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OPERATION 20 『観光』



『極東:日本 太平洋側近海 フリーダム艦内』


グレッグ 「賞与授与、マリア・レウス中尉及びクレス、デルタ・メラス、マリーナ・ヴェーヌ・トリフ」
グレッグ 「マリア・レウス、貴殿の活躍を見込み、大尉の階級を授与する」

マリア 「ありがとうございます」

グレッグ 「そして、エグザイルより協力を得る、3人、クレスにはこれからも第2部隊の隊長として活躍してもらうため、中尉を授与する」
グレッグ 「そして、デルタ・メラス及びマリーナ・ヴェーヌ・トリフは少尉を授与」

クレス 「ありがとうございます」

俺たちは、艦内で賞与を受けていた。
マリアはこれまでの活躍もあり、一階級昇進。
俺たちはサナリィとして働くため、新たな階級を授与された。

グレッグ 「なお、ここにはいないがシュウイチ・ミクラ曹長も少尉を授与する」

マリア 「さ〜て、じゃあ堅い話はここまでよ!」

グレッグ 「と、おいマリア…」

マリア 「これからお偉いさんは日本政府の高官たちと対談があるわね、それまで時間が取れた皆は東京観光でもしといて!」

グレッグ 「はぁ…、まぁ聞いての通りだ」
グレッグ 「我々はこれからこの東アジア地区の統治者攻略のため、日本からの協力を要請に行く」

これからの俺たちの方針、それは東アジア地区統治者『楊・仔静』の撃破だ。
やつがいるのは中国、しかし中国は広い。
加えてその前には朝鮮半島がこちらの出鼻をくじいてくる。
どうせ、たいした援助は受けられないだろうが、ここで話を有利に進めておかなければ東アジア攻略はままならない。

マリア 「じゃ、今回は話したとおりお願いね? クレス」

クレス 「わかっている…どうせ、観光など興味も無いしな」

マリア 「堅いわねぇ〜、まぁ、交渉の方はお願いね?」

とりあえず、対談に向かうのは俺とグレッグ、ガルムさん。
あとはサナリィの役員数名となる。
残りは艦に居残りか、観光に出かけるかのどちらかだ。



…………。



マリア 「さ〜って、今日一日はフリーなわけだけど…」

デルタ 「……」

アル 「日本は初めてです」

私はとりあえず東京の市街地にきてみたわけだけど、どうにも付き添っている人物たちが問題ありな気がする。
アルはともかくデルタは普段寡黙だからねぇ…観光なのにつまらないわねぇ…。

マリア 「二人とも、離れないでよ? 日本語わからないでしょ?」

デルタ 「…わかりません」

アル 「マリアさんはわかるんですか?」

マリア 「あったりまえでしょ! じゃなきゃいかにも喋れないって感じのあなたたち連れて行かないわよ」

まぁ、シュウイチがいたら本当は全部任せるつもりだったんだけどね…。
今年からはナルミもいるし日本観光はよりやりやすくなるはずなんだけど…いないと意味ないのよねぇ…。

マリア 「あ、考えてみればレオナいるじゃん! あの子日系でしょ!? 喋れるんじゃ!?」

デルタ 「カジマ氏は朝一番に出かけました」

マリア 「なんじゃそらー!? て、仕方ないか…彼女はサナリィが身元を引き取っているだけでサナリィの所属じゃないしねぇ」

アル 「ところで、マリアさん、これからどこへ行くんですか?」

マリア 「予定は特に無いけど、まぁ適当にぶらつくのが一番じゃない?」
マリア 「あなたたち未成年だし、まぁ私は保護者とでも思えばいいわ、アブナイ所以外は目は瞑るわよ?」

アル 「はぁ…」
デルタ 「……」



…………。



『同日 同時刻 戦艦フリーダム:ハッチ周辺』


マリーナ 「…ふぅ、次は楊ですか」

私は艦内ではなく外に出て日陰でこれからのことを考えました。
あと6人ですか…早くも半分を過ぎようとしているのですね。
ですが、この戦いはこれからが激戦へと続くのでしょうか…。

マリーナ 「戦うしかないのでしょうね、それが運命ならば」

? 「そう、戦うしかない」

マリーナ 「! ザイドさん」

突然、フリーダムの側で立っている私の前にひとりの男性が現れる。
ザイド・アッシュさん。
今は私服のようですがエグザイルの将校、アフリカ方面の統治者…。
そう、この方は私やクレスさんと同じエグザイルに10人いる統治者のひとり。
なぜ、この極東方面に…。

マリーナ (いえ、ザイドさんならどこに現れても不思議ではない…)

ザイドさんはエグザイル内でも特別不思議な人。
本人は軍の指揮も苦手だったら、ユニットの操縦もだめ。
ただ…彼は世界一の格闘家。
その格闘家としてのポテンシャルをダイレクトにユニットに移した物が彼の愛機だと聞く。

ザイド 「久しぶりだな、マリーナ」

マリーナ 「そうですね、普段我々統治者が顔を合わす機会は集会の時位ですからね、1年ぶりでしょうか…?」
マリーナ 「ですが、一体何用でここへ?」

ザイド 「その艦をぶっつぶしに」

マリーナ 「!」

ザイド 「…というのは、冗談だ」
ザイド 「いくら俺でも銃を突きつけられて何十人も相手をするのは無理だ」

マリーナ (…どうやら、ここを襲う気がないのは本当のようですね)

ですが、ここを攻め落とすのが無理というのは嘘ですね。
この人はそれほど白兵戦を得意としている。
艦一隻、占拠することくらい造作も無い。
たとえ、銃を使うからといってそれが有利になるとは限らない。
ましてや艦の中の様に狭い通路が連なる場所ならなおさら。

ザイド 「アルベルトは元気か?」

マリーナ 「アルベルトさんですか? ええ、元気ですよ」
マリーナ 「ですが、今はクレスさんですね」

ザイド 「そうか…元気か」

マリーナ 「現在は国会議事堂にいますよ、行けば会えるかも知れませんよ?」

ザイド 「馬鹿言え、その前にガードマンに捕まるのがオチだ、俺は部外者だぞ?」

マリーナ 「あなたの実力なら…可能では?」

この方は常識の枠で捕らえてはいけない人だ。
エグザイル内でもこの人に白兵戦で勝てる者はいない。
白兵戦にさえ持ち込めれば、一個師団壊滅させることさえ容易だろう。

ザイド 「あんまり冗談言うもんじゃないぜ…あんた性格変わったんじゃないか?」

マリーナ 「かもしれませんわ」

ザイド 「…やれやれ、本当はアルベルトに会いに来たんだが…まぁ、しかたがない」
ザイド 「マリーナ…こいつをくれてやる」

マリーナ 「! これは…!」

ザイドさんはそう言って首にかけていたネックレスを外して私に投げつけてきた。
私はそれを受け取って驚く。
なぜならそれは…。

ザイド 「俺のメンバーキーだ、今更俺が持っていても意味がない」

マリーナ 「どうして、こんな大切な物を?」

メンバーキーは我らが主神を導く道具。
10個全て揃わなければ意味はないが、我ら統治者にとっては命をかけて死守しなければならないものなのに。

ザイド 「勘違いするなよ…俺は戦いを放棄したわけじゃない…」

マリーナ 「では…?」

ザイド 「もし…これから先勝ち続けられるのなら…最後の戦いの舞台で俺は待っている…アルベルトにもそう伝えといてくれ」

マリーナ 「…あくまで戦うのですか?」

ザイド 「俺は戦いから逃れられんのさ、じゃあな…いつまでもエグザイルの将校がサナリィの軍艦の近くにいるのはバツが悪い」

ザイドさんはそう言うと私に背を向け、歩き出した。
言葉とは裏腹にザイドさんの背中越しからは素人の私でもわかるような強力な覇気が感じられた。
戦えるのなら…今すぐ戦いたいといった感じだ。

マリーナ (戦いの舞台を主神のお膝元に移すというのですか…)

しかし、わざわざ宣戦布告していくとはある意味律儀な方ですね。
果たして今年のうちにそこまで到達できるかははなはだ疑問ですが…。



…………。



『同日 時刻同時刻 華島研究所跡地』


レオナ 「…なにもない、か」

私は日本に着き、上陸許可が出るとかつて私が創られた華島研究所へとやってきた。
しかし、悲しくは2年という歳月、研究所は跡形もなく、綺麗な新地となっていた。
私という存在も2年という歳月は全て過去へと押し流したけど、私の産みの親、華島博士はいない。
恐らく生きていないだろう。
アンドロイドの開発は重罪だ、極刑もありえる。
生きていたとしても…二度と日の光を浴びることはできないだろう。

レオナ 「…わかっていたはずなのに…」

博士は私を限りなく人間に近く創った。
そのおかげで今ではこの日本を歩いていても怪しまれることも全くない。
だけど…心が創られたせいで…今、悲しくてしかたがない。
所詮は推論型学習式AIによって生み出されるデータに過ぎない…。

レオナ (だけど博士は言っていたっけ…ロボットにはロボットの心…機心が存在すると…)

私には所詮0と1によるデータに過ぎないと思う。
人間の心という曖昧なものが今だ解明されないのに機械の心など解明できるはずがない。
そんなもの存在しないと思うほうが普通だ。

レオナ 「もう行こう…」

私はすぐにその場を去ることにした。
すでに研究所もないのにいつまでもいても意味がない。
なるべく艦からは離れない方がいいだろう。
さすがに私も戦闘になるとは思わないが…。



…………。



ワイワイガヤガヤ!

デルタ 「……」

マリア 「いわゆるショッピングモールってところかしらね」

私はデルタとアルの監視係という名目上二人に付いて行くとなんの因果か人だかりの集まるエリアへとやってきてしまった。
二人とも人と関わるの苦手の癖にどうしてこんな人の集まるところに来るのかしらねぇ〜?

マリア 「若人よ、限りある時間、存分に楽しみなさい!」

私はそう言って二人の背中を叩いた。
しかし、デルタは相変わらず無表情だし、アルは苦笑いするだけ。
もぅ、二人とも若いのにノリが悪いわねぇ。

マリア 「ん〜と、しょうがない…まずはそこで軽く食事でも取ろうか?」

私は仕方ないので奥手の二人を引き連れて、近くにあった2階建てのファーストフード店に入った。

マリア (ちょ〜っち、暇よねぇ〜、クレスはどうしているのかしら〜…?)

私は今、国会議事堂の方にいるはずのクレスのことを思い浮かべる。
多分、まじめなクレスのことだから、本当に堅苦しくしているんでしょうねぇ〜…。

トゥルルルル! トゥルルルル!

マリア 「と、あ〜はいはい? マリアですが?」

と、一見日本語で言っているように思えるだろうが、実際は英語なんであしからず。
あ〜、この国にいる間だけは妙にそこら辺気にしないといけないのが苦労するわよね…。

て、今電話中だって!
で、誰なのかしら?
少なくとも私の携帯は非通知設定よ?

クレス 『マリアか? クレスだ』

マリア 「あら、クレス? あなた今どこにいるの?」

クレス 『議事堂内だ、公衆電話があったのでそちらの様子を伺うためかけた』

マリア 「番号、よく知っていたわね」

クレス 『グレッグに聞いた…携帯電話は俺は使わんからな…こういう時は苦労するものだ』

マリア 「あはは♪ 普段から無線機持ってくわけじゃないからねぇ〜、特に今は休暇だし」

なんと、電話の主はクレスだった。
でも、なんでクレスが電話をかけてきたの?

マリア 「で、何のようなの? まさか私の声が聞きたくなった?」

クレス 『…まさか、マリアの声は普段から聞きなれている』
クレス 『単なる様子の確認だ、アルとデルタがいるから大丈夫と思うがあまり羽目を外しすぎるなよ?』

マリア 「だ、だいじょ〜ぶよ、大丈夫!」

まさか、そうくるとは…。
アルやデルタは安心で、私は心配なわけか…。
常識は踏まえているつもりだけど、もうちょっとおとしやかな方が良いのかなぁ?

マリア 「…ところで、そっちはまさかもう終わったわけ?」

クレス 『まさか、小休止だ、すぐに再開される…単なる調印式というわけではないからな…』

マリア 「ま、頑張りなよ? 大丈夫と思うけどさ」

クレス 『簡単な仕事だ、ただ、今日はフリーダムに戻れんかもしれん』

マリア 「はは、じゃ、切るよ?」

クレス 『うむ、手間を取った』

私はそう言って通話を切る。
そして、とりあえずファーストフード店にいるわけなんだから…。

マリア 「ハンバーガーのセット3つ、お願いねー!?」

私は、適当にハンバーガーとポテトとドリンクのつくセットを3つ頼む。
ちなみにさっきの部分は日本語だ。
ややこしくてごめんなさい…。



…………。



ガチャン!

クレス 「…ふぅ、大丈夫そうだな」

俺は公衆電話でマリアに電話をかけていた。
受話器を戻し、時間を確認するとあと10分で休憩時間が終わりだった。

グレッグ 「おおい、クレス、そろそろ休憩時間が終わるぞー!?」

クレス 「…わかっている」

俺はグレッグが呼んでいるのに気づき、会議の行われる一室へと向かう。

グレッグ 「マリアに電話をかけていたんだろ? 一体何を話したんだ?」

クレス 「釘を刺しただけさ…羽目をはずすなよって…」

俺は実に、シンプルに本当のことを隣を同じスピードで歩くグレッグに言う。
しかし、グレッグはそれを聞くと、少しいやらしい顔をして。

グレッグ 「またまたぁ〜、実はマリアと一緒じゃなくて寂しいんじゃないのかぁ〜?」

クレス 「まぁ、あいつがいない性で静かなのは確かだな…だが、ここはそうあるべきじゃないか?」

グレッグ 「ん? むぅ〜…いまいちよくわからないな」

クレス 「? 何がだ?」

グレッグ 「お前の好み」

クレス 「……」

俺はもう何も口にする気が失せた。
グレッグは何か勘違いをしていたようだな…。
そもそも、この現状において、誰かを想う気持ちはない。

クレス (想うことがあるとすれば…『アイツ』にだけだ…)

俺にとってもはやたった一人の同じ『血』を持つ者…。
俺が他者に対して好意を持つことはあっても想いを持つことはありえない…。

グレッグ 「はぁ…興ざめだが、これからが本番っ! 気合入れていくか」

クレス 「……」

俺たちは次に東アジアのエグザイル打倒に動き出す。
朝鮮半島を通って、中国へと侵入するため、日本の協力がいる。
俺たちはそのため、日本の友好的な協力が必要なのだ。



…………。



マリア 「さ〜ってっと…これからどうしますかね〜?」

ファーストフード店で軽く軽食を食べた後、私たちは再び繁華街を歩き出す。
繁華街は程よく賑わっており、活気に溢れていた。
やがてしばらく歩くと、急に街中から機械的な音が溢れてくる。

デルタ 「…?」

マリア 「…まぁ、あるものよねぇここは…あれだ、パチンコとかそっち系のエリアね」

まぁ、いわゆる未成年お断りエリアだ。
さすがにアルもデルタも未成年だし…ねぇ?

マリア 「Uターンね、引き返し…ん?」

ワァァァァッ!

私は一軒だけここらでは、種類の違う店を見つける。
店の中からは機械的な音とともに喧騒も聞こえてきた。
不思議に思い、看板を見てみるとアミューズメントセンターだとわかった。
ああ、日本風に言うとゲームセンターになるのか…。

マリア (まぁ、規模は周りのパチスロ店とそんなに変わらないし、大きい店のようね)

アル 「どうしたんですか、マリアさん?」

マリア 「おーし、じゃ、あの店行くかっ!」

私は迷わず、そのアミューズメントセンターへと向かう。
もちろん、二人も引っ張って。



マリア 「お〜、日本のアミューズメントセンターは賑やかねぇ〜!」

私たちはアミューズメントセンターに入るとかなりでかい音が鳴り響いていた。
私も十代の頃はこういったアミューズメントセンターにも着ていたものだけどやっぱり変わるわねぇ〜。

アル 「あ、あの…なんだか爆発音とかも聞こえてきますけど…?」

マリア 「ん〜? まぁ、ゲームとか置いてあるからね、そりゃそういう音も聞こえるでしょ」

特に最近は旧式の軍用シュミレーターをゲーム会社が買い取って、商品化するくらいだ。
多少、サバイバルな音がするのは当然だろう。

ワァァァァァッ!!

デルタ 「…大喝采?」

なんだか、どこからか大きな歓声が上がった。
ゲームたちが織り成すデジタルな音に負けず劣らずな肉声が響いてくるのだ。
なんだろうか…大会でもやっているのかしら?

アル 「あ…あれ!」

マリア 「お〜?」

みると、店の中央に人だかりができていた。
人だかりの中心には大きな丸いコクピットブロックみたいなのが2つ。
上には小型の液晶テレビが周囲に状況を知らせる。

マリア 「? なに、中でなんか体動かしているけど?」

球体の中は黒い半透明で、微妙に透けて中の人間の動きがわかった。
私は上に備え付けてあるテレビを見ると同じ動きをしたゲームキャラクターがいる。
なにこれ、人間の動きにゲームキャラが反応するわけ?

マリア 「どうやら、この格闘技もどきに客は熱狂しているみたいだけど…これって一体?」

? 「それは、擬似格闘シュミレーターや」

マリア 「はい?」

突然、流暢ではあるがなんだかイントネーションのおかしな日本が帰ってきた。
私は声の方を振り向くと、そこには一人の有色人種の青年がいた。

青年 「英語で言わなわからんか?」

今度は英語で喋ってくる。
だけどやはりイントネーションがおかしい…なまってる。

マリア 「失礼だけどあなたは?」

青年 「わいは松谷・良介(マツヤ・リョウスケ)、まぁ気軽にリョウってでも呼んでや」

マリア 「リョウ君ね…私はマリア・レウス」

リョウ 「あんたら、軍人さん? 多分サナリィのやろ?」

マリア 「ええ、そうよ、階級は大尉、ま、よろしくね」

リョウ 「はっはっは! ねーちゃん、軽いなー! 付き合いやすうてかなわんわ!」

リョウって青年も十分軽く、終始笑っていた。
後ろでアルとデルタが呆然としており、私は二人をリョウに紹介しようかと思ったが先に、こちらを聞いておく。

マリア 「それで、その擬似格闘シュミレーターって?」

リョウ 「あの球体の中には各種センサーがついてあんねん」
リョウ 「そいでな、人間の動きにあわせてゲームのキャラクターが動く!」
リョウ 「後は、相手のライフを削って倒したら勝ちっちゅうゲームや」
リョウ 「所詮シュミレーターやから体力使うだけで人間にダメージはあらへん、まぁ人気の高いゲームやな」

マリア 「ふ〜ん…あ、片方の球体から人が出てきたわね」

私はリョウの説明を聞きながら筐体の方に目をやると、すでに対戦が終了し、人が出てきていた。

リョウ 「あそこのメチャ強やな、もう対戦で10連勝目で、対戦相手が途切れよった」

マリア 「あら、いないんだ…だったら私が挑んでみようかしら?」

アル 「って、マリアさん、格闘技できるんですか?」

マリア 「失礼ね、私一応正規兵よ? 当然ながら白兵戦もこなせなきゃユニットには乗れないわよ」
マリア 「デルタもできるんでしょ?」

デルタ 「…スニーキングミッションのカリキュラム200はすべてクリアーしてあります、格闘術も問題はないかと」

マリア 「やるねぇ〜、さすがエグザイル、教育は徹底的ね」

アル (すごいなぁ〜…僕ユニットしか乗れない…)

リョウ 「で、挑むんはええけど、金あるんか? あれ、1クレジット、500円やで?」

マリア 「え? あ…しまった…」

私はリョウの冷静な突っ込みに固まる。
そういえば税関通ってないんだから、両替なんかしてないし…。

マリア 「ドル札ならあるんだけど〜?」

リョウ 「ワイが都合したるわ、ほれ、これでやってみぃ」

リョウはなんとポケットから財布を取り出して、500円硬貨をくれた。

マリア 「わ、あいがとー! 後でお礼するわ♪」

私はそう言ってリョウにウインクをする。

リョウ 「や…貸しただけやし、後で返してくれたらそれでえんやで?」

と、見事に普通。
むぅ…ちょっと色っぽく見せたのになぁ〜。
普通、ウインクなんかしないわよ〜?
やっぱ、好みじゃないタイプのは駄目ってことか…。
私ももう22歳だしねぇ〜ピッチピチギャルってわけじゃないけどさぁ〜…。

マリア 「ま、いいや…はーい、次私挑戦しまーす!」

どよっ!

私が名乗り上げて、壇上に上ると、場がざわめく。
いきなり色っぽい髪金ネーチャンが出てきて、一同騒然って感じね。
うんうん、これくらいの反応のほうがからかいやすくていいわ♪

マリア 「さってっと〜♪」

私は筐体の中に入ると、扉を閉めてくれという警告があったので扉を閉め、密閉状態にする。
ご丁寧にでかい文字で日本語での注意の下に英語でも書いてあった。
中ははじめは暗かったが真上のライトが点灯し、明るくなるとゲームのレクチャーが始まった。
ちなみに、please insert coinとあったのでレクチャーの間に500円硬貨を投入した。
これで1クレジット入ったわけね。

マリア 「ふむふむ、攻撃は打撃オンリー、投げ、関節には対応しませんか」

さすがにシュミレーターでは転ばしたり、間接極めたりはできないらしい。
まぁ、打撃だけでも素人さんには負けんでしょ。

ガードは手などでヒット部分に当てるとダメージを抑えるらしい。
実際にはガード越しでも強烈な一撃はもらうんだけど、所詮はシュミレーターね。

マリア 「オーケーオーケー、まぁ、なんとかなるっしょ」

センサーが私を把握して、私に似たキャラクターが生成される。
目の前にはゲームキャラクターとしての相手がいるわけだ。
筐体の中はかなり広く、ハイキックとかも十分可能のようだ。
さらに下がれば相手との距離も離れ、前に行けば距離も詰められる。
横に行けば、相手を点に円に回るようだ。
これだけわかればだいじょーぶ!

『Round 1』と出ると、ゲームが始まる。
私はとりあえず棒立ちの姿勢だが、相手はボクサーのように構え、ステップととる。
もしかしてボクシング経験者?
プロボクサーとかだったら、さすがに勝てないかも…。

マリア (実際の格闘と違って、殺気が伝わらないからいつくるのかわからないわね…とすると動体反射のみで勝負か)

私は相手の一挙一動を見逃さない。
相手は…動いた!
いきなり右ストレートを放ってくる。
だが、私は一瞬反応早くしゃがんで、水平蹴りを放つ。
まずは転ばして…。

マリア (て…転ぶわけないって!)

私は、体が癖で反応してしまい、水平蹴りを放ってしまったがシュミレーターなので転ばないことを忘れていた。
所詮はゲームだからねぇ…と!

相手はライフを少し減らして、そのまましゃがんでいる私に振り下ろしの右を構えてくる。
しゃーない、天井にぶつかるかも知れないけど…。

マリア 「てーやぁ!」

私は手のバネで逆立ち状態になり、相手の顔面付近で曲げてあった足をまっすぐ伸ばす。
私の蹴りは相手の顔面に捕らえ、そのまま足をもう一段階伸ばして衝撃を伝える。
さすがに強烈なカウンターにゲームキャラクターは倒れて、K.Oとでる。
1ラウンドはとったわけね。

私はチラっと半透明の外を見ると、皆静まり返っていた。
髪金ネーチャンが珍妙な格闘をしているから、唖然ってか?
愉快愉快♪ かっかっか♪



リョウ 「ほ〜、あのねーちゃんすごいなぁ〜、あんな動きようできるわ」

ワイは筐体の外からテレビを見ながら、唖然。
相手はプロのボクサーで、今10回戦の日本ライト級チャンピオンやで?
よもや、プロボクサー相手にノーダメージで勝利って…相手さんも油断しとったんもあるやろうけどあれはなぁ〜。
とはいえ、これで相手さんも本気出すやろうな…いかに軍人さんかて、殴り合いを本職にしとるやつには勝てンやろ…。

やがて、『Round 2』とでて2回戦が始まる。
どこまでやれるんか、楽しみやな。

ドカ! バキィ! ドッコォォ! ズッシャァァァッ!!

実際には叩いていないのだが、まるであたかも本当に殴り合いをしているかのような音が鳴り響く。
たった3撃で勝負は決まった…。
勝ったんわ…。

マリア 「イェ〜イ☆ victory!」

ニコヤカな顔で、ねーちゃんが筐体から顔を出す。
そう、またもやノーダメージでマリアのねーちゃんは相手を完膚なきまでに叩きのめしたのだ。

ワァァァァァァァァァァァッ!!

今までで最高の大喝采。
よもや、プロボクサーが正体不明の色白美人に完膚なきまでに叩きのめされたのだ。
肉体の優劣のいらんゲームやからとはいえ、これほどの強さはそうないからな。
そして、何より美しい!
そりゃ、人気出るわ。

その後、続々とマリアのねーちゃんへの挑戦者は後を絶たなかった。
そのほとんどは男やったが、中にはどう見ても女子高生くらいの女の子も挑戦しておった。
そして、言うまでも無く全勝や…。



…………。
………。
……。



マリア 「ふぅ…さすがに疲れるわね…」

500円投入しただけで、挑戦に挑戦が相次ぎ、すでに20連勝。
準備時間に1試合終わるたびに5分ほど休憩があるけど、さすがに疲れるわ。
どうしよう、そろそろわざと負けようかな?
さすがに、もう1時間以上遊んでるし、これ以上アルとデルタを待たせるのも悪いしねぇ…。

マリア (と、また挑戦者か…ん?)

次に入ってきた挑戦者は、190センチくらいの恵まれた体格で、徹底的に鍛え上げられた肉体を持つ男だった。
日本人じゃない…肌は小麦色で、白髪、目が青い…白人…だけどあの日焼けかたって…。
まるでアフリカに長期に渡って滞在していたかのような…。

マリア (私と同じ匂いがした…スポーツマンでもなく、格闘家でもなく、軍人特有の血の匂いがした…同じ人種!?)

私の頭に次の挑戦者に警戒のサイレンがめいいっぱい鳴り響く。
アイツは危険だ、アイツはやばい…と。

やがて、再び対戦が始まる時には、わざと負けようと思っていた私の頭は勝つための法則を見つけるためにフルに動いていた。

ビュオウッ!!

マリア 「!?」

いきなり、左ストレートが私の頬を掠めて、飛んでくる。
当たっていないのでダメージはないが、問題は私がかわしたんじゃない。
わざと外されたことだ。

マリア (まるで見えなかった…!? 今まで相手した誰よりも早い! は…反応できない!?)

私はなんとか勝利の糸口を探す。
だが、見つかるわけも無く、私たちは戦う前に勝負を決していた。



マリア (…負けた、完敗だわ…)

私は勝負にあっさり負けて筐体を出る。
あれは無理だ…何者かはわからないがとんでもない相手だった。
相手が格闘技を競技としているスポーツマンなら、私は負ける気がしない。
だけど、今回の相手は格闘家…より、むしろ軍人の匂いがした。
白兵戦のプロフェッショナルなのかもしれない。

? 「…やはり、格闘ではその程度のようだな」

マリア 「!? あなたはさっきの…!?」

私は目の前にさっきの対戦相手を迎えていた。
流暢な英語で、そして何か不思議な感覚がする。

? 「俺はザイド・アッシュ、次に会うのは戦場かな…? マリア・レウス中尉?」

マリア 「!? まさか…エグザイル!」

ザイド 「ふ、さようならだ、サナリィの英雄!」

マリア 「ま、まちなさい!」

ザイドという男は足早にというか…ものすごいスピードでその場から逃げてしまう。

マリア 「あ、リョウ! これお礼! 釣は要らないわ!」
マリア 「デルタ、アル! あの男を追うわよ!」

アル 「了解!」
デルタ 「緊急任務、了解であります!」

私は100ドル紙幣をリョウに渡して急いでザイドという男を追った。

リョウ 「ちょ…あ、おい! ワイ500円しか貸してないのに100ドル紙幣はくれすぎやっちゅーに!」

しかし、足早にザイドとかいうおっさん追いかけて、あのサナリィの軍人さんたちはこのアミューズメントセンターを出て行った。

リョウ 「ふぅ…ついに…ワイも行動起こす時か…」

ワイはひとつの野望をもっていた。
そいつを実現する上でサナリィは必要不可欠やった。
そして、今この国に世界中を渡る戦艦フリーダムがおる。

リョウ (絶好のチャーンス)


…NEXT OPERATION A GO




Strategy of the following!


無事、日本の協力を得て、東アジア攻略戦に望む俺たちサナリィ。
シュウイチとサクラも合流し、いよいよ朝鮮半島からユーラシア大陸へと上陸する。
しかし、そこにはエグザイルの大軍があった。
辛くも勝利する俺たちだが、そこで俺たちは予想外の敵が中国にいることを知る。
そして、新たな仲間も…。

次回 UNIT

OPERATION 21 『Fake』


クレス 「すべて無人機…まさか…?」




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