勇者と魔王〜嗚呼、魔王も辛いよ…〜




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第1話 『勇者と魔王』




これはとある異世界の物語です。
その世界に人族たちの住む世界…人間界と魔族の住む世界…魔界がありました。
それぞれが独立した文化を持ち、互いが干渉をすることはありませんでした。
ところが、ある日悪い魔王が、人間界に降りてきてお姫様を攫ってしまいました。
そして、悪い魔王は数々の配下であるモンスターたちを使い、長い長い間、人族たちを苦しめました。
そんなある日、とある村からひとりの青年が現れました。
青年は剣を片手にモンスターたちに立ち向かっていったのです。
彼は苦難の旅の末、魔王が人間界で居を構える、魔王城に辿り着きました。
そして、激闘の末、魔王を倒すことに成功しました。
魔王を倒した彼は勇者とよばれました。
そして、救われたお姫様は勇者と結婚して、ひとつの国を興すのでした。







バタン。


? 「はぁぁぁぁ…」
? 「あ〜あ♪ わた〜しはお姫様〜♪」
? 「い〜まはとらわ〜れて、いるけれど〜」
? 「これでもセ〜リア〜王女〜な〜の〜よ〜〜〜♪」

? 「くぉら!!!」

ドカァ!

セリア 「あら〜、よく見たらサタンちゃん?」

サタン 「ちゃん付けはやめぇい!!」

あ、さてさて、いきなりこんな始まり方して良く分からないという方にご説明しましょう。(分かる奴もいないと思うが…)
まず、サタンと呼ばれる方。
この作品の主人公の一人、魔王『サタン』である。
ちなみに当然男。
サタンは見た目はまだわりと幼い感じがする男だった。
年齢は100年以上生きてはいるが、人間に直すと18歳位の青年だった。
サタンは一応魔王らしく体を黒っぽい装束に包んでいた。

一方セリアと呼ばれる方。
こちらもこちらとて王女らしい姿をしていた。
こちらはサタンより更に一回り幼く感じた。
それもそのはずセリアはまだ16歳の少女だった。
姿は純白のドレスに身を包んでブラウンの長いストレートヘアーをなびかせていた。

ちなみに場所はここ、魔王城の牢屋。
何気にサタンの寝室の隣だったり…。

セリア 「はぁ〜、私にもいつか勇者様が現れるのですね〜」

サタン 「勇者ならばすでに現れている、もっともこれで4人目だがな」

セリア 「あら〜? またエセ勇者なわけ〜?」

サタン 「ふん、今使い魔のメビウスに確認させている」

セリア 「あら? ということはメーちゃんは今お城にいないのかしら?」

サタン 「今はリアウの森にいる、ゴブリンたちが接触する頃のはずだ」

セリア 「リアウの森か〜思い起こせば色々な思い出がありますわ〜」
セリア 「あれはまだ私が5歳の頃でした〜」

サタン 「語りだすなっ!」



…………。



あ、そんな会話が魔王城で行われている頃、噂になっていたリアウの森では〜?



少女 「さーて、チャキチャキっとゴブリンども叩き潰して昼ごはんにするんだからー!」

青年 「アルル! んなこと言ってないでさっさと援護してくれ!」

アルル 「分かっているわよ! いっけぇ! ファイアーボルト!!」

ゴォウ! ゴォオオオ!

ゴブリンA 「グギイイイイ!?」
ゴブリンB 「ギギギギギィ!?」

アルルの放った炎の魔法『ファイアーボルト』はゴブリンたちに襲い掛かり、ゴブリンたちを苦しめる。

青年 「よし! エド! 行くぞ! シーラさんは支援を!」

エド 「任せろ!」
シーラ 「はい!」

そう言うと、青年とエドと呼ばれる剣士はゴブリンたちの輪の中に入って行き、戦う。

シーラ 「聖なる光よ、彼らをその光で包め! プロテクション!」

シーラと呼ばれる女性は持っていた杖を掲げると緑色の光が青年たちを包んだ。
これに包まれた者は…。

ゴブリンC 「ゴオオオオォ!」

ガキィン!?

エド 「効かないな!」

ゴブリンC 「ゴブ!?」

この光に包まれたものはその光によって物理攻撃に強くなるのだ。

エド 「たぁ!」

青年 「てぃ!」

ゴブリンD 「ギィア!?」

ゴブリンE 「ギャブ!?」

シーラ 「みなさん! ゴブリンたちが逃げていきます!」

青年 「ふう…」

エド 「おっし」

ゴブリンたちが逃げると、勇者たちはようやく一息つくのだった。

アルル 「さ〜て、ごっはんごっはん♪」

彼女の名前はアルル。
魔法使いで黒い三角帽に黒いマントと装束、黒尽くめでいかにもな服装だ。
真っ赤な髪の毛を短く切って、真っ赤で大きな目の下に青いペイントがしてあった。
14歳、まだまだ半人前の魔法使いだ。

エド 「おいおい、ここで食うのかよ?」

彼はエド、エドワードだ。
剣士でその腕は中々、ただし魔法の類は欠片も才能が無い。
比較的軽めの鎧に身を包んでいるが、それは最低限度の防御力で基本は動きやすいようにだった。
鎧の下は普通の私服のようで、彼は銀色に輝く鋼のロングソードを鞘に収めると、そのまま地面に座り込んだ。
エドは金髪の髪で髪型もあまり邪魔にならないように短めに切っていた。
瞳は青く、いうなれば西洋人のような身なりだった。

シーラ 「ふぅ、皆さん怪我はありませんね?」

そして、シーラ。
彼女は僧侶で、その身は白装束に身を包んでいた。
ピンク色の長い髪はまっすぐに腰まで伸び、黄色とピンクの目を細めて笑っていた。
彼女は4人の仲で一番年上、みんなのお姉さんだった。

青年 「怪我はなさそうだな」

そして、最後に彼。
彼の名はレオン。
勇者であり、この作品のもう一人の主人公である。
元はトートスという小さな村の一少年だったが、あることがきっかけで剣を取り、仲間たちと共に戦うことになったのだ。
年齢は18歳、160センチ弱位の少年で、真っ黒な髪を特に整えることも無く肩に触れない程度に伸ばしていた。
瞳も黒く、そのいでたちは日本人のような感じだ。
服装は普通の洋服を着ているだけで、剣も単なる銅の剣にすぎなかった。
あまり勇者らしくは無いが、実際本人もあまりそんな気は無く。
むしろ勇者として自覚がほとんど無いといっても良かった。
単に周りが勇者と呼んでいるだけ、そう思っているのだった。

レオン 「それにしてもゴブリンが多くて困るな」

エド 「もう、ここまで魔王軍の進行は進んでいるということだな…」

アルル 「んなのもうとっくにじゃん…あたし達を警戒して襲わせるんじゃない? 魔王がさ」

シーラ 「早々にこの森を立ち去るべきでしょう…行きましょう!」

レオン 「うん! こんな所にいつまでも居るわけにはいかないからな!」

エド 「んじゃ、さっさと…」

アルル 「ええ!? ちょっとご飯は!?」

シーラ 「それは、後にしましょう」

アルル 「なによそれー!」



メビウス 「……」

そうして、勇者たちは森を進む。
森はまだ続く。
これからもゴブリンたちが勇者たちを幾度となく襲うだろう…。
そして、そんな時空中から勇者たちを観察する一匹のモンスターがいた。
名はメビウス…魔王の使い魔である。
その姿は大きな目玉の本体で、眼球を守る肉質は黄色、その体の両側には独立して大きな手袋のような手が浮遊していた。
体長は30センチほど、戦闘能力は薄い種族だった。

そして…メビウスの特殊能力…。

メビウス 「…レオン、勇者、種族人族…スキャン値。レベル3、特徴は薄く、まだまだ未熟、現状危険度はQクラス…」
メビウス 「…エドワード、戦士、種族人族…スキャン値。レベル4、剣術に関してはレベル2の力を持っているが魔法に関しては全く才能なし、現状危険度はPクラス」
メビウス 「…シーラ、僧侶、種族人族…スキャン値。レベル6、若干の対術を習得しているが基本的に戦闘能力は低い、支援魔法が得意、現状危険度はOクラス」
メビウス 「…アルル、魔法使い、種族亜人間…スキャン値。レベル1、若干魔族に血を持っているが、かなり薄いため人間とほぼ変わらない、攻撃魔法が得意だがまだレベル1。現状危険度はQクラス」

使い魔メビウスの特殊能力スカウター。
目視した相手の詳細を全て調べることのできる能力だった。
メビウスは魔王サタンの命で今回の勇者の偵察に来ていたのだ。

メビウス 「さて、今回の勇者は『本物』でしょうかね〜?」

メビウスはそう呟くと空中から勇者の後を追った。



エド 「えーと、こっちにアーチスの村があるはずなんだが…?」

アルル 「んなこと言ったって、どこ見ても森よ?」

レオン 「……」

俺たちはあいも変わらず森の中に居た。
ここは人族側領地後方部。
にもかかわらず、魔王軍はしきりに襲い掛かってくる。
当然といえば当然か、元々この森にはゴブリンが多く住んでいた。
魔王はそのゴブリンを利用しているだけなのだから。

レオン (正規軍でもない奴らにてこずっている…これじゃだめだ)

俺たちの実力はまだまだ低い。
早く強くならないと。

アルル 「おーい、レオーン。もしもーし!」

レオン 「ん、なんだよアルル?」

突然、アルルに声を掛けられ反応すると何やらアルルは顔を赤くして頬を膨らませていた。

アルル 「これからどうするの!!」

レオン 「え? これから?」

エド 「左へ行くか、右へ行くか」

そこへエドのフォロー。
右? 左?

レオン 「右も左もない気がするんだが?」

当然森の真っ只中。
幸い目の前に標識があり、開拓した林道が続いている。
しかし…。

エド 「標識は見事に壊されているからな…」

そう、当然ながらゴブリンたちに標識は壊されていた。
せめて、ここらの地理に詳しい奴がいれば…。

エド 「シーラさん知らない?」

シーラ 「申し訳ございませんが…」

…知らないらしい。
当然だが、俺も知らない。

アルル 「…じゃあ、適当に行く?」

レオン 「そうも言っていられないようだ…」

エド 「…またか」

ゴブリンA 「ゴバァー!!」

ゴブリンB 「ギギー!」

見事にまた、ゴブリンたちが現れる。
数は7体、少し多いか?

アルル 「多いね、ここはヒートシャワーで!」

エド 「まて! ここでそれを使ったら森が焼けてしまう!」

レオン 「本音は光系とか、風系の方がいいんだがな」

アルル 「うぅ…あたし炎が好きなのに」

アルルはそう言いながら、魔力を集め始める。
アルルは本来人族がほとんど持たない『魔力』を持っている。
それはアルルに若干ながら魔族の血が流れているからだ。
そして、修行によってアルルは得意不得意ありながらもほぼ全ての属性の魔法を使える。

シーラ 「では、私も!」

そう言って、シーラさんも精霊力を高める。
シーラさんが使うのは『精霊力』、本来人族が使うのはこっちの方である。
人族はほとんど魔力を有しないため、その代価として扱うのだが精霊力。
精霊力はこの世界のいたる所、物質、空気などあり、それらを使うことで魔法を使う。

魔力と精霊力にはいくつか違いがあるが、一番の違いは魔力は己の体の力を使うこと、精霊力はその場のエネルギーを使うことだろう。
他にも、魔力は基本的に攻撃的な魔法が多く、精霊力は防御的な魔法が多い。

シーラ 「聖なる力よ、その力でかの者を拘束せよ! アースバインド!」

そう言うと緑色の光がゴブリンたちの地面から生え、ゴブリンたちの足に絡みつき、ゴブリンたちの動きを拘束した。

アルル 「ライトニング!」

バチィィ!

ゴブリンA 「ギググ!?」

エド 「行くぞ!」
レオン 「はぁ!!」

そして、俺たちは剣を持ってゴブリンたちの中に入る。

レオン 「てぃ!」

ゴブリンB 「グブゥ!?」

エド 「たぁ!」

ゴブリンE 「ギギッ!?」

ゴブリンが上手く動けない隙に俺は手早く片付けていく。

ゴブリンA 「グア!!」

ドコォ!

レオン 「ぐぅ!?」

俺はゴブリンの一撃を直撃してしまう。
ゴブリンは常に手に大きな木の棍棒を持っている。
この一撃は死にはしないが気絶しそうな一撃だ。

エド 「レオン!」

レオン 「く…おおっ!」

ザシュウ!

ゴブリンA 「ゴゥ!!?」

俺は反撃でゴブリンの腹部を切り裂く。

ゴブリンC 「グアー!」
ゴブリンD 「ゴブブー!」

レオン 「とりゃー!」

エド 「てぇい!」

残りは掃討だ。
いくぞー!



…………。



メビウス 「…ゴブリンたちは全滅、勇者たちは全員無事ですか、一応サタン様に伝えないといけないですね」

私はそう思うと、その場を離れる。
ある一定の所まで行けば、魔王軍のみが使用できる転送印がある。
急がないと…。




…………。
………。
……。




『魔王城 玉座の間』

メビウス 「以上です」

サタン 「そうか、わかった」

セリア 「何がわかったかっていうと、勇者が無事生きているらしいわよ♪」

サタン 「読者に説明せんでよーし!」
サタン 「ていうか、お前は牢屋にいろ!」

セリア 「えー、だってあそこ殺風景なんだもーん!」

サタン 「牢獄じゃないだけにましと思え!!」

セリア 「ふふ〜ん、でも、どうしてサーちゃんは私をあんな個室に幽閉しているのかしら?」
セリア 「もしかして、夜な夜な私の部屋に侵入して、私を襲うつもりじゃ!?」
セリア 「いやーん、サーちゃんって結構大胆なのね…でも、惚れちゃあだめよ♪」

サタン 「なーんーのーはーなーしーだーーーー!!!!!!!」

セリア 「きゃはは! こんなロマンスもありじゃない?」
セリア 「若い魔王も手を焼いてるぜー♪」

サタン 「誰のせいだ!? 誰のーっ!!」

セリア 「というわけで、グッバーイ♪ チャンチャン♪」

サタン 「勝手に終わらせるなー!!!!」

メビウス 「…えと、次回…」
サタン 「お前もやるなー!!」





To be continued




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