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ポケットモンスター 水の街外伝



序章第1話 『そこから物語は始まる…』




カランカラン。
来客を知らせる鐘の音。

ヤ 「いらっしゃ〜い…?」

一拍ずれたそんな声。
声の主は『ヤ』というヤドラン種の宿主。
140センチほどの男性としては小柄な人、ヤドラン種としても小さい。
服は青いロープのような服を着ている。
髪の毛もまるで手入れされておらずしかも長い。
その髪は肩どころか足…今ヤさんは椅子に座っているが地面スレスレのところまで髪が伸びていた。
あまりに細い目、小さな口。
ヤさんはひとつどころかふたつみっつと人とずれた人だ。
性格は極めて温厚、いつも笑ったような顔をして怒ることはない。

? 「部屋空いてる? しばらく泊まりたいんだけど?」

さて、その来客を知らせる鐘を鳴らせた主はカウンターに座っているヤさんの前に来てそう言った。
その主は女性でヤさんと同じようにロープを着込んでいた。
ただしその女性のロープは白、純白の白だった。
顔はすらっと美しく、つぶらな黒い瞳は優しく光っている。
一見すれば見惚れてしまいそうな青白いロングヘアー。
このシャワーズ種の女性は泊まる宿屋を探していたのだ。

ヤ 「空き部屋は〜、空いて〜、いるよ〜」

ヤさんはとてもゆっくりとのんびりした口調でそう言う。
そうここは宿屋なのだ。
『呑気屋』という宿屋でこの宿主のヤさんが経営する宿屋だ。
一階は食堂になっておりここの料理人、ヌオー種のガジが毎日料理を作っている。
そして2階、そこが宿屋の部屋となっている。
部屋数は20ほど、全て木造でそれほど広くもなくただ寝る場所があるだけと言った感じだ。

? 「そう、じゃあ具体的に何泊するかは決めていないんだけどよろしくね」

ヤ 「何泊〜、泊まる〜?」

? 「え…? だからさっき何泊するかは…」

シルク 「その人にそういうこと言っても無意味だよ」

女性がヤさんの言葉に意味不明といった顔をしたとき後ろから女の子に声をかけられる。
女の子の名は『シルク』、シルクはウェイトレスの格好をして、手にはトレイが持たれていた。
シルクはこの呑気屋で働く14歳の少女だ。
現在は呑気屋でウェイトレスをしているが将来はコックになろうと思っている。

シルク 「何泊かは未定なのね、ま、とりあえず鍵を渡しとかないとね」

シルクはそう言うとヤさんの前まで行き鍵を要求した。
ヤさんはやはりのんびりと鍵を取り出しそれをシルクに渡す。

シルク 「一応ここに名前書いてくれる、チェックアウトの時いるから」

? 「ええ、わかったわ」

女性はそう言うとカウンターに置かれていたチェック名簿にペンですらっと名前を書いた。
その字はちょっと独特で地方の文字の書き方だった。

シルク 「えと、セウラさんね」

? 「違うわ、セーラよ」

シルクがその文字を読んで口にすると女性はセーラと名乗った。

シルク 「え? あ、ごめんなさい、セーラさんね」

シルクははっとして謝り訂正をする。
対してその女性、セーラは特に気にしていないといった感じで鍵を受け取った。

シルク 「それにしてもこの街に何しに来たの? 観光?」

シルクはこの街に来た理由をセーラに聞くと、セーラは何も言わず首を振る。
そして。

セーラ 「人探しよ」

シルク 「人探し?」

セーラ 「ええ、この街は首都の次に大きいから見つかるかと思ってきたんだけどね」

シルク 「ふーん、で、どんな人を探しているの?」

セーラ 「名前はわからないんだけどエーフィ、ブラッキー、ブースター、サンダースの女性、そしてイーブイの男を捜しているの」

シルク 「…随分多いのね」

シルクはさすがにそれに驚いている。
確かに多い、しかしその時シルクはあることに気付く。

シルク 「イーブイの進化系ばかり…」

セーラ 「ええ、さっき言ったのは全部私の生き別れの姉弟達なの」

セーラはその時とても悲しい瞳をしていた。
その目を見てしまったシルクとしてはもう放っては置けない。
早速当てのありそうなところを言うのだった。

シルク 「だったら、占い師の『シース』か情報屋の『ララ』ね」

シルクは早速二人の人物の名前を挙げる。
まず、『シース』、パールル種の男でこの町で自由気ままに生きる自由人だ。
彼はあらゆる占いに精通しており彼の占いの的中率はほぼ100パーセント。
具体的にはっきりと答えが出ないのが何だが確実に未来を見通せる。

続いて『ララ』、パルシェン種の女だ。
この街の南部で妹のミミと共に二人で暮らす情報屋だ。
性格に難があるが大抵の情報はこの女から引き出せる。
ただし、情報屋なので金がかかってしまうのは言うまでもない。

セーラ 「…その二人はどこにいるの?」

セーラは早速聞いてくる。
どうやらセーラの思いは藁(わら)にも縋(すが)り付きたいほどのようだ

シルク 「シースでよければ今すぐ呼ぶわよ」

セーラ 「ここにいるの?」

シルク 「いや、そう言うわけじゃないんだけどね」
シルク 「シース! いないの!?」

シルクは大きな声でどこともなくそう言う。
セーラもその様子にはいささか不思議そうにした。

シース 「呼んだかい?」

セーラ 「!? いつの間に!?」

突然シースはセーラの後ろから現れる。
セーラもそれには面食らいいささか驚いた顔をした。

シース 「おや? 見ない顔だね、僕の名はシース以後お見知りおきを」

シースと名乗る男はまだ少年だった。
歳は若干13歳。
まだ若き天才だ。
身長はさすがに低くまだ140センチ程度しかない。
頭にはとても大きな帽子を被り服は青のラインのはいったスーツだった。

セーラ 「セ、セーラよ」

セーラも胸を抑えながら自分の名を名乗る。
神出鬼没とはこのことシースはよべば必ずといっていいほど現れる。
どういう行動を取っているのかわからないがさっきのようにだ。

シルク 「相変わらず唐突よね…あんたって」
シルク 「ま、いいわこの人の願いちょっと聞いてあげて、じゃ、任せたわよ」

シルクはそう言うとさっさと厨房へと去っていった。
シルクはトレイを持ちっぱなしだったからそれを片付けに行ったのだ。

シース 「…ふ、願い事ね…」

セーラ 「…探している人がいるんだけど…わかるかしら?」

シース 「やってみないとわからないさ…」

シースはそう言うと服の袂からカードを取り出す。
どうやらタロットカードのようだ。
シースはそれを店のそこら中にある机の上に置いて占いを始めた。

シース 「もし、家族を探しているんなら何もしないことだ」

シースはカードを2枚めくった時点でそう言った。
そして3枚目を引くと結論が出る。

シース 「この街に留まるんだ…それが一番の近道…」

セーラ 「それって待っていたら現れるってこと?」

セーラは考える仕草をしてそう言う。
シースはそれには何も答えない。

シース 「信じる信じないは自由…、ま、好きにしたらいいさ…」

シースはそう言うとさっさとその場を去ってしまった。

セーラ 「…」

セーラは店の外を見つめてある決心をした。
この町に留まる決心だ。
セーラはこの街に留まる決心をすると店の二階に上がった。

セーラ 「…部屋で寝とくからよろしくね…宿長さん」



それはアウルとレイジが出会う4年も前の話…。
まだ、街にレイジは着ていない…そんな時代。
これからこの街で伝説にもならないけど確かに語り継がれる話が続く…。
これはまだ始まり…これからあなたはこの街の一員としてこの街の人々を見守って欲しい。
まだ物語は始まったばかり…。










To be continued















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