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POCKET MONSTER RUBY



第38話 『Sister Battle』




『時刻19:00 ミナモシティ・宿屋』


ユウキ 「はぁ…何か、やばそうな雰囲気だなぁ」

ミナモシティに来たはいいが、どうにも危険な香りがする。
あの集団は何なのか?
船がないことにも関係があるんだろうな。
色々考えてはみるが、あまり首を突っ込むのはマズイ気がした。

ユウキ 「やれやれ…折角、海のポケモン調査だってのに」

俺はポケモンの調査のことを考える。
とりあえず夜に出現するポケモンを調べておこうと思い、荷物を確認して外に出る。



………。
……。
…。



キヨミ 「姉さん…これ以上あの子に関わらないで」
カガリ 「どうして? そんなことを言われる理由がわからないわ」

姉さんはわざとそんなことを言う。
私は少し強めに。

キヨミ 「…聞く気がないなら、その時は私がマグマ団を潰すわ」

カガリ 「あら恐い…ふふ、でもあの娘から近づいて来たら知らないわよ?」

姉さんは何が可笑しいのか、クスクスと笑う。
恐らく聞く気はないのだろう。
この際、万が一のことも考えておこう。

カガリ 「それに…今のあなたのポケモンは私のポケモン」
カガリ 「戦った所で結果は見えるわね」

キヨミ 「…確かにね」

今の私の手持ちは、あくまで姉さんのポケモン。
すべての特徴を理解しているし、弱点も理解している。
今の姉さんがどんなポケモンを使うのかはわからないけど、勝ち目は薄い。

キヨミ (…でも、今の姉さんの実力を見てみるのはいいかもしれない)

私はモンスターボールを構える。
その姿を見てか、姉さんもモンスターボールを手に取る。


ユウキ (うわ…まだいたよ)

あれから結構経つのに、まだあのふたりはいた、何やら言い合っていたようだが、今は互いにモンスターボールを構えている。
ちょっと興味があるな。
というわけで、見てみることにした。


キヨミ 「使用ポケモンは2体、シングルバトルで勝負よ!」

カガリ 「いいわよ、それじゃあ…こっちから見せてあげるわ、『ボスゴドラ』」

ボンッ!

ボスゴドラ 「ゴドラッ!」

出てきたのはボスゴドラ…ココドラの最終進化系。
防御力は恐ろしく高く、並みの攻撃力では歯が立たない。

キヨミ 「…なら、こっちは『ハガネール』!!」

ボンッ!

ハガネール 「ガーー!」

カガリ 「あら、随分目立つポケモン出すのねえ」


ユウキ (デカッ! ハガネールなんて初めて見た…すっげえ)


キヨミ 「…一気に決めるわ、手加減は出来ない! ハガネール『じしん』!!」

ハガネール 「ハガーーー!!」

ゴゴゴゴガアアアッ!!

ボスゴドラ 「ゴーーー!!」

ボスゴドラの周囲のみで『じしん』が発生する。
ボスゴドラは岩、鋼タイプ。
地面や格闘タイプの攻撃には大ダメージよ。

ボスゴドラ 「ゴ、ゴド!」

キヨミ 「耐えた…でも何発も耐えられないはず!」

カガリ 「惜しかったわねぇ…考えは悪くないけど、ボスゴドラ『カウンター』」

キヨミ 「…! しまった!!」

ボスゴドラは一気に突進してくる。
そして、自分が受けたダメージを倍にしてハガネールに返す。

ズッ! ガアアアアアンッ!!!

ハガネール 「ガーーーー!!」

ズッ…ズウウウウウンッ!!!

ハガネールの巨体があっさりと倒れる。
耐えられるはずがない…そのための『カウンター』だ。

キヨミ 「…まさか、こうなるとはね、頼むわ『マンタイン』!!」

ボンッ!

マンタイン 「マンッ!!」


ユウキ (おおっ、今度はマンタインだ! もしかして、あの布の人は別の地方のトレーナーなのか?)
ユウキ (にしても、偉くレベルの高いバトルだな)
ユウキ (まるで、四天王の戦いを見てるみたいだ)

少なくとも、あのポケモン達は動きが明らかに違う。
たった一回の攻撃だったけど、強さがわかった…。


キヨミ 「マンタイン『ハイドロポンプ』!!」

マンタイン 「マンーーー!」

カガリ 「ボスゴドラ、『あなをほる』」

ズバババアアンッ!!

キヨミ 「隠れた…!?」

『ハイドロポンプ』は地面に当たり、ボスゴドラが掘った穴だけ残る。
しかし、マンタインは飛行タイプ…地面技は!

キヨミ 「マンタイン、上昇よ!」

マンタイン 「マンッ!」

ブオッ!

マンタインは上昇し、攻撃に備える。

ドゴオッ!

ボスゴドラ 「ゴドッ!?」

ボスゴドラは地面から現われるが、攻撃する相手が見当たらず、動きが止まる。

キヨミ 「よし…マンタイン『ハイドロポンプ』!!」

カガリ 「ボスゴドラ『まもる』」

マンタイン 「マンーーッ!」

ボスゴドラ 「ゴドッ!!」

ババババババッ!!

ボスゴドラは防御して『ハイドロポンプ』を防ぐ。
1回は防げても、2回は防げるかしら?

キヨミ 「マンタイン、もう一発……」
カガリ 「ボスゴドラ…『かみなり』」

ピシャアアアァンッ!!

マンタイン 「マンーーッ!!」

キヨミ 「!! 速い…!」

カガリ 「いくら何でも、甘く見すぎかしら…ボスゴドラ『すてみタックル』」

ボスゴドラ 「ゴッドー!」

ボスゴドラは落ちていくマンタインに向かって突進する。
まともに食らえばダウンは必至。
だけど、私はそれを待っていた。

キヨミ 「マンタイン『みずのはどう』!!」

マンタイン 「マンタッ!!」

ズバァンッ!

ボスゴドラ 「ゴッドーーー!?」

ズシィィィンッ!!

『みずのはどう』の直撃を受け、ボスゴドラは前のめりに倒れた。
これでタイ…だけど。


ユウキ (…『かみなり』一発受けてるマンタインが圧倒的に不利だ)

マンタインは飛行・水タイプ。
いくら、ボスゴドラの特殊攻撃力が低いと言っても、十分ダメージは受ける。
次のポケモンが何かはわからないけど、間違いなくマンタインに不利なポケモンだろう。

カガリ 「さて…じゃあ次はこの娘にしましょうか。『ザングース』」

ボンッ!

ザングース 「ザンッ!」

出てきたのはザングースか…ノーマルタイプでスピードとパワーがある。
マンタインはダメージを受けている、消耗戦を仕掛けるのは難しいわね。

キヨミ (さて、どうしようかしら…)

カガリ 「何を考えてるのかは知らないけど、あなたのポケモンは私のポケモン…わからないことはないのよ?」
カガリ 「ザングース『いわなだれ』」

ザングース 「ザンッ!!」

ドガァッ!!

ザングースは地面を叩き、そこから大量の岩が上空へと上がる。
マンタインは今地上にいる、そのため…岩はマンタインの上から降り注いでくる。

キヨミ 「マンタイン、横に避けるのよ!」

マンタイン 「マンッ!」

ズドドドドドォッ!!

マンタインは横に羽ばたいて何とか難を逃れる。
しかしながら、移動した先にはすでにザングースの姿が。

カガリ 「遅いわよ、『かみなり』が効いていたのかしら?」

キヨミ 「遅くは…ないわ! マンタイン『あやしいひかり』!!」

マンタイン 「!!」

カァァァ…

ザングース 「!?」

ザングースは『あやしいひかり』を食らって、混乱する。
これで、少しはマシになるわね。

カガリ 「あら、混乱しちゃったわね…しょうがない、ザングース『でんこうせっか』」

ザングース 「ザ〜ン〜!」

ダダダダダッ!!

ザングースは見当違いの方向に駆けて行く。
『でんこうせっか』だけにかなり素早い移動だ、すでに通常攻撃では届かない位置にまで移動された。

キヨミ (さすがね、わざと失敗しても不利になりにくい技を使うなんて)

当然といえば当然の選択ね、だけど…。

キヨミ 「遠距離ならマンタインの方が圧倒的に有利よ! 『ハイドロポンプ』!!」

マンタイン 「マーンーーーー!!」

ドオオオッ!!

ザングース 「!?」

ザングースが正気に戻った瞬間、『ハイドロポンプ』は目の前まで迫っている。
これは、避けられない。

カガリ 「ザングース『みきり』」

ザングース 「!!」

バシュウゥッ!!

ザングースは上体を捻り、直撃を避ける。
だが、左肩辺りを掠めたせいで、ザングースは後ろにやや仰け反る。

ズザァッ!

ザングース 「ザンッ!!」

ザングースは何とか踏み止まり、身構える。
距離はまだ遠い、いくら『でんこうせっか』でもこちらの方が先に届く。

キヨミ (『ハイドロポンプ』は後2発…『みきり』のあるザングースに当てるのは非常に困難ね)
キヨミ 「マンタイン『みずのはどう』!!」

マンタイン 「マンーーー!!」

ギュッバァッ!!

カガリ 「遠くから攻撃すればいいというわけではないわよ…ザングース『つるぎのまい』」

ザングース 「ザンッ!!」

ドバァッ!!

キヨミ 「! 『つるぎのまい』のモーションで回避した…」

とんでもないことをしでかしてくれる。
攻撃力を上げて同時に回避までする…どんな教育してるのよ。
普通のポケモンじゃまずできないことをあっさりとやってのける。
参ったわね、以前よりも遥かに強くなっているんじゃないのかしら?
このままではまずい…何とかしないと。

マンタイン 「マン…マン…」

キヨミ (疲労は目に見えている…『かみなり』のダメージが予想以上に大きかった)
キヨミ (とはいえ、ここで眠っている暇も無い…どうにかして倒すしかないけど)

カガリ 「悩んでも無〜駄♪ ザングース『でんこうせっか』」

ザングース 「ザンッ!!」

ザザザザザザザッ!!

キヨミ 「く! マンタイン上昇よ!!」

マンタイン 「マ、マンッ!!」

ブォンッ!!

ザングース 「!?」

ザングースが近づくよりも先にマンタインは上昇する。
そして、ザングースは頭上のマンタインを見上げる体勢に。

キヨミ 「よし、マンタイン『あまごい』!!」

カガリ 「!」

少なからず姉さんが驚く。
そりゃそうよね…マンタインの特性は『すいすい』、雨なら素早さが格段に上がる。
加えて、このバトルフィールドは海岸。
悪いけど、勝たせてもらうわ。

ポツポツ…ザアアアアアアアアアッ!!


ユウキ (でええええ!? こっちまで降ってきた!!)

傘は持ってないので、当然濡れるしかない。


キヨミ 「よし…マンタイン『こうそくいどう』!!」

マンタイン 「マン!」

ヒュンッ!!

マンタインは雨により速度を上げ、更に『こうそくいどう』で加速する。
もはや、目視で捉えるのですら困難だ。

ザングース 「ザ、ザンッ!?」

カガリ 「…参ったわね、ちょっと速過ぎるわ」
カガリ 「でも、雨を降らせるなんて、ちょっと焦ったのかしら? ザングース…『かみなり』」

ザングース 「ザンッ!!」

キヨミ 「!? しま…!」

カッ! ワピシャアアアンッ!!

マンタイン 「マンーーーー!!」

マンタインは『かみなり』の直撃を食らう。
迂闊だった…雨が降っていれば雷『かみなり』の命中率はほぼ必中。
マンタインはまたしても空中から落とされる。
だけど、私はその落下点を見る。

キヨミ 「!? マンタイン、最後よ!! 『のしかかり』!!」

マンタイン 「マ…マ〜ン……!」

カガリ 「!?」

ザングース 「!?」

気付いた時には遅い。
マンタインは力なく、ザングースの真上に落下した。

ドッ…ズウウウウウウウンッ!!!

220kgの巨体がザングースを押し潰す。
ほとんど技じゃないけど…まぁ、有りよね?

キヨミ 「……」

カガリ 「……あら」

ザングース 「ザン〜〜〜…」
マンタイン 「マン〜〜〜…」

どうやら、ダブルKOのようだ。
ここまで持っていくのが、限界か。

キヨミ 「…マンタイン、お疲れ様」

カガリ 「…戻りなさいザングース」

シュボボンッ!!

私たちは、しばらく見つめ合う。
互いに思うことはいくらでもある。
思えば姉さんと戦うのは、以前のポケモンリーグ以来か。
ジョウトリーグでの決勝…あの戦い以来ということになる。

カガリ 「…あらあら、まさかこんな結果になるとは思わなかったわ」
カガリ 「勝つつもりだったのに、ドローに持ち込まれるなんてね」
カガリ 「相変わらず、負けず嫌いね…あの時もそうだったし」

キヨミ 「…姉さんは相変わらず、冷静で計画的な戦いね」
キヨミ 「相手の裏をかく戦いを好んでするから、やり辛くて仕方ないわ」

私たちはそう言いあって、また沈黙する。
すると、雨は止んで綺麗な星が夜空を埋め尽くしていた。

カガリ 「ふぅ…今日はこれで帰るわ、そろそろ部下が見回りに来そうだし」
カガリ 「…この決着は、その内つけることにするわ」

そう言って、姉さんは基地の方に去っていく。
決着…か。

キヨミ (以前は私の勝ちだった…でも今回は負けと言ってもいいわね)
キヨミ (以前のパーティよりもポケモン自体は強くなっているかもしれない)
キヨミ (もちろん、私が使っているこのポケモンたちも、まだ強くなっている)
キヨミ (今、私が自分のポケモンを使っても、勝てないかもしれない)

離れている時間が長すぎる。
いくら、使い慣れているポケモンでも…これほどブランクがあって、戦えるだろうか?
不安が過ぎる。
でも、ホウエン地方とカントー、ジョウト地方が繋がっていない以上、どうにもならない気がした。

ユウキ 「あ、あの! すみません、ちょっといいですか!?」

キヨミ 「? あなたはあの時の…まだいたのね」

少年は何やら嬉しそうな顔をしてこう言う

ユウキ 「あなたのポケモン、ホウエン地方のものじゃないですよね? どこで捕まえたんですか?」

そんなことを聞いてくる。
どうやら、バトルを見られていたようね、あまり深くは関わりたくないけど、無碍にするのも悪い。

キヨミ 「ジョウトやカントーで捕まえたポケモンよ、もっとも借り物だけど」

ユウキ 「え、借り物…? 自分のポケモンはどうしたんですか?」

キヨミ 「…友人に預けているの、ジョウトのパソコンだから、こっちで引き出せないのよ」

ユウキ 「…ああ、そうか。あれ? でもつい最近、何か色々宣伝してたような…?」

キヨミ 「? 何のこと?」

突然、少年は悩みだす。
何を思い出そうとしているんだろうか?

ユウキ 「ああ、思い出した思い出した! 確か、父さんがカントーのナナシマって所と通信したって言ってた!」
ユウキ 「ただ、まだホウエン全域には届かないらしくて、局地的にしか出来ないそうだけど」

キヨミ 「!? それで、繋ぐことは出来るの!?」

ユウキ 「えっと…一応父さんの研究所ならいけると思うけど、なんなら繋げてみましょうか? 俺、一応ルータ持ってるんで」

キヨミ 「頼むわ! えっと…どうすればいいのかしら?」

ユウキ 「と、とりあえずポケモンセンターに行きましょう」

キヨミ 「わかったわ!」

こうして、はやる気持ちを抑えながらも私たちはポケモンセンターに向かった。



………。



『時刻20:00 ミナモシティ・ポケモンセンター2階』


ユウキ 「えっと…これをこうして……よしっ繋がった!」

キヨミ 「出来たの!?」

何やら細かい作業をしていたユウキ君が作業を終え、私にパソコンを見せる。
見た目はどう違うのかはわからない。

ユウキ 「えっと、一応カントー地方に繋がったんだけど…ナナシマのパソコンにしか繋がってないんだ」
ユウキ 「だから、預かりシステムもナナシマのパソコンに預けられている分しか…」

キヨミ 「…それって、結局は無理ってことかしら?」

ユウキ 「…う〜ん、ちょっと俺じゃわかりかねますね」
ユウキ 「俺は父さんのパソコンに繋げているだけですから」
ユウキ 「要は、ここから父さんのパソコンに、そこからナナシマに…と経由しているんです」

キヨミ 「ちょっと、待って…このパソコン画面…もしかして」

このレイアウト、どこかで見たことがある。
というよりも、使い慣れてたこの画面は、もしかしなくても…。

キヨミ 「えっと…電話はあるかな!?」

ユウキ 「え? 持ってないんですか? えっと…はい」

私はユウキ君から携帯電話を借りる。
無駄に大きいわね…ってこれポケナビじゃない。
これって、全国にも電話できるのかしら?
私は一応番号を入れてみる。

トゥルルルル…トゥルルルル…ピッ!

? 「は〜い、ポケモン預かりシステムでっせ〜」

繋がった!
私は早速、用件を伝える。

キヨミ 「マサキ! 私よ、キヨミ!」
キヨミ 「悪いけど、ナナシマって言う所のパソコンに私のポケモンを移動させて!」

マサキ 「は!? キヨミ…ってお前、どこおんねん!? 姿くらませてから何年経つ思うてんねん!!」
マサキ 「しかもナナシマって…お前そこおんのか!?」

キヨミ 「ああ〜、今はホウエン地方にいるの!! そこからナナシマにパソコンを繋げてるのよ!!」

マサキ 「おお! そうか〜ニシキの奴、とうとうそこまでやったんか〜感心するなぁ」

相変わらずの天然振り…あの馬鹿、こっちの用件をちゃんとわかってるのかしら?

マサキ 「わかったわかった! お前のポケモンもきっと待っとるで」
マサキ 「ほな、元気でな! そうそう、それから…キヨハさんにも、その…」

キヨミ 「はいはい! ちゃんと伝えておくわよ…あなたのラブコール♪」

マサキ 「バッ! 何言うとんねん!! 余計なことは言うなよ!?」

マサキは思いっきり慌てた声でそう言う。
全く、未だに伝えられないのね…こう言う所は行動が遅いんだから。

キヨミ 「はいはい、きっちり伝えておくから、じゃあね」

プツ…

キヨミ 「はい、ありがと」

ユウキ 「えっと、はい」

何だかちょっと控えめだった。
さっきの会話で退かれたのかしら?
まぁ、それはともあれ…私はパソコンの方を見る。

キヨミ 「えっと…私のIDはっと」

私は自分のIDを入力して、預かりシステムを呼び出す。
すると、とても懐かしい顔ぶれが揃っていた。
私はその全てを手持ちと交換した。
ちなみに、私たち姉妹は互いのIDを知っているので、共有しているも同然だ。
ついでに姉さんのポケモンを姉さんのボックスに返しておいた…皆、今までありがとうね。
私は心の中でそう礼を言った。



………。



キヨミ 「…えっと、何から何までありがとう」

ユウキ 「いや、いいですよ! 珍しいポケモンが見れて嬉しかったですし」

キヨミ 「そう? こっちではそこまで珍しくないんだけどね」

私がそう言うと、ユウキ君は首をぶんぶんと横に振り。

ユウキ 「いやいや! こっちでは十分珍しいですから! 本当にいい物を見せてもらったって言うか…」
ユウキ 「はは…何はしゃいでるんだろ、子供みたいですみません」

いや、十分子供だと思うから。
でも口では言えなかった。

キヨミ 「…とにかく、やっと元に戻った」

これで、私本来の戦いが出来る。
問題は勘をどうやって取り戻すか。
しばらくは大変ね…。

ユウキ 「…キヨミさんって、かなり凄いトレーナーだと思うんですけど、どうしてそんな布を被ってるんですか?」

キヨミ 「? いや、それは…」

正体を隠す必要があるから…なんだけど。
今や私のポケモンは戻ったし、もはや隠す必要もない気がしてきた。
さすがに自分のポケモンを使っていればバレるだろう。
私はそう思って自ら布を外す。
そして、私の顔を見て、ユウキ君は驚く。

ユウキ 「あ…! もしかして、キヨミさんって」

キヨミ 「しっ! 誰にも言わないで…できれば目立ちたくないから」

ユウキ 「え…は、はい」

キヨミ 「うん、ありがとう。あ、そうだ…ひとつ聞きたいんだけど、ハルカちゃんはどうしてるか知ってる?」

私がそう聞くと、ユウキ君は驚いたように。

ユウキ 「ハルカなら、ヒワマキシティにいますよ…色々と大変なことになってましたけど、多分今頃はジム戦に向けて休んでるんじゃないかな?」

私はそれを聞いて安心する。
そうか、無事だったのね…それだけで安心したわ。

ユウキ 「あ、あの…もしかして、キヨミさんが…ハルカを待っている人なんですか?」

ユウキ君は突然そんなことを聞いてくる。
そして、私は少し空を見て。

キヨミ 「…そうなるのかな、でもハルカちゃんがそう言っていたなら、きっとそうよ」

ユウキ 「…そうですか、なるほど〜」
ユウキ (あの馬鹿…何てとんでもない人を待たせてるんだよ)

キヨミ 「?」

ユウキ 「あ、いや、気にしないでください! そ、それじゃあ! 俺、仕事があるんで!!」

そう言って、ユウキ君は海岸の方に行ってしまった。
何の仕事かはわからないが、私は追わなかった。
今は、自分のことを考えよう。
まずは、ミナモにいる間、ポケモンたちとの勘を取り戻す。
それだけを…考えよう。



………。
……。
…。



そして、ひょんなことから…次の日。



『時刻14:00 ミナモシティ・コンテスト会場』


審判 「さ〜て、今日もやって参りました! ポケモンコンテスト・ミナモ大会!!」

観客 「ワァァァァァァァー!!」

審判 「今回、ノーマルランクでの決勝はこのふたりの戦いだ!!」

審判が観客を盛り上げ、私を呼び寄せる。
そして、私は会場に姿を現した。

キヨミ 「……」

観客 「ワアァァァァッ!!」

途端に歓声。
そして、私の対戦相手が姿を現す。

ユウキ 「…ひえ〜」

観客 「ワァァァァッッ!!」

ユウキ君だった。
まさか、同じコンテストに出場しているとは思わなかったけど…これも運命なのかしら?

ユウキ (まさか、試し気分で出場したコンテストの決勝でキヨミさんと当たるとは)
ユウキ (コンテストバトルも普通のバトルと同じようなものだから、まず勝てないな)
ユウキ (でも…いい思い出にはなりそう)

キヨミ (ユウキ君、思ったよりも堂々としてるわね)
キヨミ (舞台慣れしてるのか、それとも図太い性格なのか…)

少なくとも、あがってはいないようだ。
なら、ここは胸を貸す立場と行きましょうか。

審判 「さぁ、決勝が始まるわよ!? 互いにポケモンをステージON!!」

ユウキ 「ようし! こうなりゃやるだけやるぞ! 『ヌマクロー』!!」

ボンッ!

ヌマクロー 「ヌマッ!」

出てきたのはヌマクロー。
地面タイプと水タイプの併せ持ちで弱点が少ない。
コンテストの大会は、出場ポケモンを決めてしまうと同じポケモンを使い続けなければならない。
相性が悪くてもやらなければならないのが難しい所だ。
私はそう言うわけで、今まで勝ち抜いてきたこのポケモンを繰り出す。

ボンッ!

ハピナス 「ハッピー♪」

審判 「さて、互いにポケモンは出た! さぁ、ミナモ大会決勝! いざ、Ready Go!!」

こうして、コンテストバトルが始まる。
コンテストは、普通のバトルとは違って、いかにしてポケモンを『魅せる』かがポイントだ。
直接ダメージを与えなくても、ポイントが入る。
それによってポイントアウトしてしまえば、体力があっても負けになってしまうのだ。

ユウキ 「まずはこれだ! 『マッドショット』!!」

ヌマクロー 「ヌマーーー!!」

バシュシュ!!

ヌマクローは口から泥を吐き出し、ハピナスを攻撃する。

キヨミ 「ハピナス『リフレクター』!!」

ハピナス 「ハピッ!」

バババンッ!!

ハピナスの『リフレクター』によって泥は防がれる。
これだけでも、私にポイントが入る。
後はいかにしてポイントを追加していくか。

ユウキ 「く…やっぱ正攻法じゃ話にならない。ここは路線変更だ! ヌマクロー『なきごえ』!」

ヌマクロー 「ヌマ〜♪」

審査員A 「おお、可愛い『なきごえ』ですな」

審査員B 「よく可愛がられているのがわかる…いい技です」

審査員C 「コーディネーターとの信頼関係が伺えます」

ユウキ 「うっし! いいぞヌマクロー! 続いて『どろあそび』!!」

ヌマクロー 「ヌマー!」

今度は泥を自分の周りに吐いて泥のフィールドを作り出す。
通常の使い方とはまるで違う使い方…しかしながら、コンテストに置いてはそれは十分な効果をたたき出す。

キヨミ 「こっちも動くわよ! ハピナス、地面に『れいとうビーム』!」

ハピナス 「ハッピー!」

カキィィィンッ!! バリバリバリ!!

ユウキ 「うげっ!? 泥が凍った!!」

ハピナスは地面に『れいとうビーム』を撃つことで、泥を凍らせて氷のフィールドにしてしまう。
これによって、ポイントはこちらに跳ね返る。
こう言った駆け引きも重要ね、コンテストって意外に面白いかも。

キヨミ 「さぁ、畳み掛けるわよ! ハピナス『うたう』!」

ハピナス 「ハ〜ピ〜♪ ナ〜〜ス〜〜♪」

審査員A 「おおっ、いい歌声ですな〜」

審査員B 「よく練習されたようですね、ハピナスの美しさを引き出しています」

審査員C 「綺麗な歌声…プリンにも負けていませんわ♪」

ヌマクロー 「ヌ、ヌマ〜…ZZZ」

ユウキ 「げっ!?」

ポイントゲットと同時にヌマクローは眠ってしまう。
これで、勝ったも同然ね…ユウキ君には悪いけど。

キヨミ 「最後よ! ハピナス『ソーラービーム』!!」

ハピナス 「ハ〜ピ〜!」

キュィィィィッ…!

ハピナスは光を吸収する。
撃つのにはこの溜めが問題だ。
しかしながら、決まれば強力な技。
眠っている、ヌマクローには避ける事も……

ヌマクロー 「ZZZ」

カァァァァッ!!

ユウキ 「こ、これは…!?」

キヨミ 「進化…! 冗談でしょ!?」

まさか、こんな時に進化だなんて…。
でも、今更進化したところで。

ハピナス 「ナーースッ!!」

ギュアアアアアアァッ!!

『ソーラービーム』が発射される。
当然、進化しても攻撃は避けられ。

ユウキ 「目ぇ覚ませ!! 『まもる』だ!!」

ラグラージ 「!? ラグッ!!」

ズッ! ドォォォォンッ!!

爆発。
煙によって、視界が悪くなる。
私は相手を確認できてない。
倒したのかそうでないのか…。
だが、次の瞬間。

ユウキ 「『だくりゅう』だラグラージ!!」

ラグラージ 「ラグーーー!!」

キヨミ 「っ! ハピナス……」

言おうとしたが遅かった。
すでに煙の向こうから『だくりゅう』が迫ってきた。
『ハイドロポンプ』並みに圧縮された泥の流れはハピナスを直撃する。

ハピナス 「ハピーーー!!」

ビーーーーーーー!!

反撃する間もなく、タイムアウト。
判定に持ち込まれてしまった。
正直、最後の攻撃でどうなったかわからない。

審判 「何と素晴しい戦いだったでしょうか! 両者のポケモンは全力を出し合い、決着は惜しくもつきませんでした!!」
審判 「よって、ポイントによる判定を行います!! 勝ったのは…」

ユウキ 「……」

キヨミ 「……」

会場全体が息を呑む。
そして、挙げられた名前は。

審判 「ミシロタウンのユウキ君! おめでとうございます!!」

ユウキ 「お、俺? か、勝ったのか…あのキヨミさんに!?」

審判 「おめでとう! ユウキ君…はい、これがノーマルランクの優勝リボンよ♪」

審判の手からユウキ君にリボンが授与される。
あ〜あ、負けたか…でも、初めてのコンテストにしては上出来か。

キヨミ 「ありがとうハピナス、久し振りにしてはいい手応えだったわ」

ハピナス 「ハッピ〜♪」

ユウキ 「あ、あのキヨミさん! 今日はどうも!!」

リボンを受け取って、ユウキ君が私に俺を言う。
私はそんなユウキ君に手を振って答え、後は去っていった。

キヨミ (これからも頑張ってね、ユウキ君)



ユウキ 「キヨミさん…ありがとうございました!」

俺は最後にもう一度礼をする。
キヨミさんに勝てたのは未だに信じられない。
でも、今回は色々運が重なったと言える。
ラグラージへの進化、コンテスト初挑戦…。
俺はラグラージに寄りかかって、リボンを高く掲げる。

観客 「ワアァァァァァッ!!」

審判 「皆さん! ミナモシティのコンテストにお越しいただきありがとうございました! また、次の大会でお会いしましょう!!」

ユウキ (ハルカ…お前、本当に凄い人を追いかけてるんだな)
ユウキ (でも、あいつなら追いつけるかもしれない)

何故だか、そう思えた。
ハルカには足りない物が多い。
今はそれをひとつづつ手に入れていかなければならない…だから。
その全てを手に入れた時…きっとハルカは立つことになるのだろう。

ユウキ (頂点へ…)



…To be continued




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