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POCKET MONSTER RUBY



第2話 『敗北、そして迷わざる心』




ユウキ 「たっだいま! 今帰ったよ父さん」

オダマキ 「おお、お帰りユウキ。ハルカちゃんも一緒だね」

ハルカ 「お邪魔します」

私は一応丁寧に頭を下げてそう言う。
無論両手を前に重ね、的確な角度でお辞儀をする。
これでも礼儀作法を習ったことのある口だ。
ただの格闘技馬鹿とは思われたくないので、ちゃんと人並みに勉強だってしてるしね♪
というわけで、初対面はかなりアレだったので、さすがに注意しておくことにする…。

オダマキ 「ああ、ゆっくりしていくといい、ちょうど話もあったしね」
オダマキ 「とりあえず、ユウキと話があるから、ちょっと待っててくれ」

ハルカ 「はい」

私はそう返事し、数歩退がったところで、ふたりの会話を見届ける。
いたってどこにでもありそうな親子の姿だ。

ハルカ (にしても、博士って色々なパターンがあるのね〜)

あんまりこういう所には来た事がなかったせいか、ふとそんなことを思ってしまう。
例えば、TVでオーキド博士などを見ていると、やっぱり威厳があって立派な人だというのが見てわかる。
対して、このオダマキ博士はかなりアバウトな感じがして、オーキド博士なんかとはかけ離れた存在な気がする。
悪い意味ではなく、いい意味で、だ。
理知的で厳しそうなイメージがあるオーキド博士に対し、オダマキ博士はかなり大らかでスポーティなイメージがある。
私は、博士って皆オーキド博士みたいなのを憧れて、ああいう風になっていくんだと思っていた。
でも、このオダマキ博士を見ていると、そのイメージがあっさりと覆る。
もっとも、オーキド博士も少年時代の頃は、かなりブイブイ言わせた程のトップトレーナーだったらしいので、どうとも言えないのかもしれないけど。
それでも、オーキド博士はあるきっかけを境目に研究者としての道を歩んだ。
理由の詳細は未だに知られていない。

ハルカ (何か…辛いことでもあったのかな?)

そんなことを考えていると、話が終わったのか、オダマキ博士が私を手招きする。
その横に並んでユウキが腰に両手を当てて、私に笑いかけていた。
私はかなり丁寧な作法で歩み寄る。
多分見た目はおしとやかそうに見える、はず…。

オダマキ 「ハルカちゃん、ユウキに勝つなんて凄いじゃないか!!」

ハルカ 「…え?」

何か、予想外の発言。
はっきり言って、考えてもいなかった。
ついさっきのバトルのことを話していたのね…。

オダマキ 「ユウキは私の所でもう何年もトレーナーをやっている凄腕なのに、それに勝つとは思わなかった」
オダマキ 「正直、最初のアレを見て、これはかなり大変そうだと思っていたからね」
オダマキ 「てっきり、最初で挫折していると思っていた」

ハルカ 「…そうですか」

全く期待されていなかったらしい。
いや、そりゃそうでしょ…アレじゃね。
私は自分でも納得しながら、苦笑していた。

オダマキ 「でも、これで確信したよ。君はやっぱりお父さんの血を引いている!」
オダマキ 「これからどんなトレーナーになっていくかが楽しみだ」

ユウキ 「父さん、褒めるのはそれ位にして、早く渡してあげなよ」

ユウキがそう言うと、博士は『おお』…と何かに気付き、背後の机から何かを持ってくる。
そして、それを私に差し出した。

ハルカ 「…?」

オダマキ 「君にこれをあげよう。まだ試作型なんだが、新型のポケモン図鑑だ」

ポケモン図鑑…これがあの有名な奴。
形はジョウトでTVとかで見た奴よりもコンパクトで、何だか携帯ゲームのような感じだ。
横長でカパカパ系のデザイン、赤色で中心にワイドディスプレイを内臓だ。
左右に各種ボタンがあり、それらを押せば情報が見れるのだろう。

オダマキ 「試作型なので、全国のポケモンに対して使えるわけではないが、ホウエン地方のポケモンだったら多分ほぼ全部対応していると思う」
オダマキ 「もちろん、世界にはまだ見知らぬポケモンがいるであろうから、その中が全てじゃないけどね」

ハルカ 「でも、こんな貴重な物タダでもらえません…」

私はそう言って断る。
確かに嬉しい申し出だけど、Give and Takeを重んじる私としてはタダで貰うと言うのは気が引けた。

ユウキ 「貰っときなよ、トレーナーなら必需品だし」
ユウキ 「知識が全くなくてもそれがあれば、かなり助かるはずだぜ?」

ユウキがそう言って勧めてくる。
オダマキ博士は、微笑して。

オダマキ 「よし、じゃあこうしよう」
オダマキ 「この図鑑は君への賞品だ」

ハルカ 「はい…?」

意味がわからない、何でそうなるの?

オダマキ 「君がユウキと戦って勝ち取った物だってことさ」

私は、聞いて『ああ…』と頷く。
まぁ、それならいいかな…などと思ってしまう。
タダに違いはないのだが、自分とアチャモの力で勝ち取ったと思えば貰う理由になる気がした。

ハルカ 「…わかりました、ありがたくいただきます」

私がそう言って図鑑を受け取ると、オダマキ博士は嬉しそうに微笑み、うんうんと頷く。
私はそれを見て、少なからず感激する。

ハルカ (これで、私もポケモンともっと触れ合える)

今まで触れることさえなかったポケモン。
憧れながらも、近づくことのなかったポケモン。
ジムリーダーの娘として産まれながら、そう生きてきた。
理由は今は語らない。
これは私自身の戦いだから、まだ終わってない戦い…。
でも、これでようやく踏み出せる。
私はポケモンと生きていく、ようやく昔の自分に決別できる。

ユウキ 「それから、俺からはこれが賞品」

気が付くと、ユウキが私に5個のモンスターボールをくれる。
モンスターボールは使わない場合、ビー玉位の大きさになっている。
中心のスイッチを押すことで、プログラムが起動して、通常の大きさになり、瞬時にポケモンの解放が行われる。
使い方はユウキに教えてもらったのでようやくわかった。
ちなみに、モンスターボール内ではポケモンの生命維持も行われる。
酷く傷ついたポケモンを中に入れることで、一時的な延命措置を施すことができるのだ。
ただあくまで一時的なので、毒になっているポケモンはボールに入れていてもいつかは倒れてしまう。
更に、中に入っているポケモンは、ある粒子状態で保存させるため、大きさに関係なくボールに入ることができる。
これはかなり難しい理論で、残念ながら私ではわかりかねる。

ハルカ 「…ありがとう」

私はそれを貰うと、腰に下げているボールラックにセットする。
トレーナーが一度に持てる所持ポケモンは6匹が限界。
もちろん、持つだけならそれ以上出来なくはないが、法律に引っかかるのでポリスに捕まっても文句は言えない。
未使用の空ボールなら、いくら持っていても犯罪ではないので、好きなだけ持てばいい。

なお、ポケモンに知識はなくても、その用具などには知識を持っているのであしからず。
ただ、内部構造は知っていても使い方は知らないと言う、とんでもない女だったりするのよね私…。
誰でも知っていることを知らないのよ…何でだろ?

というわけで、図鑑の使い方も知らない…内部構造はわかるけど。
このポケモン図鑑は、今までリリースされた中でも新型で、コンパクトさと使いやすさが売り。
プリインストール時ではまだ何のデータも入っていないけど、これはどうなんだろ?
とりあえず、見つけたポケモンを自動的に登録していくシステムなので、使い方をわからない私でも多少は安心。
と言っても、参照の仕方がわからないので、操作がわからないことには…。

ハルカ (とりあえず…これがパワーボタンよね?)

私は図鑑を開き、おもむろに左手の親指で一番大きなボタンを押す。
が、押せない…。

ハルカ 「……」

おかしいわね…ロックでもかかってるの?
私がしばらく無言で唸っていると、ユウキが。

ユウキ 「それはアナログスイッチ…パワーボタンは画面左下の緑のボタンだよ。

ハルカ 「……」

なるほどね…そりゃ押しても効かないわ。
私は言われたボタンを押す。
すると、画面左上の赤いランプが点灯し、液晶ディスプレイに画面が映し出される。
まず、白い背景に『Pocket Monster』のロゴが現れ、一度ブラックアウトしてから参照画面が表示される。
私は先ほどのアナログスイッチをクリクリ動かして画面内のカーソルを動かす。
中にはすでに判明しているホウエン地方のポケモン200匹がすでに登録されていた。

ハルカ 「って、全部入ってるじゃない…」

オダマキ 「ああ、一応ね。でもまだホウエン地方にはきっと新しいポケモンがいると思うから、それが全てじゃない」
オダマキ 「だから、もし新しいポケモンを発見したら、教えてくれ」

ハルカ 「はぁ、わかりました」

私はそう言って、とりあえず図鑑をしまう。
参照の仕方はわかった。
これなら、ポケモンと出会っただけで図鑑が認証してデータを引き出してくれる。

オダマキ 「それじゃあ、ハルカちゃん」
オダマキ 「これから、ホウエン地方全部を歩き回っていくといい」
オダマキ 「トレーナーとして、頑張るつもりなら、まずはトウカシティに行ってお父さんに会うといい」
オダマキ 「きっと、お父さんも喜ぶと思うよ」

ハルカ 「…そうですね」

笑ってそう言う博士に対し、私は冷静にそう言う。
まぁ、父さんのことは置いておいて、とりあえずトウカシティに行ってみるのが先決ね。
私は最後に丁寧に礼をして研究所を後にした。



………。



ハルカ 「……」

考えていた。
母さんに言うべきかな?
それとも言わないべきかな?
旅に出ると言うことはしばらく会わないと言う事だ。
少なくとも黙っていけば確実に心配されるだろう。
と言っても、あの母から本当にそんな声が聞けるのかは正直不安だ。
というわけで、私は放っといて行くことにした。
私は研究所を出て、すぐに道路の方に向かう。
すると、あまりにも予想外な出来事に遭遇する。

母 「あら、ハルカ遅かったわね」

ハルカ 「母さん!?」

何で、道路を遮るように立っているのよ…。
って言うか、何で私がこっちに来るってわかってたのよ。

母 「…全く、いつまで経っても変わらないわね」
母 「一言言っていけばいいのに、それさえしない」
母 「あなたはいつまで経っても心配させる娘ね…」

ハルカ 「……」

何も言えなかった。
心配と言う声があっさり聞けたことには驚いた。
いつも、天然で、ぽわ〜っとしている母からは想像できない。

母 「…まぁいいわ、どうせ止めても行くでしょうから。これをあなたに渡しておきたかったの」

そう言って、母は新品のランニングシューズを私に渡す。

母 「家のことは何も心配しなくていいわ、あなたはあなたの道を歩みなさい」
母 「あなたは昔の私そっくりだから、きっとそのシューズをボロボロに踏み潰すこともわかってる」
母 「だから、思う存分暴れてきなさい! 私とお父さんの娘ならね」

そう言って、母さんは私にウインクして、右手で親指を立てる。
見た事のない母の姿だった。
って言うか、別人でしょ!?

ハルカ 「あ、あの〜…本当に母さんですか?」

恐る恐る聞いてしまう。
それほど衝撃的だった。
母さん似って…正直絶対違うと思ってたのに。

母 「…そうね、ハルカの前ではいつもおしとやかに見せようと思ってたから」

私は自分の耳を疑う。
幻聴ですか…?

母 「でも、私は元がこう言う性格だからやっぱり飾ってもダメだったのね…結局あなたはこう言う風に育っちゃったから」
母 「とりあえず、早くその靴を履き替えなさい…あなたの今の靴はもうボロボロよ」

私は言われて、はっとなる。
確かに、軽くて丈夫なスニーカーだったけど、格闘技の練習やらなんやらでもうすでにボロボロになっていた。
皮は剥がれ、紐も一部切れている。
それでも、まだ履けると思って履き続けてきた一品だ。
私は名残惜しみながらも、シューズを履き変える。
フィットは完璧、初めてなのに何だか馴染んだ感じなる。
私は前のスニーカーを両手で取り、母に預けようとすると。

ブオンッ!!

ハルカ 「!?」

私の手からスニーカーが上空に上がる。
母が蹴り上げたのだ…右後ろ回し蹴りで。
そして、空中で回転し、そのスニーカーはふたつとも母の右手に落ちる。
母は蹴りを振りぬいた体勢のままだった。
蹴りは私の眼前で止まり、風圧で私の髪がかなり浮き上がっただろう。
頭に当たってたら間違いなく吹き飛んでた…それだけの威力が予想できた。

母 「ふふ…行って来なさい!」

そう言って、体制を維持したまま、左手の親指を立てる。
私は一瞬呆然としながらも、すぐに応える。

ブオンッ!!

私は母と同じように母の眼前で右後ろ回し蹴りを寸止めする。
リーチは母と同じなので、恐らく鏡を映したようにポーズが取れたはずだ。
私も笑って。

ハルカ 「行ってきます、母さん!!」

そう言った。
そして、私は母に背を向けて走り出す。
周りの視線がかなり痛い気がしたが、気にしなかった。
母さんは私が思っているよりもずっと大きな人だった。
あれはきっと修羅の道を歩いた女の目…私よりも強いのかもしれない、いや強いのだろう。
だからこそ、母さんは娘をもっと強くするために笑って送り出した。
だから、私も笑って進むしかない。
これから何が起こるのかが本当に楽しみ!
私は期待と不安を胸に、ミシロタウンを後にした…。



母 「天空ポケモン・レックウザよ…これから修羅の道を歩むであろう、あの娘をどうか御守りください…」

私は両手を胸の前で重ね、祈るようにそう言う。
ホウエン地方に伝わる伝説のポケモン、レックウザ。
遥か広がる、この天空のどこかで、ホウエン地方を見守っていると伝えられる猛きドラゴン。
私はそのポケモンに娘を託すように、そう祈った。



………。
……。
…。



ハルカ 「アチャモ、『ひっかく』!」

アチャモ 「チャモチャモー!」

ザシュッ!

野生のアメタマ 「!?」

野生のアメタマはアチャモの『ひっかく』を受けて怯む。
相手に反撃の体力が残っていないのを私は確信する。

ハルカ 「行けぇ、モンスターボール!」

私は野性のアメタマに向かってモンスターボールを投げつける。
トレーナーでは常識のゲット作業だ。

アメタマ 「…!」

ボールはアメタマに当たると同時に開く。
そして、その瞬間ボール内から、赤い粒子変換光がアメタマを瞬時に包み、ボールの中に閉じ込める。
ボールがHITしてからここまでで、およそ1秒。
しかし、閉じ込めただけではゲットにはならない。
閉じ込めた後もポケモンはボールの中で暴れ出ようとする。
ここで出られてしまったらゲットは失敗で、ボールは使えなくなってしまう。
そう、モンスターボールは失敗した時に限って使い捨てなのだ。
一度失敗してしまったボールは二度と作動することはない。
ようするに廃棄物になるわけだが、勝手に廃棄してはいけない。
法律上、使用後のモンスターボールは各タウン所属のフレンドリィショップかポケモンセンターに渡すことになっている。
使用済みのボールは、そこでリサイクルされるのよ。
使用後で使えなくなっているとは言え、モンスターボールを悪用する人間がいるので、法律上これが定められることになった。

ゴロゴロ…ゴロゴロ…カチッ!

ボールは中の野性ポケモンが暴れることで、地面をゴロゴロと転がる。
そして、しばらくすると動きが止まり、さっきのような機械音がなる。
これでゲット成功。

ハルカ 「やったぁ!」

私はアメタマの入ったモンスターボールを手に取り、そしてガッツポーズを取る。

ハルカ 「『アメタマ』、ゲットよ!」

さて、ハルカのくせに、いきなり野生のポケモンと戦ってしかもゲットしているじゃないか!?と思いの皆さん。
一体何がどうなっているのだ?と、思うかもしれないけど、ただ単に話がすっ飛んだだけよ。
私が今どこにいるかというと102番道路という所にいる。
とりあえずは、父さんに会うため、トウカシティに向かっている。
その途中でゲット作業に勤しんでいたのだ。
ちなみにアメタマ(♂♀は図鑑の機能で判断してくれる、ちなみにこの子は♀)は4匹目。
つまり、アチャモを含めると、私のパーティは5匹となっている。

ハルカ 「ようやく5匹か…」

とりあえず、ユウキやオダマキ博士のおかげで、途中でいきなり戦いを挑まれたトレーナーとも普通にポケモンバトルが出来た。
アチャモが活躍し、ここまで来るのに3人ほどと戦い、勝利した。
ちなみに、102番道路に入る前の101番道路で、ジグザグマ(♀)とケムッソ(♂)をゲットしていたのだ。
そして、102番道路に入ってすぐタネボー(♀)をゲットすることが出来た。
よくよく考えたらケムッソが逆ハーレム状態に…。
私って♀と出会う確率高いのかなぁ? まぁ偶然だとは思うけど。

ハルカ 「よし、じゃあ皆出て来て」

ボボボボンッ!!!!

私は右手の親指以外、各指の間に4つのボールを挟み、それらを左手でスイッチを全部同時に押して全て宙に投げる。
すると、ボールは空中で開き、中から4匹のポケモンが出てくる。

ジグザグマ 「ジグジグ…」

ケムッソ 「ケム〜」

タネボー 「タネッ」

アメタマ 「タマタマ…?」

アメタマは出てきて、何が起こったかわからないといった顔をしていた。
皆結構そうみたいで、ゲットされてすぐは状況を理解できていないようだ

アチャモ 「チャモ〜、チャモチャ」

アメタマ 「タマ? タマタマ…」

アチャモが皆の輪に入り、アメタマに挨拶みたいなことをする。
アメタマは先ほどのダメージで、ちょっと辛そうだったが、アチャモの応対に対して笑って応えた。
ちなみに、ポケモンにはそれぞれ個性や性格がある。
と言っても、それらは図鑑に表されるわけではない。
要は私の判断なのだが、今はどうとも言えない。
まだ出逢って日も浅いし、性格まですぐにわかるほど私はポケモンに詳しくはないからだ。

それでも、アチャモが『おくびょう』な性格だと言うのは何となくわかった。
やる時はやってくれるのだが、どうしても踏み切れないところがある気がする。
回避は速いけど、攻撃がイマイチなのよね…やっぱり性格なんだろうなぁ。
どうもアチャモは攻撃が上手くない、むしろ下手だ。
そのせいで、これまでの戦いでも非常に辛いところがあった。
圧倒的に相手よりもLvが上のはずなのに、倒しきれないことが多い。
まぁ、こういう性格でも努力すれば、ある程度どうにかなるだろうし、今は気にしないことにした。
個性は大事だしね、アチャモはそれだけ他人想いなところがある、だから戦って傷つけてしまったアメタマを案じているのだろう。
まだ回復をしていないので、ダメージは残ったままだしね。
優しい子で、他の仲間とすぐに打ち解けていった。
それでも、最初にジグザグマをゲットした時は、結構怯えていた。
初めての仲間に驚いていたのだろう、私にすがりつくように隠れていた。
でも、今は我が身のように仲間を想っている。
やっぱり仲間は仲間を変えていくのね…このままいい傾向で進んでいけばいいけど。

今度はジグザグマを見る。
ジグザグマも野生相手に何度か戦わせているが、この子も攻撃が下手だ…。
ただ臆病と言うよりも、この子はあまりにも『ひかえめ』な感じがする。
初めてアチャモと出会い、怯えるアチャモに対してモジモジと恥ずかしがっていた。

次にタネボー…この子は全くわからない。
何と言っても、ロクに攻撃技がない…。
覚えている技は図鑑で参照できるので、間違えることはなくなったが、肝心のタネボーは『がまん』と言う技しかなかった。
だけど、この技は発動に時間がかかるため、攻撃する前にやられそうになることもしばしば…ゆえにこの子が一番手がかかりそうではある。
しかしながら、この娘は他と比べて打たれ強い。
技の性質を生かすこともあるのだろうが、恐らくタネボー種自体が打たれ強い方なのだろう。
それを踏まえても私のタネボーは固い気がした…。

ハルカ (性格…のせいだったり)

だとしたら、この娘は相当『ずぶとい』性格とでもいうのだろうか?
いまいち、自信はなかった。

ケムッソ 「……」(ジーー)

ハルカ 「……?」

考えていると、ふとケムッソと目が合う。
寂しいのかな?とも思い、私はケムッソの方に向かう。

ケムッソ 「……」(ジーー)

ハルカ 「…どうしたの?」

私は思わず聞いてしまう。
しかしケムッソは何も答えてくれず、ただ私の目を見ていた。
何て言うか…こう言う第一印象では、この子は『おっとり』な性格かもしれない。
妙にぼ〜っとして攻撃をまともに受ける節があるので、いきなりピンチになることもある。
この子はタネボーとは逆に防御が心配ね…。

ケムッソ 「……」

ハルカ 「……」

多分、この子はこれが素なのだろう…私はそう結論付けることにした。
私はとりあえず一度回復のため、目の前に見えるトウカシティに向かうことにする。
全員をボールに戻し、私はバッグを背負い直した。



………。



−ここはトウカシティ、自然と人が触れ合う街−




決して大きい街ではないが、ハルカの父センリの経営するジムもあり、活気には満ち溢れている。
この街に住む人々は、センリに憧れる者が多く、ジムトレーナーの数も比較的多い方に入る。



ハルカ 「無事に着いたわね、まずはセンターに行かないと」

私はまずセンターを探した。
理由はポケモンを回復させるためだ。
鍛錬も含めて、全員が疲れている。
かなりギリギリまで戦っていたから、さすがに限界のはずだ。

ハルカ 「あ、入ってすぐの所にあったのね」

私が街に入り、真っ直ぐ歩くと数分でポケモンセンターに到着する。
ちょうど夕方だから、人もまばらだった。
ポケモンセンターには人間用の宿泊施設もあるので、旅のトレーナーは結構いることが多い。
それでも、どの街のセンターでも十分な数の部屋が設置されているので、寝る場所には困らない。
もちろん、いい部屋だとそれ相応の金はかかるけど。
泊まるだけの部屋なら一応タダ、ただし本当にタダの部屋…って言うか見た感じ、コトキタウンのは本当に押入れみたいな感覚だった。
かろうじて灯りはあるものの、人ひとりが限界の広さ。
とりあえず、ここも泊まるだけなら、同じような物なのだろう。
私は場合によっては父さんのジムに泊めてもらおうとも考えた。

受付 「いらっしゃいませ、トウカ支店にようこそ!」

元気に受付の人が挨拶してくれる。
ポケモンセンターはどこもほぼ同じような作りで、1階は受付でここで即座にポケモンの回復を頼める。
右手側にはインターネットに接続できるPCが置いてある。
一応メールもやり取りできるので、家のPCに送ることも可能だ。

ハルカ 「回復をお願いします…」

受付 「はい、それじゃあお預かりいたします」
受付 「…5匹ですね、大体1時間弱の時間がかかりますので、それまでお待ちください」

ハルカ 「はい」

大体、回復には一匹10分の時間がかかる。
空いている時は、同時に行えるので10分で終わるが、この時間帯はかなり込んでいたようだ、なので時間がかかってしまう。
要は順番待ちね…。
私は仕方ないので、このままジムに向かうことにした。
と言っても…場所がわからない。

ハルカ 「あ、ジムってどこにあるんですか?」

受付 「ジムは、センターを出てしばらく右に向かえば、右手側にそれっぽい建物が見えると思います」
受付 「そこがトウカジムですよ、見た目が目立つからわかりやすいと思います」

ハルカ 「そうですか、ありがとうございます」

受付 「いえ、でもポケモンを持たなくてよろしいのですか?」

私が挑戦すると思っていたのだろう。
私は首を横に振って、やや小さい声で。

ハルカ 「…私の、父が働いているんです、だからちょっと会いに」

リーダーとはさすがに言わなかった。
それを聞くと、受付の人は笑顔で。

受付 「そうでしたか、それではお気をつけて…」

ハルカ 「はい、それじゃあポケモンをお願いいします」

私はそう言って、少し駆け足にセンターを出る。
まだ日は沈んでいない、それでも暗くなる前にジムにたどり着きたかった。
私は右に向かって走る。



………。



5分ほど走ると、この前テレビで見た建物と同じような建物が確かに見えた。
その場から右手側に15メートルほど、私はすぐに駆ける。

ハルカ 「……」

確かにこの建物は目立つ。
他にはこのようないかにもな建物はないし、何より看板にトウカジムって書いてあるから間違いない。
私は看板を確認する。



『トウカシティ ポケモンジム リーダー:センリ −強さを追い求める男!−』




ハルカ 「……」

滅茶苦茶共感できるフレーズよね…。
私はそのままトウカジムに入っていった。


ガララ…


ドアは引き戸になってあり、独特の音をたてながら開く。
玄関には家の中なのに地面に石が詰めてあり、靴がちらほら散らばっていた。
そして、玄関を上がって中に入るとそこは木の板が張ってある、広いフロアだった。
まさに道場のようで、一見すると修練場のように見えるが、どうも違っているようだ。
練習生やジムトレーナーの姿はひとりも見当たらないし、さらにその奥に部屋が続いているようだった。
そして、正面にはひとりの男がいた。

ハルカ 「…父さん」

センリ 「…? ハルカ? ハルカじゃないか!」

父、センリは私を見ると、驚いた顔をする。
そう、その人は私の父『センリ』だった。
二年ぶりということもあって、随分懐かしく感じるがその姿は昔と何も変わらなかった。
良くも悪くも…か。
私はそう思いながら、父さんのすぐ側まで歩いた。

センリ 「本当によくきたな…ところで母さんはどうしたんだ?」

私は事情を父さんに話すと父さんは更に驚いたような顔をする。

センリ 「そうか…ならハルカも私と同じようにトレーナーになるのか!」
センリ 「それは、楽しみだな…」

本当に楽しみしているのだろう。
父さんは腕を組んで笑っていた。
いつかは父さんと戦うことになる…それがトレーナーの通る道なら、私は避けることは出来ない。

ガララ…

私たちはそれぞれが懐かしむ思いを抱く中、突然後ろの引き戸が開く音がする。

? 「あの…」

私が後ろを向くと、そこには何やらオドオドとした美少年が立っていた。

身長は140cm位ね、目は女の子のようにクリッとしている。
顔はどこぞのアイドルみたいな一見すると女の子だ。
体は細く華奢、服装は中々控えめで地味ながらによく似合っている。
確実に私より年下のようだった。

センリ 「君は、ミツル君だったね、こんな時間にどうしたんだい?」

私は少し横にどき、父さんとミツル君の間を空けてあげる。
すると、ミツル君と呼ばれた少年は。

美少年 「…こんばんわ、センリさん」

少年はそう自己紹介をするとぺこりとお辞儀をする。
なかなか礼儀正しい少年だ。
父さんと知り合いだったのか…まさか隠し子なんてオチはないと思うけど。

ミツル 「実はお願いがあるんです。僕、明日に別の町に行かないといけないんですけど、ひとりで行くのが寂しくて…」
ミツル 「だから、ポケモンが欲しいんです、僕にポケモンの捕まえ方を教えてください」

少年はそう説明するとすぐ俯いてしまう。
自信がないのだろう、私とは逆ね。
私の場合、自信満々で失敗するから。

センリ 「成る程…わかった。君にこのポケモンを貸してあげよう」
センリ 「そのポケモンを使って、このモンスターボールでゲットするんだ」

そう言って父さんは、ミツル君の前まで行き、2つのモンスターボールを少年に渡す。
ちなみに、空と使用後ではボタンの色が違うので、見てすぐにわかる。
更に付け加えると、ボタンの色で大まかな状態異常がわかる。
紫『どく』、黄『まひ』、緑『ねむり』、赤『やけど』、青『こおり』…といった風だ。
正常だと、白で表示され、空の場合は黒になる。

ミツル 「わぁ、ポケモンだぁ…」

ミツル君はそれを受け取ると、顔をほころばせ喜ぶ。
トランペットに憧れる少年みたいね…って違うでしょ! ← ひとりノリツッコミ

センリ 「それじゃ、ハルカ。ミツル君が無事に捕まえられるように、一緒に行って見守ってあげなさい」

ハルカ 「え…?」

父さんは突然そんなことを言い出す。
まぁ、まだ時間があるから別にいいけど。

ミツル 「それじゃハルカさん、行きましょう…」

ハルカ 「そうね」

私は同意して、ミツル君と一緒に102番道路に向かった。
すでに夜は更けかけ、薄暗くなっている。
そう言えば、昼と夜では活動しているポケモンが違う。
そろそろ切り替わる時間帯だと思える。
今なら私がまだ出逢っていないポケモンも出てくるかもしれないわね…。



………。



というわけで、私たちは102番道路にでてすぐの草むらに来ていた。
ミツル君は、何だかワクワクするように草むらを散策している。

ミツル 「ポケモンって、こういう草むらに出たりするんですよね…」
ミツル 「…う、うわっ!」

ハルカ 「…!?」

突然、一匹のポケモンが草むらから飛び出してくる。
と言っても、かなりゆっくりだ。
私が見た他のポケモンに比べると、明らかに異質なポケモンだった。
私は図鑑を開いて参照する。


ポケモン図鑑 『ラルトス:きもちポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.4m 重さ:6.6Kg タイプ:エスパー』
ポケモン図鑑 『頭の角で人の気持ちを感じ取る。人前には滅多に姿を現さないが、前向きな気持ちをキャッチすると近寄る』

ポケモンがその場にいる場合、図鑑についている超高性能小型カメラを向けることによって、さっきのように登録されているポケモンを教えてくれる。
ちなみに登録されていない場合は、規格内のポケモンなら名前だけわかる。
そういう場合は、ポケモンをゲットして、モンスターボールから情報をダウンロードすることによって図鑑に登録していくのよ。
もっとも、規格外…つまり図鑑製作者の知らないポケモンだけはどうにもならないの、名前すらわからないからまさに大発見って奴ね。

ミツル 「よ、ようし…行けモンスターボール!」

ミツル君がモンスターボールを投げると中からジグザグマが現れる。
私の出遭ったジグザグマよりもさすがに鍛えられている感がある。
戦闘がどんな物かをわかっているようで、すぐに戦闘態勢を取っている。
さすが父さんのポケモンね。
そう言えば、まだ自分のポケモンの紹介データを見てなかった…今度見とこ。
折角なので、今の内にジグザグマも見ておくことにした。


ポケモン図鑑 『ジグザグマ:まめだぬきポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.4m 重さ:17.5Kg タイプ:ノーマル』
ポケモン図鑑 『いつもあっちこっちへジグザグ歩くのは、好奇心がとても強くて目に映る色んな物に興味を持つからだ』


ハルカ (その割に、私のジグザグマはかなり動かないのよね…やっぱ控えめだから?)

ジグザグマ 「ジグザグー!」

ちなみに今更だが、ジグザグマは名前の通り、狸(たぬき)のようなポケモンだ。
ただ通常の狸と違い、その茶色い毛は針のようにとがっている。
その気になれば、武器にできるかもしれないわね…。
実際には触るととても柔らかくて、抱き心地は今の所アチャモの次に気持ちいいわ!

ラルトス 「ラル〜!」

対して、ラルトス。
ラルトスは少々説明しがたいが、白い肌をして小さな子供のように見える。
頭には、まるで緑色の帽子を被っているようで、足はスカート状になっている。
ちゃんと二本の足があり、頭にはなにやら赤い突起のようなものが二本付いていた。
あれが例の角だろう。
エスパータイプと言うだけあって、どんな攻撃をするのかは興味があった。
触れることもせずに、肉が飛び、骨を挫くなどということは、どうも信じがたかった。
それでも、エスパータイプのポケモンは愛好者も多く、ジムも存在するらしいから驚きだ。
その気になれば私にもできるのかもしれない…。


ラルトス 「ラル〜!」

ラルトスは『なきごえ』をあげる。
かなり可愛く聞こえるけど、♂だけにちょっと猛々しくも聞こえる。
ジグザグマは多少ながら、動きづらそうだった。
あれも、技になるんでしょうね…格闘で言う、気合と通じる物がありそう。
何せ、私のアチャモが最初に何の技を覚えたかと言うと『きあいだめ』だった…臆病なくせにやるじゃない。

ミツル 「え、えと…ジグザグマ、『たいあたり』!!」

ジグザグマ 「ジグザグー!」

ジグザグマは高速でジグザグしながら、ラルトスに近づき『たいあたり』をする。

ドカァ!

ラルトス 「ラルッ!」

ラルトスはいともたやすく吹っ飛ぶ。
かなりのウエイト差があるから、当然よ…しかもジグザグマの『たいあたり』はやけに痛い。
スピードが乗っているので、まともに食らったら一撃でダウンも十分考えられるわ。
実際、ラルトスはすでにグロッキーだ、投げるなら今ね。

ミツル 「戻れ、ジグザグマ!」

ミツル君はジグザグマをモンスターボールに戻し、空のモンスターボールを取り出す。

ミツル 「ここでボールを投げるんですよね…やってみます!」

ヒュッ! コンッ!

ラルトス 「ラルゥ!?」

ボールは見事ラルトスに当たり、ラルトスはボールの中に閉じ込められてしまう。
ゲット開始よ、後は相手の体力次第ね。

ゴロゴロ…ゴロゴロ…カチッ!

今日5度目の機械的音が聞こえる。
それが聞こえると、さっきまで暴れていたモンスターボールもおとなしくなる。
ゲット成功ね。

ミツル 「やった…これが、僕のポケモンだ」

そう口にするとミツル君は笑みを浮かべる。
そして、ボールを回収して。

ミツル 「ありがとう、ハルカさん! それじゃあジムに戻りましょう」

ハルカ 「ええ」



………。



ミツル 「センリさん、ありがとうございます。これはお返しします」

センリ 「そうか、無事ゲットできたようだな」

ミツル君は満足そうにジグザグマのボールを父さんに返す。
父さんもミツル君の表情から、全てを悟ったようにボールを受け取る。

ミツル 「はい、それじゃあ僕はこれで」

ハルカ 「…元気でね」

ミツル 「…は、はい。ハルカさんもお元気で」

ミツル君はそう言ってジムを出て行った。
私は小さな背中を見送って、父さんと向き合う。

センリ 「…何か言いたそうだな」

父さんは、私の表情から読み取ったのか、やや苦笑してそう言う。
父さんも気付いてる…だからだろう。

ハルカ 「…病んでいるんでしょう? あの子…多分肺」

センリ 「…さてな、それはお前が考えなくてもいいことだろう?」
センリ 「シダケタウンに着けば、もう心配がなくなるだろうからな」

父さんはまるで全部わかっていると言った風にそう言う。
まぁ、父さんがそう言うならそうなのだろう。

ハルカ 「……」

センリ 「さて…ハルカ、お前にはまず言っておくことがある」
センリ 「これからトレーナーとしてポケモンリーグを目指すのなら、まず各地のジムで戦い勝つ必要がある」
センリ 「ホウエン地方にある8つのバッジを手に入れることができれば、リーグに挑戦することができる」
センリ 「だが、私とハルカが戦うのはまだ先だよ」
センリ 「まだトレーナーとして成長していないハルカに勝っても嬉しくないからな」

ハルカ 「……」

父さんは自信満々に言う、実際そうなのだろう。
今日なりたてのトレーナーに負けるほど父さんは甘くない。
人対人の肉弾戦なら勝ち目がなくもないだろうけど。

センリ 「まず、カナズミシティに行き、ツツジというジムリーダーに会うがいい」
センリ 「そして、そこから順に各地を回ってポケモンを鍛えるんだ」
センリ 「そして…そうだな、バッジを4つ集めたら、その時は父さんが相手をしよう!」

ハルカ 「…わかったわ、父さんとの戦いは楽しみに残しておくわ」

私はそう言って納得する。
それを聞いて、父さんはやや微笑して。

センリ 「ははは…そう言う所は本当に母さんそっくりだ」
センリ 「母さんも、父さんを力づくで手に入れた人だからな…お前はやっぱり母さん似だ」

ハルカ 「そ、そう…」

かなり引っかかる台詞だ。
まぁとりあえずは今後やることが決まった。
私はそのツツジと言う人間に会うためにカナズミシティに向かうことを目標とした。
でも、ジムリーダーという位だから相当強いのだろう。
今のままでは、絶対に勝てない。
私はポケモンの知識がなさ過ぎて、多分初の挫折を味わうことになるかもしれない。
何せ、未だにタイプの相性がよくわかっていないからだ。
水が火を消すとか…虫が草を食べるとか…そう言うわかりやすいのならわかるんだけど。
問題は、技自体の効果だった…図鑑に一応技も載っているが、どうも技名とタイプが一致しない。
頑張って覚えないと…。



………。
……。
…。



ハルカ 「…こんばんわ」

受付 「あら、お帰りなさいませ。あなたのポケモンはすっかり元気になってますよ!」

そう言われ、私は安心してボールを受け取る。
とりあえず、出発するにしてももう遅い。
大体、初日はじっくり鍛えながらコトキで一泊するつもりが、無理してここまで来てしまったのが原因だろう。
どれだけの距離を走ったのよ…。
実際には歩いて一日とか絶対無理な距離ね。
私の類稀なる体力と脚力があってこその結果だわ…。

ハルカ 「…あの、部屋空いてます?」

受付 「ええ、どの部屋も空いていますよ」

ハルカ 「それじゃあ、一泊お願いできます? 部屋はワンボックスで」

ちなみにワンボックスとは無料で泊まれる、例のアレだ。
本当に箱詰めだから、女の子には正直お勧めできない…監禁気分を味わえるわよ。
一応センター内に大浴場がたったの100¥で入れるので、体だけは洗おう。
貸しバスタオルと石鹸代は込みなので、とりあえず安心だ。

受付 「わかりました、それではトレーナーカードを」

ピンとこない言葉が出てくる。
トレーナーカード?

ハルカ 「え? もってないんですけど…」

受付 「あ、初めての方だったのですか…申し訳ありません、てっきりもう常連さんかと」
受付 「それでは、こちらの登録用紙にご記入お願いできますか」

ハルカ 「あ、はい」

私は提示された用紙に必要事項を記入して提出する。
すると、何やらPCにデータを入力して、1枚のカードが出てきた。
あれがトレーナーカードだろう。

受付 「それでは、お渡しします」
受付 「トレーナーカードは各地ポケモンセンターやジムで使用が可能ですので」
受付 「新規カードですので、まだカッパーカードですが、ポケモン図鑑の内容によってはランクが上がりますよ」
受付 「一応4段階まで変わりますので、頑張ってくださいね♪」
受付 「ちなみに、これが部屋の鍵ですので、チェックアウトの際にはご返却ください」

ハルカ 「へぇ…」

私は鍵を懐にしまい、カードを受け取ると、すぐに図鑑を取り出す。
だけど、どうやってカードに反映させるのよ…。

受付 「あ、図鑑と接続する場合は、右手側のPCでカードリーダーがあります。そこでどうぞ」

ハルカ 「ど、どうも…」

ダメだわ…このままじゃかなり田舎物じゃない。
まぁ仕方ないか…実際知らないんだから。
私はすぐにPCを見つけ、例のカードリーダーに新規カードを通す。
すると、ディスプレイ画面が切り替わり。
メニューが出てくる。
図鑑データ登録、バッジ登録、リボン登録。

ハルカ (へぇ…これで段階が変わるのね)

とりあえず今は図鑑しかないので、それを登録することにする。
タッチパネルで操作すると、接続案内が出る。
私はそれを見ながら、接続をする。
すると、『Now Loading』の文字と共に図鑑のデータがトレーナーカードに入力されていく。
かなりの量のためか、すぐには出てこなかった。
数分後にカードは排出される。
すると、色がブロンズに変わっていた。
なるほど、これが2段階目ね。
カードに図鑑の登録数が書き込まれていた。
図鑑登録数200。
まさに完璧…さすがオダマキ博士ね。
私は満足げにカードと図鑑を懐に直し、部屋に向かうことにする。
後は、すぐに大浴場で体を洗ってからすぐに就寝することにした。



………。
……。
…。



ハルカ 「……」

私は出発前にあらかじめポケモンセンターに貼り付けられていたタウンマップでカナズミシティの場所はチェックしてあった。
どうやら、この道路を越えて森を抜けるらしい。
ちょっと、遠いわね…まぁ3日もあれば着くでしょう。
森の中で野宿になりそうだけど、まぁそれも旅でしょう。

ハルカ 「そう言えば、この辺りはどんなポケモンがいるのかな?」

私そう考えて歩いていると海が見えてくる。
そしてポケモンの姿を見る。

キャモメ 「キャモキャモ!」

ぺリッパー 「ペリーッ!」

見たことのないポケモンだ。
早朝の静かな浜辺で、けたましく鳴いて羽を休めるポケモンたちの姿が見れた。

ポケモン図鑑 『キャモメ:うみねこポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ0,6m 重さ9,5Kg タイプ1:みず タイプ2:ひこう』
ポケモン図鑑 『餌や大事な物を嘴に挟み、色んな場所に隠す習性を持つ。風に乗って滑るように空を飛ぶ』

ポケモン図鑑 『ペリッパー:みずどりポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.2m 重さ:28.0Kg タイプ1:みず タイプ2:ひこう』
ポケモン図鑑 『小さなポケモンや卵を嘴に入れて運ぶ空の運び屋だ。海辺の険しい崖に素を作る』

私はポケモン図鑑で参照してみる。
距離はかなり離れているのに、それでもちゃんと見れる辺り、かなり射程距離があるわね。

ハルカ 「鳥ポケモンか〜…アチャモも進化したらあんな風に空を飛んだりするのかな?」
ハルカ 「そうだったら、背中に乗って飛んでもらうこともできるのかなぁ…」

何となくそんなことを思ってみる。
でもアチャモは雛だからどう考えても、成長したら鶏だろう…。
それが不安極まりなかった…このままの方が可愛いよね。
図鑑を参照すれば進化系も見れるはずだが、あえて進化を楽しみにしたいため見ることはしなかった。
正直不安の方が大きいけど…。

? 「キャモッ!」

ハルカ 「ん?」

いきなり後ろから、そんな泣き声が聞こえる。
それは紛れもなくさっきのポケモンの泣き声と同じだ。
私はゆっくりと後ろを振り向くがそこに何もなかった。

ハルカ 「あれ…? 確かに聞こえたのに」

? 「キャモ〜♪」

ハルカ 「もしかして…」

私はふと頭に両手を伸ばす。
どうやら、頭に乗っていたようだ。
それは紛れもなくさっき見たキャモメで、私が優しく抱き上げると、可愛い『なきごえ』をあげた。

ハルカ 「うわ…可愛い。でも野生の割に懐っこいなぁ」

キャモメ 「キャモ〜?」

私は残った最後のボールをキャモメに使ってみる。
少なくとも野生ならボールが働かないはず。

カチッ! シュボンッ!! コロコロ…

そんな音を上げてボールが地面に転がる。
やっぱ野生だったんだ。ならゲットしてOKよね♪

ゴロゴロ…ボンッ!

だが、そんな情けない音をたてて、ボールはいともたやすく使用不可になる。

ハルカ 「さすがに、弱らせないとダメか…」

キャモメ 「キャモ?」

何が起こったのかわかっていないような顔だった。
呑気ね…間違いなくそうだわ。

私は多少気が進まないが、バトルしてゲットすることにした。
と言っても…。

ハルカ (アチャモは強すぎて、一撃で倒してしまいかねない…)

しかも炎タイプだから水には弱いはず。
却下ね…。

ハルカ (ジグザグマもちょっと強いわね…キャモメは打たれ弱そうだからやりすぎてしまうかも)

『たいあたり』はノーマル技だから、ジグザグマの場合通常よりも威力が高い。
使っている感だが、恐らく5割増し位強い気がする。

ハルカ (ケムッソも虫タイプだから飛行にはちょっと危ないなぁ)

それ以前にケムッソはまだ幼虫なせいか、かなり戦闘がきつい。
大分強くはなってきたけど、まだ飛行相手には不安がある。
アメタマも同じね。

ハルカ (タネボー…タイプ相性はいいけど、攻撃技がないのよね〜)

でも、一番やり過ぎない気はした。
とりあえず、私はタネボーを繰り出す。

ハルカ 「任せたわよタネボー!」

タネボー 「タネッ!」

私はアンダースローでボールを投げ、中からタネボーが勢いよく飛び出す。
頼むわよ…。

ハルカ 「タネボー、『がまん』よ!!」

タネボー 「タネッ」

私がそう指示し、タネボーは『がまん』の体勢に入る。
後は、攻撃をわざと受けて反撃するだけ!
この技のポイントは、受けたダメージを倍返しする点。
我慢している間、こちらは一方的に何も出来ない。
ゆえに、相手に行動が読まれると、攻撃が出来ずに終わることもある。
そして、決定的な弱点とも言えるのが…体力の限界。
タネボーは見た目以上に打たれ強いのだが、それでも『がまん』を連発できるほどの体力はない。
我慢している間にダメージを受ければ、それだけ反撃の力もあるが、2発目はないと言っても過言ではない。
回復の度にポケモンセンターに通っていたんじゃ、時間のロスが大きいし。
全く、育てるのがかなり大変なポケモンよね…。

キャモメ 「キャモ〜!」

キャモメは、口から水の塊を吐き出す。
図鑑で参照する。

ハルカ 「あれが、『みずでっぽう』か…」

使い手にもよるのかもしれないが、キャモメのそれは塊を吐きつけるような攻撃だった。
タネボーは直撃を食らうが、まるで怯む様子はない。
ヤバッ! 私はちょっとダメージが足りなさ過ぎる気がした。
下手に中途半端なダメージを与えたら逃げられるかも…。

タネボー 「タネーッ!」

そして、あっさりとタネボーは攻撃を倍返しする。

ドカッ!

タネボーの体当たりがカウンターになる。
だが、キャモメはよくわからないと言ったような顔で首を傾げる。

キャモメ 「…キャモ?」

ハルカ 「…がくっ、ダメじゃん」

私は仕方ないので、このまま確率にでもかけてボールを投げることにする。
が…。

ハルカ 「あ、あれ?」

私はバッグを漁るが、ボールは一向に出てこない。

ハルカ 「……」

嫌な予感…ってことは。

ハルカ 「…あの時試しに使ったのが最後かぁ!?」

私は頭を抱えて、叫ぶ。
その姿をキャモメは不思議そうに見ていた。

ハルカ 「ガビ〜ン…何のためにこんなこと」

私は仕方なくタネボーを戻そうとボールのボタンを押す。

シュボン!!

ハルカ 「!?」

だが、突然ボールからポケモンが出てくる。

ジグザグマ 「ジグゥッ〜」

ジグザグマが出てきた。
ま、間違えた!

私は慌てて、タネボーのボールを捜す。
今度は間違わなかった。
ああ…情けない。
私は今度はジグザグマを戻そうとする。

ジグザグマ 「ジグジグッ」

だが、何やらジグザグマが変な物を咥えていることに気付く。
見ると、ボールのようだった。

ハルカ 「あれ? どうしたのこれ…?」

ジグザグマ 「ジグジグ…?」

どうやらどっかでいつのまにか拾っていたらしい。
だけど、そのボールは何やら普通のボールとは違って見えた。
黒が基調で、黄色いラインが入っている。
初めて見るボールだ。

ハルカ 「使えるのかなぁ…?」

落ちている物だったら、使用済みが当たり前な気がするけど…。
私はとりあえず、ボタンを押してみる。

カチッ!

ハルカ 「あ、動いた!」

どうやら使えるらしい。
私は壱か罰かやってみることにした。

ハルカ 「行け! 謎のボール!!」

キャモメ 「キャモ?」

ボンッ! コロッ、コロコロ…コロッ

私は祈るようにボールを見つめる。
やがて、それは次第に動きを止め。

ゴロゴロ…カチッ!

ハルカ 「やったーーー! キャモメゲット!!」

私はこの上なく喜んだ。
未使用品だったんだ〜…よかったぁ。
でも、落とした人がちょっと可哀想かも。
にしても、ダメージもほとんど与えてなかったのに、よく一発で行けたものね。

ハルカ 「特別なボールだったのかな?」

私はキャモメが入っているボールを見つめてながらそう思った。
とりあえず、ボールがないのは困り者なので、一度買いにトウカまで戻った。



………。



ハルカ 「これで、よしと…」

私はモンスターボールを10個補充し、再び道路を歩いた。
トウカのショップで聞いた所、あのボールはハイパーボールと言って、かなり高価なボールらしい。
キャモメのような、捕まえやすいポケモンに使うのは普通ないらしい…知らなかった。
ちなみに、ジグザグマは絶えず色々と動き回る習性のせいか、色んな物を拾ってきてくれるそうだ。
私はそう言う意味で、常にジグザグマを外に出しておくことにした。
バトルにもすぐに出れるし、問題はなさそうだ。
もっとも、私のジグザグマは控えめな感じだから、あまり動き回らない。
珍しいジグザグマかもしれないわね…。

ハルカ 「そう言えば、トウカの森はこのまま進めばいいのかな?」

? 「浜辺の小屋を通り過ぎれば、すぐに見つかる」

ハルカ 「!?」

私は咄嗟に振り返る。
気付くと、いつのまにか構えていた…。
背後に『誰か』がいて、そう教えてくれたのだ。
そう『誰か』なのだ…体全身を大きな布…と言うかローブのような物で覆い、姿系はおろか体つきもわからなかった。
どう考えてもただの親切な人には見えない。
僅かに布の隙間から見える視線からは、明確な意思は伝わってこない。
だが、確実に只者ではないとわかった。
唯一わかることは、私とほぼ同じ位の身長…布を含めてだけど。
謎が服を着て歩いている…それが一番似合う気がした。

ハルカ 「……」

私は唯一見える視線から、考えてみる。
釣り目かな…もしかして?
とりあえず、明らかに怪しい人間。
一応、私は冷静に応えることにした。

ハルカ 「とりあえず、どうも…」

? 「…そんなことはどうでもいい、それより私とポケモンバトルをしてもらいましょうか?」

ハルカ 「!?」

途端に、私は殺気に気圧されて退がる。
一瞬でこれだけの殺気を放つなんて…一体!?
だが、あいつが言ったのは『ポケモンバトル』。
何のつもりで…!?
挑まれて逃げるのはトレーナーの恥、私は現在最高のポケモンを繰り出す。

ハルカ 「『アチャモ』、頼むわ!!」

アチャモ 「チャモ〜!」

? 「行きなさい…『ヘルガー』」

ヘルガ 「ヘルーーー!!」

高き咆哮をあげ、大きな黒い犬が姿を現す。
とてつもない威圧感を感じる。
間違いなく、強い…!
まず、私は図鑑を開いて参照する。

ポケモン図鑑 『データ参照失敗…未登録のポケモンです』

ハルカ 「嘘、何で!?」

? 「よそ見をしている暇があるの?」

ハルカ 「くっ…先手必勝よ! アチャモ、『ひのこ』!!」

アチャモ 「チャモチャモ!!」

アチャモは口から細かい文字通り『ひのこ』を相手に向かって吐き出す。
いくつもの『ひのこ』がヘルガーに直撃する。

ヘルガー 「ヘルーーーー!!!」

ヘルガーは全く動じない、むしろ更に高らかに咆哮をあげる。
そんな、全く効果がないなんて!

? 「無知ね…ヘルガーに炎は通用しないわ」

ハルカ 「!?」

相手は静かな口調でそう話す。
ここまでの口調や声のトーンで気付いたことがある…。

ハルカ (こいつ…女?)

だが、今はバトルに集中することが重要だ。
しかし、意味がわからなかった。
わかったのはこれだけ。
あのポケモンは炎を吸収する…!

女(?) 「ヘルガー…『かえんほうしゃ』」

ハルカ 「!?」

ヘルガー 「ガァーーーッ!!」

ヘルガーは瞬間、口から凄まじい炎を噴出させる。

アチャモ 「チャモーーー!!」

ドオオオオンッ!!!

爆発を起こすほどの炎。
凄まじい威力だわ…アチャモがいくら炎タイプでも、あれじゃ…!
私は瞬間ぞっとする。

ハルカ 「アチャモーーーー!!」

ここら一帯の草むらが残らず燃え尽きる。
そして、その中心地にアチャモは倒れていた。
私は不安に高ぶる心臓を無理やり抑えて、アチャモの元に向かう。

女(?) 「…この程度か、期待外れね」

ハルカ 「あなた…一体何の恨みで!」

女(?)は無感情な言葉遣いでそう言う。
私は激しい怒りを込めて、女を涙目に睨みつける。
ポケモンバトルでなければ、今すぐぶっ飛ばしているところだわ!

女(?) 「…これじゃあダメね、まだまだ時間がかかるわ」
女(?) 「戻りなさい『ヘルガー』…」

女(?)は、ヘルガーをボールに戻して森の方へと足を向ける。

ハルカ 「待ちなさい、あなたは一体…!?」

私がその背中にそう言うと、ゆっくりとした動きで女(?)は振り向く。
今度は視線も見えなかった。

女(?) 「『カガミ』…とでも呼べばいいわ」

ハルカ 「…?」

意味がわからなかった。
だが、それが一応名前だろう。
かなり引っ掛かるが、重要なことだと思えた。

ハルカ 「カガミ…忘れないわよ! いつか絶対にリベンジするわ!!」

カガミ 「…覚えておくわ、それまでにせいぜい強くなりなさい」

そう言い残し、カガミは去って行く。
私はしばらくその背中を見送った。

アチャモ 「……」

ハルカ 「それどころじゃなかった。アチャモしっかりしてぇ!!」

私ははっとなって泣き叫ぶ。
だが、アチャモは力なくぐったりとしている。
まさか…死んだ!?
私は最悪のシナリオを振り払ってアチャモを抱える。
すぐにポケモンセンターに…!
でも、ここはすでに森の手前、トウカまで戻るにはかなりの時間がかかる!

ハルカ 「…それでも、戻るしかない!」

私はアチャモをボールに戻そうとする。
が、途端に私を呼ぶ声があった。

ジグザグマ 「ジグッ、ジグッ!!」

ハルカ 「ジグザグマ…? どうしたの?」

見ると、何やら妙な物を咥えていた。
見たことのない物だが、どうやら薬のようだ、手持ちの『キズぐすり』と若干デザインが似ている。
違うのは、液体でなく固体だと言うことだ。
私は、もしやと思い、本日二度目の壱か罰かでその薬をアチャモに食べさせる。

ハルカ 「お願い…食べてアチャモ!!」

私は半ば無理やり押し込むようにアチャモにそれを食べさせる。
そして、数秒。

ハルカ 「!?」

アチャモ 「チャモ…?」

何と、アチャモは息を吹き返す。
私は泣いて喜んだ。
少し強く抱きしめて、アチャモを撫でてあげた。

ハルカ 「…良かった…良かった…アチャモ〜」

アチャモ 「チャモ…」



………。



その後、私はアチャモをボールに戻してセンターにまた戻った。
今日はもう一泊することになりそうね。

受付 「相当酷い火傷をしていました…幸い、薬のおかげで大事には至っていません」

ハルカ 「そうですか…良かった」

受付 「でも、よく『げんきのかけら』なんて持っていましたね…あれはかなり高価な薬なんですよ」

ハルカ 「この子が…拾ってきてくれたんです」

ジグザグマ 「ジグジグ」

受付 「そう…ジグザグマは色んな物を拾ってきますからね」
受付 「とりあえず、ハルカさんも休んでください」
受付 「涙の跡がみっともないですよ? 顔を洗わないと…」

ハルカ 「あ…? ご、ごめんなさい…!」

私は目元を隠して、大浴場に向かう。
ジグザグマをボールに戻し忘れたけど、多分大丈夫よね。



………。
……。
…。



ハルカ 「……」

ジグザグマ 「ジグ〜」

私は、昨日の戦いで燃え尽きた草むらを見る。
カガミと名乗った女(?)、明らかに戦いなれたトレーナーだった。
いや、正確にはトレーナーだったのかどうかもわからない。
私は心の中でカガミにライバル宣言する。
憎くないと言えば嘘になるだろうが、私は憎しみでは戦わない。
格闘技をやって、精神修行もやってきた。
正々堂々ポケモンバトルでリベンジを試み、カガミの消えた森の方へと私は歩き出した。
あそこがトウカの森。
その森を抜けた先にカナズミはある。
場合によっては、カナズミシティで会えるかもしれない。

ハルカ 「問題は、今のままでは何も出来ないこと」

すでに力の差は歴然だった。
一番Lvの高いアチャモがあれでは話にならない。
炎タイプが炎で倒されたのだ…並大抵の力量差ではああはならない。
だが、私はそれなら強くなればいいだけだ…そう思ってただ歩を進めた。
迷いはない…心の迷いは道を誤ることになるからだ。



…To be continued




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