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ポケットモンスター 水の街外伝



序章第14話 『謎の忍者現る!?』





『2月2日 06:30 アクアレイク北区』


? 「こ、ここが…アクアレイクかぁ〜…」

ワイワイガヤガヤ!

寒さも増し、雪が微かに積もった2月のアクアレイク。
この街はこんな日でも多くのポケモンたちで賑わっていた。
やってくる者は種類を問わず、1年中雑多なポケモンたちで賑わう。
それを目当てに行商を行う者、それ目当てに訪れる観光客。
このアクアレイクは今日も外からやってくるポケモンたちで賑わっている。

そして、そんな中…また新たなポケモンがこの街に訪れていた。

? 「え、えと…えと…ちゅ、中央区って…この道まっすぐで…いいん…だよね?」

アクアレイク北側陸路入り口でおどおどと辺りを見渡す小柄な女の子。
女の子はやや黄色みがかった茶色の髪の毛を生やし、それをポニーテールにして腰まで垂らしていた。
黒い瞳の下の頬には左右2本1対の小さな髭が生えており、不安なのかぴょこぴょこと揺れていた。
服装は赤いジャンパーを着込み、下は紫色の装束、下は青色のジーンズだった。
腰からは先端は白く、髪の毛と同じ色をした体毛の2本の尻尾がこれまた不安そうにぴょこぴょこ揺れている。

彼女の名は『スイスイ』、ブイゼル種の女の子だった。

彼女はなんと忍者だった。
アクアレイクより北にある『アレクセラ』と呼ばれる土地にある森の中にあるとある忍組の水忍だった。
そんな彼女は森を抜け、荒野を抜け、南、南へと下りこのアクアレイクにたどり着いたのだ。
彼女はなぜこの街に来たのか?
それはこれから徐々に語られるでしょう…。

スイスイ 「う、うう…ひ、人が…人が多いよ〜…こ、こんなに…い、いっぱい…い、いるなんて…ど、どうし…よう〜…」(泣)

僕の名はスイスイ。
て、上で説明しているから必要は無いよね?
僕は今アクアレイクにいます。
て、それも知っているって?
わぁっ! ごめんなさい! 物投げないで! お願いだから投げないでーっ!

スイスイ 「う〜う〜…と、とにかく…ちゅ、中央区に〜…」

僕は中央区にある町長宅に行かないと行けなかった。
でも、森の中で育った僕は人と関わりあうのが苦手だ。
よりによってこんな人のいる街に来る羽目になるなんて〜頭領…何考えているんだろう?
僕はとにかく人にびくびくしながら南へ向かった。



…………。



ワイワイガヤガヤ!

スターミー種の男(?) 「いらっしゃい!」

マグカルゴ種の男 「さぁ、寄った寄った! 安いよ!」


スイスイ 「う、うわぁ…、こ、この通り…道の端が…店で覆われちゃってる…」

僕は南へ下っていると幅10メートルほどのとても大きな通りに出た。
そこでは左右を3階建て以上の白い建物で覆われ、その下には雑多な種族の行商が露店を開いたり、座敷を敷いて色んな物を売っていたりしていた。
これだけ大きな道にも関わらず、人の波は凄く、ぶつからないように歩くのは大変だった。

サンドパン種の男 「おおーい! そこのお嬢ちゃん!」

スイスイ 「ふ、ふぇ!? ぼ、僕ですかーっ!?」

サンドパン種の男 「そう! そこの君! コッチおいで!」

スイスイ 「え、えと…」

どうしよう…僕が呼ばれているらしい。
うう〜怖いよ〜…。
で、でも気はよさそう…でも、やっぱり怖いし…。
い、行かなかったら後が怖い気もする…うう…。

サンドパン種の男 「いらっしゃい! お嬢ちゃん! 可愛いねぇ〜!」

スイスイ 「え、えと…そ、その…」

サンドパン種の男の人は座敷を敷いて小物やアクセサリーを売っているようだった。
この主人とても人がよさそうな感じのする人だ。
とてもおおらかな笑顔をしている。

サンドパン種の男 「よかったらこのアクセサリーどうだい? 似合うと思うよ?」

スイスイ 「はうぅ…せ、折角ですけど…その…お、お金…ないですから…そのぉ…はうぅ…」(泣)

そう、僕は一文無しなのだ。
お金が無くても生きていくのは何とかなるけどこんな露店の物を買う余裕なんて全く無い。
気の毒だけど買えないよ〜。

サンドパン種の男 「そういわずにさ〜、今ならここの通貨で200円で売るよ?」

スイスイ 「い、いえ…本当にその…文無し…なん…です…」

サンドパン種の男 「う〜ん…だったら半値で…」

この主人もしつこい…。
僕もほとほと困っていたその時だった。

コータス種の男 「ど、泥棒だーっ!」

スイスイ 「ふ、ふえ? ふえふえ!?」

サンドパン種の男 「泥棒!?」

突然、そういう叫びが聞こえる。
ど、どうしよう…ど、泥棒さんが出たの?

ゴルダック種の男 「どけぇいどけぇい!」

ゴルダック種の人だ、バッグを抱えて人の山を掻き分ける。
その先にあったのは用水路だった。
どうやら、泥棒さんは用水路を逃走経路にする気らしい。

バシャアン!

ゴルダック種の男は勢いよく用水路に飛び込み、泳ぎだす。
早い…走るより早いよ…。

コータス 「しまった! 俺、水はだめなんだよー!」
コータス 「だ、だれか! 助けてくれー!」

コータスのおじさんは困ったように周りに懇願した。
でも、泳ぐゴルダックに追いつける人なんて早々いない。

スイスイ 「こ、こうなったらぼ、僕が…」

サンドパン種の男 「ん? ま、まさか…?」

僕はジャンパーを脱ぐと装束姿になる。

スイスイ 「ス、スイスイ、行っきまーす!!」

僕は一気に駆け出す。
人の山は壁走りで無視して一気に用水路の飛び込む。

バシャ! バシャ! バシャバシャ!

サンドパン種の男 「お、おおっ!? し、沈まない!?」

ポチエナ種の女 「なにあの娘!? 足が沈む前に次の足が…!?」

コータス 「か、加速している!?」

僕は徐々にスピードを上げる。
僕は水忍…水の中でこそ真価を発揮する!

スイスイ 「アクアジェット!!」

ゴルダック 「げっ!? な、なんだてめぇは!?」

僕は一瞬で泥棒との距離を縮める。
泳ぐのと走るのだったら走る方が早いんだから!

スイスイ 「そ、その荷物…返してくださーい!!」

ゴルダック 「く! この!」

スイスイ 「へっ!?」

泥棒は振り返ると突然、水を吐く。
て、ハイドロポンプーっ!?

スイスイ 「わ、わぁぁぁぁぁっ!?」

バッシャァーン!!

僕はハイドロポンプの直撃を受けて宙を舞う。
ぼ、僕ってばいつでも肝心なところでこうなんだよね〜…。
いつも詰めが甘い…。
第一、喧嘩は苦手だし…。

ゴルダック 「へ、へへ…! ざまぁみやがれ!」

僕が用水路で延びている隙に泥棒さんは一目散に逃げてしまう。
お、追わないと〜…で、でも…また、か、返り討ちにあうかも〜…。

ズドォン!!

ゴルダック 「げぇっ!?」

スイスイ 「ふ、ふぇっ!?」

突然体が浮く、それほどの縦揺れが起きる。
な、なに!? 何が起こったの!?

ラグラージ 「ほら、セレ…オリジン!」

セレビィ 「よっ!」

ゴルダック 「あ! てめぇ!」

セレビィ 「へへ、この荷物はいただいとくよ!」

突然、用水路の上の端から薄羽で飛ぶ緑色の少年に荷物を取られる泥棒さん。
橋の上には大柄の男と和服の女性がいた。
男はラグラージ種、女の人は…尻尾が九本あるからキュウコン種だよね?

ゴルダック 「く…くそっ!」

泥棒さんは荷物を取られて戸惑っている。
やがて周りが騒がしくなる。
なにやら警察さんも来たみたい。

ゴルダック 「お、覚えてやがれ!」

泥棒さんはなにやら捨て台詞を吐くと、一目散に逃げ出すのだった。

スイスイ 「……」(ポカーン)

あっけに取られた…。
一体…なにがどうなっているの?

セレビィ 「お嬢ちゃん、はい」

スイスイ 「え? あ…」

気がつくと薄羽の少年が僕の前にいた。
僕に荷物を差し出している。

セレビィ 「どうした? これ、お嬢ちゃんのだろ?」

スイスイ 「あ、それは…僕のじゃなくて…」

セレビィ 「なんだ違うのか?」

コータス 「おーい!」

スイスイ 「あ、あの人の…です…」

やがてやや遅れて荷物を盗まれたコータスのおじさんがやってくる。
僕はおじさんを指す。
盗まれたのはおじさんだからね。

セレビィ 「ふーん…、お人よしなこって」

なにやら薄羽の少年は呟くとコータスのおじさんの下に飛ぶ。

スイスイ (あ〜、びっくりした…もう行こう…)

結局僕ってば何の役にもたっていないし…。
はぁ…情けなくなるよ…。

スイスイ 「とにかく、中央区の町長宅に行かないと…あれ?」

僕はそう思って用水路を出ると周りを見渡す。
ここはどこ…というのが第一印象だった。

スイスイ 「……」

ど、どうしよう…。
み、道に…迷っちゃった…。
こ、ここどこ〜?





…結局、それから2時間かけて元の場所に帰り、何とか夕方までには町長宅に着くのだった。
しかし、今日の一日はこれから起こるとんでもない出来事の前触れに過ぎないのだった…。









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