Fantasic Company Panic


第14話 『アドバンス アドヴェンチャー』



『幻獣界』


ティントゥトゥン…♪

ハルカ 「ん…んん…?」

なんか…音がなっている。
この曲…たしかアニメの主題歌…。

ハルカ 「んん〜?」

私は音の元を手にとる。
それはポケナビだった。
トレーナーアイにメールが着てる。

ハルカ 「なになに?」
『こんにちわ ハルカさん』
『また、ポケモンリーグのシーズンがやってきましたね』
『私のポケモンは絶好調です、是非とも見に来てください』
『リンカちゃんも会いたがっていますし、私ももう一度ハルカさんと戦いたいです』
『10時38分 ツツジ』


ハルカ 「あ〜…そうか、もうそんな時期だったっけ…」
ハルカ 「て、何でメールが?」

私は寝ぼけていたのか、よーく周りを見るそこはどこか『見覚えのある風景』だった。

ハルカ 「こ…ここって…」

自分がいるのは押入れ。
一応布団に眠っていたけど…この光景って…。

女C 「あ、お姉ちゃん目覚めた?」

ハルカ 「…サン・トウカ!?」

女A 「よかった、目を覚ましたんですね」

女B 「一時はどうなるかと…」

みるとサン・トウカ看板娘三人もそろっているじゃないですか…。
てか、帰ってきたの!?

ハルカ 「な、なんで押入れに入れられているんですか?」

女A 「今朝、起きたら庭で倒れていたから驚いたけど、とりあえず以前そこで寝てもらっていたから…」

ハルカ 「…ソウデスカ…」

なんか、すっごいだるくなった。

女A 「これ、ハルカさんのお荷物ですよね?」

ハルカ 「あ、バッグ…はい」

一番年上の女性は私のバッグを渡してくれる。
白夜も入ってた。

マリア 「ああ、目覚めた?」

ハルカ 「あ、マリアさん…」

マリア 「みんな向こうにいるから早くきてね」

ハルカ 「あ、はい」

私は押入れから出ると急いでマリアさんの跡を追った。




ハルカ 「おはよう…ございます…」

デルタ 「おはよう…」

トラン 「おはようございます」

零 「…おはよう」

あゆ 「おはよ〜♪」

レイジ 「おはようって時間でもないだろうに…」

居間に来ると全員揃っていた。
どうやら私は寝過ごしたようだ。
ていうか、今回は寝ちゃったんだ…。

マリア 「んじゃ、全員揃った所でどうしようか?」

レイジ 「さてな…」

ハルカ 「……」

トラン 「あ…」

マリア 「ん? どうしたのトラン?」

トラン 「あの…テレビ…」

皆は一斉にテレビに目をやっていた。
私もテレビを見るとそれは。

テレビ 『今日、ついに第○○回、ポケモンリーグ予選が始まりました!!』
テレビ 『今年は一体どんな猛者たちがサイユウシティに集まるのか!?』
テレビ 『全シーズンではあのチャンピオンダイゴの無敵の牙城が崩れ、そのチャンピオンも辞退』
テレビ 『まったくもってホウエンリーグ界は新しい時代を訪れたといえます!』
テレビ 『さぁ! 集えポケモントレーナーたち! 明日のヒーローは君たちだ!!』

女A 「予選もスタートですね…」

ハルカ 「そうですね…」

女B 「今年もポケモンリーグには参加するんですか?」

ハルカ 「あ、いえ…今回は…」

マリア 「ふ〜ん…そうか、ここはハルカちゃんに任せるべきか」

ハルカ 「はい?」

一体何がわかったのかはわからないが、マリアさんはひとりでに納得していた。

マリア 「とりあえず何するでもないしハルカは私たちを案内しなさい」

ハルカ 「ええ? 案内って言っても…」

メビウス 「とりあえず、どこでもいいから行動しませんか?」

レイジ 「そうだな…どっか行こう」

ハルカ 「…しょうがない、カナズミシティに行きましょう」

仕方がないので私はカナズミシティに案内することにする。
ついでだからツツジさんとこにも顔を出しとこ。



…………



ハルカ 「こんにちわ〜…」

リンカ 「は〜い、いらっしゃ〜い、ってハルカちゃん!?」
リンカ 「久し振りー! どうしたの!?」

ハルカ 「あはは…相変わらず元気ね…リンカちゃんは…」

とりあえずカナズミジムに来てみるととりあえず絶対に忘れられない少女が顔を見せた。
相変わらずサンフラワーのような娘ね。

ハルカ 「ツツジさんはいる?」

リンカ 「ツツジなら、早速ジム戦やってるよ、見にいってみたら?」

ハルカ 「そうね」

それなら、というわけでジム戦を見に行くことにする。

マリア 「へぇ〜…寮みたいな所ね」

デルタ 「……」

トラン 「平和です…」

あゆ 「さっきたいやきが売っていたよ〜…」

リンカ (ハルカちゃんったら随分大所帯になったのね…)



………



ハルカ 「どれどれ…あっ!」


ツツジ 「くっ! ノズパス、岩石封じ!」

シャドウ 「トロピウス! 飛び上がって葉っぱカッター!」

ヒュウヒュウヒュウ!!

ノズパス 「ノパー!?」

審判 「ノズパス戦闘不能! よって勝者シャドウ!」

ハルカ 「いきなり負けてるし…」

見に来たのはいいけどいきなりツツジさんは負けちゃった。
岩石封じは飛ぶ相手には不向きよね…。

ツツジ 「お見事です…シャドウさん…コテンパンやられちゃいました…」

シャドウ 「どうも…」

あゆ 「あれ? あの人って…」

トラン 「あの時の…」

ハルカ 「間違いなく、シャドウさんよね…」

あのべらぼーに強かった人だ。
どうやら、ポケモンも別格のようだ。

ツツジ 「はふん…」

ハルカ 「ツツジさん、残念ー! シャドウさん、おめでとー!」

ツツジ 「ええ! ハルカさん!?」

シャドウ 「ハルカ…?」

ふたりとも私に気付いて驚く。
シャドウさんはちょっと反応が薄いけど…。

ツツジ 「もしかして見てたんですか〜!?」

ハルカ 「最後だけね」

ツツジ 「と、とにかく会いましょう! すぐ会いましょう!」



………



ツツジ 「ハルカさん、なに食べます?」

ハルカ 「えと、じゃあカレーライス…」

ツツジ 「はい♪」

ハルカ 「…て、なんでよりにもよって食堂…?」

ツツジ 「もう、お昼ですし」

リンカ 「お腹減っているでしょ?」

ハルカ 「そりゃまぁ…」

私ひとりならそれでもよかったんだけど…。

マリア 「結構いいラインナップね、デルタは何にする?」

デルタ 「日本語読めない…」

レイジ 「……」
メビウス 「……」

トラン 「あの、日替わり定食ひとつ…」

零 「牛丼(並)…」

あゆ 「うぐぅ…たいやきはないんだ〜…」

ツツジ 「それにしても、随分お友達が多いんですね」

リンカ 「あの人の尻尾や耳って…最近の流行?」

ハルカ 「あはは…」

リンカちゃんはレイジとメビウスが興味津々のようだった。
ツツジさんは相変わらずね…。

シャドウ 「ハルカ…少しいいか?」

ハルカ 「あ、シャドウさん…?」

突然、後ろからシャドウさんが声をかけてきた。
名前の通り存在感ない人ね…。
思いっきり忘れていたわ。

シャドウ 「すいませんが、ツツジさんたちは先に食べていてくれませんでしょうか?」

リンカ 「それって、二人っきりで話したいってことですか?」

シャドウ 「はい…」

ツツジ 「はい、わかりました♪」

リンカ 「いやぁ、やっぱりハルカちゃんってもてるねぇ〜」

ハルカ 「愛の告白じゃないと思うんだけど…」

私は苦笑しながらシャドウさんと部屋の隅に移動した。

ハルカ 「で、何ですか?」

シャドウ 「神剣は持っているか?」

ハルカ 「え?」

シャドウ 「神剣の気配がする、以前は感じなかったのに…」
シャドウ 「契約者になったのだろう?」

ハルカ 「あ、これのこと…」

私は白夜のことを言っているのだと気付くと白夜を取り出した。

シャドウ 「白夜…? あまりに微弱な力とは思ったが折れていたのか…」

ハルカ 「あの…シャドウさんも神剣の契約者なんですよね?」

シャドウ 「ああ…『聖緑』の契約者だ」

シャドウさんからは桁違いの力を感じる。
どうも白夜と契約してから神剣の力を敏感に感じていた。
シャドウさんの力は異常なほど大きい。

ハルカ 「あの、この折れた白夜を直したいんですけど、どうしたらいいんでしょうか?」

とりあえず聞いてみた。
神剣の先輩だし、直せるんじゃないだろうか?

シャドウ 「神剣は通常の武具とはちがう、もう半身を見つけないことには直せない…」
シャドウ 「可能性があるとすれば…『アーク』か…」

ハルカ 「アーク?」

シャドウ 「神々の住まう世界だ、ポケモン達の楽園でもある」
シャドウ 「あそこならもしかしたら直す方法があるかもしれない…」

そんな世界もあるんだ…。
うーん、次の目的地はとりあえずアークかしら?
て、どうやって世界を渡ればいいっての!

ハルカ 「どうやって行くんですか?」

シャドウ 「…この世界で複数の人数を送れるのはセレビィだけだ」
シャドウ 「最近は空間転移が多発しているし、もしかしたら渡ることもあるのかもしれない」
シャドウ 「この世界は最もアークのある神界に近いからな」

ハルカ 「そうなんですか…」

この人は常識ハズレなことをすらすら言い始める。
シャドウさんって何者だろう…。

ハルカ 「結局、シャドウさんって何者なんですか?」

シャドウ 「………」
シャドウ 「……」
シャドウ 「…ただの人間だ」

すっごい長い間があったんだけど、出てきた言葉はそれだった。
『ただの人間』はドガーンとかバガーンとか爆発を起こせる人間のことを指すのね…。

シャドウ 「…これを渡しておこう…」

ハルカ 「? なんですかこれ?」

私はシャドウさんからなにやら青いガラス細工の花弁のような物を渡された。
神秘的な代物だけどなんだろ?

シャドウ 「時の欠片…もしセレビィの話を聞いたら使ってみるといい…」

ハルカ 「使えって…どうやって…?」

シャドウ 「さぁな…」

シャドウさんはそう言うと出口の方へと歩き出す。

シャドウ 「ハルカ…運命は微かに揺れている…」
シャドウ 「交わる筈のない運命…出会う筈のない世界…『永遠存在』と呼ばれるものでさえ…もはや読めない…」
シャドウ 「ハルカは既に運命から逸脱している…」
シャドウ 「運命と共に…」

シャドウさんは意味深なことを言うと去っていった。
運命…か…。

ハルカ 「ふん、面白いことになってきたじゃない!」

なんだか、どんどん世界は変化しているみたい。

ハルカ 「まずはセレビィ…そしてアーク!」

私の道は決まった。
私のアドヴァンスアドヴェンチャー…面白くなってきたわね…!



第15話 『扉の向こう』



ハルカ 「つーわけでアークを目指したいと思います」

デルタ 「……」

レイジ 「まぁ、事情は飲み込めたが…」

マリア 「とりあえず、元の時代に帰れないんだしいいでしょ」

あゆ 「うん、ボク、手伝うよ♪」

トラン 「私も…」

零 「佐祐理を助けないといけない…協力は必要だ…」

メビウス 「サタン様たちも心配ですし…」

私たちはとりあえずツツジさんのジムに寝泊まることにした。
とりあえずツツジさんまで巻き込みたくないのでツツジさん無しの部屋に集まって話をしていた。
本来私はこの世界に帰ってこれたんだからさようならは簡単だ。
でも、そうもいかなくなっている理由がある。

状況を確認しよう。
まず、私、ハルカ。
セリアやユウキ君などの問題は多い。
色々助けられたりもしているから私もみんなを手伝わないと。

一つ目の優しきモンスター、メビウス。
サーちゃんのためセリアを探している。
私が最初に行動を共にした信頼できる仲間ね。

謎の少年、水瀬 零
川澄舞、倉田佐祐理を助けるため行動を共にしている。
身体能力はまさしく化け物、頼れる仲間だ。
川澄舞はあれから出会うことはないが、今度は敵対しなくてもいいよね。

親友と呼べる少女、あゆ。
特に固有の目的を持っているわけじゃない。
でも、馬鹿なのかその優しい性格で自分を省みず私たちを助けてくれる。
おどおどしていて頼り気もないけど、私にとってとても仲の良い仲間だ。

不思議な少女、トラン。
あまりよく喋ったことはないけど、とにかく不思議な雰囲気を持った少女。
あゆと同様今は固有の目的を持っていないみたいだけど私たちを助けてくれる。
戦いは全く出来ないけど、みんなの心の母親的存在だ。

明るいお姉さん、マリア レウス。
気さくな性格で、軍人らしからぬ軽さを持ちながら的確な指示と状況判断を下せる私たちのリーダー的存在だ。
現在も『エグザイル』という対抗組織と交戦中らしいけど、とりあえず戻るまでと言った感じで私たちを助けてくれる。

対照的な女性、デルタ メラス。
元エグザイルの少佐殿らしい。
極めて無口だけど、必要なことは喋ってくれる。
怖い感じとは裏腹にとても優しい人だ。

正体不明のラグラージ、レイジ。
特に目的も持たない自由人で私たちを助けてくれている。
古武術の使い手でかなりの実力がある。
かなり流される性格をしている年長者だ。


マリア 「で、とりあえずこの世界ではどう行動するの?」

ハルカ 「う〜ん、それが問題なのよね…」

いかんせん、アークのある神界への行き方がわからない。
セレビィなら送れるそうなんだけど、そんな天文学的数字に頼るわけにはいかない。
セレビィなんて一生のうち一度出遭えるかどうかっていったくらいの超激レアポケモン、探せと言う方が無理。
と、すると別の方法を探すしかない。

メビウス 「…マグマ団を探すのはどうでしょう?」

レイジ 「マグマ団…?」

珍しくメビちゃんが提案してくる。
マグマ団か…。
たしかにマグマ団はこの世界が根拠地、もしかしたらセリアを探せるかもしれない。
しかし、マグマ団は『壊滅』したのだ…。
この私が事実上壊滅に追い込んだのだから…。

あの時、グラードンの予想外の力に恐怖し、マツブサはもう立たないと思っていた…。
でも、マツブサは立ちあがった…今度は何をしようとしているの?

零 「すまないが、マグマ団とは…?」

ハルカ 「あ、マグマ団は…」

私はみんなにマグマ団のことを教える。



あゆ 「うぐぅ…酷いよ…」

マリア 「しっかし、グラードン…ねぇ?」

トラン 「すごいです…」

零 「とにかく、マグマ団を止めないといけないわけだな…」

ハルカ 「もう一度…グラードンの力を欲しているならね…」

イマイチ私にはマグマ団の真意がわからない。
それが、怖い所ね…。

リンカ 「ねぇ、ハルカちゃん起きてる?」

ハルカ 「あ、リンカちゃん?」

突然、リンカちゃんが入ってきた。
ちなみに今の時間はもう深夜12時、かなり遅い。
もしかして、お咎めに来た?

ハルカ 「どうしたの、リンカちゃん?」

リンカ 「うん、なんかね、さっきハルカちゃんにこれを渡してって手紙が来たの…」

ハルカ 「え? 手紙…?」

リンカちゃんは「うん」と言い、縦に首を振ると手紙を差し出してきた。
私はそれを手に取ると差出人を確認する。

ハルカ 「…書いてない、ねぇ、一体誰が手紙なんて…?」

リンカ 「さぁ? 突然知らない人が尋ねてきて、ハルカちゃんにって」

ハルカ 「ふ〜ん…」

マリア 「それってどんな奴だったの?」

リンカ 「え? えーと、黒いロープに身を包んでいてよくわからなかったけど、女性じゃないかったかな?」

あゆ 「うぐぅ…なんか怪しいよ…」

トラン 「…誰なんでしょうか?」

リンカ 「んじゃ、渡したから」

リンカちゃんはそう言うと部屋を出て行った。

ハルカ 「ふぅ…」

とりあえず私は手紙の内容を確認してみることにする。
手紙は封筒に入っていたので封を切って便箋をだすと内容を見る。

『今すぐその場から逃げて』

ハルカ 「え…?」

零 「逃げろ…だと?」

いきなり途方もないことが書かれていた。
しかし、そんなこと考えている時間もなかったのだと、すぐに私は理解する。

ガシャァンン!!

トラン 「!?」

あゆ 「うぐぅ〜!!?」

突然窓ガラスは割れ、窓から三人の武装した男。
そして、リンカちゃんが出ていた扉から4人の同じく武装した男女。
そして、天井から3人武装した男。
計10人が一斉に部屋に入ってくる。
なすすべなく囲まれた。

メビウス 「い、いきなりなんなんだ!?」

ハルカ 「アクア団…!?」

中に突入してきたのはアクア団だった。
マグマ団と同じくその特徴的な姿は忘れないわ。
でも、まさかここまで武装化してくるとはね。

ハルカ 「62式7.66mm機関銃に」

零 「89式5.56mm小銃とはな…」

マリア 「たしか20世紀末からの21世紀中ごろにかけて日本陸上自衛隊で正式採用され、使用された兵器ね…」

突然突入してきたアクア団はどこから仕入れたのかそんな物騒な兵器をこちらに向けていた。
下手なことをしたら秒間650発ものの銃弾が私たちの体に撃ちこまれるんでしょうね…。
まさか、レプリカ…だとは思えないわね…。

男A 「ホウエンリーグチャンピオンハルカだな?」

ハルカ 「元、ね…」

男B 「余計なことは考えないことだ、いかに格闘技の世界チャンピオンでもこの兵器には勝てまい」

ハルカ 「言われなくたってわかるわよ…」

ひとりなら撃たれる前倒せるかもしれないけどこれだけの数では無理ね。
しかも、迂闊な動きをしたらあゆやトランちゃんはかなり危ない。
早い話、絶体絶命。
よもや、ここまで武装化してくるとは。
軍事クーデターでも起こす気かしら?

マリア (いくらなんでも、普通そんな銃器をこんないかがわしい組織が持てるかしら?)
マリア (かなり生産台数も微妙で日本軍以外使用しないはず…普通ならトンプソン機関銃とか、MMライフル辺りがポピュラーだったはずだけど…)

デルタ 「マリアさん…?」

マリア 「あなた達突然、なんの用なの?」

男A 「貴様達の知るところではない…」

レイジ 「なんだよ、感じわりぃな」

ハルカ 「マツブサの差し金かしら?」

私はあえて『マグマ団のリーダー』の名前を言う。
もしかしたら…。

アオギリ 「ふっ、当たらずとも遠からず…かな?」

零 「!?」

ハルカ 「アオギリ…?」

アオギリ 「初めまして、『この世界』のハルカさん」

突然中に入ってきた男はアクア団、団長アオギリだった。
まさか、アオギリが出てくるなんてね。

アオギリ 「マツブサがお前の命を欲していてな」
アオギリ 「何があったのかは知らんが、マツブサはお前を危険視している」
アオギリ 「たかが、一介のポケモントレーナーがどうとすることもできないと思うのだがな…?」

ハルカ 「この場で殺すのかしら?」

アオギリ 「ふ、それならば気付かせる前に殺してある」
アオギリ 「おっと、妙な考えは起こすなよ、外から狙撃兵も狙っているしここの関係員の命も預かっているからな…」

ハルカ 「ち…」

あゆ 「うぐぅ…まるで映画みたいだよ…」
マリア 「映画…ね…」

映画だったらここから奇跡の大逆転でもあるんでしょうけど。
ここで、おしまいかしら…。

ハルカ 「私以外の命は必要ないでしょ? 大人しく命令に従うからとりあえずこの部屋を出させてくれない?」

あゆ 「うぐぅ!? ハルカちゃん!?」

トラン 「ハルカさん…」

マリア 「ま、最善策よね」

レイジ 「おい、マリア!」

マリア 「事実よ」

アオギリ 「ふっ、無論だ、邪魔せぬ限り殺しはせん」
アオギリ 「あくまで、ハルカ、お前の命が必要なのだからな」

零 「……」

男C 「貴様、妙な動きはするな」

零 「くっ…」

ハルカ 「…ありがと」

零は諦めてない。
でも、誰か犠牲になるのはアレだし、できれば犠牲は誰も出したくない。

アオギリ 「では、行こうか、気高き少女よ」
ハルカ 「ええ…」

ここは従うに限る…お願いだからみんなおかしな行動だけはとらないでよ?

マリア 「みんな、じっとしときなさい、彼女が大切なら、ね」

あゆ 「う、うぐ…」

デルタ 「息まで止めなくていい…」

トラン 「……」

レイジ 「けっ…」

私は3人の機関銃に狙われながら部屋を出る。
ありがとね、マリアさん…。


………


ハルカ 「どこまで、連れて行く気なの?」

アオギリ 「神界…、そこへ行くのが目的だったな?」

ハルカ 「! あなた空間転移を…!?」

アオギリ 「ふっ、便利な奴がいるんでな」

ハルカ (便利な奴…? 人なの?)

それにしても空間転移を可能にする…人?
そんなこと易々と可能なの?

ハルカ (それにしても…どこまで歩くの?)

私たちは既にカイナシティを出て流星の滝方面に出ていた。
その間で見たアクア団の数は300余り、完全に街は占拠されていた。
警察の銃とアクア団の機関銃じゃ勝負にならないものね…。

アオギリ 「着いたぞ」

ハルカ 「!?」

シャドウ 「おそ…ハルカ!?」

カナズミシティから流星の滝へ行くことは出来ない。
それは大きな丘があり、一方通行だからだ。
そんな丘の前には何人かのアクア団員とシャドウさんがいた。

ハルカ 「どうしてシャドウさんが!?」

シャドウ 「これ以上に…必要な物は無いだろう…」

ハルカ 「あ…」

シャドウさんは胸元からアクア団のマークの刺繍の入った布を取り出して見せた。
それはつまり、シャドウさんは…。

ハルカ (シャドウさんは…アクア団員)

シャドウ 「どういうことだ、アオギリ…報告に無かったぞ?」

アオギリ 「急用だ…それより状態はどうだ?」

シャドウ 「時間まであと3分15秒…あとはこいつの働き次第だ」

そう言ってシャドウさんはとても大きな機械を叩いた。

ハルカ 「これは…?」

シャドウ 「空間転移は空気レベルで行われる…」
シャドウ 「しかし、通常空間転移はとても小さくそれこそ粒子レベルでしか行われない」
シャドウ 「しかし、時間、場所がわかればこいつでその規模を大きくして集団転移を行う」
シャドウ 「原理は知らんが俺の聖緑なしで可能にしている…」

ハルカ 「……」

もしかして、いぜん吸血鬼アシュターの館で跳んだ時のと同じ代物かしら?

シャドウ 「アオギリ、ハルカをどうする気だ?」

アオギリ 「ふっ、お望みはマツブサだ…俺は知らん」

シャドウ 「……」

ハルカ (どうにも気になっていたけど、アクア団はマグマ団と結束したの?)
ハルカ (アクア団とマグマ団は敵同士のはずなのに…)

シャドウ 「……」

横からシャドウさんの顔を覗き見るけど表情からは何も読み取れない。
イマイチ、全容がつかめない状態ね。

シャドウ 「アオギリ、ハルカは俺に任せてくれないか?」

アオギリ 「なんだと…?」

シャドウ 「マツブサに引き渡すまでだ」

ハルカ 「シャドウさん…?」

アオギリ 「…まぁ、いいだろう」

シャドウ 「……」

アオギリ 「そろそろ時間だな」
アオギリ 「各員! 起動準備!」

アオギリがそう指示すると団員達は一斉に動き出した。
本当はひとりになった時点で逃げ出すつもりだったけど予定変更。
このまま神界に向かう。
シャドウさんがアクア団員でもそれが私にとって不利益かどうかっていうとわからない…。
もともとシャドウさんには興味があった。
もう少し捕まっていてみよう。




…………




『幻獣界:カナズミシティ:カナズミジム』


マリア 「たく、やってらんないわね…」

零 「ツツジとリンカは眠らされていた」

ツツジ 「リンカちゃん…大丈夫?」

リンカ 「うん…いたた」

レイジ 「当身で眠らされてたみたいだぜ」

デルタ 「ほか、ジムメイト13名は眠っていたまま睡眠薬で深い眠りに追い込まれた模様…」

あゆ 「うぐぅ…ハルカちゃん大丈夫かな…」

トラン 「大丈夫です、そう信じましょう」

メビウス 「ええ、ハルカさんは必ず大丈夫です!」

? 「そうです、信じる心が運命を変えます…」

マリア 「えっ!?」

零 「!?」

トラン 「だれ…?」

リンカ 「あなた…あの時の!」

突然黒いロープに身を包んだ女性が中に入ってくる。
何か…とても暖かい気を感じる…。

? 「ハルカさんが死に直面するまであと31時間と8分51秒…」
? 「さぁ、行きましょう…終焉はひとつでも…岐路は幾重にあります…」
? 「選択をしましょう…」

素顔の見えないその女性はやんわりとした口調でそう言った。
大丈夫…この人は信じれる。

トラン 「みなさん、助けに行きましょう…」

マリア 「助けに行くったってどうやって?」

トラン 「それは、その人が知っているでしょう…」

? 「……」

女性は姿を完全に隠しているので表情はわからない。
でも、なんとなく優しく微笑んでいる気がする。

? 「私が、その場へ導きましょう…さぁ、行きましょう」

トラン 「あなたは一体…?」

? 「私は…」



………



『神界:アーク』


ハルカ 「ここが、アーク…神界…」
神界は朝だった。
空は明るく、周りは鬱蒼とした森の中だった。
空気は寒くも無いが暖かくも無い。

アオギリ 「基地へと連行する」

ハルカ 「……」

シャドウ 「……」

ついに神界へとやって来た。
私ひとりの戦い。
あとはやれるだけやるだけ…。



第16話 『神と従者』



『神界:アーク:アクア団基地』


シャドウ 「マグマ団への引渡しまで20時間、その間適当に寝ているんだな…」

ハルカ 「……」

私は森の中にあった人口の建物のいかにも牢獄ですって感じの場所に閉じ込められた。
まぁ、逃げられちゃ困るんでしょうね。
閉じ込められた部屋はとりあえず粗末なベットがひとつあるだけの狭い部屋だった。
グリーンドルフィン刑務所よりマシなのかしら?

シャドウ 「……」

シャドウさんは部屋の外で看守のようにただじっと立っていた。
シャドウさんは何を考えているんだろう…?
私たちを助けてくれたこともあった。
神界のことを教えてもくれた。
アクア団の一員でもあった。
神剣の契約者でもあった。
シャドウさんは何を考えているのだろうか?

ハルカ (考えても仕方ないか、今は寝よ…)



シャドウ (アークに来てしまったか…)
シャドウ (願うことならもう二度と来る筈の無い場所だったんだがな…)

俺は思わず笑みがこぼれる。
今更この世界にどうこう思うことがあるとはおもわなんだ。
もはやこの世界に価値なぞない…。
セレビィは堕落し、レックウザは消え、ここに残るのはただただ無力な神『エグドラル』のみ…。

シャドウ (他の神々は動くか…? 否、動けるはずが無い)

邪神にして創造神『ドグラティス』…あれが無ければ神界はこうも乱れなかっただろう…。
かつて神界全土を巻き込んだ神々の大戦…結果は多くの神々を犠牲にしてドグラティスは敗北した。
その結果堕ちた場所が幻想界。
それをきっかけにこの『アーク』は誕生した。
神になれなかった出来損ないたちがひしめく世界…アーク。
俺も…出来損ないであるがゆえ…。

聖緑 『あまり、自分を卑下に見るのはどうかと…』

シャドウ 「気にするな…聖緑、それでも感謝している」
シャドウ 「もし、あの大戦がなければ幻獣界は存在していなかったかもしれない」

カイオーガとグラードンは憤りを感じていた。
結局の所、出来損ないの神だったそれらは主エグドラルの見守るという『管理下』におかれていたのだ。
この世界に自由などなかった。
見せ掛けだけの自由ならあったがな…。

どうやっても心だけは縛れない。
カイオーガやグラードンは自由が欲しかった。
だから、あの二匹は時空転移のできるセレビィの力を借りて、幻獣界に降りた。
エグドラルが創った『箱庭』と『楽園』、幻獣界と空虚界。
互い、違う世界に降りればよかったものを二匹は幻獣界に降り立った。
そして、互いの覇権を巡って争った。
すでに幻獣界には人間がいたというのに…だ。
しかし、エグドラルにどうこうできるわけもない。
拘束の無い世界として創った箱庭、幻獣界。
エグドラルはただ、形だけの神だった。
いずれ存在さえも忘れられる哀しき神。

しかし、エグドラルにはやるべきことがあった。
あらゆる世界の天敵がいたからだ。
その名を『ザンジーク』という。
あらゆる世界のDelete(消去)を目的とした存在だ。
その牙はエグドラルの世界にも及んでいた。
だから、エグドラルはある秘法をセレビィに託した。
第3進化の秘術。
神の出来損ないから神へと…正確には使徒(死徒)として進化する究極の秘術。
それは唯一絶対の魂さえも変化させる秘術。
本来は進化の道の中で存在しない道を無理やり作るのだから当然だ。
姿は神々と同じ人のなりになり、時の流れは止まってしまう。
そして、何らかの恩恵が与えられた。
後の『人間』はそのポケモンが人の姿を得た仮初の存在を合成生物としてのキマイラとひとりの少女からとって、『キメナ』と名づけた。
キメナはただ、ザンジークを滅ぼすための生きた兵器。
人生を捨て、ただエグドラルのために戦う存在。
まさに生きた戦闘兵器…。

現存、存在するキメナは(俺の知っているだが)魂の輪廻によって生まれたユウキと、秘術によって生まれた俺だけ…。
後にあるのはただの偽者…ないしはレプリカ…といった所か。

シャドウ 「…少し眠る、異変があったら教えてくれ」

聖緑 『わかりました、エメルさん』

俺は後を聖緑に任せて立ったまま眠りにつくことにした。
事態はエターナルでさえ予想のつかない展開になった。
それにしてもマツブサめ…なぜ、ハルカを要する?
もはや、たかがひとりのポケモントレーナーではどうすることも出来ない存在の筈なのに…。


…………。


ドタドタドタ!

足音が聞こえる。
なにやら慌てているみたい。

ハルカ (…時間かしら?)

いよいよ審判の時が来たのかしら…?
中からは外の様子はわからないシャドウさんに聞いてみようかしら?

ハルカ 「ねぇ、シャドウさん騒がしいけど一体どうしたの?」

シャドウ 「…賊が侵入したようだ」
シャドウ 「詳しいことはわからん…」

ハルカ (賊ね…)

もしかして、零君たちかしら?
でも、こっちまですぐこれるとは到底思えないんだけど。

聖緑 『エメルさん、ひとり神クラスのマナ保有者が存在しています』

シャドウ (神か?)

聖緑 『わかりません…かなり高レベルの存在であるのは確かです』

シャドウ (神が動くとは到底思えん、とすると何者だ?)
シャドウ (過去に同じ、ないしは擬似的なものの確認は?)

聖緑 『邪神ドグラティスに近い反応がひとつ』
聖緑 『…恐らく邪獣』

シャドウ (邪獣…十騎士か?)

ハルカ 「一体何が起こっているのかしら?」

外の様子は全くわからない。
こっちにとって好転しているのかそれともどん底に落ちているのか。
前者であってほしいものね。

アクア団員 「シャドウさん、賊が3名侵入、またそれに乗じてここを目指す集団があります!」

シャドウ 「ハルカを取り戻しにきたのか?」

アクア団員 「恐らくそうと思われます!」

シャドウ 「しかし、その三名とは?」

アクア団員 「わかりません、ただ恐らく例の物を狙っているかと!」

シャドウ 「バルムンクか」

ハルカ (バルムンク?)

なんだろうそれは。
まてよ、ファンタジーかなんかにバルムンクっていう単語があったような。

シャドウ 「ここは俺ひとりで守る、お前は賊の方を阻止しておけ」

アクア団員 「わかりました!」

アクア団員はシャドウさんの指示通りこの場を離れたようだ。
私は暫くしてシャドウさんに話しかける。

ハルカ 「ねぇ、バルムンクって?」

シャドウ 「天剣バルムンク…神の剣のひとつだ」
シャドウ 「幻想界に一本存在するだけの剣だが、偶然我々の元に入ったと報告では聞いている」

ハルカ 「天剣ねぇ」

ということは、賊ってそれを取り返しにきたのかしら?
ということはその3人は幻想界っていう所の人なんだ。

ハルカ 「こっちに来ているっていう集団ってやっぱり?」

シャドウ 「間違いなくお仲間さんだ」

シャドウさんはそう言ってくれる。
やっぱりそうなんだ。
いやぁ、それにしてもどうやってこっちに来たのかしら?
何はともあれこれで脱出できるわね♪
とか、思っていると…。

バカァ!!

ハルカ 「て、ええっ!?」

突然ドアがぶち壊れる。
もちろん外側から。
やったのは当然シャドウさん。

シャドウ 「今のうちに逃げろ、恐らく逃げられる」

ハルカ 「ありがたいけど、シャドウさんは!?」

シャドウ 「お前に不意を突かれてやられたとでもしておく」

ハルカ 「一緒には…来てくれないんですか?」

シャドウ 「…悪いがな」

ハルカ 「いえ、それじゃありがとうございます」
ハルカ 「私は行きます…」

マリア 「ハルカちゃん!!」

マリアさんだ。
他の皆もいる。
どうやらもうここまで来たようだった。
かなり早いわね…。

ハルカ 「みんな、来ていたんだ!」

あゆ 「助けにきたんだよ♪」

メビウス 「この人のお陰ですけど」

メビちゃんはそう言ってひとりの女性を指差した。
その女性は緑色の髪の毛が特徴的な美しい女性だった。
当然知らない人物…誰?

シャドウ 「エグドラル様…」

女性 「エメル…」

ハルカ (エグドラル様?)

シャドウさんは驚愕の目でその女性を見ていた。
エグドラルっていうのね。

シャドウ 「どうして、あなたが…」

エグドラル 「おこがましいとは存じますがどうかこの者たちに力をお貸しできませんでしょうか?」

シャドウ 「! 悪いがそれはできない」

エグドラル 「…やはりですか」

シャドウ 「あんたがいなければラルドは死ぬことなんてなかった!!」
シャドウ 「あんたのせいでどれほど人の心が歪んだと!!」

エグドラル 「私の罪は購いきれません…ですが私は…」

シャドウ 「ザンジークがどうとか言っているんじゃない!!」
シャドウ 「力あるものがただ自分に怯えて何もしない!! それに腹を立てているんだ!!」
シャドウ 「だが、そんな貴様がどうしてハルカたちと一緒にいる!?」

シャドウさんはいつもの冷静な顔ではない。
まるで子供のよう…そう、自制の出来ない子供のようだった。
なぜ、そこまであの女性を憎むの?

エグドラル 「今回だけです…干渉は禁止されていますから」
エグドラル 「でも、ハルカさんだけは死なすわけにはいきません…」

シャドウ 「あんたはなんだんだ!? 傍観者か!? 管理者か!?」
シャドウ 「いつまでもうつろわざる者が箱庭にいると思うな!!」

ハルカ 「ちょ、ちょっとシャドウさん…」

私はさすがに仲裁に入る。
正直驚いたわ…まさかシャドウさんがこんなに感情的になるなんて。

シャドウ 「俺はあんたを…エグドラル様を許さない…たとえ神と言えど…俺は!」

エグドラル 「…許しは請いません…許されざる存在であるのは確かですから…ですが」
エグドラル 「ですが、ハルカさんたちは関係ないでしょう…私はここに残らないといけません…代わりに力を貸してあげてくれませんか?」

シャドウ 「……」

ハルカ 「シャドウさん…」

シャドウ 「いくぞ…いつまでもここにいるのは危険だ」

ハルカ 「あ、はい!」

シャドウさんは何も言わず歩き出す。
受けたと思っていいんですよね?

ハルカ 「その…」

エグドラル 「ハルカさん…あなたに力を…」

エグドラルさんは俯いたままそう言った。
私は何も言わずにその場を離れた。
何があるのかは知らないが、祈るなんて弱い奴のすること…。
彼女には力がある…でもそれを使わない。
なら、私は何も言わない。



…………。
………。
……。



ハルカ 「あの…ところでどこに向かっているんですか?」

私は一番先頭を歩くシャドウさんに聞いた。
10分くらい歩いたが外に出られる様子はない。
しかし、この基地のことに詳しいのはシャドウさんだけのはず…。

シャドウ 「…すまない、道に迷った」

あゆ 「うぐぅ!? まよったの〜!?」

マリア 「て、あなたこの基地の人じゃないの!?」

見事な斜弾。
いきなりそれですか…冗談にしてはきつすぎますよ?

シャドウ 「この基地に来たのは俺も初めてだ…」

そういうことは最初に言ってほしかったです…。

聖緑 『エメルさん…この先に天剣の気配があります…』

シャドウ 「…バルムンクか…」

トラン 「バルムンク…?」

ハルカ 「例の天剣?」

なんでも凄い剣らしいけど…。
白夜や聖緑と同じ神剣かな?

メビウス 「ん? なんか向こうの角から強い力をもった人たちが来ます!」

レイジ 「あのアクア団の連中か?」

あゆ 「もしくはマグマ団?」

シャドウ 「いや、違う…」

次第に足音が近づいてくる。
いそいでいるようで数は3人のようね。
一体何者かしら?

ハルカ (そういえばアクア団員が報告していたわね…バルムンク狙いの三人)

もしかたらそれかしら…?
そして、三人は私たちの目の前に姿を現す。

ユシル 「ここかっ!?」

バルバロイ 「!?」

セイラ 「嘘っ!? なんかいっぱいいるし!!」

いきなり銃刀法違反者三名が突入してくる。
三人とも普通じゃなさそうね…。
特に一番背の高い男…只者じゃないわ。

シャドウ 「天剣バルムンクを取り返しにきたのか?」

バルバロイ 「だとしたらどうする?」

一番身長の高いつり目の男は警戒しながらそう言う。
う〜む、よく見るとかなりの美形ね。

シャドウ 「…この先にある、本物かどうかは所持者が持てばわかるだろう…」

バルバロイ 「……」

ユシル 「どうします…バルバロイさん?」

バルバロイ 「…セイラ」

セイラ 「う、うん…」

なにやら少し話し合った後女の子が前に出る。

セイラ 「この先にあるんですよね?」

シャドウ 「聖緑はそう言っている」

ユシル 「聖緑?」

ハルカ 「トラン…どう?」

トラン 「いい人たちです」

ハルカ 「だそうよ、シャドウさん」

シャドウ 「……」

もっとも、この大将それしか言わないけど。

セイラ 「……」

トラン 「…どうぞ」

セイラ 「あ、ありがとう…」

トランったらなんて優しいのかしら。
そして、扉の先には一振りの剣があった。
アレがバルムンクか、装飾からして普通の剣じゃないわね。
なんとなく白夜に似ている気がするわね。

セイラ 「……」

女の子は天剣を手に取るとしばらく固まる。
そして、すぐに口を開き。

セイラ 「本物だよ!」

ユシル 「えーっと、とりあえずありがとう…」

ハルカ 「気にすることないわよ…盗まれた物を取り返すのは当然でしょ?」

バルバロイ 「あんたたちももしかしてこの世界に紛れ込んだのか?」

マリア 「たちってことはあなたたちも迷い込んだのね…」

あゆ 「もっとも僕たちエグドラルさんに連れてこられたんだけどね♪」

ハルカ (そういえば、これからどうなるんだろう…)

セイラ 「ということは仲間って考えてもいいんだよね!?」

ユシル 「お前はいつもどうしてそんな突拍子もない考えにいきたつ?」

ハルカ 「そっちにその気があるのなら…」

零 「とりあえず、ここを出た方がいい…」

ハルカ 「ああ、そうね」

忘れた頃に零さんが声を出す。
最近人数が増えてきたから忘れる所だったわ。

ハルカ 「私ハルカ、あなたたちは?」

ユシル 「俺はユシル・プルートでこっち義妹の…」

セイラ 「セイラ・プルートです!」

バルバロイ 「バルバロイ・ロフシェルだ」

そうか、そう言う名前なのか。
さて、じゃこれからどうなるのかしら?

ハルカ 「とりあえず、どうすればいいんでしょうかね、シャドウさん?」

シャドウ 「…う、む…」

シャドウさんも考えている。
神界もさっさとおさらばしたいところだしね。
そして、そんな時に限って…。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ハルカ 「ちょ、この揺れって…?」

あゆ 「う、うぐぅ…またなの〜?」

メビウス 「空間の歪みを確認!」

セイラ 「またっ!?」

ユシル 「ええい!ままよ!」

デルタ 「…いきます」

はぁ…慣れていくのね、自分でもわかる。
と、いうわけで…。


ヒュン!!


第18話 『交錯する過去と未来』


『幻想界:レギル大陸 メルビスの町』

ユミリア 「………」

アリア 「…心配なの?」

私が机に向かってひとりで考え込んでいると、アリアがそう言い出す。

ユミリア 「…そうね」

私はため息をひとつついてそう言った。

アリア 「子供たちが、戦争を勝ち抜かなければならない…」
アリア 「その現実を受け止めなければならないのね」

ユミリア 「ええ…」


シェイド (襲…。おまえの死は無駄にはしない、必ず私たちは勝つ)
シェイド (だから…安心して見ていろ)

私は宿の屋上から夜空に向かってそう心に思った。

キィィン!

シェイド 「!? なんだ!? 光の柱!?」

突然エレル山の方角に光の柱が立った。
私はそれを凝視する。

ディアボロス 『あれは空間転移の光だ』
ディアボロス 『私も初めて見た』

ディアボロスはそう言う。
空間転移…もうすぐドグラティスとの決戦だと言うのに…一体何が?

シェイド 「ユミリアさんたちに言うべきだろうか…?」
シェイド 「いや、万が一もある、ここはひとりで行こう」

私にはディアボロスもある。
大丈夫だ…。



…………。



ハルカ 「いたた…ここどこ?」

バルバロイ 「つ…ここは?」

ユシル 「あれ…見たことあるようなないような…」

セイラ 「!? ちょ、お兄ちゃんあの山!」

その言葉にこの場に居合わせた皆が山を見る。

バルバロイ 「まさか…エレル山!?」

セイラ 「間違いないですよ! やった、帰ってきたんだ!」

マリア 「ねぇねぇ…それはそうと、あの『デカブツ』はなにかしら」

零 「デカブツ…?」

山の方角を見ると位からわかりにくいがなにか船のような物があった。

トラン 「え!? REINCARNATION!?」

ハルカ 「あの戦艦の名前…?」

セイラ 「なにあれ…すっごくでかいよ…」

ユシル 「もしかして…飛空艇!?」

マリア 「どうみても、戦艦よね…」

デルタ 「…」

トラン 「私、行きます!」

トランちゃんは慌ててあの戦艦に向かった。

ハルカ 「あ! まってよトランちゃん!」

私は慌てて後を追う。

レイジ 「あ!たく…いくか!」

零 「…」

マリア 「はぁ…休む暇ないわね〜…」

結局バルバロイたち三人以外は全員REINCARNATIONに向かうのだった。

バルバロイ 「帰ってこれたということか…」

ユシル 「でも、ヴェルダンドまで行ったのにまたレギルに逆戻りか…」

セイラ 「ミリアさんたち大丈夫かな?」

バルバロイ 「きっと大丈夫だ…」

ユミリアさんやマーズさんもいる。
しかし、問題はヴェルダンドにいる筈のルミナ、ティナ、ヴィオラか。
大丈夫と思いたいところだな…。

ユシル 「…でも、エレルさんの麓ってこんな感じだったか…?」

バルバロイ 「? …言われてみれば」

言われてみればたしかに少し懐かしい感じのする…。
…なぜ?

シェイド 「バルバロイ!? どうしてここに!?」

バルバロイ 「シェイドさん!?」

ユシル 「だれ?」

セイラ 「バルバロイさんの知り合いみたいだけど…」

バルバロイ 「あなたこそなぜここに!? カオスサイドに行ったのでは!?」

シェイド 「? 何を言っている…私たちはゼルネーヴへラグナロクとこのディアボロスを取りに行ったのだろう」
シェイド 「バルバロイこそ、ディラールヘ行ったのではなかったのか?」

バルバロイ 「ディラール…?」

何かがおかしい。
話が合わない。
俺がディラールへ行きシェイドさんがゼルネーヴへ?

バルバロイ (!? まさか!?)

俺はとんでもない事実に気付く。
間違いない…この『時代』は…!

シェイド 「悠君たちはどうしたんだ? ディアボロスは空間転移が行われたと言っていたがバルバロイだけなのか?」
シェイド 「それにその二人は?」

バルバロイ 「あ、実は俺だけ飛ばされてしまってな、この二人はちょっとした知り合いだ」

シェイド 「知り合い…名前は?」
ユシル 「えと、ユシルです…」

セイラ 「セイラです」

バルバロイ 「あっ!」

シェイド 「!? なんだと…?」

明らかにシェイドさんの顔が険しくなる。
当然か…なにせこの二人の名前は…。

シェイド 「どういうことだバルバロイ? 一体何があったんだ?」

バルバロイ 「すまない、大丈夫だから気にしないでくれ」

シェイド 「気にしないわけにもいくまい…怪しすぎるぞバルバロイ」

バルバロイ 「…とにかく今日は遅い、メルビスに戻ろう…」

シェイド 「…。ああ…」

シェイドさんはいまいち腑に落ちないといった顔をしている。
まずいな…さすがに。

バルバロイ 「シェイドさんは先に戻っていてくれ、俺はこの二人を送らなければならない」

シェイド 「…わかった、後できてくれバルバロイ」

バルバロイ 「ええ、すいません」

シェイドさんはそのまま町のほうに戻ってしまう。
ああ、なんということだ…まさか『過去』にきてしまうなんて…。

ユシル 「あの…一体どうしたんですか、バルバロイさん?」

セイラ 「妙にうろたえちゃっていますけど…?」

バルバロイ 「お前ら…あまり驚くなよ」
バルバロイ 「俺たちは過去に来てしまった」

セイラ 「ええっ!?」

ユシル 「過去…?」

バルバロイ 「ああ、しかも…第2次邪神戦争時だ…!」



…………。



トラン 「マザー…」

マザー 「ああ…トランさん、まさかもう一度会えるなんて…」

トラン 「マザー! 私も嬉しい! もう一度…会えるなんて…!」

私は涙が溢れていた。
もう会えないと想っていたマザーともう一度会えるなんて。
でも、もうREINCARNATIONは廃棄されたのにどうして…?

トラン 「どうして、マザーが? マザーはあの時…」

私はあの時の事…Pandoraとの決戦の時のことを思い出していた。

マザー 「わかりません…気がついたらここにいました、永かった…」
マザー 「ずっと、ずっとここでじっと待っていました、でもやっと会えました…」

トラン 「また、マザーと一緒にいられるなんて…」
トラン 「今度こそマザーとは死ぬまで一緒だよ?」

マザー 「ありがとうございます…トランさん…」

私は涙を拭う。
何が起きたのかは知らない。
でも、マザーはここで笑ってくれた。
それが凄く嬉しかった。
もう一度マザーと一緒にいられるなんて。
もう、二度と離れたくないよ…。



マリア 「…まさにEOTの塊ね…」

レイジ 「EOT…?」

零 「エクストラ・オーバー・テクノロジーの略か…」

マリア 「そう、きっとカルタが見たら大喜びだわ!」

デルタ 「…保存状態はいいみたいですね…」

ハルカ 「…ここがブリッジね」

メビウス 「こんな大きな船が飛ぶなんて驚きです〜…」

ハルカ 「たしかにね…まるで漫画だわ」

私はしみじみそう思う。
トランちゃんはコンピュータルームへ行ってしまった。
私たちはブリッジにいた。
軍艦のせいかちょっと無骨な感じはする。
でも、けっこう居住空間よさそうね。

マリア 「さて、次は格納庫に行ってみるかしら」

ハルカ 「…こういうところはマリアさんについていった方がいいか」

私もマリアさんの後を追う。
随分大きな戦艦ね。


………。



マリア 「ふーむ」

ハルカ 「…」

マリアさんは格納庫に置いてあった二機の機体をみて唸っていた。
私は2つの人型の機体を見る。
一体は10数メートル、やたらに重武装で物凄く重そうな機体だった。
もうひとつは30メートル並み、ホエルオーに比べたら小さいけどそれでもかなり大きな機体のようだった。
こっちは別に重装型というわけではないようだ。
太いは太いが、ただ気になるのは一振りの剣。

ハルカ 「なにあれ…でかすぎでしょ?」

マリア 「…まさに斬艦刀ね」

読んで字の如く…。
たしかにアレなら真っ二つでしょうね…。

マリア 「装甲、バーニア、出力、ほぼパーペキね」
マリア 「でも、これ、サスが相当弱いわね…作り直さなきゃ人が乗れる機体じゃないわ」
マリア 「もしくはAI操作か、遠隔操作にするべきね」

マリアさんは触ってもいないのに機体解析をする。
見ただけでわかる物なのかしら?

マリア 「ん〜、慣れたらハルカちゃんでもわかるわよ」

ハルカ 「……」

いつのまにか口に出していたのかしら?

あゆ 「ねぇ、こっちのはどうなのマリアさん!」

あゆは小さい方の機体を指す。
鈍重そうな機体よね…。

マリア 「ん〜、一言で言うなら突貫機体ね」

あゆ 「うぐぅ?」
ハルカ 「突…貫?」

マリア 「説明してあげなさい、デルタ少佐」

マリア 「わかりましたマリア中尉…」

零 (マリアの方が階級下だったのか…)

デルタ 「えと、あの機体は万能型凡用人型機動兵器のようでバーニアの場所から考えて宇宙戦も想定されているようです」
デルタ 「ですが、サイズから見ても出力もそれほど高くないようですし、かなり動きは鈍重になると思います」
デルタ 「さらに、ジェネレーターもあまりよくないはずでありながら明らかに重量過多寸前の武装数、この機体もサスペンションは弱いようですし」
デルタ 「恐らく軍部や企業ではなく個人が作った機体だと思われるスペックの機体です」
デルタ 「しかし、資金がなかったか時間がなかったかはわかりませんが明らかに不完全な機体です、おそらく相当負担の大きい機体です」
デルタ 「個人で作ったと考えればたいした機体ですが、これでは長期戦は不可能な上、限界反応の低さからエースパイロットでも回避は無理と思われます」
デルタ 「せめて、もう一回り装甲が厚ければそれでも良かったかもしれませんが、多分そうなると重量過多で動けないんでしょう」
デルタ 「だから、だましだましで完成させた突貫機体というわけです」
あゆ 「うぐぅ…わかりにくい」

シャドウ 「ようするに戦闘向きの機体じゃないということだ」

レイジ 「ガラクタ寸前か…」

デルタ 「アルトアイゼン?」

あゆ 「うぐぅ…アルト…なに?」

メビウス 「アルトアイゼン…?」

ハルカ 「アイゼン…ドイツ語? でも、ちょっと私にもドイツ語は…」

マリア 「鉄クズっていう意味」

あゆ 「うぐぅ…それはちょっと可哀相だよ〜」

デルタ 「……」

トラン 「みなさん、こっちに居たんですか…」

突然、トランちゃんが現れる。
探していたのかしら?

マリア 「ああ、トランちゃんごめんね、いろいろ回らせてもらっていたわ」

トラン 「いえ、構いません…それより少し話があるんですが」

マリア 「? 一体何?」

トラン 「これからの行動、このREINCARNATIONで行わないでしょうか?」

トランちゃんはそう提案する。
なるほどこのREINCARNATIONっていう戦艦を移動拠点として行動をするってことね。
たしかに、そっちの方が色々とやりやすいか。

マリア 「私は別に構わないと思うけどみんなは?」

レイジ 「俺は皆に任せる」

あゆ 「僕は賛成だよ♪」

零 「……」(コクリ)

メビウス 「はい、それでいいと思います」

デルタ 「マリアさんの意見に沿います…」

シャドウ 「別に構わないだろう…」

満場一致、まぁそれでもいいけどね。

マリア 「ハルカちゃんは?」

ハルカ 「私も別にいいと思いますけど、でも空間転移する時はどうするんですか?」

トラン 「きっと大丈夫だと思います…」

ハルカ 「根拠は?」

トラン 「勘です…」

ハルカ 「…オーケー、だったらそれでもいいわ」

まぁ、この艦ごと空間転移することも考えられるしいいか。


シャドウ 「? あの三人が来たようだ…」

ハルカ 「あの三人?」

マリア 「ああ、ユシル君たちか」

トラン 「収容します…」



…………。



バルバロイ 「…と、いうわけでしばらく一緒に行動させてくれ」

マリア 「オーケーよね? トラン艦長?」

トラン 「おっけーです…」

バルバロイさんたちが話したことは彼らにとっては衝撃的だったようだ。
この世界は以前ここに来た時の時代より過去らしく、この頃からバルバロイさんは生きており、迂闊に動けない状態らしかった。
過去と未来か…。
しかし、まぁ、零君やあゆとマリアさんにデルタは同じ世界だけど時代が違うしねぇ…。
しかし、邪神戦争と言う戦争中らしい…。
ちなみにトランちゃんは元々この艦の艦長らしくとりあえず艦長と言うことでこの部隊で一番えらいことになっている。
これから私たちの部隊名が必要ね。
とりあえずREINCARNATION隊ってとこね。

シャドウ 「しかし、これからどうするんだ?」

ハルカ 「う〜ん、私はマグマ団をなんとかしたいんだけどね…」

メビウス 「はやく人間界に帰らないといけませんね」

零 「俺はゴルギアスを…」

あゆ 「佐祐理さんを助けないといけないよ〜」

この部隊は様々な思惑が重なって動いている。
でも、くしくも何も出来ない状態が続いている。 そして今回も…。
この世界で何をしろと?

トラン 「では、とりあえず、この世界の手助けをしましょうか?」

マリア 「手助けって?」

バルバロイ 「まさか、邪神と戦う気か?」

トラン 「駄目でしょうか?」

バルバロイ 「うかつにそんなことをすれば歴史が変わってしまう」
バルバロイ 「邪神戦争に加担するのはいいが、この戦艦ごとはまずい」

トラン 「では、そう言う方針で」

マリア 「まぁ、いいか…じゃ、明日にでもそのメルビスの町に何人か行ってもらいましょうか」
マリア 「ん〜、メンバーはバルバロイ君をリーダーにハルカちゃん、零君、レイジ、デルタに行ってもらいましょうか」
マリア 「お願いできるかしら?」

バルバロイ 「…わかりました」

ハルカ 「ん〜、いつの間にやら大所帯になったわよね〜」

零 「…」

レイジ 「まぁ、旅は道連れってことだな」

デルタ 「世は情けですか」
マリア 「じゃ、明日にあわせて今日はもう暗いしゆっくり休みましょう」
トラン 「ではその前にマザーの所に…」

ハルカ 「ん? なんで?」

マリア 「この戦艦はマザーっていうコンピュータが統制している戦艦なの」
マリア 「だから、クルー登録を行っておかない折角たくさんある部屋にも入れないわけ」

あゆ 「あ、そうなんだ!」

レイジ 「めんどくさいな〜…」

ユシル 「見れば見るほど凄い船だな」

セイラ 「しかも飛ぶんでしょ? これ…」

トラン 「行きます…」

…こうして私たちはREINCARNATIONで行動をすることになるのだった。
これから、私たちはどうなるのか…。
そして、たしかに世界は私たちを巻き込みながらも動いていることを感じていた…。


第19話 『もうひとつの過去…』


『幻想界 レギル大陸 メルビスの町』


ハルカ 「ふ〜ん、ここがねぇ」

バルバロイ 「……」

私たちは明くる日の朝、メルビスの町に来ていた。
バルバロイさんは顔が暗い。
やはり、この時代にも自分がいるためだろうか?
それとも会いたくない人でもいるのかしら?

レイジ 「どこか…アクアレイクにも似ているな…」

零 「……」

デルタ 「……」

ハルカ (それにしても…なんて無口なパーティ…)

私はつくづくそう思った。
零とデルタさんはもともと無口、バルバロイさんにしてもそんなにしゃべることは無い。
レイジさんにしたって自分からしゃべることはあまりない。
静かでいいけどね…。

バルバロイ 「すまないが…俺だけ場をはずして構わないだろうか?」

ハルカ 「え? でもそれじゃ案内人が…」

バルバロイ 「いや、じつは今日は…」

零 「行ったほうがいい…」

突然零が声を出す。
ああ、そうか…この町に過去のバルバロイさんが来るのね…。

レイジ 「たしかに鉢合わせになったらまずいからな…」

ハルカ 「でも、それなら一緒に行った方がいいんじゃないの?」

バルバロイ 「いや、できるならこの町自体を離れたいのだが…」

ハルカ 「…それじゃ何のために着たのか…」

デルタ 「誰か来る…」

レイジ 「ん?」

デルタさんが声を出すと一斉にある方角を見る。
すると、そこにはこちらを目指す集団があった。
ちなみに私たち病院の前に居た。
このままじゃ鉢合わせなのでとりあえず隠れることにする。


悠 「どうやら、一番乗りかな?」

バル 「一番近いところなんだから当然だ」

シャイン 「うむ」

ハルカ (うわ、バルバロイさんだ…今と全然変わらないじゃん…)

なんとこっちに来たのはバルバロイさんたちだった。
驚くべきことにバルバロイさんったら今も昔もまるで姿が変わらない。
そういう種族ということで納得していいんだろうか?
なんとなく自分が悲しくなる…。

バルバロイ 「悠…か、懐かしい顔だ…」

ハルカ (でも、見た目は同じでもバルバロイさんにとってこの時代は10年以上も前なのよね…)

バルバロイさんは感慨深い顔をしていた。
余程懐かしいのだろう。
できるのなら今すぐ顔を出したいに違いない…でも、それはできない。
自分は、今目の前で悠と言う少年と話しているのだから…。



…………。
………。
……。



トラン 「どうですか、マリアさん…」

マリア 「ん〜…私じゃ解析は無理ね…クレスかカルタがいれば別だったろうけど」

トラン 「そうですか…」

マリア 「まぁ、どこにもエラーはないんでしょう? だったら今は大丈夫よ、今は、ね」

トラン 「……」

シャドウ 「……」

俺はREINCARNATIONのブリッジにいた。
今はマリアがこの船の点検を行っている。
だが、さして成果はないようだ。

シャドウ (過去の幻想界か…)

幻想界にはいろいろと曰くが多い…。
なにせドグラティスが存在する世界だ。
あの伝説人物…聖魔・悠。
いや、ユウ・プルートの生きていた世界。
最強と呼ばれる伝説の人物、俺とはまた違う伝説だな…。

シャドウ (ふ、本気でやりあったら俺とどっちが強いんだろうな…)

あゆ 「あ! シャドウさん笑ったー!」

トラン 「?」

マリア 「え?」

シャドウ 「あゆ?」

突然、あゆが騒ぎ出す。
というよりもいつの間にここに?
あゆは俺を見ると嬉しそうに駆け寄ってきた。

あゆ 「笑ったよね? シャドウさん笑ったよね?」

シャドウ 「……」

俺は何も言わない。
あまりいい笑いではないからな…。

マリア 「一体どうしたのあゆちゃん? 外にいたんじゃないの?」

あゆ「あ、うん…でもなんだか変なの…」

トラン 「変…?」

あゆ 「うん…なんていうか、雰囲気が…」

シャドウ 「……」

俺は外の風景を見る。
外はまるで平和な陽気だった。
特におかしな感じはない。

メビウス 「…なにかでも感じますね…」

トラン 「待ってください…これは?」

マリア 「どうしたのトランちゃん?」

トラン 「重力震? この反応…まさか!?」

シャドウ 「!?」

ゴゴゴゴゴゴゴ!

突然空気が震える。
何かが跳躍してくる!?

ヒュン!!
あゆ 「う、うぐぅ…な、何がおこったの?」

マリア 「ちょ、空を見て…」

トラン 「!!」

シャドウ 「なに!?」



零 「!? おい! エレル山の方が!」

ハルカ 「ちょ、何アレ!? 艦隊!?」

私たちはREINCARNATIONが湾曲フィールドで隠れているエレル山の方角を見る。
見ると空中を埋め尽くすほどの大艦隊が存在していた。

レイジ 「な、なんだよアレ…空が青くない…だと?」

そうでしょうね、あんな大艦隊が突然現れるなんて…。

ハルカ 「一体、何が起こったの!?」



トラン 「Pandora…」

マリア 「Pandora?」

シャドウ 「……」

あゆ 「ど、どうなっちゃうの?」

マリア 「あんまりいい雰囲気じゃないわね…」

トラン (可能性としては考えていた…過去と未来が重なるのなら…過去から来訪者が来てもおかしくない)
トラン (それが…あの『Pandora』でも…)

マリア 「ゲームオーバー…かしら?」

トラン 「わかりません…」

シャドウ (まるで動きはない…どうやら遠隔操作か…ここでは操作が効かないらしいな)
シャドウ (とりあえず命拾いか…しかし、同時に悪夢との出会いなのかもしれないな…)

少なくともあのトランの顔を見たらそう思ってしまう。

マリア 「どうしようかしら? この世界に人たち間違いなくパニックになるわよ?」

トラン 「なんとか湾曲フィールドでごまかしましょう…」

シャドウ (それで大丈夫なのか?)

少なくとも大艦隊が空に浮かんでいる。
その内落ちるかもしれないがしばらくは浮遊したままだろう。
と、なると…。

マリア 「とりあえずこっちからハックかけて無理やり発動よ!」

トラン 「はい…」

シャドウ (…こういうことはマリアたちに任せた方がいいな…)

少なくとも俺に出番はないようだ。
問題なく無防備なPandoraの大艦隊を掌握してしまう。




作者後書き



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