る。

作業員 「帝国だと!? あんな危険地帯に船を出す奴はいねぇよ!! 領地に近づいただけでドカンだ!」

成る程、やはり危険なようだ。

ユシル 「生憎、俺たちは行かなきゃならないんですよ…だから船が必要なんです」

俺は冷静に相手を睨みつけた。
ここは凄んだ方が効く。
すると相手は俺の重圧に負けて、退く。

ユシル 「…大きなのはいらない、人が10人入れる程度でいいです、都合してもらえませんか?」

作業員 「…あのな、それは本気か?」

ユシル 「…ああもう、うっとおしいっ」

俺はさすがにイライラして、相手を追い詰める。

ユシル 「本気だから言ってるんだろうが!! 早くしてくれ、従兄妹の生死に関わるんだ!!」

男 「こっちに来い若造!!」

突然、でかい怒鳴り声が響く。
見ると、袖のない白いシャツにやたら屈強な体、ハゲで髭のふさふさしたオッサンが呼びつけていた。

作業員 「チ、チーフ!?」

成る程チーフね、ここで一番偉い人ってことか。

チーフ 「てめぇはあっちで甲板でも磨いてろ!! おい、若造」

チーフは俺を見て。

チーフ 「さっさとこっちに来い! 仲間も一緒だ!!」

そう言って、手招きする。
俺たちはチーフの側まで行くと、チーフは勝手に歩き出す。
俺たちは着いていく。



………。



すると、何やら地下に降りて行く階段があった。
チーフはそれを降りていき、降っていく。

ルミナ 「…地下? でもここは港だから」

ユシル 「……」

セイラ 「監禁とかされたりして…」

未来 「ちょ、ちょっとセイラ…怖いこと言わないでよ!」

チーフ 「…着いたぞ」

チーフがそう言って階段を降り切ると、俺たちは目を丸くした。

ユシル 「こ、これはっ!?」

地下に港がある。
そして、海にひっそりと沈んでいる物があった。

ルミナ 「潜水艦!?」

チーフ 「これをお前らにやる」

ルミナ 「い、いいんですか!? 潜水艦なんて未だに普及もしてないというのに…」

ルミナが感動したように言う。
俺は少なくともそんな技術は知らない。
機械に強いルミナが言うんだから、相当な物だろう。

チーフ 「ただし…こいつは操縦者を含めて4人乗りだ」

ユシル 「4人…」

今の俺たちを見る。
俺、セイラ、ミリア、未来、ルミナ、ティナ、バルバロイさん、マーズさん、ユミリアさん。

ユシル 「5人は外れるわけか…」

チーフ 「こいつはまだ試作品だ…残念だが、そこまでの大きさはできなかった」
チーフ 「だが、性能は違う、向こうに気づかれることなく陸まで辿り着けるだろう」

ユミリア 「…だったら、私たちは上ね」

バルバロイ 「了解です」

マーズ 「よかろう」

ユシル 「ええ? でも…」

ユミリア 「上ははっきり言って危険よ、でも私たちがいれば、多少はマシになるわ、その点、下は上陸後のことだけを考えればいいの」
ユミリア 「配分はあなたが決めなさい…」

ユシル 「……」

俺は考える。
誰が下で、誰を上に行かせるか?

ユシル 「よし…なら俺、セイラ、ルミナ、ティナは下、残りは上だ!」

俺は意を決してそう言う。

ユシル 「操縦はルミナにやってもらう、これなら上陸して4人動ける」
ユシル 「ミリアと未来は上で必ず生きて上陸してくれ!」

かなり無茶を言っている気がするが、人の命を預かって決めたような物だ。
誰かひとりでも欠けていたら、俺は指揮官失格だ。

ユミリア 「大丈夫よ、私たちの命に賭けてもふたりは上陸させるわ」

バルバロイ 「任せておけ、お前たちは帝国を潰すことだけを考えろ」

マーズ 「帝国の尖兵程度に遅れをとる俺たちではない」

俺はそれを聞いて安心する。
この人たちなら大丈夫だ、問題はむしろこっちか。

チーフ 「よし…なら俺が上の船を運転してやる」

ユシル 「いいんですか? 危険なんですよ?」

チーフ 「ふん、こんな若い連中が命を張って帝国を潰そうとしてるんだ、元船乗りの俺が海に出るのに命を張らなくてどうする!!」

セイラ 「ありがとうございます、チーフさん」

セイラが丁寧に御礼を言うと、チーフは頭を掻いて。

チーフ 「よせい、俺のプライドの問題だ」
チーフ 「それから、俺の名前はドック・ザイガス。ドックと呼べ!」

ユシル 「じゃあ、ドックさん。上はお願いします!」

ドック 「おおよ!」

こうして、移動手段を得た俺たちは、上と下に別れ、それぞれ作戦会議をした。



ユシル 「…とりあえず、上陸したらすぐに城に向かうぞ」

俺はルミナが用意してくれた地図を見て、上陸先を示し、そう言う。

セイラ 「敵に見つからないかな?」

ルミナ 「ある程度は大丈夫だと思います、上で戦っている皆が陽動の役割も持ってますから」

ティナ 「あにぃたちなら安心だしね」

ルミナ 「さすがに、相手も潜水艦のことは知らないと思いますし。機械に携わっている者でも潜水艦の存在を知っている者はごくわずかでしょう」

俺たちは頷き合うと、潜水艦に乗り込んだ。
中は狭く、4人入れるといってもギリギリだった。

ルミナ 「…進路設定、『帝国』、後は自動?」

ユシル 「行けるか?」

俺が1番前の操縦席に座るルミナに向かって後ろからそう言う。

ルミナ 「ええ、システムも良好ですよ。大体丸1日あれば着きます」

ユシル 「早いな…」

ルミナ 「それだけ優秀ってことですね。スクリューの限界、時速50kmまで出ます。ただ武装はゼロですね」

ユシル 「もし、見つかったらアウトってことか…」

ルミナ 「大丈夫だとは思います。潜水艦の存在自体、知らない人の方が多いですからね。水中から侵入なんて誰も予測できませんよ」

ルミナがそう言うと、俺はひとまず安心する。

セイラ 「でも丸一日この中かぁ…窮屈かも」

ティナ 「仕方ないよ…確かに退屈だけど」

ユシル 「…俺は寝る、どうせやることもない」

俺はそう言うと、狭い壁に持たれて眠る。
配置的には、先頭の操縦席にルミナが座り(何気にそこが1番広い)
その真後ろに俺、その後ろにティナ、最後尾がセイラと横一列に並んでいる。
俺は目を瞑って、そのまま眠りに落ちた。


セイラ 「…もう動いてるのよね?」

駆動音以外、あまり音がしないため、私はそう聞く。

ルミナ 「ええ、潜水艦は静かな乗り物ですからね…。いるのがわかっていても中々見つからないものですよ」

ルミナ君が、振り向かずに答える。

セイラ 「…じゃあ、これが武器を持ったら」

ルミナ 「まず海戦では無敵でしょうね…。問題は水中に効果のある武器がそうそうないということと、水中しか移動しかできないということですが」

セイラ 「そっか…だからこれも武器がないんだ」

ルミナ 「…まぁ、そういうことです」

ルミナ君は、何か反応が遅れてそう答える。


ルミナ (もし、水中で活動できる敵がいる場合…対応できるだろうか? さすがにこの速度に水中で着いてこれるのは魚位だと思うけど)

ティナ 「……?」

今更考えてもどうしようもない…俺も少し眠ることにした。





………一方、ミリアたちは………



ユミリア 「…準備はいい?」

私が全員にそう聞く。
全員がこくりと頷く。
私たちは、すぐに船に乗り込む。
用意された船は中型位の貨物船だった。
ただ、乗組員は舵のドックひとり。
恐らくこの船は片道切符…帰りはないわ。

ユミリア 「ドック…本当にいいのね? この船を操縦するということは、片道切符ということよ?」

私が念のために聞く。

ドック 「心配するな! 俺はお前らが思っているほどヤワじゃねぇ!」

そう言って、ドックはさっさと舵を取り始める。

ドック 「門開けろ!! 出航だ!!」

ドックの号令で、門が音を立てて開く。
そして、私たちは出航した。



………。



ミリア 「………」

未来 「…あの、ミリアさん?」

私は、静かにしている(というかほとんど喋る所を見たことない)ミリアさんに話しける。
ミリアさんは、首だけを回してこっちを向く。

ミリア 「……?」

ミリアさんは視線だけで何?と聞いてくる。

未来 「…あ、えっと…そのミリアさん、怖くはないの?」

私はつい、そんなことを聞いてしまう。
普通、怖くないわけがないのにね。

ミリア 「…別に」

だけど、ミリアさんはあっさりとそう答える。
私は、驚いて言葉を失う。

ミリア 「…死ぬのは怖くない、怖いのは…失うこと」

そう言って、ミリアさんは遠くの水平線を見定めた。
私はミリアさんの言葉を考えていた。

未来 (怖いのは…失うこと、か)

だったらミリアさんは何を失うのが怖いんだろう?
ユシル兄さん? それとも…?
私は、自分の力が怖い…。
いっそ、誰も傷つけずに死ねるならとさえ思ってしまう。



………。
……。
…。



ユミリア 「………」

日が沈み、雲がかかって月の光さえ届かなくなっていた。 恐らくこのペースなら、到着にそこまで時間はかからない。
ただ…。

ユミリア (静か過ぎるわ…かえって存在をばらしているような物よ)

もし、これで気配を消しているつもりなんだったらお笑いね。

ユミリア 「!」

ヒュオンッ!!

私はラグナロクを抜いて船首に向かってなぎ払う。
その風圧に、皆が注目する。

バルバロイ 「……!」

バルバロイが気づいたのか、剣を抜く。
マーズも同様に首を鳴らしていた。

ミリア 「………」

未来 「…来る」

ユミリア 「……」

ザバァッ!!

突如水中から人間が3人現れる。
だが、そんなこと初めからわかっていた私には全く恐れるものはない。

ザシュウッ!!

私の一振りで3人がまとめて吹っ飛ぶ。

ザッパーーーンッ!!!

吹っ飛んだ3人はまとめて海に落ちる。
それから続け様、全方向から人間が飛び上がってくる。
大体30人くらいね。

ユミリア 「子供だましね!」

私は向かってくる敵をラグナロクでなぎ払う。
手加減ができないので、胴体が真っ二つになったりと相手は無残に切り捨てられる。


バルバロイ 「ふんっ」

俺はひとりひとりを確実に一撃で仕留めて行く。
この程度ならば問題はない。


敵 「船の上で格闘戦は不利! 覚悟!!」

俺はそう言って向かってくる敵を、上半身の力だけで殴り倒す。
その程度の一撃で敵の頭を粉々にする。

マーズ 「ふん…貴様らのような雑魚では準備運動にもならんな」


ミリア 「………」

ザシュッ! ズシャアッ!! バシュッ!!!

私は次々と襲ってくる敵を切り捨てていく。
何度も返り血を浴び、次第に敵の攻撃が弱まっていく。


未来 「くっ!」

ドガッ、バキッ!!

私は草薙のみね打ちで相手を気絶させる。
できれば殺したくはない…。
だけど、敵は容赦なくこちらを殺しにきてる。

敵 「覚悟ーーー!!」

未来 「きゃっ!」

敵の一体が起き上がり、私の背後から襲い掛かってくる。

ザシュゥッ!

瞬間、私の目の前で敵の首が飛ぶ。
私の顔に勢いで血が着く。

未来 「…あ」

ミリア 「…危ない」

ミリアさんは平然と相手の命を絶てる。
どうして…?
どうして、こんなにも簡単に人の命を…絶てるの?
その時、私は戦場にいるということを実感した。

ユミリア 「出てきなさい!! こんな雑魚ばかりじゃ話にならないわ!!」

私はどんどん敵を切ってそう叫ぶ。
すると、ひとりの男が船の前に現れる。

ドック 「な、何だと!?」

バルバロイ 「いかん…!」

ユミリア 「…ち」

マーズ 「……!」


? 「………」


男は手を掲げ、それを振り下ろすと、一撃で船の船首を破壊する。
当然、バランスを崩した船は沈む。


ドック 「ちぃ…! この船はもうダメか!!」

ユミリア 「…仕方ないわね、空中戦は得意じゃないんだけど」

私は魔法で水面に浮く。
長い間は持たないわね。

バルバロイ 「く…!」

俺は浮遊魔法は使えん…ここはユミリアさんに任せるしかないか!


マーズ 「ちぃ…!!」

俺は機人族ゆえ、水中が大の苦手だ。
比重で沈んでしまう。
泳ぐこともできん…!

バルバロイ 「マーズさん!!」

バルバロイが俺の腕を掴む。
だが、俺の重みでバルバロイも沈みかける。

マーズ 「よせバルバロイ!! お前も沈むぞ!!」

バルバロイ 「何を言っているんです!! 沈んだらマーズさんとて生きては…!!」

ミリア 「……!」

ミリアが泳いで俺の体を押し上げる、結果的にバルバロイとミリアのふたりで俺を担ぐ形となった。
こんなことで足手まといになるとは…。


ユミリア 「殺す前に名前でも聞いてあげるわ!!」

私は相手に突っ込みながらそう叫ぶ。
だけど、その前に一撃振り下ろす。

ガキィッ!!

? 「むぅ…!?」

男は受け止める。
どうやら、ただの雑魚じゃないみたいね。

ユミリア 「…フフ、楽しめそうじゃない!」

? 「成る程…ただのご婦人ではないようだ! 我が名は青龍!! ご婦人の名を聞かせてもらおうか!」

青龍と名乗った男は私の剣を捌いて、両手に装備している爪で攻撃してくる。

ユミリア 「生憎様!! 私は独身なの!!!」

私はその爪を弾き返す。

青龍 「……!」

ユミリア 「…フフ」



バルバロイ 「これが、ユミリアさんか…」

マーズ 「陸上ならあの程度問題ないだろう…だが、ここは陸上ではない」

バルバロイ 「……」

確かに。
さすがのユミリアさんもあの状態では。


ミリア 「……未来?」

私は周りを見渡す、でも未来が見えない。
まさか…溺れた?
でも、私はこの場を動けない。
マーズさんが…。



………。



未来 「………」

沈んでいく…。
どんどん、暗くなっていく。
血の匂いがする。
敵の死体も沈んでいく。
何かが…あざ笑う?
そして…目覚める。



青龍 「はぁっ!!」

ユミリア 「ちっ!」

青龍の攻撃が的確に私に当たる。
こっちは魔力を常に消費しているから、どんどん動きが鈍くなる。
こんなはずじゃなかったんだけど…。
さすがに、無茶だったようね。

ユミリア 「……」

打開策を考えていた。
逃げることはできない、だったら…。

ユミリア (こうなったら、高位魔法でまとめて)

死なばもろとも。

青龍 「ここまでぇーーーー!!」

青龍が向かってくる。
魔力を溜める時間がない…!

ユミリア 「!!」

ザンッ!!

直後、青龍の体が真っ二つに裂ける。

ユミリア 「……!?」

未来 「………」

未来が草薙を右手だけで振りぬいた状態だった。
直接刃で切ったのではない。
風圧と気で切ったのだ…。

ユミリア 「……!?」

未来 「………」

眼が合っただけで、私が気圧される。
明らかに未来じゃない。
まるで、魔物の眼だ。
右手に握られている草薙から黒い気が見える。
そうか…これが。

ユミリア 「八岐之大蛇…! 暴走してるの!?」


バルバロイ 「…何だと!?」

マーズ 「どうやら、厄介なことになってきたようだな」

ミリア 「…バルバロイさん、少しの間マーズさんをお願いします」

私はそう言ってマーズさんから離れる。

バルバロイ 「ミリア!?」

私は額のバンダナを取って、力を解放する。
このままじゃ全滅する、未来を止める!!


ユミリア 「ミリア…まさか!?」

ミリア 「ユミリアさんは退がって…」

私は剣を抜いて、未来に切りかかる。

未来 「………」

ガキィッ!

未来は片手の草薙であっさり跳ね返す。
私の剣力を超えている?
私は魔力を上げて、魔法を放つ。

ミリア 「イビル・プレッシャー!」

私は魔法で未来の動きを封じる。
2秒は止まるはず。
私は次の1秒、未来の草薙を弾く。

ガキィ!!

未来 「……!」

そうして残り1秒、私は…。

ガキィィィンッ!!

衝撃音。
私の剣が折れる。
でも。

未来 「……!」

未来の村雲を弾いた。
これで未来は無防備。
魔法が切れ、自由になる未来。
私は両手に魔力を集中させて、未来の胸にぶつける。

未来 「!?」

カッ!!

一瞬の閃光。
闇の力で未来の内部にダメージを与える。
衝撃で未来は血を吐いて宙に吹っ飛ぶ。

ミリア 「…はぁ…はぁ…くっ」

私は力を使い果たしてユミリアさんに抱えられる。
力を解放してまともに動けるのは10秒位が限界みたい…。
これ以上は体と精神が持たない。

ユミリア 「ミリア…! なんて無茶を…あなたの邪眼の力は大きすぎるのよ!?」

ミリア 「でも…そうしないと全滅してました」

私はそう言って、未来を見る。


未来 「………」


未来は気絶しているのか、動かなかった。

ユミリア 「未来…!」

ユミリアさんは私を抱えて未来も抱える。
予想以上に問題があった。
まさか、こんなことになるなんて。



………。
……。
…。



そして、夜が明ける。



ユミリア 「参ったわね…」

私たちは船の残骸(後ろ半分)にしがみついているような状態だった。
幸い、沈むほどではなく、波も穏やかなので今の所安心だった。

バルバロイ 「…流されてはいますね」

ドック 「…恐らく北東に向かって流されてるな」

ドックがそう言う。

マーズ 「…ドラグーンか」

ドック 「もっとも、そこまでこの残骸が持てばの話だ」


未来 「……」

ミリア 「………」

未来は眠っていた。
私は未来を抱きしめて考える。
未来は、人を殺せないのに…。
優しい娘だから、私とは違うから。
でも、どうしてこんな力が?
八岐之大蛇。
それが、未来を狂わせるの?
それとも…?





………。
……。
…。



? 「……ゃん………」
? 「…いちゃん…!」
? 「お兄ちゃん!!」

ユシル 「んっ!? な、何だ…!?」

俺は起きて周りを見る。
すると…。
光が差し込んでいた。

セイラ 「もう…何呑気に寝てるのよ! 着いたわよ!!」

ユシル 「もう着いたのか…早かったな」

セイラ 「…本気で言ってるの?」

セイラが信じられないような物を見る目で俺を見る。

ユシル 「何なんだよ…寝てただけだろ」

ティナ 「でも、20時間寝るのはどうかと思うけど…」

ユシル 「……は?」

ルミナ 「出発してから、到着までの20時間、眠っていたんですよ」

皆が俺を奇異の視線で見る。

ユシル 「……マジ?」

セイラ 「大マジよ!!」

すぱーんっ

ユシル 「ってぇ…マジで殴りやがんの」

セイラ 「もう…お兄ちゃんの大馬鹿ーーー!!」

…To be continued



次回予告

ユシル:ついに到着した帝国。
だが、俺たちはムゥ四天王であり、傭兵王『朱雀』の罠にかかってしまう。
次々と襲い来る敵。
俺たちは、死力を尽くす…。

次回 Eternal Fantasia 4th Destiny

第6話 「傭兵王・朱雀」


ユシル 「これ以上やらせるかぁっ…!!」



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