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ポケットモンスター 水の街外伝



序章第3話 『銀色の翼よ』




遥か昔、深い深い海の底に白く光る翼持つ者あり。
白き翼、大海の強き流れにも負けぬ体持ち、大波をも打ち破る力あり。
白き翼、この世の混沌せし時現れ、その乱れ鎮める。
白き翼、一度舞えば、大風起こり、飛沫舞う…。
白き翼、名をば『ルギア』と云う…。



ケネラド 「…という、ポケモンがおったとさ」


ここはアクアレイク南西にあるリブルレイクという泉のほとりにある、物知りじいさんカメックスのケネラドの小さな家だ。
ここではいつもケネラドじいさんは子供達に昔話やおとぎ話を聞かせていた。

? 「すげーすげー!」

そして、このおとぎ話のような話を聞いていたのはワニノコ種の『バッツ』。
あまり手入れのされていないくせ毛が絡まった濃い青の髪をして、服は紺色のティーシャツと藍色の裾がボロボロになったジーンズ。
身だしなみを気にしないのもあるだろうが、気にできるほど豊かでもなさそうだった。
年齢は10歳にも満たなさそうな少年だった。

バッツは目を輝かせてその話を聞いていた。
そしてその隣には割と大人しそうな少年ゼニガメ種のスバルがいた。
スバルはわずか4歳でこのリブルレイクの家でケネラドじいさんと一緒に暮らしていた。

バッツ 「ルギアかぁ〜…かっこいいんだろうな〜見てみたいなぁ〜」

バッツは目を輝かせて天井を見た。
バッツ自身が見ているのは天井ではなく、心の中を飛ぶルギアの姿であろう。
バッツはケネラドじいさんの数ある話の中でもこのルギアの話が最も好きだった。

ケネラド 「ほっほ、本当にお主はルギアが好きじゃの〜」

バッツ 「うん! 俺、一度でいいからルギアに会ってみたいんだ!」

バッツは大きく頷いてそう言った。
その顔は屈託のない純真の子供の顔だった。

ケネラド 「ほっほ、ならば知っとるかの? ルギアがこのアクアレイク近くの海に眠っていることを…」

バッツ 「マジ!? ルギアが!?」

ケネラド 「ほっほ、言い伝えによってはここより更に南の海にはルギアの眠る海溝があるそうじゃ」

バッツ 「へぇぇぇぇ…!」

バッツは今まで以上に目を輝かせてケネラドじいさんの話を聞いていた。
その話はアクアレイクに伝わる、シルビィの眠り場所だった。

ケネラド 「んが、実際にルギアを見た者はいない…言い伝えは言い伝えなのかもしれないな…」

バッツ 「うう〜! それでも行って、ルギアを見てみたい!」

ケネラド 「じゃから、ルギアは誰も確認しとらんといっとるじゃろう」

ケネラドは半分まるで話を聞いていないバッツに呆れながら言った。

ケネラド 「まぁ、そう言うわけじゃ、もうお帰りや、バッツ」

バッツ 「うう〜、もうちょっと話聞きたいな〜…」

バッツは不満そうな顔をしていた。
どうやら、まだ帰りたくはないようだった。
しかし、もう時間は夕刻、そろそろバッツは帰らないといけない時間だった。

ケネラド 「だめじゃぞ? ミュルナ殿が心配するじゃろ?」

それを聞くとバッツはうう〜と唸りながら困ってしまう。
しかし、やはり聞きたいものは聞きたいらしく、駄々をこねてしまうのだった。

ケネラド 「ふむ〜…困ったの…」

スバル 「………」

スバルは何を考えているのかわからない、実に無感情な表情だった。
もしかしたら何も考えていないだけなのかもしれない。

ザック 「おい…じいさん?」

ケネラド 「おお、ザックかよく来たの…丁度良いわい」

バッツが駄々をこねてケネラドじいさんが困っていると突然カメール種のザックが入ってくる。
ザックはケネラドの孫で自警団と呼ばれる組織に属している。
そんなザックは毎日この夕刻頃、ケネラドじいさんの様子をうかがうためパトロールついでにこの家に寄っているのだ。

バッツ 「あ、ザック兄ちゃん…」

ザック 「バッツか…駄目だろ? もう教会に帰っておけ」

バッツ 「うう〜…でも、もっとルギアの話聞きたい!」

バッツはやはり駄々をこねてしまう。
余程気になるようだった。

ザック 「今度はルギアの話していたのかよ…」

ケネラド 「ふむ、バッツがの…」

ザック 「まぁ、それはそうとバッツも帰れ」

バッツ 「うう〜…うう〜!」

もはやザックにも手をつけられない様子のバッツにこの場の者(スバル除く)はほとほと困ってしまう。
しかし、ザックはしばらくしてあることを思いついたようで話し出す。

ザック 「そういや…今日、銀色の羽根が見つかったらしいな…」

バッツ 「え!?」

ケネラド 「銀色の羽根…もしやルギアの!?」

ザック 「ああ、たしか今はライトさんとこの美術館の方に保管していたはずだったな…」

ライト…それは町の中央部にあるライト美術館というところの館長をやっているランターン種の男のことだった。

ザック 「まぁ、それはそうとバッツは早く帰…て、おい!?」

ズダダダダダダダダッ!!

スバル 「………あ」

ケネラド 「あ〜…」

ザック 「おいバッツ! 美術館は今日閉まってるぞ!!」

しかし、バッツはそんなこと聞かずに一直線に美術館に向かうのだった。
そう、今回はそんな少年…バッツの話…。
バッツは何も目に入らぬまま美術館を一直線に目指すのだった。











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