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POCKET MONSTER RUBY



第10話 『或る日』




ハギ 「次は、確かクスノキと言う男に荷物を渡すんだったな」

ハルカ 「はい、またお願いしますね!」

ハギ 「よし、それじゃあ出発じゃ!!」

ダイゴさんに手紙を渡し、そのまま私はハギさんの船に乗り込んだ。
例によって買い物をし忘れたが、もうカイナで買うことにしよう。
私は一旦船室に戻って荷物を置くことにする。



………。



ハルカ 「ふぅ」

荷物をどさりと置いて私はベッドに座り込む。
とりあえず、モンスターボールだけは『いしのどうくつ』で拾うことが出来た(って言うかクチートが拾ってきた)ので、正式にクチートをゲットした。
そして、改めて例の荷物を確認する。

ハルカ 「何かの部品…とは思うけど」

確信はない、知る必要もないとは思うけど。
私はベッドに寝転んで少し仮眠を取ることにした。
今日はジム戦、ダイゴさん捜索、クチートゲットと、イベント盛り沢山だった。
おかげで行数もちょっと長くなったし、作者も胸を撫で下ろしたみたいね。(余計なお世話だ!)



ブォォォォ…!



やがて、船にエンジンがかかり、船はゆっくりと加速してムロの港を離れたようだ。
ポケナビによると、ここから107〜109番水道を抜けないと、カイナには行けない。
期間としては結構遠く、3日はかかる。
燃料的な問題はないが、色々船自体に問題があるので心配だ。
まぁ、私は気楽に過ごす事にする。





………………。





ハルカ 「……」

何だかさすがに熱くなってきた。
まだ1日しか経ってないのに、日差しが凄まじく強い。
って言うか、もう10月だと言うのにこの熱さは一体?

ハルカ 「何だか、疲れるなぁ…って言うか泳ぎたい」

海ばかり見ていると、そう思う。
しかしながら、バカンスに来ているわけじゃないので、さすがに贅沢は言えない。

ハギ 「ふむ、なら少し休むか?」

ハルカ 「へ?」

私はハギさんを見る。
ハギさんはあっさりと言うが、何かあるというのだろうか?

ハギ 「そろそろ、『すてられぶね』に着くからの」

ハルカ 「『すてられぶね』?」

ハギ 「ああ、ここいらじゃ有名なスポットじゃよ」
ハギ 「大昔に座礁した船が、そのまま残っておってな…今ではポケモンたちの住処になっておるんじゃ」
ハギ 「観光客なんかもいたりする所じゃから、割と気晴らしになるかもな」

ハルカ 「ふ〜ん、面白そうね」

私が興味を示すと、ハギさんはすぐに舵をやや北側に向けた。
どうやら決行らしい。



………。
……。
…。



それから1時間程でそこに到着した。
まさに観光スポットらしく、人がいたりした。
私は水着で船から降りた。
一応ボールも全部持っておく。
モンスターボールは耐水性も高いので、水に濡れても全く問題がない。
荷物はハギさんが見ててくれるらしいので問題はない。
今日位は羽を伸ばそう…。



………。



ジグザグマ 「ジグ〜♪」

クチート 「クチクチッ♪」

トレーナー男 「やられた…」

トレーナー女 「あ〜あ、負けちゃった」

ハルカ 「どんなもんよ!」

って、何でバトルしてるのよ私!?
気がついたら、どっぷり染まっている自分が怖い…。
トレーナーも結構多いのね、ここ。
すでに何人かのトレーナーを倒し、私はことごとく打ち破っていた。

トレーナー女 「ねぇねぇ君!!」

突然、長い髪の女性トレーナーが私に話しかけてくる。
私はポケモンをボールに戻し、答える。

ハルカ 「な、何か?」

トレーナー女 「もしよかったらさ、ポケナビの番号交換しない?」

トレーナー男 「あ、それいいね! またバトルしたいし!」

ハルカ 「いいですよ、これ…私の番号ですから」

ちなみに、船室でメモを何枚か書いておいた。
こう言う時のため、ということだったのだけど、早速役に立ったようだ。
それは相手も同じらしく、メモは常時持っておくのがセオリーらしい。
私は早速参照してみる。


ラブラブカップル:アヤとフミ

作戦:ラブラブ作戦!

持ってるポケモン:ラブラブポケモン!

自己紹介:私たちにラブラブ! 永遠にラブラブ!


ハルカ 「……」

ラブラブね…はい、ラブラブ。
言ってて自分には心底合わないとわかった。

アヤ 「そう言えば、ハルカちゃんもお宝捜しに来たの?」

ハルカ 「お宝?」

フミ 「いやさ、何でもこの船には貴重な物があるらしいんだ」

アヤ 「そうそう! それで私たちそれを探しに来たって訳なの!」

ハルカ 「えっと…私は単純に遊びに来ただけなんですよね」

私はそう答える。
しかし、お宝か…結構面白いことになりそうね。

アヤ 「そっかぁ、まぁそれならこれ以上引き止めるのも悪いね」

フミ 「そうだね、僕たちはまた別の所を探すことにするよ」

ハルカ 「はい、それじゃあ。また機会があれば」

アヤ 「うん、ハルカちゃん頑張ってね〜」

フミ 「僕たちが応援してるから!」

ハルカ 「どうも〜」

私は手を振ってふたりを見送った。
さて、私も行くとしますかな。



………。



ハルカ 「にしても…結構行ける所は限られてるわね」

さすがに座礁しているだけに、足場はさほど安定しない。
すでに水没している場所もあるし、鍵のかかったままの扉もあった。
そして、今は行ける所では一番奥の部屋に着いていた。

ハルカ 「ここは、何が?」

中に入ってみると、割と綺麗に整頓されている部屋だった。
恐らくは船長室と思われる。
そして、中にはおおよそこの場に不釣合いな白衣の研究員がいた。
何故?

ハルカ 「あの…」

研究員 「うん? あれ…君は?」

私は簡単に自己紹介する、すると意外なことがわかった。

ハルカ 「え? じゃああなたはクスノキさんの部下なんですか?」

研究員 「そうなんだよ、そうかそうか…例の部品が完成したのか」

どうやら、部品と言うのは合っていたらしい。
この研究員は何でまたこんな所に?

研究員 「そうだ! もしよかったら、ここにあるという『たんちき』を探してくれないかい?」

ハルカ 「『たんちき』?」

私がそう聞くと、研究員は頷く。

研究員 「うん、この船には特殊な電波を受信できる『たんちき』が眠っているそうなんだ」
研究員 「でも、僕には探せなくて…多分歩いてはいけないフロアにあると思うんだ」
研究員 「あるフロアに、水没したフロアがある。多分そこから別のフロアに行けると思うんだ」

ハルカ 「…確信はあるんですか?」

研究員 「確信とは言えないけど、ポケモンが中にいたから…多分通り抜けられる気がするんだよ」

ハルカ 「…まぁ、どうせ暇だし。別にいいですよ」

私がそう答えると、研究員は嬉しそうに喜んだ。

研究員 「ありがとう! それじゃあ、この鍵を君に…」

ハルカ 「これは…?」

見た所、部屋の鍵のようだけど。
開かなかった扉に関係しているのかな?

研究員 「『そうこのカギ』だよ、『たんちき』はなかったから僕は何も取ってないけど、ひょっとしたらトレーナーにとっては価値のある物があるかもしれない」
研究員 「例えば、『わざマシン』とかね」

ハルカ 「『わざマシン』かぁ…それだけでも行く価値はありそうね」

私はその鍵を受け取って、早速開かなかった扉に向かった。



………。
……。
…。



ハルカ 「ここね…えっと」

私は鍵穴に鍵を差し込む。
ピッタリ…ジャストフィットね。
私はカチリ…と鍵を回し、扉を開く。

ギィィィィ…

錆びきって重くなっている扉が開く。
中からはやや埃が舞う。
もう長い間手入れがされていないからだろう。
私はとりあえず適当に漁ってみた。



………。



ハルカ 「お、何か発見〜」

見ると、予想通り『わざマシン』が。
番号は13…えっとこれは?

ハルカ 「『れいとうビーム』? 氷タイプの技かぁ」
ハルカ 「どんな技なんだろ? どっちにしても使い捨てだから気軽に使うのは止めた方がいいよね」

技の効果もよくわからないし、とりあえずは保管しておくことにした。
私は別のフロアに向かう。



………。



ハルカ 「…あ、ここね」

例の水没しているフロアを発見する。
どうやら地下のようだ。
完全に水没している…しかも波打っていると言うことは、直接海に繋がっていると言うことだ。
私は一度潜ってみることにした。

ザブンッ!

ハルカ (…んと、ああ確かに。向こう側に抜けられる穴があるわね)

しかもポケモンが結構泳いでいる。
クラゲにクラゲにクラゲ…ってクラゲばっかじゃない! もう盆は過ぎ去ってるわよ!!
刺されても嫌なので、一旦戻って息継ぎをする。

ハルカ 「ぷはっ! さてと…一気に泳ぎますか」

目測、距離は20メートルほど…ノンストップで行くにはやや余裕といった所。
これでも水泳はそれなりの記録を持っているので自信はある。
私は大きく息を吸い込み、潜る。

ハルカ (…さすがに、波があると思ったよりきついわね)

そんなに大きな波ではないが、やや抵抗を受ける。
しかも目の前にはクラゲが数匹。
私は何とか振り切り、向こう側に着く。

ハルカ 「ったく…クラゲのくせに動き早いじゃない! 泡吹くし!」

どうやらただのクラゲではなさそうだ。
まぁ、それはさて置き、私は探索を開始する。

ハルカ 「あれ? 扉が開かない…」

上のフロアに上がってすぐの扉に手をつけるが、鍵がかかっているのか開かなかった。

ハルカ 「…ほあたぁ!」

ドガァッ!! ズダァンッ!!

扉は音をたてて部屋側に倒れる。
ちょっと予想外、せいぜい鍵を壊すくらいだと思ったら、枠ごと逝った…我ながら見事な蹴りね。

ハルカ 「まぁ、結果オーライよね。ん? また『わざマシン』?」

番号は18…『あまごい』?

ハルカ 「…何それ? 攻撃技? どういう効果? って言うか…雨降らすの?」

宴会芸にしては凝ってるわね。
まぁ、これもちゃんと取っておこう。
と言うか、普通に考えたら番号順にしても結構な数があるわよね…。
ひとつひとつはミニ・ディスク・サイズなのでかさばりはしないけど。
少なくとも30種類以上あることが判明しているからね。

ハルカ 「…『たんちき』はなさそうね」

私は次の扉(部屋を出て左側)に触れる。
例によって鍵がかかっている。

ハルカ 「…はいやぁ!!」

掛け声と共に私は右回し蹴りを扉に叩き込む。

ベキィッ!! ガラガラ…!!

今度は貫通した。
鋭すぎたわね…。
私は空いた穴から手を差し込み、鍵を開けた。

ハルカ 「おっ、変な機械発見」

これが『たんちき』と思われる。
掌サイズで思ったよりも小さかった。
使い方は…当然わからない。

ハルカ 「…これ以上は止めとこう」

さすがに扉を壊しながら全部屋回るのは気が引けた。
ここはポケモンの住処になってるらしいし、荒らし回ると逆襲されそうだわ。
私は元来た道を戻って研究員に『たんちき』を見せることにした。



………。
……。
…。



研究員 「あっ、見つかったんだね!」

ハルカ 「これですよね?」

私がそれを見せると、研究員は確認する。
そして、確信したように喜ぶ。

研究員 「ありがとうハルカちゃん! 何だか大きな音がしたから心配したけど、とにかく無事でよかった!」

間違いなく蹴り破った音だ…さすがに聞こえたらしい。
私は苦笑した。

研究員 「それじゃあ、この『たんちき』を、例の荷物と一緒にクスノキ艦長に渡してくれるかな?」

ハルカ 「いいですよ、どうせ仕事のついでですし」

研究員 「それじゃあ頼んだよ!」

こうして、私は新たに仕事を増やして船に戻ることにした。





………………。





ハギ 「おお、戻ったのか」

ハルカ 「ええ、結構楽しかったですよ」

ハギ 「そうかそうか、新しいポケモンには出遭えたかな?」

ハルカ 「そうですね…クラゲとかクラゲとかクラゲとか」

私は新しく見たポケモンを挙げた。
後はトレーナーが色んなポケモン使ってわね。

ハギ 「はははっ、海ではメノクラゲが一番多く生息しているからの」

ハルカ 「メノクラゲ…? ああ、そう言う名前なんですか」

ハギ 「うむ、釣りをすれば簡単にかかるほどなんで、有名なポケモンじゃよ」

ハルカ 「…そうですか」

その有名なポケモンを全く知らない私はやはり無知なのだろう。
だからアカネちゃんにも馬鹿にされるのね…。
まぁ、久し振りに泳げたし、気晴らしにはなったわね。
私は一旦部屋に戻ることにした。
体拭かないと…。



………。



ハルカ 「あう…やっぱり塩臭い」

ベトベトするし…シャワー浴びないと。
そして、こう言う時に限って幽霊なんかが…ってまだ明るいっての!

ハルカ 「いつもの服も干してあるし、少しはマシになるでしょう」

私は一旦シャワー室に向かい、体を洗い流すことにした。



………。



ハルカ 「…というわけで、体は洗ったわけだけど」

また水着に戻るのも問題ね。
しばらく乾かそう。
とりあえず下着姿でうろつくのは問題だし、バスタオルは巻いておこう。

ハルカ 「まだ、いつもの服は乾かないわよね…」

一応洗剤で洗ったので、すぐには乾かないだろう。
元々一着しかなかったので替えはない。
水着に関してもハギさんから貰った物だ。
他に服がないか聞いてみようかな…。
と言うわけで、下着にバスタオルを巻いて私は操舵室と言うか甲板というか、そこに向かった。



………。



ハルカ 「ハギさん〜、この船で他に服ってあります?」

ハギ 「うん? そうじゃな…確か地下の部屋に何着かあったと思うが」
ハギ 「にしても、お前さん随分な格好じゃのう…」

ハルカ 「だから、聞いてるんでしょうが…」

ハギ 「ふむ、それもそうか…とりあえず風邪ひかん内に着替えておきなさい」

ハルカ 「は〜い」

私は船内に戻って地下に行く。

ギィ…ギィ…ギィ…。

嫌な響きだわ。
底が抜けそうね。
何部屋かあるみたいだけど、どこに服があるんだろう?
私は片っ端から入ってみた。

ハルカ 「ここは…倉庫?」

見た所色々あるみたいだけど、服が有りそうには見えなかった。



………。



ハルカ 「ここは、エンジンルームじゃない…」

明らかにハズレだ。
私は次の部屋に向かう。



………。



ハルカ 「お、当たりっぽい」

見ると、大きな洋服タンスがそびえていた。
これならあるだろう。
私はそれを開けてみる。

ギィィィ…

嫌な音ね。
寒気がするわ…ぶっちゃけ防御力低下?
私は気にせずに中を見た。
あるある…選り取り緑…って何で女物の服がこんなに?

ハルカ 「…ハギさんってマニア?」

我ながら失礼なことを言う。
しかしながら、メイド服に、ナース服、どこから見つけたのか巫女服まであった。
他にもセーラー、ブレザ−、妙な制服…って言うか完璧にコスプレじゃない!!

ハルカ 「…普通のはないの普通のは!?」

漁ってみるがどれもマニアックな物ばかり。
さすがにこんなの着る気になれな…。

ハルカ 「…これなら、ある意味」

私は目に止まった、チャイナ服に着替えてみた。



………。



ハルカ 「…何故ヌンチャクまで? トンファーもあるわね…他にも各種揃っているわ」

とりあえずベターなヌンチャクを装備しておもむろに振り回す。
これでもちゃんと使えるんだから!

フォンッフォンッと軽快な音をたて、ヌンチャクが空を切る。

ハルカ 「ホォォッ!」

怪鳥音を叫んで構える。
鏡もあったのでフォームチェックができる。
久し振りにしては様になってるわね。

ハルカ 「って言うか、何でこんなことしてるんだろう…?」

本来の目的を忘れてしまっている。
しかしながら、サイズがピッタリ合うことに妙な疑問を抱いてしまう…。

ハルカ 「…まさかハギさんってロリコン?」

またまた失礼なことを言う。
しかしながら、当然の疑問だろう。
私はとりあえずそのまま上に上がることにした。



………。
……。
…。



ハルカ 「そして、そのまま中華料理を作ってみたり」

と言っても、ある材料じゃたかが知れているので、一番ポピュラーと思われる酢豚を作った。
豚は冷蔵庫に入っている、黒豚。
確かミナモ直送とか書いてあった…いつの間に手に入れてたのか。

ハルカ 「ほ〜い完成だよ〜♪」

ワカシャモ 「シャモ〜♪」

ジグザグマ 「ジグ」

コノハナ 「コ〜ノ〜♪」

アゲハント 「ハ〜ント」

キャモメ 「キャモ♪」

クチート 「クチクチッ!」

ちなみに、ちゃんとそれぞれのポケモン用に形を変えてある。
ワカシャモ、ジグザグマ、コノハナは通常サイズ、アゲハントにはかなり細かくぶつ切りにしておいた。
キャモメ、クチートにはやや小さく角切りにしておいた。

ハルカ 「後は、ハギさんと、ピーコちゃんの分ね」

これも皿に盛ってテーブルに置いておく。
ハギさんは操縦をしているので基本的には一緒に食事することはない。
私たちは食事を始めた。



ハルカ 「…ご馳走様」

とりあえず私は一番最後に食べ終わる。
この食事でも意外とポケモンたちの性格がわかる。

ワカシャモはやや早食いで、意外と丁寧に食べる。
クチートも早食いでこちらはやや雑。
まだ野生から離れて短いから仕方ないわね。
アゲハントは口が小さい上、吸い込むように食べるから時間がかかる。
元々少食なのか、あまり食べる方ではない。
コノハナは一番遅い。
ゆっくり食べるが、その分優雅に見える。
お嬢様系? それともお姉さん系?
キャモメ、ジグザグマは、まさに鳥、獣と言った感じ、そのままだった。
そろそろ、他のポケモンたちも進化の兆しがあるかな?
あれからまだ他に進化する子はいない。
今まで戦った野良トレーナーとの戦いでも色んなポケモンを見てきたが、そろそろ進化形とかとも戦うようになってきていた。
例えばマッスグマやドクケイルと言ったポケモン。
まだよくわかってはいないのだけれど、そろそろジグザグマは進化しそうな気がしていた。

ハルカ 「う〜ん、カイナまで後2日かぁ…」

結構な時間がかかる。
それまでは船の上なので、意外と暇だった。



………。
……。
…。



ハルカ 「そして3日目…今日でたどり着くはずだけど」

相変わらず海の上。
元の服もすっかり乾いて、いつもの私。
だけど、暇。
船の上じゃ特訓も出来ないし、イマイチできることがない。
できることといえば、部屋で瞑想くらい…。
しかも、もう飽きたし…。
自分でイメージトレーニングしても、どうにもしっくりこない。
戦うのはポケモンなんだから…。

ハルカ 「だけど、ポケモンに瞑想させるのは効果あるのかな?」

ふとそんなことを思う。
よくわからないけど、無駄じゃないかもしれない。
と言っても、私のポケモンに効果があるとはあんまり思えなかった。

ハルカ 「…相変わらず暇ねぇ」

ピーコ 「モメ〜」

ハギ 「もうちょっとしたらカイナに着くよ…辛抱じゃ」

ハルカ 「は〜い」



こうして、結局は特に何も起こらず、至極平坦な日々が過ごされた…。
カイナまでは、後少し。





………………。





ここは、カイナシティ。
ハルカがたどり着くよりも数日早い時である。

カガミ 「…さて、次はキンセツね」

次のジムはそこが一番近いだろう。
現在手に入ったバッジは3つ。
今の所苦戦する様子もない、さすがに楽と言えば楽ね。
それでも、あの娘はそれなりに苦戦するでしょうね…そうでなければ意味はないし。
どこまで来れるのか、それはそれで興味があるし、期待もしている。

カガミ 「…コンテストか、私にはまだ必要ないわね」

今の所、コンテスト用にはポケモンを育てていない。
いつかは挑戦してもいいけど、まだ先の話ね。

カガミ 「……ここにもいるわね」

私は赤服の連中を見つける、マグマ団だ。
どうやら、何かをここでも探しているようね。
今の所敵対する理由はないけど、面倒ね。
私は体中をローブで覆っているため、はたから見たら完全に不審者だ。
さほど、問題はないのだけれど、ああ言う連中がうろついていると、自分も仲間だと思われてしまう。
早々に立ち去る方が無難だけど…どうもそう言うわけには行かないらしい。

下っ端 「オイ貴様! ちょっと顔を見せろ!」

カガミ 「…断るわ」

私が一言そう言うと、下っ端は逆ギレする。

下っ端 「この野郎! もしかして貴様アクア団だな!? ここで引導を渡してやる!!」

? 「止めておけ、お前では無理だ」

下っ端 「何だと…げっ、マツブサさん!?」

マツブサと呼ばれた男がそこにいた。
確か、マグマ団の総帥。
なるほど…一味違うな。

カガミ 「わざわざ、総帥自ら出陣とは…よほどここにはほしい物があるようね」

マツブサ 「君は、ただのトレーナーではなさそうだな」
マツブサ 「でなければ、正体を隠す必要はあるまい?」

中々切れる男ね、下手なことは言わない方が良さそうだわ。
私が無言で見ていると、マツブサは言葉を続ける。

マツブサ 「部下が失礼をしたようだ、私から詫びよう」
マツブサ 「だが、もし我々の邪魔をするようであれば、その時は容赦しない…それは覚えておくがいい」

カガミ 「……」

私は何も言わなかった。
この男は嘘やハッタリを言う男ではないだろう。
戦って負ける気もしないが、争うのは面倒だ。
あまり、目立ってもあの娘に感づかれる可能性あるし。
面倒は避けるべきね。

下っ端 「マツブサさん…どうしてわざわざ?」

マツブサ 「実際に実物を見ておきたくてな…例の物はどうだ?」

下っ端 「いえ、まだ動作には至っていないようです」

ふたりが小声で話し合う。
距離はややあるが、聞き取れなくはなかった。
しかしながら、これ以上関わりあうのも面倒なので去ることにする。



マツブサ 「…行ったか」

下っ端 「何者なんでしょうか? あいつ…」

マツブサ 「さぁな…敵意は感じなかった、少なくとも敵ではあるまい…今は、な」

声を聞いただけでは女としか思えなかったが。
実際にはどうかわからんな。
あそこまで目立つ格好では、返って怪しまれるだろうに。
余程顔が明かせない理由があるのだろうな。

マツブサ (しかし、あの声どこかで…?)

下っ端 「マツブサさん! どうやらホムラさんから連絡が!」

マツブサ 「うむ、すぐに行く、団員を集合させておけ!」

下っ端 「はっ!」





………………。





カガミ 「……」

しかし暑い。
元々、こちらの気候には慣れないため、この姿だととてつもなく暑い。
しかしながら、休んでいる暇もないので、早々にカイナを出た方が良さそうだ。

カガミ 「……」

私は砂浜の方で立ち止まる。
そこで、ひとつの看板に目が止まった。


『サイコソーダあります 海の家』


カガミ 「………」
カガミ 「……」
カガミ 「…」

考える。
飲むべきかどうか。
炭酸は、腹に溜まるのでちょっとアレだけど…。
しかしながら糖分を得るのはいい。
とりあえず、中に入ってみる。

少女 「いらっしゃいませ〜♪」

カガミ 「…サイコソーダSひとつ」

店長 「あいよっ、¥100だよ、まいどあり!」

私は100円硬貨を手渡し、一本貰った。

少女 「ありがとうございま〜す」



………。



カガミ 「……」

ストローからチュウチュウと吸う。
少しだけ生き返った。
いくら正体隠すためとはいえ、この姿は暑い。
顔を見せられないだけに、視線も痛いし。

カガミ 「……ふぅ」

思わず声が出る。
このままサイユウまで行くことになるのかと思うと地獄に思えた。
この際、ローブの下は水着で行くのも手かな?
しかしそれは、問題な気もした。
変態じゃないんだから…。

カガミ (…にしても)

こうして砂浜にこの姿でいると、余計暑い。
立ち止まっている方が辛そうだ。

少女 「お姉さ〜ん、そんな所に立っていたら余計に暑いと思うよ〜?」

カガミ 「……」

指摘される。
まぁ、そりゃそうでしょうけど…。

少女 「中に入って、涼しんだら?」

カガミ 「……」

ぐう〜…

ふと腹が減る。
そう言えば、急いでいたせいか、あまり食事を摂ってない。

少女 「他にも焼きそばとかやってるから、良かったら食べていってね」

カガミ 「………」
カガミ 「……」
カガミ 「…」



………。



カガミ 「……」

ズルズルと私は焼きそばを頬張る。
結局、いただいてしまった。
背に腹は変えられぬ。

少女 「はい、お姉さん」

カガミ 「…ありがとう」

私はそう言って『おいしいみず』を受け取る。
どこでも、この呼称は変わらないらしい…天然水なのか、水タイプや草タイプのポケモンはこれが大好きだ。

カガミ 「……」

中は冷房が効いている分楽だった。
しかしながら、もう10月だというのに、客は多い。
日中はまだまだ暑く、泳いでいる人もいるほどだ。
トレーナーもちらほらと見かける、この海の家でバトルが行われるほどだ。

少女 「ここでは、結構トレーナーさんが来るんだよ、お父さんも私もバトルを見るのは大好き!」
少女 「お姉さん、トレーナーですよね?」

少女が純粋無垢な顔でそう聞いてくる。
私は小さく頷く。

カガミ 「一応…」

少女 「だったら、バトルとかして行ったら?」
少女 「ここに来ているトレーナーさんたちは皆バトルが大好きですから」

カガミ 「いや、私は…」

少女 「もしここのトレーナーさんを全員倒したら、『サイコソーダ』半ダースプレゼント♪」

カガミ 「……3人か、10分以内に済ませるから、よろしく」

少女 「わぉ…強気ですの」



………。
……。
…。



少女 「お姉さん、強いですの〜!」

店長 「おお、凄いねぇ…じゃあ、これが約束の『サイコソーダ』半ダースだ!」

カガミ 「…どうも」

私は結局貰ってしまった。
ペットボトルが6本。
持って行くには少々重い…一度パソコンで転送しておこう。
私はそれを持って海の家を出た。



………。



カガミ 「…まぁ、こんな日もいいか」

例によってマグマ団がうろついているが、今度は互いに気にしなかった。
私は今度こそカイナシティを出る。
キンセツまではやや距離があるが、問題にはならないだろう。
私はあの娘に追いつかれる前に、カイナシティを後にした…。



…To be continued




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