ポケットモンスター パール編




Menu

Back Next

おまけ





『ポケモンの育て方』

『ポケモンは戦うことによって強くなります』

『ですが、タマゴから生まれたポケモンは』

『戦うことはおろか、何に関しても初めてです』

『まずはトレーナーの顔を覚えてもらうため、ボールにはいれずに育てましょう』

『そして、好奇心を刺激し、悪いことといいことを教えてあげましょう』


−ポケモンの育て方その1−





ヒカリ 「やっと、ズイタウンに着いたね」

コウキ 「うん、やっとだね…」

ガタガタ…ガタガタ…。

ヒカリ 「なんかさ…コウキ君が抱えているその卵、揺れが激しくなってない?」

コウキ 「う、うん…おかげで歩きにくいよ…」

ヒカリ 「案外、もうすぐ生まれたり♪」

コウキ 「はは…まさ……て、あれ!?」

カァァァァッ!

ヒカリ 「え? ちょ!? まじっ!?」







第14話 『誕生、したらしたで大変だ』




『ピンプク ままごとポケモン』
『高さ 0,6m 重さ 24,4kg』
『タマゴに似た真ん丸い石をお腹の袋に入れている』
『好きな相手に石を渡す』



ピンプク 「ピーンピーン!」

ヒカリ 「生まれちゃった…」

コウキ 「わわっ!? おーよしよし!」

ピンプクは生まれたての子供らしく大声で癇癪を起こす。
僕は慣れない手つきであやすけど、ピンプクの癇癪は一向に収まらない。

ヒカリ 「ピンプクピンプク! いないない…ばぁ!」

ピンプク 「…」

コウキ 「あれ?」

ピンプク 「…ピ、ピーンピーン!」

ピンプクは一瞬固まった後、再び大泣きし始める。
今の間は、なに?

ヒカリ 「くぅ…やっぱりポケモンのことはポケモンに聞くしかないわよね!? でてきて、みんな!」

コウキ 「で、出てきて!」

僕はピンプクを抱きかかえながらなんとか、ポケモンたちをボールから出す。

ヤミカラス 「カー!!」

ヒカリ 「ああっ!? そ、それは…!?」

ピンプク 「ピーン!!」

ヤミカラス 「カ、カァ!?」

ヤミカラスはボールから出るといつものように僕の頭をつつこうとするが、ピンプクの大声に驚いてか、その場で固まって、大人しくなる。

ピンプク 「ピーン! ピーン!」

フワンテ 「フ、フワ…フワワ〜ッ!」

ヒカリ 「ああ! フワンテまで泣かないの!!」

なんと、相乗効果か同じく子供のフワンテも泣き始める。
フワンテの方は赤ん坊というわけではないのですぐに泣き止むがこっちは大変だ。

ビークイン 「ビ〜」

ヒカリ 「ん? ビークイン?」

ビークインは僕の抱えるピンプクに近寄り、頭をピンプクの高さまで下げる。

ビークイン 「ビー♪」

ビークインは優しく、ピンプクを撫でるのだった。

ピンプク 「ピ…ピィィィィン!!!」

しかし、ピンプクはこれまでにない大声で泣く。
よほど、ビークインが怖かったらしい。

ビークイン 「……ビ」

ヒカリ 「お、落ち込まないでよ」

ビークインはさすがに傷ついたのか遠くで落ち込んでしまう。

ピンプク 「ピーンピーン!」

フカマル 「フッカ〜!!」

ピンプクはいつまでも泣いている。
いい加減耳障りなのかフカマルはいらついてピンプクに襲い掛かる。

ドーミラー 「ドー!」
ハヤシガメ 「ガメー!」

ドカァ!!

しかし、ドーミラーさんとハヤシガメのダブルインパクトでフカマルは再起不能になるのだった。

ブイゼル 「ブイ」

ピンプク 「ピン?」

今度はブイさん。
僕は屈んでブイさんに高さを合わせるとブイさん、優しくピンプクを抱擁して、頭を撫でる。

ピンプク 「ピン〜♪」

ヒカリ 「あ、ピンプクが笑った…」

ブイゼル 「ブ〜、ブイブイ〜、ブ〜…」

ブイさんはピンプクにいないないばぁをすると、ピンプクは安らかな顔を見せ。

ピンプク 「ピ…ン…ZZZ」

コウキ 「眠っちゃった…」

ブイゼル 「…ブイ」

ピンプクは安らかな寝顔を見せて眠っていた。
ブイゼルさんはしばらくするとピンプクを放して、いつも通りしていた。

ヒカリ 「おみごと、ブイさん」

ブイゼル 「ブイ」

なんとかことを得た、僕たちはピンプク以外をボールに戻すのだった。

ビークイン 「…ビィ」

ヒカリ 「どうしたのよ…」

コウキ 「ブイさんにできて、自分に出来ないのが悲しいみたい」

ヒカリ 「だ、大丈夫よビークイン、いつか花咲く時があるわ!」



…………。



『同日 時刻10:30 ズイタウン ポケモンセンター』


ヒカリ 「さて…これからの事なんだけどさ〜」

コウキ 「うん?」

落ち着いてポケモンセンターに着くと、ヒカリちゃんは今後のことを言う。

ヒカリ 「これからロストタワー、ズイの遺跡を調べないといけないんだけどさ」
ヒカリ 「時間効率を考えて、コウキ君にはロストタワーに行ってもらおうと思ってたのよね」
ヒカリ 「だけど、ピンプクが生まれちゃったし…どうする?」

どうする、というのはもちろんピンプクのこと含めてだろう。
ピンプクが癇癪を起こしたら探索どころの問題じゃない。
普通、赤ちゃんポケモンはボールには入れず、ある程度成長するまでトレーナーが抱きかかえて育てるのがマナーだそう。
ボールに戻すのなら問題ないけど、今は仕方がない。

ヒカリ 「ロストタワーは最上階へ行って、秘伝マシン04を貰ってくるだけでいいんだけどねぇ…」

コウキ 「ヒカリちゃんは?」

ヒカリ 「あたしはズイの遺跡でアンノーンの調査!」
ヒカリ 「アンノーン文字はコウキ君には読めないだろうし」

コウキ 「アンノーン文字? 読めるのヒカリちゃん?」

ヒカリ 「えっへん! 伊達にナナカマド研出身のトレーナーじゃないわよ!」

コウキ 「今はコーディネーターじゃないの?」

ヒカリ 「どっちでもいいわよ、で、どうする?」
ヒカリ 「あたしもロストタワーに一緒に行こうか?」

たしかに、ヒカリちゃんと一緒なら捜索も安心だ。
こっちは赤ん坊のピンプクで恐らく手一杯になる。

コウキ 「そうだ、ポケモン! ポケモンに任せてみたらどうかな?」

ヒカリ 「ポケモン…て、まさかポケモンにロストタワーの捜索を!?」

コウキ 「違う違う! ポケモンたちにピンプクを任せてみようと思うんだ!」

ヒカリ 「ああ、なるほど、たしかにブイさんとかなら安心だしね」

コウキ 「これなら、僕がフリーになってロストタワーにもいけるし」
コウキ 「早速、出てきてブイさん!」

ブイゼル 「ブイ」

僕はブイさんを出して、状況を教える。

ヒカリ 「でもさ、ブイさんだけじゃ辛いんじゃない?」

コウキ 「あ、そうだね…」

ブイゼル 「ブイ、ブイブイ」

ブイさんはだったらと、ヤミカラスとフカマルのボールを叩く。
借りると言うのだ。

コウキ 「え!? だ、大丈夫なんですか?」

ブイゼル 「ブイブイ」

ブイさんは問題ないと言うけど…問題児2匹+赤ん坊…大丈夫なのかな?

ヒカリ 「ブイさん、何言っているの?」

コウキ 「ヤミカラスとフカマルを借りるって…」

ヒカリ 「ええっ!? いくらブイさんでも…心配だなぁ」
ヒカリ 「しょうがない、ビークインとルクシオも行って」

コウキ 「いいの?」

ヒカリ 「うん、そんなに危険はないしね」

コウキ 「じゃ…」



…………。



ブイゼル 「全員、注目」

フカマル 「……」
ヤミカラス 「……」
ビークイン 「……」
ルクシオ 「……」

とりあえず、私は全員の注目を集める。
コウキとヒカリはそれぞれの目的のため、動き出した。
私たちはお留守番。

ブイゼル 「自由にしていいけど、騒いじゃだめよ? ピンプクが目覚めるわ」

フカマル 「外には出ていいのか?」

ブイゼル 「いいけど、遠くには行っちゃ駄目、ズイタウンの外に出るのは論外よ」

フカマル 「うっし、了解〜」

ブイゼル 「ちなみに、人様や他のポケモンに迷惑かけたら…それに応じて罰を与えるから」

フカマル 「ムグ…」

やっぱり、やる気満々ね。
もう、トレーナーのポケモンなんだから、いい加減大人になって欲しいものね。

ブイゼル 「ヤミ、彼をお願いできるかしら?」

ヤミカラス 「私でいいのか?」

ブイゼル 「ええ、期待しているわ」

ヤミカラス 「ふん…!」

ヤミはフカマルに着いていって、ポケモンセンターの外に出る。
あの子は、あれでも元誰かのトレーナーのポケモン。
捨てられたのは可哀相だけど、まだトレーナーとの癖は残っているみたい。
なんだかんだで命令されたら素直に聞く辺りはトレーナーのポケモンらしいわね。
けど、コウキの命令は聞かないのよね…あの子。

ルクシオ 「あの…僕はどうすればいいんですか?」

ブイゼル 「私はこの子の世話があるから、ルクシオはビークインさんと一緒にあまいミツを探してきて」

ビークイン 「は〜い、行きましょうか〜♪」

ルクシオ 「はーい!」

ビークインとルクシオは同じくポケモンセンターの外に出る。
私はピンプクを抱きかかえて、一旦ポケモンセンターの外に出た。

ヒュゥゥゥ…。

ブイゼル 「……」

優しい風が吹く。
とても気持ちよく、すべてを癒してくれそうな風。
このズイタウンは牧場町で近くに大きな牧場もあった。
私はピンプクを抱えて、小高い野山の丘に腰を下ろした。

ピンプク 「ぴぃ…」

ピンプクは優しい笑みを浮かべて眠っている。
寝ているときの子供は、可愛いわね。

ピンプク 「ピ?」

ブイゼル 「?」

ピンプクは突然目を覚ました。

ピンプク 「ピィ?」

赤ちゃんは最初は喋られない。
私たちにも言葉はわからず、まぁ、しばらくすれば言葉も自然に覚えるけど。
ボールの中にいたらいつまで経っても精神は子供のままになる。
正しく育てるにはちゃんと、一人前になるまでこうやって育てないといけない。

ブイゼル 「どうしたの?」

ピンプク 「ピィ…」

ピンプクは泣きそうだった。
さすがに泣かれると面倒。
この顔からすると。

ブイゼル 「ほら、モモンの実、甘いわよ?」
ブイゼル 「コレを液状にして…」

私はモモンの実を口に含み、ピンプクの食べやすい状態にして、口渡してピンプクに与える。

ピンプク 「ピ〜ンピ〜ン♪」

ピンプクは嬉しそうだった。

ブイゼル 「よしよし、たかいたかーい」

ピンプク 「ピンピン♪」

ブイゼル 「おおきく、大きくなるのよ」

ピンプク 「ピーン、ピーン♪」

ピンプクにはまだ、理解できないかもしれない。
だけど、いつかわかってくれるかな?

ブイゼル 「私はあなたのお母さんにはなってあげられないけど…」

だけど、この子を精一杯愛情もって育ててあげよう。
コウキも、そう…あの子はまだまだ子供だけどこの子のことをきっと大事にしてくれる。
手間のかかる今は、私が支えなきゃね。

ピンプク 「ピンピン!」

ブイゼル 「ピンプク?」

ピンプクは空を仰ぐとじたばたと私の腕の中で暴れていた。
私はピンプクの足をそっと地面につけて、手を離す。

ピンプク 「ピン〜」

ぱたぱたぱた〜。

ブイゼル 「…器用ね」

ピンプクは思ったよりは器用な足取りでぱたぱたと私の周りを走り回る。
まだまだ子供なので転ばないか不安で不安で仕方がないのだけど。

フカマル 「うっひゃー!!」

ブイゼル 「!? まさかっ!?」

突然、遠くからフカマルの声が聞こえる。
瞬間、嫌な予感がする。

ブイゼル 「ピンプク…ちょっとくらい大丈夫よね?」

ピンプク 「ピン?」

ブイゼル 「ピンプク…ここで、大人しくしていてね?」

私は電光石火でフカマルの元に向かう。
あの馬鹿…あれほど言ったのに!



ブイゼル 「ちょっとフカマル! 私は…!」

フカマル 「それどころじゃねぇ! アレを見ろー!」

ブイゼル 「えっ!?」

フカマルは大慌てでヤミカラスの方を指す。
するとそこには。

ムクバードA 「女! 覚悟はできているんだろうなぁ!?」

ヤミカラス 「ふん! 一昨日くるんだな」

ムクホーク 「てめぇ、この数見ていい度胸じゃねぇか」

フカマル 「ヤミカラスのやつ、あのムク軍団にナンパされたんだよ…そしたら!」

ブイゼル 「もういい…言わなくてもわかる……」(泣)

間違いなく、はじき返したわね。
そして、あんな状態に。
ちなみに相手はムクホークの大将を中心に10匹ほどムクバードがいる。
どう考えても分が悪い。
おそらくここら辺を根城にしている、ギャングのようなものでしょうね。

ヤミカラス 「面倒だ、纏めてかかってこい」

ムクホーク 「野郎ども! 女だからって容赦するこたぁねぇ! ぶち殺せー!」

ムクバードA 「子供産めねぇ体にしてやるぜー!!」

ヤミカラス 「ふん!」

ヤミカラスは襲い掛かってきた一匹に『つばさでうつ』攻撃をして、打ち落とす。
しかし数が多いわね。

ブイゼル 「はぁ……フカマル、掴まって」

フカマル 「よしきたー!」

フカマルは私の背中に掴まる。
私は『アクアジェット』で空を飛び、ヤミカラスの真後ろから狙うムクバードの一匹を打ち落とす。

フカマル 「うはははー! 近づけりゃこっちのもんだー!」

フカマルは真上から2体纏めてムクバードを『ドラゴンクロー』で打ち落とした。

ヤミカラス 「! お前ら……」

ブイゼル 「油断しないの! 後ろ!」

私はヤミカラスを一喝する。

ムクバード 「もらったー!」

ヤミカラス 「ふ! 甘いな!」

ヤミカラスは突然、急スピードでムクバードの視界から消え、真後ろから攻撃する。

ブイゼル 「『つばめがえし』…そんな技隠していたの?」

ヤミカラス 「能ある鷹は爪を隠すものよ……さて」

ブイゼル 「残ったのは、あなただけね」

私たち三人は残り1匹となったムクホークと対峙する。

ムクホーク 「くっ!? こ、こいつら化け物か!?」

ヤミカラス 「命乞いは許さない、自分の犯した罪を悔やんで死になさい」

ブイゼル 「いえ、殺すのは生ぬるいわね…死んだ方がましという生き地獄を味あわせるべきよ」

ヤミカラス 「ふ、そうだな…そうしよう」

フカマル (お、女って怖ぇ…いや、この二人が特別なのか? だとしても、チョッカイかけるのはやめよう…)

ムクホーク 「ひ、ひぃぃぃっ!?」



…………。



ブイゼル 「はぁ…まったく、どうしてあんなことに、おまたせ…ピンプク……あれ?」

私はムクホークを処刑した後、ピンプクの待っているはずの場所に戻るとなんと、ピンプクの姿がない。

ブイゼル 「しまった!? 見失うなんて!」

私は急いで探す。
しかし、どこにも見当たらない。

ブイゼル 「く…! 仕方がない!」

私は急いでヤミカラスを探す。
ヤミカラスはすぐに見つけることが出来た。
ちょうど、フカマルも一緒にいた。

ブイゼル 「ヤミカラス!」

ヤミカラス 「ん? どうした?」

ブイゼル 「ピンプク見なかった!?」

ヤミカラス 「いや、見てないが?」

フカマル 「姐さん…まさか」

ブイゼル 「そうなの…ちょっと目を放した間に…」

ヤミカラス 「く! 相手は赤子だぞ!? 何を考えている!?」

ブイゼル 「わ、わかっているわよ! でも今は!」

ヤミカラス 「わかっている! すぐ探す! いくぞ、フカマル!」

フカマル 「わかりやした姉御!」

私たちは手分けしてピンプクを探す。
このままじゃ洒落にならない!
もし、変なのに巻き込まれていたらそれこそ!



……………。



『同日 某時刻 ロストタワー』


コウキ 「えと、ここが最上階?」

僕はハヤシガメとドーミラーさんを連れて、ロストタワーに来ていた。
中にはムウマやゴース、ゴルバットなんかもいて結構大変。
でも、とりあえず目的の最上階にはついた。
後は秘伝マシン04だけど…。

おばあさん 「おお、若いの、よく来ましたな」

コウキ 「おばあさんは?」

おばあさん 「私はこのロストタワーに眠る魂たちを見守る者じゃ」
おばあさん 「そして、若いさんのようなポケモントレーナーを助けることもやっとります」
おばあさん 「お若いさん、これをもっていきなさい」

おばあさんはそう言ってあるしーでぃーを持ってくる。

おばあさん 「これは秘伝マシン04『かいりき』、きっと旅のお役に立つでしょう」

コウキ 「これが…」

僕はおばあさんの手から秘伝マシンを受け取る。
これが今回の目的の秘伝マシン。

コウキ 「ありがとうございます、おばあさん」

おばあさん 「いえいえ、それでは旅のご武運をお祈りしていますよ」

僕はおばあさんにお礼を言い、その秘伝マシンをバッグに閉まって、僕は来た道をまた戻るのだった。

コウキ (ピンプク、元気にしているかな?)

ブイさんに任せっぱなしのピンプクが不意に気になってしまう。
ブイさんに任せているんだから安心だとは思うけど、やっぱりこれも親心なのかなぁ?
フカマルとヤミカラスもやっぱり不安あるけど。
大丈夫…だよね。

コウキ (うん、やっぱり僕がちゃんとブイさんたちを信用しておかないとね)

僕はそう思うと、早くピンプクに会いたいという思いを抑えながらも、少し小走りで戻るのだった。



…………。



ブイゼル 「駄目……どこにもいない」

フカマル 「やっぱり…すでにもう亡き者に…」

ヤミカラス 「フカマル…」

ブイゼル 「あなたが亡き者になりたいの?」

フカマル 「じょ、冗談ですよ…姐さんたち…」

ブイゼル 「ズイタウン中探してみたけど、どこにも見当たらないわ…あの小さな体じゃそう遠くにはいけないと思うんだけど」

少なくとも育て屋さんの中、ポケモンセンターや牧場も見回ったけどいなかった。

ヤミカラス 「私は上空から探してみたが、少なくともズイや、その周辺には見当たらなかった」

フカマル 「俺っちは遺跡の方を探してみたけど、途中の険しい道にもいなかったぜ」

一体どこに…。
私が…私が目を離したばっかりに…。

ピンプク 「ピ〜♪」

ブイゼル 「? ピンプク!?」

フカマル 「今、どっから聞こえた!?」

ヤミカラス 「見当たらないぞ!?」

私たちはピンプクの声が聞こえて周りを見渡すがピンプクはいない。
私たちの周りには近くに一本木があるだけだ。

ブイゼル 「あ…いた」

ピンプク 「ピ〜♪」

私はピンプクをすぐそばで見つける。
それは木の上だった。
私たちの真上に、枝に乗ったピンプクがいた。

ピンプク 「ピ…ピッ!?」

ブイゼル 「あ、あぶない!」

ピンプクは足を踏み外して木から落ちる。
私はとっさにピンプクを受け止めるのだった。

ブイゼル 「ふぅ…大丈夫?」

思えば、昔私もコウキに木から落ちて助けられたっけ…。
まさか、同じことすることになるなんてね。

ピンプク 「ピン♪ ピ〜♪」

ブイゼル 「え? これは?」

ヤミカラス 「モモンの実?」

ピンプクは私に抱きかかえられながらモモンの実を差し出してくる。

ブイゼル 「これを渡しに?」

ピンプク 「ピン♪」

ピンプクは頷いてそうだとジェスチャーをしてくれることはないが、代わりに私に最高の笑顔を見せてくれる。

ブイゼル 「ありがとう、ピンプク」

コウキ 「おお〜い、みんな、ただいま〜♪」

ヤミカラス 「ん?」

ブイゼル 「コウキ…」

そこへコウキが帰ってくる。
コウキは駆け足でこっちに寄ってきた。
よほど、ピンプクが心配だったのかしら?

ピンプク 「ピーン! ピーン!」

ブイゼル 「ピンプク?」

ピンプクはコウキを見つけるとじたばたとして私の腕から出ようとする。
私はそっとピンプクを離してあげると…。

ピンプク 「ピン〜♪」

コウキ 「あ、ただいま、ピンプク♪」

ピンプクは嬉しそうにコウキに近づいてく。

ピンプク 「ピン、ピンピン♪」

コウキ 「ん? この石は? 僕にくれるの? ありがと、ピンプク」

ピンプク 「ピン♪」

ピンプクはいつの間にか懐に入れていた丸い石をコウキに差し出した。
コウキはそれを貰うと、ピンプクを優しく抱きかかえた。

ブイゼル (やっぱり、コウキが一番か…)

ピンプク…タマゴに似た真ん丸い石をお腹の袋に入れている、好きな相手に石を渡す。
そう、ピンプクはコウキが好きなのね。

ブイゼル (よかったね、コウキ…)

その後、私たちはボールに戻され、コウキはヒカリと合流するのだった。





ポケットモンスターパール編 第14話 「誕生、したらしたで大変だ」 完







おまけ

Back Next

Menu

inserted by FC2 system