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POCKET MONSTER RUBY



第29話 『トウカジム…ジム前哨戦・5番勝負!!』




ハルカ 「……」

ヒュゥゥゥ…。

風が私の頬を優しい撫でる。
今、私はポケモンセンターの屋上南側の塀から地上を見ていた。
トウカシティのポケモンセンターは屋上を開放しており、誰でも上がることが出来る。
建物としては高い方ではないので、危険も少ないからでしょうね。
屋上には数人のトレーナーやら一般人、店員さんがいた。
私は、少し気を紛らわせるためにここにいる。

ハルカ (…昂ぶってるわね、いつもよりも)

大体、ジム戦の前とかはこんな風に昂ぶるのだけれど、今回は特別だった。
気負っているわけじゃないけど、昂ぶりが抑えられなくなってきている。
早く戦いたい…体と気が焦っている。
ダメよ…まだまだ。
私は頭の中で何とか抑えようとする。
だが、返って精神をかき乱すだけのようにも思えた。

ハルカ 「……」

チトセ 「あら、緊張してるの?」

ハルカ 「!?」

後ろから声をかけられる。
振り向くとそこには母の姿があった。
何か楽しそうに微笑んでいる。

ハルカ 「…緊張はしてるわね、さすがに」
ハルカ 「でも、悪い気分じゃないわ…むしろ焦ってるくらい」

私がそう言うと、母さんは口元に右手を当ててクスクス笑う。
そして、優しげな微笑をしたかと思うと。

チトセ 「いいわね、さすが私の娘」
チトセ 「やっぱり楽しみよね、父さんとの戦いは」

そう言って、私の隣に立って母さんは下を見る。
そこには、多くの子供たちが楽しそうにポケモンたちとはしゃいでいる姿が見えた。

チトセ 「ハルカ、あなた…どうしてポケモントレーナーになったの?」

ハルカ 「…え?」

唐突な質問だった。
だが、意図は理解できた。
私は、子供の頃あれほどポケモンを避けていたのだ…それがどうしてトレーナーになったのか。
だけど、母さんは理由を知っているはずだった。
知らないはずが…ない。

ハルカ 「どうして今更? 知らないはずないでしょうに…」

私は母さんと同じように地上を見ながら答える。
母さんは、何も言わなかった。
何を考えているのか…読めない。
むしろ、母さんが私と同じように格闘家だったこと自体、私はこっちに来てから知ったのだ。
何だか、まるで別人のようにさえ感じてしまう。
今まで、私の前では『母らしく』と振舞っていた母が私にとって母だったのだから。

チトセ 「……」

ハルカ 「…私からも質問させてもらうわ、どうして今まで偽ってたの?」
ハルカ 「私の前で母らしくって…それってどうしてなの?」

母さんは少しの間、目を瞑って考えるような仕草を見せる。
風が私たちの髪をかき上げる。
そして、風が収まった所で母さんは目を細めてこう言う。

チトセ 「…ハルカには、私と同じようにはなって欲しくなかった」

ハルカ 「…え?」

それは、まるで懺悔の様に力弱く感じる声だった。
母さんは自分を嫌うように両手で自分の体を抱える。
そして、僅かに震えを見せ。

チトセ 「私は…父さんと会う前、ひとりの戦士だった」
チトセ 「戦うことに生き甲斐を感じ、相手を倒すことが全てだった」

語られる母の過去。
そう言えば、私は母さんの過去を全く知らない。
父さんも話そうとはしなかったし、私も聞こうとはしなかった。
子供ながらに、『聞いてはならない』…そんな気がしたのだ。

チトセ 「127人……」

ハルカ 「…?」

しばらく黙っていたかと思うと、母さんはそんなことを言う。
一体、何のことだろう? 倒した相手の数かしら?
だとしたら、それなりに凄い数だとは思う。
だけど、それなら私の方が遥かに対戦成績は多い。
しかし、母の口からは私でもぞっとするような言葉が出てきた。

チトセ 「私が…今までこの手で殺した人数」

ハルカ 「!? 殺…!」

あまりにも予想できなかった言葉。
母さん自信、まるで恐れるようにその言葉を口にした。
どうして、そんなことを…?

チトセ 「私は、当時ベトナム戦争で兵隊をやっていたのよ…それも暗殺部隊をね」

ハルカ 「ベ、ベトナムゥ〜!? 母さんって日本人じゃなかったっけ?」

チトセ 「そうよ、まぁその辺りは置いておくわ」
チトセ 「とにかく、私はその戦争で、それだけの人間を殺した」
チトセ 「当時、素手で人を殺す術を持っていた私は、特殊部隊の隊長として行動していたわ」
チトセ 「ポケモンたちは戦争に利用されることはなく、単純に人としての戦いが全て」
チトセ 「…私は、格闘家ではないの、ただの戦士」

ハルカ 「……」

あまりのことに言葉がなかった。
まさか、母さんがそんな過去を背負っていたなんて。

チトセ 「ちなみに対戦成績で言うなら、869戦全勝よ」
チトセ 「例え、相手が複数、それぞれが銃器を持っていたとしても、私は負けたことはなかったわ」

ハルカ 「…げ」

私の3倍以上の成績…とんでもないわね。
その内127人が戦争で殺された人ってわけね。

チトセ 「戦争に参加するまでに512戦、同じ相手との戦いは数に入れてないわ」
チトセ 「戦争に参加して、127戦…全て相手を始末したわ」
チトセ 「残りの対戦は、日本に帰ってから格闘技の大会に出て獲得したもの」

ハルカ 「…それで、どうして父さんみたいな平和主義者と出会ったの〜?」

全く接点が思い浮かばない。
どう考えてもポケモン一筋の父さんと、その母さんじゃ惹かれあうことなんて考えられない。
だが、母さんは笑いながら。

チトセ 「…単純に一目惚れだったわ」
チトセ 「あの時、ポケモントレーナーの頂点に立った父さんを見て、それで惚れてしまったの」
チトセ 「後は、力づくって奴ね♪」

最後はかなりお茶らけて言う。
なるほど、この母あって私があるわけだ…。
少し、理解した。

チトセ 「でも、互いに惹かれあって愛し合ったというのは本当よ」
チトセ 「父さんも、私に惹かれてくれたから…結ばれた」
チトセ 「そして、私も足を洗って普通の母親になろう!って、思ったの」
チトセ 「でも、ダメね…やっぱり付け焼刃じゃどうにもならなかった」
チトセ 「あなたは、やっぱり私の娘だったわ…一度決めたら絶対に曲げない」

ハルカ 「…う」

確かに、自分でもそう思う。
私って戦いにおいて臨機応変ではあるけど、その実とても頑固なのよね〜。

チトセ 「でも、あなたはやっぱり父さんの娘でもあったわ」

ハルカ 「え?」

チトセ 「…優しい所とかはそっくり」
チトセ 「私とは、全然違うわよね」

ハルカ 「…や、止めてよ照れるから」

思わず赤くなってしまうのを感じる。
自分で優しいなんて思ったことはない、って言うか普通自分では思わないだろうし。

ヒュゥゥゥ…

風が吹く。
優しい昼の風だった。
何だかくすぐったい…。

チトセ 「そう言えば、ジム戦の時刻はどうするの? 時間はいつでも良いって父さん言ってたわよ?」

ハルカ 「…あ、そっか。う〜ん、私としては昼前にしたい所だけど」

チトセ 「そう、だったら11時くらいでいいかしら?」

ハルカ 「あ、うん…それでいいわ」

そう言うと、母さんは身を翻して階段の方に向かう。
そして、階段の前で立ち止まると、振り返る。

チトセ 「…あなたは優しい娘だから、想うことはたくさんあると思うわ」
チトセ 「でも、自分の信じたことを真っ直ぐ突き進みなさい! あなたなら、きっと父さんを越えられるわ!!」

そう言って、母さんは激励してくる。
あまりにも急だったので、ちょっと戸惑ってしまう。
でも、不思議と今まで昂ぶっていた気持ちは治まっていた。
母さん…まさか私のために?

ハルカ 「…安心して! 私はそのためにここへ来たんだから!!」

そう言って、私は右拳を頭の所まで上げてガッツポーズを取る。
それを見て母さんは満足そうに。

チトセ 「ええ、期待してるわ」

そう言って去っていく。
気がつくと、この場にいるのは私ひとりだった。
気を利かせてくれてた…とは思えないか?

ハルカ 「…ふぅ、まさか母さんがそんな人だったなんてねぇ」

戦争経験者か…マジで驚いたわ。
強いはずよね、そりゃ。
でも、母さん…どうしてそんな戦争に参加しようなんて思ったのかしら?
結局、そのことは聞けなかった。
まだまだ、母さんのことはわからないことだらけだ。



………。
……。
…。



『それから、10分後。トウカジム・センリの自室にて』


チトセ 「ただいま〜」

センリ 「ん、ハルカは何と?」

チトセが帰ってくると、すぐに私はそのことを聞く。
私としたことが、時刻指定をするのを忘れていた。
最も、こちらとしてはいつでも構わないのだがな。

チトセ 「11時にするって言ってたわ」

センリ 「そうか、わかった…いよいよ明日か」

チトセ 「…ふぅ」

チトセは何やら疲れたように近くにあったソファに座る。
珍しいな、あんな顔をするなんて。
私は少々気になってチトセの隣に座る。

センリ 「どうかしたのか?」

チトセ 「ん…ちょっとハルカに昔話をね」
チトセ 「色々と、思い出しちゃったから…」

そう言って、チトセは私に体を預ける。
チトセの頭が私の左肩に当たる。
チトセの温もりがそこから感じられた。

センリ 「昔話…か。まさか、例のことを話したのか?」

チトセ 「ええ…もう、隠してもしょうがないと思ったから」

私は少し黙って考える。
チトセの過去、戦争で戦い続けた戦士。
当時、誰もが恐れた恐怖の暗殺者チトセ。
戦場で出会った者は、例外なく死亡しているため、その正体を知る者はもはや戦争関係者か私位の者。
そして、ハルカ…か。
皮肉な物だな、チトセはハルカに戦う道を進ませたくなかったはずなのに、ハルカはその道を進んで強くなった。
それも、いい意味で。
ハルカは、私たちにとって自分の命以上の宝だ。
特にチトセは、私よりもハルカにより愛情を注いでいただろう。
だからこそ、自分を捨ててまでハルカにとって『普通の母親』になろうと苦労していた。

チトセ 「ごめんなさい…しばらく、このままで」

センリ 「ああ、君の好きなだけ使ってくれ。そのために私はここにいるのだから」

私がそう言うと、チトセは少し眠るように寄りかかった。
忌まわしい過去をわざわざ話したのだ…辛くないはずがない。
特に、ハルカにそれを話すとは…正直思っていなかった。
それとも、それほどハルカは大きな存在になりつつあるというのだろうか?
だとしたら、私が思っている以上にハルカは強いのかもしれない。

チトセ 「……」

センリ (ハルカ、どれほどの力を持っているか…確かめさせてもらうぞ)



………。
……。
…。



バシャーモ 「…ふぅ、ハルカさん遅いなぁ」

ライボルト 「そうだね、もう結構経つけど」

マッスグマ 「……」

グマちゃんは未だに眠ったまま。
私も少し眠った方が良かったかな?
でも、時間はまだ夕方。
あまり時刻にズレがあると、返って体調を崩してしまうかもしれない。

ライボルト 「あ〜暇だなぁ…」

ライちゃんは、相変わらずごろごろしていた。

アノプス 「おっ、やってきたようですぜ!」

アー君(ライちゃんが勝手にそう付けたニックネーム)が入り口の方を爪で差す。
確かにハルカさんと思われる女性が向かってきていた。



ハルカ 「皆、お待たせ! それじゃ一旦戻…」

男性 「あっと、ここにいた! おーいハルカさん!!」

ハルカ 「ん?」

皆を一旦戻そうとすると、急に背後から声をかけられる。
振り向くと、そこにはぞろぞろとエリートトレーナーの服装をした男女6名が。
って言うか、全員見たことがある。
確か、ジムで練習していたトレーナーだ。

男性 「ええと、まずは自己紹介から。俺はノリヒロ!」

そして、続くように。

女性 「私はヒトミ!」
男性 「俺はカズマ」
女性 「えっと、サオリです」
男性 「ヒデキだ、よろしくな!」

と、そして最後の男性が前に出て。

男性 「最後に、一応…俺がこの中じゃ最年長のナオキだ!」

そう言って、右手を差し出してくる。
握手…ということかしら?

ハルカ 「失礼ですけど、何の用でしょうか?」

私は一応握手を交わしてそう言う。
すると、ナオキさんは笑って。

ナオキ 「センリさんと戦うことは知っている。それだけにどんなトレーナーか気になってね」
ナオキ 「単純にその力が気になる…そうしたら、君はどうするね?」

ハルカ 「なるほど…わかりやすくて助かるわ」

私はそう言って笑い返す。
要は、戦えって事ね…。

ハルカ 「で、誰からやるの? それとも全員がかり?」

私はそう言って構える。
もちろん…全員がかりでも負けるつもりはないからね。

ナオキ 「大した自信だ、順番は自己紹介の順…先鋒ノリヒロ! 次鋒ヒトミ! 中堅カズマ! 副将ヒデキ! そして大将は俺とサオリのタッグバトルだ!」
ナオキ 「ルールは特になし…と言いたい所だが、指定してもいいかね?」

ハルカ 「ええ、どうぞ…」

私は軽くそう言う。
余程のことがない限り、滅茶苦茶なルールにはならないでしょうし。

ナオキ 「じゃ、そちらの使用ポケモンは一人に対し1体とさせてもらう!」
ナオキ 「つまり、相手が変わる度にそちらのポケモンを順番に使用してもらう。当然、対戦中の交換は無し。同じポケモンの再使用は認めない」
ナオキ 「もちろん、こちらも使用ポケモンはひとり1体、要はポケモン6体による団体戦だ!」

ハルカ 「へぇ、面白そうね…それじゃあ早速始めましょうか?」

私がそう答えると、周りのスペースを確保し、円状にバトルフィールドを設ける。
ここの広場は広いので、十分に動き回れるだろう。
そして、先鋒のノリヒロさんがまずは私の前に立つ。
確か、最初の部屋で戦ってた人ね、使用ポケモンは…。

ノリヒロ 「よし、行け『ドゴーム』!!」

ボンッ!

ドゴーム 「ドゴー!!」

ハルカ 「出たわね…ええと」

私はとりあえず図鑑で確かめることにした。
う〜ん、どんなポケモンなのかしら?


ポケモン図鑑 『ドゴーム:おおごえポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.0m 重さ:40.5Kg タイプ:ノーマル』
ポケモン図鑑 『木造の家を粉々に吹き飛ばし程の大声を出して相手を痛めつける。丸い耳がスピーカーの働きをする』


ハルカ (声が武器って事か…でも、ダメージのある声なんてあるのかしら?)

もちろん、人間同士の戦いに置いて、声の波長を使うことによって相手に直接ダメージを与えるということも可能ではある。
しかしながら、ポケモンにそんな技が存在するということは、さすがに知らない。
もしあるとしたら、どんな技なんだろうか?

ハルカ (ん、待てよ…そう言えば、パッチールとか言うポケモンが)

私は灰の降る草むらを思い出す。
そこには確かパッチールというノーマルポケモンがいた。
あのポケモンが確か、嫌に騒いでダメージを食らったことがあった。

ハルカ 「なるほど、そういう技もあったわね…よし、ここはあなたの力を見せてもらうわ、『アノプス』行って!!」

ボンッ!

アノプス 「アノッ!!」

びっちびっち!!

まるで跳ねるように前へと躍り出るアノプス。
この子、果たしてノーマルタイプ相手にどこまでやれるのかしら?
少なくとも、まだ技は4つしか覚えてない。
試してみるしかないわね。

ハルカ 「よ〜し、行くわよ! アノプス『ひっかく』!!」

アノプス 「アノッ!」

アノプスはその場から体を仰け反らせるようにして跳ねる。
しかもドゴームの頭上まで飛び上がり、空中から落下のスピードを加算して切りかかる。

ノリヒロ 「ドゴーム『さわぐ』!!」

ドゴーム 「ドゴーーーーーーー!! ドゴーーーーーーーー!!!」

バァンッ!!

何か破裂したかのような凄まじい音。
すると、アノプスが吹き飛ばされていた。

ズシャッ!

アノプス 「アノアノッ!!!」

おお、意外にも効いてない様子。
さすがは岩タイプ! 頑丈さはあるようね。

ノリヒロ 「くそ、さすがに効果は今ひとつか…」
ノリヒロ 「よし、それならドゴーム『ちょうおんぱ』!!」

ドゴーム 「ドゴーーー!! ドゴーーーー!!」

ノリヒロ 「あ、しまった!!」

ドゴームは命令を聞かずに騒ぎ続けている。
あの技はどうやら、一度繰り出したらしばらく命令を聞かないようね。
これはチャンス!

ハルカ 「今よアノプス! ドゴームに『みずでっぽう』!!

アノプス 「アノーッ!!」

アノプスは少しその場で仰け反って口から『みずでっぽう』を吐く。

ズバァンッ!

ドゴーム 「ゴーーー!!」

しかしながら、ペリッパーほどの威力はなく、ドゴームを吹っ飛ばすほどではなかった。
ドゴームは、はっと我に返ったように技を止める。
しまった、アノプスに水技を使わせてもそんなに威力は期待できないようね。

ノリヒロ 「よし、ドゴーム! 今度こそ『ちょうおんぱ』!!」

ハルカ 「わざわざ一度宣言した技を繰り出すなんて、すでに凡策よ!」
ハルカ 「アノプス、かわして『ひっかく』!!」

ドゴーム 「ドッゴー!!」

アノプス 「アノーッ!!」

びちっ!

アノプスは『ちょうおんぱ』を飛び跳ねてかわす。
そしてそのまま、落下しながら『ひっかく』を繰り出す。

ズバァッ!!

ドゴーム 「ド、ドゴ〜…」

アノプス 「アノッアノッアノッ!!!」

びっちびっち!!

まるで笑っているかのようにその場で飛び跳ねるアノプス。
意外にやるじゃない…こりゃ、先が期待できるわね♪。

ノリヒロ 「お見事…さすがセンリさんの愛娘だ」

ハルカ 「いやいや、まぁ今回は運だったという事で」

私はノリヒロさんと握手をして言葉を返す。
そして、次鋒が前に出てくる。



………。



ヒトミ 「次は私! 行けっ『エネコロロ』!!」

ボンッ

エネコロロ 「エネ〜♪」

あれは、確かジムで見た猫のようなポケモン。
可愛い系…というよりも美し系? そんな感じが見て取れた。


ポケモン図鑑 『エネコロロ:おすましポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.1m 重さ:32.6Kg タイプ:ノーマル』
ポケモン図鑑 『マイペースで自由気ままな暮らしを好む。気の向くまま餌を食べたり眠ったりしているので、1日のリズムがバラバラだ』


ハルカ (スピードは速そうね、でもどんな攻撃をしてくるのかしら?)

見た感じ、身は軽そうだが打たれ弱そうだ。
確実に攻撃を当てられるなら押し切れるかもかしれない。
と言うことは…。

ハルカ 「『コノハナ』、あなたの出番よ!」

コノハナ 「コノ〜〜」

コノハナはゆったりとしたリズムで前に出る。
相手が速いなら、こっちはあえて命中の高い技を持つポケモンで勝負よ。

ヒトミ 「手加減無し! まずは先手必勝よ、エネコロロ『たいあたり』!」

ハルカ 「いくら速くてもまだ距離がある、コノハナ『タネマシンガン』!!」

エネコロロ 「エネーー!!」

コノハナ 「コ〜ノ〜〜」

ドゴォッ!!

ハルカ 「で!?」

思いっきり直撃で仰け反るコノハナ。
何で、先に食らうかなぁ…ホントに。
しかし、エネコロロの攻撃はそこまで強力ではなかったようで、コノハナは仰け反っただけですぐに体勢を元に戻す。

コノハナ 「コノ〜」

ズババババババババァンッ!!

エネコロロ 「エ、エネーー!!!」

至近距離でコノハナの『タネマシンガン』が炸裂。
さすがにタイプ一致だけあって、威力は結構高い。
エネコロロはすぐにその場から後ろに吹っ飛ぶ。

ズシャッ!!

エネコロロ 「エ、エネッ!!」

ヒトミ 「大丈夫エネコロロ!?」

どうやら、あれだけ撃ち込んでも倒れない所を見ると、この技はあまり攻撃力が高い技ではないみたいね。
でも飛び道具というのは相手にとって十分プレッシャーになるはず。
特に、さっきの様な反撃を食らっては迂闊に飛び込めないでしょうし。

ヒトミ 「く、エネコロロ『しっぽをふる』!!」

エネコロロ 「エネ〜♪」

エネコロロは距離をとったまま、尻尾を振り始める。
あれは、相手の防御力を下げる技、だけど。

ハルカ 「コノハナ『タネマシンガン』よ!!」

ヒトミ 「かわしてエネコロロ!!」

コノハナ 「コ〜ノ〜〜!」

今度は先に出た…けど。

スダダダダダダダ!!

全てが外れる。
エネコロロは既にそこにはいない。
やはり…回避重視か!

ハルカ (まずいわね、相手はじわじわと攻めるつもりだわ…コノハナの性格上、スピードを使った戦術は無理)
ハルカ (だとしたら、一気に攻め崩すしかない…問題は距離)

相手は確実に距離を置いて少しづつこちらの能力を下げていく。
そして、確実に倒せる所で一気に攻めてくる…まぁセオリーね。
さて、どうしたらいいかしらね。

ヒトミ 「エネコロロ『しっぽをふる』!!」

エネコロロ 「エネ〜♪」

なおも尻尾を振り続けるエネコロロ。
コノハナはその場からジリジリと距離を詰めていくが、すぐに離されてしまう。

ハルカ (ん…待てよ、よく考えたらこのフィールドは)

私は足元の草むらを見て、ピンと来る。
そして技の宣言をする。

ハルカ 「コノハナ『しぜんのちから』よ!!」

ヒトミ 「え!?」

これはさすがに相手も読めなかったようね。
その場のフィールドに合わせて臨機応変な効果の出る技。
そして、この草むらに置いて繰り出されるのは…。

コノハナ 「コノ〜♪」

ブワワワワッ!!

エネコロロ 「エ、エネッ!?」

そう、『しびれごな』だ。
この技は相手を『まひ』させる技。
特に周囲に撒き散らす範囲があるから、エネコロロのように動き回っていても喰らってしまったというわけだ。
そして、エネコロロの動きは確実に止まる。

エネコロロ 「エ、エネ〜」

ハルカ 「例え相手が麻痺していても、このハルカ容赦せん! コノハナ『だましうち』!!」

コノハナ 「コノ〜♪」

コノハナはエネコロロに向かって正面から突っ込む。
体を痺れさせ、まともに動けないエネコロロはその場から動けなかった。

ヒトミ 「エ、エネコロロ退がるのよ!!」

もう遅い、コノハナはすでにモーションに入っている。

コノハナ 「コノ〜?」

エネコロロ 「…?」

ドゴォッ!!

エネコロロ 「コロロ〜〜…」

出た、よそ見。
あれ、私でも引っかかる時あるのよね…恐ろしい技だわ。
見事に釣られて余所見をしたエネコロロの無防備な脳天にコノハナの踵落としがヒットし、エネコロロは崩れ去ったのだ。

ヒトミ 「いや〜ん! 負けちゃったー!!」
ヒトミ 「ぐすん…さすがハルカさん。参りました…」

ハルカ 「あはは…結構緊張したかも」

私はそう言って握手を交わす。
全く、コノハナって冷や冷やさせるわね…。



………。



カズマ 「よし、行け『マッスグマ』!!」

ボンッ!

マッスグマ 「グマ!!」

ハルカ 「む、マッスグマか…さすがに私のよりも怖そうね」
ハルカ 「だけど、顔はバトルに関係なし! 頼むわよ『ライボルト』!!」

ボンッ!

ライボルト 「ラーイ!!」

凄い勢いで、待ってました!とばかりに掛けて来るライボルト。
な、何か凄い勢いね…そんなに待ち望んだのかしら?
ま、とりあえずライボルトならマッスグマと比べてもスピードに差はない。
今度は高速戦になりそうね。
だけど、私のライボルトは一味違うわよ!

カズマ 「よし、マッスグマ『ずつき』!!」

ハルカ 「望む所! ライボルト『スパーク』!!」

マッスグマ 「グマーーー!!」

ライボルト 「ラーーーイ!!」

まるで楽しむかのようにライボルトは体に電気を帯びて突っ込む。
そして、凄まじいスピードで互いに頭からぶつかる。

ドーンッ!!

爆発音にも似た音が耳をつんざく。
ズシャアァッ!と派手な音を立てて互いに吹っ飛んだのだ。
しかし、思ったよりも不利な賭けだったようだ。

マッスグマ 「グマッ!」

ライボルト 「……! ライッ!」

ライボルトの方が遅く立ち直る。
頭突きは相手を怯ませる効果のある技だから、真正面から行ったのは分が悪かったわね。
だけど、相手だってダメージはある。

カズマ 「マッスグマ『みだれひっかき』だ!!」

マッスグマ 「グマーーー!!」

凄い勢いでマッスグマが突っ込んでくる。
どうやら、相手はよほど攻撃好きらしいわね。
こういうのは、返って捌きやすい。

ハルカ 「ライボルト、『でんこうせっか』で右に突っ込んで!」

ライボルト 「ライッ!」

ヒュンッ!

マッスグマ 「グ、グマ!?」

マッスグマが突っ込んだ矢先、マッスグマの眼前でライボルトは姿を消す。
『でんこうせっか』で右にステップしたのだ、攻撃ではないけど有効だったようね。
相手を見失ったマッスグマは困惑している。

ハルカ 「ライボルト『スパーク』!!」

ライボルト 「ラーーーーイ!」

ズバァンッ!!

電機の弾ける音が響く。
そして、ライボルトはマッスグマの後頭部に頭から突っ込んで打ち倒す。
3カウントはいらないわね…。

カズマ 「おお…こんなにあっさりと」
カズマ 「凄いな君は…さすがだよ」

ハルカ 「いえいえ、熱い勝負でしたよ…これからも頑張ってくださいね」

そして…ついに副将戦が始まる。



………。



ヒデキ 「よしっ、『オオスバメ』頼む!!」

ボンッ

オオスバメ 「スッバーーー!!」

ハルカ 「あ、あのポケモンは…?」


ポケモン図鑑 『オオスバメ:つばめポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.7m 重さ:19.8Kg タイプ1:ノーマル タイプ2:ひこう』
ポケモン図鑑 『遥か上空を円を描く様に飛び回り、獲物を見つけると急降下。足の爪でがっしり掴んで逃がさない』


ハルカ (鳥型のポケモン…スバメの進化系みたいね)

だとしたら、かなりのスピードが予想できる。
けど、それならそれで戦い方はあるわ!

ハルカ 「空は任せたわよ、『ペリッパー』!!」

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜♪」

呑気な声を上げながら空を飛んで現れるペリッパー。
スピードは圧倒的に差がある気がする。
でも、その分こっちは耐久力で勝負よ!

ヒデキ 「オオスバメ『かげぶんしん』だ!!」

オオスバメ 「スバーー!!」

シャシャシャ!!

ハルカ 「な、何!?」

まるでオオスバメは忍者の様に増える。
『かげぶんしん』って…まさかあれが全部攻撃してくるわけ!? こい木の葉の忍者か!?

ハルカ 「く、だったらペリッパー『みずでっぽう』で片っ端から叩き落せ!!」

ペリッパー 「ペリー!!」

バシャァー!!

だが、オオスバメ(?)に当たった瞬間、それはふっと消えてしまう。
ちぃ、偽者か!
だけど、徹底的にやっていけば…!?

オオスバメ 「スバーー!!」

気がつくと、オオスバメは数十体に増えていた。
数えたくもない。
待ちなさいよ、これ全部相手なの!?

ハルカ (落ち着くのよ…分身はあくまで分身。攻撃力があったとしてもオリジナルとは差があるはず)
ハルカ (まずは、どんな攻撃をしてくるか読むのよ)

私は空中をざっと見渡す。
ペリッパーを中心にオオスバメが満遍なく配置されている。
しかも、見た目では本物かどうかはわからない。
これでは攻撃しても有効な攻撃は出来ない。
こういう時は…冷静に相手をいる必要がある。

ヒデキ 「…よし、オオスバメ『つばさでうつ』!!」

ハルカ 「来た! ペリッパー『まもる』!!」

ヒデキ 「何!?」

ペリッパー 「ペリ〜」

ペリッパーはその場で翼を丸めてガードするようなポーズを取る。
そして、ペリッパーの周りに丸いフィールドのような物が現れる。
このフィールドはありとあらゆる攻撃を防ぐA○フィールドのような物。
しかも、4000以上のダメージでも突破は出来ないと言う凄まじさ!

バァンッ!!

オオスバメ 「ス、スバッ!?」

オオスバメは背後からペリッパーを攻撃するが、攻撃は全くペリッパーに効かず弾かれてしまう。
そして、これで影分身の効力をある程度理解する。

ハルカ (あれは、あくまで防御技ってことね…攻撃することはできない)
ハルカ (攻撃する際は、あくまで自分自身が攻撃しなければならない)

つまり攻撃を誘えば自ずと相手が見えるということだ。
私は攻撃し終わって動きの止まったままのオオスバメを見て。

ハルカ 「ペリッパー、『ちょうおんぱ』よ!!」

ペリッパー 「PEPEPEPEPE!!」

ペリッパーはオオスバメに向かって『ちょうおんぱ』を放つ。
歪められた音波を喰らってオオスバメは混乱する。

オオスバメ 「スバ〜!?」

ヒデキ 「ま、まずい! オオスバメそこから逃げろ!!」

オオスバメ 「スバ〜〜!?」

しかし、声は届かない。
後はただのサンドバックね。

ハルカ 「ペリッパー『みずでっぽう』!!」

ペリッパー 「ペリーーーー!」

ズッバァァァァンッ!!

オオスバメ 「スバ〜〜〜……」

オオスバメはあえなく落ちる。
勝負有りね。

ハルカ 「アリーヴェデルチ(さよならよ)」



………。



ナオキ 「見事だな…ここまで全勝とは」
ナオキ 「正直、もう少し抵抗できると思ったんだが」

サオリ 「でも、私たちは簡単には負けませんよ」

ついに最終戦。
今度はタッグバトルだから、こっちも残った2体を出すのみ。

ハルカ 「『バシャーモ』、『マッスグマ』! ジム戦の前に景気良くKO頼むわよ!」

バシャーモ 「シャモ!」

マッスグマ 「グマ…」

私にとって一番付き合いの長い2体。
私のことを一番わかっているだろうし、多分私もわかってる。
この2体なら絶対負けない自信が私にはある!

ナオキ 「なるほど、かなり育てられていそうだな」
ナオキ 「だが、こちらも今度は勝たせてもらうぞ! 行け『ザングース』!!」

サオリ 「お願い『パッチール』!!」

ボボンッ!!

ザングース 「ザンッ!」

パッチール 「パ〜ッチ〜」

ハルカ 「…ん、その2体は」


ポケモン図鑑 『ザングース:ネコイタチポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.3m 重さ:40.3Kg タイプ:ノーマル』
ポケモン図鑑 『宿敵ハブネークとの戦いの記憶が体中の細胞に刻み込まれている。敏捷な身のこなしで攻撃をかわす』

ポケモン図鑑 『パッチール:ぶちパンダポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.1m 重さ:5.0Kg タイプ:ノーマル』
ポケモン図鑑 『世の中にいるパッチールは皆違う所にブチ模様があると言われている。おぼつかない歩みが踊りの様に見える』


ザングースは確か『りゅうせいのたき』近くの草むらで見かけたことがある。
かなり素早くて、攻撃力の高いポケモンだ。
そして、もう片方はご存知パッチール。
同じ模様のパッチールはいないと言われているほどの変なポケモンだ。
一体、どんな戦い方をするのかしら?
正直、私はタッグバトルにそこまで慣れているわけではない。
結局は、やれるだけやるだけだ。

ナオキ 「さぁ、始めようか!」

サオリ 「先に行きます! パッチール、バシャーモに『サイケこうせん』!!」

パッチール 「パッチー!」

ギュアアッ!!

ハルカ 「空中にかわして、そのままザングースに『ひのこ』!!」

バシャーモ「シャモッ! シャシャシャ!!」

ナオキ 「ザングース、かわして『つるぎのまい』!」

ハルカ 「? つるぎのまい…?」

ザングース 「ザンッ! グ〜…!」

ザングースは素早いバックステップで『ひのこ』をかわして妙な踊りをし始める。
一体何なのかわからないが、ザングースの目つきが変わるのを確認する。
もしかして、攻撃力強化系!?

ナオキ 「Let's Dancing!! さぁ、楽しく行こうか!!」

パチンッ!とナオキさんは指パッチンする。
そして、流れるような動作でサオリさんが。

サオリ 「Music Start♪」

音楽 『○YNAMITE RAVE!!』

何て言う、いきなりSPEED RAVE系の音楽を音楽がかかる。
どうやらサオリさんがCDラジカセを持っていたらしい。
う〜ん、SSRだと足9の曲を流すとは…ハードね。

ハルカ 「な、何かわからないけど…! マッスグマ、パッチールに『ずつき』!」

マッスグマ 「グマッ」

ダダダッ! バッ!!

真っ直ぐパッチールに向かって頭から突進するマッスグマ。
だが、パッチールはまるで踊るような動きでそれを簡単にかわす。

ハルカ 「く、踊りが回避動作に直結してるの…?」

格闘技においてリズムは重要と言われるけど、ポケモンバトルで実践されるとは思わなかった。
思ったよりも強敵らしい…最年長と言われるだけあって、父さんに長い間揉まれたんでしょうね…。

サオリ 「さぁ、パッチール『フラフラダンス』よ♪」

ナオキ 「ザングース『みきり』だ!!」

パッチール 「パッチ〜♪」

ザングース 「ザンッ!!」

ハルカ 「フ、フラフラ!?」

突然、パッチールは妙な踊りをしだす。
ザングースは突然その場からジャンプする。
そして、それを見たバシャーモとマッスグマは。

バシャーモ 「シャ…シャモ!?」

マッスグマ 「グマ…グマ…?」

ハルカ 「え!? どうしたのあなたたち!?」

突然パッチールに釣られるように踊り始めてしまった。
まさか、そう言う技なの!?

ナオキ 「さぁ、続けて行こうか! ザングース、バシャーモに『でんこうせっか』!!」

CD 『B! B! B○U!!』

なおも音楽が流れ続ける。
そして、リズムに乗ったザングースが。

ザングース 「ザンッ!!」

ドガァッ!

バシャーモ 「シャモー!! …シャモ!」

ハルカ 「元に戻った!? バシャーモ、ザングースに『にどげり』!!」

ナオキ 「ザングース見切って『れんぞくぎり』!!」

バシャーモ 「シャモ!!」

ザングース 「!!」

スカッ! スカッ!!

何とザングースはバシャーモの蹴りを完璧に見切る。
まさに舞…ミリ単位の『みきり』とはね…!

ザングース 「ザンザンッ!!」

ズシャッ! ザシュウッ!!

バシャーモ 「シャモー!!」

バシャーモは二回ほど斬られるが、すぐにバックステップして体勢を立て直す。
あまり効いてはいないわね、これならまだまだ!

サオリ 「パッチール、マッスグマに『ピヨピヨパンチ』!」

パッチール 「パッチー!」

ハルカ 「マッスグマ、『ずつき』!!」

マッスグマ 「!? グマッ!」

ドゴォッ!!

パッチール 「パチ〜!?」

ズシャアッと音を立てて地面に転がるパッチール。
カウンターで貰ったから効いた様ね。
どうやら、あのパッチールはそんなにスピードがあるわけじゃない。
さっきの踊りからも立ち直ったみたいだし、一気に反撃よ!!

ナオキ 「はっはっは! いいぞ! それでこそセンリさんの娘さんだ! さぁ、もっと楽しくやろう!」
ナオキ 「ザングース、マッスグマに『れんぞくぎり』!」

サオリ 「パッチール、バシャーモに『サイケこうせん』!」

ザングース 「ザンッ!!」

パッチール 「パッチー!!」

ほぼ同時に相手が動き出す。
これはチャンスかもしれない!

ハルカ 「マッスグマ、ザングースに向かって『みだれひっかき』!」
ハルカ 「バシャーモはかわしてマッスグマの後ろに!!」

ギュアアッ!!

バシャーモ 「シャモッ!」

バシャーモはサイドステップで素早く光線をよける。
そして瞬時に真っ直ぐ突き進むマッスグマの後ろに着く。

マッスグマ 「グマッ!」

ザングース 「ザンッ!」

マッスグマの『みだれひっかき』をザングースが見切ってかわす。
そして、ザングースはスピード、リズムに乗った『れんぞくぎり』でマッスグマを狙う。
だが、そこには落とし穴がある。

ハルカ 「バシャーモ『ブレイズキック』!!」

ザングース 「ザンッ!?」

バシャーモ 「シャモ!!」

ドッガーーーァッ!!

ザングース 「ザ…ザン!!」

ドシャアッ!!

ナオキ 「ザ、ザングース!?」

マッスグマの攻撃後、すぐにバシャーモはザングースに向かって前転蹴りの『ブレイズキック』を頭部に叩き込んだ。
ナイスコンビネーション! これで勝ったも同然ね!!

サオリ 「パ、パッチール! 『フラフラ…」

ハルカ 「マッスグマ『10まんボルト』!!」

マッスグマ 「グマッ!!」

バチバチバチィ!!

パッチール 「パッチー!!」

プスンッ

そんな音がしたかと思うと、パッチールはその場にズデンと倒れた。
これで…完全勝利ね。

CD 「○ance! ○ance! ○evolution!!」

プチ…

ナオキさんCDを止める。
そして、悟ったような表情で。

ナオキ 「…お見事、完敗だ」

サオリ 「…参りました、お強いですね」

ふたりはポケモンをボールに戻し、私のところまで歩み寄る。
私もポケモンをボールに戻した。

ハルカ 「…ジム戦の前に、いい勝負が出来たと思います」
ハルカ 「どうも、ありがとうございました」

私はそう言ってふたりに礼をする。
そして、それを見たナオキさんは右手を差し出す。

ナオキ 「…礼を言うのはこちらだ。ありがとう」

サオリ 「ジム戦…頑張ってね。あなたならセンリさんに勝てるかもしれないわ」

ハルカ 「ナオキさん、サオリさん…はいっ」

私はふたりと手を重ねる。
私はこれでまた強くなる…これで、試合前に思い残したことはない。
後は…全力で、戦うだけだ。





………………………。





チトセ 「……」

夜…もうすぐ日が変わろうかと言う時間。
私は夫の部屋で窓から外を見ていた。
そこからは、遠くに海が見えた。
音は聞こえないが、波の鼓動は感じる。
きっと、ハルカも似たようなことを思うのだろう。
明日…あの娘は自分の父と戦う。
その結果がどうなるかはわからない。
でも、あの娘は背水の覚悟で挑むだろう。
そして、絶対に『負けない』だろう。
私にはわかる…あの娘がどれだけの想いを秘めているか。

『助けたいから』

そのためにあの娘は強くなろうとした。
そして、今それを本当に確認するために明日の戦いに身を投じるのだ。
それは、あの娘にとって始まりのための戦い。
ようやく…あの娘はスタート地点に立つ。
夫には悪いが、私の想いはひとつだった。

チトセ (ハルカ…あの娘は、きっと勝つわ…勝たなければならないのだから)



…To be continued




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