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POCKET MONSTER RUBY



第31話 『ニューキンセツ潜入任務』




ドードッリオーーーーーー!!

ハルカ 「…!?」

いつものアレで目が覚める。
慌てて辺りを見渡すが、どうにも雰囲気が違う。
ワンボックスじゃないわよね…。

チトセ 「あら、起きてたの? まだ寝てても良かったのに」

ハルカ 「…あ」

よーく思い出した。
私…ジム戦やったんだった。
結果は…。

ハルカ (このバッジが語ってる…か)

バッジケースを私は確認する。
やっとここに立てた…この立場には意味がある。
私のスタートが今日始まるわね!

チトセ 「…ふふ、まぁ起きたんだったら下に降りてきなさい、朝食の用意をするから」

ハルカ 「あ、うんすぐ行くわ」

部屋を出て行く母さんを見て、私は普段着に着替える。
ここは、当然ながらトウカシティ。
父さんの家…つまり一応、別荘に当たる所だ。
だけど、実際には父さんはこまめにミシロタウンに戻っているそうなので、ここの別荘はあまり使っていないらしい。
昨日は久し振りの家族団欒だったもんね…皆疲れてたんでしょう。

ハルカ 「…さて、朝食の用意をしますか!」

着替えを終えた私は、下の階へと降りて母さんの手伝いをする。
今日は朝早くから父さんがジムで仕事をしなければならないので、私が一緒なのはここまでだった。
そして、朝食後…。



………。



ハルカ 「さて、それじゃあ行きますかな」

チトセ 「ハルカ、父さんは見送りにいけないけど、一言」
チトセ 「頑張れ! そして、絶対に諦めるな!!」

ハルカ 「…ん、言われなくても大丈夫って伝えて」

私たちは笑い合う。
そして私は歩き始め…。

チトセ 「ああ、ちょっと待ってハルカ!! そう言えば忘れてた! 今からあっちの家に寄って!」

ハルカ 「はぁ…? いきなり何?」

チトセ 「そうそう、今朝早くに突然、ジムの隣の家の方からあなたに会いたいって人が来たのよ」

会いたい〜? まさか告白かしら…でも全く身に覚えはないし。

チトセ 「何だか、ミツル…君とかいう子のパパって言ってたけど、知ってる?」

ハルカ 「…ミツル君? ああ…そう言えば」

いたわねそんな子。
存在感が薄くてすぐに思い出せなかったわ。

チトセ 「とりあえず、行ってあげて。何だか御礼をしたいとか言ってたから」

ハルカ 「…わかったわ」

私は予定を変更して寄り道をすることに。
それも、ミツル君の家へ。



………。



『時刻9:30 トウカシティ・ミツル宅』


ハルカ 「ごめんくだささーい!」

私は到着してすぐにそう叫ぶ。
周りには他の家はなく、迷惑になるようなことはなさそうだった。
それから数秒後、すぐにひとりの中年男性がドアから現れる。
見た所、父さんよりも年上ね。
まぁ、父さんが若いのもあるけど。

中年 「あ、君がハルカちゃんだね! ミツルがお世話になったようで…」

いきなりそう言われる…なるほど、この人がミツル君のパパか。
何だか、明るい性格の人っぽい。

パパ 「キンセツシティの時に、ミツルがお世話になったって連絡があってね」
パパ 「あの子は、どうも君に何か惹かれるものがあるらしく、よく電話でも話をしてくれるよ」

ハルカ 「は、はぁ…」

やばい…のかな? もしかして惚れられた?
う〜ん、でもミツル君ってまだまだお子様な感じがするのよね〜って、それは余り関係ないか。

ハルカ (どっちにしても、私には関係ないで押し通そう)

などと無茶なことを考えてみる。
この先、面倒事になるのは目に見えてる。
不要な芽は早い内に摘んでおかねば!

パパ 「それで、御礼と言っては何だが、これを受け取って欲しい」

ハルカ 「…うん? 『わざマシン』? ちょっと色が違うけど」

パパ 「それは『ひでんマシン』だよ。中身は『なみのり』! 何とポケモンの背中に乗って海を渡れる凄い技だ!」
パパ 「もちろん、何度使用してもなくならないから好きに使ってくれ」

それは頼もしい! つまりこれで海も自在に移動できるってわけですな!!
これでかなり行動の幅が広がる。
でも、誰に覚えさせようかしら?

パパ 「…ハルカちゃん。実はね、ミツルはシダケタウンを飛び出して行ったらしいんだ」

ハルカ 「…! ミツル君って、確か肺を」

パパ 「そう…でも、君に出会ってからミツルは見る見る内に元気になったと聞いている」
パパ 「ついこの間までは、外でポケモンと一緒に走り回っていたらしい」
パパ 「ひょっとしたら、君を追いかけようとしているのかもしれないな」

ハルカ 「……」

そんな簡単な物だろうか?
少なくとも始めてみた時は結構重症のようにも感じた。
あれから期間が経っているとはいえ、そんなにも簡単な症状とは思えなかった。

パパ 「大丈夫…ミツルの症状は元々空気の汚染から来る肺の消耗だったから」
パパ 「シダケタウンで肺も元に戻ったようだし、後は動き回っていれば体が自然と慣れてくる」
パパ 「私はね、嬉しいんだ…あの内気なミツルが家を飛び出したのを聞いて」
パパ 「だから、ハルカちゃんにお礼がしたかった…ありがとう」

ハルカ 「…いえ、気になさらずに。もし旅先で会ったら、何か伝えておきますけど?」

パパ 「いや、いいよ…ミツルにはあまりそういう負担をかけさせたくない」
パパ 「きっと、気にしてしまったら中途半端に立ち止まってしまうだろう」
パパ 「だから、逆にもし出会ったら叱咤激励でもしてくれ、その方がいい」

それはそれは…何ともはや、人は見かけによらないってか。
ミツル君もいいパパを持ってるようね、ウチのには負けるけど♪

ハルカ 「とりあえず、これ…ありがとうございます! 私も急ぎますんでさようなら!!」

パパ 「ハルカちゃんも頑張ってね!!」

私は駆け足気味にトウカシティを東側へ疾走する。
途中、自転車に乗り換えて103番道路まで突っ走る。
ここから水路を越えてショートカットをしようと言う訳だ。
この方が圧倒的に早い。



………。
……。
…。



というわけで、103番道路だ。
この水路を渡ればすぐにキンセツまで行くことが出来る。
さて、では誰に『なみのり』を覚えさせようか?
私はそれを確認することにする。

ハルカ 「マッスグマとペリッパーだけかぁ…ペリッパーは空飛んだほうがいい気もするけど」

だからと言って、マッスグマの背中に乗るのは不可能な気もした。
もし水上でバトルが起こるような物なら、洒落にならない。
よし、ここはペリッパーに覚えさせよう。
私はペリッパーに『なみのり』を覚えさせると、すぐにペリッパーを外に出す。

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜」

ハルカ 「ペリッパー、早速お願いね♪」

ペリッパー 「ペリ〜♪」

私はペリッパーの背中に乗ると、ペリッパーはその場からチョコンとジャンプして着水する。
多少の衝撃はあったが、沈むことは全く無い。
ペリッパーは翼をオールのように動かして前に進む。
なるほど、これは良いわね…自動カヌーみたいだわ♪
そして、数分で向こう側の岸に着くことが出来た。
後はキンセツシティまで行くだけね。

ハルカ 「さて、今回はサイクリングロードを通ろうっと」

前回は下のルートを通ったので、色々と面倒だった。
ユウキ君とバトルしたりとか…まぁ今となってはいい思い出ね。
歩きながらそんなことを考えていると、ふと左手側に異様な気配を覚える。

ハルカ 「……」

見なかったことにしよう。
私には断じて『カラクリやしき』など見えない。
イチイチ相手にするもの時間の無駄だしね。
というわけで、私は自転車を漕いで一気にサイクリングロードへと向かう。



………。



『時刻10:00 サイクリングロード』

ハルカ 「おお〜、これはいい気分ね♪」

思ったよりも風がいい。
サイクリングロードを逆送する形となっているのだが、これはこれでいい。
色んなトレーナーもいるようだし、いっちょバトルでも仕掛けてみますか♪



………。



『時刻12:00 キンセツシティ』


結局、バトルを繰り返していたらこんな時間になってしまった。
案外バトルをやってると時間が経つのよね〜、ひとり頭30分位かしら?
まぁ、とりあえず問題なくここまで来れて良かった。
私は、一旦自転車から降りて歩くことにする。
まずはポケモンセンターに寄るのだ。
一応、回復が必要だしね♪



………。



『時刻12:10 キンセツシティ ポケモンセンター・受付』

店員 「いらっしゃいませ! ポケモンセンターへようこそ♪」

ハルカ 「えっと、回復お願いします」

私はカウンターにカードとボールラックを差し出す。
後は手馴れた手つきで店員さんが全てこなしてくれる。
回復には少し時間がかかるようだ。
とりあえず、待合室で休ませて貰うことにしたが、そこには見知った人物がいた。

ハルカ 「あれ〜? テッセンさんじゃないですか〜」

テッセン 「おおっ、ハルカちゃんじゃないか! 久し振りじゃなぁ…」

テッセンさんは私を見ると相変わらずの笑顔で高らかに笑った。
そちらもご健啖の様子ですね…元気すぎるわ。

ハルカ 「今日はテッセンさんもポケモンの回復ですか?」

テッセン 「うむ、近頃『ニューキンセツ』の方がおかしくての…今日も点検に行ってみたんじゃが、ワシのポケモンの方が音を上げてしまいおった」

ハルカ 「『ニューキンセツ』? 何ですそれ?」

聞いた事の無い言葉だった。
聞いた感じ、地名のようだが…。

テッセン 「ふむ、『ニューキンセツ』は元々無人発電所でな…今はワシが引き取って開拓しようとしているんじゃよ」

ハルカ 「ああ、なるほど…そう言うことですか」

私はとりあえず相槌を打つ。
テッセンさんって、確か街の開発にも関わってるって話だもんね。

テッセン 「しかしな…長い間放置して追ったせいか、今では野生ポケモンの住処になってしもうての…手が着けられんようになった」

ハルカ 「テッセンさんのポケモンでも音を上げるって言うんだから、相当な野性ポケモンがいるんですか?」

テッセン 「いや、1体1体は大した事無いんじゃがな…数が多すぎる」
テッセン 「特に、ビリリダマやマルマインが所構わず『じばく』するもんじゃから、まず耐えられん」
テッセン 「おかげで、最近はこうやって毎日ポケモンの回復じゃ」

テッセンさんは言い終わるとがっくりうな垂れる。
結構、キテるみたいね…あの元気が取り得のテッセンさんがここまで落ち込むなんて…。
よし、ここは私が何とかしてあげますかな。

ハルカ 「テッセンさん、良かったら場所教えてくれません? 私が何とかしてみますから!」

私がそう言うと、テッセンさんはぱぁっと明るい表情に変わる。
よっぽど嬉しかったのね…。

テッセン 「さすがハルカちゃん! 君ならそう言ってくれると信じておった!!」
テッセン 「では、改めて任せても良いかな?」

ハルカ 「ええ、興味ありますし、ポケモンの訓練にもなるから」

テッセン 「そうかそうか…じゃあこれを」

テッセンさんはズボンの後ろポケットから鍵を取り出す。
どうやら、『ニューキンセツのカギ』ようだ。
私はそれを受け取ると、ウェストポーチに押し込む。

ハルカ 「で、行ってからどうすれば良いんですか?」

テッセン 「うむ、一番奥まで行けば、発電のスイッチがある」
テッセン 「そのスイッチを止めれば、機能を停止するから、後は戻ってくれればええ」
テッセン 「電気タイプの住処じゃから、電気を止めれば自ずといなくなるじゃろうからな」

ハルカ 「ふむふむ…了解っと」

テッセン 「おお、一応ポケナビで通信はできるから、成功したらとりあえず知らせてくれ」

ハルカ 「ラジャー」

私はそう言って、カウンターまで戻る。
回復は時間がかかるそうだけど、ダメージを受けてないポケモンは引き取っても大丈夫だろう。
私はとりあえずダメージのなかったライボルトとアノプス、マッスグマを連れて行くことにした。



………。
……。
…。



ハルカ 「しまった…まさか海があるとは」

『ニューキンセツ』はどうやらこの先にあるらしい…ということはわかったのだが。
思いっきり海が邪魔していた。
肝心ペリッパー君は療養中だ…ということは選択肢は3つ。

1:自力で泳いで渡る
2:マッスグマに覚えさせて根性で渡らせる
3:潔く引き返す

ハルカ 「…個人的には2だけど」

正直あの娘が本当にできるのかどうか不安になる。
あの体で私を乗せて行けるのかしら?
大体、服が思いっきり濡れそう…水着持ってないからなぁ。

ハルカ 「…まぁ、やってみるだけやってみるか?」
ハルカ 「『マッスグマ』、出てきて!」

ボンッ!

マッスグマ 「…グマ」

ハルカ 「いい? 今から『なみのり』を覚えさせるから、『ニューキンセツ』までお願いね」

マッスグマ 「…グマ」

任せろ…とのことらしい。
最近、この娘の考えてることが大分わかるようになった。
この娘はあまり動かないのだが、実は目線が結構動いてたりする。
この娘といると洞察力が身に付くわね…。
とりあえず、『ひでんマシン』をセット! いつもながら○波紋使いになった気分だわ♪

ハルカ 「いざ行かん! 頼むわよマッスグマ!!」

マッスグマ 「グマッ」

バシャバシャバシャ!!!

ハルカ 「わひゃおっ! 速っ!!」

マッスグマは何と、私を背中に乗せたまま水上を『走る』ように進んでいく。
なるほど、泳ぐだけとは限らないのね…侮っていたわ。
しかしながら、Gがかなり凄い…。
直進だけのスピードとはいえ、下手をすると振り落とされそうになる。
私は体勢を屈めて空気抵抗を減らす。
いわゆるライダー乗りという奴だ…。
こうして、とりあえず10分ほどで目的の地に到着した。



………。
……。
…。



ハルカ 「ふぅ…ここが『ニューキンセツ』ね」

私は体に付いた水を払おうとする…だけど結構染み付いてしまっている。
思ったより飛沫が痛かったわ…帰りもこれだと思うと、鬱になるわね。
私は改めて『ニューキンセツ』を見る。
白い建物で、いかにも発電所といった感じ。
2階はないようで、1階建てだ。
とりあえず入り口は目の前にあるようで私は進んでいく。

ハルカ 「あれ? 下に階段があるんだ」

どうやら、中は地下があるらしく階段が降りていた。
私はそこを降りていく。
ライトは点いているので問題なく周りは見える。
そのまま進んでいくと、扉の前に出た。
どうやら、ここで鍵を使うらしい。
私は鍵を鍵穴に挿し込み、クリっと回す。
すると簡単にドアは開いた。
私は『ニューキンセツ』の中へと進入していく。

ハルカ 「さて、まずはどうしようかしら?」

とりあえず奥へ進めばいいと聞いているので、そうすることにした。
そして、数分後。

ハルカ 「…何で行き止まりなの?」

確か、この道は前に通った時は道があったはずなのに。
まさか、何か仕掛けが?
でも、特に怪しいところはない…。

ハルカ 「…ん? 足元に何か変なマークが」

見ると、どうやらスイッチのようで、押しこんだような後が残っていた。
まさか、これが原因?

ハルカ 「待てよ…このスイッチでここが閉まったんだったら」

私は急いで元来た道を戻ってみる。
すると、案の定道は出来ていた。

ハルカ 「やっぱり…そう言う仕掛けなのね」

どうやら、『カラクリやしき』の親戚のようで、スイッチごとに道の開閉が決まるということね。
私は次から足元に注意して進むことにした。
そして、それから30分後。



………。



ハルカ 「…ああー! もういい加減ウザイ!!」

ライボルト 「ライ〜…」

あれから30分、沸いてくる電気タイプ。
特に進めば進むほど敵が多くなってくる。
何となく、コイルの図鑑説明を思い出す。

『びっしりくっついているかも…』

吐き気がしてきた。
私はこの際、一気に駆け抜けることにする。
こういう物は思い切りが大事なのよ!



………。



そして、その後まるで地雷原のようなビリリダマの『じばく』を潜り抜けて私は大本に辿り着いた。

ハルカ 「…はぁ…はぁ…ここね」

私は原因の元であるメインコンピュータを見つけた。
さてと、まずは右からP爆弾を配置してと…って違うわよ!
私はコンピュータの主電源を切る。
すると、いきなり電灯まで落ちて真っ暗になった。

バツンッ!!

ハルカ 「うげ! いきなりどうしよう!?」

周りが全く見えない。
『フラッシュ』の使えるコノハナも療養中だし!
第一、このままでは『ひでんマシン』がどれなのかもわからない。
私は恐る恐る周りの空気を伝って気配を読む。
この状態で、もしマルマインなんかに襲われたら…考えただけでもゾッとする。
私は周りに気を配りながら、歩くことにする。
手探りで進んでは行くが、かなり怖い。
そして、私が右手を前に出した時。

? 「PPPPPPPGGGGGGGG!!!!」

ハルカ 「うきゃあっ!? コイル!?」

コイル 「!!」

キラリ〜ン☆

ハルカ 「!? あれ? 今コイルが光ったような…?」

そして、その一瞬の光でコイルの位置を確認する。
私は一か八か、そのコイルに賭けてみる事にした。
コイルは驚いたせいか、放電している。
明かりが点いているのだ…この状態でなら周りが見える。
私はこの一瞬で『フラッシュ』の『ひでんマシン』を取り出すことに成功した。
そして、すぐにライボルトをボールから出す。

ハルカ 「頼むわよライボルト! 『フラッシュ』!!」

ライボルト 「…ら〜い〜」

しかしながら、ライボルトは度重なる『じばく』によって体力を失っていた。
もはや、発光する気力すらないのか…私は思いっきり項垂れる。

ハルカ 「ガッデム! さのばびっちーーー!!」

何と言うことだろう。
このままでは永久にここを彷徨いかねない。
さて、どうするか。
さすがにもうあのコイルもここには…。

コイル 「PPPGGG」

ハルカ 「うひゃおわぁ!? まだいたぁ!!」

私は思いっきり驚く。
だが、今度はコイルの方が驚かなかった。
ど、どうしよう…ライボルトはこの調子だし、こんな暗闇じゃマッスグマとアノプスは戦えないだろう。
となると…残された道はひとつか。

ハルカ 「こうなったら壱か罰かよ!! 行けハイパーボール!!」

コイル 「!!」

シュボンッ! コン! コン! コロロロ…

私は祈るようにボールを信じる。
そして、暗闇の中ボールの音が聞こえた。

カチリ…

ハルカ 「や、やった! 『コイル』ゲット!! これで『フラッシュ』が…使えるわよね?」

一応、図鑑で確認を…と私はここであることに気付いた。
そして、それがわかった時、私はこうやっているのが馬鹿らしく思えた。

ハルカ 「…図鑑のライト使えばよかったのか」

昔のGBAとは違うのだよ! 今は液晶にライト内蔵は当たり前!
私はとりあえずもゲットしたコイルと一緒に『ニューキンセツ』を出て行くことにした。



………。



『時刻15:00 ニューキンセツ近くの小さな孤島』


ハルカ 「こちらハルカ、目標達成…これより帰還します…OVER」
ハルカ 「終わった、何もかも…何もかもが」


………。
……。
…。



『時刻15:30 キンセツシティ ポケモンセンター・待合室』


テッセン 「おお、よく無事に戻ってきた!」

ハルカ 「あはは…苦労しましたよ、かなり」

私は一気に肩を落として近くの椅子に座った。
そんな私を見てテッセンさんは笑う。

テッセン 「はっはっは! しかしよくやってくれた! これでしばらくしたらまた開発に着手できるわい!」

ハルカ 「…頑張ってください」

もうそれしか言えなかった。
とりあえず…疲れた。
ある意味ジム戦よりきつかったわ。
そこで、私はテッセンさんにあることを尋ねる。

ハルカ 「ねぇ、テッセンさん…そう言えば私あそこでコイルをゲットしたんですけど、ちょっとおかしい気がするんですよ」

テッセン 「おかしい? 何がどうなんだ?」

ハルカ 「ええと、何か突然現れたかと思ったら、いきなり光ったんですよ」
ハルカ 「放電とかの光じゃなくて、もっと淡い光でした」

テッセン 「ふむ、そのコイルを見せてみなさい、何かわかるかもしれん」

ハルカ 「あ、はい」

私はコイルの入ったボールから外に出してあげる。

ボンッ! キラリ〜ン☆

コイル 「PP〜♪」

テッセン 「ほう! これは珍しい!! 色違いのコイルじゃ!!」

ハルカ 「あ、本当だ! よく見ると色が金色っぽい」

テッセン 「うむ、これはいいコイルじゃ! 性格は…おとなしい子じゃな」

ハルカ 「あ、そうなんですか? さすがテッセンさん…それだけでわかちゃうんだ」

私がそう言うと、テッセンさんは笑う。

テッセン 「はっはっは! これでも電撃親父と呼ばれておるからの!」
テッセン 「まぁ、とにかく…このコイルはいいコイルじゃ! 大事に育てなさいよ」

そう言うと、テッセンさんはポケモンセンターから出て行ってしまった。
私は改めてコイルを見る。
やっぱり…機械系よね。
性別ってあるのかしら? ってあるわけない…わよね。

コイル 「P?」

鳴き声かどうかもわからない効果音でコイルは私を見る。
一つ目で見られるから、ちょっとビビる。
でも、これはこれで面白いかも。

ハルカ (う〜ん、でも手持ちは既に一杯なのよね)

しかも電気タイプはライボルトがいる。
鋼タイプとしてもクチートが今は療養中だし。
今の現状で、メンバー変えるのはあまりしたくなかった。
成り行きでゲットしてしまったとはいえ、まさかそんなにいいコイルだとは思わなかったし。

ハルカ 「ん? そういえば…近くに『そだてやさん』があったっけ」

そこに行けば、ポケモンを預かってもらえるとのことだ。
普通にボックス詰めにするのとは違って自由な空間があるからポケモンも伸び伸びと成長できる…と聞いている。
療養している私のポケモンも入ることだし、そこに預けることにしよう。
私はそう決めると、コイルをボールに戻して一路『そだてやさん』へと向かった。



………。
……。
…。



『時刻14:00 そだてやさん』


ハルカ 「すいませ〜ん!」

お婆ちゃん 「はいはい…あら、これはまためんこい娘が来ましたねぇ」

ハルカ 「あの、ポケモンを預かって欲しいんです…この子なんですけど」

コイル 「PP」

私がコイルを差し出すと、お婆ちゃんは優しくコイルを抱き上げる。

お婆ちゃん 「おお…これまたいいコイルじゃのぉ、色違いのコイルなんて初めて見たよ」
お婆ちゃん 「私もこの仕事を始めてもう50年位経つけどねぇ…」

ご、五十年ですか…すでに下天のうちを終わってるわね。
人生、何があるかわからないわ。

ハルカ 「えっと、私のポケモンも3体ほど預かってもらっているはずなので、一緒にお願いできますか?」

お婆ちゃん 「あら、そうだったのかい…ええと、お名前は?」

ハルカ 「あ、ハルカと言います」

私がそう自己紹介すると、お婆ちゃんは驚いたように。

お婆ちゃん 「あれま! あなたがハルカちゃん? ははぁ…まさかこんなにめんこい娘だとは思わなかったよ」
お婆ちゃん 「あなたのポケモンはまだちょっと怪我が治りそうにはないけど、元気に育っているよ」

ハルカ 「そうですか、皆によろしく言っておいてください」

お婆ちゃん 「はいはい、確かに伝えておきますね…それじゃあ、このコイルを預かるよ」

ハルカ 「それじゃあお願いします! あ、えっとそう言えば、ここから直接パソコンの預かりシステムとは繋がるんですか?」

お婆ちゃん 「ええ、もちろん…ほら、そこにパソコンがあるでしょ?」
お婆ちゃん 「引き取りたくなったら、気軽に繋げて頂戴…ハルカちゃんみたいな娘ならいつでも歓迎だから」

ハルカ 「あはは…ありがとうございます! でも料金の方は…?」

お婆ちゃん 「そうだね、今の3体だけで…5000円位かね」

ハルカ 「わ…さすがに結構かかるわね」

私は財布を確認してとりあえず今までの分を払うことにした。

お婆ちゃん 「はい、じゃあお預かりします…パソコンで引き取る時は料金はツケにしておくから、後から払いに来てね」

ハルカ 「え? ツケでいいんですか?」

お婆ちゃん 「本当は直接送ってもらうんだけどね、ハルカちゃんだけの特別よ」

お婆ちゃんは気軽にそう言ってくれる。
何だか嬉しい。
こんないいお婆ちゃんがいるなら皆も大丈夫よね。
私は安心して外に出た。
そして、私は再びキンセツシティに戻る。



………。



『時刻17:00 キンセツシティ ポケモンセンター・受付』


ハルカ 「回復終わりましたか〜?」

店員 「あ、ハルカさん…はい、あなたのポケモンは皆、元気になりましたよ♪」

ハルカ 「ほ…」

最近、怪我とかが怖くて仕方ない。
特にマッスグマのダウンは深刻そうに見えたのに、次の日にはえらくケロッとしていたのは驚いた。
どう考えても致命傷ぽかったのに…案外頑丈なのかな?
頑丈だったら一撃でダウンなんてしないだろう…と言うのはこの際無視する。
まぁ、とりあえず無事で何よりってとこで。

店員 「あ、そう言えば…これをテッセンさんから預かってました」

ハルカ 「うん? 『わざマシン』…ですか?」

店員 「ええ、あなたにと…」

なるほど、報酬と言うわけですか。
中身は『10まんボルト』が入っている…以前マッスグマに使ったけど、この技はたくさんあっても損はない。
場合によってはライボルトやコイルに覚えさせてあげるのもいいわね。
とりあえず、今は直しておく事にした。
焦る必要はないしね。

私は時刻を確認する…とりあえず、今日はここで一泊しようかな。
私は相変わらずのワンボックスを借りて一泊することにした。
そして、その日はそれで終了する。





………………………。





『時刻21:00 そだてやさん・ポケモン広場』


クチート 「あ〜、全くいつになったらこの足が治るのか…」

アメタマ 「しばらくはそのままですね…私はもうすぐ完治しますよ♪」

アゲハント 「僕もちょっと時間がかかりそうです…やっぱり羽をやられちゃったから」

クチート 「はぁ…私のキュートな足がこんなじゃ、走り回ることも出来やしないわ…」

私はそう言って、腹ばいに寝転ぶ。
動けないほどではないのだが、まだまだ痛みがあってとても走ることはできない。
あ〜あ、今頃皆よろしくやってるんだろうなぁ…何かハミ出し者って感じ〜。

アメタマ 「あ、そう言えば…今日ハルカさんが来てたそうですよ」

アゲハント 「あ、聞きました…でもすぐに帰っちゃったんですよね」

クチート 「何よ…様子を見に来たんじゃないのかしら?」

まぁ、私たちがこんなじゃまだまだ現場復帰は無理だしね。
しかし、様子を見るなら直接ここまで顔を出すでしょうね…あの人の性格なら。
となると…ここで考えられるのは。

クチート 「誰か怪我して連れてこられたって口かしらね…」

アメタマ 「え? じゃあクゥちゃんは誰が来たと思いますか?」

アメちゃんが気軽にそう言ってくる。
実の所、アメちゃんとは会って間もないのだが、意外にウマがあったりして驚きだった。
私はとりあえず適当に答えてみる。

クチート 「そうねぇ…一番怪我をしやすそう、って意味じゃ間違いなくグマちゃんでしょうね」
クチート 「控えめな性格の割に、ピンチの時は一番前に出るから、結構危ない気がするのよね〜」

アメタマ 「えっと…グマちゃんって、もう進化してるんですよね? あ〜いいなぁ、私も進化したい」

アゲハント 「そうですね〜、進化は良いですよ…僕も繭から帰るのには苦労しました」

アメタマ 「あ〜…憧れるなぁ、進化」

クチート 「う〜ん、でもアメちゃんは進化したらアメモースになるのよねぇ」
クチート 「微妙に、水タイプじゃなくなるから、戦い方ががらりと変わっちゃうわね」

私が冷静にそう言うと、アメちゃんは困ったように項垂れる。
この娘、頑張り屋だけに、考え込むことがあるのよね。
まぁ、悪い性格じゃないんだけど…イマイチ悪い方に運が傾いてるのよね。
私も似たようなもんか…運だけなら。

? 「あの…すいません」

アゲハント 「わわっ! な、何!?」

いきなり背後霊のようにアゲハ君の後ろに現れたポケモン…それはコイルだった。

クチート 「あらぁ…? 私たちに何か用かしら」

私が適当にそう言うと、妙にコイルは畏まった感じで。

コイル 「あの…今日からここでお世話になります、コイルと申します」
コイル 「今日、ハルカさんにゲットされた不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

クチート 「…あ、そう、ハルカにね…ん? ハルカ?」

アメタマ 「あ、私たちのトレーナーと同じ名前ですよね♪」

アゲハント 「確かに、偶然ってあるんですね〜」

コイル 「いえ、偶然ではなく、あなた方と同じトレーナーのポケモンです」

クチート 「なぬ!? んじゃあ、お仲間ってこと!?」

私がそう言うと、コイルは畏まって頷く。
何か…調子狂うわね。

コイル 「私は怪我をしているわけではないので、皆さんとはまた違った理由で預けられましたが、どうかよろしくお願いいたします」

クチート 「ああ、もういいからその喋り方止めて…丁寧すぎて癪に障るわ」

とは言っても、別に起こるほど嫌と言う訳ではないんだけどね、本当は。

アメタマ 「う〜ん、何だかおとなしい娘っこだね」

アゲハント 「え? 女の子なんですか?」

クチート 「んなわけないでしょ…コイルは性別不明よ」

アメタマ 「あれ? じゃあクゥちゃんも性別不明?」

クチート 「私は女だっつーの!! 鋼タイプと言う共通点だけで、私を機械系と一緒にするなっちゅうのに!」

私はふてくされて、ダレる。
いい加減疲れてきたわ。
まぁ、これからの退屈しのぎにはなるかもね…ちょっと面白くなってきたかも。
私はそんなことを考えながら、そのまま眠ることにした。



…To be continued




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