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POCKET MONSTER RUBY



第15話 『ハルカの勘違い』




ハルカ 「よ〜っし、今日も皆おはよう!!」
ハルカ 「アメタマとアゲハントは治療のためにパーティから外れちゃってるけど、皆仲良くね!」

私は早朝、キンセツシティ・ポケモンセンターの裏庭で皆をボールから解放していた。
カイナを出て以降、全員を休ませることがあまり無かったので、たまにはと思ったのだ。

ラクライ 「ラーーーイッ!」

新しく仲間に入ったラクライはいきなり遠吠えをする。
戦闘中では攻撃力を上げる技だが、この娘はやけに『のうてんき』で馬鹿に明るい娘だった。
良くも悪くもムードメーカーとして機能してくれている。
特にワカシャモ、マッスグマと仲が良く、仲間に入ってすぐに輪に溶け込んでいた。

ワカシャモ 「シャモ〜」

マッスグマ 「グマ…」

この中では一番年上なのか、ワカシャモとマッスグマが皆をまとめようと頑張っている。
今までは、細かく見たことってあんまりなかったけど、改めて見てると…。

ワカシャモ 「シャモシャモ!」

まずはワカシャモ。
私と一番付き合いが長い、いわばマブ♪
臆病な性格のせいか、相手を攻撃するのが不得手だが、優しい性格のため皆に慕われている頼れるリーダーだ。
格闘タイプと言うこともあり、育て甲斐があるのが嬉しい所。

マッスグマ 「グマ…」

次は私が自力で初めて捕まえることが出来たポケモンの進化形。
控えめな性格で、とにかく動きたがらない。
ゆえに、この娘も攻撃が不得手で、色々と手間がかかる。
それでも、パーティ内で最速のスピードを誇り、今ではパーティの重要な役割を担うポケモンだ。
ちなみに進化しても『ものひろい』の特性は健在。
例によって色んな道具を拾ってくれるのが嬉しい。
特に、『いいキズぐすり』と『ハイパーボール』は比較的良く拾ってくれる上に使い所の多い道具なので大変、家計が楽だ。
『きんのたま』もかなり高価で、これ一個で数日は過ごせる。
正直、便利すぎて堕落しそうな『特性』ね…。

コノハナ 「コ〜ノ〜♪」

続いてコノハナ。
とにかく進化までが大変だったが、進化してようやく安心できるようになってきた。
それでも、ちゃんとした攻撃技が少ないのがやはり悩み。
技マシンで補強も考えたいが、この娘は何かと覚えが悪い。
これからも色々手間をかけてくれるだろうが、それだけに愛情はこもる。
一見おっとりな性格に見えるが、実は図太い性格だったりすることが最近よくわかった。
理由は、実際おっとりな性格のアゲハントとの比較である。
比較的攻撃をまともに受けるアゲハントは防御が低く感じる…が、コノハナの場合はまともに喰らっても平然としている…。
そう、全く『動じない』=『ずぶとい』性格なわけだ。
ちなみに、『はやおき』という特性もあり、朝起きるのにはかなり強い。

キャモメ 「キャモ〜」

そして現在パーティで唯一飛行できるキャモメ。
水タイプと言うことで、色々活躍も多い。
まだ進化の兆しは無く、最近は少々パワー不足になっている。
『のんき』な性格のためか、あまり動きは早くなく、割とどっしりした戦いをする。
ただ、その分見た目以上に打たれ強く、驚かされることも多い。

クチート 「クチクチ♪」

ムロで出会った鋼タイプの異色ポケモン。
鋼タイプは何かと有利で、とにかく便利。
大抵の攻撃を半減させてくれる上、毒が全く効かないのですこぶる役に立つ。
また、この娘は何かと技の覚えが良く、技マシンでも大抵の物は覚えてくれるほど。
この前のジム戦でも『かえんほうしゃ』を披露して打破してくれた。
可愛い外見とは裏腹に、結構『黒い』技を色々覚えてくれるが、その理由はクチートと言う種族的な物のせいだろう。
何せ、『あざむき』ポケモンだし…。
『せっかち』な性格で、とにかく急ぎたがる。
この娘も明るい娘で、皆と溶け込むのは早かった。

ラクライ 「ラ〜イ!」

最後はラクライ。
今の所、唯一の電気タイプ使い。
しかしながら、まだ電気での攻撃技はなく、未だに『でんこうせっか』と『でんじは』位しかまともな技がない。
スピード、パワー、どちらも優秀だけにこれからが凄く楽しみなポケモンでもある。

ハルカ 「…ふむ、じゃあしばらくはゆっくりしておいて」
ハルカ 「私はちょっと街を回ってくるから」

一同 「〜〜〜!!」

それぞれが鳴き声で答えてくれる。
私は手を振りながらその場を後にした。



………。
……。
…。



こうして、私はしばらく皆を遊ばせてからキンセツシティを後にした。
あれから色々街を回ってみて、それなりの収穫を持ち帰る。
まず『ダートじてんしゃ』。
何と『カゼノ』と言う人にタダで譲ってもらった。
正直かなり驚いたが、本物の自転車である。
ちなみに、例によって収納型で、モンスターボールのように収縮機能がついている。
使う時だけ出すことができるので便利なことこの上ない。

次にひでんマシン6『いわくだき』
これは、道とかにある大きな岩をポケモンに砕かせることのできる技である。
格闘タイプの技と言うことで、あえてマッスグマに覚えてもらった。
理由は、この技であれば苦手な岩タイプも多少対抗できるからだ。



………。



ハルカ 「……」

男性 「君君! 見たところトレーナーのようだが、どうだい? 家と挑戦してみないかい」

ハルカ 「…挑戦?」

ふとそう呼び止められる。
かなり如何わしい親父さんだ…カラクリ大王の親戚だろうか? などと思ってしまう。
テッセンさんの例もあるので、かなり不安だ。
しかしながら、あっさりと杞憂に終わる。

男性 「我々一家と連続でポケモンバトルをし、勝利したなら良い物をあげよう!」

ハルカ 「乗った!」

例によって挑戦を受ける私。
相変わらず無謀だが、まぁこれ位不測の事態を乗り越えられなかったらこれから戦っていけないだろう…と勝手に解釈する。

男性 「よく言った! では早速行くぞ!! 『スバメ』、『ジグザグマ』!!」

ボボンッ!!

スバメ 「スッバ!」
ジグザグマ 「ジグジグ!」

男性は2体のポケモンを繰り出す。
なるほど、ダブルバトルね。
私は、ボールを一個取り出す。

ハルカ 「行け、『ラクライ』! 頼むわよ『マッスグマ』!!」

ボボンッ!!

ラクライ 「ライー!」
マッスグマ 「グマ」

最初から外に出ていたマッスグマと、後から出したラクライで私は勝負する。
相手は、どっちも私の知っているポケモン、臆することはないわ。
私は先制で相手を攻撃する。
こう言う場合、先手必勝ってね!

ハルカ 「マッスグマ、ジグザグマに『ずつき』! ラクライはスバメに『でんこうせっか』!」

マッスグマ 「グマ!」
ラクライ 「ライ!」

ドガァッ! ドウッ!!

ジグザグマ 「ジグ〜…」
スバメ 「スバ〜…」

男性 「あらまあっさりと!?」

ハルカ 「うっし、楽勝!」

男性 「いやぁ…やるねぇ、これは先が楽しみだ」

そう言って、ポケモンをボールに戻し、男性は家の中に入っていった。

男性 「お〜い! 凄く強いトレーナーが来たぞ!!」

男性が大声でそう言うと、中から二人目が出てくる。
恐らくは奥さんだろう、それなりに風格のある中年女性だった。

女性 「まぁ、家の旦那に勝つなんて中々やるわね! でも、私に勝てるかしら!? 行くのよ『ロゼリア』!!」

ボンッ!

ロゼリア 「ロ〜ゼ♪」

ハルカ 「…ん、今度は草タイプか」

確か、このポケモンは『どくのトゲ』を持っている。
ここで下手に毒にされたら問題が出てきそうなので、その心配がないポケモンで戦うことにした。
私はラクライを戻し、次なるポケモンを繰り出す。

ハルカ 「行け『クチート』!」

ボンッ!

クチート 「クチ〜♪」

女性 「さぁ、バトル開始よ! ロゼリア、『しびれ…」
ハルカ 「クチート『ちょうはつ』!!」

クチート 「クチクチ!」

ロゼリア 「ロゼッ!?」

例によって私は先手を打って行動を封じる。
これで相手は下手な技を使えなくなった。
私は続いてクチートに指示を出す。

ロゼリア 「ロゼ〜!」

挑発に乗ったロゼリアが不用意に突っ込む。
私はそれを見逃さない。

ハルカ 「クチート、『かえんほうしゃ』!!」

クチート 「ク〜チ〜!!」

ゴオオオオオオオッ!!!

強烈な炎がロゼリアを包む。
そして、あっさりと倒れてしまった。
うむ、効果は抜群ね!

女性 「あらあら…こんなにあっさり負けるなんて。…強いわよー! この娘本当に強いわよーー!!」

またもや大声で家に入っていく。
何て言うか…明るい家族ね。
そして、次に出てきたのは私と同年代位の女の子だった、見た所学生のようだ。
ミニスカートが無駄に目立つ。

少女 「お父さんとお母さんを倒すなんてやるじゃない! でも私はもっと強いわよ!」
少女 「『マリル』、任せたわよ!」

ボンッ!

マリル 「マリ〜♪」

出てきたのは水タイプのポケモン。
クチートでも戦えないことはないだろうが、どうせなら相性のいいポケモンで戦うべきだろう。
と言うわけで、私はもう一度あの娘を出す。

ハルカ 「『クチート』戻って! もう一度お願い『ラクライ』!!」

シュボンッ! ボンッ!

ラクライ 「ライ!!」

電気技がまだないはずだが、そろそろラクライも電気技の使い方が上手くなってきたことに気付いた。
ひょっとしたら、使える技が増えているかもしれない。
私は図鑑をちらりと確認し、ラクライの技を見る。
そして、私はすかさず指示を出す。

ハルカ 「よ〜っしぶっつけ本番!! ラクライ、『スパーク』よ!!」

ラクライ 「ラーイ!!」

ラクライは指示を受け、体中から放電する。
そして、その状態のままマリルに向かって特攻する。

ドガァッ! バリバリバリ!!

マリル 「マリ〜!!」

マリルはラクライのスパークを受け、ごろごろと転がりながら吹っ飛ぶ。
そのまま、立ち上がることはなかった。
予想以上の攻撃力…これでラクライもパワーアップね!

少女 「くぅ〜…やるわね、ならこの娘よ! 『ドンメル』行け!!」

ボンッ!

ドンメル 「ドン〜!」

ハルカ 「地面タイプ…!」

これはさすがに分が悪い。
電気タイプは地面タイプに全く通用しないからだ。
しかしながら、攻撃が出来ないわけではない…ここで退くというのもちょっと気が引ける。
交換していいかどうか確認してないので、その辺もちょっと考えさせられる所だからだ。
な・の・で! 私はあえてラクライに指示を出した。

ハルカ 「ラクライ、『でんこうせっか』よ!!」

少女 「ドンメル『ひのこ』!」

ラクライ 「ライ!」
ドンメル 「ドン!」

ボボボッ!!

『ひのこ』の中をラクライが突っ込む。
ダメージを受けながらもドンメルに一撃を加えた。

ドガァッ!

ドンメル 「ドンッ!」

ハルカ 「く…思ったより打たれ強い!」

対して、ラクライは思ったよりもダメージを受けているようだった。
元々打たれ強い方ではなかったので、無理が祟ったようだ。

少女 「よし、今よドンメル! 『たいあたり』!」

ドンメル 「ド〜ン!」

ラクライ 「ライ!?」

ドゴォッ!!

ハルカ 「くっ…!」

ラクライは『たいあたり』をまともに受ける。
さすがに連戦のためか立ち上がれなかった。
私はラクライをボールに戻す。

シュボンッ!

ハルカ 「よし、ならあなたに任せるわよ『キャモメ』!!」

ボンッ!

キャモメ 「キャモ〜!」

ユウキ君との時と同じように私はキャモメで対抗する。
相性は抜群なので、有利なはず。

ハルカ 「相手は弱っているわ、一気に決めるわよ! 『みずでっぽう』!!」

キャモメ 「キャモー!」

ズバァッン!!

ドンメル 「ド〜ン〜ンッ!!」

ドンメルは『みずでっぽう』をかわすことなく直撃する。
当然ながらこれでダウンだ。

少女 「く〜…! だったら最後はこの娘よ! 『キノココ』!!」

ボンッ!

キノココ 「キノ〜!」

またしてもユウキ君とのバトルがフィードバックする。
だけど、相手は違うわ。
私は強気でキャモメに指示する。
相性は悪いわけじゃないわ!!

ハルカ 「キャモメ、『つばさでうつ』!!」

少女 「キノココ、『たいあたり』!!」

あの時の戦闘の一瞬がフィードバックする。
だが、もう止まれない。

キャモメ 「キャモー!」

ドンッ!!

キノココ 「キノ〜…」

キャモメ 「…キャモ〜?」

ハルカ 「…やはり」

またしても『ほうし』にかかる。
だが、今度は眠っただけのようで、毒ではない。
ちょっと安心。
だけど、これで私は2体のポケモンが使用不可になったと言っていい。

少女 「うう…ぐっすん。うわーーーんっ! お婆ちゃーーん!!」

何やら泣きながら家に帰っていく。
あれ位でだらしないわね…アカネちゃんを思い出すわ。
あの娘の泣き虫も未だに治ってないんでしょうね…。
そして、しばらくすると、ドタドタと走りながら向かってくる元気なお婆ちゃんを確認する。

婆 「こらーーー! よくも孫を泣かしおったなぁ! ワシがメタメタにしてやるから覚悟せぇ!!」

ボンッ!

アサナン 「アサ〜…」

ハルカ 「…ん?」

見たことのないポケモンだ。
私は早速図鑑でチェックした。

ポケモン図鑑 『アサナン:めいそうポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.6m 重さ:11.2Kg タイプ1:かくとう タイプ2:エスパー』
ポケモン図鑑 『山奥でヨガの修行をしている。瞑想をしていても集中力が途切れてしまうため、修行は終わらない』

ハルカ (格闘タイプとエスパータイプ…妙な組み合わせね)

ちなみに余談だが、ヨガは断じて格闘技ではないので、勘違いをしないように!
私もあの頃は若かったわ…今でも若いけど♪
感傷に浸りながらも、私は臆せず次のポケモンを繰り出す。

ハルカ 「よ〜っし、行っけー『ワカシャモ』!!」

ボンッ!

ワカシャモ 「シャモ!」

今の所無傷のワカシャモ。
相手がエスパーなので相性は不利だけど、あえてこの娘を繰り出した。
特に意味はないのだけれど、どうせならエスパーとの経験を積ませたかった。

ハルカ 「ワカシャモ、気合入れて『ひのこ』よ!!」

ワカシャモ 「シャモー! シャシャシャ!!」

婆 「アサナン、『ヨガのポーズ』、そして『めざめるパワー』じゃ!!」

アサナン 「アサ〜……ナン!!」

ジュワァー!!

何と、アサナンは妙な力で『ひのこ』を吹き飛ばす。
光る球体がアサナンを包み、それが弾けるように拡散し、『ひのこ』を消し去ったのだ。

ハルカ 「あれは一体…?」

見た事のない技に私はやや反応が遅れる。
すぐに相手は次の攻撃を繰り出してきた。

婆 「アサナン、『ねんりき』!!」

アサナン 「アサ〜!!」

ワカシャモ 「シャモ!?」

ワカシャモの体が宙に浮き、自由を奪われる。
まずい、効果抜群の攻撃だわ!

ハルカ 「ワカシャモ、振りほどいて!!」

ワカシャモ 「シャモ…!」

だがワカシャモはもがくだけで動けはしなかった。
そして、次の瞬間空間が捻じ曲がり、ワカシャモは吹き飛ぶ。

ドギュゥンッ!!

ワカシャモ 「シャ…シャモッ」

ハルカ 「ワカシャモ! 立ち上がるのよ!!」

婆 「アサナン、『めざめるパワー』じゃ!!」

アサナン 「アサーー!!」

またしても球体が弾け、ワカシャモを襲う。
だが、今度はワカシャモの方が先に動いた。

ワカシャモ 「シャモ!!」

ハルカ 「ナイス! そのまま動き回って間合いを詰めるのよ!!」

ワカシャモはジャンプ一番で『めざめるパワー』を回避し、着地と同時に横へと動く。
そして、左右に高速で動き回り相手を撹乱する。

婆 「く、アサナン『めざめるパワー』!!」

ハルカ 「今よワカシャモ、『つつく』!!」

アサナン 「アサ!」
ワカシャモ 「シャモーーー!!」

ザシュゥッ!!

切り裂くような音が鳴り響き、アサナンの後へとワカシャモは駆け抜けた。
もちろん、すれ違い様にクチバシを喉元に突きつけた。
効果は…抜群だ。

ワカシャモ 「……」

アサナン 「…アサッ」

ズゥン!

アサナンが地面に崩れ落ちる。
ワカシャモは…健在。
勝負は決まった。
私は、小さくガッツポーズを取る。
正直、嬉しい。

婆 「フガッ!? …本当に強いのう」

お婆さんは、入れ歯が外れそうになるほど驚いたらしい。
だが、すぐに気を取り直し、私を見た。

婆 「…良くワシ等全員を相手に勝利を収めた、これはその証みたいなものじゃ…受け取ってくれ」

そう言うと、何やら妙な機械っぽい道具を渡された。
変な装置のようだけど、よくわからない。

婆 「それは、『きょうせいギプス』…ポケモンに着けてやることで、より強く育つようになる」
婆 「但し、つけることによって素早さが著しく低下する。無論戦いにおいては厳しい物となるじゃろう」
婆 「どう使うかは、あんた次第じゃ…」

ハルカ 「ど、どうも…」

とりあえず貰っておく。
使うかどうかはアレだけど、損はしない物だろう。
私はそれを受け取り、その場を後にした。
とりあえず、今回の戦いで得る物もあったし。

ハルカ 「特に、ラクライが成長したのは嬉しいわね」

これで電気技をまともに使うことができる。
だけど、このまま進むのはちょっと辛い気がした。
何だかんだで、色々とダメージを受けたし、今日は一度キンセツに戻ろう。
私はそう思い、キンセツへの道を戻った。



………。
……。
…。



ハルカ 「あれ…?」

キンセツに戻った頃、時刻は夕方と言った所。
何やら街の中心辺りで、見覚えのある人を見かけた。

テッセン 「ううむ…困ったのう」

ハルカ 「どうしたんですか? テッセンさん…」

どうも困っている様子のテッセンさんに、私は話しかける。
すると、テッセンさんは大らかに笑って。

テッセン 「おお、ハルカちゃんか! わっはっは、実はちょっと困っておってのう!」

本当に困っているのか、テッセンさんは苦笑しているようだった。
とりあえず、話し掛けてしまった物はしょうがない。
私は話を聞くことにした。

ハルカ 「困ってるなら、何か手伝いましょうか? これでも力仕事位できますけど」

テッセン 「いやしかしなぁ…かなり辛いと思うぞ?」

テッセンはどうも遠慮がちにそう言う。
そう言うからには、結構な力仕事なのだろうか?
とりあえず、何とも言えないのでやるだけやってみようかな。

ハルカ 「あんまり遠慮しなくても良いですよ? そこら辺の男よりも遥かに力あるつもりですから」

ちなみにこれはハッタリではない。
これでも握力80kg、背筋力120kgの『丈夫』(ますらお)よ♪
この細い体のどこにそんな力があるんだ?と言う突っ込みは無視ね☆

テッセン 「ううむ、しかしなぁ…アレを持ち上げられると思うか?」

そう言って、テッセンさんは道の片隅にある『モノ』を指差す。
見ると、直径1mはあろうかと言うほどの正方形でできた機械が置いてあった。
なるほど…これは確かに重そうね。

ハルカ 「…で、これをどこまで?」

私は一応聞いてみた。
ここはちなみにキンセツジムのすぐ側。
北口からちょっと入ったすぐの所ね。
テッセンさんはううむ唸りながら。

テッセン 「ポケモンセンターまでなんじゃが、台車も何もなくてな…今台車を探させておるんじゃが、このサイズが乗るような奴はジムになくてな」

ハルカ 「ちなみに、あれ何なんですか?」

テッセン 「あれはネットワーク装置じゃよ」

ハルカ 「ネットワーク…ですか」

つまりは通信機器という事だろう。
ポケモン転送装置や、アイテム転送などで使っているので、今更珍しい物ではない。
しかしながら、あれ程の大きさの通信機器となると…。

テッセン 「まだテスト段階なんじゃがな、ホウエン地方以外の場所と通信するための機器を開発しているんじゃよ」
テッセン 「アズサちゃんのパソコンを介してテストをする予定なんじゃが、まだできるかどうかもわかっておらん。

ハルカ 「う〜ん、確かにあれを持ち上げるのは『普通』なら無理ですね…」

テッセン 「じゃろう? 『かいりき』を覚えたポケモンなら不可能でもないんじゃがな…」

ハルカ 「…だったら、ポケモンで牽引するとかは?」

テッセン 「残念ながら、知っての通り電気タイプのポケモンばかりじゃからな…さすがにあれを持ち上げるのはちょっと…」
テッセン 「しかも、コイルとかじゃと機械自体が壊れかねん」

ハルカ 「…確かに。…はぁ、仕方ないか」

私は肩を回しながらその機械の前に立つ。
直径は1m…中にぎっしり詰まっているならともかく、大抵はスペースを空けているでしょうからこれ位は。

ハルカ 「…ふんっ!」

テッセン 「うおおっ!?」

私は両端を両手で持ち、それを真上にリフトアップする。
さ、さすがに重い…。
これをポケモンセンターね…。
私はできるだけ楽な持ち方に変え、歩き出す。
幸い、ここからポケモンセンターなら道路を挟むだけなのですぐだ。



………。
……。
…。



ハルカ 「どっせい!!」

ズゥンッ…!

重い音をたて、機械の箱をポケモンセンターの庭に置く。
さ、さすがに疲れた…。
両腕をぶらぶらとしている私を見て、テッセンさんが近づいてくる。

テッセン 「ハッハッハ! いやぁ…さすがに驚いたよ」
テッセン 「まさかこれほどまでに『力持ち』じゃとは…マリルも顔負けじゃのう」

ハルカ 「…ど、どういう比較なんですか?」

テッセン 「ほれ、ルリリ、マリル、マリルリの3匹は、たまにとても力の強い奴がいるんじゃよ」
テッセン 「特に見た目が可愛いポケもんじゃから、一見すると驚くもんじゃぞ〜」

それは知らなかった…あの体躯でねぇ。
世の中不思議な物である。
しかしながら、明日は筋肉痛かもしれない。
最近こう言った力仕事はやってなかったからなぁ…今夜は軽く湯上りに筋肉ほぐしとこう。

テッセン 「とにかく、今日は本当にすまなかった…これは今日のお礼代わりじゃ、受け取ってくれ」

そう言うと、テッセンさんは『わざマシン』をくれる。
一体、何の技だろうか?

テッセン 「中身は34番『でんげきは』! ワシの得意技でな、高速の電撃で回避不可能とも言われる」
テッセン 「威力はあまり高い方ではないが、スピードの速い飛行ポケモンを落とすのには有効じゃぞ!」

ハルカ 「へぇ…そう言えばテッセンさんが使ってた技でしたよね、ありがとうございます!」

テッセン 「うむ! 電気タイプのポケモンに覚えさせるも良し、飛行や水が苦手なポケモンに覚えさせるのもいいぞ。活用してくれ!」

テッセンさんはそう言ってその場を後にした。
うむ、いい物貰った♪
私はそう思ってポケモンセンターに入る。



………。



受付 「お疲れ様ですハルカさん…大変でしたね」

受付嬢がそう言って心配してくれる。
まぁ、当然といえば当然だろう。
私はとりあえず部屋を取る。
例によってワンボックスだ。

ハルカ 「じゃ、ポケモンの回復お願いします。また風呂上りに受け取りますんで♪」

受付 「はい、それじゃあお預かりしますね」

私はポケモンを預けて部屋に向かう。
後はいつも通り風呂に入ってゆっくりした。





………………。





ハルカ 「ふ〜む、『でんげきは』覚えられるのは、マッスグマ、キャモメ、ラクライかぁ」
ハルカ 「誰に覚えさせようかな…」

ラクライは『スパーク』を覚えていることだし、あまり必要はなさそう。
マッスグマは元々攻撃力に不満があるわけじゃないので重要性は少ない。
だとすると…やっぱりキャモメか。
キャモメは水に対して耐性もあるし、同じ飛行を落とすという意味でも使いこなせる気がする。
ラクライがいる分には活躍はあまりないかもしれないけど、『必中』するという意味では意味があると思えた。
私はキャモメのボールに接続し、『でんげきは』を覚えさせた。

ハルカ 「カガミのポケモンも色々覚えさせてるんだろうなぁ…」

聞いた話であれば、魚系のポケモンが地面タイプの技を持って、テッセンさんを完封しているのだ。
他にも色々と多彩な技を持っていると言っていいだろう。
私も負けずに色々覚えさせて対抗していかないと…。





………………。





やがて次の日の朝がやってくる。
自転車を使いながら、昨日よりも先に進む。

ハルカ 「そして、ここに来てまず最初の壁か」

私は自転車から降り、目の前の大岩×2を眺める。
正直自分で割る気は起こらない。
なので、私はマッスグマを出して指示する。
まだ実際には試したことがないので、ちょっと楽しみだ。

ハルカ 「マッスグマ! 『いわくだき』よ!!」

マッスグマ 「グマッ」

何と、マッスグマは後ろ足で立ち上がる。
そして、右前足を後ろに引き、一気に岩へと拳(爪?)を突き出す。

ドガァッ!! ……ビキビキィ! ガラガラ!!

一点から皹(ひび)が入り、そこから岩が崩壊していく。
正直かなり違和感のある光景だ。
マッスグマって予想以上に器用らしい…。
私はそれを確認しながらも、先へと進んでいった。
この先には一体何があるのかな?
そう思いながらも、私は自転車を走らせる。



………。
……。
…。



ハルカ 「…ん?」

何やら、空気がおかしく感じる。
何かやや煙たい気がする。
やや高山に近いからだろうか?
空気も薄く感じた。
私はこの辺りから自転車を降りて進む。
一応マッスグマを外に出しておく、何かを拾ってくることもあるだろうからだ。

ハルカ 「一応、道を確認しておこうかしら」

どうにも砂が舞っているように感じる。
私はポケナビを起動し、マップを見た。

ハルカ 「…はぁ」

しばらく歩いて行くと、目の前には一面広がる砂嵐。
砂漠と呼ぶにはそれほど広大ではない。
ただ、視界は実際の砂漠よりも遥かに悪く感じる。
天気は曇り空のため、本気で視界が悪い。
このまま進むのはどう考えても得策とはいえない。

ハルカ 「フエンに向かうなら、ここを通らない方が近いわね」

少なくとも、ここから西に向かえばロープウェイがある。
そこに行けば簡単に登れるはずだ。
私はそこへ向かうことにした。





………………。





ハルカ 「……」

本命のロープウェイ乗り場。
そこには、とてつもなく『ウザイ』赤服どもがたむろしていた…。
占領されているといっていい。
あのまま行っても絶対通してくれそうにない。
全員ぶちのめしてやろうかと思ったが、人数が結構いる上、後から沢山来られても困る。
何よりも、目立ちたくなかった。
下手に捕まって、お約束のコースに行きたくはないので、ここは無視を決め込むことにした。
幸い、他にも道があるからだ。



………。



ハルカ 「…ふぅ、さすがに暑いわね」

中はかなりの熱気で、まさに『ほのおのぬけみち』。
地面からかなりの水蒸気が出ており、靴が焼けそうである。
しかしながら、ここを自転車で突っ切るのはやや危険と思える。
ポケモンがかなり多いのだ。
しかも炎タイプやら毒タイプやらが多いため、下手にぶつかったら洒落にならない。
というわけで、マッスグマとキャモメを駆使してここはダッシュで突破する。

マグマッグ 「マグマグ…」

ハルカ 「キャモメ、『みずでっぽう』!!」

マグマッグ 「マグー!」

キャモメの『みずでっぽう』を受け、マグマッグはダウンする。
私はそれを確認して先に進む。
一刻も早くここを出なければ。



………。



ドガース 「ドガ〜…」

ハルカ 「マッスグマ、『ずつき』!!」

マッスグマ 「グマッ」

ドガースを倒して、さらに先へと進む。
これで何体を倒しただろうか?

マグマッグ、ドンメル、ワンリキー、ドガース…たまにベトベター。
ひたすら戦い続け、すでにこちらのポケモンはほぼ全員が火傷なり毒にかかっていた。
持ち物である程度は治しているが、そろそろ底をつく。
私はなおも出現するマグマッグを撃破して走った。

ハルカ 「…もうすぐ、出口!」

私は光の差し込む先を見据える。
ようやく出口だ。
かれこれ2時間はこの中にいたため、正直意識が朦朧としている。
私はその場を抜け出すと、呼吸を変化させる。
空気の密度が急に変わったため、呼吸法によって酸素を体に多く含ませているのだ。
数分ほど深呼吸し、私は息を整える。
今度は急に寒く感じる。
また気候が違ってきている、どうにもこの辺りは気候が急激に変化している気がする。
私はまだ山道の残っている道路を歩き、やや広い道路に出た。
それでも、山道としてはさらに登っている気がする。
気候が変化するのもわかる気がした。
ここは間違いなく高山地帯だ。
私は草むらを避けて歩き、その先に小屋を見つけた。
家と言うにはやや小さく、小屋と言う方がしっくりくるだろう。
私は空を見上げ、日が落ち始めていることに気付く。
ポケナビで確認しても、フエンタウンは……。

ハルカ 「…げっ!?」

私はここでとんでもないことに気付いた。
目指しているはずの『フエンタウン』…ここからだと全くかすりもしなかったのである。
この先にあるのは『ハジツゲタウン』、そしてその先は『りゅうせいのたき』、その更に先は何と…カナズミシティである。

ハルカ 「ここに来て逆走してどうする!!」

さすがにここからまた『ほのおのぬけみち』に戻るのは洒落にならない。
とりあえず、この小屋で休ませてもらおう。
まさか私がこんなミスするなんて…。

ハルカ 「絶対マグマ団の呪いね…今度会ったら絶対ぶちのめす!」

あくまでポケモンバトルで、だが…。
私は大きな脱力感とともに、その小屋を尋ねることにした。
そして、そこに住んでいる気のいいお婆さんに今夜は泊めてもらうことになったのだとさ…。





………………。





と言うわけで、今回はポケモンたちのお話です。
どういう事か、道を間違えて進んでしまったハルカご一行。
『ほのおのぬけみち』で散々、毒、火傷を受けたポケモンたちは今夜の泊まり先の家主である、『けんこうばあさん』の家で静養することになった。
ハルカは疲れた体を休めるためにいち早く休み、ポケモンたちは全員小屋の庭で体を休めていた。

マッスグマ 「…はぁ」

ワカシャモ 「大丈夫? 火傷酷かったみたいだけど」

ワカシャモはマッスグマを心配してそう近づく。
ちなみにワカシャモも毒にかかっていたので、正直安心と言うわけではない。
全員が、そんな感じでぐで〜っと体力を消耗しているのだ。

マッスグマ 「ワカシャモちゃんは、火傷にならないからいいよね〜」

ワカシャモ 「そりゃ、炎タイプだからね…でも毒にはやっぱりかかっちゃうし、そう言う点ではクチートちゃんが羨ましいかな」

クチート 「うん? でも私も火傷しちゃうから、やっぱりどっちもどっちだと思うけど〜」

そう言いながら、クチートはニヘラと笑う。
自然な笑みなので、悪意は全くない。

ラクライ 「ふ〜…でもこの辺りって本当に涼しいよね〜。『ほのおのぬけみち』は酷かったから」

背中を伸ばしながらラクライはそう言う。
ラクライも火傷していた為、やや前足を庇っているようだった。

ラクライ 「う〜…まだちょっと足が痛いよ…」

キャモメ 「だったら、冷やしてあげましょうか? 今日覚えたばかりの技ですけど…」

そう言って、キャモメは口から白い霧を出し始める。
そう、その名の通り『しろいきり』と言う技である。
この技は本来、能力を下げられないようにするための技だが、氷タイプの技でもあるため、体を冷やすのにも使うことができるのだ。

ラクライ 「わ〜涼し〜い♪ ありがとキャモメく〜ん☆」

キャモメ 「あ、いえ…」

ラクライはキャモメにじゃれ付く。
特に深い意味はないのだが、ラクライの喜びの表現である。
キャモメはこう言うのに意外と弱いのか、照れていた。
現状、パーティ内で唯一の男だけに、気苦労も多いのだ。

コノハナ 「はぁ〜…落ち着きますね〜…」

コノハナは正座しながら夜空を見ていた。
いつもながら落ち着いた女性である。
それを見て、ワカシャモはあははと笑う。

ワカシャモ 「…でも本当に綺麗な星空だね〜」

マッスグマ 「うん、あの星にもポケモンはいるのかなぁ…?」

ラクライ 「そうだね〜いるかもね〜…うんうん、ロマンだね♪」

クチート 「でもお腹が空いてきたわ…早くハルカさんの作ってくれた食事が食べたいわね〜…」

ワカシャモ 「ふふ、もうクチートちゃんったら…」

ワカシャモが笑うと、皆も口を揃えて笑い始める。
こう自然に笑えるのは本当に皆にとって嬉しいことだった。
改めて、仲間として絆が高まりつつあることを、ワカシャモは感じていた。

コノハナ 「でも、本当にお腹が空いてきましたね…」

ラクライ 「うんうん! そろそろ夕飯の時間だよきっと!」

ワカシャモ 「そうね、本当にそうかも…あ、ほら!」

ワカシャモが小屋の方を見ると、ハルカが夕飯の用意を持ってきていた。
こうして、ポケモンたちは夕飯を食べ始める。
明日もまた、色んな体験が待っているのであろう。
ポケモンたちは、そんな中ただ笑いあった。



…To be continued




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