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ポケットモンスター 水の街外伝



第12話 『The existence which is each other interwoven with』





『1月3日 午前12時 町長宅』


グラン 「遺跡か…アクアレイクにの…」

グアリクス 「アクアレイク3000年の歴史の中で地下にあのような広大な遺跡があるとは存じませんでした」

グラン 「世界中の文献、歴史書、情報、語り部…なにもない、誰も知らなかったわけか」

グアリクス 「調査の結果ではどうにも遺跡の広さはこの半島全体…すなわちアクアレイク全体に渡ってあるようです」

グラン 「現状確認された中ではその大きさは地底遺跡の次か…」

グアリクス 「はい、ただ、階層分けはなされていないようで階段のような物は見つかりませんでした」

グラン 「例の『建造物』は?」

グアリクス 「現在も調査中です」
グアリクス 「形状は全く異なりますが、『サクラ』と同質の存在かと…」

グラン 「…あるいは『見えざる手』か…」

グアリクス 「はい…結論など出るはずなど無いですが、恐らくあれは『筐体』と思われます…」

グラン 「…あれは以後『ゲート』と称する」

グアリクス 「ゲート、門ですか?」

グラン 「お誂(あつら)え向きじゃろ? なんせ3人も運んできたんじゃから…」

グアリクス 「例の『訪問者』ですか…?」

グラン 「…局所事象の中心点に存在する街アクアレイク…」
グラン 「やはり、この街は『永遠都市』なのか…」

グアリクス 「誰も信じない…そして誰も知らない不確定事象変換領域…ですか」

グラン 「この街の真相…五賢者クラスでも知らんじゃろうな…知っておるのは神か…『人間』か?」

グアリクス 「……」



…………。



『同日 某時刻 アクアレイク自警団署 仮眠室』


キサラ 「どうだ? 例の3人は起きたか?」

ん? なんだ…?
誰か話しているな…?

ザック 「ひとりだけ目覚めました、今は屋上にいますよ」

ふたり…両方とも男…ないしは♂か。
ポケモンか…人間か?

? 「…ここはどこだ?」

俺は目を覚ますと状況を半分理解できなかった。

? 「あれ? なんで俺ベットに寝ているんだ…?」

んん? なんか目線が違うような…それに感覚がおかしい気が…。

? 「一体何が…」

俺はそう言って近くにあった鏡をみてしまった。
そして、その瞬間…。

? 「ぎゃあああああっ!!?」

思わず悲鳴をあげてしまう。
それもそのはずそれは俺の顔じゃなかった。
それはまるで人間の顔だった。
な、なんでじゃー!!?

バタン!

キサラ 「な、なんだ!?」

ザック 「どうしたんだ!?」

突然、ふたりの男が入ってくる。
に、人間…?
にしては…随分特徴的なアクセサリーだな…。
40くらいはいってそうな男は左腕が巨大なハサミでもう一方の20代くらいの男は背中に甲羅を背負っていた。

少年 「んだよ…うるせぇな…もうちょっと寝かせろよ…」

? 「へ…?」

突然、俺のベットのとなりでウザそうな顔で目覚めるひとりの少年がいた。
12歳くらいの少年で、短く切った緑色の髪に、背中には水色の薄羽が…。

少年 「ん? あれ?ここどこだ? 『アーク』じゃねぇな…?」

? 「お、お前は…?」

俺は不可思議な少年を見る。
少年は俺に気付くと…。

少年 「ん!? お、お前まさか…ユウキんとこのラグラージ…?」
少年 「てか、ここはまさか!?」

少年は何やら慌てだす。
コイツ誰だ?
俺はたしかにラグラージだ。
トレーナーはユウキ、間違いない。

キサラ 「お、お前ら…」

ラグラージ 「あ?」

少年 「おい! ラグ! ちょっとこっちこい!」

少年は飛び上がるといきなり俺の腕を引っ張る。

ラグラージ 「ちょ、ちょっとまて!」

ザック 「あ! お前ら!」

少年 「悪いな兄ちゃんたち! 話は後でしてやるからしばらくほっといてくれ!」

ラグラージ 「てか、お前は何者だーっ!?」

俺は少年に引っ張られるまま屋上に行くのだった。



…………。



女性 「あら? 目覚めたんですね、セレビィさん」

セレビィ 「なんでお前もいるんだよ…フェルフェ」

フェルフェ 「ふふ、それはこちらが聞きたいところです」

屋上に行くと9本の金色の尻尾と耳を持った和服の女性がいた。
フェルフェ…というらしい。
キュウコン種か…?

そして、少年はセレビィと言った。
…どういうことだ?

ラグラージ 「おい…なにがなんなのか一から説明しろ!」

俺は少年にくってかかる。
正直わけがわからん!

セレビィ 「…まずはここは『箱庭』、そしてこの世界には人の姿をしたポケモン達が文明を築いている」

フェルフェ 「そのようですね」

セレビィ 「俺は空虚界と呼んでいるがな」

ラグラージ 「全く別世界なのか?」

セレビィ 「ああ、俺やお前らが居たのが幻獣界…どうやってきたのかは謎だがな」

ラグラージ 「理解不能…だな…」

セレビィ 「だろうなぁ〜、俺だって信じられない」
セレビィ 「本来、空虚界はとても強力なプロテクトが張られている」
セレビィ 「それゆえ外界からの進入を許さず、外界へ行くことも許されない」
セレビィ 「一体どうやって…俺たちが来ちまったのか…」

少年…セレビィはそう言って頭を振る。
どうやら、困った展開のようだな。
おいおい…どうすりゃいいんだよ?

フェルフェ 「とりあえず、まずは場に慣れませんとね」

セレビィ 「マイペースだな…まぁいいや、おいラグ!」

ラグラージ 「呼び捨てかよ…なんだよ?」

セレビィ 「この世界でお前や俺の名前は不便だ」
セレビィ 「とりあえず俺はオリジンと名乗るからお前はラグな?」

ラグラージ 「なんで勝手に決められないといけないんだ! 大体どうしてだ?」

セレビィ 「面倒だから理由は言わない、ただ、特に俺の名前は気をつけろ! いいか!? オリジンだぞ!?」

ラグラージ 「わ、わかったよ…」

フェルフェ 「一体どこからそのような名前が?」

セレビィ 「まぁ、偽名だ、最もこの偽名を知ってるのはエメルだけだけどな…」

フェルフェ 「まぁ」

ラグラージ (全然わからん)

俺にはちんぷんかんぷんだ。
とくにこの二人、何やら旧知の仲のようだが俺だけがのけ者になって置いてけぼりをくらっている。
エメルって誰だよ…。

ラグラージ 「はぁ、かったる…」

俺はユウキのようにダレながら空を見上げた。
今頃本来ならアクア団を追っていることだろう。
新しい新ポケも入って更に頑張らないといけないって時にこれか…。
ユウキは大丈夫だろうか…いや、心配する方が無粋だな…あいつには。
むしろ、サーナイトたちか…。

セレビィ 「おーい、ラグ、じゃ降りようぜ?」

ラグラージ 「ん? ああ、わかったよセレ…じゃなくてオリジン」

フェルフェ 「ふふ、これはこれで困ったことになりましたね」



…………。



ザック 「名前は?」

セレビィ 「オリジン」

ザック 「種族は?」

セレビィ 「それは言えない」

ザック 「どこから来た?」

セレビィ 「言う必要はない」

ザック 「答える気はないのか?」

セレビィ 「ない!」

ザック 「でぇい! 取調べに答えられないとはどういうことだ!?」

セレビィ 「うっせ〜な〜…、別に知る必要なんてねぇだろうが」

現在、セレビィは取調べを受けていた。
俺とフェルフェも受けていたのだがそれはすんなりと終わった。
だが、当のセレビィはかれこれ30分近く尋問を受けていた。
しかし、答える気まるでなし。
まるで○ービー弟のごとくだ…。

ラグラージ 「はぁ、早くおわんねぇのか?」

フェルフェ 「無理でしょうね…」

もうすでにこっちは諦めムード。
なんせ、身分証明が出来ないんだから。
せめて種族だけでも明かせばいいだろうに…。
て、それが出来ないからあいつは難儀しているのか?

キサラ 「失礼だが、これは君のだろうか?」

ラグラージ 「ん?」

突然、片腕だけハサミの男に話しかけられる。
たしか、キサラ…だったな。

ラグラージ 「あ…その剣は」

キサラさんはユウキが拾った折れた剣を持ってきた。
思い起こせばこれが原因で俺ってばこの世界に来たのか?

ラグラージ 「まぁ、元の持ち主は違うけど一応俺が預かり人だから俺のだな」

なんともわかりにくい説明だがようするに俺のだ。
もっとも俺にとってはゴミでしかないのだが。
おもえば、なんでユウキはさっさとこれを捨てなかったんだろうか?
気になるといえば気になるな…。

ラグラージ 「サンキュー、おっちゃん」

キサラ 「お、おっちゃん…」

ラグラージ 「?」

なんだか、少し気が萎んだ気がした。
もしかして気にした?
しかし、どうみても四五十代に見えるしな…。

セレビィ 「たく…あの亀野郎、やっと解放しやがった!」

ラグラージ 「うおっ!?」

フェルフェ 「あら、思ったより早かったですね」

セレビィ 「ああ、さっさとこんな務所離れようぜ」

ラグラージ 「ああ…」

俺は折れた剣を受け取るとそのままこの自警団署を出るのだった。



…………。



ラグラージ 「で、結局のところどうするんだ?」

セレビィ 「そうだな〜、まず次元転移が出来ない状態だしな…」

フェルフェ 「しばらくはこの街に滞在しないといけませんね」

俺たちは外に出ると3人で話し合っていた。

ラグラージ 「とりあえず、腹減った、あと寒い、どっか店いこう」

セレビィ 「だらしねぇな、しかし腹が減っては戦もできん、どっか行くか?」

フェルフェ 「あの店にでも行きますか」

ラグラージ 「なんか食えるならこの際なんでもいいや」

俺たちは手ごろな店を見つけるとそのまま中に入るのだった。
看板には呑気屋と書いてあったな。



ヤ 「いらっしゃ〜い…」

ラグラージ 「三名だけど、空いてる?」

ヤ 「あそこ〜…空いてる〜…」

セレビィ 「随分、テンポの遅い奴だな〜」

フェルフェ 「窓際の席ですね…」

俺たちは空いてる席を見つけるとそこに向かう。

若菜 「あ〜もう! なんで今日はシルクちゃんこないの!?」

ラグラージ 「……」

セレビィ 「あの店員荒れてるな…」

フェルフェ 「バイトの子が来なかったのでしょうか?」

ラグラージ 「かったる…」

店を進むとさっそく愚痴をおもいっきりこぼす店員を見つける俺たち。
店には2〜30席あるがほぼ満員、だがウェイトレスは1名だけ。
どうなってんだこの店は!?

セレビィ 「ほら、とりあえず座って待とうぜ」

ラグラージ 「そうだな」

とりあえず席に座って注文をとりに来るのを待つことにする。

若菜 「お、お待たせいたしました! 注文は何でしょうか!?」

ラグラージ「とりあえず、落ち着いて…」

セレビィ 「心まで切羽詰ったらおしまいだぜ〜?」

若菜 「す、すいません!」

ラグラージ 「で、お前は何にするセレビィ?」

バキィ!

セレビィ 「海鮮定食Aを頼む」

ラグラージ 「てめぇ…思いっきり裏拳かましやがって…」

俺は思いっきりセレビィに殴らされる。
不当だ…偽名なんか自然にやってたら忘れるつーの!

フェルフェ 「アクアスプラッシュとシーフードスパゲッティ」

ラグラージ 「シーフードだけでいいわ」

若菜 「えと、シーフードスパゲッティ2つ、海鮮定食A1つ、アクアスプラッシュ1つでよろしいですね?」

セレビィ 「おっけ〜」

若菜 「しばらくお待ちください!」

店員はそう言うと大慌てで厨房に入った。

ラグラージ 「…いつになったら来ると思う?」

フェルフェ 「さぁ?」

ラグラージ 「待ってても来そうにないよな〜」

セレビィ 「時間早める?」

ラグラージ 「できんのかよ?」

セレビィ 「うん、一応」

ラグラージ 「…真面目に待とう」

…結局ずっと素直に待つことにする。



…2時間30分後。



ラグラージ 「おい、こねぇぞ…」

フェルフェ 「もう夕方ですね…」

セレビィ 「ちょっと! いつまで待たせるんだ!?」

若菜 「え!? えと、ええっ!?」

セレビィ 「パニくってないでさっさと持ってきやがれ!」

ラグラージ (こいつ…可愛い顔して結構エグい性格してるな…)

若菜 「ご、ごめんな…きゃあ!?」

ドン!

こっちを振り向いた瞬間、店員は丁度入ってきた客とぶつかってしまう。
不慣れな店員め…。

男A 「てめぇ! どこに目ぇつけてんじゃ!」

男B 「お〜痛ぇ! 足が折れちまったぜ!」

セレビィ 「うわ、めっちゃ悪党…」

ラグラージ 「かったる…」

なんと店員も運悪くヤクザに絡まれてしまう。
なんで、こんな辺鄙な店に入ってくるかな?

男A 「どうしてくれるんだ姉ちゃん、ええ?」

若菜 「す、すみません! 本当にすみません!」

男B 「どうやって落とし前つけてくれるんだ? ああ?」

若菜 「きゃ!? 止めてください!」

男Bは店員の腕を掴む。
当然店員は嫌がる。
ちなみにこいつらふたり共リザード種の模様。
やれやれ…。

ラグラージ 「…」

ぽんぽん。

男A 「ああ〜あぐっ!?」

ドカァ!

ラグラージ 「不意打ちでごめんなさ〜い」

俺は後ろから男Aの肩を叩くと振り返ったところを問答無用に殴り倒す。
そのまま男Aはぶっ倒れるのだった。

男B 「て、てめぇ! いきなり何しやがる!?」

ラグラージ 「悪いことはいわん、今回のことは忘れてさっさと去れ」

男B 「な、なんだと!? ボス! 来てくださいボス!!」

ボス 「ああ〜ん? どうしたお前ら?」

ラグラージ 「かったる…」

セレビィ 「わ〜お、リザードンじゃん」

なんと出てきたのはリザードンだった。
俺より身長が高いな…。
おまけに筋肉の固まりだ。

男B 「こいつが突然リザードAを!」

ボス 「なんだと? 俺様にはむかうのか?」

ラグラージ 「はぁ、やれやれ…」

面倒だな…。
さっさと片付けるか。

ラグラージ 「死にたくなかったらどっか行け」

ボス 「けっ! テメェなんざ一発だぜ!」

リザードンのボスはそう言うと豪腕を震わせてくる。
俺は軽く踵(かかと)で地面を叩く。

ズドォン!

フェルフェ 「きゃっ!?」

セレビィ 「あの馬鹿! 直下型地震かよ!?」

俺の『地震』によって周りの物が一瞬浮く。
俺はその瞬間。

リザードン 「地面わ…ゲブ!?」

ドカシャッ!!!

ラグラージ 「…喧嘩にルールはないよな?」

俺は浮かび上がった机を蹴ってリザードンの顔面にぶつける。
物を使ったらいけないというルールはないはずだ。
そのままボスは気絶するのだった。

男B 「く! てめぇそこまでだ!」

ラグラージ 「威勢はいいが…って、をい」

若菜 「はわわ〜…」

セレビィ 「あ…」

男B 「この女がどうなってもいいのか!?」

ラグラージ 「きたね〜」

なんと気がついたら店員が人質に取られている。
さすがにまずいな…。

セレビィ 「…やれやれ」

フェルフェ 「あら、あなたが動くのですか?」

セレビィ 「たまには人助けもいいだろう…」

ラグラージ (セレビィ…?)

突然、セレビィは机を発つとこっちに近づいてくる。

セレビィ 「ちょっと、そこのにいちゃん?」

男B 「あん? なんだガキ?」

セレビィ 「ちょっと、それ格好悪いんじゃないかな?」

男B 「えっ!? あれ!? 後ろ!?」

ラグラージ 「なんだ!?」

若菜 「えっ!?」

なんだかよくわからないがセレビィが男Bの後ろから話しかけた次の瞬間には今度は前にいた。
動いた様子はない。
まさか瞬間移動!?

セレビィ 「あんまり、こうするのって主義じゃないんだけどさ…」

男B 「こ、今度は右!?」

セレビィ 「怒ると怖いよ? 俺…」

若菜 「あれ!?」

男B 「んなっ!? いつの間にか人質が!」

なんと気がつくと店員はセレビィの手によって解放されていた。
い、いつの間に…まるで気付かなかったぞ…。

フェルフェ (なるほど時間操作…あれが『オリジナルセレビィ』と呼ばれる者の力…)
フェルフェ (どうやら、エミュレーターのセレビィとは質も格も遥かに違うようですね…)

セレビィ 「ほら、ラグ、やっておしまい」

ラグラージ 「命令してんじゃねぇよ!」

ドバキィ!

男B 「げぼばっ!?」

俺はそうは言いつつも相手の頭部の側面をハイキックで蹴り、けり倒す。

ラグラージ 「大丈夫か?」

若菜 「あ、ありがとうございます…」

セレビィ 「めんどくせぇけどこいつらしょっぴいとくか」

本当に面倒だが、俺たちはこいつらを自警団に引き渡すことにするのだった。



…………。



ワイワイガヤガヤ!

若菜 「ごめんなさいい! 随分遅くなっちゃいましたけど…」

ラグラージ 「む、昼飯のはずがすっかり晩飯になってしまった!」

結局午後6時、店が再び賑わいを見せた頃やっと注文の品は来るのだった。

セレビィ 「あれ? スープなんて頼んだっけ?」

フェルフェ 「あら、本当ですね」

見ると俺たち3人分のスープが並べられるのだった。

ラグラージ 「これは?」

若菜 「ガジさんが、お詫びとお礼にって、メニューに載ってないからタダってことでいいから」

セレビィ 「じゃ、そういうことなら遠慮なくいただくか」

若菜 「あの、さっきは本当にありがとうございました」

ラグラージ 「気にするな、馬鹿が勝手にやっただけだ」

そうして俺たちはやってきた。
ユウキも面倒だ、係わり合いはごめんだとか言っときながら結局助けていた。
何だかんだで俺もユウキの影響を受けているのかもな…。

若菜 「あ、私若菜っていいます! よろしければお名前聞かせてもらえないでしょうか?」

ラグラージ 「ラグ、見ての通りラグラージ種」

フェルフェ 「フェルフェと申します、一応キュウコン種ということになりますわ」

セレビィ 「オリジン、種族は秘密だ」

若菜 「なんだか、不思議な方たちですね、どこから来たんですか?」

ラグラージ 「俺たちは…」

カランカラン!

若菜 「と、すいません! お客が来たみたいなんでいかせて貰います!」
若菜 「いらっしゃいませー!」

玄関の来客を知らせるベルが鳴ると若菜という店員は急いで向かうのだった。

ラグラージ 「なぁ、そう言えばさ…」

フェルフェ 「どうしたんですか? 改まって…」

ラグラージ 「お前ら、金持ってる?」

セレビィ 「あ」
フェルフェ 「あ」

ふたり共それで声をあげる。
てことはもしかして…。

セレビィ 「俺、金ないんだけど…」

フェルフェ 「私、この世界のお金は持っていません…」

ラグラージ 「…てことは全員文無しか」

フェルフェ 「……」
セレビィ 「……」

全員固まる。
やばい…やばすぎる…。
よもや金がないとは…。

ラグラージ 「どうする…?」

急に小言になる俺。

セレビィ 「食ってから考えよう…」

そういう結論至るのだった…。
なるようになれか…?



…それから1時間が経過。



ラグラージ 「…どうしようか」

セレビィ 「すっかり食い終わったしな…」

フェルフェ 「客が多いからあの店員さんもこっちに目が回っていないみたいですけど…」

あれから1時間当然の如く食べ終えた。
客は満員御礼、カウンターの所で並んでいる客までいる始末。
本当ならさっさと出て行かないといけないんだけど、金が無いので出ていけない。

セレビィ 「…しょうがない、逃げるか」

ラグラージ 「結局食い逃げ泥棒かよ…」

フェルフェ 「頼んでしまった時点で確定でしたけど…」

結局そうなるわけで、そう思うと俺たちは席を立つのだった。

若菜 「あ、ありがとうございました、会計は…」

ラグラージ 「うげ…」

セレビィ 「タイミング悪…」

最悪なことに丁度席を立ったと同時にあの店員がやってくる。
なんてこった…。
こうなったら張った押してでも…。

若菜 「タダでいいです♪ 助けてもらったお礼に私が持ちます♪」

セレビィ 「へ? いいの?」

若菜 「はい! 義理と人情の街アクアレイク、恩は返させてもらいます♪」

ラグラージ 「じゃ、じゃあ言葉に甘えよっか?」

セレビィ 「そ、そうだな、うん」

フェルフェ (なんにせよ、これで食い逃げのレッテルからは逃れましたね…)

結局俺たちは運良くも彼女、若菜を助けたことによってなんとか無事飯も食べられ店を出ることが出来るのだった。



…………。



『深夜 アクアレイク西区』


ラグラージ 「寒…で、これからどうする?」

セレビィ 「寝る場所探すか…」

フェルフェ「…?」

ラグラージ 「ん? どうしたんだフェルフェさん?」

フェルフェさんは不思議そうに空を見上げていた。
俺はそれに気付き、フェルフェさんに声をかけた。

フェルフェ 「なんでもないです…」

セレビィ 「さっさと行こうぜ、この街はこの時期相当寒いみたいだからな」

ラグラージ 「だな」

そう言い合うと俺たちは適当に眠れる場所を探すのだった。

フェルフェ (見られた感覚があった…でも、一体なんだったのかしら?)
フェルフェ (私たちはこの世界にとってイレギュラー…、それがなんらか悪い方に流れているのかしら…?)






? 「セレビィ…か」











To be continued















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