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ポケットモンスター 水の街外伝



第8話 『海』




『9月最終日:午後9時13分、何でも屋クリアブルー』


エルフィス 「う…?」

私は目を覚ます。
ここはどこ?
私は…。

少女 「目覚めましたか?」

エルフィス 「!? あなたは!?」

私は目の前に現れた少女に驚く。

ルミネ 「あ、エルさん目覚めたよ、おねえちゃん」

エルフィス 「ルミネちゃん…?」

よく見るとここはクリアブルーだった。
そう、誰かが運んでくれたのね。

そして、部屋の奥にルミネちゃんがいた。
ルミネちゃんはアメタマ種の女の子で東区にマリルリ種のマーサさんと一緒住んでいる。
ルミネちゃんは両親はおらず、親戚であるマーサさんに引き取られて今はこの街の高校に通う15歳。

マーサ 「大丈夫ですか、エルフィスさん?」

そこへマーサさんも現れる。
マーサさんはさっきも言ったとおりマリルリ種の女性。
年齢は22歳、ルミネちゃんの通う高校で化学の教師をやっている。
どうやら、私はマーサさんに運ばれたのだろう…。

エルフィス 「ありがとうございます…」

ルミネ 「エルさん、墓で倒れているって若菜さんが大騒ぎしていたから…」

マーサ 「一体何があったんですか?」

エルフィス 「なんでもないわ…大丈夫よ、ありがとう」

少女 「あの…本当に大丈夫ですか?」

そこへ少女が声を出す。
どうも本当に心配そうな顔だった。

エルフィス 「あなたは…?」

少女 「カイっていいます」

少女はカイと名乗る。
見た目はどうみてもカイオーガ。
しかし、ガーヴ様にあまりに似ているとはいえ目覚めているわけが無い。
私はこの少女がどうも気になった。
いままでこんな女の子は見たことが無い。
いくら目が悪くてもここまでガーヴ様に似ている人を間違えるかしら?

ルミネ 「エルさん?」

エルフィス 「え? ルミネちゃん?」

ルミネ 「…エルさん、大丈夫そうだよ、おねえちゃん?」

マーサ 「目覚めたのならもう大丈夫かしら」

エルフィス 「ええ、ありがとう」

ルミネ 「じゃ、もう行くね」

マーサ 「本当に大変なのはこれからでしょうけど…頑張ってくださいね」

エルフィス 「ええ…」

マーサさんたちはそう言って家を出る。
どうやら私はリビングのソファーで横になっていたようだった。

カイ 「あの…」

エルフィス 「カイさん、いつからこの街に…?」

カイ 「え、あ…よくわからないんです…」

私はどうも気になって聞いてみた。
すると、カイさんはよくわからないと言う。

カイ 「気がついたらこの街にいたんです…」

エルフィス 「気がついたら? それじゃあそれまでは?」

カイ 「それも…何もかもよくわからないんです」
カイ 「どこから来たとか、どこに住んでいたとかよくわからないんです…」
カイ 「こういうのって記憶喪失なんでしょうか?」

エルフィス 「…さぁ? どうなのかしら?」

どうも、この少女からは記憶喪失の類は感じない。
どちらかと初めから『それは』持っていないといった感じだった。
だけど、彼女は確実に記憶を持っている、感情を持っている。
まるで、急にこの世界に存在したみたい…。

エルフィス 「でも、どうして献花を?」

カイ 「よくわからないけど、しないといけないかなって…」
カイ 「でも、本当によくわからないけど、したら何か良いことしたかなとか…そういう思いもあったのかも」

エルフィス 「そ、そう…」

どうも、ふとガーヴ様と思って見たらものすごいギャップを感じてしまった。
なまじ似ているだけに、口調や仕草が…。

カイ 「あの…」

エルフィス 「あ、ご、ごめんなさい!」

失礼なことを考えてしまったわ!

エルフィス 「でも、それだとカイさんはどこか宛があるの?」

カイ 「宛て? 宛てというと?」

エルフィス 「泊まる場所…なんにもないんでしょ?」

カイ 「…それは、ありません…」

カイさんは明らかに暗い顔でそう言う。

エルフィス 「だったら、よかったらですけどここで一泊してみては?」

カイ 「…いいんですか?」

カイさんは上目遣いにそう言う。
私は極めて笑顔で。

エルフィス 「ええ、もちろん」

私がそう言うとカイさんは顔を明るくして。

カイ 「ありがとうございます、えと、エルフィスさん」

エルフィス 「ええ」



…それは奇妙な出逢いだった。
夫が死に、色々と様々なモノが自分を置いていくように過ぎ去った数日…。
突如現れた、少女カイ。
それはまさに奇妙だった。
でも、この奇妙な出逢いこそが後に繋がる未来への物語だということを後の私は知る…。



…………



『次の日』


エルフィス 「…ふぅ」

カイ 「エルフィスさん…それは?」

エルフィス 「伝票よ、今整理中なの」

私は机で伝票の整理をしていた。
この後仕事もあるし、この仕事をひとりでこなすのは大変だった。
でも、あの人と頑張って今までやってきた仕事だもの、やめるわけにはいかないわ。

ポーン! ポーン!

エルフィス 「え!? もうそんな時間!?」

突然柱時計が鳴り出す。
見ると、もう13時になっている。
急いで午後の仕事に入らないと!

カイ 「ど、どうしたのエルフィスさん?」

エルフィス 「これから仕事なの! ご、ごめんなさい、急いで用意しないと!」

私はそう言って荷物を整え始める。
急いで出ないと!

エルフィス 「ごめんなさい! お留守番お願いしますね!」

私はそう言って荷物を持って急いで家を出る。
前が見えにくい…家の中は大体覚えているけど、外にでると急に見え方が変わる。
走ったら人にぶつかっちゃう。
でも、急がないと!



…………



『同日:某時刻:呑気屋』


エルフィス 「ご、ごめんなさい! 遅れました!」

シルク 「あ! エルフィスさん! いいんですよ、それより大丈夫ですか!?」

エルフィス 「ええ、大丈夫よ、それで荷物は?」

シルク 「店の裏にあります…て、これ本来クリアさんがやっていた仕事ですよ!? 大丈夫ですか!?」

シルクちゃんはそう言って心配してくれる。
それはとても嬉しいけれど、もともとこの店は忙しいから毎年夫が請け負っていた。
ちなみに仕事というのは調理機材の搬入。
もうすぐ明日収穫祭があるため毎年呑気屋は出張店を出している。
しかし、昼はや夜は忙しく、運ぶ暇が無いため毎年ウチの店が運んでいるのだった。
とりあえず、運ぶ先は町長宅別館。
お祭りの時期になると様々な店が別館に出張店を出す。
呑気屋もその一店だった。
町長宅へは下り道だからちょっと大変だけど、御仕事だから頑張らないわけにはいかない。

シルク 「本当にごめんね! もっと人手があればいいんだけど!」

エルフィス 「いいのよ、任せて、毎年ウチが請け負っていたんだから」

私は小さくガッツポーズを取る。
そして、一旦店の外に出るのだった。

エルフィス 「えと、これね…」

外に出て、裏側に回ると、色々な機材があった。
屋台用のコンロやLPガスといった類、机もある。
一度で全部はあの人でも無理、と言うことはひとつずつ運ぶしかないわね。

エルフィス 「これが台車ね」

私は近くに台車があることを確認すると乗せれるものから乗せていく。
ちょっと大変だけど、頑張らないと!

エルフィス 「よいしょ…」

私は台車を押す。
少し重い。
でも、そんなに気になることではない。
むしろ問題なのは視力だった。
台車分離れた所が自分の手前になるから、余計距離感が取れない。
それでも、なんとかしないと…。
なまじこの見えても目の悪い自分の目がつらい。

カイ 「あの…左…」

エルフィス 「え?」

カイ 「ちょっと、あぶないです…」

エルフィス 「カ、カイさん!? どうしてここに!?」

カイ 「…ひとりじゃ大変そうです…手伝います」

エルフィス 「そんな…悪いわ…ろくに雇えるお金も無いのに…」

カイ 「あの…昨日寝泊りさせてもらいましたから…お礼」

エルフィス 「でも、それじゃあ…」

カイ 「食事も…いただきました、朝ごはんと昼…」

エルフィス 「…わかりました、それではお願いいたします…」

結局、私が折れる。
しょうがないわね…。
ひとりじゃロクにできないのは確かだし…。
改めてあの人に頼り切っていたことがいなくなってからよくわかる。

カイ 「これ…あのおっきな家に持っていくんですよね?」

カイさんはそう言って中央区にあるグアリクス町長の屋敷を指す。

エルフィス 「そうよ、ちょっと遠いけどよろしくね」

カイ 「うん…よろしくお願いいします…」

私は改めてカイさんに頼んで台車を押す。
カイさんには私の目になってもらう。
正直前が見え難い。
ここで、カイさんがいてくれると非常に助かる。



……………………



エルフィス 「…ふぅ、これで最後よ」

カイ 「大丈夫ですか、エルフィスさん?」

私たちは何とか夕方までに機材を町長屋敷の別館に運んだ。
最後の荷物を運び終えるとカイさんは大丈夫かと顔を近づける。

エルフィス 「大丈夫よ、カイさんも疲れたでしょう?」

カイ 「私は…大丈夫です…結構丈夫なのかもしれません…」

カイさんはそう言う。
確かに平気そうだ。
私はというと少し疲れた。
体力には自信あったのだけれど、やっぱり見えないと言うことは想像以上に体力を削るわ…。

グアリクス 「おや、ご苦労様です、エルフィスさん」

エルフィス 「あら、グアリクス町長ですか」

見上げると、グアリクス町長がいた。
当然よね、別館とはいえここはグアリクス町長の家なのだから。

グアリクス 「クリアさんの件は本当にご冥福をお祈りします…」

エルフィス 「ええ…ありがとうございます」

あの人は本当に偉大だった。
ここまで街中の人から慕われていたのだから…。
あの人のためにも、私も頑張らないと!

ミルン 「それじゃ、明日はお祭りがあるの?」

小夜 「ええ、毎年行われる収穫祭よ」

カイ 「…?」

エルフィス 「この声は…」

グアリクス 「ミルンさんと小夜さんですね」

段々近づいてくる声が聞こえた。
ミルンちゃんと小夜さんだ。
恐らくこの別館に近づいてきているのだろう。

ミルン 「あれ? 町長? …ってエルフィスさん?」

エルフィス 「こんにちは、ミルンちゃん」

小夜 「ご苦労様です、エルフィスさん」

エルフィス 「ええ」

カイ 「…? この人たちは?」

カイさんは当然知らないのでたずねてくる。

エルフィス 「小夜さんとミルンちゃんよ」

小夜 「私は小夜…」
ミルン 「ああああああああーーーーーーーー!!!!?」

カイ 「きゃ!? な、なに…?」

エルフィス 「み、ミルンちゃん?」

突然、ミルンちゃんは物凄い声で驚く。
一体どうしたと?

ミルン 「が、が、、ががが、ガーヴ!?!!?」

カイ 「? ???」

小夜 「ガーヴ…海の神の?」

グアリクス 「ガーヴ様がどうしたのですか?」

エルフィス 「……」

意外だった。
普通の者は会えるはずもないのに姿を知っているなんて…。
ミルンちゃん…何者?

ミルン 「な、何言っているの! そ、そこにいるのガーヴじゃないの!!?」

カイ 「私…?」

当然、ミルンちゃんはカイさんをさす。
最初は私もガーヴ様と思って卒倒したっけ…。

カイ 「よく…わからないんだけど…まず、ガーヴって誰?」

ミルン 「あなたに決まっているじゃないーー!!」

小夜 「ちょっと待って、ガーヴ様って海底で眠っているんでしょ?」

グアリクス 「そうですねぇ〜、伝説ではそうなっています、というよりもエルフィスさんは会ったことがあるはずでは…?」

エルフィス 「え、ええ…」

そう、会ったことがある。
かつて、私は夫であるクリアと共にガーヴ様に会った。
カイさんは似てはいるが違う…。
まず、あの方はもっと年上だ。
そりゃ、小さくしたらこんな可愛い娘になるかもしれないけれど…。

ミルン 「でも…その目下の赤いライン…」
ミルン 「手にはわけのわからない紋章…」
ミルン 「腰には大きな尾びれもある…」
ミルン 「間違いなくカイオーガを示しているよ!?」

エルフィス 「種族は同じかもしれない…でも…」
エルフィス 「間違いなく、別人です…」

小夜 「同じかもしれないって…この世に二匹も?」

グアリクス 「しかし、間違いなく別人と…」

カイ 「? ?? ?????」

カイさんは困り果てている。
実は私も困っている。
違うと思うのだけれど…実は全く根拠も何もない。
でも、ガーヴ様は実際『眠る』と言った。
この耳で聞いたから間違いない。
それに眠って若返ることなんてありえない…石○面じゃないんだから…。

ミルン 「うぅ…本物でも大いに困るものがあるけれど…根拠は?」

しまった…そこをつかれたら返答困る。

エルフィス 「女の…勘?」

て、さすがにそれはまずい…!
こういう場合どうすればいいのかしら?

エルフィス 「えと、彼女は親戚なんです」
エルフィス 「だから、よく知っているんです!」

カイ 「え? そうだったんですか?」

ミルン 「……」
小夜 「……」

グアリクス 「…どうなんでしょうか?」

エルフィス 「……」

まさか、カイさんに突っ込まれるなんて…。
やり過ごせない…。
困ったわ…。
あまり、話を大きくしたくないのだけれど…。

? 「エヒッエヒッエヒッ!」

エルフィス 「?」

ミルン 「ふぇ、なに?」

突然奇妙な笑い声が聞こえる。
外からだ。

? 「エヒッエヒ! ここに居られましたかカイ様」

カイ 「あ、あなたは?」

突然茶色いロープを着込んだ中年の男性が入ってきた。
今、カイと言った…知っているの?

? 「おお、探しましたぞカイ様」

小夜 「あなたは?」

? 「おお、申し訳ありません、私『ジオン』と申すカイ様の従者でございます」

ミルン 「従者…?」

グアリクス 「カイさんのですか?」

ジオン 「はい、私たちはここより北方の町よりこの街へ参りましたのですが、不幸な事故でカイ様は記憶を失われました」
ジオン 「そして、昨日、この街で突然姿を消しました、私必死で探しましたが結局見つからず、今に至るわけです、はい」

ミルン 「…それって本当?」

ジオン 「エヒッ! はい、もちろんでございます」
ジオン 「なんなら証拠もお見せしましょうか?」

グアリクス 「いえ、結構です、成る程旅行できていたのですか」

小夜 「記憶喪失…ね…」

エルフィス 「……」

本当にそうなのかしら?
カイさんは記憶喪失…?
でも、あの時はそんな感じは…。

エルフィス 「あの…」

ジオン 「エルフィス殿、どうやら御世話になったようで、このジオン感謝の念が尽きません、エヒッ!」

エルフィス 「え?」

今、私の名前を?
どうして、名乗っていなのに…。

エルフィス 「ジオンさん…!」

ジオン 『護者様…後でお話が…』

エルフィス 「!?」

私がジオンさんに近づくと、ジオンさんは小さな声で後で話があると言った。
いや、それ以前に今、護者と…!

カイ 「私は、記憶喪失なの?」

ジオン 「はい、さぁ、行きましょう」

カイ 「は、はい…」

カイさんはジオンさんに引き連れられて外に出る。

エルフィス 「あの、私ももう行きますね」

小夜 「ええ」

グアリクス 「ごきげんよう」

私は町長たちに別れの挨拶を済ませると急いでジオンさんを追う。


ジオン 「エヒッ! 来ましたねエルフィス殿」

エルフィス 「色々お話があります」

ジオン 「ええ、わかっていますとも、カイ様申し訳ありませんが少し席をはずさせてもらいます、少し待っていてくださいね」

カイ 「はい…」

カイさんは小さく頷く。

ジオン 「では、こちらへ」

ジオンさんはそう言って私を誘導する。
私はジオンさんに連れられて、別館の裏に来た。

エルフィス 「まず、あなたは何者なんですか?」

ジオン 「私、ジオンと申します、まぁ、さっき紹介しましたがね、エヒッ!」
ジオン 「私、ガーヴ様の従者でございます」

エルフィス 「ガーヴ様の!?」

ジオン 「エヒッ! その通りでございます」

ジオンさんはそうだと言う。
ということは!

エルフィス 「では、カイさんは!」

ジオン 「ええ、しかし、カイ様はガーヴ様であってガーヴ様ではありません」

エルフィス 「? それはどういうことですか?」

ジオン 「ええ、カイ様は簡単にいうとガーヴ様の『意識体』です」

エルフィス 「意識体?」

ジオン 「はい、カイ様はガーヴ様が永い眠りについている間偶然出現したガーヴ様の意識そのものなんです」
ジオン 「正確に深層心理そのものですかね?」
ジオン 「ガーヴ様はいわば今は夢を見ている状態です」
ジオン 「ガーヴ様にとっては今は永い眠りの中の夢なのですよ、エヒッ!」

エルフィス 「夢…ガーヴ様の…でも、なぜ?」

疑問がある。
何故、夢を見るのか?
何故、意識体として現世に現れるのか?

ジオン 「ええ、どうもガーヴ様はあなた様に惹かれたようですねぇ」
ジオン 「この土地に何か思いもあるようです、記憶が何もないのは恐らく生きるためには不必要だからでしょう」

エルフィス 「私に…?」

ジオン 「ええ、あなたは特殊な力も持っていますし」

…まさか、クリアが死んだことに関係があるのかしら?
このところ、第三の黙示録の影響か、様々なことが起こっている。
これもそのひとつと?

ジオン 「しかし、まぁ、所詮は夢ですからガーヴ様が目覚めれば意識体は消滅しますがね」
ジオン 「なぜ、このような夢を見るのか…? それはわかりかねますが、ただ、いまここにガーヴ様はカイ様として生きておられます」
ジオン 「そこで、カイ様はあなたに預けたいと思います」

エルフィス 「! 私に?」

ジオン 「ええ、そのためにカイ様は現れたのでしょうし、お願いします」

エルフィス 「え、ええ…」

ジオン 「ケヒッ! それでは、戻りましょうか」

そう言って私たちはカイさんのところに戻る。
戻ってみるとカイさんは一人で大人しく待っていてくれた。
物凄く素直な子…。

ジオン 「ケヒッケヒッ、お待たせいたしました」

カイ 「あ、ジオンさん…エルフィスさん…」

ジオン 「ええ、急で申し訳ありませんのですが、しばらくはエルフィスさんにお世話になってください」

カイ 「え?」

ジオン 「実は忙しい事情が出来まして、カイ様にはしばらくこの街にいてもらわないと困るのですよ」
ジオン 「そこで、エルフィス殿にご相談して、しばらく引き取ってもらうことになりました」

エルフィス 「よろしくね、カイさん」

カイ 「は、はい…」

カイさんは良くわからないようなわかったような顔で頷く。

ジオン 「ケヒッ! それではカイ様はよろしくお願いいたします」

エルフィス 「はい…」

ジオンさんはそう言うと足早に去ってしまった。
また…面倒なことが起こったと言うのは確からしい…。

カイ 「えと…つまり、もう少しこの街に、エルフィスさんと一緒にいてもいいですよね?」

エルフィス 「ええ、そうよ」

カイさんは子供のような顔でそう言う。
その顔はどこか嬉しそうだ。
いえ、きっと嬉しいのでしょう。
なんとなく、その顔を見ると私まで嬉しくなってしまう。
相手は記憶がないとはいえガーヴ様本人だけど、一人の女の子に変わりはないのよね。

エルフィス 「ふふ、よろしくね、カイさん」

カイ 「う、うん…」

カイさんは照れたような顔をする。
今日、私は新しい家族を迎えた。
それはいつかは別れないといけない家族だけど、今はとっても大切な家族。
これは、未来へと繋がるかこの物語。
物語は始まったばかりなのかもしれない…未来の私はこの出会いを皮肉と、涙と、希望の瞳で見る…。









To be continued















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