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ポケットモンスター エメラルド編


第18話 『パーティ分裂』




?「エアー!!」

ザシュウ!!

オオスバメ「ス、スバー!?!?」

ヒトシ「! オオスバメ!?」

何かを切り裂くような音がした刹那、オオスバメの悲鳴が聞こえた。
俺が振り向くと、翼から腹部にかけて切り裂かれ、あたりに血が飛び散っていた。

ヒトシ「オオスバメ!? このままでは出血多量で…」
ヒトシ「戻れ! オオスバメ!」

俺はオオスバメをモンスターボールに戻す。
モンスターボールの中では、ある程度の延命措置が行われる。
外より断然マシというわけだ。

ヒトシ「あれは…?」

ポケモン図鑑『エアームド 鎧鳥ポケモン 特性:鋭い目or頑丈』
ポケモン図鑑『高さ:1.7m 重さ:50.5kg タイプ:鋼・飛行』
ポケモン図鑑『鋼の体を持つポケモン』
ポケモン図鑑『昔の人は抜け落ちた羽根を使って刀や包丁を作っていた』


ヒトシ「エアームド…!? あれは…まさか!?!?」

俺はエアームドの嘴を見た瞬間、驚愕する。
嘴に血液らしきものが付着していたのである。
恐らく…オオスバメの…。

ヒトシ「あの野郎…行け! キルリア!」

キルリア「…」

エアームド「エアー!!」

エアームドは標的をキルリアに向け、『スピードスター』の無数の星型の物体が飛んでくる。
この技は回避が不可能だ。

キルリア「く…」

ヒトシ「よし! 『サイコキネシス』だ!」

キルリア「はぁ!」

エアームド「エアー!?!?」

鋼タイプでもエスパー技のダメージが大きい。
キルリアの特攻が強いのか、はたまたエアームドの特防が弱いのか…。

エアームド「エ、エアー!」

エアームドは『サイコキネシス』の呪縛を乗り切って『つつく』で攻撃してくる。

ヒトシ「キルリア! 『テレーポート』! そこから『かげぶんしん』だ!」

キルリア「…!」

シュシュシュシュ!!

キルリアは命令通りに『かげぶんしん』をする。
『テレポート』からの切替も早くなっている。

エアームド「エ、エア!?」

ヒトシ「迷った時点で負けだ! 『サイコキネシス』!!」

キルリア「終わりです!」

エアームド「エア…」

ヒトシ「エアームド戦闘不能! 先を急ぐ!!」

俺はすぐに『ダード自転車』をとばす。
そのときの俺はもう火山灰なんて気にしてられなかった。

…………。

『10月20日 午後1時30分 ハジツケタウン』

ハジツケタウンに到着した。
町の7割くらいは畑であり、ホウエン…いや、日本でも数ある農業町として有名だ。
ここから見る限り、ニンジン、ピーマン、きゅうり…。

ヒトシ「…って、解説してる場合か!!!」

俺は町に入ってから、約10分でポケモンセンターに着く。

ヒトシ「〜〜〜〜!!!」

ジョーイ「お、落ち着いて!! どうしたの!?」

ヒトシ「お、俺の…オオ…スバメ…」

俺は半分放心状態になりながらオオスバメのモンスターボールを見せる。
すぐにコンピューターにセットし、中のデータを見ている。

ジョーイ「こ、このオオスバメ…どうしたの!?」

ヒトシ「さっき…エアームドに…」

俺はエアームドにやられた事をジョーイさんに話す。

ジョーイ「エアームド…あの子かしら?」

ヒトシ「!? 知っているんですか?」

ジョーイ「ええ、2年前にテッカニンを連れて来た子がいたの」
ジョーイ「そのテッカニンは羽をエアームドに食いちぎられた…多分同じエアームドね…」
ジョーイ「ちなみにその子はあなたと同じ、白髪だった」

ヒトシ「!?」

俺はテッカニンで前例があったことより、そのトレーナーに唖然とする。
多分…いや、絶対に…ユウキ…。

ジョーイ「…とりあえずオオスバメは連れて行くわね?」

ヒトシ「! はい…お願いします…」
ヒトシ「それと、部屋を貸してください」

ジョーイ「はい、そこにあるから、適当に取って」

俺は言われたとおりに、112号室の部屋の鍵を取る。

…………。

ガチャ。

俺は鍵を開けると、部屋に入る。

ヒトシ「…くそ!!」

バン!!

俺は背負っていたリュックを床に思いっきり投げつけた。
そして、すぐにベッドに転がり込んだ。

ヒトシ「俺は…トレーナー失格だ…」

キルリア「そんなことはないです」

ヒトシ「!? キルリア?」

恐らくさっきの衝撃で出てきたのだろう。

キルリア「マスターはトレーナー失格じゃない…」
キルリア「さっきだって、オオスバメを守ろうとして、モンスターボールに入れたじゃないですか」

キルリアはさっきの出来事を言う。
おそらく俺の心の中を読んだ…。

ヒトシ「でも、それは当然…」

キルリア「それでいいんです」
キルリア「マスターはポケモン思いだから…オオスバメを思って、つい戻したんでしょう」

ヒトシ「……」

確かに俺は無意識にオオスバメを戻していた。
しかし、それはトレーナーの本能として戻したのではないだろうか…。

キルリア「確かに本能ってこともあるかもしれない…」
キルリア「ですが、圧倒的にオオスバメを思う気持ちが上だった事を感じたんです」
キルリア「マスターはそのままでいい…僕たちはそんなマスターが大好きなんです」

ヒトシ「キルリア…」

ポロ…。

ヒトシ「…!」

涙が出た…1ヶ月に2回涙が出たことがあっただろうか…。

キルリア「その悔しさは、その涙が物語っています」
キルリア「それでは、僕は戻ります」

シュボン!

キルリアは自分のモンスターボールのスイッチを押して戻る。
俺の目の前にあったのはキルリアのモンスターボールと、俺のリュックだけだった。

ヒトシ「うっ…」

床には俺の涙が数滴。
しばらく俺は部屋から動こうとしなかった。

…………。

ジョーイ「あ! 出てきたわね…」

ヒトシ「…」

ジョーイ「…オオスバメの状態を教えるわ…着いてきて」

ヒトシ「…」

俺はジョーイさんの後に着いていく。
すると、そこは診察室に辿り着いた。

ジョーイ「入って」

ヒトシ「失礼します…」

そこには、レントゲン…恐らくオオスバメのだろう。
ジョーイさんに丸イスに座るように言われる。

ジョーイ「じゃあ、始めるわね?」
ジョーイ「あなたのオオスバメは、人間で言うと包丁で刺されて、抜かれたのと同じ状態」
ジョーイ「包丁で刺されたあとに抜くと血が大量に出るよね?」
ジョーイ「それと同じ…今は輸血を急いでいるけど、助かるかどうかは分からない」
ジョーイ「今は強制的にオオスバメを預かります、いいわね?」

ヒトシ「…はい」

ジョーイ「うん、じゃあ話は終わり! 顔洗ったら? 涙の跡が丸わかりよ」

ヒトシ「! すみません」

…………。

顔を洗って出てきたときには、もう5時を過ぎていた。
今は、この時間を利用して薬などの買出しに出ている。
いいきずぐすりを10個、モンスターボールも5個購入。
8000円の出費だ。
残りの所持金は3000円程。

ゴン!

ヒトシ「あ、すみま…!?」

エアームド「…エア…」

そこに立っていたのは、エアームドだった。
怒りが込み上げてきたが、何故か怒れなかった。
そこに立っていたのは確かにエアームド。
違う個体かとも思ったが、確かに嘴に血が付着している。
違う個体なはずがない。
しかし、そこに立っているエアームドは昼とは様子が違う。

ヒトシ「お前、謝っているのか?」

エアームド「エア…」

ヒトシ「出ろ、キルリア」

キルリア「……」

エアームド「エア!?」

キルリアを見た途端、少し怯えた感じもした。
自分を倒した相手だからだろう。

ヒトシ「確信した…お前、やっぱりあのエアームドか…」

エアームド「エア…」

ヒトシ「キルリア」

キルリア「言われなくても! …さっきのエアームドです」
キルリア通訳「先ほどはオオスバメをあんな状態にしてしまい、申し訳ありません…」

ヒトシ「………」

キルリア通訳「言い訳になってしまいますが、僕はあるトレーナーのポケモンでした」
キルリア通訳「いつしか、僕は捨てられてしまった…」
キルリア通訳「それからは、トレーナーのポケモンを襲って、悔しさをごまかしていた…」
キルリア通訳「僕は、罪滅ぼしに、あなたのトレーナーになって…」

ヒトシ「何でも言う事を聞く…か?」

キルリア通訳「はい、あなたに尽くしたいと思います」
キルリア通訳「認めてもらえますか……?」

ヒトシ「…どうする? キルリア」

キルリア「…このエアームドは本当に反省しています」
キルリア「恐らく、トレーナーにマスターが自分に合っている…そう思ったのでしょう」

エアームド「エア…」

確かにこのエアームドは俺のポケモンに命の危機にさらした。
殺すつもりはなかった…というやつだろう。

サッ…。

キルリア「! マスター…」

俺はさっき購入したモンスターボールを買い物袋から出す。

ヒトシ「俺はまだ許したつもりはない…」
ヒトシ「本当に謝りたいのなら、これからの行動で示してもらう」
ヒトシ「わかったか??」

エアームド「!? エア!」

ヒトシ「…よし、決まりだ!」

コン、…カチ!

俺はエアームドが入ったモンスターボールを手に取る。

ヒトシ「ふっ…悪い奴じゃないんだな…」

…………。

エアームド「…あの、よろしく…お願いします…」

一同「……」

長い沈黙…それを破ったのは、ジュプトルだった。

ジュプトル「ヒトシ…正気かよ…」

キルリア「皆さん…一応仲間ですよ…? 歓迎してあげ…」

ジュプトル「ふざけんな!! オオスバメを意識不明にしたんだぞ!?」

マリルリ「そうよ! キルリアも目を覚ましなさい!」

キルリア[うっ…僕は…]

ジュプトル「ヒトシのやつ…見損なったぞ…俺たちを危険にさらそうというのか…」

キルリア「マスターはそんな人じゃありません!!!!」
キルリア「エアームドだって反省してるんです!!」

マリルリ「ふっ…どうだか…」
マリルリ「あたしはそんなの信じない!」

ジュプトル「同感だ! …行くぞ…」

キルリア「あ! ジュプトルさん!」

マリルリ「みんなも行きましょう?」

キルリア「マリルリさん! みんな!!」

エアームド「………」

キルリア「ごめん…認めさせてあげられなかった…」

エアームド「大丈夫です…こうなることは分かっていました…」

キルリア「ほんとにごめん…」

エアームド「大丈夫です…キルリアさん…ありがとうございます…」

あんなこと言っているけど、やっぱり悲しそうだ。
あれでも僕に心配かけたくないのだろう…。

キルリア(エアームド…僕が認めさせてあげる…)
キルリア(ジュプトルさんたちなら…きっとわかってくれる!)



…To be continued




 
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