勇者と魔王〜嗚呼、魔王も辛いよ…〜




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第13話 勇者の戦い』





『港町ソレイユ』


レオン 「…なんだ? この見られている感覚…」

今までかつてないプレッシャーがこの場から感じれる。
周りは人だかりも多い広場。
こんなところでプレッシャーを受けるなんて。
しかも、なにか魔王軍の連中が出すそれと違う気がする。
一体、誰なんだ?

レオン 「…まずは人のいないところに行かないと…」

ここで戦闘はまずい。
戦いやすい場所に行く必要がある。



…………。



レオン 「…ここならいいか」

俺はしばらくして、人はいないが比較的広い場所に来た。
見渡しもいい、ここなら戦いやすいだろう。

レオン 「いい加減出てきてくれ、そんな違和感出されたらこっちが落ち着かない」

フール 「……」

レオン 「…変な奴だな」

出てきたのは左右不対称なな仮面を被り、茶色いロープを被って全身を隠した相手だった。

レオン 「魔王軍か?」

フール 「……」

相手は何も答えない。
判断は出来ない。
しかし、それが肯定しているような気もする。

レオン 「…答える気がないのか…喋れないのか…」

なんにせよ俺はフランツェを抜く。
向こうがやる気なら何か武器を持っているだろう。

フール 「…勇者レオン、覚悟…!」

レオン 「はぁっ!」

ガキッ!

俺はさっきを感じてフランツェで斬りかかる。
それと同時にやや相手の方が反応が遅れて手が出る。
そして俺のフランツェと相手の右腕がぶつかり合う。

レオン 「て、まじかよ!?」

フール 「!!」

ブォン!

レオン 「くっ!」

俺はそのまま右腕で振り払われる。

レオン 「じょ、冗談じゃないぜ…いくらなんでも腕で受け止めるなんて…しかも無傷かよ…」

どうなっているのかはわからない。
ぶつかった時、石を叩いたような音がした。
斬れた感覚はない、だからといって硬いという感じもなかった。
とてつもなく違和感があったが、わかったことはまるで効いてないということ…。

レオン 「クソ!」

フール 「……」

ガキッ!

今度は肩口から斬りかかる。
しかし、やはり斬れる様子はない。
バリアーで守られているわけでもない、間違いなく効果がない!

フール 「無駄だ、通常攻撃で俺にダメージは与えられない」
フール 「俺はフール…愚者に正しき攻撃は通用しない…」

レオン 「?」

どういう意味だ?
正しき攻撃?
魔法以外の直接攻撃のことか?

レオン 「くそ…だったら!」

俺は神器『フランツェ』特殊能力を使う。

レオン 「はぁ! 貫け! フランツェ!」

ガキィ!!

俺は特殊能力を使いながら斬る。
斬った時の感覚はさっきまでと同じだ。
しかし、フランツェの特殊能力は『貫通』。
ヒットの見た目は同じでも相手の防御力やバリアーなど無視攻撃できる。
さすがにこれまでは…!

フール 「無駄だ…」

レオン 「なに!?」

フール 「ふん!」

ドコォ!

レオン 「ぐあっ!?」

俺はボディーブローを思いっきり腹部に受ける。
馬鹿な…『貫通』の能力でもダメージを与えられない…。

レオン (防御方法の根本が違うのか? 硬いとか防いでるとかじゃない…効いていないのか?)

レオン 「くそ…どうしたらいいんだ!?」

ルシファー 「諦めてはいけません! あなたはまだ負けていないのですから!」

フール 「!」

レオン 「え!?」

突然、どこからか声が聞こえる。
なに!? もしかして○面ライダーでいうところのお助けキャラ!?

ルシファー 「とう!」

バッ!

レオン 「て…マジスカ!?」

何と現れたのは魔王格のある意味最強人物ルシファーさんだった。

ルシファー 「大丈夫ですか?」

レオン 「な、なんでルシファーさんが!?」

驚きだった。
まさかこんな凄い人が助けに来てくれるなんて…。

フール 「一級監査官か…」

ルシファー 「彼はやらせませんよ…」

フール 「すこしはこちらも覚悟を決めないといけないようだな…」

ルシファー 「…あなたは魔法以外効かないのでしょう? ラグナロクは使いませんよ」

フール 「ふ…」

レオン (魔法しか効かない?)

そんなこと本当にありえるのだろうか?
しかし、現実の俺の攻撃ではノーダメージ…。

レオン (くそ…ここに来て遂に俺の弱点が来たか…)

俺の弱点…それは『魔法が使えない』ということだった。
通常の魔法は当然としても俺には精霊魔法も使えなかった。
才能がないのだ…。
俺は勇者ではあるが、その実戦士と変わらない。
魔法が使えなければ…ただの戦士と同じだ…。

レオン 「く…」

俺には何も出来ないのか!?
俺には見ているだけしか…。

フール 「!」

ルシファー 「レイ!」

ピィン!

フールは先に動くが、ほぼ同時にルシファーさんは手の甲から細い光線が出る。

フール 「ふん!」

フールは光線をかわし、一気に距離を詰める。
まずい! 物理攻撃のきかない相手に近づかれたら何も出来ない!

ルシファー 「くっ!?」

フール 「逃がすわけないだろう!」

ルシファーさんは明らかに嫌がる。
しかし、フールは距離を離させしない。
魔法だけじゃルシファーさんで辛いのか!?

ルシファー「この! ホーリーボム!」

フール 「ふん! この距離で!」

ルシファーさんは超接近戦で魔法を放つが、フールには当らない。
いや、それよりあんな至近距離じゃ当っても自分があぶない!

レオン (なにやってる俺! 勇者だろ!? こんなことでサタンが…魔王が倒せるのかよ!?)
レオン 「くっそーっ!!」

ドォン!

フール 「なに…!?」

突然、白い弾がフールの背中に当る。
フールは明らかに驚いた顔をしてこっちを振り向いた。

レオン 「で、でた…? ま、魔法が?」

フールは驚いた顔をしていたが、それ以上に驚いたのは俺だった。
あれって…ホーリーボールだよな?
魔法だよな?

フール 「威力は薄いが…魔法を使っただと…」

レオン 「効いたのか?」

ダメージは少ないが明らかにダメージは通ったようだ。

レオン 「よーし! こうなったらやけくそだ!」

俺はもう一度放とうとする。
しかし…。

シーン…。

レオン 「あれ? でない!? てか、どうやったら魔法って出るの!?」

ルシファー (やはり、勇者といえど魔法はほとんど使えない!?)

俺は四苦ハ苦した。
さっきあきらかに魔法出たのに!?

ルシファー 「レオン君! 精霊魔法だ! それなら今の君なら扱えるはずだ!」

ルシファーさんはそう言ってくれる。
でも…精霊魔法って…。

レオン 「俺、呪文のスペル、知らないんですけど!?」

そう、精霊魔法は不便なことに呪文の詠唱が必要なのだ。
通常魔族とかが使う魔法は自分の魔力を使う代わりに詠唱はいらない。
必要な魔力を集めたらその場で使える。
それに対し、精霊魔法はその場の精霊力を操って、魔法を使う。
そのため、周りの精霊の力を使うため、スペルの詠唱がいるのだ。
俺、知らないってー!

ルシファー 「く! でろ! ラグナロク!」

ルシファーさんはたまらず空間からラグナロクを抜く。

フール 「なんだ? 結局使うのか?」

ルシファー 「残念ですが、このままでは勝てないのでね!」
ルシファー 「走れ! ラグナロク!」

ゴォゥ!!

神器ラグナロクの特殊能力『衝撃』がフールを襲う。
フール自身にダメージはないがフールは5メートルほど吹き飛んだ。

フール 「ただのこけおどしか?」

ルシファー 「全く…厄介な能力ですね…」

レオン (無茶苦茶だ…)

あのラグナロクの能力『衝撃』は並みじゃない。
並みの剣は鍔迫り合いになるだけで折れ、その剣の放つ衝撃波十分の人を殺せる攻撃力を持っている。
ところがそんな攻撃でさえフールには全く無意味だった。

ルシファー 「レオンさん、今から私のある精霊魔法を教えます…ちゃんと覚えてくださいよ!」

レオン 「え!? あ、は、はい!」

どうやらルシファーさん直々に御講義してくださるらしい。
こ、こりゃ責任重大だ!

フール 「ふ! そんな暇あるのか!」

ルシファー 「く! 我、光の力となりて!」

レオン 「我、光の力となりて…」

フール 「ふん!」

フールは凄いラッシュでルシファーさんを襲う。
ルシファーさんはスウェーやパーリング、サイドステップなど様々な防御テクニックを使いこなして回避しながら呪文を詠む。
どっちも化け物だ…。

ルシファー 「かの者に裁きの閃光放つ!」

レオン 「かの者に裁きの閃光放つ…」

フール 「もらった!」

ドコォ!!

ルシファー 「!?」

レオン 「!?」

ルシファーさんはリバーに一撃をこうむる。
俺は声をあげなかった。
本当は上げたかったが、俺は呪文の詠唱中だ。
途中でやめるわけにはいかない。

ルシファー 「ホーリー…ノヴァ!」

レオン 「ホーリーノヴァ!」

キュイイイィン!!

フール 「!?」

ドカァンンッ!!

物凄い爆発が起きる。
俺とルシファーさんの二人分の強力な光魔法だから物凄い閃光と爆発が起きた。
て、いうか威力高すぎだろ!?

俺のはともかく、元々俺とは魔力レベルが段違いに違うルシファーさんの魔法は辺り一帯を焦土にせんばかりの破壊力だった。

レオン 「ルシファーさん!?」

ルシファー 「大丈夫ですよ、ここにいますよ」

ルシファーさんは気がついたら俺の後ろにいた。
い、いつの間に…。

レオン 「よかった、無事だったんですね」

ルシファー 「ふ、アレくらいは転ばないさ…」

レオン (さすがだ…やはりこの人はレベルが違いすぎる…)

改めてこの人が化け物だということがわかる。
あの化け物みたいな魔法に、放った瞬間その場から一瞬で脱出するスピード。
こ、この人魔王軍のじゃなくてよかった〜…。
もし、魔王軍だったら俺とっくに死んでいたろうな…。

フール 「く…う…」

レオン 「げ!? まだ大丈夫なのか!?」

ルシファー 「……」

フール 「やるな、これ以上は無理だ…退却させてもらおう」

ルシファー 「逃がすと思いますか?」

フール 「…逃げるさ、お前でも『アビス』まではおってこれまい!」

ルシファー 「!?」

レオン 「アビス?」

フール 「ふ! さらば!」

ルシファー 「しまった! まて!」

突然、フールの地面に黒いヴォルテックス(渦)が生まれる。
そしてフールは一瞬にしてその渦に飲み込まれて消えるのだった。

レオン 「ルシファーさん…」

ルシファー 「悪いけど、あまり話している時間はないんだ」
ルシファー 「レオン君、君は勇者だ、諦めず勇敢に頑張ってくれ」

レオン 「あ、は、はい!」

ルシファーさんはそう言うと背中の白と黒の翼をはためかせてどこかの空に飛んでいった。

レオン 「我光の力となりて、かの者に裁きの閃光放つ…か」

それは俺が初めて覚えた精霊魔法だった。
いきなり物凄い魔法覚えちゃったな…。
しかし、俺のレベルじゃ精霊がそんなに強い力を貸してくれないのでいくら強力な魔法でさっきのような爆発はまず起こせない。
まぁ、その代わり俺自身の魔力を使うわけじゃないから使う分には全く俺に負担はないが。

レオン 「と、みんなは大丈夫なのか!?」

俺は仲間の事を思い出すと急いで動き出した。
皆は無事か!?



…………。
………。
……。



パランス 「全滅か…まさか魔王軍が勇者一行を守るなんてね…」
パランス 「…やっぱり魔王も危険だな、うん! 殺しちゃおう!」

サタン 「ほう、俺を殺すか?」

パランス 「! あら? 魔王様自らご出陣ですか?」

俺はこの街で一番大きな建物の屋根の上でパランスを見つける。
パランスは俺に気付くと驚いた様子で後ろを振り向いた。

サタン 「貴様だけは俺がやらなければ気が済まない…貴様が俺を殺すなら俺もお前を殺す」

パランス 「へ〜、できますか魔王様?」

サタン 「甘く見るなよ…」

パランス 「…ふ」

サタン 「出ろ! ディアボロス!」

俺は空間から一振りの禍々しき剣を抜く。
俺の神器『ディアボロス』。
俺の愛剣だ。

パランス 「それが噂の魔王の神器ディアボロスですか、なるほど強力なようですね」

ディアボロス 『久し振りに我を抜いたな、サタンよ…』

サタン (ああ、久し振りだが働いてもらうぞ)

ディアボロス 『応! 我の力、 存分に振るえ!』

サタン 「包め! ディアボロス!」

俺は神器ディアボロスの特殊能力『魔導』を使う。
特殊能力『魔道』はラグナロクやフランツェのような直接攻撃系の能力ではない。
いや、『魔道』は攻撃系の能力ではない。
『魔道』は周囲一帯に闇の波動をばら撒き、闇の守護を受けぬ者全ての全能力を激減させる。
この力の前にはどんな兵も赤子同然!
これが魔王の力だ!

サタン 「覚悟…て、おい!」

パランス 「あっはっは! 勝てないとわかって戦いはしませんよ!」

気がついたらパランスはもう遠く逃げようとしていた。
折角シリアスに決めたのに!

パランス 「いくらなんでもディアボロスの力使われたら俺には勝てませんからね!」
パランス 「アジュー! 魔王様!」

サタン 「ち…」

パランスは高笑いと共に逃げ去った。
むかつく奴だ…。

サタン (…アビスか)

何か底知れぬものが動いているのは確かだ。
だが、何人たりとも俺の邪魔はさせない。
たとえ勇者でも異界の魔神でも俺の計画の邪魔はさせない…。

メビウス 「サタン様…」

サタン 「…魔王軍、帰還する…全員にその旨を伝えろ」

メビウス 「…了解」



…………。



アルル 「よかった、全員無事だったんだね」

シーラ 「ええ、私はアンダイン様に助けて貰いました」

エド 「俺はシーザーさんに助けてもらった」

レオン 「俺はルシファーさんだったよ」

アルル 「アルルはスケルトンだったけど、みんな魔王軍に助けられたんだね」

レオン 「ルシファーさんは魔王軍じゃないけどそうだな」

俺たち全員は最初に約束した三階建ての宿屋に集合した。
なんとか、全員無事だったようだ。
しかし、同時に全員が襲われていたようだった。
だが、全員魔王軍に助けられている。
ということは襲ってきた連中は魔王軍ではない。
『アビス』…とはなんだ?
一体、この北側で…いや、この人間界で何が起こっているんだ?
しかし、今の俺たちにはわかるわけもなかった。
そして、今の俺たちはまだまだあまりに非力だった…。






To be continued



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