勇者と魔王〜嗚呼、魔王も辛いよ…〜




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第2部 ゾディ・アック編


後編 『神と人』




アンダイン 「…手が詰まったわね…」

ZAMを撃破した翌日、俺たちはシャムさんの工房に集まっていた。
ZAMを撃破することで、辛うじてサーディアス王国の滅亡は逃れたけど、全く根本の解決はなされていない。

シャム 「…気になるんだよねぇ…」

エド 「なんっすか気になることって?」

俺は昨日からずっと頭を抱えて、悩んでいるシャムさんに聞いた。
一体、シャムさんは何を気にしているのか?

シャム 「ZAM…まぁ、正確にはアルティメイトっていうらしいけどさ…アイツ、試作機って言っていたんだよね…アレを」

エド 「? それがどうかしたんすか?」

シャム 「つまりさぁ、アレはあくまでデータを取るための機体なんだよ、完成した代物を作っているはず…なんだよねぇ…」

エド 「まぁ…そうでしょうね、でもそれに何の問題が?」

アレは絶対なる力だ、一応ZAMはぶっ壊したわけだけど、当然放っておいたら復活するだろうな。
でも、完成品なら困るってどういうことだ?

シャム 「…あんたら、もしアルティマバスターてやつぶっ放されたらどうなってたよ?」

シーザー 「成す術なく死んでいますな…」

アシュター 「というより、人間に対抗できる代物ではないと思いますが?」

シャム 「そう…使えば、あたし達なんてひとたまりもないわけさ」

エド 「でも、使ってきませんでしたね…」

黒羽 「…そう、おいおい使えないということか?」

シャム 「その通り! アレは恐らく一発撃つと相当チャージに時間がかかるんだろうね…まぁ、対人兵器ではないというのも問題だけどさ」
シャム 「だけど…マキナ技師としての観点で言うとね…アレの完成品を使えるなら、威力を20分の1に下げてでも、チャージ時間を削減するね」

エド 「それってどういうことっすか?」

俺はいまいち頭が悪いんで飲み込めない。
シャムさんは何を言おうとしてんだ?

シャム 「対人用に使用できるように、調整するってことさ…ついでにもうちょっと小型化するね…あのデカさは必要ないよ」

アシュター 「…まさか、完成品は対人戦も想定した物に?」

シャム 「なるだろうさね…そうなると、こっちはなお対抗できない…そうさせないためには完成品が出来上がる前にそいつを撃破! だよ…」

アンダイン 「もしくは二人の巫女の救出ね…」

エド (アルティマが対人戦用に調整…?)

単純に勇魔大戦時の威力で考えてみる。
アレが連射されたら…やべぇな…。
なるほど、シャミさんが危惧した理由が分かった。

シャム 「…しかし、叩こうにもゾディ・アックがどこに潜伏しているのかもわからないしねぇ…」

あいにく、ラーにも特定の人物をサーチする能力はねぇからな…。
そうだな…問題点はまずゾディ・アックがどこにいるのか…ここだな。
わかれば、何とかできるんだがなぁ…。

シャム 「アルティマは理論的にはどうにかできるけど…ああ、でも期間的な問題が…」

エド 「!? アルティマがどうにかできるんすか!?」

アンダイン 「…驚きね、どうするわけ?」

シャム 「『ラグナマキナ』って知っている?」

突然、シャムさんが聞いたことのない何かを聞いてくる。
ラグナマキナ…聞いたことがないな。

アシュター 「聞いたことがあります…たしか魔神ラグナの心臓を持った伝説のマキナ…ですよね?」

シャム 「その通り、そのマキナの力を使えば、アルティマを無効化出来るはずなんだよね…」

エド 「それって…てことは、そのマキナを捕獲すれば!?」

俺はまさかを考える。
俺たちが怖いのはやっぱりアルティマだ。
あれがどうにかできるんならやってみる価値あるんじゃないか!?

シャム 「ま、ぶっ壊してもいいから、ラグナマキナの心臓が欲しいんだけどね」
シャム 「てにはいりゃ、同じマキナ、レミィに搭載してみるさね」

エド 「できるんすか?」

シャム 「さぁ? なんとかなるんじゃない?」

黒羽 「不安だな…」

シャムさんはなんとも他人事なことをいう。

アンダイン 「でも、そんなことが出来るマキナってどこにいるわけ?」

シャム 「…霊海だよ、あそこのどこかを放浪している…それがラグナマキナ」

エド 「!? れ…霊海ッ!?」

シーザー 「な…なんと、あの死の海に?」

俺はとんでもない場所を聞いてしまう。
霊海…この南側にある最悪の場所だ。
ゾンビやゴースト、スケルトンが山ほどいて、腕に自信のある戦士でもまず、立ち寄ろうとはしない最悪の場所。
勇魔大戦時、俺たち勇者一向もあの海を渡ったがあそこに…?

シャム 「過去何回かあそこに捜索に出たものの…厄介なんだよねぇ…アンデットが多すぎてさ」
シャム 「ラグナマキナと出会う前にこっちがまいっちゃうわけさ…」

アシュター 「疑うようで申し訳ないですが、本当にいるのですか?」

シャム 「目撃証言が、今だに絶えないんだよね…でっかいアンデットじゃない物を見たって話が…」

エド 「でかいってどれくらい?」

シャム 「目撃者の証言では一様に、4メートル大、水を巻き上げるものすごい足音と、機械音と共に現れるそうだよ」
シャム 「恐らく聞いたのはジェネレーターの駆動音だと思うんだよね…ラグナマキナだと思うんだけどね」

4メートルか…結構でかいな。
だが、ZAMに比べるとマシそうだ。
やってみる価値はやっぱりあるか?

エド 「それで勝てるんなら…やってみるべきじゃないか?」

アンダイン 「そうね…どう考えても分の悪い賭けだけど…やってみますかね?」

シーザー 「ええ…面白そうです」

シャム 「やるのかい? 若いねぇ…」

どうやら俺以外にもやってみる価値と判断したやつはいるみたいだった。
シャムさんはちょっと面白そうだと言わんばかりの顔をしていた。

シャム 「いくんなら、悪いけどラーを貸してくれないかい?」

エド 「え? いいですけど、なぜ?」

別にラーを貸すのはかまわない。
だが、神器は選ばれた人間にしか扱えないぞ?

シャム 「あたしゃ、一度神器を調べたいと思っていたのさ、特にラーの特殊なサポート能力…」
シャム 「なんとか、解析してレミィに搭載してみたいと思っているのさ」

アシュター 「出来るのですか?」

シャム 「理論化できれば可能さよ、てーわけで、あたしとレミィは参戦できないよ?」

エド 「てことは、俺とアンダイン、シーザーさんとアシュターさんで行くんすか?」

俺は今、ぶっ倒れているペティちゃんと、怪我している黒羽ちゃんを除く。
ペティちゃんといえば、アレはなんだったのだろうか?
俺はZAMとの戦いで発現した、あのペティちゃんの魔法を思い出す。
すげぇ魔法だったよ…マジで。
今は死んだように眠っているけど、ペティちゃんって何者なんだろうな?

アシュター 「申し訳ありませんが、私は残りますよ…ペティさんも気になりますし」

エド 「え? てことは3人…?」

黒羽 「私は行くぞ」

アシュターさんは工房のことを考えてか、行かないとする。
逆に怪我人の黒羽ちゃんは行くという。

エド 「…黒羽ちゃんは怪我してるからな…」

黒羽 「ふん! 翼がやられて飛べなくなっただけだ! 地上戦闘に支障はない!」

確かに、黒羽ちゃんの怪我は翼の怪我だ。
黒い羽が白い包帯でグルグル巻きにされており、治るまでは自由に飛べそうにはない。
とはいえ、身軽さが売りとの翼人種の黒羽ちゃんからそれをとってどうするのか…?

エド (…だめだ、黒羽ちゃんは意地っ張りだからなぁ…絶対聞かないわ)

俺は黒羽ちゃんの性格を考慮すると留守番させるのは無理と判断。

エド 「わかったよ…じゃ、4人か」

アンダイン 「あたしとシーザーと、エドと黒羽ね?」

エド 「なんとも、異種混合チームだけど、ま、よろしく」

シーザー 「ふむ…面白そうなパーティですな」

黒羽 「ふん…!」

アンダイン (回復魔法が使えそうなのは私だけか…こりゃ重要ね)

俺は、今回パーティを組む面々を見る。
俺…戦士タイプ(クラス:パラディン)
シーザーさん…戦士タイプ(クラス:グラディエーター)
アンダイン…万能タイプ(クラス:オールマイティ)
黒羽ちゃん…魔法剣士タイプ(クラス:サムライ)

エド (勇魔大戦時の勇者パーティに比べると随分偏っているなぁ〜…)

しみじみそう思う。
なんだかんだで勇者パーティってバランス取れていたんだな…。
黒羽ちゃんは魔法剣士タイプだが、戦闘では一切魔法を使わない。
実質戦士タイプと変わらないんだよな…性格が意地っ張りだから。
つまり、アンデットが相手にも関わらず魔法が使えるのはアンダインのみ。
まぁ、俺もあの頃とは違うし、そんなに苦労はしないと思うけど…。

シャム 「はっはっは、まぁ、頑張りなよ?」

アンダイン 「とりあえず、一旦転送円を利用して、魔王城に戻り霊海に直接飛ぶわよ?」

シーザー 「ええ」

エド 「それが一番だな」

とりあえず、まともに歩いていたら、ここから霊界じゃ行って戻ってで1ヶ月以上かかるので、魔王城経由で向かうことにする。
転送円を使えば、一瞬だからな。

黒羽 「さっさと行くぞ…時間が惜しい」

俺たちは黒羽ちゃんにせかされて、工房を出て行く。
まぁ、万が一工房が襲われても大丈夫だろう。
なんせ、工房パーティは…。

アシュターさん…万能魔法剣士タイプ(クラス:魔界貴族)
レミィさん…万能機械タイプ(クラス:軽量マキナ)
ペティちゃん…魔法タイプ?(クラス:よくわからん)
シャムさん…頭脳タイプ?(クラス:マキナ技師)

…まぁ、シャムさんは戦えないとして、ペティちゃんも通常時は無理だな。
だが、俺たち4人合わせても勝てないかもしれないアシュターさんとレミィさんがいる時点で最強だろ?
ただでさえ、アシュターさんは神器の所持者、レミィさんは理不尽なまでの兵器郡…マジで恐ろしいよ…。
究極形でいえば、ペティちゃんの力が覚醒したら、もっとやべぇかも知れないが、アレは未知数だからな…。
どっちにしろ、俺たちより工房の方が安全だ。
これは確実だな。





シャム 「…面白くなったねぇ…さってと、こっちはさっさとラーのサポート能力の解析を行っちまわないとねぇ〜!」

アシュター 「私になにかできることはありますか?」

シャム 「じゃ、邪魔だから向こうの部屋にいといて」

アシュター 「……はい」



…………。



『同日 時刻14:11 南側の大陸 霊海』


黒羽 「な…なんだこの腐臭は?」

エド 「これが霊海だよ…間違いなく人間界最悪のスポットだな…」

俺たちは早速霊海にやってきていた。
深さ30センチほどの海は相変わらずで、おなじみ腐った肉の匂いが充満している。
何度来ても…慣れねぇな…。

黒羽 「最悪だ…こんな禍々しい場所とは…」

シーザー 「あんまり無駄口を叩かないほうがいいですよ…」

アンダイン 「そうね…特にここは…」

ザッパァァァァン!!

ゾンビ達 「アア〜…」

突然、俺たちを囲むように大量のゾンビが出現する。
数ざっと300ってところか。

アンダイン 「こいつら…呼ぶんだよねぇ…」

そう、無駄口を叩いている時に限って、大量のアンデットを呼んでしまう。
アルルもよく無駄口を叩くもんだから、しょっちゅう戦闘したもんだ。
おかげで、少ないながらもEXPドカ稼ぎ…また塵も積もれば山となりそうだ。

黒羽 「ひぃっ!? ど…どこからっ!?」

突然のことに黒羽ちゃんは涙目でビビっていた。
初めての人間は男でもビビるからな…。
アルルなんて大ベソかいていた…俺だってあの時は半泣きだ。

アンダイン 「爆裂魔法なしで、どこまでもつか…」

エド 「剣士としてのプライドは…棄てた方が無難だぜ…黒羽ちゃん?」

俺たちは大量に迫りくるゾンビに向かい合う。
アルルがいた頃はMPが続く限り、アルルの高レベル炎魔法で一掃していたが今のパーティではそうはいかない。
アンダインが高レベルの魔法も使いこなすとはいえ、アンデット相手はあまり相性がいいとはいえないしな…。

アンダイン 「とりあえず、ノッけからデカいのいくわよ!? タイダルウェイブッ!!」

ザザザァザッパァァァァン!!

アンダインはいきなりレベル8水魔法を使い出す。
10メートルを超える大波が起きて、霊海を荒れ狂いゾンビ達をなぎ倒す。
炎と違って霊海の水が飛び散るから最悪だな。
まぁ、結果的に敵一掃できるんだからいいんだが…。

シーザー 「…完勝、ですな」

エド 「アンダインの魔力が続く限りは、大丈夫そうだな」

アンダイン 「私だって無限じゃないわよ? とにかく襲われない事を祈るしかないわね…」

黒羽 「最低最悪最凶最厄だな…ここは」

いきなりげんなりする黒羽ちゃん。
辛うじて泣いていないが、ビビらせたらすぐ泣いてしまいそうだな。
まぁ、殺されたくはないからそんな幼稚なことはしないが。
黒羽ちゃんは絶対にヤるタイプだもんな…冗談は絶対言えん。

エド 「さて…で、問題のラグナマキナってのは何処にいるのかねぇ?」

俺は周囲を見渡してみたが、紫色の霧で全然遠くが見えやしない。
音を探ってもそれらしき音もしない。

アンダイン 「…周囲2キロにそれらしき動体はないわね?」

黒羽 「わかるのか?」

アンダイン 「そりゃ水の精霊だもの、距離にも限度があるけど水のマナの胎動を感じることくらい出来るわよ」

エド 「水のマナの胎動って…全然わからん、つまりどういう意味だ?」

アンダインはさも当たり前のように、いかにも専門知識的なことを喋るが俺にはチンプンカンプンだった。
同様に黒羽ちゃんも首を傾げている。

アンダイン 「……あ〜…えっとね、この世界には9つのマナで構成されているのは知っているわね?」

エド 「…それは知っている」

黒羽 「…知らなかった」

そう、アンダインの言うように、この世界には世界を構成する上で9つのマナが存在する。
それぞれひとつずつ上げていくとこうだ。
光・闇・炎・水・地・風・氷・雷・金だ。
上記8つは魔法にも存在する分類だが、構成マナとして存在するとされるのが、魔法には存在しない金の属性。
実際には生物にもこの属性は存在しない。
だが、世界を構成する上でこの金というマナが存在しないと、その方程式が成り立たないそうだ。
まぁ、俺は錬金術師じゃないんで、構成成分の方程式なんざわからん。
ただ、9つのマナによって世界が作られているってのを知っているに過ぎない。

エド 「…んで、それで?」

アンダイン 「…私はその内のひとつ、水のマナの精霊、この霊海の地面を見ても分かるとおり、水溜りよ」
アンダイン 「私はこの水溜りから抽出される高濃度の水のマナを感じ、そこから連なる波紋を流し、それにぶつかった反動を感知し、周囲の状況を探っているの」
アンダイン 「どう? これでわかった?」

エド&黒羽 「全然わからん」

ていうか、余計ややこしくなってないか?
なんか、頭がこんがらがってくるぞ。
しかし、それを聞くとアンダインはいい加減にしろと言わんばかりの顔で。

アンダイン 「ああ! ようは周囲2キロくらいなら、何処に何がいるか分かるの!」
アンダイン 「もう、アンタたちみたいな凡人にこれ以上簡単には説明できなくってよ!?」

シーザー 「あ…あの…あまり大声は…!」

シーザーさんが注意した矢先…。

ザッパァァァァン!!

シーザー 「…こ、こういうのを呼ぶので、決して大きい声は〜!?」

アンダイン 「ああっ! 鬱陶しい!!」

アンダインが大声出すものだから、また2〜300のゾンビを呼んでくれる。
だぁ〜!! 結局こうなるんかい!!



…………。



『同日 時刻18:10 魔王城』


エド 「あ〜…見つからねぇ…」

シーザー 「また、明日探しましょう」

アンダイン 「そうね…今日は疲れたわ」

俺たちは1日かけて、必死でラグナマキナを探したが、見つかることは無かった。
元々、海という名前が着く位に馬鹿広いあの霊海から見つける方が難しいんだがな…。

エド 「魔王城って風呂ある?」

シーザー 「浴場なら、1階に…案内しましょうか?」

エド 「じゃ、頼みますわ…このままじゃ腐臭が体に染み付いて臭くて仕方が無い…」

アンダイン 「あなたも入ってきなさい、お嬢さん、臭うわよ」

黒羽 「…ふん」



…………。
………。
……。



エド 「ツェェアアアアッ!!!」

ザッシュウウッ!!

ゾンビA 「! あう〜…」

黒羽 「ちぃっ!!」

ザシュッ!

ゾンビB 「ああ〜…」

シーザー 「くっ! 数が多すぎますぞっ!」

アンダイン 「んなこたぁ! 百も承知でしょうがっ!!」

バッシャアアアアッ!! ザザァァッ!!

ラグナマキナ捜索2日目。
今日は早朝から霊海へと赴き、アンデット共を相手にしながらラグナマキナの捜索を続けていた。

ゾンビC 「うあ〜…」
ゾンビD 「えう〜…」
ゾンビE 「いい〜…」

エド 「たく! 後何体いやがる!?」

アンダイン 「200体ちょっと! 今日は昨日より活動時間長いんだから、頑張ってよね!!」

黒羽 「言われなくたってぇぇぇっ!!」

とりあえず、いつものごとくゾンビに囲まれ、四苦八苦していた。
だが、苦戦しているようじゃゾディ・アックにゃ勝てねえかっ!

エド 「目標1000体撃破! 弱音吐いてる暇がどこにあるかっての!!」



…………。
………。
……。



エド 「ラグナマキナ捜索3日目〜」

黒羽 「こう霧が深くては上空から探すことも叶わないな」

シーザー 「地道に出会うことを祈るしかありますまい」

エド 「そうっすね、さぁ今日も1日1000体目指して頑張りますか〜!」

アンダイン 「趣旨が違うわよ…」

エド 「いいのいいの、どうせ相手させられるんだから」

黒羽 「出来れば相手したくないがな…」(泣)

エド 「おっ? さすがの黒羽ちゃんもバテてきましたか?」

黒羽 「! 誰が…!」

エド 「まっ、アンデットに対しての免疫なんてそう簡単につくわけないがな」

黒羽 「!! だ、誰もアンデットが怖いなどと言ってないだろうが!!」

アンダイン 「あんまり甘く見ない方がいいわよ、霊海を抜けても伝染病で死ぬ…なんてザラなんだから」
アンダイン 「死体は人間にとって有毒な伝染病を一杯持っているからねぇ…私やシーザーはともかくあんたたちなんて、感染したらイチコロよ?」

エド 「リ…リアルに怖い話っすねぇ…」

黒羽 「もういや…」(泣)

シーザー 「死体も火葬してしまえば問題ないのですが、常温だといともたやすく病原菌を増やしてしまいますからなぁ…」

アンダイン 「平たく言うと、ここほど衛生管理の悪い場所はないってことね、下手な戦場よりよっぽど病気で死ぬ確率高いわよ、くれぐれも切り傷には注意しなさい」
アンダイン 「打撲ならまだしも…切り傷なんてつけたら…傷口から菌が入ってイチコロよ、あとくれぐれも霊海の水を口に含まないように」

エド 「りょ、了解っす…」

黒羽 「……」(泣)



…………。



シャム 「な〜るほどねぇ、神器ってのはこういう風にできていたわけかぁ」

アシュター 「…わかるのですか?」

エド君たちがラグナマキナ捜索にでてすでに5日が経とうとしていた。
シャムさんはその間ずっとエド君からお借りしたラーの解析を行っていたが、今まで進展はなく、滞っていた。
ところが、今になってシャムさんの解析に光明が差し始めているようだった。

シャム 「やっぱり、神器っていっても完全に人知を超えた物ではなかったみたいさねぇ」

アシュター 「しかし、神器が人と触れ合うようになって10000余年…今だの神器の謎の解き明かした者はいませんよ?」

シャム 「あたしだって4日目まではそうだったさね、だけど見方を変えれば見えてくるものも変わるさね?」

アシュター 「? どういうことですか?」

シャム 「神器は、魔術的見解でも、科学的見解でもその謎を究明することは出来はしなかったさね」
シャム 「それは歴史が証明している、でもね…世の中にある9大要素を用いることで、世界の成り立ちが科学的に、あるいは魔術的に証明された時代さね」
シャム 「神器と言えど、魔術的見解と科学的見解を持って見定めれば、解析は可能さね」

アシュター 「それが…ついに叶ったと?」

シャム 「まだ、ほんの一部分さね、時間がないからさ、ラーの能力的部分までしか解析してないさね、ゆくゆくは神器とはなんなのか、科学的に証明したいさねぇ」

シャムさんはそう言ってラーと向き合い、解析を進める。
正直、私には全く分からない世界だ。
シャムさんの頭脳が我々とは違うと言うことが良く分かる。
10000年の歴史の中、神器は常に人間たちの謎のであった、それゆえそれを解析しようとしたものは多い。
だが、10000年という歴史の英知を持っても、神器について分かったことは神器の中に神の人格があること、特殊能力を持つこと、そして一部の神器においては進化すると言うこと。
これくらいだった。
ところが、シャムさんはそれらの謎の更に奥へとメスを刺し込もうとしている。

シャム 「鏡よ鏡よ鏡さん〜♪ っと、私に声を聞かせておくれ〜♪」

シャムさんはそんなことをぼやきながらラーを持ち上げ呟いた。
研究に雑念を持ち込み、ゆとりを持とうとする…凄い精神の持ち主だ。

シャム 「ふ〜む、鏡面にマップを写したり、生体を鏡面に点で表示したり、あれは鏡自体の力か、それともラーとしての能力なのか…」
シャム 「技術分析する暇なんてないさぁからわからないさぁがこの鏡、多分硝子じゃないさぁねぇ?」

アシュター 「ガ…硝子じゃないでしょうさすがに…硝子を盾にはできませんよ」

シャム 「だと、おもうんさぁがねぇ…」

ヒュ…ガシャァァン!!

アシュター 「て…あ!?」

なんと、いきなりシャムさん、ラーを地面に落とす。
な、なんということを…。

シャム 「バチあたりなって顔さぁねぇ」

シャムさんは私の顔を見ると、ニヤっと笑ってそんな事を言う。

シャム 「ふむ…割れてない、やっぱ硝子じゃないさぁかね?」

シャムさんはラーを手に取り抱え上げると、鏡面に注目していた。
ラーは傷ひとつついてはいない。

シャム 「お〜い、ラーや〜い、呪えるものなら呪ってみな〜、そんときゃ呪いも解析してやらぁね」

アシュター (な、なんという強気…なんという探究心)

ある意味感心するが、ある意味恐ろしい。
この人に神を恐れるという言葉は存在しないのでしょうか。

アシュター 「あなたは神が怖くないのですか?」

シャム 「? 変なこと聞く子さねぇ、てあたしより年上か」
シャム 「そうさねぇ、人間が恐怖を抱く原理は知っているかい?」

アシュター 「は?」

シャム 「人間はね、知らないことが怖いんだ、理解できないものが怖いんだ」
シャム 「人間は常に、自分の常識で物差しを使い、自分の常識で物事を計る…それが人間さ」
シャム 「たしかに神様には謎が多いさねぇ…でも、物事には原理が存在する、真理が存在する、証明できないものは存在しない」
シャム 「神の特異さは承知しているけど、怖くはないさぁね、調べてもいいってなら神だって解析しちゃうさよ」

アシュター 「……」

シャム 「人間はすごいさよ…科学はもちろん、錬金学、魔術学、生物学、物理学、ああ化学なんて言葉もあるさぁね、数学がなければ物を作ることもできなかったさねぇ」
シャム 「あらゆる物事を系統化し、そして分類する…人間はそれが出来る唯一の生き物だぁよ? 解明できてないのは後は時間と運命くらいさぁね」

アシュター 「時間と運命…どちらも抽象的な物事ですね」

シャム 「だけど存在する、時間があるから、私は喋れる、時間があるから探求できる、運命ってのはちょいっと厄介だけどね…」
シャム 「友人がね、魔術錬金者なんだけどねぇ、こんなこと言っていたさ、運命が違っていたら科学者じゃないあたしがいたとさ」
シャム 「そして色んな可能性を指す言葉それが運命…ゆえにあたしという人物はこの世に運命の数、可能性の数だけあるんだとさ」
シャム 「パラレルっても言うそうさよ」

アシュター 「パラレル…ですか?」

シャム 「さ、そんなことより解析解析! あの子たちが帰ってくるまでにこっちも解析を終了させないとねぇ!」



…………。
………。
……。



『ラグナマキナ捜索1週間目、霊海』


黒羽 「探せど探せど、ラグナマキナなど姿を見せん…本当にいるのか?」

シーザー 「…たしかに、こういつまでも見つからないとなると…」

エド 「うだうだ言っていても仕方が無いって、ここまで来て後にも退けないでしょ」

アンダイン 「…その通りね、いないかもなんて疑問をもっていたら、見つかるものも見つからないわ」

黒羽 「しかし…! もう一週間だぞ!?」

アンダイン 「本来もってすれば1ヶ月かけても、霊海全域調べるなんてできやしないわよ」

黒羽 「くっ…! !?」

エド 「? どうした黒羽ちゃん?」

突然、黒羽ちゃんが神妙な顔をしていた。
一体何があったんだろうか?

黒羽 「今、風切り音が?」

アンダイン 「…! ビンゴ!? なにか近づいてくるわよ!?」

エド 「なにかってなんだぁ!?」

シーザー 「わかりませんっ!!」

突然、アンダインと黒羽ちゃんが何かを感知する。
なんとなく、当たりという勘はある。
だが、その前にちっと厄介なことになりそうだった。

ザパァァァァァン!!

ゾンビA 「あ〜…」
ゾンビB 「いし〜…」

エド 「景気づけだ! やってやっかぁっ!!」

シーザー 「はぁぁぁっ!!」

俺たちは迫り来るゾンビの群れに立ち向かう。
アンダインは戦闘に集中できないのか左手で頭を抱えて、立ち尽くしていた。

アンダイン 「間違いない…! 全長6メートル、重さ2トンはある何かがこっちに迫ってくる!」

エド 「ビンゴっぽいな! おい黒羽ちゃんっ! 風の音を聞くのはいい! アンダインの防衛を頼む!」

黒羽 「ちっ! こんな女を守るなぞ癪だがっ!」

黒羽ちゃんは、しぶしぶアンダインに迫るゾンビを倒していく。
俺はそれを見て、ゾンビたちを各個撃破していった。

ドドドドドドドッ!!

エド 「…? もしかして…あれ?」

霧の向こうから水柱と轟音を上げてなにか黒い塊が突撃してきているのが理解できた。
しかもものすげぇ速度…て。

エド 「アンダインもういい! てか早く対向車線上から逃げろ!!」

アンダイン 「えっ!? ちょっ!?」

ギギギギギギャアアアッ!!!
バッシャァァァァッ!!

シーザー 「ぬぅっ!?」

ブッチャァァッ!!

突然…馬鹿でかい黒い塊がドリフトしながら突っ込んできた。
ご丁寧に4輪かよ…ゾンビ20体くらい巻き込んだぞ…。

? 「ギギギギ…」

黒羽 「な…こ、こいつがラグナマキナか!?」

アンダイン 「しらないわよ!」

突然現れたのは全長6メートル、全高4メートルはある大型のなにかだった。
4つの車輪で水を巻き上げ、黒光りする金属っぽい体をもつ謎の物体。
マキナ…かな?

ウィィィン…。

シーザー 「…?」

突然、マキナの側面に取り付けらた筒が回転し、こちらに向く。
ちょ…まさか!?

エド 「よけろーっ!!」

黒羽 「はっ!?」

ズダダダダダダアァァァァッ!!!

こういう時、危険を察知する能力が何よりも重要だ。
俺の一言にみな一斉に四散してマキナの機関銃攻撃を回避した。

黒羽 「な、なんだあれは!? 筒からなにかでているぞ!?」

エド 「くらったら肉が吹き飛ぶ! 絶対くらうなよっ!」

アンダイン 「水の奔流よ、荒れる津波をも打ち抜く一撃となり、敵を貫け、ストリーム!!」

アンダインはいきなり大きな魔法をマキナに対して放つ。
並みのマキナなら一撃で粉砕されるような強力な魔法だ。

バッシャァァァァァ!!

物凄く圧縮された水がマキナを襲う。
しかしアンダインの一撃でもマキナの巨体を揺らすにとどまるのだった。

マキナ 「ギギギ…」

アンダイン 「ち…魔法防御高いじゃないの!」

エド 「だったらぁっ!!」

ガッキィィィン!!

俺はラグナマキナ(多分)のでかい体に乗り、聖剣を振るう。
しかし、案の定と言おうか切るどころか装甲に傷ひとつついてやしない。

マキナ 「……!」

ギャギャギャギャギャッ!!

エド 「うおおっ!?」

突然、マキナが走り出す。
俺は咄嗟に瞬歩で飛び降りて難を逃れる。

黒羽 「ち、巨体の割に速いじゃないか!」

黒羽ちゃんは横からラグナマキナの様子を探る。
たしかに速えわな、だったら。

エド 「まずは行動力、削減してやらぁ!!」

俺は再び瞬歩で距離を0にし、ラグナマキナの前車輪左側に切りかかる。

ガコン!!

エド 「! 案外間接部分はもろいじゃねぇか…て…おい!?」

ギャギャギャギャッ!!

タイヤがひとつ外れるといきなり、その場で回転を始め、危険にさらされてしまう。
俺は慌てて瞬歩応用版で空中にて難を逃れた。

黒羽 「ちぃ!! とまれぇぇ!!」
シーザー 「はぁぁぁっ!!」

ガコン! ガン!!

黒羽ちゃんとシーザーさんが続けざま、車輪を潰していく。

アンダイン 「こいつでぇぇ! 足は終わり!!」

最後にアンダインが蹴りでラグナマキナの足を潰して、ラグナマキナの巨体が霊海に沈む。

エド 「…おし! これで動けねぇだろ!」

しかし、なにせ何をしてくるかさっぱり分からない相手、俺たちは動けないラグナマキナの四方を用心深く囲んだ。

エド 「さぁってと、どうやってバラすか…?」

こいつがラグナマキナだとすると、なんとかバラしてラグナの心臓とやらがひつようらしい。
でも、マキナの心臓ってなんだ?

マキナ 「ギギギギギ…!」

ギィィィ…ガシャ! ガシャン!

黒羽 「は…?」

ギギギギ!

エド 「へ?」

アンダイン 「ちょ…まさか…?」

ガシャン!

シーザー 「な…なんと…」

ガシャン!

俺たちが目を丸くしたのも無理はなかった…。
動けないと思ったラグナマキナは、俺たちの想像を遥に超えていたのだ。
それは、別に空をとんだとか、車輪が再生したとかそういうわけじゃない。

黒羽 「機械人形が…」

エド 「変形…しやがった」

なんと、これまでの戦いは一体なんだったのだろうか。
戦車のような形をしていたそれは、突然大掛かりな変形を始め、ついには巨人型マキナへと変貌を遂げたのだ。
全高6メートルちょい、巨人族にくらべりゃ小さいとはいえ…俺たちの身の丈3倍はあるわけだ。

マキナ 「グオオオオオッ!!」

ラグナマキナの顔…と思う部分から不気味な唸り声が聞こえた。
畜生…マキナってなんでもありかよ、これ破壊しても、今度は鳥型マキナになったりとかしねぇだろうな?

エド 「ちっ! 弱点は間接部分! 装甲で覆えないところはもろいだろうがっ!!」

俺はすぐさまラグナマキナに攻撃を開始した。
まずは足の間接部分を狙い、でかい図体を地面に着かせる!

マキナ 「ガァァァッ!!」

エド 「! ちぃ!!」

マキナは俺の体より太い二の腕を振るい、俺を近づかせない。
さすがにこれには、俺も危険を感じ、すぐには近寄らなかった。

黒羽 「怯むなエドッ!! つぇぇぇあああ!!」

俺が下がったのを見て黒羽ちゃんが側面から突っ込む。

エド 「ちっ! くそーっ!!」

シーザー 「三方からの攻撃ならばっ!!」

シーザーさんも攻撃に加わり、トライアングルを描いてラグナマキナに切りかかる。
これならラグナマキナも対処できまい!!

マキナ 「ゴオオオオッ!!」

アンダイン 「!? あんたたち待ちなさい!!」

エド 「!?」

ドシュウ!!

突然ラグナマキナの背中から無数の筒が打ち上げられた。
アンダインの言葉にいち早く反応した俺は踏み止まり、後退をした刹那。

バァン! ズドドドドドドドド!!

黒羽 「!? きゃあっ!?」

突然、破裂音がしたかと思うと鋭利な金属片が無数に地面へと降り注いできた。

シーザー 「ぐうっ!?」

エド 「!? シーザーさん!?」

俺と黒羽ちゃんはなんとか難を逃れたが、シーザーさんだけが、雨のように降り注ぐ金属片にさらされてしまった。

黒羽 「くっ! 殲滅兵器もあるというわけかっ!」

アンダイン 「シーザー、大丈夫!?」

シーザー 「こ、この程度…ふん!」

シーザーさんは背中に突き刺さった金属片を筋肉を動かして外へと放り出す。
幸い、分厚いシーザーさんの筋肉の装甲のお陰で難を逃れたようだな。

アンダイン 「煌く水のマナよ、彼の者の傷を癒したまえ、ウォーターヒール!」

シーザー 「む…すいません、アンダイン殿」

シーザーさんはアンダインの回復魔法で傷を癒す。
とりあえず、問題はなさそうだ。

エド 「ち…たく、あんな兵器持った奴にどうやって近づけっての」

あんな兵器使われたらシーザーさんだったからこそ大丈夫だったものの、俺や黒羽ちゃんは喰らったら回復不可能の大ダメージだぜ?

マキナ 「ガァァァァァァッ!!」

黒羽 「ちぃっ!?」
エド 「うおっ!?」

ラグナマキナは腕をブンブン振って、俺たちを遠ざける。
普通に近づくだけでも困難な相手に、更に近づいたら対地攻撃の雨霰…どうするよ!?

アンダイン 「ちょっとエドワード! あんた頭使いなさいよ! アンタなら砲弾打ち落とせるでしょう!?」

エド 「打ち落とすって…!? そうか!!」

俺はアンダインの言葉にピンと来て、イチかバチかの作戦に出る。

エド「全員、つっこめーっ!!」

俺は瞬歩応用版で、上からラグナマキナに襲い掛かる。
そして、地上では他の皆がラグナマキナに攻撃を仕掛けようとしていた。

マキナ 「ガァァァッ!」

ガコン!

上から見ればわかることがある。
ラグナマキナが四方を囲まれた際、背中に開いてある6基のハッチが開き、中に銀色の筒が装填されてある。
俺は空中で神経を研ぎ澄ます。

バシュウウッッッッ!!

まず、音が飛び込んできた。
そして、次の瞬間には煙を上げて筒が上空へと打ち上げられるのが分かる。
あれが空中で分解されて、地上に鋭利な金属片を撒き散らすわけか。

エド (一瞬だ…一瞬の仕事だぞ、俺!!)

俺は神経を極限まで研ぎ澄まし、筒の動きを完全に捉えようとする。
剣を右手でもち、鞘に収められた状態で、筒と俺の高さが一致する一瞬を狙う。

シ…ユ…ゥ…ゥ…ゥ…。

極限まで研ぎ澄ませた精神は世界をスローモーションの世界へと変えてくれる。
たった1秒ちょっとの感覚だが、この1秒の感覚が、生死を別つというのはよく理解している。

エド 「!!」

キィン!!

声さえ上がらない、短い時間。
俺は剣を水平に薙いだ。
発射された筒の数は、計6発。
同時発射されたそれを打ち落とすには、かなりの正確さが必要だ。

カラン、カラカラカラカラ…。

金属片はラグナマキナの背中へと降り注ぎ、金属同士がぶつかり合い味方に降り注ぐことは無い。

エド 「瞬歩応用版その2、攻撃との連携、成った!」

勇魔大戦時、一度だけ成功したこの技。
瞬歩は通常『足』で行う移動技。
だが、この移動技には一度移動した後の硬直後に、攻撃を入れないといけないという弱点が存在した。
だから、その中生まれたのが、瞬歩と攻撃の連携。
瞬歩をしながら攻撃を行う、つまり瞬歩の速度で攻撃をするのだ。
これはいわゆる腕で行う瞬歩といえる。
それが…ついに…成ったか!

エド 「いっけぇぇっ!!」

黒羽 「はぁぁっ!!」
シーザー 「ぬぅぅっ!!」

ザッシュウウッ!!

マキナ 「ガァァァッ!!」

ラグナマキナの脆い間接部分が切られる。
二の足で立つ巨体も、足の腱にあたる部分がやられれば立てるはずもなく、前のめりに倒れこんだ。

マキナ 「ガガガガ…!」

ラグナマキナは二の腕でなんとか体重を支え、倒れるのを防ぐが、もう戦える状態ではない。

エド 「これでぇ! とどめぇぇぇっ!!」

ズガァン!!

俺は聖剣を両手で握り、重力に任せ、空中からラグナマキナの頭を切り落とす。

プシュゥゥゥゥ…。

頭を切り落とされたラグナマキナは、生物でいうところ、死んだかのように動きをなくした。
これまで、ラグナマキナは動かなくても、マキナ特有の振動があったが、それさえなくなったってことは…。

エド 「…どうやら、第3形態はないようだな」

黒羽 「…そんなものにあったら困る、第一ここまで傷つけられたらどう変形するというのだ…」

エド 「そりゃごもっともで…で、ラグナの心臓ってぇのは?」

アンダイン 「生物学的にいうと、胸部にあるわよね?」

シーザー 「マキナもそこにあるのでしょうか?」

エド 「バラさないとわかりませんよねぇ」

とはいえ、バラすにしても…でかい。
こんな馬鹿でかいのどうやって分解するよ?

エド 「大雑把にぶっこわして、魔王城に運びましょうか?」

アンダイン 「大丈夫なの?」

エド 「マキナ技師でもない俺たちが何もって行きゃいいかわからないんだし、仕方ないでしょ?」

シーザー 「…その通りですな、よし、分解しましょう!」

俺たちは間接部分を切りさばいて、なるべく軽く分解していく。
とはいえ、これは大変そうだ…。



…………。



『次の日 時刻07:25 魔王城』


黒羽 「これで全部か?」

エド 「たぶんな」

アンダイン 「で、こっからどうするわけ?」

シーザー 「とりあえず、シャム殿を呼んでおきましたが…」

アンダイン 「あら、それは都合よく」

シャム 「てぇ〜わけで来てやったよ〜」

ラグナマキナ(多分)を破壊して、次の日。
魔王城のエントランスに残骸を運んでおいた。
とりあえず、シャムさんに必要な物を持っていってもらおうってわけだ。

エド 「アレ? レミィさんは?」

シャム 「レミィはラボで待機中さね、それとホレ」

エド 「! おっと」

シャムさんは突然、ラーを俺に投げつけてくる。
俺は慌ててそれを受け止めた。

シャム 「大体は用済みさね、あとはラグナの心臓はっと」

シャムさんはそう言ってラグナマキナを調べ始める。

エド 「用済みって?」

シャム 「15%程度だけどね、解析完了さね」
シャム 「えーと、ああ…たぶんここさね。ちょいとおまいさん、ここ開けて頂戴さね」

シーザー 「は…はぁ」

シャム 「装甲材力任せに引っぺがしてくれりゃそれでいいさね」

シーザー 「はぁ…ふんっ!!」

ギギギギギ…!

シャムさんの指示で胸部の装甲がシーザーさんの手で文字通り力任せに引っぺがされてしまう。
シャムさんは眼鏡越しから装甲材が引っぺがされた後のラグナマキナを覗き込んでいた。

シャム 「後は必要なところをバラスさね」

エド 「どれくらいかかります?」

シャム 「ん〜? バラすのに3時間ってところさぁねぇ?」

エド 「バ…バラすので3時間もかかるんですか?」

シャム 「何言っているんだい、レミィに搭載するのにゃ24時間はかかるさぁよ」

エド 「丸一日…合わせて27時間すか?」

シャム 「不眠不休ならね」

エド 「……」

こりゃ時間かかるわ。
こんなことやっている間に、ゾディ・アック息を吹き返してないだろうな?
不安で仕方が無い…。

エド 「そういや、レオンたちの話…なにか入ってきました?」

シャム 「ん? いや…特には入ってないさぁね…依然、行方不明…生きているか…死んでいるかも…」

黒羽 「……」

エド 「そう…すか」

俺はZAMのパイロットの言葉を思い出す。
死んだ…本当なのか?
本当にあいつらが死んだのか…?

黒羽 「組み手をするぞ、エド、相手をしろ…」

エド 「…ああ」

黒羽ちゃんも気まずい空気を理解しているのか、組み手をしようと外へと歩き出す。
俺もなんだか、いづらくて黒羽ちゃんと共に外に出るのだった。





………………。





…やがて、時間は経ち、3日かけてラグナの心臓は抜き出され、レミィさんへの実装が成された。
果たして俺たちはゾディ・アックに勝てるのか?
レオンは…サタンは…無事なのか?
何もかもが焦燥の中に頃のことだった…。



『某日 時刻11:13 シャムの工房』


ウィィィン…。

機械の駆動音。
シャムさんの言うラグナの心臓とはラグナマキナのエンジンとジェネレーターのことだった。
大きさの違うそれをレミィさんの体に内蔵するには無理があり、シャムさんは寝ずの作業でそれを改修し、レミィさんに内蔵できるほどコンパクト化していた。

シャム 「…起きな、起きなよレミィ」

レミィ 「了解、マスター」

レミィさんの起動時、今まではしなかったのになにか機械的な駆動音がしていた。
そんなレミィさんが、ラボで目を開けた。

シャム 「体に違和感はないかい?」

レミィ 「特には…」

シャム 「簡単にスペックを説明するよレミィ」
シャム 「多分アンタも感じていることとは思うけど、アンタの出力は従来の3倍近いエネルギーゲインを持っているよ」
シャム 「ゆえに、初回起動時はまだ完全に馴染んでないと思う、まずは体に馴染ませな」
シャム 「徐々に徐々に、その筐体が使いこなせるようになったら、今度はアンタの秘密兵器を説明するよ」

レミィ 「了解、マスター」

シャム 「ああ、それとね、こっちは今の時点で説明する必要があるよね」
シャム 「10年ぶりくらいにあんたの頭の中をいじくったよ…アンタの頭脳には未解凍のプログラムがあるはずだよ、開いてみな」

レミィ 「了解、マスター」

レミィさんはそういうと、うつむいたまま暫く動かなかった。
しかし、暫くすると何も語らず動き出す。

シャム 「今、アンタは周囲の生体反応をキャッチしなかったかい?」

レミィ 「はい、マスター、ここにいる者、トートス村にいる者含め168人の生体反応を感知」

シャム 「神器ラーを解析してあんたに生体反応を探知する能力をつけたね」
シャム 「そして、その能力にはもうひとつ、ラーにはない能力が付加されたさね」

レミィ 「ラーには無い能力…」

シャム 「アンタが筐体を使いこなせるようになるまでは内緒さね」

レミィ 「了解です、マスター」

エド (ラーには無い能力か…)

実に1週間ぶりに動くレミィさんの顔を見た。
レミィさんは外観には変わりはなく、いたって普通だが、これまでと違い、駆動音が隠しきれない様子だった。

シャム 「はぁぁぁ…あ〜疲れたさね…それに眠い…じゃ、後はお願い〜」

バタン!

シャムさんはそう言うとバタンQ〜と言わんばかりに倒れこんで眠ってしまった。
最近、シャムさんには珍しく寝てなかったからなぁ…疲れたんだろうな。

エド 「なにはともあれ、レミィさん、久しぶり!」

レミィ 「はい、久しぶりですエドワードさん」

レミィさんの無表情な返事、だけどそれがなんだか嬉しかった。

レミィ 「私はマスターを寝室へと運びます」

アンダイン 「行ってらっしゃい」

レミィさんはシャムさんを背負うとラボを出て、寝室へと運んでいった。
現在ラボにはペティちゃんを除く全員がいる。

黒羽 「…あの蝙蝠女はどうしているんだ?」

アンダイン 「そういえば、ずっとペティと会ってないわね…」

俺も気にしていたことだった。
ペティちゃんとずっと会っていない。
そう、ZAMを破壊したあの日からずっとだ。

アシュター 「ペティさんは眠っています…あの日からずっと…」

シーザー 「あの日…ZAMを破壊したあの日からですか…?」

それを聞くとアシュターさんはコクリと頷いた。
ペティちゃんはもう1週間以上もずっと眠っているのか…。

エド 「そもそも、ペティちゃんは何者なんだ?」

アンダイン 「わかんない…突然魔王城に現れたもの…ただ、サタンが道しるべだって言っていたわ」

エド 「サタンが道しるべ…て、本当訳わかんないよ…」

アシュター 「しかし、これでゾディ・アックに対抗できるのでしょうか?」

黒羽 「わからんな、あのマキナ少女も外観からはさほどの物は感じんが?」

エド 「まぁ、レミィさんは見た目に騙されるなの典型だからなぁ…とにかく待つしかないだろ、結果をさ」

そう…結果を待つしかない。
俺たちはアルティマに対する力は何一つ無い。
その中光明を見せたのはシャムさんだ。
ラグナの心臓さえ得られればアルティマをどうにかできると言うのだ。
これは巫女を二人保有するゾディ・アックに対して絶対なる力になる。



…そして、1日、2日、3日とかけてレミィさんの試験運用は終わった。
その3日間、力を50%、70%、90%と徐々に上げ、そして4日目、まさに今日100%の力での試験が行われようとしてた。



シャム 「さぁレミィ、いよいよアンタの装備を試す時が来たよ!」

レミィ 「イエス、マスター」

シャム 「アンタも気づいてはいると思うけど、腹部にラグナの心臓の一部であるジェネレーターが内蔵されているさね」
シャム 「そいつを改良し、ある兵器を搭載した、名を『メタモルフォース』とでも名づけるさぁね」

エド 「メタモルフォース?」

奇妙な名前だな…どんな武器だ?
ちなみに俺たちは、トートス村の平和な丘の上で、試験運用を行っていた。
なんでかは知らないが、今回は丘の一角に木製の椅子が配置されていた。

シャム 「じゃ、早速テスト開始するよ! エンジン出力をレッドゾーンに! ジェネレーターバイパスを全部開けて!」

レミィ 「了解! エネルギーフル!」

キィィィィィン!!

今までのレミィさんの出力の三倍のエネルギーゲインをもつというラグナのエンジン。
それが、聞いたことも無いほどの大きな音を立てていた。
それはまるで、レミィさんの体が鳴いているかのようだった。

シャム 「使用プログラムはM! メタモルフォースを椅子に発射してみな!」

レミィ 「了解、メタモルフォース、発射!」

キィィン!!

レミィさんの駆動音が特別大きくなった瞬間、突然レミィさんの体から光が溢れた。
次の瞬間には光はなくなっていたが…。

黒羽 「!? 椅子が…!」

カエル 「ゲロ」

エド 「カエルーッ!?」

なんと、椅子が突然カエルに変化していた。

レミィ 「マスター…これは?」

シャム 「ふっふっふ、さすがに驚いたみたいさぁね」
シャム 「じゃ、説明しようか! 武器名メタモルフォース! その性能はなんとあらゆる物体を『何か』に変化させる能力さぁね!」

アシュター 「あの…何かとはなんなのでしょうか?」

シャム 「そいつは…神のみぞ知る…だねぇ」

エド 「は? そいつは?」

神のみぞ知るって…どういうこと?

シャム 「ひらたく言うとね…Aと言う存在をBに変える! って能力なんだけどねぇ…変化先をプログラムするとパンクしちまうわけさ! 脳が!」
シャム 「この世にある万物に変化先を指定するなんてふかのうなんだよ! だから何に変身するかはランダム」

エド 「ランダムって…」

アンダイン 「ねぇ…もしかしてそれでアルティマをどうにかしようってんじゃ…?」

シャム 「正解っ! その通り! ただ、その変化先もランダム…なんていったら怒るでしょ?」

エド 「当たり前ですっ!」

シャム 「だからさぁ、エーテルが発生した時点で、そのエーテルをマナに還元するように仕組んださね」

エド 「エーテル?」

シャム 「平たく言えばマナを使用して魔法を放つ…これは魔力でもいえることさね」
シャム 「このマナの変化先のことをエーテルって言うわけさ、そいつをマナに戻すと思えばいいさね」

シーザー 「…なるほど、どんな魔法でも、たしかにマナに戻ってしまえば攻撃力も何もないですな」

シャム 「ただ、くれぐれも対放射線状に入るんじゃないよ? 入ったら…どうなるかわからないよ?」

シャムさんは少し凄みを利かせてそんなことを言ってきた。
たしかにアレは喰らいたくないな…カエルになんてなりたくないし…。

レミィ 「あの、マスター、まだ不明の兵器があるのですが、これは?」

レミィさんの質問にシャムさんは、ああ、忘れていたといった顔で振り返る。

シャム 「おっと、そいつの説明を忘れていたよ!」
シャム 「ラグナの心臓が入ったからね…あたしのイメージしていた武器とは違ったけど、ついに完成したよ」

エド 「で、それってなんなんですか?」

シャム 「そうさねぇ…仮に名づけて転移砲」

エド 「転移砲?」

シャム 「レミィ、使用プログラムはL、そうさねぇ…あの岩に発射してみな」
シャム 「出力は50%以上あれは使えるはずだよ」

レミィ 「了解」

シャムさんは適当な岩を見つけると、それに放てという。
レミィさんの外観からは何が飛び出すかさっぱり不明だが…。

レミィ 「発射」

ズドォン!

黒羽 「!? な…なんだ?」

エド 「? 一瞬でよくわかんなかったけど?」

あまりに突然だったんでよくわからなかったが、レミィさんが発射と言った瞬間、岩が爆発した。
一体なにが起こったんだよ…。

シャム 「じゃ、説明するよ、この転移砲、ターゲットした存在に対して至近距離射撃を行う兵器さね」

アンダイン 「…よくわからないんだけど?」

シャム 「説明むずかしいさね…簡単に言うと、メタモルフォースでマナ化したエーテルは空気中のマナと結合し、相手の近くでマナをエーテル化して、エネルギー兵器で攻撃!」
シャム 「…なんて武器なんだけどね」

エド 「すいません、全然わかりません!」

シャム 「……えっとね、簡単に言えばワープ攻撃と思ってよ」
シャム 「攻撃だけワープして相手の至近距離あるいは体内から放たれる兵器」
シャム 「あんたたちにこの武器は難しすぎたさね…はぁ」

アンダイン 「理論で語られたら、私でも分からないわよ」

エド 「ワープ…ねぇ?」

シャム 「正確にはワープしてないんさよ? マナ化したエーテルを敵至近距離で還元し攻撃ってわけだから」
シャム 「とはいえ、理論上はここから魔王城だって狙い撃ちできるさね」

シーザー 「なんと!? それほどの射程が!?」

シャム 「この兵器に射程という概念はないさよ、認識できる限り、どんなところにも攻撃できるさよ」

エド 「認識出来る限りって?」

どうにも、シャムさんの言うことはイチイチ難しすぎる。
1世紀は先の頭を持った人物と言われているが、俺たちとは頭の出来が違いすぎるな…。

シャム 「認識できないものに攻撃はできないよ、だけどそこで役立つのが、レミィの頭に追加した能力!」
シャム 「その名も生体感知レーダー!」

エド 「それって、ラーの能力を解析して作ったていう…」
エド 「あ、そういえばラーには無い能力も付加したんですよね?」

シャム 「そうさね! ラーの能力は自分周囲の状況を正確に伝えるが、範囲外のことはなにもわからない!」
シャム 「そいつをアタシの頭脳は覆したよ! なんと特定の生命体の位置を探知できるさ!」

エド 「!? それってもしかして、セリア王女たちの居場所が!?」

シャム 「そう、わかるさよ!」
シャム 「さぁ…準備しな、ゾディ・アックに殴りこみさぁよ!」

その言葉に全員の顔が生気に満ちる。
俺たちは慌てて準備を始めていた。



…………。



シャム 「レミィが割り出した結果、セリア王女とリリスちゃんは同じ場所にいるさぁね…その場所ってのが人間界北側の大陸」
シャム 「『ゼミィル遺跡』…て出たさぁよ」

アンダイン 「…なんてこった、魔王城からそんなに離れてない場所じゃない」

シーザー 「魔王城から南東に5キロほど行った場所ですな」

エド 「そこに、セリア王女たちが?」

シャム 「ああ、いるさね…行くかい?」

アンダイン 「当たり前でしょ?」

シーザー 「当然です」

黒羽 「翼の傷の落とし前は付けさせてもらうさ」

アシュター 「私も館を破壊されましたからね」

エド 「俺は当然ながら」

シャム 「オーケー、やる気満々さぁね」
シャム 「やるべきことはレミィに伝えた、あたしはここに残るさぁよ」
シャム 「アンタたち、準備を…」

ペティ 「は…はうぅ…」

ガチャリ…。

アシュター 「! ペティさん!」

突然、居間の扉が開かれたかと思うと、ペティちゃんが起きて現れた。
一体どうしたんだ、眠り姫が突然…。

ペティ 「あ…あの…私も…行き…ますぅ…」

アシュター 「ペティさん?」

エド 「行くってマジかよ…」

ていうか、自分で自分の道を決めたところを始めて見た気が。
一体どうしたんだ?

ペティ 「よ…呼んでいます…サタン様ぁ…」

アンダイン 「? まさか…まさか、サタンもそこに!?」

レミィ 「サタンのデータは登録されていません、不明です」

エド 「待てよ? だったらレオンは!?」

レミィ 「残念ながら、レオンさんのデータも登録外のため、探知できません」

エド 「あっそう…はぁ…」

淡い期待を寄せちまった…。
しかしまぁ、レミィさんったらあっさりと切ってくれる…はぁ。

シーザー 「しかし、向かうメンバーは私、アンダイン殿、エドさん、黒羽さん、アシュター様、レミィさん、ペティさんですか?」

エド 「意外と多いな」

アンダイン 「敵はもっと多いだろうし、いいんじゃない?」

アシュター 「ともかく、向かってみましょう」

俺たちはそう思うと転送装置を使い、例のゼミィル遺跡へと向かった。



…………。



『同日 時刻14:35 ゼミィル遺跡1F』


エド 「…おーおー、いるいる、ありゃゾディ・アックの構成員だな」

俺たちはゼミィル遺跡の入り口にいた。
遺跡の内部には何人か黒い戦闘服に身を包んだやつらがいた。
十中八九ゾディ・アックだな。
よもやこんなところに潜伏しているなんてな。

黒羽 「遺跡の規模は?」

アシュター 「地下に遺跡は広がります」

エド 「とーりーあーえーず!」

俺は瞬歩で、門番のように遺跡の入り口に佇む構成員の目の前に出た。

エド 「ども〜、三河屋でぇ〜す」

ZA兵A 「!?」 ZA兵B 「な、なんだ!?」

エド 「ふんっ!」

ドッ! ガッ!

俺は手早く門番2名を眠らせる。
久しぶりに生身の人間殴った気がするなぁ〜…。
最近、ゾンビばっかり相手してたからだな。

エド 「ラー、詳細表示!」

俺は久しぶりに持つラーに指示を送る。
それを聞いてラーは鏡面にマップを写した。
地上1Fを断面図にして写した感じだな。

エド 「レミィさん、場所わかります?」

すでに門番2名を沈黙させて全員が集まってきたところ、俺はレミィさんに聞いた。

レミィ 「恐らく地下3階以降にいると思います、まだ完全に場所の特定は…」

黒羽 「ふん…突入するぞ!」

シーザー 「ええ!」

アシュター 「…いきますよ、ペティさん」

ペティ 「はぁいぃ〜」

俺たちは遺跡内部へと侵入を開始する。


『同日 同時刻 ゼミィル遺跡B1F』


エド 「えっと…これが俺たちの現在位置、でB2Fへと階段はこの2箇所」

俺はラーの鏡面を見てB1Fの状態を見る。
遺跡は思ったより入り組んでおり、2箇所だけ更に地下へと降りる場所があった。

エド 「どうします?」

アシュター 「二手に分かれるかどうかですね」

レミィ 「地下状況は不明ですが、どちらも距離的には最終的目標とそう差はありません」

黒羽 「しかし、二手に分かれるとしてどう分かつ?」

最もなことだ。
ここはなんせ敵陣地、どこにどんな罠があるかわかったものじゃない。

エド 「俺はこっちの…そうだなAの階段へと向かう」

シーザー 「では、私はBへと行きましょう」

レミィ 「私はAへ」

黒羽 「ならば私はBだな」

アシュター 「では私と、ペティさんはAへ行きますから、アンダインさんはBでお願いします」

アンダイン 「了解」

俺たちはそれぞれ進むべき分担をする。
俺と一緒に行くのはレミィさん、アシュターさん、ペティさんか。
実質3人パーティだな。

エド 「んじゃ、また生きて!」

俺たちは班を分けて、ゾディ・アックの要塞の攻略にかかる。



…………。



『同日 某時刻 ゼミィル遺跡B2F A班』


エド 「ちぃ!!」

ザシュウッ!!

ZA兵A 「ぐうっ!?」

レミィ 「転移砲、発射!」

タァンタァンタァンタァン!

ZA兵B 「うおっ!?」
ZA兵C 「ぐわっ!?」
ZA兵D 「なぁ!?」

大半の敵は、レミィさんの転移砲でバタバタと近づく前に倒れてくれる。

ZA兵E 「な、なんなんだ一体!? やつらは一体何をしてきているんだ!?」

エド (こりゃすげぇわ、近づくもの皆傷つけたよ)

レミィさんはまさに鬼神だった。
レミィさんはただ走っているだけなのだが、転移砲の性質上、視界に入った時にはすでに攻撃されており、敵は何も出来ないのだ。

? 「だらしねぇ!! たかが侵入者にぃ!!」

エド 「! おっと!?」

ズッシィィン!

突然、2メートルちかくの大男が現れた。
大きな大斧を持ち、やたら太った大男。

? 「おれぁっ! ゾディ・アック13幹部の一人ぃ! 牡牛座のぉ…!」

レミィ 「転移砲!」

ズドォォン!!

? 「ぐぇぇ!?」

レミィさん、やっちゃったよ…名乗り文句中に攻撃しちゃったよ…。
まぁ、いいけどさぁ…。

? 「ぐ…ぐうぅぅ…こ、これしきのことでぇ…!」

おお、しかしレミィさんの転移砲を喰らって倒れないか。

エド 「悪いけどさぁ、邪魔!」

俺は瞬歩で距離を0にし、そのまま応用版その2で顔面を蹴り飛ばした。

? 「ぶぐ…!?」

ズッシィィィン!!

ZA兵F 「タウラ様がやられたー!! 全員逃げろーっ!!」
ZA兵G 「うわぁぁぁっ!!」

エド 「…あらら、逃げちゃったよ」

アシュター 「これは楽でいいですねぇ…それじゃ、先へ進みましょう」

そういえば、アシュターさん何もしてないなぁ…みーんなレミィさんが倒しちゃうから仕方ないけど。
俺もおこぼれ倒す程度だもんなぁ…。

エド 「B3F、一番乗り!」

俺はそう言ってタウラとかいう大男を飛び越えて階段を下った。



『一方B班』


? 「この階段は通さん! 我が名はスケア、蟹座のスケアだ!」
スケア 「貴様ら、一人たりとも地下3階へは行かせん!」

黒羽 「……」
アンダイン 「……」
シーザー 「……」

私たちはスケアと名乗る阿呆を見定める。
この阿呆は両手に鎖鎌を持ち、軽装の鎧に身を包んでいた。

黒羽 「せぇの、じゃんけん・ぽん!」

私は一端その阿呆に背を向けると、アンダイン、シーザーとでじゃんけんをする。
結果は私がグーで、他はチョキ。

黒羽 「…よし、私があの阿呆を殺る」

アンダイン 「無理しちゃダメよ〜」

シーザー 「ふむ…まぁ、大丈夫とは思いますが」

スケア 「? 貴様ら…まさか…?」

黒羽 「こい阿呆、私が相手だ」

スケア 「貴様らーっ! 俺を馬鹿にしてぇ!!」

阿呆はカマをブンブンと回すと、そのまま投げつけてきた。
私はそれを虎鉄で弾く…が、鎖鎌の性質か、刀に絡み付いてきた。
鬱陶しいな。

スケア 「馬鹿め! 調子に乗っているからだ!! はっはぁ! まず一匹ぃぃ!!」

黒羽 「調子に乗っているのはどっちだ、阿呆が…ふん!!」

私は刀に鎖鎌があろうが気にしない。
力任せに鎖鎌ごと、相手の体を斜めに分断する。

スケア 「ぐぅ!? ま…さか…!?」

黒羽 「シーラという女はこんなに弱くなかったぞ?」

ズシャァァ!!

阿呆は真っ二つになりその場に倒れる。
こいつは特別ザコなのか、それともゾディ・アックの兵などこの程度なのか。
少なくともシーラは今の私よりも強かった…それだけは覚えている。
ふ…私はまだ強くなれる…。

黒羽 「どけ、阿呆が」

私は死体をどかし、地下3階へと向かった。



…………。



レミィ 「目標近いです! 11時の方向80メートル」

エド 「この大広間か!」

アシュター 「行きましょう! そこにリリスさんたちが!」

ペティ 「はぁぁうううっ!?」



黒羽 「機械音がするぞ!?」

アンダイン 「何処でもいいわよ! 行くわよ!」

シーザー 「ええ!」



…………。



ZA兵A 「ご報告します! 侵入者地下3階へと侵入! ここへと向かっています!」

ZA兵B 「この工場へと侵入されるのは時間の問題かと!? いかがなさいましょうか教主様!?」

教主 「ふふふ…おろかな、このゾディ・アックの本部へと来るとは」

スレイク 「私が行きましょうか?」

教主 「13幹部の一人、スレイクか…ふふふ、捨て置け、来たところで一歩遅かったわ、すでに新たなるアルティメイトは完成した!」

スレイク 「……」



…………。



エド 「ここかぁ!!」

俺たちは兵士を押しのけ、地下3階に広がる特別広いエリアへと差し掛かった。
レミィさんによると、ここにセリア王女とリリスちゃんがいるそうだが!?

エド 「リリスちゃん、セリア王女!?」

俺たちは広場へと入る。

セリア 「……」
リリス 「……」

広場にはなにやら様々な機材があり、それらの中央にはカプセルの中で立ったまま眠る二人の巫女の姿があった。

? 『よく来たな、侵入者たちよ!』

エド 「! セリア王女たちは返してもらうぞっ!!」

突然、一人の年老いた男が現れた。
法衣に身を包み、白い髭に白髪の爺さん。
何者かはまだ分からんが恐らく、教主!

? 『貴様たち、このゾディ・アックの本部の場所に気づいたのはさすがだが、一足遅かったな!』

アシュター (「エドさん…おかしいです、あのご老体の声…妙に曇って聞えませんか?」)

エド (「言われてみれば…」)

隣からアシュターさんがヒソヒソ声でおかしいと言う。
たしかにあの爺さんの声は生声とは違う感じがする…どういうことだ?

アシュター 「失礼しますご老体! あなた様はゾディ・アックの教主殿かとお見受けしますが、我々はこの世界の財産である二人の巫女を取り替えさせていただく!」

? 『ほう、言うわたかが吸血鬼が! 私たしかにこのゾディ・アックを創始した、教主クライ』
クライ 『侵入者どもよ、見るがいい! 我々の切り札、アルティメイトを!』

エド 「! セリア王女、リリスちゃん!」

突然、二人を収めていたカプセルが地面に埋まってしまう。
そして、次の瞬間地面が横にスライドして、一体の大型マキナが姿を現した。

黒羽 「!? ちぃ、また大福か!」
アンダイン 「そっちにいるのエド!?」
シーザー 「エドワード殿!」

丁度マキナが出てくるとき、向かい側から黒羽ちゃんたちが出てきた。
どうやら繋がっていたみたいだな。

クライ 『ははは! これぞ真のアルティメイト! アルティマバスターの威力を思い知るがいい!』

アルティメイト 「……!」

依然出てきた大福型マキナ、こちら側の呼び方はZAM。
あれは8メートルほどの巨体だったが、こっちは半分くらいのサイズだった。
だが形は同じで、コンパクト化しただけといった様子。
そして、アルティメイトはなにやらエネルギーを溜めている様子だった。

エド 「ちょ…!? ここでアルティマなんて撃ったら、遺跡が吹き飛ぶぞ!?」

クライ 『ふはは! どの道もうこの本部はいらん! これからは世界全てが私のものだ!』

アシュター 「言ってくれますね…」

ペティ 「はうぅ〜」

レミィ 「…高密度のエネルギー反応を感知、メタモルフォースの発動準備開始!」

レミィさんも危険を感じてか、エネルギーのチャージを始める。

クライ 『ははは! 心配するな、威力は本来の20万分の1の威力だ! それでも貴様らを消し去れるがな!』
クライ 『アルティマバスター、発射だ!!』

アルティメイト 「!!」

レミィ 「エネルギーフル! メタモルフォース!!」

キィィン!!

エド 「くっ!?」

目を開けられないほどの強い光。
一瞬目を閉じた。
どうなるかはわからん、だが…俺はまだ生きている…その実感があるとわかったとき、目は開いていた。

クライ 『!? 馬鹿な…不発か!?』

エド 「…ふ、違うな! 無効化したのさ!」

クライ 『無効化だと…!? 馬鹿な! 一体なにを!?』

エド 「説明するのは面倒だ!!」

俺は瞬歩で距離を詰め、アルティメイトに切りかかる。

キィン!!

エド 「とぉっ!?」

…て、すっかり忘れてた、Nの障壁!
モロ止められたじゃん!

クライ 『馬鹿が! アルティメイトの装甲にその程度で触れられるものか!』

エド 「にゃろうっ!」

とはいえ、どうしたものか。
むきになろうが何しようが人間の力じゃまず突破不可能のこのバリア。

クライ 『たとえアルティマバスターがなくとも! やれ! アルティメイト!』

アルティメイト 「!」

ヒュンヒュンヒュン!!

突然、アルティメイトの体から黒い棒状の何かが飛び出してきた。
て、またあのビットかよ!?

エド 「くっ!? このぉっ!!」

黒羽 「く、また粒あんか!!」

無数に飛び出すビットは俺たちの攻撃を回避し、そしてエネルギー砲で攻撃してくる。

レミィ 「ターゲット、全ロック完了」

エド 「は?」

クライ 『なに…?』

突然、レミィさんが何もしないかと思えば、全ターゲットロック完了とかいう。
まさか…?

レミィ 「転移砲、発射!」

ズパァン! ズドドドドドッ!!

突然、全ビットに対して、転移砲による一斉砲撃が開始される。
さすがのビットもこれには一撃で全部落とされた。
て、転移砲って…複数ロックできるわけね…。

クライ 『またか!? その女化け物か!?』

エド 「ちっくしょう…今回レミィさん一人勝ちか…」

レミィ 「転移砲!!」

ちょっと悔しいが、今日はレミィさん大活躍のようだった。
シャムさんを褒めるべきなのだろうが、事あるごとに敵の全て上を行くレミィさんの性能…味方でよかった…。

ズパァン!!

最後に一撃、転移砲がアルティメイトのNのフィールドの内側から攻撃する。
いくらバリアでも空気を遮断するわけじゃないから、通るみたいだな。

レミィ 「バリア発生装置は破壊しました、どうぞ」

エド 「! へ…粋だねぇ、レミィさんよ!!」

レミィさんはなんとこっちに手柄を譲るそうだ。
そんな昨日があるとは驚きだが、それならそれでと、俺はアルティメイトに切りかかる。
力任せに強引に剣をアルティメイトに突き刺し、まずはセリア王女を救出する。

ズパァン!!

セリア 「……」

カプセルを割り、装甲をこじ開け、なんとか無事セリア王女を救出した。
次は…!

ヒュン! ズパァン!!

突然一閃、スマートな切り口で一発でリリスちゃんを救出したのはアシュターさんだった。
リリスちゃんも無事のようで、眠っているようだが、アシュターさんに救出されるのだった。

エド 「おし! これで終わりだ!! ゾディ・アック!」

クライ 『く…!? おのれぇ!! 者ども! 侵入者だ! 生かして帰すな!!』

エド 「うっせぇよ!!」

俺は爺さんに瞬歩で近づき、剣を振る。

ブォン!!

エド 「! そうきたか」

しかし、爺さんの体は俺の剣をすり抜けた。
ずっと疑問に思っていた爺さんの謎。
どうやら、爺さんそのものはここにおらず、目の前の爺さんはただの映像の塊だったようだ。

ダタタタタタタタタ!!!

物凄い足音が聞える。
どうやら相当の数の兵士がここに向かっているようだった。

ラー 『大変だぞ、エド…ここに1000人近くの人間がきている!』

エド 「1000か…霊海では毎日のように戦った数だな…」

ただし、霊海ではゾンビ、こっちは知能のある人間って違いはあるな…。

エド 「やぁってやるかっ!!」

押し寄せる人並みに、残骸と化したアルティメイトの周りの集まる俺たち。

俺たちは戦う、ひたすら…永遠に。



…………。



『同日 同時刻 ゼミィル遺跡 司令室』


クライ 「ふっふふふ…侵入者どもめ…生かしては帰さんぞ絶対に!」
クライ 「貴様らは全員この遺跡と一緒に滅ぶがいい、ふはははは!!」

ゾディ・アックの教主クライは司令室にいた。
狂気に満ちた顔で笑うクライは司令室にあったとある赤いボタンをゆっくりと押し込む。
すると突然、遺跡そのものが激しい揺れに見舞われた。
その、そのボタンはなんと、遺跡の崩壊を促すスイッチだったのだ。
遺跡はあと10分で、完全に押しつぶされる。
そして、クライは何事も無かったかのように司令室を後にし、脱出しようとしていた。

スレイク 「…教主よ、貴様、どういうつもりだ?」

クライ 「? スレイクか、ふふふ…やつらを侵入者を皆殺しにするのだ!」

スレイク 「そのために…ゾディ・アックの兵を道連れにするというのか?」

クライ 「ふん、所詮は雑兵だ! わが野望の道具に過ぎん!」

スレイク 「貴様…!」

クライ 「スレイク、貴様は力がある、早く脱出することだ、危険だぞ?」

スレイク 「ああ…ただし、貴様を殺してからな!」

クライ 「なに…!? ぐっ!? な…なぜ…だ?」

スレイクはなんと、ナイフでクライの腹を突き刺した。
銀の刃がクライの背中をつき抜け、鮮血の血が地面へと垂れる。

スレイク 「貴様に、この世界で生きる価値など無い」

クライ 「馬鹿…な…私を…殺せば…あいつらがただではおかんぞ?」

スレイク 「あいつら? ふん…そのあいつらがお前は要らんと言っているのだ…諦めろ」

スレイクはそう言うと突然、懐からひとつの仮面を取り出し、それを顔面にかぶせた。
泣いた様な顔をした不気味な仮面を被るスレイク、それを見てクライは。

クライ 「ば…馬鹿な…そん…な…裏切るのか…?」

スレイク 「利用していただけだ、実際よくやってくれた…だがやりすぎた、貴様はやりすぎのたのだ」

クライ 「おのれぇぇ…アビ…ス…!」





ドドドドドドドド!!

エド 「お…おい、何の音だよ!?」

レミィ 「! 建物が崩れています! このままでは私たちは遺跡の下敷きに!」

アシュター 「!? まさか…!」

アンダイン 「ちぃ! だけどどうやって脱出するのよ!?」

すでに30分以上戦っている。
だが、ゾディ・アックの兵士たちの戦意に衰える様子はない。
場の事態などお構い無しに襲ってくる。
忠誠心の凄さを褒めるべきか…なんというか。

レミィ 「? 上になにか反応が!」

アンダイン 「はぁ!? 上ぇ!?」

エド 「一体なにが…!?」

俺たちは一斉に上に注目した瞬間。

ガラァン!

天井が崩れる、そしてそこから二人の『男』が降り立った。

エド 「…へ…遅いぞ」

レオン 「…久しぶり、エド」

シーザー 「サタン様…」

サタン 「…ふん、すまんなお前ら」

なんと、突然現れたのは今の今まで何をしていたのか、レオンとサタンだった。

レオン 「ここは崩れる、サタン、急げよ!」

サタン 「ふん! 貴様に言われずとも!」

突然、現れたかと思うとサタンはアルティメイトの上に何かを描く。
練成陣…? いや…これは!?

サタン 「お前ら、この転送陣に乗れ! 脱出だ!」

なんと、サタンはいきなり現れたと思ったら転送陣を描いていたのだ。
俺たちは慌てて転送陣に飛び乗った。



ヒュン!!

エド 「…ここは?」

サタンの転送陣で出た先はなにやら城の様だった…てか、最近よく来ていたようなぁ〜?

サタン 「魔王城だ」

エド 「やっぱり〜…」

レオン 「みんな、無事?」

アンダイン 「ええ…てか、こらサタン! 今まで何をしていたのよ!?」

サタン 「ぬ…それがだな…」

俺たちが助かって一番気にしていたこと。
なんとレオンとサタンが生きて俺たちの前に現れたのだ。
正直驚きだ。

レオン 「俺たち、ゾディ・アックの計略にはまって、あそこでサタンと一騎討ちをする羽目になったんだ」

サタン 「しかし、決着はつかず、突然俺たちに向かって白いレーザーが襲い、爆発に飲まれた」

レオン 「死んだと思ったが、俺たちは奇跡的に助かっており、誰かに助けられたんだ」

シーザー 「誰か…ですか」

レオン 「ああ、傷の手当ても完璧だった、だけど俺たちはあの遺跡の一室に閉じ込められていたんだ」
レオン 「脱出しようにも神器もなく、壁は一面対魔抗体が施されている…脱出は不可能」

サタン 「だが、そんな時、突然俺たちの神器、ディアボロスとゼウスが俺たちを幽閉する部屋の中にあった」
サタン 「俺たちは急いで脱出を図ったが、レオンがお前たちの気配を察知し、お前たちの元へと向かったんだ」

レオン 「いやぁ、やっと日の光を浴びれた!」

エド 「するってぇと、お前たちをあの遺跡で匿った奴がいるのか…一体誰なんだ?」

レオン 「さぁ…それより、シーラさんは?」

エド 「シーラさん? そういえば見てないな」

サタン (シーラか、思えば俺たちを助けた誰か…光の奥に見えたのはシーラだった気が…シーラ、貴様は神か悪魔か?)

エド 「しかし、なにはともあれ助かってよかったよかった!」
エド 「無事、セリア王女もリリスちゃんも助かったし!」

そういえば、リリスちゃんたちは?

リリス 「……ん?」

セリア 「あらぁ…? ここは…?」

レオン 「リリスちゃん」

サタン 「セリア…」

一緒に救出した巫女様たちは、丁度一緒に目を覚ました。
魔王城のテラスに夕日が差し込む時期、ようやく戦いが終わった。

セリア 「あらぁ? サタン?」

サタン 「セリア!」

サタンはセリア王女を抱きしめる。
セリア王女は最初は驚いてか、顔を赤面させていたがやがてゆっくりとサタンを抱擁するように。

セリア 「どうしたんですの、サタン…私はここにいますよ」

アシュター 「リリスちゃん」

リリス 「アシュター様、私、夢を見てました…真っ黒な闇の中にいる夢…いつもいつも真っ黒な闇しかそこにはないんです」
リリス 「だけど、光が差し込みました、その光が…私を目覚めへと誘ってくれました…」

レオン 「リリスちゃん、怪我はない?」

リリス 「あ、レオンさん…えと、はい!」

二人の少女の安らかな顔。
それが戦いの厳しさを忘れさせてくれる。
ゾディ・アックとの戦い…大変だったがなんとか取り返せた。
あれからゾディ・アックがどうなったかはわからない。
だが、今度はそう上手くはいかないだろう…。

エド 「なぁ、レオン…やっぱりシーラさんは…」

レオン 「わからない」

エド 「…レオン」

レオン 「俺にはわからない、シーラさんが敵なのか…味方なのか…シーラさんは俺を騙した、だけど同時に俺を助けてくれた気もするんだ…」

今回の最大の謎、シーラさん。
あの人は俺たちの敵か…味方か?
それは…誰にも分からない謎だった。





第2部 ゾディ・アック編 完




















『同日 某時刻 場所:???』


シーラ 「これでゾディ・アックは滅びました」
シーラ 「魔王と勇者も助かりました、これもあなたの計算の内ですか?」
シーラ 「神魔大戦…異なる戦い?」
シーラ 「なるほど…興味ぶかいですね、わかりましたもう少しあなたの口車に乗ることとしましょう」




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