ポケットモンスター パール編




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おまけ





『負けても折れるな』

『翼が折れない限り何度でも羽ばたける』

『何度やられても立ち上がれ』

『まっすぐ立て、雑草よ』

『負けを知った者は強くなる』

『心強くあれ、負けた分だけ強くなれ』


−負けることは…−





『クロガネジム 炭鉱』


ヒカリ 「あたし…なんで急いじゃったんだろう…」
ヒカリ 「あんなことしたってコウキ君勝てるわけないじゃない…」
ヒカリ 「あたしが…コウキ君を負けさせた…」
ヒカリ 「うう…ごめんなさい…ごめんなさい…コウキ君」







第4話 『進化』




『某日 某時刻 クロガネシティ クロガネジム』


コウキ 「ヒカリちゃん…?」

僕はクロガネジムでヒカリちゃんの姿を探した。
しかし、いつの間にかヒカリちゃんは姿を消していた。
探しても姿がない。
一体どこへ?

受付 「もしかしてさっきまでここにいた女の子を捜しているのかい?」

コウキ 「あ、はい」

受付 「あの子だったらさっき辛そうな顔で出て行ったよ」

コウキ 「え? どこへ?」

受付 「さぁ、そこまでは…だが、あの顔だったら誰かといるのは辛いだろう…恐らく炭鉱に行ったんじゃないかな?」

コウキ 「炭鉱…ですか?」

ヒョウタ 「この街のはずれにあるよ、今の時間帯は人が少ない、独りきりになるなら絶好の場所だ」

コウキ 「ヒョウタさん…」

そこへヒョウタさんも現れる。
炭鉱か…。

コウキ 「ありがとうございます!」

僕は二人にお礼を言ってジムを後にした。
ヒカリちゃん、どうして一人で…?



………。



『同日 時刻18:22 炭鉱』


ヒカリ 「……」

コウキ 「ヒカリちゃん、ここにいたんだ」

ヒカリ 「コウキ…君…」

ヒカリちゃんは炭鉱の小山の上で三角座りのまま黄昏ていた。
僕が後ろから近寄るとヒカリちゃんは首だけこっちに向けた。

コウキ 「探したよ、ヒカリちゃん」


ヒカリ 「…ごめん、コウキ君…」

コウキ 「え…?」

ヒカリ 「あたし…コウキ君に無理させちゃった…」
ヒカリ 「あたし…先輩失格だよね…」

コウキ 「…ヒカリちゃん、顔を上げて」

ヒカリ 「コウキ君…?」

コウキ 「僕はね、別にヒカリちゃんが悪いとは思ってないよ」
コウキ 「そりゃ、たしかにジム戦は負けたけどさ」
コウキ 「駄目で元々だよ、それより早くもう一度再戦できるように特訓しよう、ポケモンを集めようよ!」

ヒカリ 「コウキ君…」

コウキ 「泣いたらみっともないよ、ほら顔を拭い…ハンカチ…あ、あはは…そういや僕持ってなかったっけ…はは」

ヒカリちゃんはずっと泣いていたんだろう、頬に涙の跡があった。
僕はハンカチを渡そうとしたがおもいっきり持っていないことに気づく。

ヒカリ 「ふ…ふふふ、ありがとうコウキ君」

コウキ 「ヒカリちゃん、笑ったね、笑顔のヒカリちゃんの方がヒカリちゃんらしいよ」

ヒカリちゃんはやっといつものヒカリちゃんに戻ってくれた。
僕はヒカリちゃんの手を持ってヒカリちゃんを立ち上がらせる。

ヒカリ 「よっし、それじゃまず何から始めようか!?」

コウキ 「うん、まずは新しい仲間を探した方がいいんじゃないかな?」

ヒカリ 「そうね、最低でもコウキ君自身あと2匹はゲットしないといけないもんね」

クロガネジムは3体のポケモンを使用して戦うジム。
ヒカリちゃんからポケモンを借りているようではヒョウタさんには到底勝てない。
とはいえ…今日明日ポケモンを見つけたところでヒョウタさんと戦えるレベルにするのは難しい…。

ヒカリ 「…とりあえず、今日は暗いしそれは明日にしよっか?」

コウキ 「…そうだね」

時間はすでに午後6時。
クロガネ炭鉱はすでに暗くなっていた。

ヒカリ 「ほら、コウキ君ポケモンセンターに行くよ?」

コウキ 「うん!」

僕はヒカリちゃんに手を引っ張られ、ポケモンセンターに向かった。

ヒカリ 「ああ、そうそうあたしのポッチャマとコリンクは返してね?」

コウキ 「うん、はい」

ヒカリ 「ありがと」

僕は2匹の入ったボールをヒカリちゃんに返す。
ヒカリちゃんはそれを手に持ったまま、僕たちはポケモンセンターに入るのだった。



ポケモンナース 「夜遅くまでご苦労様です! ようこそポケモンセンターへ!」

ヒカリ 「ポケモンをお願いします、それとあたしたち部屋を借りたいんですけど」

ポケモンナース 「ポケモンはこちらでお預かりします、部屋の方はこの鍵をどうぞ!」

ポケモンナースのお姉さんは手際よくヒカリちゃんのボール(僕のナエトル含む)を受け取ると壁にかけてあった番号つきの鍵を取って渡してきた。

ポケモンナース 「部屋は一階になります、番号をお間違えないようお願いします!」

ヒカリ 「はい、ポケモンは明日の朝受け取りに行きますんで」

ポケモンナース 「かしこまりました! 責任もってお預かりいたします!」

ヒカリ 「さ、行こうか?」

コウキ 「うん」

ヒカリちゃんは手早く用事を済ませると今日休む部屋に向かった。
ちなみに部屋を借りるにはトレーナーカードの掲示がいる。
トレーナーカードは個人証明になるので部屋を借りるのに必要になる。
僕も一応マサゴタウンで作っていたけど二人の場合片方だけ掲示すればいいらしい。
ちなみにヒカリちゃんのも僕のもカッパーカード。



『115号室』


パチィン!

ヒカリ 「ここがクロガネシティの宿泊施設ね」

コウキ 「……」

鍵についてあったキーホルダーに書いてあった番号の部屋のドアを開けるとまず、ドアのすぐ近くにあるスイッチを押して電気をつける。
部屋は狭く、2段ベットが部屋の両脇に二つある。
あいだは必要最低限のスペースになっているわけだが狭い。
1メートルなく、荷物を置くだけのスペースということがわかる。
トイレは部屋の外の通路の奥にあり、お風呂は有料とのこと。
クリーニングとかもしてくれるらしく、これも別途料金がかかる。

コウキ 「どこに眠ればいいの?」

ヒカリ 「どこでもいいのよ、好きなベットに眠っていいのよ」

僕は4つあるベットのどこに眠ればいいのかヒカリちゃんに聞いたが、ヒカリちゃんはどこでもいいと言う。

ヒカリ 「なんならあたしと一緒に寝てみる〜?」

コウキ 「? 一緒に眠るって当然でしょ…? 部屋ひとつなのに…」

ヒカリ 「あ〜…そうきたか、まぁそうね…まだ早いか」

コウキ 「????」

ヒカリちゃんはいまいちわからないことを言う。
一体どうしたんだろう?

ヒカリ 「あたしはこっちに寝るから」

ヒカリちゃんはそう言うと入り口から見て左側の下の段のベットに入る。
僕は右の下の段のベットに入った。

ヒカリ 「晩御飯食べてないけど、明日早起きするから今日はもう寝ようね?」

コウキ 「うん、おやすみ」

ヒカリ 「おやすみ、コウキ君」

僕たちはまだ7時にもなっていなかったが眠ることにする。
その代わり明日早起きしよう。
明日はどんな出会いがあるだろう…。
そんなことを考えていると僕は簡単に眠りにつけるのだった。



…………。



『次の日 時刻04:12 ポケモンセンター 115号室』


コウキ 「ん…?」

僕は突然、意識を起こす。
暗い…窓のカーテンを開けても暗い…星が出ている。
まだ、夜?

ヒカリ 「あ、おはようコウキ君」

コウキ 「ヒカリちゃん…? おはよう…」

ヒカリちゃんはすでに起きており朝の身支度をしていた。
今は髪の毛をとかしている。

ヒカリ 「コウキ君も早いね、まだ4時だよ?」

コウキ 「うん…目が覚めちゃったから」

と、言ってもまだ少し眠気がある。
少し寒いからかな…?

ヒカリ 「コウキ君、お腹空いてる?」

コウキ 「…少し」

昨日は晩御飯を食べていないけどそこまでお腹は減っていない。
それでも、少しは減っているのは事実だ。

ヒカリ 「じゃあ、朝ごはん食べようか?」

コウキ 「朝ごはん…?」

ヒカリ 「食堂行くよ、荷物はここに置いておいて大丈夫だよ」

ヒカリちゃんはそう言って部屋の外に出た。
僕はヒカリちゃんについて行く。


ガチャ。

ヒカリ 「戸締り大丈夫、後で戻ってくるから荷物は大丈夫よ」

コウキ 「食堂って開いているの?」

僕は最もな疑問をヒカリちゃんに投げかける。
いくらんなんでも朝の4時に食堂が開いているのだろうか?

ヒカリ 「大丈夫よ、ポケモンセンターは普通24時間だからね」
ヒカリ 「それに、パンとかも売っているし、食べ物には困らないわ」

コウキ 「そう」

僕はそれだけ言って後は特に喋らずヒカリちゃんと食堂に入った。



コウキ 「…それで、今日はこれからどうしようか?」

僕たちは食堂で軽くサンドイッチを食べていた。
食べている最中僕は今日の予定をヒカリちゃんに聞いた。

ヒカリ 「そうね、まずはポケモンを探さないと…」
ヒカリ 「最低でもあと2匹もいるからね」

コウキ 「そうだね…でも、どこで見つければいいのか…」

ヒカリ 「う〜ん、そうねぇ…そうだ、炭鉱の中に入ってみようか?」

コウキ 「え? 中って入ってもいいの?」

炭鉱の中は仕事場だ。
そこへ無関係な人が入り込んでもいいものなのだろうか。

ヒカリ 「う〜ん、どうだろうね、でも中には中で珍しいポケモンもいるらしいしね」

コウキ 「珍しいポケモン?」

ヒカリ 「滅多に出会えないポケモンのことよ」

コウキ 「ふ〜ん」

しかし、別に僕は珍しいポケモンが欲しいわけじゃない。
なんとか友達になれるポケモンを見つけたい。

ヒカリ 「まぁ、気の遠い話をしたらひたすらフィールドワークするしかないわよねぇ…」

結局それしかないのだろう。
僕の場合通常より遥かにポケモンとの出会いが少ない。

コウキ 「そうだね、行ってみようか?」

ヒカリ 「ええ、ポケモンの分布の調査にもなるし」

おっと、そういえばポケモンの調査も行っていたんだっけ。
というか、そっちが主目的だったのにジム戦で頭がいっぱいで忘れていたよ…。

ヒカリ 「時間帯的にはまだまだ朝も朝、日が昇る前だし今のうちに行くよ?」

コウキ 「うん」

僕たちは手早く朝食を食べ終えると一旦借りている部屋に戻って荷物を整理して炭鉱に向かうのだった。



…………。



『同日 某時刻 クロガネ炭鉱 内部』


コウキ 「炭鉱の中はこうなっているんだ…」

ヒカリ 「てか、真っ暗で何も見えないんだけど…」

僕たちはまだ日も昇らない時間に炭鉱に来た。
外の作業場はそうでもないが中は本当に真っ暗だった。
元々就業時間でもないし、ライトはついていない。
今はコリンクの放つ電気の光でかろうじて自分の周りが見える程度だった。

コウキ 「…ポケモンはもっと奥に行かないと出会えないのかな?」

ヒカリ 「そうねぇ、てかこの明かりの範囲じゃポケモンと出会うイコール目の前じゃない」

コウキ 「とにかく進もう」

僕たちは炭鉱の中を進んだ。
炭鉱は広く、いくつか道が枝分かれしているようだった。
道はでこぼこしていて、ちょっと油断するとすぐに足を取られてしまう。
平らになっていないのはここに住む野生のポケモンのせいだろうか?

? 「イシ!」

コウキ 「? ポケモン…?」

ヒカリ 「えっと…」

前方からポケモンの声が聞こえた。
ヒカリちゃんはポケモン図鑑を取り出し、前方に向ける。

『イシツブテ』

コウキ 「イシツブテ…ヒョウタさんの使っていたあの岩石に手の生えたようなポケモン…」

僕は昨日のジム戦を思い出す。
イシツブテはそうたいしたことをしたわけじゃないが確実に後の戦いを有利に進める戦いを行った。
その結果は100点満点と言えるだろう。

ヒカリ 「コウキ君!」

コウキ 「うん! いけナエトル!」

ナエトル 「ナエーッ!」

僕はナエトルをボールから出す。
相手は暗闇の向こう…どう出る?

イシツブテ 「イシッ!」

ドカァ!

ナエトル 「ナエーッ!?」

イシツブテは暗闇の中ナエトルに体当たりしてくる。
イシツブテの技『たいあたり』か。
こっちはコリンクの放つ電気の光の中にいるから位置がばれてしまう。
しかし、向こうが接近してきてこれでこっちも攻撃できる。

コウキ 「ナエトル! 『はっぱカッター』!」

ヒカリ 「え!? ちょ…ま!」

ナエトル 「ナエーッ!」

ザシュザシュザシュ!

イシツブテ 「イシーッ!?」

ナエトルの『はっぱカッター』はイシツブテを捕らえ、イシツブテは一撃でダウンしてしまう。

コウキ 「よし! いけモンスターボール!」

コツン! コロコロ…。

コウキ 「あ、あれ?」

僕の投げたボールはイシツブテを捕らえる。
しかし、モンスターボールはイシツブテを捕らえない。
まさか…ボールの故障?

ヒカリ 「はぁ…コウキくぅ〜ん…」

コウキ 「ヒカリちゃん…?」

ヒカリちゃんはこれでもかと言わんばかりに深くため息をついて僕を見た。

ヒカリ 「あのね、コウキ君…ゲットはね…倒しちゃうとゲットできないの…」

コウキ 「は?」

ヒカリ 「『はっぱカッター』は草技、地面と岩タイプのイシツブテはさしずめ4倍のダメージ…まして鍛えられたナエトルの攻撃を耐えられるわけないよ…」
ヒカリ 「ゲットはダウンしたらできなくっちゃうからちゃんと手加減しないと…」

コウキ 「…ソウデスカ」

それは知りませんでした…。
倒しちゃダメなんですね…。

ヒカリ 「はぁ…折角野生のポケモンゲットのチャンスだったのに…」

ヒカリちゃんは再びため息をつく。

ゴゴゴゴゴゴ…。

コウキ 「! じ、地鳴り…?」

ヒカリ 「きゃ、やだ! こんな時に地震!?」

突然、炭鉱内が揺れ始める。
地鳴りが凄い。
もしかしてこの真下で地震が起きている!?

ガラッ…。

コウキ 「! 危ないヒカリちゃん!」

ヒカリ 「え!? キャアッ!?」

ガラララララァッドッカァァァ!!

突然、天井が落ちてきて、僕たちを襲った。
僕はとっさにヒカリちゃんを跳ね飛ばして下敷きにされるのから救った。
しかし、その結果僕たちは崩れた天井に遮られて、壁一枚に顔さえ見ることはできなくなった…。

ヒカリ 「痛た…て、コウキ君!?」

コウキ 「…ヒカリちゃん、大丈夫?」

僕は壁一枚向こうのヒカリちゃんの心配をする。
僕の方はなんとか巻き込まれずに済んだ。

ヒカリ 「コウキ君! そっちにいるの!?」

コウキ 「うん…どうやら離れ離れになっちゃったね…」

ヒカリ 「大変…あ、あたし急いで助けを呼んでくるわ! 行くよコリンク!」

コリンク 「コリン!」

タッタッタッタッタ…!

コウキ 「行っちゃったか…」

その場からヒカリちゃんとコリンクの足音が遠ざかった。
コリンクの光のないこちら側は真っ暗だ。
しまったな…こんなハプニングに巻き込まれるなんて…。

コウキ 「助けがくるまで待つしかないか…」

僕は座って助けが来るのを待つ。
これじゃポケモンを探すどころの騒ぎじゃないな…。


コウキ 「そういえばナエトルは…?」

僕はナエトルのことを思い出す。
ナエトルはボールから出しっぱなしにしていたけど…。

ナエトル 「ナエ…」

コウキ 「! ナエトル、そこにいたんだ」

ナエトルは僕の足を甘噛みした。
それでここにナエトルがいると示したんだろう。
ナエトルと僕はここに閉じ込められたわけか。

ゴゴ…ゴゴ…!

ナエトル 「ナエ…?」

コウキ 「! さっきの地鳴りと同じ音…」

突然、今度は小刻みに地鳴りがした。
なんだか嫌な予感がする。

コウキ 「…もし、あの地震が自然の物ではなく人為的に起こされたものなら…」

ふと、そう考えてしまう。
狙ったものではなかったとしてもそれだと、再びあの地震が襲ってくるかもしれない…。

ゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ…!

コウキ 「! また地震!?」

突然、また地震が起き始める。
またもや真下からの地震のように思えた。

ナエトル 「ナエ! ナエェ…!」

コウキ 「ナエトル…?」

ナエトルは突然低くうなり始めた。
その鳴き声は敵を見つけた時放つ威嚇の鳴き声。

? 「イワー!」

コウキ 「!? な、なに!?」

突然、真下が激しく揺れた。
僕は咄嗟にその場から転げて離れると次の瞬間…。

ドカァァァァン!

突然、土を巻き上げ何かが地面から飛び出したみたいだった。
その場に砂煙が起きて、僕たちを巻き込んでいた。

コウキ 「な、なんなの…ポケモン?」

僕はとっさに暗闇にポケモン図鑑のセンサーを向ける。

『イワーク』

コウキ 「イワーク!?」

イワーク…僕がヒョウタさんとの戦いで何もできず敗れたポケモン…。

イワーク 「イワー!」

ズガァン! ズガァン!

地面が抉れる音。
ナエトルのうなり声を聞く限り向こうは敵意をこちらに向けているらしい。
まずい…明かりもなしにあんな大きなポケモンに襲われたら命が危ない。

コウキ 「ナエトル、逃げるよ!」

ナエトル 「ナエッ!」

僕は暗闇の中なんとかその場を後にする。
まさかイワークに襲われていたなんて。
あんなのが地面の下を動いていたのならそりゃ地震も起きるか。

ナエトル 「! ナエ、ナエナエ!」

コウキ 「! どうしたのナエトル?」

ナエトルは何か口に咥えていた。
僕はそれを手探りで調べてみる。

カチ!

コウキ 「!」

なにか、スイッチのような物を捻った。
すると、突然光があふれる。

コウキ 「これ…ヒョウタさんが頭につけていたライトと同じやつ…」

正確にはあの赤いヘルメットが付いていない。
頭に巻くだけみたいだ。

コウキ 「これでだいぶマシか…」

僕はそれを頭につける。
前方がこれで見えた。

コウキ 「ここは狭い、どこか広い場所に行こう!」

ナエトル 「ナエ!」

僕たちはさらに炭鉱の奥に進む。

ゴゴ…ゴゴゴ!

コウキ 「地鳴り!? また地中を動いている!」

どうやら、こっちを追いかけているみたいだった。
物凄いスピードで地中を動いている。

ドカァン! ドカァン!

後ろを振り返ると無差別に地面の砂が巻き上がっていた。
まるで威嚇するかのように砂煙は僕たちに近づいてくる。

コウキ (違う…? 追い込んでいる?)

もしかしたら僕たちはイワークに追い込まれているのではないだろうか…?
考えすぎかもしれないが用心したほうがよさそうだ。

やがて、ある程度逃げるとその先に少し広い場所にたどり着いた。
四角い部屋で少しは戦いやすそうだった。

コウキ 「ナエトル! ここであのイワークと戦うよ!」

ナエトル 「ナエッ!」

僕たちは四角い部屋の真ん中でイワークに備えた。
この真っ暗な炭鉱の中では僕がナエトルの目にならないといけない。
僕の頭についたライトだけがこの世界にある唯一の視界なのだから。

イワーク 「イワー!」

ズガァン!

コウキ 「後ろ!? ナエトル後ろにはっぱ…!」

イワーク 「イワーック!」

ドガァン!

ナエトル 「ナ…ナエ…!?」

突然、ナエトルの真下から地面が飛び出してナエトルの動きを封じる。
ダメージ目的ではない、動きを制限するための技!?

イワーク 「イワー!」

ズガァン!

コウキ 「まずい! ナエトル『からにこもる』!」

ナエトル 「ナ、ナエ!」

今度はイワークは頭上から岩を落としてくる。
イワークの『いわおとし』だ、僕は咄嗟にナエトルに防御指示を出す。

ドガァ!

イワークの『いわおとし』はナエトルの頭上さえも押さえて完全に動けなくしてしまった。

コウキ (まずい! これじゃ何もできないよ!)

イワーク 「イワー!」

イワークは『たいあたり』を敢行するためか身動きのできないナエトルに突撃する。
あのまま食らったらただじゃすまない!

コウキ 「…!」

昨日の敗戦が脳裏によぎる。
相性のよかったナエトルがあっさりヒョウタさんのイワークにやられたあのバトル…。

コウキ 「いやだ! 負けたくない!」

僕は勇気を振り絞る。
なにか…なにか手はあるはず!

コウキ 「! そうだ! ナエトル『すいとる』!」

ナエトル 「! ナエー!」

イワーク 「!? イワーッ!?」

イワークから緑色の光の玉が出てくると岩石に覆われたナエトルに飛び込んでいく。
この技はある程度の範囲内に敵がいるのなら『草』タイプの技のダメージで相手にダメージを与え、その何割かを自分の体力に吸収する。
僕のナエトルの『すいとる』はそこまで強力ではないが弱点であるイワークにとっては大ダメージだったようだ。

イワーク 「イワー!」

ズガァン! ガガガガッ!

イワークはたまらず地中に潜った。
イワークの『あなをほる』。
これを使われている間こちらにダメージを与える術はない。

イワーク 「イワー!」

ズガァン!

ナエトル 「ナエー!?」

当然イワークはナエトルの真下から現れてナエトルを攻撃する。
その衝撃でナエトルを包んでいた岩が弾けとび、ナエトルは自由になった。

コウキ (落ち着け…落ち着くんだ僕!)
コウキ (このイワークはヒョウタさんのイワークじゃない! ヒョウタさんのに比べたら…ずっと弱い!)
コウキ 「ナエトル! 『はっぱカッター』!」

ナエトル 「ナエー!」

ナエトルは空中で体勢を整え、イワークめがけて『はっぱカッター』を放つ。

ザシュザシュザシュ!

イワーク 「イワー!?」

ズッシィィィン!!

イワークはたまらずダウンしてしまう。
やった…勝った。

コウキ 「やったね…ナエトル…」

ナエトル 「ナエ…ナエェェ…!」

コウキ 「な、なに…? ど、どうしたのナエトル!?」

突然ナエトルが体を震えさせる。

キィィィン…!

コウキ 「ナ…ナエトル!?」

今度は突然光を放ち始めた。
眩い光がナエトルを包みナエトルを目視できない。
やがて、ナエトルの姿は徐々に大きく、姿を変化させていた。

? 「ガメー!」

コウキ 「ナ、ナエトル…?」

突然現れたのはナエトルに似ているような似ていないようなポケモンだった。
ナエトル…じゃないのか?
僕はポケモン図鑑のセンサーをそのポケモンに向けた。


『ハヤシガメ 木立ポケモン』
『高さ 1,1m 重さ 97,0kg』
『甲羅は土が固まった物』
『樹木に生った実をついばみに来るポケモンもいる』


コウキ 「は、ハヤシガメ?」

な、ナエトルはどこに行ったんだ…?
この子一体どこから来たの?

ハヤシガメ 「ガメガメ!」

コウキ 「? え? なに?」

ハヤシガメは僕に何かを訴えている。
僕の腕を噛む、回る、頭を出す。

コウキ 「…? もしかして撫でてほしいの?」

ハヤシガメはコクコクと頷く。
僕はハヤシガメの頭を撫でてあげるとハヤシガメは気持ちよさそうな声で鳴いた。
このしぐさ…ナエトルに似ているな?

コウキ 「もしかして君はナエトル…?」

なんとなくそう思ってしまう。
でも、なんで?

コウキ 「どうして姿が変わっちゃったんだろう…」

まったくもって疑問だ。

コウキ 「とにかく一旦戻ろうか」

ハヤシガメ 「ガメ」

僕たちは元いた場所に戻るのだった。



…………。
………。
……。



? 「ここだここだ!」

? 「ここは僕に任せて!」

コウキ 「!」

あれからしばらく経って壁の向こうから話し声が聞こえてきた。
ようやく助けが来たみたいだった。

? 「ズガイドス! 『ずつき』だ!」

ズガイドス 「ズガー!」

ドカァァン!!

コウキ 「うわっ! けほけほっ!」

突然壁が一撃粉砕され僕は砂煙に覆われて咳き込んだ。
助かったけど…荒っぽいな〜…。

? 「大丈夫かい、コウキ君?」

コウキ 「はい…て、ヒョウタさん?」

なんと助けてくれたのはヒョウタさんだった。
そうか、あのズガイドスはヒョウタさんのポケモンか。

ヒカリ 「コウキ君…よかった…」

コウキ 「ヒカリちゃん」

ヒカリ 「心配したよコウキ君」

コウキ 「ごめん」

ヒカリちゃんは泣きながら僕の心配をしてくれた。

ハヤシガメ 「ガメ…」

ヒョウタ 「! おや、そのポケモンは…」

コウキ 「え? ああ…なんだか知らないけど突然ナエトルが消えちゃってこのポケモンが現れたんです…」

ヒカリ 「ハヤシガメだね…そうか、進化したんだ」

コウキ 「進化?」

ヒカリ 「そう、あたしたちナナカマド研究所の基本コンセプトはポケモン進化!」
ヒカリ 「あたしたちはポケモンの進化も調べる項目に入っているのよ」
ヒカリ 「そして、ポケモンは進化することによって強くなるのよ」
ヒカリ 「もちろん弱くなる部分がでるポケモンもいるけどね」

コウキ 「そうか…ハヤシガメはナエトルが進化した姿なのか」

僕はハヤシガメを見る。
急激なパワーアップは今までできないと思っていた。
でも、進化することによってパワーアップできるんだ。
もしかしたら今なら…。

コウキ 「ヒョウタさん、お願いがあります!」
コウキ 「僕と、僕と一対一のポケモンバトルをしてくれませんか!?」
コウキ 「ぜひ、そのズガイドスと戦ってみたいんです!」

僕はズガイドスとのバトルを望む。
別にジム戦じゃなくてもいい。
ただ、今の僕はヒョウタさんに対抗できるのか見てみたい。

ヒョウタ 「…いいよ、外に出よう! そこでやろうじゃないか!」

コウキ 「…はい!」



…………。



『同日 時刻07:31 炭鉱』


ヒョウタ 「使用ポケモンは1体、道具の使用は無しでいいね?」

コウキ 「はい!」

ヒョウタ 「よし! じゃあ行くぞズガイドス!」

ズガイドス 「ズガー!」

コウキ 「お願い! ハヤシガメ!」

ハヤシガメ 「ガメ!」

僕は外に出ると早朝ヒョウタさんと対峙している。
はたして僕にヒョウタさんのズガイドスに勝てるのか…?

ヒカリ 「コウキ君、ハヤシガメにこれを使ってあげて、体力減っているでしょ?」

コウキ 「『きずぐすり』? ありがとうヒカリちゃん」

ヒカリ 「頑張ってね、コウキ君ならやれるわ」

コウキ 「…うん」

僕はハヤシガメに『きずぐすり』を与えるとそのまま少し離れてヒョウタさんと対峙する。

ヒカリ 「じゃ、審判はあたしがします! 二人とも準備はいいですね!?」

ヒョウタ 「大丈夫だよ」

コウキ 「やれます!」

ヒカリ 「それじゃ…バトルスタート!」

ヒカリちゃんの号令と共に、僕の挑戦は始まる。
僕は出鼻をくじくため、真っ先に命令を下した。

コウキ 「ハヤシガメ! 『はっぱカッター』!」

ヒョウタ 「ズガイドス! 『ずつき』!」

しかし、ヒョウタさんも速い。
ズガイドスは瞬時に、体を動かしていた。

ハヤシガメ 「ガメー!」

ハヤシガメはナエトルの時より大きく、より数の多い『はっぱカッター』をズガイドスに放つ。
しかし、ズガイドスはその攻撃をたくみにかわしてハヤシガメの懐に潜り込んだ。

ズガイドス 「ズッガー!」

ドカァ!

ズガイドスの強烈な『ずつき』は重いハヤシガメの体をずらす。
だけど、進化するすることによって耐久力は上がっている!

コウキ 「ハヤシガメ! 『すいとる』!」

ハヤシガメ 「ガメー!」

ズガイドス 「!? ズガ〜…!」

ハヤシガメはズガイドスから体力を奪う。
効果抜群でズガイドスは苦しそうだが、これで倒せるのなら苦労はしない。

コウキ (なにか…なにか打開策はないか!? 普通にやっていてもヒョウタさんのズガイドスには勝てない!)

僕は必死で考える。
現在ハヤシガメが使える技は『たいあたり』、『からにこもる』、『すいとる』、『はっぱカッター』…。

コウキ (待てよ…たしかもうひとつ…あれは…)

ヒョウタ 「ズガイドス! もう一度『ずつき』だ!」

ズガイドス 「ズガー!」

コウキ 「ハヤシガメ! 『のろい』!」

ハヤシガメ 「ガメー…!」

僕は新しく覚えた技『のろい』を宣告する。
この技、まだよくわかっていないんだけどハヤシガメが使うと攻撃力と防御力を上げる代わりに素早さを下げてしまう。
だけど、これを使えば…。

ドカッ!

ズガイドス 「ズガッ!?」

ヒョウタ 「なに!?」

ハヤシガメはズガイドスの『ずつき』が直撃するが今度は体がずれることもない。
そのまま頭が密着状態だった。

コウキ 「ハヤシガメ! 『はっぱカッター』だ!!」

ハヤシガメ 「ガァァメーッ!!」

ザシュザシュザシュ!!

ズガイドス 「ズッガァァァッ!!?」

ヒョウタ 「ズガイドス!?」

ズガイドスはゼロ距離から『はっぱカッター』を受けて宙を舞った。

ドッサァァァ!

ズガイドス 「ズガァ〜…」

ヒカリ 「ズガイドス戦闘不能! ですねヒョウタさん?」

ヒョウタ 「ああ…戻れズガイドス」

ヒョウタさんはズガイドスをボールに戻す。
僕はヒョウタさんに近づいた。

ヒョウタ 「正面からズガイドスの『ずつき』を受けてそのまま反撃されたなんて初めてだよ…」
ヒョウタ 「ズガイドスの攻撃力はこのシンオウ地方に住むポケモンの中でもかなり高いポケモンだけどその分耐久力が少ない」
ヒョウタ 「完敗だ…こんな負け方をするなんて…」

ヒョウタさんは少なからず悔しそうだった。
パワー勝負で負けたのが悔しいんだろう。

ヒョウタ 「そうだ、コウキ君、コウキ君にはこれを渡そう」

コウキ 「これは?」

ヒョウタさんはズボンの後ろポケットから小さな物を取り出した。

ヒカリ 「あ! それって!」

ヒョウタ 「コールバッジ…君が持つにふさわしい物だ」

コウキ 「コールバッジって…えええええ!?」

ヒカリ 「ヒョ、ヒョウタさん! いいんですか!? こんな草バトルですよ!?」

コウキ 「ジ、ジム戦じゃないのに…」

ヒョウタ 「ポケモンリーグ運営委員会、第三条第四項バッジの譲渡について」
ヒョウタ 「バッジの譲渡はそのジムリーダーが渡すにふさわしいと認めた場合、渡すものとする」
ヒョウタ 「…と、まぁ実はみんな知らないけどジム戦じゃないと渡せないわけじゃないんだよね…」
ヒョウタ 「君はよくやったよ、持って行ってくれ!」

コウキ 「ヒョウタさん…ありがとうございました!」

僕はバッジを受け取ると深々と頭を下げた。
バッジ…コールバッジ…。

コウキ 「コールバッジ取得成功!」

ヒカリ 「やったねコウキ君!」

ハヤシガメ 「ガメ〜♪」


…こうして僕はようやく一つ目のバッジ『コールバッジ』をゲットした。
これで『いわくだき』という秘伝マシンが使えるわけだけど、まだまだ使えない技はある。
僕たちのポケモン調査の旅は…まだまだ続く!

ヒカリ 「さぁ! 次はソノオタウン目指すよ!」







『ヒカリちゃんレポート』


クロガネジム、ジムリーダーヒョウタ撃破 残り7人
図鑑完成度15/150(完成度10パーセント)

コウキのパーティ

ハヤシガメ♂ Lv18


ヒカリのパーティ

ポッチャマ♀ Lv22
コリンク♂ Lv14




ポケットモンスターパール編 第4話 「進化」 完







おまけ

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