ポケットモンスター パール編




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おまけ





『そしていつも諦めてた』

『約束も果たせなくて』

『隠れてた闇の中で』

『君が遠くなる』

『このままじゃ終われない』

『そして君と歩き出した』


−守るべきものより抜粋−





ヒカリ 「ふぅ…久しぶりにコトブキシティに帰ってきたわね」

コウキ 「うん、久しぶりだね」

ヒカリ 「さて、このまますぐにソノオタウンを目指そうか?」

コウキ 「うん…ん? あれは…?」

ヒカリ 「ナナカマド博士…?」







第5話 『ベストパートナー』




こんにちは、コウキです。
久しぶりにコトブキシティに帰ってきました。
すぐに北出入り口からソノオタウンに向かおうと思ったのですが、なんとナナカマド博士を見つけたのです。
ですが…どうも様子がおかしいようで…。


男A 「――ですから、ポケモン進化の権威であるあなたの力を借りたいのですよ」

ナナカマド 「何度言っても無駄だぞ」

男B 「この世界をより良くするためなんですよ!」

コウキ 「…なにをやっているんだろ」

ヒカリ 「てか、なにあの二人組み…だっさぁ〜…流行なわけあの服装…」

僕たちは北出入り口にてナナカマド博士を見つけた。
だが、宇宙服のような奇妙な服を着た二人組み男の人に絡まれていた。

ヒカリ 「ナナカマド博士、一体どうしたんですか〜?」

ナナカマド 「おお、ヒカリ君、コウキ君」

男A 「な、なんだ子供か?」

コウキ 「この人たち一体誰なんですか?」

ナナカマド 「それが、この星のためにその力を役立てろだのなんだの訳の分からないことを言っていてな…」

ヒカリ 「新手の宗教団体でしょうか?」

コウキ 「え? ○ルカイダみたいな?」

男A 「違う! 我々ギンガ団をそういった輩と一緒にするな!」

男B 「お前たちのような子供は引っ込んでいろ!」

ヒカリ 「うわ、感じ悪ぅ…あんた何様?」

コウキ 「一体、どういうつもりなんですか?」

男B 「ガキの知るこっちゃねぇ! ペタンは引っ込んでろ!」

ヒカリ 「ピク…なんですって…?」

コウキ 「ヒ、ヒカリちゃん…?」

男B 「あ、あんだよ…?」

突然ヒカリちゃんの放つオーラが変わる。
なんだかドス黒いオーラが見えるんですけど…。

ヒカリ 「誰が…貧乳よーっ!」

バキィ!

男B 「ゴブッ!?」

コウキ 「あ…」

ヒカリちゃんの右アッパーカットが突然男Bのジョー(顎)を的確に捉える。
男Bは一撃で気絶してしまった。

男A 「な、なにしやが…!」

ヒカリ 「同年代では胸はある方よーっ!!」

バッキャアアアッ!!

今度は右ストレートが男Aのテンプルを捕らえた。
殺しかねない勢いのストレートだ。
二人とも顔がえぐいことになっているけど…死んでないよね?

ヒカリ 「はぁ…はぁ…あ、またやっちゃったよ〜…」

コウキ (また!? 常習犯なの!?)

ヒカリ 「ふぅ〜んだ…どうせBカップよ…」

ナナカマド 「あ〜…コホン、ヒカリ君、コウキ君久しぶりだな」

ナナカマド博士は少しバツが悪そうながらも、話を切り出してくる。
どうしても、道の往来で仰向けに倒れている二人が気になるが、今はナナカマド博士に頑張って集中しよう。

ヒカリ 「あ、そうですねナナカマド博士」

コウキ 「でも、どうしてここに?」

ナナカマド 「うむ、ふたつほど君たちに渡したい物があってな」

ヒカリ 「渡したい物?」

ナナカマド 「うむ、ひとつはこのポケッチ」

ヒカリ 「あ、もしかしてコウキ君用ですか?」

ナナカマド 「うむ」

コウキ 「ポケッチ…」

それは時計のような物だった。
ヒカリちゃんも左腕につけているのだけど、それは赤色だった。
ナナカマド博士の持ってきた物は青色、色以外になにか違いってあるのかな?

ナナカマド 「そしてもうひとつが本命、必要だろうと思ってな、秘伝マシン06『いわくだき』だ」

ヒカリ 「わぁお秘伝マシン! ありがとうございますナナカマド博士!」

ナナカマド 「うむ、必要だろうからな」

秘伝マシン…それは平べったい円盤だった。
真ん中に穴が開いており、俗に言うしーでぃーという奴なのだろう。
よくわからないけど…。

ナナカマド 「さぁ、問題にならないうちに早く先に進みなさい! その…ちょっとまずい事態だからな」

ナナカマド博士は地面に視線を向けてそう言った。
地面には無残な姿になった二人の男が横たわっていた。
苦笑するしかない…ヒカリちゃんって本当は怖い人なのかも…。

ヒカリ 「あ、あはは〜…はぁ、それじゃちょっと急いで行こうか?」

ヒカリちゃんは空笑いをする、しかしすぐそれもすぐため息に変わる。
興ざめ…といった顔でヒカリちゃんは真面目な顔になって、行こうと言う。

コウキ 「う、うん…」

僕は少しヒカリちゃんのギャップに驚きながら、小さく縦に頷いた。
ヒカリちゃんって…なんなんだろう?

ナナカマド 「ポケモン調査頑張ってくれよ?」

ヒカリ 「はーい!」

コウキ 「それじゃ、また!」

僕たちはやや急いでコトブキシティを去った。
ちょっと問題起こしちゃったからな〜大丈夫かな…この先。



…………。
………。
……。



…そして、僕たちはやがて次の目的地『ソノオタウン』にやってくるのだった。


ヒカリ 「いやぁ〜、やっとついた! さすがに洞窟で野宿はデンジャーだったわ!」

コウキ 「ここがソノオタウンか…」

僕たちはついにソノオタウンにやってきた。
途中204番道路に『あれたぬけみち』を通ってソノオタウンにやってきたのだ。

ヒカリ 「さってと、早速目的の品を買ってこないと〜♪」

コウキ 「…目的の品って?」

ヒカリ 「うん? ああ、ポケモンを探す上で必要なものでね、ここでしか売っていないものがあるの」
ヒカリ 「『あまいミツ』っていうんだけどね、木に塗るとそれを好む野性のポケモンが寄ってくるんだ」

コウキ 「成る程」

木に蜜を塗ってポケモンを探すのか…。
…ということは木の上にもポケモンが?

ヒカリ 「ちょっと買い物に行ってくるからコウキ君はどこか適当にくつろいでて!」

ヒカリちゃんはそう言うと走ってどこかへ行ってしまう。
適当にくつろいでって…。

コウキ 「……」

僕は辺りを見渡す。
平和な町で花畑が町中広がっている。
のどかな町だなぁ〜…。

? 「ブイ?」

コウキ 「ブイ?」

突然、遠くから変な声が聞こえた。
見ると遠くで鼻をくんくんしているイタチのようなポケモンがいた。
何か目的があるようにも見えず興味のある物に近づき、興味のある物に触れている。
自分の頭を掻いたり、キョロキョロしたり、辺りを走り回ったりしていた。

コウキ 「…ポケモン図鑑ポケモン図鑑」

僕はポケモン図鑑探し、見つけるとセンサーをそのポケモンに向けた。


『ブイゼル 海イタチポケモン』
『高さ 0,7m 重さ 29,5kg』
『2本の尻尾をスクリューのように回して泳ぐ』
『もぐる時は浮き袋が萎む』


コウキ 「ブイゼルか…」

海イタチという割にはどうしてこんな町にいるんだろうか?
近くに巣でもあるのかな?

ブイゼル 「ブイ?」

コウキ 「ブイ?」

ブイゼルは突然、こっちに気づく。
ブイゼルは顔を顰(しか)めて首を傾げた。

コウキ 「……」

僕もブイゼルと同じように首を傾げた。

ブイゼル 「ブイ〜…」

コウキ 「ブイ?」

ブイゼル 「ブーイブイ!」

トテテテテテテッ!

コウキ 「……」

ブイゼルは一目散に205番道路方面に走った。
僕はその後を追う。
しかし、さすがにすばしっこく、すぐに姿は見えなくなっていた。


『205番道路』


コウキ 「…見失っちゃった」

僕は205番道路の綺麗な川のほとりの草むらにいた。
ブイゼルを追っていたんだけど見失ってしまったようだ。

ザワザワ…ザワザワ…。

コウキ 「……」

草むらは柔らかな風に吹かれてまるでひとつの生き物のようにみな1方向に傾いていた。
ポケモンの気配は感じない。
遠くで怯えた顔で僕を見るビッパ、パチリス。
さらに見てみぬ振りをして川辺でくつろぐ赤い色のカラナクシ。
僕は…ひとりぼっちだ。

ブイゼル 「ブイ…」

コウキ 「! …ブイゼル?」

突然、近くでブイゼルの声が聞こえた。
僕は辺りを見渡すがブイゼルの姿は見えない。

コウキ 「おかしいな…」

僕は周りは開けており、遠くまで見える。
近くにも遠くにもブイゼルの姿はない。
あるとすれば、近くに一本の木があるくらいだけど…。

コウキ 「木?」

僕は真上を見た。

ブイゼル 「ブイ」

コウキ 「…あ」

木の上で枝に乗りながら僕の顔を覗いているブイゼルがいた。
このブイゼル…僕に興味があるのかな…?

(ヒカリ 「『あまいミツ』っていうんだけどね、木に塗るとそれを好む野性のポケモンが寄ってくるんだ」)

コウキ (…と、言っていたけど僕は蜜なんて持っていないし)

第一ブイゼルが好んでいるかどうかも定かじゃないか。

コウキ「…『あまいミツ』はないけどビスケットならある…食べる?」

僕はバッグからビスケットの袋を取り出し、一枚とってブイゼルに差し出す。

ブイゼル 「ブイ? ブイブイ…」

ブイゼルはビスケットに興味があるのか、顔を近づけて鼻をクンクンさせた。
とりあえず興味はあるらしい。

コウキ 「食べる?」

僕はもう一度言った。

ブイゼル 「ブイ〜…ブイ」

パキ!

ビスケットが軽快に割れる音。
ブイゼルがビスケットを食べたみたいだった。

ブイゼル 「ブイブイ、ブイブイ」

と言いながら口をもぐもぐさせる。
僕は袋からもう一枚取り出す。


ブイゼル 「ブイ〜」

ブイゼルは両手でもう一枚のビスケットを手に取る。
そのまま口に運ぼうとするが…。

バキ…!

ブイゼル 「ブ…イィィ!?」

コウキ 「わ…!」

突然、ブイゼルが乗っていた枝が折れてしまう。
元々細い枝だったし、折れて当然なんだろうか…。
僕は落ちてきたブイゼルをキャッチした。

コウキ 「大丈夫?」

僕はブイゼルの安否を確認する。

ブイゼル 「ブイブイ、ブイブイ」

しかし、ブイゼルは特に気にせずビスケットを食べていた。

コウキ 「……」(汗・呆)

このブイゼルなんだか変…。
なんていうか、つかみ所がないというか…変な性格してる。

コウキ 「よいしょ」

ブイゼル 「ブイブイ、ブイブイ」

僕はブイゼルを地面に降ろした。
ブイゼルは器用に2本の足で立ち、両手でビスケットを持ったまま食べる。
特に美味しそうにしているわけではないが一心不乱だった。

ブイゼル 「ブイ〜」

コウキ 「もう一枚?」

ブイゼル 「ブイ」

ブイゼルはもう一枚欲しいらしかった。
僕はまた袋から一枚とりだしてブイゼルに渡した。

ブイゼル 「ブイ…ブイ〜…」

ブイゼルはビスケットを一枚もらうと今度はすぐに口には運ばずなにか悩んでいる。

ブイゼル 「ブイ」

パキン!

ブイゼルは突然、ビスケットを真っ二つに割った。

ブイゼル 「ブイ」

そしてブイゼルは割った半分を僕に差し出した。

コウキ 「僕に?」

ブイゼル 「ブ〜イ」

コクリとうなづく。

コウキ 「…ありがとう」

なんだか、奇妙だが僕はそれを受け取ってブイゼルの隣に座った。
僕はビスケットを口に運んで正面に流れる川を眺めた。

ブイゼル 「ブイブイ、ブイブイ」

ブイゼルは特に気にせずビスケットを食べていた。
すでに2枚半がブイゼルの腹に入った。

コウキ 「なんて平和な町だ…」

あまりにのどか過ぎる。
このブイゼル僕が怖くないのかな?
まるで気にする様子はない、というかビスケットしか目に入っていない?



…一方、『あまいミツ』を買いに行ったヒカリちゃんは?



ヒカリ 「おっかいもの♪ おっかいもの♪」

あたしは歌いながらスキップでお花畑に向かった。

ギンガ団員A 「おい、早くしようぜ」

ギンガ団員B 「そう急ぐなよ、いくぜ」

ヒカリ (あれって、ナナカマド博士にちょっかいかけていた…)
ヒカリ 「え〜と…なんだったっけ?」

なんて名乗ってたっけな?
まぁいいや、どうせどうでもいいし。

ヒカリ 「て、あいつらも花畑に向かっているし…」

嫌ねぇ…でも、花畑のおじさんしか『あまいミツ』は売ってくれないし…。
しょうがない、ちゃんと順番待ちしますか。
あたしはそう思うと例の男たちは無視してあたしも花畑に行く。
んが…。

おじさん 「なにするんだーっ!?」

ヒカリ 「はい!?」

いきなり悲鳴。
あたしはびっくりして素っ頓狂な声を上げた。
なによなによ、なんなのよ!?
あたしは急いで花畑に向かうのだった。

ギンガ団員A 「『あまいミツ』は我々ギンガ団が全ていただく!」

ギンガ団員B 「お前のものはギンガ団の物、ギンガ団の物もギンガ団の物なのだ!」

おじさん 「貴様ら何者なんだ!? 『あまいミツ』を全部奪って!」

ギンガ団員A 「はいはい! とりあえず身動きできないように!」

ギンガ団員B 「よし! さっさとずらかろうぜ!」

ギンガ団員A 「ああ!」

ヒカリ 「そうはいかんざき!」

ギンガ団員A 「誰だお前は!?」

あたしは今まさに犯行を行っていた二人組みの前に立ちはだかる。
よもや、目のまで犯罪が起きようとは…。
二人組みはなかなかの手際で『あまいミツ』を売るおじさんをロープで縛っていた。
そしてずらかろうとした所にあたしの出番。

ヒカリ 「あなたたち『あまいミツ』を根こそぎ奪って何をする気なの!?」

ギンガ団員A 「知れたこと! 『あまいミツ』を木に塗りつけて寄ってくるポケモン全てをゲットするのだ!」

ヒカリ 「だったらちゃんと金払いなさい! 金!」

ギンガ団員B 「うるさい! 貴様のような小娘一ひねりだ! いけ、ズバット!」

ギンガ団員A 「ケムッソいけ!」

ズバット 「ズバッ!」

ケムッソ 「ケムケム…」

二人組みはズバットとケムッソを出してくる。
見るからに弱そうだ。
けづやも悪い、トレーナーの性ね。

ヒカリ 「でなさい、ポッチャマ、コリンク!」

ポッチャマ 「チャマー!」
コリンク 「コリン!」

ギンガ団員A 「む! ポケモンを出してきたか!」

ギンガ団員B 「うむぅ…中々いいポケモンだ…」

ヒカリ 「あなたたちに勝ち目はないわよ、さっさとお縄になりなさい」

ギンガ団員B 「けっ! そんなもんやってみなければわからねぇだろ! ケムッソ…いと…!」

ヒカリ 「ポッチャマ『つつく』! コリンク『スパーク』!」

ポッチャマ 「チャマー!」

コリンク 「コッリーン!!」

ポッチャマはケムッソに『つつく』攻撃をして、それを見てコリンクが余ったズバットに電気を帯びたまま突撃する。

ズバット 「ズバーッ!?」
ケムッソ 「ケムムーッ!?」

ギンガ団員B 「…をはく…って、命令する前にやられたー!?」

ギンガ団員A 「う〜む、強い…」

ズバットとケムッソは一撃でダウンする。
弱いな〜、なんだか悲しくなってくる。

ギンガ団員A 「むむ、参ったな…負けてしまってはぐぅの音もでない…」

ギンガ団員B 「くぅ…しかし我々の作戦はまだ終わったわけではない!」

ヒカリ 「まだ何か悪巧みしているわけ?」

ギンガ団員B 「馬鹿め! 今頃『たにまのはつでんしょ』で我々の計画は進んでいるのだ!」

ヒカリ 「へぇ? なにやっているのよ?」

ギンガ団員B 「あそこには珍しいポケモンが飛来するのだ! それを根こそぎ我々がいただくのだ!」

ギンガ団員A 「て、お前さっきからなにペラペラと組織の作戦を教えているんだよ!?」

ギンガ団員B 「はっ!? しまった!?」

ヒカリ 「マヌケね…」

ギンガ団員B 「ふ、ふん! だが知ったところでどうする!? 研究所の前には我々の仲間も見張っているし、中に入るにはこの鍵が必要なのだ!」

ヒカリ 「あ、そう!」

あたしはそれを聞くとわざわざ取り出してくれた鍵をパチる。
つくづくマヌケだわ。

ギンガ団員A 「お前なにやっているんだよ!!」

ギンガ団員B 「しまった! つい!」

ヒカリ 「さて…後は『あまいミツ』をこちらに渡してもらおうかしら?」

あたしは笑い目で威嚇しながらそう言った。

ギンガ団員A 「く! これ以上ボロを出す前に退散だ!」

ギンガ団員B 「覚えていろ! この借り必ず返すぞ!」

二人組みは『あまいミツ』を置いていくと足早に去っていった。

ヒカリ 「大丈夫おじさん?」

あたしは羽交い絞めにされていたおじさんを助ける。

おじさん 「助かったよお嬢ちゃん、お礼にこれあげよう!」

おじさんはそう言って『あまいミツ』の入ったビンを渡してくる。
ビンはジャムを入れるようなビンであり、これ一個で木一本分になる。

ヒカリ 「ありがと、おじさん、また買いに来るわね」

あたしはそれを受け取るとポケモンをボールに戻して『たにまのはつでんしょ』に向かうことにした。
なんか面倒事になっているみたいよね〜。



…………。



コウキ 「――でね、僕はヒカリちゃんって女の子とポケモン調査をしているの」

ブイゼル 「ブイブイ、ブイブイ」

コウキ 「……」

ブイゼル 「ブイブイ、ブイブイ」

僕はブイゼルに独り言のように自分の話をしていた。
ブイゼルはただただビスケットを食べていた。

ブイゼル 「ブイ?」

ブイゼルは僕の話し声が止まると、気になったのか顔を上げて僕の顔を覗いた。
…聞いていたのか?

ブイゼル 「ブイブイ…ブイ? クンクン」

ブイゼルは突然鼻をクンクンさせた。
スッと立ち上がると周囲をうかがう。

ブイゼル 「ブイ? ブイー」

コウキ 「あ、ちょっとどこ行くの?」

ブイゼルは突然走り出す。
遠くに建物が見える。
周囲には風力発電があった。
ここら周辺は谷間になっており、強い風が吹く、あの建物はなんなんだろうか?

コウキ 「待ってよブイゼルー!」

僕もブイゼルの後を追った。



コウキ 「はぁ…はぁ…、ブ、ブイゼル?」

僕は走ってブイゼル追いかけて、建物の前に来た。

ギンガ団員C 「なんだこいつ?」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ、ブ〜イブイ」

ギンガ団員C 「? ?????」

ブイゼル 「クンクン、ブイ」

ギンガ団員C 「ええい、訳の分からないやつめ! どっかいけ!」

ゲシ!

ブイゼル 「ブィィー!?」

コウキ 「あ! やめろ!」

突然、建物の前で立っていたコトブキシティでナナカマド博士に絡んでいた服装の男はブイゼルを蹴った。
僕はそれを見て男の前に立つ。

ギンガ団員C 「なんだお前は!?」

コウキ 「ポケモンをいじめるなんて最低です!」

ギンガ団員C 「うるさい! お前も同じ目にあわせてやる! いけズバット!」

ズバット 「ズバッ!」

コウキ 「…わかりました、そっちがその気なら!」

僕はボールを取り出してハヤシガメを出そうとする。
しかし…。

ブイゼル 「ブイブイーッ!」

ズバット 「ズバーッ!?」

ドカァ!

コウキ 「ブイゼル!?」

ブイゼルは突然、ズバットに体から当たる。
『たいあたり』とは違う。
かなりの速さでの体当たりだった。

コウキ (動きがムックルの使う『でんこうせっか』に似ていたけどブイゼルも使えるのかな…?)

ギンガ団員C 「貴様! いい度胸だ! ズバット『ちょうおんぱ』!」

ズバット 「ズバー!」

ズバットは口から『ちょうおんぱ』を放つ。
あの技は食らうと混乱状態になってしまう。

コウキ 「ブイゼルあぶない!」

ブイゼル 「ブーイー!!」

ビュオン! ズパァン!

ズバット 「ズバー!」

コウキ 「『ちょうおんぱ』を弾いた!?」

ブイゼルは毛を逆立てると、口から何か衝撃波のような物を放ってズバットを攻撃する。
威力はあまり高くなさそうだがズバットの『ちょうおんぱ』を見事にかき消した。

ギンガ団員C 「ちっ! ブイゼルの『ソニックブーム』か! 野生のくせに生意気な!」
ギンガ団員C 「ズバット! 『かみつく』だ!」

ズバット 「ズバー!」

ブイゼル 「ブイィ!」

ズバットはくるくるとブイゼルの上を飛び回るりブイゼルを翻弄しようとする。
しかし、ブイゼルは素早く地を走り逆にズバットを翻弄する。

コウキ (素早い! 空を飛ぶズバットを軽くスピードだけで翻弄している!)

どうやらブイゼルのスピードはズバットのそれを一回り上を行っているようだった。

ブイゼル 「ブーイー!」

バシャァン!!

ズバット 「ズバーッ!?」

とどめといわんばかりにブイゼルは口から『みずでっぽう』を放ってズバットを地に落とす。
ダメージも溜まってズバットはダウンした。

ギンガ団員C 「なんてこった! 野生のポケモンごときに負けてしまった!」

コウキ 「ブイゼルを馬鹿にするからです!」

ギンガ団員C 「く…まぁいい、この俺がやられてもこの扉が開くことはない…」
ギンガ団員C 「なぜなら中に入って内側から鍵をかけるからさ! それではさらば!」

そう言うと男は建物の中に入った。

コウキ 「大丈夫、ブイゼル?」

ブイゼル 「ブイブイ」

ブイゼルはまるで大丈夫と言うように首を縦に振った。

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ」

コウキ 「扉? 建物?」

ブイゼルはさっきまであの人が立っていた後ろの扉を叩いた。

ガチャガチャ!

コウキ 「…とはいえ、鍵は閉められたし…」

ブイゼル 「ブイ〜…」

ブイゼルは僕を軽蔑するように首を横に振った。
僕って役立たず?

コウキ 「う〜ん…ブイゼルは中に入りたいの?」

ブイゼル 「ブイブイ、ブ〜イブイ」

…入りたいみたいだ。
でも、扉は鍵がかかっているし…。

コウキ 「困ったな〜…」

僕は扉の前で立ち往生する。
そんなことしていると…。

ヒカリ 「あれ〜? コウキ君なんでこんなところにいるの?」

コウキ 「ヒカリちゃん?」

ブイゼル 「ブイ?」

なんと、突然ヒカリちゃんが現れる。
どうしてここに?

ヒカリ 「…ここが『たにまのはつでんしょ』ね、わりと普通に見えるけど…」
ヒカリ 「あ、それよりコウキ君、ここは危険だから帰ったほうがいいわよ」

コウキ 「え? 危険って…」

ヒカリ 「なんだか、ギンガ団とかいう訳の分からない組織がここを占拠しているらしいわ」

コウキ 「ギンガ団…て、さっきの宇宙服みたいな服着た人か…」

ヒカリ 「あれ? もしかしてコウキ君も会ったの?」

コウキ 「うん、一応、でも中に入って鍵を閉められちゃって」

ヒカリ 「あれ〜? てことは倒しちゃったの? て、まぁあんまり強い組織じゃないみたいだしコウキ君なら余裕か」

コウキ (倒したのブイゼルだけど…)

僕、何もしてないし。

ブイゼル 「ブイ〜? ブイブイ!」

ヒカリ 「あれ? この子は?」

コウキ 「あ、えと…ブイゼル、偶然知り合ったの」

ブイゼル 「ブイ…ブイブイ〜」

コウキ 「え? なに? ブイゼルじゃない?」

ブイゼルは僕の足をぽんぽんと叩くと首を振った。

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ」

コウキ 「ブイゼルさんって呼べばいいの?」

ブイゼル 「ブイブイ」

ブイゼルは首を縦に振る。

コウキ 「えと、つまりブイゼルさんとは偶然出会ったわけで」

ヒカリ 「なんだか奇妙な光景ねぇ〜」
ヒカリ 「まぁ、いいや、ほらどいてどいて、鍵あけるから」

ヒカリちゃんはそういうと鍵を取り出しそれで扉の錠を開いた。
て、なんで持っているの?

コウキ 「ヒカリちゃん…なんで…」

ヒカリ 「詮索は無用よ、コウキ君、はい開いた〜♪」

ガチャリ。

ヒカリちゃんはあっという間に扉の鍵を開けた。
これで中に入れる。

ヒカリ 「さて、中は〜?」

ブイゼル 「ブイブイ〜」

ブイゼルさんとヒカリちゃんは扉を開けると真っ先に中に入った。
僕もその少し後ろをついて入る。

ギンガ団C 「げ! 中に入ってきたし! しかも増えてる!」
ギンガ団C 「くそ! 仕方ない幹部に報告だーっ!」

そう言って男は建物の奥へと向かっていった。

ヒカリ 「なんなの…あれ?」

コウキ 「さぁ?」

ブイゼル 「ブイブイ〜」

ヒカリ 「まぁ、とりあえず幹部っていうのがいるらしいわね」
ヒカリ 「まぁしたっぱがあれだけ弱いと幹部もどうせ大したことないでしょうけど」

? 「それは聞き捨てならないわね…」

コウキ 「!?」

ブイゼル 「ブイ!」

突然、建物の奥から一人の女性が現れた。
他の人たち同様の宇宙服のような服に身を包み、赤いショートヘアーの女性だった。
まだ少し若いようだけど…。

コウキ (この目…なにか違う!)

僕はこの幹部と思われる女性の目を見て少し違和感を覚えた。
恐怖と…快感…。

コウキ 「う…!?」

突然嘔吐感に襲われる。
気持ち悪い…。

ヒカリ 「ちょ、コウキ君大丈夫!?」

? 「あらあら、大丈夫かしら?」

コウキ 「だ、大丈夫…そ、それより」

ヒカリ 「あ、そ、そうだった! あなたが例のなんとか団の幹部!?」

? 「ギンガ団よ、そうあたしはギンガ団幹部のひとりマーズよ」
マーズ 「あたしたちは宇宙を創るためのエネルギーが必要なの、それでここでお仕事をさせてもらっているのよね」
マーズ 「…でも、悲しいことにあたしたちギンガ団の考えを理解してくれる人は少ないのよね」

ヒカリ 「そんなの当然でしょ…宇宙を創るなんて訳の分からないことを…」

マーズ 「…あなたもそのひとりみたいね」

ヒカリ 「とにかく! ここで悪事を働いているのは事実! 出て行ってもらうわよ!?」

マーズ 「ふふ、やれるものならね…でなさいブニャット、ズバット」

ブニャット 「ブニャー!」

ズバット 「ズバッ!」

ヒカリ 「進化形! だったら! ポッチャマ、コリンク!」

ポッチャマ 「ポッチャマー!」

コリンク 「コリン!」

ヒカリちゃんと幹部のマーズはポケモンを繰り出す。
ヒカリちゃんの険しい顔とは対照的にマーズは落ち着いてむしろうすら笑っていた。

マーズ 「いいポケモンね、育てもいいわ、あたしに頂戴」

ヒカリ 「誰があなたなんかに!」

マーズ 「ふふ、残念ねぇ、ギンガ団が宇宙を創るためには大量のポケモンもいるのよね…そうだ、いっそのことあなたもギンガ団に入る?」

ヒカリ 「お断りします!」

マーズ 「再び残念、それじゃそろそろ消えて…もらいましょうか!」

ヒカリ 「! ポッチャマ、ブニャットに『バブルこうせん』!」

ポッチャマ 「ポッチャマー!」

マーズ 「ズバット、『ちょうおんぱ』よ!」

落ち着いた雰囲気は一転して激しい激流のように変わるマーズさん。
ヒカリちゃんはそれに圧されてか先制攻撃をしてしまった。
まずい…ヒカリちゃんより相手は格上だ。
このままだと…やられる!

ポッチャマ 「チャマ!? チャマチャマ〜…???」

ポッチャマは『ちょうおんぱ』を受けてその場でくるくる回転し始めた。
混乱したんだ、逆にブニャットはその太った胴体とは裏腹に俊敏に動いて『バブルこうせん』を回避した。

ヒカリ 「まずい! コリンク、ポッチャマのえん…!」

マーズ 「ブニャット、コリンクに『さいみんじゅつ』!」

ブニャット 「ニャー!」

コリンク 「…! ZZZ」

ヒカリ 「そんな! コリンクまで!」

マーズ 「あなた命令が遅すぎるわよ、それじゃ後手でも先手がとれちゃうわ」

ヒカリ 「うう…!?」

マーズ 「さぁ、フィナーレよ、しらけちゃったわ。ブニャット、ポッチャマに『ひっかく』」

ブニャット 「ブニャー!」

ザシュウ!

ポッチャマ 「チャ、チャマー!?」

ヒカリ 「ポッチャマー!?」

気がついたら再びまた口調が変わる(元に戻る)マーズさん。
ヒカリちゃんはポケモン2匹を実質失った。

マーズ 「まだ戦えるの? だったらもう少し楽しめるかしら?」

明らかに挑発するマーズさん。
しかし、ヒカリちゃんはもう後がない。

コウキ 「く…ぼ、僕が相手をする!」

マーズ 「あら? 大丈夫なの? 体調悪そうだけど?」

コウキ 「…大丈夫です」

ポン。

ブイゼル 「ブイブイ」

コウキ 「ブイゼルさん?」

ブイゼルさんは僕のは足にぽんと手を置いた。
本当は肩に置きたかったんだろうけど身長が足りないから足にしたようだ。

ブイゼル 「ブイブイ」

コウキ 「え? 無茶をするなって?」

ブイゼル 「ブイ、ブイー!」

ブイゼルはそう言って首を縦に振るとマーズさんの前で四つん這いになり、体勢を低くして戦闘態勢をとった。

マーズ 「あら、可愛いナイト様ね、でもあなたも無茶しないほうがいいわよ」
マーズ 「野生のあなたがあたしに勝つのは難しいわよ?」

ヒカリ 「え? 野生…!?」

コウキ 「…!」

マーズ 「ふふ、なぜゲットしないの? ポケモンはトレーナーと力を合わせることで大きな力を発揮するのよ」
マーズ 「折角いいポケモンなのにもったいないわねぇ…」

ブイゼル 「ブイ…」

ブイゼルさんは少し心配そうな顔で後ろを振り返ったが、すぐにまたマーズさんを睨んだ。

コウキ 「…僕は、ポケモンに嫌われている」
コウキ 「だから、本当に絆を築けた時しか僕にはポケモンと友達にはなれない…」
コウキ 「ブイゼルさんはまだ、少し前に知り合っただけだから…まだ僕にはゲットする資格はない」

マーズ 「…あなた可愛いわね、嫌いじゃないよ坊や、名前は?」

コウキ 「…コウキです」

マーズ 「ふふ、コウキ君あなたはそのブイゼルの側にいる資格がある」
マーズ 「でも、それを放棄するのは卑怯よ?」

コウキ 「放棄…?」

マーズ 「あたしが今ここでその野生のブイゼルをゲットするのは簡単よ、ゲットにポケモンの意思は関係ないんだから」
マーズ 「でも、それでゲットしたからといって最高の関係には決してなりえない」
マーズ 「あなたたちのように互いを信用し、絆が構築されて始めて最高のベストパートナーになるわ」
マーズ 「ブイゼル…あなたはどう思っているの?」

ブイゼル 「…ブイ、ブイブイ」

ブイゼルは僕の方を振り返ると一言鳴いて、またマーズさんの方を見た。

コウキ 「…僕次第ですか、ブイゼルさん」

ブイゼル 「…ブイ」

マーズ 「ふふ、どうするの?」

コウキ 「…正直僕にブイゼルさんをゲットする資格があるのかまだわからない…」
コウキ 「でも、僕たちは友達になれると思う! ブイゼルさん、僕に力を貸して!」

ブイゼル 「ブイー!!」

マーズ 「ふふ、いい目ね、可愛いわよあなた」




ポケットモンスターパール編 第5話 「ベストパートナー」 完







おまけ

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