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OPERATION Fast 『強奪』

西暦2318年。
既に新世暦と名は変わり新世暦『308』年。
人類の未来は決して穏やかではなかった。

著しく発展した文明…それはあらゆる分野で発展を遂げていた。
物理学…生物学…光化学…。

中でも…最も発達していたのはロボット工学だった…。

西暦20XX年…。
人類は遂に完全自立人型ロボットの開発に成功した。
それはまさしく新たな時代の幕開け…それにより時代は新たな西暦…新世暦へと変わった。
しかし、それは輝かしい未来を象徴すべきはずのものだったがそれは泥沼の未来を象徴するものだと後の人々は理解した。

人の手がいらず、ロボットたちが自己の判断で行動する…。
人間が最も望んだ形のロボットの進化…。
しかし、それは人の手によって戦場へと送られた…。
血も涙も流さずいたみも何もないロボット…。
それは兵士としては最適の存在だった。
血を流さずに出来る戦争…。
これも人間の望んだ形…。
しかし、それこそが人が望んだ誤った歪んだ形だった。

戦争は人の感情を麻痺させる…だがロボットは違う。
確かに違った…が、やはりロボットに命令を下すのは人間…。
ロボットの出現は大規模な戦争よりむしろゲリラ戦などに多く使われた。
それは無差別な粛清…。
ロボットを使って人を殺す…最悪の手段だった。
結果そんなことがロボットに人の手を汚さず人を殺せるという誤った形にした…。
やがてそんなロボットの出現から30年…。
ロボットはその慌しい歴史に疲れたかのように人間達の手で抹消された。
無人ロボットのデータは完全に抹消されそれ以後創られることはなかった。
誰も作りはしない…作ればまたおろかな歴史は始まるから…。

しかし…人間にはその愚かな歴史がお似合いなのかもしれない…。
結局ロボットが消えても戦争や紛争…戦いは消えることなく永遠に続いた…。

そして、288年…その戦いの歴史の中で再びロボットが姿を現した。
それは『ユニット』と呼ばれる巨大人型戦車でそれの出現によって戦場は大きな変化を見せた。
それまでは巨大ロボットなど夢やアニメの世界だけの物…それが現実になったのだ。
ユニットの生産は戦場に生身の歩兵の姿を消した。
戦闘機よりも早く戦車よりも硬く戦艦よりも強力な攻撃力。
そして人間よりも高い凡用性…それはある意味時代の望んだ新たな戦い方だった。


そして新世暦318年 ある強大な組織と小さな組織との抗争があった…。

そして物語は永遠に止められぬ戦争の中…このふたつの抗争とは関係のないはずだったある国で起こる。



新世暦318年 5月11日 ユーラシア大陸にある新興国家『ハッテン』


ーハッテン特殊兵器所蔵陸軍基地ー



ドカァーン!!


突然の爆音。
ここは基地だ、爆音などは普通だがそれにしては異常だった。
その基地にいる兵士たちも驚いている。
そう、それは襲撃のサイレンでもなく演習でもなく…。
『強奪』だったからだ…。

司令官 「何事だ!?」

司令塔にいた司令官は事の事態に驚きを隠しつつも動揺しながら周りの兵士に問いただした。
兵士たちも動揺していたがすぐにひとりの兵士が状況を司令官に報告した。

兵士 「スパイが紛れ込んでいたようです!」

兵士 「現在開発中の試作ユニット『ナイトメア』を強奪! 基地に対し攻撃を行っています!」

兵士のひとりがそう言った後続ける様にその隣の兵士が言った。
そう、今この基地は試作機が奪われてしまった状態だったのだ。

兵士 「スパイの身元は割れていませんが恐らく『エグザイル』の者と思われます!」

エグザイル…それは今この世にある最も強大な組織だ。
エグザイルは世界の統一を名分に全世界へ宣戦布告。
今実質世界征服を目論んでいる組織だ。
その力は強大で一つ一つの国ではまるで歯が立たない。
あらゆる地域の国に攻撃を仕掛け、その組織の全容はまるでわかってはいなかった。

ドカァーン!!

兵士 「うわぁ!?」

司令官 「ちぃ!?」

突然司令塔の近くで爆発が起こる。
例のスパイの破壊活動だ。
司令塔の司令室は壁が窓張りになっており爆風で割れやすかったがその際に割れることはなかった。
しかしその爆発の光と強烈の爆音で兵士たちを驚かせた。

司令官 「あのユニットをエグザイルに渡すわけにはいかん!」
司令官 「すぐに奪回、最低でも撃破しろ!」

兵士達 「はっ! 了解であります!」

兵士たちはその命令に全員一応に敬礼をしてすぐ外へと出て行った。
既に爆発音はしない。
さっきの爆発でもう既にスパイはこの基地を逃げたのだ。

司令官 「アレはエグザイルおろか…ほかの国々にも見せられぬ切り札というのに…!」





……………………





スパイ 「ち…やはり追手が来たか…」

俺は基地をあらかた破壊できるだけ破壊した後、基地を抜け出した。
そして、近くの高原地帯にある山に隠れていた。
しかし、こちらの逃げた道などさすがに相手も分かっているらしく、随分大勢で来たようだった。

スパイ 「人型が10機、戦闘車両重戦が14機、戦闘機が18機か」

かなり破壊もしたしすぐに出られるものも少ないはずだがかなりの数だ。
恐らく出られるだけありったけの量をこちらに向かわせたのだろう。

スパイ 「周りは山々…隠れる場所はいくらでもあるがな…」

いま自分の居る位置は山道で、そこから隠れる場所はいくらでもある。
しかし、一応こちらにも迎えがある。
すぐ上に頂上の高原地帯がある。
そこで応戦して全滅させるのが得策か。
下は谷間になっており大変深い…もし誤って踏み外したら大変だな…。

スパイ 「このナイトメアの性能なら造作もない…」
スパイ 「撃破する!」

これはいわゆる実戦テストだな…。
俺はこのユニットの開発に携わっていた人間だ。
このユニットの性能はよくわかっている。
後はテストを残すのみだった。
ある意味ちょうどいい…。

俺はまず高原の方に上がってやや上から一番正面にいる人型に俺のユニットの右腕に持たれている専用ライフルで撃つ。
敵の人型は一般的な量産タイプ。
特機であるこのユニットとではFCS(fire control systemの略)の性能も違う。
俺は相手のレンジ外から撃つのだった。

ちなみにFCSと火器管制機器のことで機体のオートロックやレンジに関する物で、これが高性能なほどより精密な射撃や遠くの敵を攻撃できる。
中にはこれに頼らず勘と経験により当てる者もいるが普通はこのFCSを利用して射撃行動は行う。

俺のライフルは実弾で一般的な人型用ライフルの玉より少し大きく威力が高い。
そして残弾は200発。
少々大型なライフルなのだが射程、攻撃力、命中率と総じて高性能な兵器だ。

しかし、さすがにレンジギリギリからの攻撃だけに相手にかわされてしまう。
いくら射程があるとはいえ離れれば当たりにくいのは道理か。

スパイ 「だが!」

俺はある一定の距離から角度を変えて攻撃すると相手は一撃でジェネレーターを貫かれて爆発する。
たとえ離れていても回避する方に玉が飛んでいれば被弾するもの…こんなものだ。

しかし、その当たった距離はすぐに相手の射程内に入る距離のためすぐに敵の大量の砲弾がこちらに向かう。

スパイ 「ふ…」

俺は細かな動きでそれらをかわし、逆にこちらから確実な一撃で敵を撃破する。

バァン!

スパイ 「!?当たったか!?」

突然機体が揺れる。
どうやら左肩に敵の弾が被弾したようだ。
損傷は軽微だがいかんせん敵の数が多い。
捌ききれないというのが現状だった。

スパイ 「仕方ない…!」

残り敵機数は人型が4、戦車が12、戦闘機が10。
俺は回避行動の取れない戦車の破壊に重点をおく。
敵の攻撃を回避しながら極力遠い位置を維持し的確に射抜く。
これを淡々と繰り返し俺はすぐに戦車隊を全滅させる。

スパイ 「これで後14機!」

俺は手際良く戦車隊を全滅させると両肩に付いてある多弾頭ミサイルポッドから敵戦闘機群をロックして一気に放つ。

ドドドドド! ドカン! ドカァン!

多弾頭ミサイルはコンテナから巨大なミサイルが出てそれが小型の12個のミサイルに分離する。
これが片肩に2つ内蔵されており計4発放てる。

そして、そのミサイルは密集している戦闘機群に飛んでいき、編隊を崩しながら避ける戦闘機を何機か撃破する。
そのうち避けた奴はミサイルに気を取られているうちに俺がライフルで打ち落としていた。

スパイ 「あと4機!」

俺は既にかなりの距離まで近づいている人型をロックする。
既に白兵戦の距離、俺は左手のブレードを構えて相手の接近を待つ。
やがて相手はこちらに接近し上段から一刀両断するように斬撃を放つ。
しかし俺はその大振りを見逃さない。
俺は小振りに横へコクピット薙ぎ一機撃破する。

スパイ 「あと三機!」

俺は人型の爆発を抜けて今度は両左右から俺を狙う敵に照準を合わせる。

ダァンダァン!!

敵は両左右から俺にライフル弾を放ってくるが俺は当たらない。
俺は左の敵機に近づきながら右の敵機を横を向きながら撃ち抜く。
そしてそのすぐ後に左に振り向き、左の敵を正面に構え左のブレードで切り裂く。

しかしその直後切り裂いたその後ろから残り一機が突っ込んでくる。
ブレードは片刃刀、切りかえしでは切れない!

スパイ 「ちっ!」

俺は右手のライフルを捨て右手に内臓されてあるヒートダガーで相手のジェネレーターを打ち抜く。
切りかかる動作より直線で突く動作の方が速いため出遅れたが先に攻撃できた。

スパイ 「…全敵の撃破を確認…」
スパイ 「システムを戦闘モードから通常モードに移行する…」

俺は落としたライフルを拾うとシステムを通常モードに切り替えた。
これで後は迎えを待つだけだ。
しかし時間はまだある。
予定では17:00の予定だったがまだ午後の4時前だ。

スパイ 「ふぅ…」

俺はとりあえず一息つくことにした。
さすがに戦闘が終わった後は疲れる。
すぐに今の戦闘データの解析を行いたかったがとりあえず後回しにしておこう。

ピリィン!『Warning!』

スパイ 「!?」

突然モニターにそう文字が出る。
ロック反応!?
後ろか!?

スパイ 「くっ!?」

俺は咄嗟に戦闘モードに切り替え振り向く。

ドカァン!

スパイ 「うお!?」

被弾…ダメージはほとんどないが揺れた。
しかし、その時。

ガラァ…

スパイ 「しまっ!?」

被弾の衝撃で地面が崩れてしまう。 俺は咄嗟にブースターで浮上しようとするがそこに敵の攻撃がもう1発。

ドカァン!!

スパイ 「うおお!!?」

俺はそのまま底の見えぬ谷底に落下してしまう。

あれは…サナリィ…。
我々エグザイルの宿敵…。

その後記憶はない…。
いや、何が起こったのかも…。
そして…。



ドカァシャン!!!!!



………………
……………
…………
………
……




ここは…どこだ?
俺は何かよくわからないが狭い所にいた。
よくわからない…?
なにか…おかしい。

スパイ 「…俺は…誰だ?」

記憶が…ない?
何か違和感がある…頭の中身がまるで虫食いパズルのように何もない…。
それよりここはどこだ?
なにやら妙に狭い。
しかも倒れているようだ。


男 「…例のユニットが落下したのはこの辺りのはずだが…?」

スパイ 「!」

外からかすかに声が聞こえた。
男の声だ。
なにかを探しているようだ。

スパイ 「誰か助けてくれ!」

俺はその狭い場所から叫んだ。
聞こえるかどうか定かじゃないが叫んだ。
少なくともここは狭苦しすぎて大変だ。
動きにくいし…。

なにやら棒やらボタンやらよくわからないものだらけだ。

青年 「あ! アレじゃないですか!?」

今度は青年と思われる声。
二人いるのか?
ただ、もしその『アレ』というのが俺だとありがたいのだが…。

男 「おお! 間違いない!」

ガシャンガシャン!

…何かが近づいてくる音。
何の音だろうか?
どんどんその音は大きくなっていた。

スパイ 「…ここから出られないのか?」

俺はここから出る方法を模索した。
ひょっとしたら自力で出られるんじゃないだろうか…?

俺はとりあえず手当たり次第の物を片っ端から触ってみた。
その内あるひとつのボタンを押した時突然前方の壁が開いて眩い光が入ってくる。
正直眩しい…だがこれでやっと外に出られる。

俺はそう思うと目を細めながら外に出た。

男 「!? 貴様! この機体のパイロットか!?」

スパイ 「…?」

俺の正面になにやら巨大な人型の何かに乗った二人がいた。
そのうちのひとり髭を生やした男がそう言う。
しかし、少し困ったことがある。
記憶が抜けているせいかどういう意味かわからない…。
パイロットとはなんだ?

スパイ 「言っている意味がわからない…」

男 「何だと!? ふざけやがって貴様がエグザイルの者ということはわかっているんだぞ!」

青年 「それじゃ聞いた意味ないですよ…」

そう言うともうひとつの同じ形をした巨人にに乗った青年がそう言った。
俺に対してではなくあの男のようだ。

男 「うるさい! 一応だ!」
男 「お前、手を上げろ!」

スパイ 「…?」

手を上げろ…?
あげてどうするんだ?

男 「手を上げんか!」

男は俺が上げないのを見るとそう怒鳴る。
いや…最初から怒鳴っているか…。

スパイ 「…こうすればいいのか?」

俺は言われた通り手を上げた。
しかしこれが何になるというんだ?

男 「片手じゃなくて両手だ!」
男 「あと、ちゃんと頭の後ろで手を組め!」

スパイ 「???」

全く意味がわからない。
何故そんなことをする必要があるんだ?

男 「早くせんか!」

スパイ 「…わかった」

俺は仕方ないので言われたとおりにした。
やっぱり意味がわからない…。

男 「後ろっつったろうが!!」

なおも怒鳴る…。
一体何を怒っているんだ?

男 「てめぇ! おちょくってんのか!?」

スパイ 「?????」

いきなり意味不明の言葉が出た…。
正直わからん…。

スパイ 「…言ってる意味がわからない…」

男 「ああもう! こーするんだよ!」

男は顔を真っ赤にしながら見本を見せてくれる。
成る程…そうすればいいのか。
俺はその見本の通りにする。
しかし、動きにくい…。

青年 「この人…もしかして記憶喪失じゃ?」

男 「ぬ? まぁいい…連行するぞ…」

青年 「了解」

男たちはなにやら話し合った後巨人を操って俺の立っている赤い巨人を運んだ。
ちょっと揺れたが俺はそのまま狭い道を運ばれながらやがて大きな輸送船に乗せられた。
そしてそのまま俺はどことも知れぬ場所に運ばれてしまうのだった…。


…NEXT OPERATION A GO




Strategy of the following!

記憶を失ってしまった彼…。
彼が送られた先はサナリィの基地だった。
記憶を失った彼…しかし時代は彼を戦場に導く。
そして新たなる名と戦場が彼を待つ。

次回 UNIT

OPERATION Second 「記憶喪失」


クレス 「…応戦する!」




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