ポケットモンスター パール編




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おまけ





『ハクタイジム』

『シンオウ地方に点在するジムである』

『ジムリーダーはナタネ、草タイプの使い手だ』

『多くの草ポケモンを所持し、真正面からはぶつからないテクニカルな戦いをする』

『もし、勝てるのならフォレストバッジを得ることができるのだ』

『ナタネ自身人当たりもよく、このジムへの挑戦者はあとを絶たない』


−ハクタイジムの説明−





ヒカリ 「やっと着きましたな〜ハクタイシティ!」

コウキ 「うん、なんだか大きい割に静かな街だね?」

ヒカリ 「そうね…でもジム戦に街の規模は関係なし!」
ヒカリ 「いざ、ゆかん! ハクタイジム!」

コウキ 「…戦うの僕だけどね」







第9話 『対決ナタネ! 見えないバトル!』




『ここはハクタイシティ、昔を今に繋ぐ街』


ヒカリ 「えっとハクタイジムは…と、あ、あれね!」

僕たちはまずポケモンセンターで一休みするとすぐにハクタイジムを探した。
大きな建物で緑色の屋根が特徴的だった。


『ハクタイシティ ポケモンジム リーダー ナタネ 生える緑のポケモン使い』


コウキ (ナタネ…生える緑のポケモン使いか…)

とすると、使用するタイプは草タイプかな?
たしか相性がいいのは炎タイプや飛行タイプだったな…。
ヤミカラスが一応有利だけど…。

コウキ (ジム戦で言うこと聞いてくれるかな…?)

物凄く不安だ。
なんせゲットしてから未だにボールから出すたびに頭を突付かれる始末。
ヒカリちゃんもいつかはげるんじゃないかって心配していたし…。

ヒカリ 「とりあえずたのもー!」

ガチャ。

とりあえず僕たちはドアを開けてジムの中に入るのだった。

ヒカリ 「て、なにこれ?」

コウキ 「も、森?」

ジムの中に入るといきなり森だった。
まるでハクタイの森のように視界が悪い。
ただ、天井にはライトがあるのでハクタイの森と違って明るい。
これがジム?

? 「あ、お客さーん? いらっしゃーい、ようこそハクタイジムへ♪」

突然、草むらを掻き分けて一人の女性が現れる。
茶色いショートヘアーが特徴的で緑色のストールに茶色い短パンを履いている。
年上かな? 少なくとも僕やヒカリちゃんよりは年上だと思う。

コウキ 「あの、ジム戦を申し込みたいんですけど…」

? 「え? ジム戦? いいよいいよ! いつでも受けてたつわ!」
? 「あ、自己紹介が遅れたわね、あたしはナタネ、このハクタイジムのジムリーダーよ!」

ヒカリ 「あたしはヒカリです」

コウキ 「コウキです、よろしくお願いします」

ナタネ 「うん、よろしく! で、どっちがジム戦するの?」

コウキ 「あ、僕です」

ナタネ 「ふ〜ん、まぁいいやよろしくね!」
ナタネ 「一応ジムのルールの説明するわね?」
ナタネ 「使用ポケモンは3匹、道具の使用はなし、後は他のジムと同じルール」
ナタネ 「ジム戦初めてじゃないでしょ? 大丈夫だよね?」

コウキ 「大丈夫です」

ヒカリ 「あの、しつもーん!」

ナタネ 「ん? なに?」

突然ヒカリちゃんが手を上げて質問をする。

ヒカリ 「ちなみにこの部屋はなんですか? 何で室内に森が?」

ナタネ 「なにって、これがハクタイジムのバトルフィールドだけど?」

と、ナタネさんは事も無げに言うのだった。

ヒカリ 「えー!? これが!?」

コウキ 「…バトルフィールドって、視界が…」

はっきり言って悪い。
これじゃ、まともに相手を捕らえられない。

ナタネ 「一応、わかっていると思うけどトレーナーはトレーナーサイドから出ちゃだめよ?」

コウキ 「……」

つまり、見える視界は限られるというわけか。
どれだけポケモンと連携を取れるかが鍵だな…。

ナタネ 「じゃ、ちょっと待っててね、審判呼んでくるから」

コウキ 「はい」

ナタネさんはそう言って鬱蒼と生い茂る森の中に消えていった。
ここ、トレーナーサイドからは相手ジムリーダーを確認できないんだな…。
それは逆もしかりか…。

ヒカリ 「これがハクタイジム…想像以上に厄介ね…」

コウキ 「うん…」

ヒョウタさんのクロガネジムは少なくとも自分の立っている場所からフィールド全体を把握できた。
でも、ここはわずか30%ほどしか把握はできない。
こんな状態でまともに戦えるのか?

やがて、勝つ算段もつかないまま状況はジム戦へ移行する。



…………。



審判 「これより、ハクタイジム、ジム戦を行います!」
審判 「使用ポケモンは3匹、ポケモンの途中交代は挑戦者のみ有効!」
審判 「道具の使用はなしとします! 先制はジムリーダー!」
審判 「ジムリーダー、最初のポケモンを!」

ナタネ 「でておいで! チェリンボ!」

チェリンボ 「チェリー!」

コウキ (チェリンボ? こう視界が悪かったら図鑑で参照もできないよ…)

審判 「チャレンジャー、最初のポケモンを!」

コウキ 「でてきて! ハヤシガメ!」

ハヤシガメ 「ガメー!」

僕は先発はハヤシガメに任せる。
ブイさんは相性が悪いし、ヤミカラスに任せるには不安がある。
おなじ草タイプならそう不利ってことはないと思う。
問題は相手は草タイプのプロフェッショナルということか…。

ナタネ 「ふーん、そうか! まさか草タイプでくるとは思わなんだ! さすがに普通草ジムに草タイプ出してくることはないからね!」

コウキ (結果オーライ?)

ナタネ 「ああん♪ 出来ればこの眼でその勇姿を見てみたいけど、しかたないね!」
ナタネ 「チェリンボ、『せいちょう』!」

チェリンボ 「チェリー!」

ヒカリ 「て! こんな状態だったら妨害も出来ないじゃない! コウキ君なんとかしないと!」

コウキ 「ハ、ハヤシガメ相手を探して!」

ナタネ 「チェリンボ、うまく隠れるのよ?」

ガサ! ガサガサ!

コウキ (うう…! どうする!? どうすればいいの!?)

少なくとも、このままナタネさんとかくれんぼをしていたら確実に負ける!
どうしよう!?

コウキ 「ええい! だったらこっちは『のろい』だ!」

ハヤシガメ 「ガメー!」

こっちもとりあえず能力を上げる。

ナタネ 「『のろい』か〜、でもそれって素早さ下がるしねぇ」

そう、あの技は攻撃と防御を上げる代わりに素早さが下がる技だ。
これを使う以上完璧に回避は捨てざるをえない。

ナタネ 「う〜む、じゃそろそろ次の手に入ろうかね? チェリンボ『くさぶえ』!」

チェリンボ 「チェ〜リ〜リ〜♪」

コウキ 「ええっ!? そ、その技って…!?」

ヒカリ 「ダメー! ハヤシガメ聞いちゃだめー!!」

ハヤシガメ 「ガ、ガメ〜…」

ハヤシガメはその場で眠りについてしまう。
しまったぁ…状態異常技…この状態では回避も妨害もできない…。

ナタネ 「じゃ、そろそろ攻撃に移るよー!?」
ナタネ 「チェリンボ、『マジカルリーフ』!」

チェリンボ 「チェリー!」

ババババッ!!

コウキ (くっ! 全方位から攻撃が飛んでくる…! これじゃ場所を特定できない!)

チェリンボの技は完璧にこのバトルフィールドに対応している。
いくら効果は今ひとつでも浴びされ続ければ危険だ…!

コウキ 「くっ! もどれハヤシガメ!」

能力補正も消えるが、このまま戦うよりはましのはずだ!

コウキ 「でてきて! ブイさん!」

ブイゼル 「ブイー!」

僕はブイさんを2匹目に出す。

ナタネ 「ブイさん…? ああ、ブイゼルのことか! ニックネームで呼ばれるとわかりにくいよね〜…姿見えないし」
ナタネ 「でも、今度は水タイプ…つくづく予想外だねぇ…」

コウキ (ヤミカラスを出す気になれなかっただけです…)

ぶっちゃけ好きでブイさんを出したわけじゃないです。
頭数なんです…すいません…。

ナタネ 「まぁいいや! チェリンボ、もう一度『くさぶえ』!」

コウキ 「ブイさん! このバトル任せました!」

ブイゼル 「ブイ! ブイブイー!」

チェリンボ 「チェ〜リ〜リ〜…リィ!?」

ナタネ 「え!? な、なになに!? 何が起こっているの!? ど、どうしたのチェリンボ!?」

コウキ 「ナイス! ブイさん!」

ブイさんは瞬時に声を聞き分け、チェリンボに『アクアジェット』で突っ込む。
そのまま技が成立する前にチェリンボに一撃を与えた。

ナタネ 「く! チェリンボ、『マジカルリーフ』よ!」

チェリンボ 「チェリー!」

ブイゼル 「ブーイブイブイブイー!」

バババババッ!

両者自分のポケモンが確認できない。
チェリンボに突撃をかけた以上もう僕にもブイさんがどこにいるのかはわからない。
ただ、ブイさんはなにかをしているようだ。
場には『マジカルリーフ』が飛び交う音しかしない。

ブイゼル「ブイー!」

チェリンボ 「チェリー!?」

ナタネ 「チェリンボ!?」

ズサササァッ!!

何かが吹っ飛ばされ地面をすれる音。
多分チェリンボだ!
チェリンボがブイさんにやられたんだ!

コウキ 「ブイさん! 『ソニックブーム』!」

ブイゼル 「ブイー!!」

ヒュウッ! バシィ!!

チェリンボ 「チェリー!?」

ナタネ 「ああっ! チェリンボ!?」

『ソニックブーム』が直撃する音。
ダメージは!?

審判 「チェリンボ、戦闘不能!」

ナタネ 「うう…もどってチェリンボ」
ナタネ 「あの、ブイゼルやるわね…撹乱は無理か」
ナタネ 「だったら正攻法でいくわよ! 出てきてナエトル!」

コウキ (ナエトル…ナタネさんも使うんだ…)

ナエトルのことならよくわかっている。
使う技は『はっぱカッター』や『すいとる』、あとは『からにこもる』とかだ。

コウキ (ブイさんはあまり打たれづよくない、一発受けたらそれでアウトだ…)
コウキ 「ブイさん、戻ってきて!」

ブイゼル 「ブイ!」

ナタネ 「ナエトル、『はっぱカッター』!」

ナエトル 「ナエー!」

ブイさんはまっすぐにこちらに戻ってくる。
しかし、後ろからはナエトルの『はっぱカッター』が襲ってきた。

コウキ 「間に合って…! 戻ってブイさん!」

僕はブイさんが見えると同時にブイさんをボールに戻した。
なんとか、間に合ったか…。

ナタネ 「ヒット音がしなかったところ、どうやら技は成立しなかったか」

コウキ (このフィールドあまり深入りしすぎるとポケモンをボールに戻せなくなる)

通常なら別に端までだってボールの射程は届くけど、こう前方にさえぎる物が多いとすぐ側までこないことには戻せない。
加えて、相手側に行くと全く自分のポケモンの姿は確認できず、トレーナーにとっては暗闇の中手探りで戦うような物だ。
ただ、それはナタネさんにも言える。
ナタネさんも今自分のポケモンがどんな状態なのかわからなくなる。
このポケモンを出したらそうせざるを得ないはず!

コウキ 「でてきて、ハヤシガメ!」

ハヤシガメ 「ガメ〜…」

僕は『眠り』状態のハヤシガメを自分の2メートルほど正面に出した。
『はっぱカッター』じゃハヤシガメにはほとんどダメージは与えられない。
でも、『かみつく』や『たいあたり』はこっち側までナエトルを送らないといけない。
その先は、ナタネさんにとっての暗闇。
どうする!?

ナタネ (く…『はっぱカッター』で急所狙いでもほとんどダメージは与えられないでしょうね…)
ナタネ (第一こちら側からじゃハヤシガメの位置もわからないし、遠距離攻撃は出来ないか…)
ナタネ 「怖い賭けね…ナエトル、『かみつく』よ!」

ナエトル 「ナエー!」

ハヤシガメ 「ガメ〜…ZZZ」

ナタネさんは覚悟を決めてナエトルをこちら側に送ってくる。
そのままナエトルはハヤシガメに噛み付くのだった。

コウキ 「ハヤシガメ、起きて!」

ハヤシガメ 「! ガ、ガメッ!?」

ハヤシガメは目を覚まし、噛み付いているナエトルを慌ててはがした。

コウキ 「ハヤシガメ、『のろい』!」

ハヤシガメ 「ガメェ…!」

ナタネ 「やらせるしかないわね…ナエトル『かみつく』!」

ナエトル 「ナエー!」

コウキ 「まだまだ! もう一度『のろい』!」

ナエトルはそのまま再びハヤシガメに噛み付いてくる。
しかし、ハヤシガメはそのまま更に能力を上げる。
『のろい』は防御力も上げる技だ。
物理攻撃ではもうほとんどダメージは受けない!

コウキ 「ハヤシガメ、『かみつく』!」

ハヤシガメ 「ガーメ!」

ナエトル 「ナエー!?」

ハヤシガメはナエトルの体に噛み付いた。
既に攻撃力もかなり上がっている。
素早さは下がったけど、こちら側なら問題ない!

ハヤシガメ 「ガメー!!」

ブォン!

ハヤシガメはそのままナエトルをナタネさん側に投げ飛ばした。

審判 「ナエトル、戦闘不能!」

バトルフィールドの2階から全体を見渡す審判がナエトルのダウンを宣言する。
これでリーチだ!
こちらはまだ誰も倒れてはいない、これなら…!

ナタネ 「戻ってナエトル…」
ナタネ 「…どうやら、少し侮りすぎたみたい…草タイプや水タイプなんて想定外だもんね…でも、これで最後」
ナタネ 「こっちも手加減なく行くよ!? 出てきてロズレイド!」

ロズレイド 「ロズー」

コウキ 「ロズレイド?」

ヒカリ (!? まさか、いきなり最終進化形!? レベルが跳ね上がりすぎだわ!)
ヒカリ (コウキ君…頑張って!)

コウキ (ロズレイド…一体どんなポケモンなんだ?)

ナタネ 「ロズレイド、『どくばり』よ!」

コウキ 「毒技!? ハヤシガメ飛んできた方向に『はっぱカッター』!」

ロズレイド 「ロズー!」

ヒュヒュヒュヒュ!

ハヤシガメ 「!? ガメー!!」

正面から『どくばり』がハヤシガメを襲った。
動きの鈍くなったハヤシガメはそのまま直撃を受けるけど、すぐに『はっぱカッター』をその方角に放つ。

バッ!

コウキ 「!? 上っ!?」

ロズレイド 「ローズー!」

ヒュヒュヒュ!!

ロズレイドは突然フィールドを飛ぶように僕たちの前に現れる。
そのまま宙返りしながらロズレイドは的確にハヤシガメに『どくばり』を叩き込んだ。

ハヤシガメ 「ガ、ガメェ…」

ドサァ!

コウキ 「ハヤシガメ!?」

審判 「ハヤシガメ、戦闘不能!」

コウキ 「く…もどってハヤシガメ」

僕はハヤシガメをボールに戻す。
そして、正面にスタッと着地したポケモンを見た。

ロズレイド 「……」

両手に薔薇が生えたような人型のポケモン…。
僕は図鑑を開いてロズレイドを見る。

『ロズレイド ブーケポケモン』
『高さ 0,9m 重さ 14,5kg』
『ダンサーのような身のこなしで毒のトゲがびっしりと並んだ鞭を操り攻撃する』

コウキ (鞭…?)

図鑑の説明では鞭を使うというが鞭のようなものはそのポケモンには見当たらない。
一体どういうことだろうか?

審判 「チャレンジャー、次のポケモンを!」

コウキ 「あ、ハイ! お願いしますブイさん!」

ブイゼル 「ブイブイー!」

僕はもう一度ブイさんを出す。
さっきに動きを見てもロズレイドはかなり速い。
正直ブイさんより速いだろう。
それに草タイプ、相性は悪い。
でも、ナタネさんには見えないこちら側でなら有利に戦えるはず!

ナタネ 「ロズレイド、あなたに任せるわ!」

ロズレイド 「ロズ!」

コウキ 「!?」

ヒカリ (ちゃあ…そうきたか、たしかにこの場合トレーナーはポケモンにとってマイナスになるからね…)

まさか、ポケモンに行動を委任するとは思わなかった。
でも、僕もブイさんにやったように相手側で戦わせる場合はこれが一番有効…。
でも、よほどそのポケモンを信頼していないとそんなことできない。

コウキ (つまり…ナタネさんはそれだけロズレイドを信頼しているってこと!?)

ロズレイド 「ローズー!」

コウキ 「『どくばり』!? 避けて!」

ブイゼル 「ブイー!」

ブイさんは横に動きロズレイドの攻撃を回避する。
『どくばり』は直線的な攻撃だから回避はしやすい。

ロズレイド 「ローズ!」

コウキ (『マジカルリーフ』! こっちはどうする!?)

今度はロズレイドは『マジカルリーフ』を放ってくる。
規則性のない葉っぱの動きは回避不可能に思えた。

コウキ 「せめて『でんこうせっか』! 逃げて!」

ブイゼル 「ブーイ!」

ブイゼルは真横に『でんこうせっか』で走り抜ける。
スピードは『マジカルリーフ』の攻撃より速い、だけどこの攻撃はブイさんにホーミングして襲ってくる。

ブイゼル 「ブイ!」

コウキ 「!? ブイさん!?」

ブイさんは突然反転して『マジカルリーフ』の中に飛び込む。

ヒカリ 「まさか弾幕避け!? 無茶苦茶よ!?」

なんと、ブイさんは『でんこうせっか』のスピード維持したまま『マジカルリーフ』を紙一重で回避しながらロズレイドに接近を試みた。

ブイゼル 「ブイー!」

コウキ 「あと1メートル! いける!?」

ロズレイド 「…ロズ」

コウキ (!? 笑った!? 今…ロズレイドが…笑った…?)

たしかに今、ロズレイドの口元が緩んだ。
楽しんでいるのか…?

ブイゼル 「ブイー!」

ブイさんはそのままロズレイドの攻撃を捌ききり、残りロズレイドだけを捕らえる。

ブイゼル 「ブイー! …ブイッ!?」

ドサァ!!

コウキ 「!? ブイさん!?」

突然、ブイさんがあと一歩でロズレイドに手が届きそうというところで前のめりに倒れてしまう。

ヒカリ 「なに!? な、なにが起こったの!?」

コウキ 「!? あれは…草?」

なんとブイさんの足には細長い草が絡みついていた。
まさか、アレに引っかかって倒れたのか?

ロズレイド 「ロズー!」

バババババッ!

ブイゼル 「ブ、ブイーッ!?」

コウキ 「ブイさん!」

ブイさんはロズレイドの『はっぱカッター』を受けて吹き飛ばされる。
至近距離からの『はっぱカッター』…耐えられない…。

審判 「ブイゼル、戦闘不能!」

コウキ 「…もどって、ブイさん」

僕はブイさんをボールに戻す。
これで残ったのはヤミカラスだけ…。

ヒカリ (そんな…ここまでかなり有利に進めてきたのに…ロズレイド一匹にコウキ君が完膚なきまでにやられている…)
ヒカリ 「くっ! コウキ君ファイト! 気持ちだけでも勝ちに向かって!」

コウキ 「! ヒカリちゃん…」

後ろの観客席からヒカリちゃんが檄を飛ばしてくる。

コウキ (そうだ…せめて気持ちだけは勝たないと…!)

とはいえ、これまでロズレイドに圧倒的バトルで2体やられた。
残りは相性は良いとはいえ、決して仲の良くないヤミカラス。
相手はまだ一撃も被っていない。
勝てるの…?

審判 「チャレンジャー、早く最後のポケモンを!」

審判はそうせかしてくる。
この勝負勝ちたい…!
だから、力を貸して…!

コウキ 「でてきて、ヤミカラス!」

ヤミカラス 「カー!!」

僕は最後のポケモン、ヤミカラスを出す。
能力的に見てもロズレイドに対抗できるのはこの子だけだ!
問題は…。

ヤミカラス 「カーッ!!」

ツンツンツンツン!

コウキ 「や、やめてヤミカラス! い、今ジム戦なんだから!」

ヤミカラス 「カー!」

ヒカリ 「もう! ヤミカラス! どうせつつくならせめてあっちにジムリーダーにしなさい!」

ナタネ 「え? つつく? 一体どういう意味……て、ええーっ!?」

ヤミカラス 「カー!!」

ツンツンツンツン!

ヤミカラスはヒカリちゃんの指差す先、すなわちナタネさんを見つけるとターゲットロックをする。
そのままヤミカラスは今度はナタネさんの頭をつつき始めるのだった。

ナタネ 「キャー!? な、なんなのよこのヤミカラス!? や、やめてーっ!?」
ナタネ 「ちょ、ちょっとコウキ君! あなたどういう育て方しているの!?」

コウキ 「すいません…そのヤミカラス、人を見ると突付かずにはいられないらしくて…」

ナタネ 「なんて迷惑なヤミカラスー! ロ、ロズレイド助けて!」

ロズレイド 「ロズ…」

コウキ (ため息?)

ロズレイドは一瞬、ため息をついた気がした。
そして、ロズレイドは見えないナタネさん側に『マジカルリーフ』を放つ。

バババババッ!

ヤミカラス 「カーッ!? カーッ!!」

ヤミカラスはロズレイドの不意打ちを受けてナタネさんへの攻撃をやめて高く飛び、ロズレイドを見定める。

ロズレイド 「ロズロズ…」

ロズレイドは自分の手の薔薇でヤミカラスに挑発する。
かかってこいということか?

ヤミカラス 「カー!」

ヤミカラスは当然それを見て急降下しながらロズレイドに襲い掛かる。

コウキ 「不用意だヤミカラス!」

ロズレイド 「…ロズ!」

ロズレイドは瞬時に森の中に姿を消した。
速い…ふたつの足でアレだけの動きが出来るのか?

ヤミカラス 「カー!」

コウキ 「ヤミカラス言うこと聞いて! 君だけじゃロズレイドには勝てない!」

ロズレイド 「ロズー!」

ロズレイドの『どくばり』が森の中からヤミカラスを襲う。

コウキ 「ヤミカラス、避けて!」

ヤミカラス 「カー!」

しかし、ヤミカラスは避けようとはせず、そのままロズレイドに向かって『ナイトヘッド』を放つ。

ロズレイド 「ロズッ!?」
ヤミカラス 「カーッ!?」

互いに直撃、『ナイトヘッド』は固定ダメージだからいくらレベル差があっても大したダメージにならない。

ナタネ (互いにヒット音? 回避失敗? でも…ロズレイドも攻撃を受けたみたい)
ナタネ 「状況が読めないわね…ロズレイド、一旦戻ってきて!」

ロズレイド 「ロズ!」

ロズレイドは一旦ナタネさんの方に戻る。

ヤミカラス 「カー!」

コウキ 「ヤミカラス、深追いするな!」

しかし、ヤミカラスは聞いてはくれない。
そのままヤミカラスも森の中に侵攻してしまうのだった。

コウキ (く…やっぱり、僕はダメなのか…僕じゃヤミカラスには認めてもらえないのか…?)

ヤミカラスは一向に僕の言うことを聞いてくれはしない。
これじゃ僕はヤミカラスのトレーナーとはいえないんじゃないのか…?

ナタネ 「きたね、ロズレイド、『ウェザーボール』!」

ロズレイド 「レイー!」

ヤミカラス 「!? カーッ!?」

ズガァァン!! バキバキバキッ!

コウキ 「! ヤミカラスー!?」

ヤミカラスはロズレイドの攻撃を受けて、枝をなぎ倒しつつこちらに吹き飛んできた。
血の気が退いた…こんな…。

ヤミカラス 「カ、カァ…」

ヤミカラスはそれでも立ち上がろうとする。
まだ、ヤミカラスは諦めていない…だけど…。

コウキ 「ヤミカラス!」

ヤミカラス 「! カ、カーッ!!」

コウキ 「!? うわぁーっ!?」

ツンツンツンツン!

ヤミカラスは突然、僕の頭をつつき始める。

ヤミカラス 「カー! カー!」

コウキ (! ヤ、ヤミカラス…もうボロボロなのに…)

(ヒカリ 「くっ! コウキ君ファイト! 気持ちだけでも勝ちに向かって!」)

コウキ 「!?」

ヒカリちゃんの気持ちだけも勝ちに向かってという台詞が頭の中に響く。
ヤミカラスは諦めない…気持ちだけでも勝ちに向かっている…。
僕は今…負けを認めていた…でも…でも!

コウキ 「ヤミカラス、聞いて!!」

僕はヤミカラスを両手で掴み、話す。

コウキ 「ヤミカラス、君は強い! 強さだけならあのロズレイドより上だと思う!」
コウキ 「でも、このままじゃ君は間違いなく負ける!」
コウキ 「ロズレイドはナタネさんと組むことによって君以上の強さを得ているんだ!」
コウキ 「ポケモンはトレーナーと一緒に戦うことでもっと強くなれる!」

僕はヤミカラスに語った。
僕だって負けたくないからだ…!

コウキ 「負けるって悔しいよね…負けたくなんて君だってないよね!?」
コウキ 「勝とうよ! 今だけでいい、僕を認めてくれ! 君と僕なら勝てる!」

ヤミカラス 「……」

コウキ 「ヤミカラス…いけ!」

僕はヤミカラスを離す。

ヤミカラス 「カー!」

ヤミカラスは一直線にロズレイドのいるナタネさん側に向かった。

コウキ 「ヤミカラス! 森の中はロズレイドとナタネさんの土俵だ! 君の土俵の上空に飛ぶんだ!」

ヤミカラス 「カー!」

ヤミカラスは言われたとおり上へと飛ぶ。
少なくとも森の上なら僕の視界も通用する!

ヒカリ 「ヤミカラスがコウキ君の言うことを聞いた…いける! 頑張ってコウキ君! ヤミカラス!」

ナタネ 「ロズレイド、『くさむすび』!」

ロズレイド 「ローズレイ!」

ヤミカラス 「!? カァ!?」

コウキ 「!? あれはブイさんを襲った時の!?」

なんと、バトル場に聳え立つ木から細長い草が伸びてヤミカラスの足に絡みついた。

ナタネ 「『くさむすび』は相手が重ければ重いほど威力を増す草タイプの技! ヤミカラスには大したダメージにはならないけどそうやって拘束できるわ!」
ナタネ 「ロズレイド、もう一度、『ウェザーボール』よ!」

ロズレイド 「ローズ…!」

コウキ (やばいどうする!? このままじゃやられる!)

なにか、ないだろうか!?
この状況を打破できる物は!?
今からあの草を解いていてはロズレイドの攻撃は回避できない!

コウキ 「!? ロズレイドの攻撃…そうだ! ヤミカラス、『おどろかす』!」

ヤミカラス 「! カアァーーーーーーッ!?」

ロズレイド 「!? レ、イ…!?」

ヤミカラスはその場で甲高い声を放つ。
あまりに大きな声にロズレイドは思わず驚いてしまい、『ウェザーボール』の溜めを失敗してしまった。

コウキ 「根性入れろヤミカラス! そんな草引きちぎれ! ロズレイドに『つばさでうつ』!」

ヤミカラス 「カァ…カーッ!!」

ナタネ 「!? ま、まずいロズレイドーッ!?」

ロズレイド 「ロズーッ!?」

ザシュウ!!

ロズレイドの悲鳴が聞こえた。
ヤミカラスの強烈な一撃は確実にナタネさんのロズレイドを捕らえている。
耐えられない…耐えられるわけがない!

ロズレイド 「ロ、ロズ…」

ナタネ 「!? ロズレイド!?」

コウキ 「! 立ち上がるのか!?」

少なくともまだ審判からロズレイドのダウンの宣告は出ていない。
これで立ち上がられたら負けるかもしれない。
もう、ヤミカラスだって後がないんだ…。

ロズレイド 「ロズ…レイド…」

ドサァ!

審判 「ロズレイド、戦闘不能! よってこの勝負チャレンジャーコウキの勝ち!」

コウキ 「や…やったーっ!! 勝ったー!」

ヤミカラス 「カー!」

僕は大いに喜んだ。
勝った…嬉しい…正式なジム戦で勝てたんだ…僕だけのポケモンたちで!

コウキ 「ヤミカラス、勝った…て、うわぁーっ!?」

ヤミカラス 「カー!!」

ツンツンツンツン!

ヤミカラスは何が不満なのか僕の頭をまたツンツンつつき始める。

コウキ (痛いけど…嬉しい)

僕は必死に頭を庇う。
ヤミカラスはその上からでも容赦なく僕の頭つついた。



ヒカリ 「あ〜あ、ヤミカラスったら折角の勝利も台無し…でもまぁ、あれがヤミカラスか」
ヒカリ 「コウキ君! ヤミカラスおめでとう!」

あたしはなんとかジム戦に勝てたコウキ君にほっと胸を撫で下ろした。
正直、何度ダメだと思ったことか。
でも、コウキ君とヤミカラス、最後の最後で力を発揮してくれた。

ヒカリ (コウキ君も…どんどん強くなっていくなぁ…あたしも負けてられない)



…こうして、僕のジム戦第2戦は勝利できた。
反省点もいっぱいあるけど、今はこの勝利を祝いたい。

ナタネ 「はい! これがこのハクタイジムに勝った証、『フォレストバッジ』よ!」

コウキ 「ありがとうございます!」

ナタネ 「中々楽しかったよ! こんな破天荒なバトル初めて! またきてね!」

コウキ 「ええ、いつか!」

ヒカリ 「行くよ、コウキ君! ありがとうございましたー!」

僕はふたつ目のバッジを手にして、ジムを出て行く。
ついに僕は2つ目のバッジを手に入れた!







『ヒカリちゃんレポート』


ハクタイジム、ジムリーダーナタネ撃破 残り6人
図鑑完成度44/150(完成度29パーセント)

コウキのパーティ

ハヤシガメ♂ Lv25
ブイゼル♀ Lv23
ヤミカラス♀ Lv32


ヒカリのパーティ

ポッタイシ♀ Lv26
ルクシオ♂ Lv25
フワンテ♂ Lv20
ミツハニー♀ Lv20




ポケットモンスターパール編 第9話 「対決ナタネ! 見えないバトル!」 完







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