勇者と魔王〜嗚呼、魔王も辛いよ…〜




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これまで多くの戦いがあった…。









数々の強敵との戦い…。










苦戦…。










喜び…。










哀しみ…。










怒り…。










多くの出会いがあり、多くの戦いがあった。










その、終着点に…俺達はいる。





第37話 『勇魔大戦』





レオン 「…いくぞ、皆!」

俺達は目の前に聳え立つ魔王城を、小高い丘の上から睨み付ける。

シーラ 「目標はあくまで魔王だけです! 前衛はすべて我々が受け止めます!」

エド 「つーわけだ、敵が来ても俺達に任せとけ」

アルル 「アルルだってやるよーっ!?」

レオン 「…ああ」

俺達は、魔王城へと突入する。



…………。



『魔王城 城門』


ラー 『エド! 敵2人前方!』

エド 「早速おでましだ!」

俺達は城門を潜った先に構える二人を睨み付ける。

シーザー 「ここは通しませんぞ!」

スケルトン 「自分、馬鹿ダカラワカリマセーン」

アルル 「シーザーさんとスケルトン…!」

レオン 「ち…いきなりの大物…」

エド 「おい、皆…俺がどうにかする…先いけ!」

シーラ 「! 無茶ですいくらなんでも二人同時は…!」

エド 「まだ、中には多くの敵がいる!! 俺の心配は魔王を倒した後にでもしてくれ」

レオン 「…エド、死ぬなよ?」

エド 「お前より、生存確率高ぇよ…!」

レオン 「いくぞ、3人とも!」

アルル 「う…うううーっ!!」

シーラ 「く! エドさん御武運を!」

俺は3人を先に行かせる。

シーザー 「……」

エド 「へ…シーザーさん、止めないのかい?」

シーザー 「仮に止めても、あなたに阻まれるでしょう」
シーザー 「それより、あなた一人で我らの相手を出来ると?」

エド 「さぁな!? だが、やってみせるぜ!」

俺は聖剣を抜く。
さて…どっちか片方だけならともかく両方なんてどうやって相手する?

スケルトン 「自分馬鹿ダカラワカリマセーン!」

エド 「おめぇ相変わらずそれだけかよ!?」

カッキィィン!!

スケルトンの一撃を俺は受け止める。
そんなに重いわけじゃない、だがコイツで手が塞がる!

シーザー 「容赦はしませんぞ!」

エド 「ちっ! 護れ、ラー!!」

ピキィン!!

スケルトン 「!?」
シーザー 「むぅっ!?」

俺の絶対防御で二人をはじき出す。
そして、すぐさま絶対防御を解き。

エド 「まずはお前だ!!」

スケルトン 「!?!?」

ガコォォン!!

俺はスケルトンの五体をバラバラに叩き砕く。

スケルトン 「ラキキキキ…!」

カタカタカタ…!

エド 「うお…さすがスケルトン…」

見事に叩き砕いたつもりだが…見事すぎて普通に再生されてしまう。

エド 「くそ! ラー! なんかあいつどうにかする方法ないのか!?」

ラー 『ないな…我は盾であって矛ではない』

エド 「くそ…いきなり絶体絶命かよ!」

シーザー 「呑気なこと言っている暇、ありますかな!?」

エド 「やばっ!?」

ブォン!!

俺は瞬歩でギリギリ、攻撃を回避する。

エド 「くそったれ! 倒せないなら倒せないでっ!!」

俺はラーをスケルトンに投げつける。

エド 「護れ! ラー!」

ピキィィン!

スケルトン 「ラキ?」

スケルトンを囲い込むように絶対防御が展開される。

エド 「これで、スケルトン! お前は絶対安全だ! ただし、俺が絶対防御を解かない限りそこからは一切の手出しが出来ないぜ!?」

シーザー 「なるほど…倒しようのないスケルトンを隔離したわけですか」

エド 「厄介きわまりないからな」

シーザー 「ですが、これであなたは最強の盾を失った、私の攻撃を受けきれますか?」

エド 「なぁに…元々俺は両手持ちだ」

俺は聖剣を両手で構える。
さて…パワー比べじゃ人族の俺が勝てるわけがないしな…。

シーザー 「行きますよっ!?」

エド 「くっそぉっ!」

ガキィィィン!!

俺は剣に体重を乗せてシーザーさんの豪腕に対抗する。

シーザー 「たかが、100キロにも満たぬその体で、力勝負かっ!」

エド 「うおおっ!?」

キィン!! ズサササササァァァ!!

俺は前かがみのままシーザーさんに押し返されてしまう。
やっぱり力勝負は根底から間違っているか…。

シーザー 「はぁ!」

エド 「ちぃ!!」

ブォン!!

俺はシーザーさんの追撃を瞬歩で回避し、後ろに構える。

シーザー 「! むぅ!」

ドカァッ!

エド 「なにぃ…!?」

俺は後ろに出たはいいが、尻尾に弾かれる。
かなり強烈な一撃が、腹部に叩き込まれた。

エド 「ぐほ…ぐ…がはぁ…!」

俺は喀血する。
や…やべぇ…アバラが2〜3本逝ったか…?

シーザー 「甘いですな! 後ろが死角とは思わないことです!」

エド 「回避を…ぐっ!」

俺は腹部が痛み、瞬歩が出来ない。
シーザーさんは容赦なく、一撃を構える。

エド 「く…くそったれ!!」

俺は剣を大きく縦に構える。

シーザー 「!?」

シーザーさんは一瞬動きを止めた。
俺はもうたった一撃に賭ける事にする。
残念ながら2撃3撃と放てる状態じゃない。

シーザー 「自分で何をしているか分かっているのですか…?」
シーザー 「あなたのその構え…ただ、剣を一直線に振り下ろしますと言っているようなもの」

エド 「生憎…小細工できるほど体力も残ってないんでな…!」

そう、俺はただ一刀もってシーザーさんを倒すしかない。
これに失敗すれば、もう俺に剣を振る力は残らないだろう。

エド (はぁ…はぁ…やるっきゃねぇんだ!)

シーザー (ちぃ…まさか、プレッシャーに飲まれようとは…)

シーザーさんの進退が窮まる。
まじぃな…俺の体力残り少ないってのに…。

エド (くるか…くるか…くるかくるかくるか!?)

シーザー 「! ツェェェェェェッ!!」

エド (きたッ!!)
エド 「うおおおおおおっ!!」

ブォォォン!! ガッキィィィィン!!

シーザーさんの動きを察知し、俺は剣を振り下ろした。
剣と剣が交錯する…そして。

ヒュンヒュンヒュンヒュン! ザシッ!

俺は…シーザーさんのカムシーンを叩き折った。
折れたカムシーンが宙をクルクルと舞って…地面に突き刺さった。

シーザー 「…見事です」

ブシャァァァ!!

シーザーさんの体から鮮血が飛び散る。
そしてシーザーさんの重い体が前のめりに倒れた。

エド 「見やがれ…窮鼠…竜を噛んでやったぜ…!」

だが、俺の体力も限界だった。

エド 「だめだぁ…俺も…ダウン…」

ドサァ!!

俺は体を支えられず倒れてしまう。
後は…任せたぜ…レオン!



…………。



『魔王城 エントランス1F』


ルーヴィス 「そこまでだ、勇者一行」

アンダイン 「悪いけど、ここで足止めよ」

レオン 「ルーヴィスさん!?」

シーラ 「アンダイン様!」

エントランスで待ち構えていたのはルーヴィスさんとアンダインだった。

アルル 「く…! あ、アルルに任せて!」

レオン 「なっ!? 馬鹿言うな! アルル一人でどうやって戦うんだよ!?」

シーラ 「そうよアルル! 相手は接近戦もできる万能タイプよ!?」

アルル 「わ…わかっているよ! だ、だけど…もし…もしこの先に敵が待ち構えているなら…! アルルじゃ対応できない!」

レオン 「! く…! シーラさん! どうする!?」

シーラ 「アルル…危なくなったら…逃げるのよ?」

アルル 「だ、大丈夫だもん! アルルだって勇者一行だもん!」

シーラ 「行きましょう、レオンさん!」

レオン 「くっ!」

俺達は螺旋階段を上り、2Fへと向かう。

ルーヴィス 「!」

アルル 「! ヒートシャワー!」

ゴオオオオッ!

ルーヴィス 「!? ちぃ!」

アルルはルーヴィスさんの動きを察知して魔法を放つ。
俺達はその隙にその場所を離脱した。



アルル 「あ…アルルが相手よ!?」

アンダイン 「…舐めるつもりはないけどねぇ?」

ルーヴィス 「ふん…魔法使いが一人で何が出来る?」

アルルは完璧に舐められている。
ど、どうしよう…実際のところ。
なんとか接近戦には持ち込まれないようにしないと…!

ルーヴィス 「はぁ!!」

アルル 「きゃあっ!?」

ブォォン!!

ルーヴィスさんは物凄いスピードで接近してきて、槍を薙いでくる。
アルルは咄嗟に転びながら攻撃を回避する。

アルル 「ス、ストーンランサー!」

私は慌てて魔法を唱える。
地面から石の槍が飛び出してルーヴィスさんを襲う。

アンダイン 「アクアウィップ!」

ズパァン! ズパァン!

アルル 「ひょ…ひょええっ!?」

ストーンランサーが紙切れのごとくアンダインさんに切り裂かれちゃう。
じょ…冗談じゃないよ!

アルル 「まずは…隠れないと!」

アルルは急いで立ち上がり、魔王城を走り出す。

ルーヴィス 「ち…! チョコマカされると厄介だ!」

アルル 「グラビティプレス!」

ルーヴィス 「むっ!?」
アンダイン 「きゃっ!?」

アルルは重力波で二人を地面に押さえつけ、その隙に逃げる。





アンダイン 「ち…どこへ行ったのかしら?」

ルーヴィス 「まずいな…この広い魔王城に隠れられたら探すのも大変だぞ?」

ガタン…!

アンダイン 「! そこの部屋…そこから音がしたわよ?」

私たちは魔王城の1階通路の先にある、一室から物音を感知した。
私たちは注意しながらその部屋の前に立ち。

アンダイン 「…あけるわよ?」

ルーヴィス 「…ああ」

私は扉を蹴り破って中へと入る。

ガタァァン!!

アンダイン 「? いない…?」

中には普通にテーブルがあり、戸棚があるだけの一室、隠れるペースも…。

アンダイン 「!? しま…!?」

私は戸棚のガラスに映った私たちの背中に魔方陣が見えた。
ご丁寧に壁の色の偽装した魔方陣トラップ!?

アンダイン 「ルーヴィス伏せて!!」

ズドォォォォォン!!

突然の大爆発…。
なんてこと、恐らくこの部屋には時間差で発動する風の魔方陣トラップを敷き、時間で発動…なにかを動かした。
それは当然私たちを部屋へと誘い込むため。
そしてその隙に本命の壁の色に偽装した魔方陣トラップで爆破。

ルーヴィス 「ぐ…」

アンダイン 「ルーヴィス!?」

私はルーヴィスを見ると、酷い火傷を受けていた。

ルーヴィス 「だ…大丈夫だ…なんとかな…」

アンダイン 「く! アクアヒール!」

パァァァァ!

私はアクアヒールでルーヴィスの火傷を治す。
とりあえず命に別状はないけど、ダメージが酷い。

アンダイン 「ルーヴィス…ここで休んでいなさい…これ以上は危険だわ」

ルーヴィス 「すまない…後は任せる」

アンダイン (なんてこと…甘く見ていたわ、予想以上に狡猾で厄介…)

魔法使いは一人じゃ何も出来ないと侮っていた。
だけど、距離を詰められなければ私たちはいたぶり殺されるだけだわ…。
まして、これほど高度な魔方陣トラップを仕掛けてくれるなんて…。





アルル 「はぁはぁ…い、急がなきゃ! 早く魔方陣を書いて、戦わないと…!」

アルルは通路に魔方陣とラップを描く。
地面の色に偽装した赤色の魔方陣トラップ。
シャンデリアの裏に書いた魔方陣トラップ。
とにかく、近づかせてはいけない…!

カツン…カツン…!

アルル 「く…来る…! 急がなきゃ! 急がなきゃ間に合わない!」

アルルは急いで魔方陣を描き終える。
そして部屋の奥まで向かった。



アンダイン 「…アクアスプラッシュ!」

バシャァ! カッ! ゴオオオオオオオッ!!

私は警戒しながら道を進む。
道の最中には様々なトラップが仕掛けてあった。
水魔法を通路全体に放って魔方陣を刺激し、誘縛している。
さっきは地面の魔方陣が誘爆し、巨大な火柱を上げた。

アンダイン 「正直ヒヤっとするわね…いくら炎に強いったって喰らったら怖いわよ…」

カチ…!

アンダイン 「!」

ビュオオオオッ!! ビュオオウッ!

アンダイン 「ちぃっ!?」

突然、シャンデリアの上から風魔法が発動し、カマイタチが襲い掛かってきた。
所詮、狙って撃った物じゃない、回避は難しくないけどヒヤッとした。

アンダイン 「ちぃ…本当に厄介だわ…」

私は警戒を強め、通路を進んでいく…。



…………。



アルル 「…く、来た…」

アンダイン 「中庭…? ここがお望みの場所?」

アルルは中庭にたどり着いた時、アンダインを待ち構えていた。

アルル 「どう、アルルの魔方陣トラップ楽しかった?」

アンダイン 「ええ、そこそこ…おかげでルーヴィスがやられたわ」

アルル 「死んじゃったの…?」

アンダイン 「生きているわよ」

アルル 「そう、よかった…」

アルル、人殺しにはなりたくないもん。
あとは…アンダインさんを。

アンダイン 「あなたがわざわざ、姿を見せた…ということは勝てる自信があるのね?」

アルル 「…賭けだけどね…いっくよー! ライトニング…!」

アンダイン 「残念賞…」

アルル 「!? がは…が…!?」

突然、アルルは喋れなくなる。
な…なぜ…どうしていきなり?
体が苦しい…一体どうして…!?

アンダイン 「人はその体の70%が水で構成されているのは知っているかしら?」

アルル 「そ…それ…が…?」

アンダイン 「私や姉のウンディーネはね、その水を自由自在に扱うことが出来るの…それは人間の水でも然り…」

アルル 「!?」

そう言えば…ウンディーネ様…霊海で自由自在に聖水を扱ってた…。

アルル 「が…あ…ああ…!?」

い…息ができない…!?
そんな…体内の水を操るなんて…!?

アンダイン 「これが、神霊族、たかだか魔族と人族のクォーターとは根本から違うのよ」
アンダイン 「降参しなさい、降参すれば命までは取らないわ」

アルル (く…アンダインは勝ちを誇っている…だけど…これが…チャンス…!)

アンダインは安心してアルルに近づいてくる。
アルルは今一瞬でも気を緩めたら気を失うだろう。
もう…根性で耐えるしかない…!

アンダイン 「どうするの? 降参するの?」

アルル 「ア…アルルは…」

アンダイン 「ん?」

アルル 「降参…なんか…しないよ…!」

私は自分の体で隠した足元にある魔方陣トラップを発動する。

カァァァァ!!

アンダイン 「!? しまった…!?」

アルル 「ざまぁ…みろ…!」

アルルの魔方陣から異様な冷気が放たれ、地面が一瞬で凍りつく。
コクマーが得意としていた魔法、フリーズアースを魔方陣で発動するよう仕組んだ。
アルルも凍るけど…アンダインも凍る!

アンダイン 「体が…くぅっ…!?」

アンダインの水の体があっという間に凍っていく。
アルルよりアンダインは凍りやすい…。

アルル 「フ…ファイアーガード…!」

ゴオオオオッ!

アルルは炎の防護服でなんとか凍りつくのを防ぐ。

アルル 「…はぁ…はぁ! あ〜、空気が美味しい」

やっと息が出来る。
さすがにアンダインも凍っちゃなにもできないよね?

アルル 「レオン〜…なんとかしたよ〜?」

私は地面にへたり込む。
正直…疲れた、MPももうないよ…魔方陣トラップに使いすぎた…。



…………。



『魔王城 2F エントランス』


レオン 「くっ! 魔王ってどこにいるんだ!?」

シーラ 「わかりません…! ですが、恐らくもっと上かと…!?」

ヴァルキリー 「…3Fの謁見の間よ」

レオン 「! あなたは…」

シーラ 「ヴァルキリー様!?」

なんと、上の階からヴァルキリー様が飛び降りてくる。
ヴァルキリー様がどうしてここに…?

ヴァルキリー 「悪いけど…ここで足止めさせてもらうわよ…?」

シーラ 「!レオンさん、ここは任せて3階に!」

レオン 「シーラさん!?」

シーラ 「大丈夫です…私は負けませんから!」

レオン 「信じてますよ…!」

俺はこの場をシーラさんに任せて3階へと急ぐ。
ヴァルキリー様も追う様子はなく、シーラさんと対峙していた。





シーラ 「ヴァルキリー様、勇者一行の僧侶、シーラ、謹んでお相手します」

ヴァルキリー 「どこからでも、いらっしゃい」

ヴァルキリー様は細身の剣を片手に構えも取らず、立ち尽くす。
相手は神…生半可な戦闘能力ではないはず…。

シーラ 「! いきます! スペルレイ!」

ギュオオオオオオッ! ズカァァァン!!

ヴァルキリー 「…ふふ、いいわよ! なかなかの攻撃!」

シーラ 「!? 速い…!?」

ヴァルキリー様は一瞬で後ろ斜め上に居た。
当たる瞬間に、そこまで移動を!?

ヴァルキリー 「はぁ!!」

シーラ 「くっ!?」

フォン!

私はヴァルキリー様の斬撃を紙一重で回避する。
僅かだが髪の毛が切れた…!?

ヴァルキリー (く…腕が鈍る…こんな時に…恐怖が…!)

シーラ 「? 聖なる力よ、その力でかの者を拘束せよ、アースバインド!」

ヴァルキリー 「!? はぁ!!」

ザシュ! ザシュ!

ヴァルキリー様は神速を思わせる、斬撃でアースバインドのツタを切り裂いた。
どうしたんだろうか…一瞬戸惑いを見せた?

ヴァルキリー (く…神魔大戦のトラウマが襲ってくる…怖いわ…怖くてしかたがない…だけど…)
ヴァルキリー 「悪く思わないで! サタンちゃんのためだから!!」

シーラ 「!? デポテッド!」

キィィン!

私は咄嗟に防御を張り、攻撃を防ぐ。
今のは危なかった、一瞬でも反応が遅れていたら串刺しの刑だったろう。

ヴァルキリー 「そんな壁にぃ!!」

ヴァルキリー様は風を集める。

シーラ 「くっ! ルーンブレイド!!」

私は魔力の剣を作り出し、ヴァルキリー様に切りかかった。

ヴァルキリー 「!? 上等! ヴァルマウエと張り合おうってのね!?」

ヴァルマウエ…というのは剣の名前だろうか?
だが、ヴァルキリー様はまるでこちらが追いつけない速度で斬撃を繰り出してくる。

シュ! キィィン!

シーラ 「!?」

私のルーンブレイドが簡単に弾かれる。
そして、体に3箇所…切り傷が出来てしまった。

ヴァルキリー 「これは別名風の剣…私ほどの使い手が使えば、一度に5発の斬撃を放つわ…」

シーラ (まるで見えなかった…!? あの一瞬で5発もどうやって!?)

私はルーンブレイドは2発の斬撃で上へと弾かれ、のこり3撃が私の服を切り裂いていた。

ヴァルキリー 「はぁ! ウインドソード!」

シーラ 「!? あああっ!?」

ザッシュウウウウウッ!!

私の体が風の刃に切り裂かれ、鮮血が飛び散る。

シーラ 「く…あ…ネクロノ…ミコン…!」

ネクロノミコンが輝きを増すと、私の切り傷を一瞬で治し始める。
今のは…危なかった。

ヴァルキリー 「…恐ろしいわね、それがネクロノミコンの力…どう考えても致命傷だったのに…」

シーラ 「お…お強いですね…正直…これほどとは…」

ヴァルキリー 「あなた、セイレーンに勝ったようだけど私は彼女と違って戦いの神、戦乙女よ?」
ヴァルキリー 「戦闘用の神とそうでない者…その力は歴然と違うわよ?」

シーラ 「…そのようですね…」
シーラ 「だったら…こちらも少し本気を出します!」

ヴァルキリー 「!? この波動は…!?」

私は今までネクロノミコンの20%の力で戦っていた。
ここからは40%で挑ませてもらう!

シーラ 「アルターエゴ!」

私はアルターエゴで自分の分身を作り出す。

シーラ 「行きますよ!」

ヴァルキリー 「!? くっ…!?」

アルターエゴはそれぞれ別の思考をもって動いている。
2体のアルターエゴは片方がスペルレイを放ち、もう片方がブラッドバレッドを放った。
ヴァルキリー様は真上へと逃げる、しかしそこへ私は追い討ちをかけた。

シーラ 「はぁ!!」

ヴァルキリー 「!? きゃああっ!?」

ガッキィィィン!! ズガァァァン!!

私は瞬時に距離を詰め、ルーンブレイドでヴァルキリー様に切りかかる。
だが、ヴァルキリー様はヴァルマウエでなんとかガードするも吹き飛ばされ、壁に激突した。

ヴァルキリー 「ケホ…ケホケホ! な、なんてやつなの…!?」

シーラ 「本気を出しますか? それとも終わりにしますか?」

ヴァルキリー 「全く化物ね…手加減しているつもりはないわよ?」

シーラ 「そうですか、では終わりです、もうそちらに勝ち目はありません」

私は2体のアルターエゴにも攻撃の準備をさせる。

ヴァルキリー (いくら戦闘をかまけ続けていたとはいえ…神体を持つ私にここまでの力を見せ付けられるなんてね…)
ヴァルキリー 「全く…この技を使わされるなんてね…」

シーラ 「! アルターエゴ!」

私はヴァルキリー様から力を感じ、瞬時にアルターエゴに命令を下す。
しかし、ヴァルキリー様の速度が速すぎて行動が間に合わない。

ヴァルキリー 「ワルキューレソード!!」

ズパァァァァン!!

シーラ 「きゃああっ!?」

物凄い、一閃だった。
魂ごと切り裂かれるかと思った一撃は、魔王城を真っ二つに切り裂いて、地上にいたアルターエゴ2体を消滅させてしまう。

ヴァルキリー 「これが、神の成せる業よ!」

シーラ 「何という威力…そしてスピード…まさに神の一刀…」

ヴァルキリーさまの体から異様な闘気が放たれ、それが何かしらのマナと融合しヴァルマウエに乗せて、剣を横に一振りしたのだ。
それだけで、魔王城に切り傷がついた。
アレを喰らったら…回復する間もなく死にますね…。

シーラ 「……」

ヴァルキリー 「降参するのは…どっちかしら…?」

たしかに、ここからはかなり危険だ…。
下手をすれば命を失う…。
だけど…。

シーラ 「降参するのは…そっちです!!」

私は突っ込む。

ヴァルキリー 「はぁ!!」

カキィィィン!

ヴァルマウエとルーンブレイドが交錯する。
力は五分と五分、スピードも同格!?

ヴァルキリー 「はぁ!」

ドカァァ!!

シーラ 「ぐっ!?」

ヴァルキリー様の蹴りが私の腹部を捕らえた。
きつい…けど!

ヴァルキリー 「やった…!?」

シーラ 「グラビティエンド!!」

私は力を40%に引き上げたことで、更に上の魔法を使う。
グラビティエンド、相手をの体内に擬似ブラックホールを作り出し、重力波で、敵の内部から破壊する!

ヴァルキリー 「ぐ…ごはっ!?」

ヴァルキリー様は喀血して、倒れる。
私は慌ててヴァルキリー様から魔法を解いた。

シーラ 「待っていてください…! 今、回復魔法を!」

グラビティプレスは肉体の優劣など関係ない。
どんな人間でも体の内側は鍛えることが出来ない。
そんな内部にブラックホール級の重力帯が発生するのだ。
神体であるヴァルキリー様だから、数秒持つが、普通なら発生と同時に心臓が破裂している。
とはいえ、ヴァルキリー様のダメージは深刻だ。

ヴァルキリー 「へ…平気よ…あと1秒長かったら死んでいたけどね…」

シーラ 「ごめんなさい…けど、私も手加減できないんです…」

ヴァルキリー 「しょ…しょうがないわよ…それ…が…仕事…だ…もの…ね?」

ヴァルキリー様はそれっきり気絶してしまう。
私は慌てて回復魔法でヴァルキリー様を治療したが、しばらく起きそうにはない。

シーラ 「後はお願いします…レオンさん」



…………。



『魔王城 3F 通路』


レオン 「魔王…どこだ…!?」

ルシファー 「この通路を抜けた先に、大きな扉がありますよ…その先が謁見の間…そこにサタンはいるよ」

レオン 「ルシファーさん!? どうしてここに!?」

なんと、突然その通路の先から現われたのは、ルシファーさんだった。

ルシファー 「悪く思わないでね? 親友の危機までは見逃せないんだ」

レオン 「!」

ジャキン!

俺はゼウスを構える、ルシファーさんもラグナロクを構えた。
大剣の神器ラグナロク…その特殊能力は『衝撃』…俺の能力とはかち合わない故に危険だ…。

ルシファー 「ふふ、ついにゼウスの人格を引き出したようだね…」

レオン 「ええ…感謝していますよ…こいつには今まで何回も助けられましたから!」

ルシファー 「それはよかった…では!」

レオン 「ちぃぃぃ!!」

ガッキィィィン!

レオン 「貫け!!」
ルシファー 「走れ!!」

ズガァァァァン!!

レオン 「ぐはっ!?」

ルシファー 「…ぐっ!?」

俺はラグナロクの『衝撃』で大きく吹き飛ばされた。

レオン (痛て…さすが効く…)

だが、俺の『貫通』の能力でルシファーさんも直接的なダメージを受けた。
5分と5分…いや若干能力分で俺の方が有利か…?

ルシファー 「! ホーリーボール!」

レオン 「! 輝きの理よ、光の手玉となりて敵を弾け、ライトボール!」

カッ! ズバァァァァン!!

俺は瞬時に精霊魔法を放ち、相殺にかかる。
なんとか、間に合ったが若干爆風を受けた。

ルシファー 「聖なる力よ、強大なる力となりて敵を滅せ! ホーリーブレイク!」

レオン (レベル5の魔法!?)

俺はヤバイと感じる。
遠距離戦は不利か…!?

カァァァッ! ズドォォォォォン!!

レオン 「ウワァァァァァァッ!?」

強烈な閃光と共に、爆発に飲まれてしまう。

レオン (くそぅ…ダメだ…根底から…レベルが違う…)

俺はダメージに苦しみながら…それでもなんとか倒れずにいる。
倒れたら…立てそうにないな…。

ルシファー 「立ちますか…? さすがに魔王に挑むだけはある…そこまで強くなっていましたか」

レオン 「だ…だけど…まだ…足りないみたいだなぁ!」

ルシファー 「そうですね…遠距離戦に持ち込まれたら途端に不利…」

レオン 「ああ…だから…!」

俺は左手を前に掲げる。
俺の人差し指と中指の間にルシファーさんを捕らえるように。

ルシファー 「!? それは…?」

レオン 「俺は…これから、自分の限界を超える…!」
レオン 「これから…精霊魔法のレベルを8まで…極める! 出来なければ…俺の負けだ…!」

俺は覚悟を決める。
もし出来なければ、魔王にもルシファーさんにも勝てはしない。
土壇場だが…いつも土壇場で強くなってきたんだ!

レオン 「マナの理よ、我に光を捧げよ! ホーリーマナ!」

カッ! パァァァァァァ!

ルシファー 「これはレベル5の魔法…?」

ホーリーマナは攻撃用の魔法でもなければ回復魔法でもない。
この世界には色々な属性のマナが存在する。
風の強い場所では風のマナが多く、火山では火のマナが強い。
そして、このホーリーマナはそんなマナ…特に光のマナを人工的に増加させる魔法だ!

レオン 「…単純に考えれば、ルシファーさんの方が有利だ…だが! 俺は勇者だ! 俺は…絶対に諦めない!」
レオン 「いくぞ! 光の精霊よ、破壊の矢となりて敵を滅ぼせ! ホーリーフォトン!」

ルシファー (まさか!? レベル6も!?)

ギュオオオオオッ!! ズガァァァァァン!!

俺の左手から極太の光のレーザーが飛び出す。
それは真っ直ぐルシファーさんを捕らえ、ルシファーさんにぶつかると大爆発がおきた。

ルシファー 「くぅ…本物だ…いきなり…レベル6までマスターするなんて…!?」

ルシファーさんは光のドームを作り出し、なんとか防いでいた。

レオン 「破の光よ、光の理力を持って、全てを飲み込め! ホーリーフレア!」

カァァッ!! ズドオオオオオン!!

ルシファー 「くうううっ!? レベル7までマスターかっ!?」

今度は光の大爆発を起こす。
通路で使った物だから俺にまで影響を及ぼすが、俺は瞬き一つせず、最後の魔法を使用にかかる。

レオン 「我、光の力となりて、かの者に裁きの閃光放つ…」

それは…俺が初めて教えてもらった魔法だった…。
そう…教えてくれたのは…。

レオン (ルシファーさん! あんただ!)

俺はゼウスを持ったまま両手を前に突き出し、最後の言葉を綴る。

レオン 「ホーリーノヴァ!!」

カッ!! チュドオオオオオオオンッ!!

ルシファー 「くううっ…!? バリアーが持たない!? うおおおっ!?」

レオン 「遂に…成った!」

俺は遂にレベル8までの魔法を使ってみせた。
ずっとレベルが足りなくて使えなかったホーリーノヴァ…ついにマスターした!

ルシファー 「ふ…ふふふ…見事…です…」

ルシファーさんは壁に背を持たれかかりながら、横になる。
魔王城には対魔抗体が施されているから、魔法によるダメージはまるでないが、そとにはかなりの衝撃が走っただろう。

ルシファー 「正直…いくら…勇者でも…レベル8までマスターするとは…思っていませんでした…」

レオン 「…どうして、攻撃を仕掛けなかったんですか?」
レオン 「俺が魔法を唱えている間…いや、唱えた後でもあなたの実力なら俺の魔法を軽々と回避して俺を仕留めれたはず」

ルシファー 「ふふ…見てみたくなったんですよ…あなたの勇気を…」

レオン 「……」

ルシファー 「…ふふ、ごめんなさいね、こんな所で道草食わせてしまって…」

レオン 「…いえ、きっとルシファーさんと戦わなかったら、魔王にはなにも出来ませんでした…」

実際、俺はルシファーさんと戦い、更にレベルアップできた。
まだ、魔王に追いついているかはわからないが、俺は強くなっている。

ルシファー 「ふ…ふふ…それは違いますね…運命は勇者に微笑むだけですよ…私は…友を見捨てることが出来ず…抗ってしまった…」
ルシファー 「結果は…ご覧の通りですけど…ね?」

ルシファーさんはボロボロだ。
本人なら死にはしないだろうが、すぐにまた戦闘とはいかない。
当然か、俺の魔法を受け続けたんだから。

ルシファー 「…レオン君、これを…」

レオン 「? これは…?」

ルシファーさんは何やら小瓶に入った薬を差し出してきた。

ルシファー 「それは…エリクサーです、疲れたでしょう? 魔王のとの戦いに万全の状態で挑みたいでしょう?」

レオン 「…いいんですか?」

ルシファー 「ええ、あなたが使ってください」

レオン 「…ありがとうございます、ルシファーさん」

俺は小瓶の蓋を開け、その中のクスリをグイッと飲んだ。
ちょっと苦いが…すぐにその効果が分かった。

レオン 「…おし!」

俺は体力が完全に回復したことがわかった。
後は…魔王だけだ…!








To be continued



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