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ポケットモンスター 水の街外伝



序章最終話 『始まりの歌』





『3月3日 アクアレイク』


『グアリクス町長、緊急逮捕!』
『近日、我がアクアレイクの町長、グアリクス氏に逮捕状が出た』
『罪状は収賄罪とのこと、詳しい調査は現在も続行中とのことだ』
『本氏はアクアレイクの町長としてすでに4年目の任期になるがその人柄は温厚でこれまで何一つ不祥事が起きたことはない』
『今回の件に関して、街の住民は動揺を隠せず、近々グランブルー本国より調査員が派遣されるとのこと』
『3月3日 本日の一面より Atmic Age社』


『呑気屋』


シルク 「…冗談にならないわよ!」

若菜 「まさか、あの町長が逮捕だなんて…」

セーラ 「…あの町長にね」

ガジ 「まるで嘘みたいな話だな…あの人の人柄から考えて収賄罪なんてな…」

ここは呑気屋、シルクもすぐに病院を退院して再び呑気屋に帰ってきたが、いきなりこれにはシルクも度肝を抜かされた。
シルクの持つ朝の新聞を囲んで呑気屋の面子はしかめっ面をしている。
まさか、あの町長が…というやつであった。
この動揺は呑気屋のみならず町全体で起きていた。


『人魚亭』


シエラ 「町長さんったら…まぁ、大したほとぼりじゃないかしら? どう、ララ?」

ララ 「私の耳にあの町長が不祥事を起したっていう裏は存在しないよ」

ビッグス 「しかし…町長は捕まった…」

ララ 「まぁ、あの町長に何か誰も知らない裏があるってんならありえるかもね…」
ララ (もっとも…この私の耳を逃れてなんて…とても考えられないけどね…)

ここ人魚亭でも同意だった。
アクアレイクの情報屋、ララの耳にさえ今回の事件のことは何一つ入っていない。
この事件の矛盾…そこに感づきながらも裏づけのない状況に彼女たちは葛藤する。
そして、ララと同じくこの店に入っているもう一人の客は…。

ジオノ (今回の事件…もしやすると本国にも影響するのぅ…グランや、早くしてくれよ)


『ウンデ教会』


ミュルナ 「海の神ガーヴ様…どうか本日もどうかこのアクアレイクを御見守りください…」

バッツ 「おじちゃん、どうしてつかまっちゃったんだろ…?」

紫音 「うぅ…わからな〜い…」

教会ではミュルナがこの不穏な空気に不安を抱き、祈りを神へと捧げる。
教会の孤児たちもそれを肌身に感じてか、少なからず不安そうにしていた。


『リブルレイク』


ケネラド 「グアリクスが逮捕…か」

スバル 「…たいほ?」

ケネラド 「おおよそ、あの男が不順なことを行うとは思いがたいがのぅ…」

南東区リブルレイクに居を構える、カメックスのケネラドじいさん。
しかし、彼もまた今回の事件に疑問を抱きながらも何もできない自分を感じていた。


『公安当局』

斑藻 (グアリクス町長の逮捕…しかも我ら公安ではなく自警団が…)
斑藻 (グアリクス町長が裏金を使ったというのなら自警団のような私設団体より我ら国家公務員たる公安が先に情報を掴みそうなものだけど…)

斑藻 「今回の件…矛盾があるわね…桜児、一体何が起こっているの?」


『自警団本署』


ディド 「隊長! 今回の件、本当にあのグアリクス町長が犯罪を起したのでしょうか?」

キサラ 「証拠は出ている、個人的感情で動くのはよせよ、ディド」

ディド 「しかし…」

キサラ 「これから俺たちは町長宅に行くんだ、納得しろ」

ディド 「…了解です、隊長」

キサラ (…たしかに、今回の件おおよそ信じがたいがな…なんせ、あのユフィが掴んでいない情報だからな…)

桜児 「…キサラさん、今回は気をつけて」

キサラ 「暴動も考えられる、桜児も気をつけろ」

桜児 「はい」

キサラは第一部隊を連れて、グアリクス町長の町長宅へと向かう。
現在自警団本署に残っているのは第3部隊と第5部隊だけだ。

ユフィ 「…私たち情報管理の諜報部がつかめなかった情報どうやって団長は掴んだのかしら?」

桜児 「…わからない、お前にわからないこと俺にわかるわけもないか」

今回の事件、その証拠を掴んだのは自警団団長だった。
現在自警団団長はオニゴーリ種の頑鉄という北方政府からきた男だった。
本来自警団団長はヤドキング種のヨなのだが、現在出張交換によりヨは北方政府に出向いているのだ。
代わりに来たのが頑鉄というわけだ。

ユフィ 「どう考えても怪しいのは団長よね…」

桜児 「滅多なこと言うな、ユフィ…キサラ隊長ではないが我々は一枚岩でなくてはいけないんだ」

ユフィ 「わかっているわよ…」

そう言ってユフィは表面上は納得する。
しかし、内面は全く納得していなかった。
いや、この自警団のほとんどが完全に納得はしていない。
警察機構たる公安や自警団にさえ波紋は広がっていた。
しかし、警察にさえ今回の事件どうしようもない。


『ライト美術館』


ライト 「はぁ…今日は閑古鳥か…まぁ、あの事件の次の日じゃねぇ…」

ライト美術館の館長ライトは快晴の空を皮肉めいて見ていた。
普段、活気ある中央区も今日はみ気分が沈みこんでか整然としていた。


『エーテル総合病院』


鼎 「お大事に♪ 怪我には気をつけてくださいね♪」

ミルファ 「鼎ちゃん…悪いけどあとお願いね」

鼎 「あれ? ミルファ先生も上がりですか?」

ミルファ 「ごめんなさい、少し気分が悪いの」

鼎 「いえいえ、この前ミルファさんはノーマニアのメディック総合病院でのご教授の後じゃないですか」
鼎 「医者の不養生じゃ溜まったものじゃないですし休んでください!」

ミルファ 「ええ…ごめんさないね」

世界的に有名な天才外科医ミルファ、ミルファは体調を悪くしており早退をした。
しかし、彼女の体調不良はだけではないようだ。

鼎 (先生…エスパータイプだから強く人々の思念を感じ取っているのね…)
鼎 (町長逮捕か…ここまで人々の思念に影響を及ぼすなんて…)

ミルファ (気持ち悪い…悪意が…渦巻く…この街を…飲み込んでしまいそうなほどに…)


『美多的春多雨雑貨店』


香雲 「…いらっしゃい」

セニア 「久しぶり〜ホンちゃん♪」

香雲 「今日は何を?」

セニア 「グアリクス町長のアリバイってない?」

香雲 「あるわけないだろう…」

セニア 「だよねぇ…」

セイル 「……」

セニア 「まぁ、とりあえず適当に買おうかねぇ…」

セイル (目が疼く…一体何が起きているの)

セニア 「…大丈夫、セイル?」

セイル 「え? ああ、大丈夫…」

セニア 「そう? あなた元々体少し弱いんだから病院いく?」

セイル 「だ、大丈夫ですって! ただ…」

セニア 「ただ?」

セイル 「この街…今、空気が淀んでいるように感じる…」

セニア 「…そうね、そうかもね」

セニアはそう言って頭をかいた。
今、無駄な努力をした自分を考えているのだろう…。
セイルの言うとおり、今街の空気は淀んでいるかもしれない。


『南西区 港町』


エラ 「今日は大漁だったね」

トール 「ああ、だけどよ…」

エラ 「例の事件?」

トール 「ああ…一体何があったんだろうかね…」

エラ 「わからないよ…あの町長が…」

本日も快晴のアクアレイクの港町ではに皮肉にも漁は大漁だった。
しかし、あまり気分よくここの漁師は漁に出られないようだった。
ただ、家計のため…でただけといった感じだ。


『クリアブルー』


カイ 「ただいま…エルフィスさん」

エルフィス 「お帰りなさい、カイさん」
エルフィス 「カイさん、今一体街に何が起こっているのかしら?」

カイ 「なにか…町長宅で問題があるらしいです」

エルフィス 「そう…私の目じゃ新聞も満足に読めなくてね…」
エルフィス 「黙示録…その足音がまた一歩踏まれたようね…」

カイ 「黙示録…」

エルフィス 「……」

クリアブルーでは真っ暗な部屋にエルフィスがたたずんでいた。
エルフィスは目が悪い…ゆえに今の街の状況がいまいち理解できていなかった。
カイは…なにかわからないといった顔であった。
その顔は…現在唯一平常なままの人物かもしれない。


『アクアレイク地下遺跡 地下3F』


リッシ 「お父様?」

シン 「小賢しいな…どうやら、悪戯好きな小さき者たちが疼いているようだ…」

リッシ 「上がっていい? お父様…」

シン 「…あまり俗世に干渉しないようにな…」

リッシ 「うん…行ってきますお父様」


『町長宅』


ミルン 「信じられない…町長さんが裏金を使うなんて…」

スイスイ 「はうぅ…自分…とんでもない時期に来てしまったんですね…」

小夜 「…濡れ衣よ」

沙耶 「姉さん?」

小夜 「グアリクス町長は白よ…ただ…」

沙耶 「アリバイを証明できない…」

それを聞くと小夜はコクリと頷く。
そう、アリバイ…これが今回の最大のターニングポイントなのだろう。



そして…。


『アクアレイク北区 北出入り口門』


ラグラージ種 「はぁ…腹減った」

そして、時を同じくしてこの時期に来た一人のラグラージ種の男がいた。
彼の名はレイジ…。
ラグラージ種としては大きい173センチの身長。
ラグラージ種特有の太い体に大きな尻尾と耳、そしてあごの下から生える2本の黄色い外鰓。
格闘技でもやっていたのだろう…素人とは思えないいい体つきをしていた。

このレイジ…この男が今回の主人公である…。









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