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ポケットモンスター 水の街外伝



第1話 『リブルレイクの物知りじいさん』




…さて、序章第1話であんなやり取りがあった後セーラは早速街の探索をしていたのだった…。
あらすじが解らない人は序章第1話を読んで!




セーラ 「さってと…とりあえずこの街を知っておかないといけないわよね…」

私は呑気屋という宿屋で部屋を借りるとその借りた部屋で身支度をしていた。
この街はかなり大きいらしいから一日で把握はできないだろうけどとりあえず周囲だけでも知っておきましょう。



………


まず宿屋を出るとT字路のTの交差部分にそこがあることが分かる。
周りには2階、3階建の建物が多く広く捉えることができない。
今の私にわかることは今いる辺りが西寄りの東部地域だということ。
右へ行ったら坂道を登るようで、左に行けば下って中央部に行くようだ。
なにやらとんでもなく大きな建物が中央部には見えた、町長宅かしら?

ちなみに私はそのどちらでもなくT字路の2画目、つまり港のある南部からこの場所まできたのだ。
基本的にこの辺りは高い所にあるらしく上りになるのは必死だ。

セーラ 「まずは中央部に行くべきかしら?」

私はそう思うと坂を下って中央部へと向かった。
中央部に向かうにはとても大きな本通り、『中央通り』があり、そこを通ることで南部、北部、西部、東部と渡ることができる。
道が中央部で十字路となって東西南北に別れるというわけね。



……………



セーラ 「………」

私は中央部に入るとあるとんでもない物が目に入った。
それは単なる家なのだが…何やらとても大きかった。
てか、でかすぎでしょ…?

ちなみにどれ位大きいかというと6階立てくらいかしら…?

セーラ (あんなに大きくする必要あるの!?)

たぶんまだ、2キロくらい離れているけど相当大きい…一体何の施設なんだろう…。
本当に町長宅…?

見た所はそれっぽいのだが学校とかの可能性もあるかも…。
ちなみに中央部には木造の住宅が多くその巨大な建物も木造のようだった。
西部や南部には潮風から守るため石造りの家が多い。
広大な土地ならではの土地柄の変化ね。

セーラ 「さて…と、まぁ、なんにせよ町長に会っておかないとね」

この街に住むんだったらそのあとは市役所に言って住民票を貰う必要がある。
私はまず町長に顔を見せることにした。

ドン!

セーラ 「きゃっ!?」

? 「おっと…大丈夫でしたかな…?」

私は突然横の細道から現れた誰かにぶつかってしまう。
完璧な私の前方不注意だったわ…。

セーラ 「ごめんなさい…私ったら」

? 「いやいや…ワシも悪かった…」

よく見るとぶつかった人はどう見ても70を超えているお爺さんだった。
どうしてこんな所にお爺さんが…?

セーラ 「お爺さん大丈夫? 怪我はない?」

おじいさんは藍色のロープに身を包んでおり顔には髭を生やし髪も全て白髪になっていた。
杖も持っており年齢が高齢なのは容易に分かる。

お爺さん 「大丈夫じゃよ、お美しいの」

セーラ 「え、やだ、美しいってそんな…」

私は年甲斐もなく顔を赤めいてしまう。

お爺さん 「ほっほっほ、若いの…ワシはケネラドというしがない爺じゃ」

お爺さんは名前を名乗ると腰の辺りの埃を手で払いながらそう言った。

セーラ 「あ、私はセーラ、今日この街に来たの」

ケネラド 「セーラ、いい名前じゃな」

お爺さんは優しい笑みを浮かべてそう言った。
しかしお爺さんはすぐに何か思い出したようにしてどこかへと走り出すのだった。

ケネラド 「すまんのう…ワシは少し急がんとならん…それじゃあのお若いの」

セーラ 「ええ、おじいさんもお体には気をつけてね」

お爺さんはそれを聞くと笑いながら足早に南西区のほうに歩いていった。

セーラ 「あのお爺さん何者だったのかしら…?」

思えば結局あのお爺さんの事は名前しかわからなかった。
只者じゃない気がしたんだけど…?

私はしばらくボーっとその老人の消えた方を眺めていたがいい加減また元の歩いていた道を進んだ。


? 「ちょっと待った!」

セーラ 「え?」

しかし、突然後ろから声をかけられ止められる。
今度は何?
振り向くとそこには20代前半くらいの男が立っていた。

男 「さっきこん位の背のカメックス種の老人と話してたよな?」

男はそう言うと左手でこれ位と手を左右と動かしていた。
私の胸くらいのあたり、間違いなくさっきのお爺さん。
カメックス種かどうかは分からなかったが間違いなさそう。

セーラ 「ええ…話していたけど…?」

男 「その老人どこへ行ったか分からないか?」

男は更に言及してくる。

セーラ (一体何なのかしら?)

私は一旦その男の容姿をチェックしてみる。
まず姿はさっきも言った通り20代前半くらいの男。
身長は低く145センチ程度。
身だしなみはどうゆうわけか軽装だが甲冑を着ている。
と言っても胸当てとヘルメットを被っているだけなのだが。

セーラ (どう言う事かしら…? この街に城があるわけでなし兵士のような格好をして…)

見ると腰には剣も鞘に入れて差していた。
こんな貿易街に城などあるわけもなく兵士のような身なりの者がいるのは不自然だった。
貿易商の役人という見方もできるがそれもやはりおかしい。

男 「聞いているのか…?」

セーラ 「え? あ、ごめんなさい! 場所は分からないわ…ただ南西の方に向かったけど…」

私はそう言ってあのお爺さんが去っていった道を指した。
男はそれを見るとなにやら困った顔をしていた。
そしてなにやらぼそっと呟いたあとやはりその男も老人の去っていった方へと向かった。

男 「まったく迷惑をかけさせる…」

セーラ (…迷惑?)

私はその言葉を聞き逃さなかった。
最後にぼそっと呟いていたが何者なんだろうか?
しかし、私にわかるわけもなく私は今度こそまた道を進むのだった。



………
……




さて、私はそのあと町長の家に向かったわけだが私はその家に色々と驚かさせられるのだった…。


セーラ 「…7〜8階建て位はあるかも…」

町長の家はまさに圧巻の大きさだった。
しかし、真不思議なことに何もかもが大きかったのだ。
窓ガラスは四メール四方はあろうかという大きさ。
玄関のドアは7メートル近くの大きさだ。
単純に考えればこの家は2階建てだった。
だが、それには矛盾がある…いや、ありすぎる。

セーラ 「どう考えても不必要に大き過ぎるわ…」

どんなに大きくても普通人は2メートルそこら…もし町長が身長の高い人だったとしてもこれは大き過ぎる。
けど、インターホンの位置は家から見れば地面スレスレ、私からしたら胸元…そんな所にあった。

セーラ「…謎だわ…」

しかし、折角訪問しに来たのに玄関であっけに取られているわけにもいかない。
私は早速インターホンを押してみるのだった。
ちなみにこの屋敷(学校級の敷地の)には塀や門が有ったのだがそのサイズもビッグだったので簡単にすり抜けてしまった。
ていうか、門ではインターホンの位置が高すぎたのよね…。
マ○オ3じゃないんだから…。

? 「ちょっとお待ちくださ〜い」

中から野太い大きな声が聞こえる。
間違いなく男の声だった。町長だろうか?

?「お待たせいたしました〜」

ドアは開くとそこからは人が現れるのだった…?

セーラ 「…………」(ポカーン…)

…なんていうか、開いた口が塞がらない…。
家の中から出てきたのはなんと6メートルはあろうかという人物だった。
まさかこの家が標準サイズだったとは…。

セーラ (今まで世界中を歩き回ってきたけどこんなの初めてよ!?)

町長? 「…おや、見ない顔ですね?」

セーラ 「あ、あなたがこの街の町長ですか…?」

我ながらぎこちないと思う。
けど、これはいくらなんでもやりすぎだと思う…。
某元帥じゃないんだから…。

町長? 「いかにも私が町長の『グアリクス』です、あなたは?」

セーラ 「わ、私は今日来たばかりでセーラっていいます…」

どうもいつもの本調子が出ない。
ギクシャクしているのが自分でもよくわかる。
こうゆうのはあまり関わらない方が吉ね…てか疲れるし…。

グアリクス 「そうでしたか、では、まずこれを…」

そう言うと町長はどこから取り出したのか切手のようなものを手に乗せて差し出してくる。
ちなみに切手といったがそれは町長本人のサイズからであって私から見たら書状サイズだった。

セーラ (え…書状?)

私はふと何で書状をと思ったがとりあえず受け取ってみてみることにした。

『あなたをこの町の町民として認めます 町長、グアリクス』

ちょっと待って…いきなり過ぎないかしら…?
てか、入国許可証じゃないんだから…。

グアリクス 「あ、でも、お住まいになる場合はちゃんと住民票を役所に届けてくださいね?」

セーラ 「は、はぁ…」

私はこの時直感した。
この人は超天然のお人好しだ…。

セーラ 「あ、あの、わ、私はもう行きますね」

私は逃げるかのごとくその場を退散することにした。
この人に関わっていたらなんか疲れそうだもの…。

グアリクス 「まぁまぁ、折角来てくださったのにゆっくりしていって下さい」

しかし、逃げようとしても私はこの町長に掴まってしまうのだった。
私は町長に背中を押されて半ば無理矢理家の中に入れられるのだった。

セーラ (もう…何でこうなるの…)

そのまま私はこの馬鹿でかい屋敷に潜入する羽目になったのだ…。



セーラ (…ど〜も、遠近感が狂って目が疲れるわ…)

まず中に入るとロビーがあった。
ロビーはまるでお金持ちの家のように豪華で家の中だと言うのに石像があったり大理石の柱が立っていたりしていた。
螺旋状の階段が二階にも延びていてかなり広い。

…しかし、それだけならまだいいんだけど…やはり案の定中も大きさは縮尺が違った。
まるで童話の中の世界のようだった。

セーラ 「あの…ご家族は?」

私はこの家でふと町長のご家族のことが気になった。
どうもこの家からは人の気配がしなかったのである。
一人暮らしにしては広すぎる気がするけど…。

グアリクス 「ちゃんとおりますよ、妻は今は帰省中ですが」

セーラ 「何かあったのですか…?」

町長は奥さんの話をしたとき少し悲しい顔をしていた。
何かあったのかと心配なってしまって思わず聞いてみるのだった。

グアリクス 「ええ…妻は精神的ストレスで今は故郷で療養中なんです…」

セーラ 「そうだったんですか…」

それはお気の毒に。
でも、考えてみれば町長の妻だものね、色々人には知れぬ苦労があるのね…。
でも、そう考えると奥さんはこの街出身じゃなかったんだ…。

セーラ 「あの…ひとつお伺いしますが奥さんは一体どんな病気なんです…?」

私は医者じゃないし聞いてどうすることもできないが聞いておきたかった。
もしかしたら助けてあげることもできるかもしれないし。

グアリクス 「ええ…縮尺恐怖症なのです…」

セーラ 「はい?」

それはとても聞きなれない病名だった。
シュクシャクキョーフショー?

グアリクス 「妻はこの町が余りに小さすぎて疲れてしまったのです…」

町長は涙目でそう語ってくれた。
…それは病気と言うかノイローゼね…。

セーラ 「…もしかして、奥さんも大きいのですか…?」

本当は凄く怖い質問だったが聞いてみた。
まぁ…だいたい確信はあるんだけど…。

グアリクス 「ええ、私と同じホエルオー種ですからね」

セーラ 「………」

そっか…やっぱり大きいのね…。
大きいことは良いことというけど大きすぎるのもどうかよね…。

? 「………」(じー)

セーラ 「…?」

突然強い視線を感じる。
私は視線の方を振り向くと柱の影から私をこっそり見ている男がいた。
その人は普通の身長だった。
…といっても2メートルくらいはある。
かなりの長身ね。

セーラ 「あの…あの人は?」

私は柱の影から私を見ている男のことを町長に尋ねてみる。

グアリクス 「ああ、私の息子です」

セーラ 「え…? 息子さん?」

の割には随分小さい気が…。
いや、いくらなんでもホエルオー種皆全てがこんな大きいわけないわよね。

セーラ 「随分小さいんですね、町長」

ちょっと失礼かもしれないけど私は思わず言ってしまう。
ちょっと顔は幼いけど正装しているしあの息子さんはもう20代入っているわよね。


しかし…後に私は知らなきゃよかったと思うのだった…。



グアリクス 「ええ、三歳児ですからね」

セーラ「は…?」

私は一瞬耳を疑った。
三歳児…?

グアリクス 「最近の子は発育がよろしくて」

セーラ「………」

グアリクス 「おや? どうしましたセーラさん?」

私はもう固まるしかなかった…。
てか…無茶苦茶だ…世の中がどれほどずれているのかよく分かるわ…。

…結局その日のこと(正確には町長に会った後)のことはあまり覚えていない…。
て言うか固まりっぱなしで何も出来なかったし…。
結局、自我を取り戻したのは夜の8時くらいになった時だった。
場所は…。


セーラ 「…なんでこんな町に来ちゃったんだろ…」

場所は…宿屋だった。
気が付いたら自分が借りた部屋のベットで大の字に寝転がっていた。

(シース 「この街に留まるんだ…それが一番の近道…」)

そう、あれがあるから留まろうと思った…。
でも…正直…辛い…。
ヤさんはテンポずれて話が続かないし、シースは何か怪しいし…。
トドメはグアリクス町長…。
正直あの体格+あの性格は疲れる…。

セーラ 「やっぱり…やめようかな…」

私はこの街から出ようかと考えていた。
シースを信じないわけじゃないけど、少なくともここに居続けるのは私の精神に辛い…。

セーラ「ともかく今日は疲れたわ…寝…よ…」

私は風呂にも入っていないし晩御飯も取っていなかったけどそのまま眠りについた…。
少なくともまどろみの中のみが心のよりどころ…。
顔もわからぬ姉弟との再開を果たせる…。
…所詮は妄想の世界だけど…それにすがり付かないとやってられない…。

…もしかしたら…目覚めないことが一番の幸せなのかもしれない…。
でも、それは出来ない…。
なぜなら夢とは目覚めるものだから…。
そう…突然に…。



……………
…………
………
……




チュンチュン…。

セーラ 「………」

目覚め方は様々だけど大概はこんな感じで目を覚ましている…。
今日も夢は唐突に終わった…。
顔も…背景も何もかもが黒く塗りつぶされた世界で楽しくテーブルを囲む姉妹達…。
テーブルからは美味しい匂いのするパンがある…そこから先は覚えていない…。
何故だか記憶にない場所…でも…なぜ?

セーラ 「…? パンの匂い…?」

私はふと部屋に美味しそうな焼き立てのパンの匂いがするのに気付いた。
私は匂いのする方を向くとそこには小さな木の丸テーブルに焼きたてのフランスパンとコーヒーが置いてあるのに気が付いた。

セーラ 「朝食かしら…?」

私はベットから起き上がり少し手を伸ばしてそれを手にとった。
椅子は部屋にはないのでベットに座りながらそれをほうばるのだった。

セーラ 「…おいしい」

そのパンはとても美味しかった。
でも…何で頼んでもいないのに置いてあったんだろ…?

セーラ 「ま、いいか…」

私は特に気にせずそれを平らげた。
そして最後にコーヒーをずずっと啜り一息つく。

セーラ 「さて…今日はどうしようかしら…」

私は今日何をするかを考えていた。

セーラ「まずは職か…」

私はそう呟くとベットから立ち上がって身支度は…する必要がなかったので部屋を出た。



………
……




シルク 「あら、はやいのねおはよう」

部屋を出ると1階でテーブルを磨いているチョンチー種のシルクが私に気付き、そう言った。
シルクは私がこの街に留まるきっかけを作った女の子だ。

セーラ 「…おはよう」

私はシエラに軽く挨拶をしておく。

シルク 「朝ご飯食べてくれた?」

朝ご飯…多分さっき食べたパンだわ。

セーラ 「ええ、美味しいパンだったわ」

シルク 「そう? よかった、あれ私が作ったんだ!」

シルクは笑いながらそう言った。
そうか、あれはシルクが作ったんだ。

セーラ 「あれ? なんでシルクが?」

たしかコックはヌオーのガジって人だったはず。
シルクはウェイトレスのはずなのに…。

シルク 「私コック志望なんだ、だからここでガジさんに料理学んでいるの」

シルクは台拭きを片付けるとそう言ってまた笑った。
コック志望なんだ夢があるのね。

シルク 「開店にはまだ時間あるよ? どうするの?」

セーラ 「街の方に出てみるわ」

私は二階から階段で1階に降りてそう言う。

シルク 「ふーん、ま、今度は晩御飯までには帰ってきてね」

セーラ 「そうね、時間には気をつけるわ」

私は微笑みながらそう言って店を出た。
見せの前のカウンターにはヤさんはいなかったけどどこか行ったのかしら。



…………



セーラ 「もう一度中央区の方に行ってみるかしら…」

とりあえず今回の目的は職探し。
いつまでもあの宿屋には居られないしお金も無くなっていくからね。

私はそう思うと昨日歩いた道と同じ道を歩いていった。



…………
………
……




ワイワイガヤガヤ!


セーラ 「…はぁ」

私は職業案内所にきていた。
いわゆるハローワークというやつね。
そこは大変人で溢れ返っていた。
人ごみは苦手ではないけれど少し多すぎる…。
そんな感じがした。

役員 「セーラさん、来て下さい」

セーラ 「あ、はい」

やっと私の番ね。
順番がくるまで40分はかかったわ。
私はさっさと役員のいるカウンターに向かった。


………


役員 「次の方お願いします」

セーラ 「…」

…役員との話は僅か10分程度で終わった。
とりあえず資料を渡されたがはっきり言って仕事に就くのは難しいと言われた。
仕事はあるのだが、競争率が激しいのだ。
実を言うとこの街はまだ発展途上にあるらしく仕事は多く来るというのにそれ以上に人が多いそうだ。
一日にこの街に来る人間の数は大体2000人から3000人。
今や首都にも追い着きそうなほど人口は増えているそうだ。
要するに絶望…か。
私はそうと分かればさっさとここから出る。

セーラ 「まいったわね…職なしか…」

? 「ほっほ、仕事探しかい?」

セーラ 「え?」

突然声をかけられる。
振り向くとそこには昨日会ったお爺さんがいた。

ケネラド 「ほっほ、お久し振りじゃの」

セーラ 「お爺さん!」

そう、ケネラドお爺さんだった。

ケネラド 「ほっほ、お日柄がよろしいようで」
ケネラド 「こんなじじぃとでよろしければですがそこでどうですか?」

お爺さんはそう言うとすぐ近くのベンチを指した。

セーラ 「………」


…………


ケネラド 「成る程…ご姉弟をですか」

セーラ 「ええ…」

私たちはベンチに座り話をしていた。
私はその時何故この街に来たのかと言う質問を受け姉弟を探しにと答えた。

ケネラド 「ならば、何もしないことも重要ですぞ」

セーラ 「え…?」

ケネラド 「探せば見つかる物もありますが待たなければ見つからない物もあるのですよ」

セーラ 「……」

お爺さんは色々と話してくれた。
それは身近なことや体験談だったがまるで人生を語っているようだった。
このお爺さんの話は私に人生を教えてくれているようだった。



………………
…………
………



ケネラド 「おや…もう、こんな時間ですな」

セーラ 「え? あ…」

気が付くと空は既に黄金色になっていた。
もう夕方だ。

ケネラド 「そろそろ帰りますわい…」

セーラ 「ええ…」

もう少し話を聞いておきたい気もしたけど私は素直に見送ることにした。

? 「じいさん! こんな時間にどこにいるかと思えば!」

お爺さんが立ち上がると突然ある男が私たちの前に来た。
知っている男だ、確か昨日、お爺さんを探していた人。
その人はなにやらかんかんに怒っていた。

ケネラド 「おお、すまんのうザックや」

ザック 「まったくじいさんもちったあ歳を考えてくれよ!」

セーラ 「あの…あなたは?」

私はザックと呼ばれる男に少々ぶっきらぼうだがそう尋ねてみた。

ザック 「あんたは昨日の…まぁいいか」
ザック 「俺はザック、カメール種だ。この街で自警団をやっている」

セーラ 「自警団…」

そうか…だから昨日剣を持っていたりしたのか…。
思えばこの街もかなり大きいんだから自警団があるのは当たり前か…。

ザック 「あんたこそ一体何者なんだ? ここらじゃ見かけない顔だが?」

今度は逆に私が聞かれてしまう。

セーラ 「セーラ、シャワーズ種よ、昨日この街に来たの」

ザック 「ふーん、ま、俺から言えるのはあんまりじいさんをたぶらかさないでくれよ」

セーラ 「たぶらかすなんてそんな…」

ケネラド 「こりゃ、それは失礼じゃぞ」

ザック 「冗談だよ…そら、じいさんもさっさと帰った!」

ケネラド 「仕方ないのう…孫の頼みじゃしさっさと帰るかの…」

セーラ 「お孫さん…」

そうか、ザックさんはお孫さんなんだ。
見た目は既に20はいってそう。
それだけお爺さんがお歳ってことかしら。

ケネラド 「それじゃあお嬢さんまたお会いすることがあれば…」

セーラ 「ええ…さようなら」

お爺さんはそう言うとにっこり笑いゆっくり歩いていった。

セーラ 「…私も帰ろうかしら」

私はさっさと宿の方に戻ることにした。
いつまでもこんな所にいるわけにはいかないしシルクとの約束もあるからね。
私はそう思うと少し早歩きで宿屋に戻るのだった。


…………



シルク 「はい、お待ちどっ!」

セーラ 「ありがとう」

私は宿屋に帰ると少し早いかとも思いながら夕食に軽い物を頼んだのだった。
今度はガジさんの作った料理だ。

シルク 「ふーん、何かいいことがあったのね」

セーラ 「え?」

シルクは突然そんなことを言い出す。

シルク 「顔に描いているわよ、もしかしてコレ?」

シルクは笑みを浮かべながら小指を立ててそう言った。
私は微笑みながら。

セーラ 「ふ…そんなんじゃないわよ…」

でも…いいことがあったっていうのはあながち間違いじゃないかもね。

セーラ 「まだ…この街にいる意味はありそうね…」

ふとした出会いが私をこの町に留まらせる。
この街を好きになることもできるかもね…。

私はただ、出された夕食のメニューを食べるのだった。










To be continued















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