ポケットモンスター パール編




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おまけ





『ヨスガシティ』

『シンオウ地方中央に聳える都市である』

『コンテストで有名で、また様々な施設も存在する』

『コンテストは毎日のように行われ、観客たちを魅了する』

『さらに、ここはグランドフェスティバル会場ともなる』

『GF開催時には世界中から観客が集まるのだ』


−ヨスガシティとコンテスト−





ヒカリ 「これから、あたしたちはヨスガシティに目指すわよ」

コウキ 「ヨスガシティ、そこに次のジムがあるんだよね?」

ヒカリ 「そう、そしてコンテストもね!」
ヒカリ 「まぁ、コンテストは特に興味ないからさくっとジム戦を終わらせて次の街目指すけどね」

コウキ 「うん」







第12話 『ところがどっこい』




『某日 時刻09:11 207番道路 テンガン山前』


コウキ 「…前々から思ってたけどさ…こんな馬鹿でかい山…登るの?」

僕は目の前に聳え立つ、シンオウ地方を縦断する巨大な山テンガン山を見る。
部分によっては雲を突き破ってますけど…。

ヒカリ 「いや…その、ヨスガシティに行くだけだったら別に登らなくていいのよ」
ヒカリ 「そこに、洞窟があるでしょ、あれがヨスガへの道になっているの」

ヒカリちゃんの指す方、たしかにテンガン山の横っ腹にぽっかり穴が開いている。
成る程ね…あの洞窟に…。

コウキ 「!?」

突然、体が重くなる。
気分が悪い…。
嘔吐感にさえなまれる…。
意識が……混濁する。

ヒカリ 「だ、大丈夫コウキ君!?」

コウキ 「!? あ、ああ……もう、大丈夫…」

ヒカリちゃんの言葉が頭に反響した…。
少なくとも、気分が楽になったのは本当だ。
だけど、まだ完全に消えきってはいない。
なんで……いきなり、こんなに気分が悪くなるんだ…?

ヒカリ 「もう、時々コウキ君って変になるよね〜、心配かけないでよ?」

コウキ 「…ごめん」

ヒカリ 「じゃ、行くよ? あ、手貸そうか?」

コウキ 「大丈夫…」

ヒカリちゃんは手を差し出してくれるが、僕はそれを断る。
もしかして、そんなに心配になるほど今の僕は状態が悪いのか?
それとも、ヒカリちゃんが心配性なだけなのだろうか?

コウキ (まだ、完全には消えていない…この山に…なにかあるのか?)

僕はこの聳え立つ山を眺める。
この山は、なにか…力を感じる。
僕にとって…禍々しい…最悪の空気だ…。



…………。



コウキ 「ここがテンガン山の内部…」

中はとても、広大だった。
狭い洞窟のようなイメージがあったが、ここはまるで巨大なフロアーだ。
高低差で20メートル以上は天井とあり、川や滝、水溜りというよりはもはや湖といった景観まである…。
そこまで薄暗くはなく、光もところどころ差し込んでいるようだった。

ヒカリ 「あれ? 誰かいるね」

コウキ 「!」

目の前には一人の男性がいた。
青い髪が見事に全部立っており、生え際はかなり後退している。
しわが若干あり、30代後半くらいの年齢を感じさせるが、するどい眼光をしていた。
身長も高く、180近くあるように感じた。
服装から登山者の類では無いだろうかと推測できるが、特に荷物が見当たらないので妙に違和感があった。

ヒカリ 「あのー! 何しているんですかー?」

男性 「? 君たちは…」

コウキ (!? また…気分が…いや、寒気か…?)

男性がこちらを振り向いた瞬間、僕の気分は一気に最悪に進んだ。

ヒカリ 「あたしはヒカリ、見ての通りポケモントレーナーです! で、こっちは…て、コウキ君!?」

ヒカリちゃんは僕の容態に気づいて、顔を青くしていた。
僕は極力平静を装おうとしたが、自分で思っている以上に自分の状態は悪く、とても平静は装えなかった。

コウキ (く…意識が遠のく…なんなんだこの人は…? 一体どうして…?)

自分の気配が薄れつつあることに気づく。
僕が…消える…?

コウキ 「――ふ……ふふ…」

ヒカリ 「!? 誰…あなた…誰なの!?」

男性 「!?」

気分は悪くないな…。
今にも死にそうな顔で俺を眺めている女がいる。
そして…気に入らない…気に入らない目をした奴も。

コウキ 「てめぇ…何者だ?」

男性 「君こそ誰だ? 名前を聞くより先に名乗ったらどうだ?」

コウキ 「け…、コウキ…それが俺の名だ」

男性 「私はアカギ、見ての通り登山家だ」

コウキ 「違うな…あんたは見た目こそ登山家だが、目的はこの山じゃねぇ…」
コウキ 「何を考えている? てめぇに運命を変えることなんざできやしねぇ…」

ヒカリ 「い、一体なにを…何を言っているのよ!?」

コウキ 「黙ってろ、小娘!」

ヒカリ 「ひっ!?」

コウキ 「おめぇら小さき者に大いなる運命を覆すことなんざできない…なのになんで抗う?」

アカギ 「それはやってみなければわからないだろう…運命に縛られる少年」

コウキ 「てめぇ! く…う…ちぃ…ここまでか…くそ…」

俺の意識が遠のく。
俺が存在できない。
畜生…また、闇に帰るのか…。
……『あいつ』には誰にも勝てない。
抗うだけ…無駄だってのに…どうして人間は…。

コウキ 「く…ぅ…?」

ヒカリ 「帰ってきた? 大丈夫コウキ君!?」

コウキ 「ヒカリちゃん…? 僕は…一体…?」

アカギ (気配を察知した? この少女…興味深いな…)
アカギ 「君、大丈夫かな?」

コウキ 「あなたは?」

アカギ (やはり、記憶は共有していないか…野放しにしておくのは危険すぎる気もするが…なんの運命か、今の彼が存在している)
アカギ 「私はアカギだ」

コウキ 「僕はコウキです…」

アカギ 「気分はどうだい? 苦しくはない?」

コウキ 「少し…でも、大丈夫です」

アカギ 「そうか、無理はしないことだ」

ヒカリ 「あの…ところで、アカギさんはここで何をしていたんですか?」

アカギ 「私か? 私はこのテンガン山…いや、シンオウ地方を調べている」

ヒカリ 「シンオウ地方を?」

アカギ 「テンガン山は世界の始まりの地とされている」
アカギ 「ここで始まりの生命は生まれたと」
アカギ 「君たちは運命を信じるかい?」

ヒカリ 「運命って言われても…あるのかないのかわからないあやふやな物だし…あたしはちょっと」

ヒカリちゃんは曖昧だが、否定的なようだった。

コウキ 「僕は…わかりません、過去も未来もない僕には、運命という意味さえ見出せない…」

アカギ 「そうか…私は運命は存在すると思う、しかし、ただそれに従えばいいというものではない」
アカギ 「運命とは、打ち破るものだと私は思っている」
アカギ 「この世界はね…争いと共に発展してきた、人間には4つの塩基配列の中に闘争本能が存在し、それが戦いを求める本能を生んでいる」
アカギ 「そして、ポケモンにも同じことのようだ…この世界は争いに満ちている」

コウキ (わかる気がする…争い…この世界にはその感情が渦巻いている…)

アカギ 「なぜ、この世界は争うように生まれたのか?」
アカギ 「まぁ、君たちにこんな哲学的なことはわからないか…長々と話してしまって申し訳ない」
アカギ 「私はこれで失礼するよ」

そう言って、アカギさんは僕たちが入ってきた方の穴からテンガン山を出るのだった。

ヒカリ 「…行こうか、コウキ君」

コウキ 「うん…」

僕たちも長い、テンガン山を抜けて、ようやく、シンオウ地方の東側にでるのだった。



…………。



ヒカリ 「さーて、早速やってきましたヨスガシティ! いざ、行かん! ジムへ!」

とりあえず、僕たちはヨスガシティに着くと、まずジムを目指した。
ポケモンたちの状態は万全、問題はジム戦か。
一体今度はどんなトレーナーで、どんなバトルになるんだろう?
僕は、勝てるのかな?

ヒカリ 「とりあえず、たのもー!」

男 「おーす! 未来のチャンピオン! て、さっき来た少年にも言ったけどな!」

いきなり、黒いスーツを着た男性に出迎えられる。
本当にいきなりのことで、思わず僕もヒカリちゃんもキョトンとしていた。

コウキ 「…あなたが、ジムリーダー?」

男 「違う違う! 俺はしがない未来のチャンピオンを応援するだけの男さ!」
男 「そんな俺からのアドバイスだ! 今ジムリーダーはいない!」

ヒカリ 「いないって…ええー!?」

男 「ちなみに、帰ってくる予定は当分無い、他のジムから先に攻略することをお勧めする!」

ヒカリ 「なによそれ〜…しょうがない…だったらここにいても意味無いし、ポケモンセンターでも行こうか?」

コウキ 「うん」

男 「じゃ、頑張れよー! 未来のチャンピオン!」

僕たちはさっさと割り切って、ジムを去るのだった。
だけど、困ったな…まさか、ジムが閉じているなんて。

コウキ 「ん? あれって…」

ヒカリ 「どうしたのコウキ君?」

コウキ 「あれ…」

僕は一人、見知っている人物を見つけ、それを指差す。
最後に会ったのはクロガネジム以来か…。

ヒカリ 「げっ!? あれは…!?」

コウキ 「おおーい! ジュン君ー!」

ジュン 「ん? おおっ!? マイスイートハニー!!」

ヒカリ 「きゃあああああっ!?」

ジュン君はヒカリちゃんを見つけるとまるでロックオンされたミサイルのごとく、ヒカリちゃんに飛び込む。
しかし、ヒカリちゃんは瞬時に踏み込んで、悲鳴と共にジュン君の顔面を打ち抜いた。
恐るべきはヒカリちゃんか…。

ジュン 「ぶし…」

コウキ 「だ、大丈夫?」

例によって心配になって駆け寄る僕。

ジュン 「ふ…相変わらず恥ずかしがりやだなぁ〜ヒカリっちは」

ヒカリ 「変なあだ名つけないでよね!」

ジュン 「ふむ…師匠もいいが…やはり本命はヒカリちゃんだな」

コウキ (師匠?)

ジュン 「どう、ヒカリちゃん、これから俺と3つ星ホテルで夜景の美しいレストランで食事なんて…」

ヒカリ 「!!」

ジュン 「アウチッ!?」

ヒカリちゃんはジュン君に恨みでもあるのかそのままジュン君の足を踏み抜く。
さすがに、ジュン君は悶絶していた。

ヒカリ 「馬鹿じゃないの? てか、馬鹿じゃないの?」

ジュン 「厳しいな…ヒカリちゃんったら」

コウキ (めげない…)

ジュン 「ん? しかし、コウキ、お前まだいたのか?」

コウキ 「いたのかって…」

ジュン 「まぁ、いいや、おいコウキ! ジム戦がなくなって暇なんだ、ちょっとバトル付き合え!」

ヒカリ 「バトルなら、コウキ君の代わりにあたしが受けるわ!」

ジュン 「生憎、ヒカリちゃんには興味はねぇんだわ、受けるよな、コウキ?」

コウキ 「いいよ…僕も以前とは違う!」

ジュン 「オーケー! じゃ、俺から行くぜ!」
ジュン 「いけ、ムックル!」

コウキ 「ムックル…飛行タイプか…だったら僕は! お願いしますドーミラーさん!」

ドーミラー 「ドー」

僕は安定した防御力を持つ、ドーミラーさんを出す。
ドーミラーさんなら、ムックルの攻撃を確実に受け流せる。

ジュン 「ドーミラーか、いいぜ…そっちの方が面白い」
ジュン 「相性悪くても、勝てなきゃ…未来なんてねぇからな!」

コウキ (どうしたんだ、ジュン君…以前とは雰囲気が違う…)

ヒカリ (なんなのよ…あいつ、妙にいきり立って…何があったの?)

僕はバトルになってからのジュン君に違和感を感じる。
なんだか、焦ったような表情をし、言動からも違和感を感じる。

ジュン 「こないなら、こっちから行くぜ! ムックル、『つばさでうつ』!」

ムックル 「ムックルー!」

コウキ 「! ドーミラーさん!」

ドーミラー 「ドー!?」

ドカァ!

ムックルは素早く、ドーミラーさんに攻撃する。
ドーミラーさんは回避できず、そのまま直撃した。

コウキ 「大丈夫、ドーミラーさん!?」

ドーミラー 「ドー」

ジュン 「くそ…さすがに硬いな…」

コウキ 「反撃だ! ドーミラーさん、『じんつうりき』!」

ドーミラー 「ドー!」

ムックル 「ムックー!?」

ジュン 「しまった! ムックル!?」

ムックルは『じんつうりき』をくらって苦しむ。
今、ムックルにはありえない光景が見えているだろう。

ムックル 「ム、ムック〜…」

ジュン 「くそ! 一撃でダウンしかけかよ…こんなんじゃまだまだだ…くそ!」
ジュン 「だが、抵抗はしてやらぁ! ムックル、『がむしゃら』!」

コウキ 「『がむしゃら』!?」

たしか、以前にもトレーナーの使うムックルの『がむしゃら』を受けた。
あの時はダメージはあまりなかったけど。
でも、この技は…!?

ヒカリ 「今それをくらったらドーミラーは確実に大ダメージよ!?」

コウキ 「ドーミラーさん!」

ムックル 「ムックー!」

ガコォォン!!

ドーミラー 「ド、ドー!?」

ドーミラーさんは激しく苦しむ。
まずい! 動きの鈍重なドーミラーさんじゃ!

ジュン 「ムックル! 見せてやれお前の新技、『つばめがえし』だ!」

コウキ 「ドーミラーさん! 『さいみんじゅつ』!」

ドーミラー 「ドー!」

ドーミラーさんはムックルに対して『さいみんじゅつ』を放つ。
しかし、ムックルは…。

ヒュン!

コウキ 「消えた!?」

ムックル 「ムックー!」

ドカァ!

ドーミラー 「ドー!?」

なんと、当たる寸前で、ムックルはドーミラーの視界から消えた。
もの凄い超高速で視界を横切り、真後ろから攻撃を仕掛けたのだ。
くらったドーミラーさんは面食らったはず、僕でさえ驚いた。
ドーミラーさんはそのままばったりと倒れる。

コウキ 「く…もどって、ドーミラーさん」

僕はドーミラーさんをボールに戻す。
やっぱり、ジュン君は強い…相性的には悪くなかったはずなのに負けた。
だけど!

コウキ 「でてきて、ブイゼルさん!」

ブイゼル 「ブイブイ!」

僕はブイゼルさんを出す。
スピードにはスピードで勝負だ!
ブイゼルさんならきっとあの『つばめがえし』も破れる!

ジュン 「ブイゼルか…ムックルにはこれ以上は無理か、だったら俺はこいつだ!」

ジュン君はムックルをボールに戻した。
さすがにもう無理と判断したみたいだ。
だけど、その次に出てきたのは…。

モウカザル 「キー!」

ヒカリ 「そんな!? 水タイプ相手に炎タイプ!?」

ジュン 「俺は勝たなきゃならないんだよ! もっと、もっと強くなって…だから、相性なんざ吹き飛ばさないといけないんだよ!」

コウキ 「そんな…どうして、それじゃポケモンに辛い道を歩ませるだけじゃないか!」

ジュン 「だが、俺が事を成すには時間が無いんだ! 早く強くならないと…強くならないといけないんだよ!」
ジュン 「モウカザル、『かえんぐるま』だ!」

コウキ 「ジュン君……ブイゼルさん! 『アクアジェット』!」

モウカザル 「キー!」

ブイゼル 「ブーイ!!」

モウカザルは立ち上がりは早い、先に攻撃に出たのはモウカザルだった。
だが、ブイゼルさんは落ち着いて立ち上がり、モウカザルの死角を縫って、攻撃に入る。

ジュン 「!?」

ブイゼル 「ブイー!」

モウカザル 「キキー!?」

ドカァァ!! ズササァァァァッ!!

モウカザルは『かえんぐるま』を避けられ、真後ろから『アクアジェット』の直撃を受けた。
モウカザルは後ろから『アクアジェット』の体当たりをくらい、吹き飛ばされるも地を滑らせ、なんとか踏ん張る。

ジュン 「く…だったら!」

コウキ 「目を覚まして、ジュン君! 君の戦い方は間違っている!」

ジュン 「知った風な口聞くんじゃねぇよ! 優男!」

ヒカリ 「あんたこそいい加減にしなさいよね! 冷静になりなさいよ!」

ジュン 「! ち…」

ジュン君はヒカリちゃんに一喝されると、さすがに分が悪くなったのかバツが悪そうに舌打ちをして黙った。

ヒカリ 「一体、なにがあったのよジュン…」

ジュン 「なんでもねぇよ…関係の無いことだ」
ジュン (ギンガ団の目的…いくらなんでも、ヒカリちゃんたちを巻き込むことは無いはずだ)

コウキ 「落ち着いてジュン君、ジュン君が落ち着くまで僕はバトルを受けない」

ジュン 「……」

ヒカリ 「全く…ん? これって…」

ヒカリちゃんが突然、一枚、風に舞って飛んできたチラシを見ていた。

ヒカリ 「初心者限定コンテスト…優勝商品は…ポケモンのタマゴ!?」
ヒカリ 「参加資格…これまでコンテストに出場したことの無い初心者」
ヒカリ 「よし! ジュン、コウキ君、あなたたちこれに参加しなさい!」

ジュン 「あ〜? コンテストに参加しろって? 柄じゃねぇよ…」

コウキ 「コンテスト?」

ヒカリ 「いいの! 決着つけるには丁度いいわよ! ちなみにあたしも参加するわよ、ポケモンのタマゴは興味あるし」

ジュン 「まぁ、俺もタマゴってのには興味あるしな…まぁいいか」
ジュン 「参加してやるよ!」

ヒカリちゃんはやる気満々、ジュン君もやる気はあるようだ。
僕も参加強制みたいだけど…コンテストなんて初めてだよ…。

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ」

コウキ 「え? ブイゼルさん、自分に任せろって?」

ブイゼル 「ブイブイ」

ブイゼルさんは、コンテストに参加したいらしい。
女の子だからかな?
でも、ブイゼルさんなら自分でなんとかしてくれそうだな。

コウキ 「よし、じゃ、そのコンテスト会場はどこ?」

ヒカリ 「街の中央にある、コンテスト会場らしいわ…受付は……大変! あと10分じゃない!」

ジュン 「やれやれ……ダッシュだな!」

ヒカリ 「行くよ、コウキ君!」

コウキ 「うん!」



…………。



コウキ 「え〜と、コンテストは一次審査で見た目審査、二次審査に演技審査、そしてそして最終審査でコンテストバトルを行う…」

えと、実際のゲームで言えば一次審査は見た目、二次審査はダンス、最終審査がアピールだね。
とりあえず、参加賞ですでにアクセサリーとポフィンっていうポケモンのお菓子をもらったけど。

コウキ 「どうするのブイゼルさん…?」

ブイゼルさんは鏡を前にして、ブラシで毛(髪?)を解かしていた。
ポフィンはいらないとのこと。
素の美しさで勝負とのことだったけど。
とはいえ、最初の見た目審査はどう飾るかがポイントなのでつけないといけない。
その点に関してはブイゼルさんは手出し無用とのこと。
自分で化粧もするんだ…。



…………。



司会 「さぁー! みんな気合入ってるかー!」

ワァァァァァァ!

司会 「オーケー! それじゃ今回もコンテスト、はっじめるよー!」
司会 「今回は飛び入りの初心者を限定したコンテストだ!」
司会 「期待の新人は現われるのかー!?」

司会の女性はラフな服装で動き回り、言葉巧みに会場を盛り上げる。
コンテストって華やかなんだ…。

司会 「さて、今回エントリーしてくれたのは4名だけだけど、みんなグリーンなボーイ&ガールを応援してあげよう!」
司会 「まずはエントリーナンバー1、コスカ選手とガーメイルだ!」

コスカ 「ガーメイル!」

ガーメイル 「ガ〜♪」

司会 「おー! ガーメイル、♂限定ということを活かしており、ハチマキにだんだらかー! 逞しさを強調している感じだぞー!」

コウキ (ガーメイル、虫タイプなんだよね)

初めてみるポケモンだった。
たしか、ミノムッチの進化形だったっけ。

司会 「さー、次はエントリナンバー2、ジュン選手とモウカザル!」

ジュン 「よーし、ゴー、モウカザル!」

モウカザル 「キー!」

司会 「!? こ、これはー!? まさかモウカザルにゴスロリ!? キモさで勝負か!?」

コウキ 「ゴスロリ?」

なんだろうか、それは?
見た感じ、モウカザルは変なひらひらな洋服に身を包んでいる。
まるでお人形さんみたいだけど…周りの評価は最悪だ…。

ジュン 「畜生…ウケ狙いはだめか…」

司会 「え、えーと! 次はエントリナンバー3、ヒカリ選手とビークイン」

ヒカリ 「ビークイン、あなたの可愛さをアピール♪」

ビークイン 「ビ〜♪」

司会 「おー! 珍しいビークイン、飾りはシンプルに赤いリボンひとつだ!」
司会 「怖いイメージもあるビークインだが、大人しい女の子のようなイメージになったぞ!」

ヒカリ 「おっけ♪ さっすがビークイン♪」

司会 「さぁ、最後はエントリーナンバー4、コウキ選手とブイゼル」

コウキ 「ブイさん、どうぞ!」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ…ブブイ」(ペコリ)

司会 「な、なんとー!? これは三種の神器のひとつ、メイド服!?」
司会 「お帰りなさいませ、ご主人様のポーズで決めだー!?」

ジュン 「なにー!?」
ヒカリ 「そんなのアリ!?」

司会 「会場の視線を独り占め! すごいぞ、コウキ選手とブイゼル!」

コウキ (こんな服…あったっけ?)

司会 「さぁ、集計です! この結果で一人が脱落します!」



…………。



司会 「さー! 集計結果でたぞー! 見た目審査一位はコウキ選手のブイゼルさん!」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ」

コウキ 「そうですか…そんなもんですか」

司会 「第2位はヒカリ選手のビークイン!」

ヒカリ (……相変わらず、コウキ君、ポケモンと会話成り立っているし…)

ビークイン 「ビー?」

司会 「そして気になる第3位はぁ…コスカ選手とガーメイル!」
司会 「と、いうわけで申し訳ないが脱落するのはジュン選手のモウカザルだ!」

ジュン 「やっぱりかー!?」

ヒカリ 「当たり前よ…もうちょっとイメージ考えなさいよ…」

コウキ 「僕は悪くないと思うけどな?」

司会 「さー、次は演技審査! 10分時間をあげるから今のうち考えといてねー!」



……………。



コウキ 「ブイゼルさん、演技は大丈夫ですか?」

ブイゼル 「ブ〜イ、ブイ」

コウキ 「そうですか、じゃあ、任せますよ?」

ブイゼルさんは、問題ないという。
でも、さすがに不安だな〜…とはいえ、コンテストのこと何も知らないし…アドバイスしても逆効果だよね〜…。

コウキ (まぁ…勝つことが目的じゃないし、ブイゼルさんに楽しんでもらえればそれでいいか)

結局、ジュン君とは戦わずして決着がついてしまったけど…。



……………。



司会 「おまたせー! 二次審査の演技、用意できたかなー!?」
司会 「まずは第3位のコスカ選手、行ってみよー!」

コスカ 「よーし、ガーメイル! 『どくのこな』!」

ガーメイル 「ガ〜! ガ〜!」

ガーメイルは空中を飛び回り、『どくのこな』を散布する。
しかし、散布量が多すぎる。
アレでは自分まで毒状態になってしまうんじゃないのか?

コスカ 「ガーメイル、『ねんりき』!」

ガーメイル 「ガー!」

コウキ 「!?」

なんと、ガーメイルは『ねんりき』で『どくのこな』を全てかき集める。
そして、それを真上に集めた。

コスカ 「ガーメイル、フィニッシュ! 『かぜおこし』だ!」

ガーメイル 「ガー!」

ブォォォォ!

ガーメイルは集められた『どくのこな』に向かって『かぜおこし』を放つ。
粉は『かぜおこし』によって空中へと四散した。

司会 「なるほど! ガーメイルの力強さをアピールした演技! 新人とは思えません!」
司会 「それでは次はヒカリ選手、どうぞー!」

ヒカリ 「ビークイン、『あまいかおり』」

ビークイン 「ビィ…」

コウキ 「これは?」

ビークインは周りに『あまいかおり』を放つ。
これは本来、周囲のポケモンを引き寄せる効果だけど…。

司会 「おー! ビークインから放たれるいい香り、観客たちも魅了されています!」

ヒカリ 「『あやしいひかり』」

ビークイン 「ビー!」

コウキ 「今度は『あやしいひかり』?」

ビークインは続いて『あやしいひかり』を放つ。
『あまいかおり』に加え、『あやしいひかり』が周囲に渦巻く。

司会 「なんとこれは……! ビークイン、怪しい香りをしたあぶないお姉さんのようだ!」

ヒカリ 「ビークイン、『かぜおこし』」

ビークイン 「ビー!」

ブォウッ!

コウキ 「!?」
司会 「あっ…!?」
観客 「!?」

突然、全てを吹き飛ばす一陣の風が吹く。
会場がみんな、目を丸くしていた。

ヒカリ 「以上、演技終了」

司会 「な、なんという鮮やかさ! あれはまるで大人も魅了する魅惑のカクテル!」
司会 「私自身、それに酔いしれていたようです! そこへ一陣の風が酔いを醒ます! 素晴らしい!」

コウキ 「みんな混乱状態だったからか…」

あまりのことにびっくりした感じだ。
僕は単にいきなり風が吹いて驚いただけだけど。

司会 「これは間違いなく高得点は確実でしょう!」
司会 「さぁ、最後はコウキ選手! 凄いの見せてよー!?」

コウキ 「大丈夫、ブイゼルさん?」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ」

コウキ 「そう…」

ブイゼルさんは勝算はあるとだけ言った。

コウキ 「ブイゼルさん、どうぞ!」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ!」

コウキ 「え? ハクタイジムのジム戦は苦労したね? ええ、そうですね…本当に苦労しました」
コウキ 「その節は大変お世話になりました」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ」

コウキ 「え、でも結果はその甲斐あってまさに…」

ブイゼル 「ブイー!!(V)」

司会 「なんとー!? コウキ選手、漫才で攻めてきた!?」
司会 「ブイゼルの可愛い顔でのギャグも観客のハートを掴んでいるぞー!?」

ヒカリ (ちぃ…まさか漫才でくるとは…ポケモンの言葉のわかるコウキ君をたくみに利用した演技…やるわね!)

ブイゼル 「ブイ、ブ〜イ〜」

コウキ 「え? ええっ!? でも、僕たちの心には塀ができたって!? どうしてですか!?」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ!」

コウキ 「え? それはさておき?」

ブイゼル 「ブイゼル、ブイブイ!」

コウキ 「え? 肘って10回言えって?」
コウキ 「肘肘肘肘肘肘肘肘肘肘…」

ブイゼル 「ブイブイ?」

コウキ 「え? ここはって? そこは膝でしょ?」

ブイゼル 「ブーイー!!」

ビシィ!

コウキ 「うわっ!?」

司会 「おーと、ここでブイゼル、コウキ選手に突っ込みだー!!」

ヒカリ (10回クイズ…今時知っている人いるの…?)

ブイゼル 「ブイ、ブイ?」

コウキ 「え? ところで今、君は感心しているねって?」

ブイゼル 「ブイ」

コウキ 「口にしたら、なんていう? え〜と、へ〜?」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ?」

コウキ 「え? 僕のたちの心には何が出来たって? えと、塀?」

ブイゼル 「ブーイー!」

コウキ 「へ〜…あ!」

ブイゼル 「ブイブイ!」

コウキ 「え、あんたとはやってられんわ?」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ!」

コウキ 「え、あ、次いってみよう!」

パチパチパチパチパチ!

司会 「見事、ポケモンとコーディネーターの漫才でした!」
司会 「私、長らく司会をやっていますが、コンテストで漫才をする人は初めてです!」
司会 「思わず、会場から拍手がこぼれます!」
司会 「おや? なんとアンコールまで聞こえるぞ!? でも、ごめんなさい! アンコールは受け付けられないの!」

ヒカリ (く…まさか、オチまで用意するとは…さすがブイさん、侮れないわ…)

コウキ (…いいのかな、あれで?)



…………。



司会 「さー! 集計結果、まずは1位、またもやコウキ選手!」

コウキ 「いいんだ…あれで」

司会 「そして、第2位、ヒカリ選手!」

ヒカリ 「なんか、漫才に負けたのって…納得いかない」

司会 「そして、残念ながらここで脱落するのはコスカ選手だ!」

コスカ 「しょうがないか…」

司会 「それではラスト! この二人によるコンテストバトルだ!」

コウキ (ヒカリちゃんとか…)
ヒカリ (コウキ君と…か)

司会 「それでは、5分の休憩後…バトル開始だー! 気合いれていこー!」



…………。



コウキ 「ブイゼルさん、指示無しで大丈夫ですか?」

ブイゼル 「ブイブイ」

コウキ 「信頼してますよ…ブイゼルさん」

ブイゼル 「ブイブイ…」



…………。



ヒカリ 「はぁ…なんだかんだで、コウキ君とバトルか〜…まぁ、どっちが勝ってもタマゴはいただき」
ヒカリ 「それでいっか」



…………。



司会 「さー! ついにこの特別コンテストも終わり! 最後はコンテストバトルだ!」
司会 「知らない人にはルールを説明! コンテストバトルでは通常のポケモンバトルとは違い、攻撃しなくてもいい!」
司会 「ただし、コーディネーターたちはコンテストポイントを所持し、これを削りあうの!」
司会 「技を当てたり、相手の攻撃を上手く捌いたりして削りあい、このポイントがなくなった方の負け!」
司会 「でも、制限時間は今回5分、これで決着がつかなかったらポイントの余っている方の勝ちよ!」
司会 「もちろん、バトルだから攻撃でダウンしたらその場で負け! 気をつけてね、新人君たち!」
司会 「それじゃ、張り切っていこー!」

コウキ 「出てきて、ブイゼルさん!」

ブイゼル 「ブイー!」

ヒカリ 「ビークイン、ステージ・オン!」

ビークイン 「ビー」

司会 「両者、ポケモンが出揃った! それじゃコンテストバトル、スタート!」

ついに、コンテストバトルが始まる。
ブイゼルさんは命令は要らないというけどどういう作戦なんだろうか?
少なくとも、ヒカリちゃんは物凄く強い。
正攻法で行っても互角…いや、こちらの方が分が悪い?

ヒカリ 「ビークイン、『パワージェム』!」

ビークイン 「ビー!」

ビークインは両手に力を集める。
あれはビークインに『パワージェム』。
岩タイプの技で、くらうと痛い。

ブイゼル 「ブイ!」

しかし、ブイゼルさんは当然のごとくそれを僅かに動いて避ける。

司会 「ビークインの攻撃、いきなり失敗! ポイントが下がったぞ!」

ヒカリ (やっぱり、いきなりは当たらないか!)
ヒカリ 「だったら、『あまいかおり』よ!」

コウキ (これは、くらうとポケモンの動きをしばらく止めてしまう! どうするんです、ブイゼルさん!?)

ヒカリ 「ビークイン、『どくばり』!」

ビークイン 「ビー!」

ヒュンヒュンヒュン!

ビークインは口から無数の『どくばり』を放ってくる。
ブイゼルさんの足は止まっている。

ブイゼル 「ブイ!」

司会 「おー! ブイゼル、コーディネーターの指示無しで『スピードスター』を放つ!」
司会 「『どくばり』を全て打ち落とし、更にヒカリ選手のポイント削減だ!」

ヒカリ (く…上手い! やっぱりこっちからの攻撃は全て捌かれる!?)
ヒカリ 「だったら!」

司会 「? ヒカリ選手、命令をだしません、待ちの体勢か!?」

コウキ 「?」

ヒカリちゃんは動く気はないらしい。
待って、それから反撃しようという考えらしい。
たしかに、ブイゼルさんに攻撃を当てるのは難しい。
でも、相打ち狙いならビークインに分がある。
幸いというか、ビークインはまだ、一撃も貰ってはいない。

ビークイン 「……」

ブイゼル 「……」

司会 「? なんと、両者動きません! これは!?」

ヒカリ 「冷静ね…さすがブイさん、無用な危険には手をださないってこと?」
ヒカリ 「しょうがないわね! ビークイン、『みだれひっかき』!」

ビークイン 「ビー!」

ビークインはやや、ゆっくりとした速度でブイゼルさんに迫りよる。
ブイゼルさんは迎え撃つ気なのか、距離を離す気は無い。

ビークイン 「ビー!」

ブイゼル 「!」

司会 「なんと、ブイゼル、巧みにビークインの『みだれひっかき』を捌いている、あ、当たらない!?」

ブイゼル 「ブイ!」

ビークイン 「ビッ!?」

ブイゼルさんはビークインの『みだれひっかき』を捌ききると、ビークインの頭上を飛び越え、ビークインの後ろ頭を蹴って、距離を離す。
その際、ビークインは手を地面に着け、体勢を崩す。
攻撃チャンスだ!

ブイゼル 「……」

司会 「!? コウキ選手、絶好の機会に命令を出しません! ビークインそのまま体勢を立て直したぞ!」

ヒカリ 「まさか…こっちに危害は加えないってこと? かっこいいじゃない…ブイさん」

コウキ (ブイゼルさん…もしかして、ビークインを傷つけたくないの?)

ブイゼルさんは逃げ切り勝ちを狙っているようだ。
既にヒカリちゃんとのポイント差は大分ついている。
もう、時間も無い。
勝ちは確定だろう。

ヒカリ (はぁ…やってくれるなぁ〜…完敗)

ビィィィィ!

司会 「タイムアウト! この勝負誰が見てもわかるように、一発も被弾しなかったブイゼルのコーディネーターコウキ選手の勝ちだ!」
司会 「これは凄い新人が現われました! これはコンテストの歴史に刻まれる凄いコーディネーターかもしれません!」

コウキ (お、おおげさだなぁ…)

司会 「これは公式のコンテストじゃないからリボンは渡せないけど、代わりにこれをあげちゃう! はい、賞品のポケモンのタマゴ!」
司会 「何のタマゴかは孵化してからのお楽しみ!」

僕は司会のお姉さんからポケモンのタマゴを受け取る。
ポケモンのタマゴからはたしかな脈動を感じた。

司会 「じゃ、今日はみんなありがとー! 明日は公式のポケモンコンテストもあるから、明日お楽しみにー!」

ワァァァァァ!

場は歓声で終わる。
僕はちょっと呆気に取られていた。

コウキ 「…楽しめました、ブイゼルさん?」

ブイゼル 「ブイ♪」



…………。



ヒカリ 「はぁ…やられちゃったな…やっぱりすごいな…ブイさんは、勝てないや…でもまぁ、ポケモンコンテストにはそんなに興味なかったし」

女性 「ふ〜ん、演技の時はやるわねって思ったけど…その程度なんだ」

ヒカリ 「!? 誰よ!」

あたしは会場を出て、コウキ君を待っていると、ひとりのあたしと変わらないくらいの年齢の女の子が現われた。
茶色い髪を肩に着く位伸ばし、ボーイッシュな格好で決めた、女の子。
身長もあたしとあまり変わらない。

女性 「ふふ、まぁ…意気込みも中途半端なら人間も中途半端ってことか」

ヒカリ 「なんですって!?」

女性 「吼えない吼えない…ふふ」

女は確実にあたしを挑発していた。
さすがに、ムッとくる。

ヒカリ 「あなた! 何者よ!?」

女性 「ふふ、明日のコンテスト…それを見たらわかるわ…ふふ」

ヒカリ「!」

女はそれだけを言うとどこかへと歩き去った。

コウキ 「ごめん! ヒカリちゃん、遅れた!」

ヒカリ 「…負けられない、あいつには絶対負けない! 見返してやるわ!」

コウキ 「え? ええ? 一体どうしたの?」

突然、現われた謎の女。
たしかにコンテストを軽視していたのは事実だけど、あそこまで言われたらさすがにカチンとくる。
絶対…見返してやる!
明日のコンテスト…優勝するのはあたしよ!





ポケットモンスターパール編 第12話 「ところがどっこい」 完







おまけ

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