Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




POCKET MONSTER RUBY



第23話 『ふたつの転機』




ドードリオ 「ドードーリオーーーー!!!」



ハルカ 「…ぽけぷべぺぷちゃべ! はぶらばら! あびぷ…かぷた……ぴぎょえっ!?」

某日、某時刻、某鳥ポケモンに起こされる。
寝ぼけて、最高に長い断末魔の叫び声をあげてしまったようだが、やはり気にしない。
寝ぼけ眼で時刻を確認すると、6:30。
部屋はいつもの…ワンボックス・ルームではやはり無かったが、今日は何だか清々しかった。

ハルカ 「…ん〜、何だか本当にいい朝だな〜」

思わずオススメモードでもやりたくなってしまう…何でいろはには入ってなかったんだろう?
あの何が選ばれるかわからない意味不明の選択肢と、理不尽なまでの神レベルが、かなり楽しかったのに。
…さて、いい加減この町にいるのも最後にしたいので、冗談は終わりにする。
と言うよりも、正直このネタ自体限界がある気が…?

ハルカ 「…さっさと、顔洗って朝食とってジムに行こ」

と言うわけで私は温泉に一度入り、浴衣を返して元の服を着る。
その後、地下の食堂で食事を取って、時刻を確認。
8:30…そろそろ行かないとね。
ちょっとゆっくり過ぎたかもしれない。
しかしながら、ジョギングしながらなら問題ないだろう。
私はポケモンセンターに鍵を返してすぐにジムへ向かった。



………。
……。
…。



ハルカ 「…工事が終わってる」

見ると、私の目の前にはフエンジムが聳えて(そびえて)いた。
どこか古臭いイメージのあるジムで、どことなく暑い。
私はとりあえず正面突破を試みた。

ハルカ 「たのもーーー!!」

いつものやり方で私はジムの門を潜る。
だが、今回はいつもと違った。

ハルカ 「う…! 暑い…!?」

何と、ジムの中はサウナ状態だった。
下から何やら湯気がかなり上がっており、尋常じゃない暑さだ。
しかも、所々ジムの床に開いている穴から水蒸気が勢いよく出てきている。
どう言うギミックなんだか…。
とりあえず、私は湯気で視界の悪いジムの床を踏みしめていく。



………。



ハルカ 「…?」

アスナ 「待ってたわよハルカちゃん!」

一番奥まで行くと、すでにフィールドラインが引かれている部屋にたどり着く。
どうやら、ここがバトル上らしい。
アスナさんは、すでにリーダーサイドに立っていた。
その表情からはかなりの自信が読み取れる。
何か、策があるのかしら?

ハルカ (…まさかここで戦うとはね)

正直、予想していなかった。
このフィールドは、蒸気が上がってかなり空中の視界が悪い。
ペリッパーをメインで戦おうとしていただけに、さすがに気にしてしまう。

アスナ 「…一応聞くけど、調子は万全?」

アスナさんは自信満々の笑みを絶やさない。
だけど、負けるつもりはない、私も自信満々に答える。

ハルカ 「例え万全じゃなくても、負けるつもりはないですから!」

アスナ 「…さすがに自信満々ね、そうでなくっちゃ」

ミヨ 「それでは、お二方…もう初めてもよろしいですか?」

ハルカ 「ミ、ミヨさん!? どうしてここに?」

ミヨ 「今回、私が代理で審判をさせてもらいます…ちゃんと資格は持っていますので、ご心配なく」

それは驚いた。
ミヨさんがポケモンバトルの審判資格を持っているなんて。
あれって、結構競争率高いから、取るの大変って聞いたことあるけど。
ミヨさんがねぇ…まぁとりあえず準備はOKなので私は大きな声で答える。

ハルカ 「チャレンジャー・サイド、準備OKですよ!」

アスナ 「リーダー・サイドも問題ないわ!」

ミヨ 「それでは、これより第271回! フエンジムでのジム戦を行います!」
ミヨ 「互いに紹介は必要ないようなので、その辺りは省略いたします!」
ミヨ 「まず、ルール確認を、使用ポケモンは3体! 道具の使用は禁止します!」
ミヨ 「ポケモンの交換は基本的に自由とし、図鑑使用もデータ閲覧のみ認められます!」
ミヨ 「それでは、質問はありますかハルカさん?」

ハルカ 「…いえ、ありません」

私がそう言うと、ミヨさんは手を上げ。

ミヨ 「それでは、ジムリーダー! 最初のポケモンを!!」

アスナ 「行くわよ…マグ!!」

ボンッ!

マグ 「マッグ!」

ハルカ 「出た…『マグマッグ』だ」

私は念のために図鑑で確認することにした。


ポケモン図鑑 『マグマッグ:ようがんポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.7m 重さ:35.0Kg タイプ1:ほのお』
ポケモン図鑑 『体の中では灼熱の溶岩が渦巻いているが、冷えると固まってしまい、崩れた体が小さくなっていく』


見た目はまるでナメクジのようにも見えるポケモンだが、実際はそんなに可愛い物ではない。
体の表面は完全に溶岩のように熱く、触っただけでも『やけど』してしまうほどだ。
事実、『ほのおのぬけみち』で何度火傷になったことか。
触るのが怖いのでもっぱらキャモメ、ペリッパーで撃退していた。
今回は長丁場も考えなければならない、だとしたら…ここでまず出すポケモンは。

ミヨ 「それではチャレンジャー! 最初のポケモンを」

ハルカ 「行けっ、『ペリッパー』!!」

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜」

水タイプのペリッパー。
いかに『ほのおのからだ』とはいえ、『みずでっぽう』があれば怖くはないはず。

アスナ 「…成るほど、ちゃんとセオリー通りね」
アスナ 「でも、私だってそんな当たり前のことは知っているんだよ?」

ハルカ 「……」

セオリー通り。
確かに、それは教科書通りと言うことなのだが…。
それは当たり前のことで、誰でも知っていると言うこと…つまりは。

ハルカ (対策もあると思った方がいいわね…これは)

ただ単純に水タイプで勝てる…何て言うのは虫が良すぎるのかもしれない。

ミヨ 「それでは、試合を始めます! Ready…Go!!」

ハルカ 「よし、まずは出たとこ勝負! ペリッパー『みずでっぽう』」

アスナ 「マグ『ひかりのかべ』よ!!」

ペリッパー 「ペリー!」
マグ 「マグッ!」

パァァッ! ビシャァァァッ!!

ハルカ 「何っ!?」

いきなり私は遠距離から『みずでっぽう』を指示するが、距離が遠すぎたせいで止められてしまった。
先制で攻撃したにも関わらず、マグマッグの『ひかりのかべ』が見事に『みずでっぽう』を止める。
ちょっと、いきなり過ぎたかしら…でも、これでしばらく攻撃が遮られてしまうようね。

ハルカ (…まずいわね、予想以上に楽には行かないみたい)
アスナ (迷っている…どうやら、才能はあっても知識はそんなにある方じゃないみたいね)

ハルカ 「ペリッパー、退がって!!」
アスナ 「マグ『リフレクター』よ!!」

ペリッパー 「!」
マグ 「マッグ!」

ポォォォォッ!

私がペリッパーをボールに戻すと、マグマッグは『リフレクター』と言う技を使う。
一体…あの技って?
見た所、壁が二枚重なって見える。
まずは防御を固めようってことかしら…?
とりあえず、私は次のポケモンを出すことにした。

ハルカ 「行け『ライボルト』!」

ボンッ!

ライボルト 「ラーイッ!!」

次に出したのはライボルト。
マグマッグはスピードが遅い。
ここはスピードで撹乱よ。

アスナ 「電気タイプか…スピードはありそうだけど、そう上手く行くかしら?」

ハルカ 「ライボルト『でんじは』!!」

ライボルト 「ラーイッ!」

ビビビビビッ!!

マグ 「マグッ!」

マグマッグの前にあった壁は『でんじは』に反応せず、直撃する。
マグマッグは麻『まひ』し、鈍い動きがさらに鈍くなった。

アスナ 「…マグ、『かえんほうしゃ』!!」

マグ 「マグーー!!」

ハルカ 「避けてライボルト!」

ライボルト 「ライッ!」

マグマッグの攻撃にライボルトは敏感に反応する。
辛うじてかわすが、その火力に驚く。
タイプ一致とはいえ、かなり強力ね。
さすがにキヨミさんのヘルガーとは比較にならないけど、それでも直撃したら危険だわ。
だからと言って遠距離攻撃のないライボルトではいずれ貰う可能性がある。
ここは消耗戦よ、相手の体力まず奪う!

ハルカ 「ライボルト、『にらみつける』!」

ライボルト 「ライッ!」

ギンッ!

マグ 「マグ…!」

ライボルトは鋭くマグマッグを『にらみつける』。
この技は相手の防御を甘くする技だ。
睨みに怯んで、回避や防御をおろそかにする…と言うのだろうか?
正直イマイチ何故かはわからない。
だが、これでマグマッグは防御力が低下したはず!

ハルカ 「ライボルト『でんこうせっか』よ!」

ライボルト 「ライッ!」

アスナ 「マグ『かえんほうしゃ』!」

マグ 「マグーーー!!」

ライボルトが一瞬速く動く。
マグマッグの『かえんほうしゃ』を『でんこうせっか』の高速動作で回避し、一気に懐に突撃する。

ガキィッ…!!

ハルカ 「…く!?」

ライボルト 「ライッ…!」

またしても壁に止められる。
低威力の攻撃じゃ突破できないか…?

アスナ (壁が効いている時間はもうない…今の内に少しでダメージを与えないと!)
アスナ 「マグ、『かえんほうしゃ』!」

マグ 「マグーーー!!」

ハルカ 「ライボルト避けて!!」

ライボルト 「!!」

ゴオオオオオオゥゥッ!!

接近戦でマグマッグの『かえんほうしゃ』が放たれる。
さすがのライボルトも反応しきれずに貰ってしまう。

ライボルト 「…ライッ!」

ハルカ 「反撃できるなら今よ、『スパーク』!!」

ライボルトの状態を確認し、指示を出す。
だが、明らかに反応が遅れている。
間違いなく効いているわね…。

ライボルト 「ラーイッ!!」

アスナ 「迎え撃ってマグ! 『かえんほうしゃ』!!」

マグ 「マグーーー!!」

マグマッグも『かえんほうしゃ』を撃ってくる。
だが、連発しすぎたせいか、少々威力は衰えている。
これなら、避けられる!

ゴオオオオッ!!

ライボルト 「ライッ!!」

アスナ 「あっ!?」

ライボルトは体を帯電させ、まさに瞬速とも言える動きで、マグマッグの視界から消える。
だが、単純に接近戦で横に飛んだだけだ。
いきなりのことだったので、相手にとっては消えたように見えてもおかしくないだろう。

ハルカ 「行っけーーー!!」

ライボルト 「ラーーーイッ!!」

高らかに吼えてライボルトは突撃する。
壁を突き破って『スパーク』がマグマッグに直撃した。

マグ 「マグーーー!!」

マグマッグは後方へと派手に吹っ飛ぶ。
やったかしら!?

マグ 「マグッ!」

ハルカ 「…く、一撃じゃ無理だったか」

私はこの機を逃さない。
一気に攻め落として少しでも有利にしないと。

ハルカ 「ライボルト『スパーク』よ!」

ライボルト 「ラ、ライッ!」

ライボルトは答えるも、元気がない。
まさか…。

アスナ 「マグ『スモッグ』よ!」

マグ 「マグッ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

マグマッグは『スモッグ』で辺りを煙に覆う。
この技は相手を毒にしやすい技だ。

ハルカ (まずいわ、『やけど』している上に『どく』までもらったら!)
ハルカ 「ライ…」
ライボルト 「ライーーーッ!!」

だが、すでに『スパーク』の指示を受けているのでライボルトは突っ込んでしまう。
しまった…!

バチバチバチ!

煙の中に突撃するライボルト。
電気が煙に伝わって帯電してしまっている。
ど、どうなったのよ?

アスナ 「……」



………。



次第に煙が晴れる。
そこに見えたものは…。

マグ 「……」
ライボルト 「……」

ミヨ 「両者戦闘不能!」

ハルカ 「…く」

だが、ある意味これで良かったのかもしれない。
ライボルトがひとりでも持っていってくれたのなら、こちらとしては有利になる。
壁の効力も、もう消えているようだ。

ミヨ 「ジムリーダー、次のポケモンを!!」

アスナ 「よくやったわ、マグ……さぁあなたの出番よメグ!!」

ボンッ!

メグ 「マグー!」

マグマッグをボールに戻し、次に出てきたのはまたマグマッグ。
しかしながら、同じ技を使うとは限らない。
十分に警戒した方がいいだろう。

ハルカ 「任せるわよ、『ワカシャモ』!!」

ボンッ!

ワカシャモ 「シャモ!!」

あえて、私は最後の1体を見せる。
どうせ、アスナさんは予想していたことだろうから。

ミヨ 「それでは、Ready…Go!!」

ハルカ 「ワカシャモ、『にどげり』よ!!」

ワカシャモ 「シャモッ!」

まずは接近戦を挑む。
ワカシャモは炎タイプなので『やけど』することはない。

アスナ 「メグ、『かえんほうしゃ』よ!」

メグ 「マグーーー!!」

ゴオオオオオッ!!

ハルカ 「かわして!」

ワカシャモ 「シャモッ!」

さすがに反応は速い。
伊達にキヨミさんのヘルガーと二度も戦ったわけじゃないわ!
あの『かえんほうしゃ』に比べれば、この程度…。
ワカシャモは横によけて間合いを詰める。
そして、左右で回し蹴りを二度浴びせた。

ドガァッバキィッ!!

メグ 「マッグ!!」

アスナ 「メグ、しっかり!!」

直撃したはずだが、まだまだと言った感じ。
やはりワカシャモの攻撃力じゃ辛いのか…
だけど、それを嘆いている暇はない。

ハルカ 「ワカシャモ、一旦間合いを放して『ビルドアップ』!」

ワカシャモ 「シャモッ! シャ〜モッ!!」

アスナ 「メグ、『あくび』よ!!」

ハルカ 「!?」

まずい! 確かあの技は眠らせる技だ。
時間は少しかかるが、確実に眠りに落とす技。
ワカシャモは『ビルドアップ』をしているのでまともに『あくび』を浴びてしまった。
そもそもあの『あくび』という技は、そのままポケモンが『あくび』をする技で、その際に生じた特殊な空気で相手を包んで眠りに落とすと言う技だ。
どうも遅効性のようで、すぐには眠らないが、ジワジワと眠りに落ちていくため、タイミングを計ることが重要になる。

ハルカ 「ワカシャモ、『でんこうせっか』よ!!」

ワカシャモ 「シャモー!」

ドガァッ!

メグ 「…マグ!」

マグマッグはまだ耐える。
だけど懐は取っている、このまま『にどげり』で…。

ワカシャモ 「ZZZ〜…」

ハルカ 「って、ああ〜もう眠ってる!!」

アスナ 「チャンス! メグ『にほんばれ』よ!!」

ハルカ 「な、何それ…?」

知らない技だ。
しかし、効果はわかる気がした。
マグマッグの口からとてつもなく熱い球体が吐き出され、空に上がる。
と言っても、当然室内なので屋根の辺りで止まる。
だが、それでもかなりの熱量のようで、部屋の中に『強い日差し』が差し込んだ。
まさか…人工太陽!?
あ、人工じゃなくてポケモン工か…。

アスナ 「今よメグ! 『かえんほうしゃ』!!」

メグ 「マグーーーー!!」

ゴゴゴゴゴゴオオオオオッ!!!

今までにない超強力な『かえんほうしゃ』が放たれる。
な、何で急に!?

ハルカ 「ワカシャモ!!」

ワカシャモ 「Z〜…シャモッ!?」

間一髪ワカシャモは目を覚ます。
だけど、もう『かえんほうしゃ』が来てる!

ハルカ 「ワカシャモ、防御!!」

ワカシャモ 「シャモッ!」

ゴゴゴゴゴオッ!!

ワカシャモは両腕を交差して『かえんほうしゃ』のダメージを少しでも抑えようとする。
だけど、それでもかなりダメージが大きい。
炎タイプのワカシャモが押されてる…。

ハルカ (どうやら…あの『にほんばれ』って、炎タイプの技の威力を上げる効果があるらしいわね)

そうでなければ納得できない。
しかし、そうなればこっちにも作戦はある。

ハルカ 「ワカシャモ動けるわね? 『ひのこ』よ!!」

ワカシャモ 「シャモッ!」

ゴゴゴゴッ!!

いつもなら低威力の『ひのこ』だが、今回は威力が強い。
やはり、あの日差しはこちらも恩恵が受けられる。
相手がマグマッグとはいえ、それなりに効いているようだ。
ここは一気に畳みかけよう!

ハルカ 「ワカシャモ、『にどげり』!」

アスナ 「メグ『かえんほうしゃ』!!」

メグ 「マグーーー!!」

ハルカ 「それじゃ同じパターンよ! かわせワカシャモ!」

ワカシャモ 「シャモッ!」

メグ 「マグッ!?」

ワカシャモは『かえんほうしゃ』の上に跳んでかわす。
しかもギリギリの低空ジャンプで。
そして、思いっきりマグマッグの頭部に飛び蹴りを一発。
そのままの勢いで後回し蹴りを命中させた。
間違いなくこれでダウンだ!

メグ 「マグ〜……」

ミヨ 「マグマッグ戦闘不能! ワカシャモの勝ち!!」

アスナ 「…やるしかないよね、後はあなただけ…行けっ『コータス』!!」

コータス 「コーーー!!」

ピー!! モクモクモク!!

いきなり出てきたのは亀のポケモン。
しかしながら、突然煙を甲羅やら顔から勢いよく噴き出す。


ポケモン図鑑 『コータス:せきたんポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.5m 重さ:80.4Kg タイプ1:ほのお』
ポケモン図鑑 『山を掘って石炭を見つけては、せっせと甲羅の空洞に入れて燃やすポケモン。襲われると黒い煙を出して逃げる』


ハルカ (見た所…スピードは遅そうね。でも火力はありそう…)

こちらの残りは2体。
ワカシャモも『ビルドアップ』が継続しているので、かなり攻撃力と防御力がアップしている。
願わくば、このまま押し切れワカシャモ!

ミヨ 「それでは、Ready…Go!!」

アスナ 「コータス『のしかかり』!」

ハルカ 「ワカシャモ、後に避けて『ビルドアップ』!」

コータス 「コー!!」

コータスは鈍足の足で走って近寄ってくる。
そして、一気にワカシャモの頭上まで飛び上がって『のしかかり』を使う。
が、遅すぎる。
遠距離からいきなり狙う技じゃないわね。
ワカシャモは優々とかわして『ビルドアップ』を更に行う。

ワカシャモ 「シャモ〜ッ!!」

ワカシャモの筋力がより一層強くなる。
これで、通常状態の倍位の強さになる、正直圧倒的なLv差になっていると言っていい。
今のワカシャモなら、80kgのコータスでさえリフトアップするだろう。

アスナ (く…このままじゃまずい! こうなったらタイミングは速くても…やるしかない!)
アスナ 「コータス『のろい』よ!!」

コータス 「コー!!」

またしても知らない技が宣告される。
コータスを見ると、何やら禍々しい空気が渦巻いている。
そして、何やらコータスの体が一瞬大きく見えた。
一体あの技って…?

ハルカ 「ともかく…行けワカシャモ! 『でんこうせっか』!!」

ワカシャモ 「シャモッ!」

ガツンッ!

ハルカ 「はぁっ!?」

ワカシャモ 「シャ、シャモ…!!」

鈍い音がした。
どうやらコータスは甲羅に篭ったらしい。
それでワカシャモの体が見事に甲羅にぶつかったと…。
しかし、恐ろしい固さね…これは甘く見すぎていたのかもしれない。

アスナ 「今よコータス『オーバーヒート』!!」

ハルカ 「へ?」

いかにも熱そうな技が宣告される。
その瞬間、コータスの体をとてつもない熱が覆っていった。

コータス 「コーーーーッ!!!」

凄まじい熱量が放出される。
コータスの周りに爆炎が上がるほどだ。
そして、次の瞬間。

ズッドオオオオオオオンッ!!!!

ワカシャモ 「シャモーーーー!!」

ハルカ 「ワ、ワカシャモ!?」

ズダンッ! ズシャァァァァァァァァァァァッ!!!

凄まじい勢いで、私の側まで吹っ飛ぶワカシャモ。
完全に失神していた。
全身が黒焦げになるほどの熱量…そして一撃。
あ、あんな技があるなんて…今のはヘルガーの『かえんほうしゃ』を上まっていたわよ…!」

ミヨ 「ワカシャモ『戦闘不能』! コータスの勝ち!」

ハルカ 「……」

私は無言でワカシャモを戻す。
そして考える。
いくらペリッパーでもあの威力を耐えられるか?
幸い、『にほんばれ』の効力はさっきの戦いで消滅した。
次に打つ時は、かなり威力が下がっているだろう。
回復能力のあるペリッパーなら多少は持久戦も考えられるけど。
『のろい』と言う技も気になる。
一体何が起こったのか?
少なくとも『ビルドアップ』を二度も行ったワカシャモの攻撃が全く効いていなかった。
普通なら吹っ飛ぶ位のことはあるはずなのに。
まさか…防御をあげる技?
明らかに重量が上がっている感じに見えた。

ミヨ 「何をしているんですか? 挑戦者、最後のポケモンを!!」

ミヨさんが強くそう言う。
私は一旦考えるのを止めた。
そして、最後まで結局温存したこの子を出す。

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜!」

ミヨ 「それでは、Ready……Go!!」

ハルカ 「…く、ペリッパー『みずでっぽう』!!」

アスナ 「コータス『まもる』!!」

ペリッパー 「ペリッ!」

コータス 「コー!」

バシャアアアッ!!

コータスの周りにフィールドのような膜が覆い、『みずでっぽう』を弾く。
あれは、ありとあらゆる攻撃を無効化する『まもる』だ。
ペリッパーも使える技だが、あの技は連発できない。
一度使うと、効力ががくっと落ちる。
失敗する確率がぐ〜んと上がるのだ。
もちろん、失敗した後ならまたすぐに使いなおすことも出来る。
使い勝手のいい技だが、ちゃんとメリットを考えて行わないと意味がない。
つまり、あのコータスは少なからず長期戦に持ち込もうとしている気がした。
なら、こちらもそれに対抗してみよう。

ハルカ 「……」

アスナ 「……」

ハルカ 「…?」

アスナ 「……」

こちらが待ってみるも、アスナさんが動く様子がなかった。
待たれている…のかな?
ともかく、このままではまた『まもる』を使うための時間を稼がれてしまうことになる。

ハルカ 「ペリッパー『みずでっぽう』!」

アスナ 「コータス『えんまく』!!」

ペリッパー 「ペリ〜!」

コータス 「コー!」

モクモクモク!!
バシャアァァァッ!!

コータスは『えんまく』をペリッパーに向けて放つが、ペリッパーは的確に攻撃を命中させる。

アスナ 「…しまった!? 『するどいめ』!!」

アスナさんはここに来て痛恨のミスをする。
そう、ペリッパーの特性『するどいめ』だ。
ペリッパーやキャモメなんかは、目が凄くいい。
『すなかけ』や『えんまく』をされても的確に攻撃を命中させることが出来る。
つまり、命中率の低下が無い…そう言っていいだろう。
しかしながらこちらから外しては全く意味が無いのだけどね…。

ハルカ 「ペリッパー畳み掛けるのよ『みずでっぽう』!」

アスナ 「コータス『まもる』!!」

ペリッパー 「ペリッ!」
コータス 「コー!」

またしても守られる。
段々と消耗戦になってくるわね。
一体何を考えて…?

ハルカ (このままじゃ、『みずでっぽう』の威力も段々と下がってしまう…連発は避けた方がいいかしら?)

少なくともアスナさんから攻撃してくる様子が全く無いのが気になる。
こちらの性格を読み取っての行動だと思うけど、何かある気がして…。

ハルカ 「でも、私はチャレンジャーよ! 行ける所まで行く! ペリッパー『つばさでうつ』!!」

アスナ (来た! 待った甲斐があったわ!!)
アスナ 「コータス『メロメロ』!!」

ペリッパー 「ペリッ!?」

コータス 「コ〜♪」

ハルカ 「な、何!?」

突然、ペリッパーの動きが止まる。
コータスの近くまで行った途端、コータスの『メロメロ』と言う技でペリッパーは動きがおかしくなる。

ペリッパー 「ペリ〜♪ ペリ〜♪」

アスナ 「かかったわね…これで形勢逆転よ!!」

ハルカ 「い、一体何なの?」

意味がわからない。
何故ペリッパーは攻撃を止めたの?
混乱…だろうか?

アスナ 「混乱しているようねハルカちゃん…折角だから教えてあげるわ」
アスナ 「今の『メロメロ』と言う技は、異性の相手を文字通り…『メロメロ状態』にしてしまう技なの」

ハルカ 「メ、メロメロ状態〜?」

成るほど…つまりペリッパーは、あのコータス(♀)に現(うつつ)を抜かしていると!?

アスナ 「あの状態じゃ、ハルカちゃんの声はほとんど届かないわ! 悪いけど、貰ったわね!」
アスナ 「コータス! 『のろい』!!」

コータス 「コー!!」

またしてもコータスが『のろい』を行う…あの技もよくわからない。

ハルカ 「ペリッパー『みずでっぽう』!!」

ペリッパー 「ペリ〜♪」

ダメだ! メロメロで技が出せなかった!!
って、冗談じゃないわよーーー!!

アスナ 「これで終りにしましょう! コータス『のしかかり』!!」

コータス 「コー!」

ハルカ (? コータスの動きがやけに遅い…ダメージはあるだろうけど)

何だか、体の重量その物が上がったようにコータスはのろのろと動く。
まさか…『のろい』って。

ハルカ (重量を上げて、攻撃力、防御力を増加させる技!?)

単純に『ビルドアップ』と同じような効果だが、あの技は素早さも明らかに下がっている。
デメリットがあるんだ…。
だとしたら、まだ勝機はある!!

ハルカ 「こらっペリッパー!! いつも皆に囲まれているくせにそんな♀に惹かれてんじゃないわよ!!」

ペリッパー 「ペ、ペリッ!?」

私の喝にペリッパーが反応する。
どうやら…効いたようね。

アスナ 「もう遅いわ! 行けコータス!!」

ハルカ 「遅くない! ペリッパー『まもる』!!」

アスナ 「あっ!?」

ピキイィンッ!

コータス 「コー!?」

ドスンッ! ゴロゴロ!!

派手な音をたててコータスは『のしかかり』を失敗する。
当然空中に一旦跳んで圧し掛かるため、コータスは地面に落ちるのだ。
そして、コータスは運悪く背中から地面に落ちてしまう。

コータス 「コ、コ〜!!」

アスナ 「げっ、何やってるのコータス!?」

ハルカ 「今度こそ行くわよ、ペリッパー『みずでっぽう』!!」

ペリッパー 「ペリーーー!!」

バッシャアアアアァンッ!!

コータス 「コ、コ〜……」

ミヨ 「…コータス戦闘不能!! よって勝者、チャレンジャー・ハルカ!!」

アスナ 「…あ」

ハルカ 「…か、勝った」

ようやく勝利が宣告される。
苦戦はある程度予想していたけど…正直ここまで苦労するとは思ってなかった。
アスナさんを軽視したことはないけど、炎一辺倒なら最終的にはどうにかなるとは思っていたからだ。
でも、今回の戦いは本当に苦戦だった。
今まででもジム戦は毎回苦戦した方だけど、今回は一瞬負けるかと思った。
この『私』が、『負け』ると思ったのよ!? あの世界異種格闘技大会決勝でさえ、『負け』るなんて思いもしなかったのに。

ハルカ 「…ふ〜、疲れた」

アスナ 「…あははっ、やっぱハルカちゃん強かったな」

ハルカ 「あ、あはは…アスナさんだって、才能ないなんて…全然強いじゃないですか!」

アスナ 「そ、そうかな…でも、それはきっとハルカちゃんに会えたからだと思う」

そう言ってアスナさんはその場に座り込んでしまう。
私はアスナさんの近くまで歩く。

ハルカ 「…私がきっかけでも、結局はアスナさんとそのポケモンたちの力ですよ」
ハルカ 「自信を持ってください、アスナさんならきっといいジムリーダーになれます」

アスナ 「…うん、でもいいんだ『最後』だと思ってたから」
アスナ 「私、ジムリーダーは止める!」

ハルカ 「え!? でも、それじゃあ!」

アスナさんは首を振って強く言う。

アスナ 「今は、まぁ…次の人が来るまでは私がやるけど」
アスナ 「どっちにしても今年のリーグが終わり次第、私は普通のポケモントレーナーになる!」
アスナ 「そして、今度は…ハルカちゃんと一緒に戦いたいな!」

ハルカ 「…え? 私、と?」

アスナ 「そうそう、いつになるかわからないけど…約束して!」
アスナ 「次に会ったら、今度は一緒に力を合わせてダブルバトルでもやりましょ!!」
アスナ 「…できれば、敵同士じゃなくて…ね」

ハルカ 「…わかりました、約束します」

私はそう言ってアスナさんに手を差し伸べる。
アスナさんはすっきりした笑顔でその手を取る。
そして立ち上がり、アスナさんは私にある物を渡す。

アスナ 「おめでとうハルカちゃん…これが『ヒートバッジ』だよ」

ハルカ 「…ありがとうございますっ! これで…これでようやく」

アスナ 「?」

ハルカ 「あ、いえ…こっちの話です! その…本当に、今日はありがとうございました!!」

私は深々と頭を下げる。
色んな意味を込めて、礼が言いたかった。
そして、私は改めて次の目標を目に据える。
ようやく…こぎつけた。
次は…本当の意味で私を超える時だ。
待っている人がいる…まずはそのひとりを片付けにいこう。



…To be continued




Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




inserted by FC2 system